説明

タグおよびそれを用いた物品認識システム

【課題】暗所においても、遠方からでも、湾曲した箇所に貼り付けた場合でも、正確に認識することが可能であり、近接して複数配置されていてもそれらを正確に識別することが可能なタグを提供する。
【解決手段】支持層313に再帰反射材層310を積層した再帰性反射層320に、カラーシート層305が積層される。カラーシート層305は透明であり、可視光領域の色により符号化されたカラーコード情報が印刷されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰性反射層とその反射層の可視光領域の色により符号化されたカラーコード情報を有するタグに関する。詳しくは、再帰性反射層の反射材層の支持体層とは反対側に、カメラによる読み取りが可能なカラーコード情報を有し、前記カラーコード情報が複数の色により符号化されているタグに関する。
また本発明は、カメラにより前記タグのカラーコード情報を読み取る読取方法に関する。
さらに本発明は、カメラにより前記タグのカラーコード情報を映像信号として読み取り、前記映像信号を読取装置の信号処理部で電気信号化して読み取られたカラーコード情報を復号処理することを含む物品認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品を識別するためのタグとして、白黒のバーコードを有するタグが使用されている。白黒のバーコードの場合、白の部分、黒の部分の長さを利用してデータが符号化されている。1次元上に配置した通常のバーコードや2次元状に配置したバーコード(例:QRコード)が用いられている。このようなタグは、タグ上に表示されたバーコードをレーザースキャナで走査し、その反射光を観測することによりバーコードの白及び黒の長さを計数(計測)し、対象タグのデータを読み取るものである。
【0003】
また同様に物品を識別するためのタグとして、UHF帯域の電磁波を利用したRFID技術を用いたタグもある。UHF帯RFIDタグは、送受信及び信号処理回路が搭載されたICチップにダイポールアンテナが接続された形になっており、カード状あるいはシート状に実装されていることが多い。EPCグローバル等で標準化が議論されているUHF帯RFIDタグは、このダイポールアンテナを通じて、ICチップが動作するのに必要な電力の供給を受け、データ及びコマンドの送受信を行う。
【0004】
RFID(ICタグ)の通信距離は電波の周波数および出力、さらにはICチップでのインピーダンス整合や消費電力により大きく左右されるが、最大通信距離は、理想的な環境下では5m以上になることが報告されている。この特性を利用し、対象物品にUHF帯RFID(ICタグ)を貼付して、比較的暗所かつ遠方からUHF用リーダを用いてICタグ内の情報を読み取ることが可能である。この場合、リーダとタグの間に紙等の障害物が存在しても比較的容易に読み取ることが可能である。このようなICタグは電池等を持つ必要がなく、量産効果による低コスト化が見込まれることから、従来のバーコードの代替品としても期待されている。
【0005】
特許文献1には、スペクトル的に符号化されたラベルが開示されている。このラベルに光を照射し、反射光のスペクトルを解析することにより符号が認識される。
【0006】
特許文献2には、いずれの方向から光を照射した場合でも照射した光の方向へ反射光を返す再帰性反射シートが開示されている。
【0007】
特許文献3には、この再帰性反射を呈する光再帰反射体をバーコードの白または黒の部分とするバーコードを有するカードが開示されている。
【0008】
非特許文献1には、複数のカラーブロックをマトリクスとして配置したコードが記載されている。
【0009】
【特許文献1】米国公開公報2004/0173680
【特許文献2】米国特許4,025,159
【特許文献3】米国特許5,237,164(特開平2−297497および特開平3−3094)
【特許文献4】米国特許6,288,842(特表2003−524205)
【非特許文献1】http://www.colorzip.co.jp/ja/about/technology.htmlまたはhttp://www.colorzip.co.jp/en/about/technology.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
バーコードの場合、レーザースキャナが読み取りを可能とするには十分な強度の反射光を必要とする。そのため、読取距離にはある程度の制約があり、通常1m以下である。暗所かつ数m以上の読取距離を必要とするアプリケーションでは実現には困難が伴う。さらに、レーザースキャナでバーコードを読み取るためには、バーコードが平坦であること、バーコードがある程度の高さを有することが必要である。また2次元バーコードでは、その全体をスキャナで読み取らなければスキャンすることができない。
【0011】
特許文献3に記載されているように、光再帰反射体でバーコードを形成したとしても、バーコードの場合は白及び黒部分の長さ自身が情報を意味するため、暗所あるいは遠方に存在するバーコードは、まったく読み取れないか、あるいは正確に読取ることができないため安定な動作は実現し得ない。またバーコードが湾曲した箇所に貼付された場合や、斜め方向から画像を取り込んだ場合も、同様に安定な動作は実現しない。この問題は1次元バーコードでも2次元バーコードでも同様に生じる。また、この問題は、これらバーコードを単に再帰反射材と組み合わせただけでは解決することはできない。
【0012】
UHF帯RFID(ICタグ)の場合は、電波を利用しているため、金属近傍あるいは金属に直接タグを貼付した場合、送受信における信号強度が低減してしまう場合がある。原因としては金属による電波の反射や金属の存在による鏡像現象がある。
【0013】
このように電波を用いてICタグの情報を読み取る場合、電波の特性上通信が困難となるため、ICタグと対象金属物との間に特別な高誘電率材料を挿入したり、金属による影響を低減するため、金属との間にある程度の空間を設けたりする必要がある。
【0014】
そういった処理を施した場合でも、UHF帯では周辺の金属の影響を受けるため、直接波以外の反射波(多重反射を含む)により逆位相の信号間の重ね合わせにより信号強度が著しく低下し、通信距離の大幅な減少が起こることがある。
【0015】
上記の信号強度が消失する場所(ポイント)のことをヌル点(信号強度が消失する点)というが、通常の環境ではそのヌル点を特定することはできない。またわずかな環境の変化によってもヌル点は変化してしまう。そのため周辺に金属の多い環境下においては安定した動作を得ることは困難である。
【0016】
さらに、通常は読取フィールド内には複数のICタグが存在するケースは少なくないが、UHF帯をはじめとする電磁波を使用した方式ではアンテナから発生する電磁波ビームの指向性を自在に絞ったり広げたりすることは容易ではない。従って同時に複数のタグを読み取ることになる。この場合、読み取られたタグの情報と、そのタグが存在する場所あるいは貼付されている物品とを関連づけることができない。
【0017】
したがって本発明の目的は、上記の課題を克服し、暗所においても、遠方からでも、湾曲した箇所に貼り付けた場合でも、データを正確に認識することが可能であり、タグが近接して複数存在してもそれらを正確に識別することが可能なタグ、およびそれを用いた物品認識システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち本発明は、支持層と再帰反射材層とを有する再帰性反射層と、前記再帰性反射層の反射面側に設けられたカラーシート層とを具備し、前記カラーシート層が透明フィルムの一方の面に可視光領域で判別可能な色により符号化されたカラーコード情報を含むタグを提供するものである。
また本発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のタグに光を照射して再帰性反射光を生成させ、前記再帰性反射光をカメラで取り込むことにより前記タグの画像を取得し、取得した画像から、前記タグのカラーコード情報を復号することによるタグの読取方法を提供するものである。
【0019】
さらに本発明は、前記タグへの照射光を生成するための照射部、前記タグからの再帰反射光を取り込むことの可能なカメラ、および前記カメラで取得された画像に含まれるタグが有するカラーコード情報を復号する信号処理部とを含む読取装置を具備する物品認識システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、暗所、あるいはカメラと前記タグを固定した被探索物までの距離が相当離れている場所において、被探索物に設けられたタグのカラーコード情報の読み取りが可能となり、このような場所であっても物品の同定、確認、管理が可能となる。
また本発明により、例えばプラント内の金属製配管群を被探索物とする場合にも、照射部からの照射光と平行に戻ってくる再帰性反射光をカメラで読取ることができるため、被探索物に固定されたタグの情報を、正確に読み取ることが可能となる。
【0021】
本発明のタグのカラーコード情報は、色の長さ、すなわち色の配列方向に対する色の長さ、色の絶対値、または隣接する色との変化(違い)等の情報であるため、タグの一部が撮像範囲からはみ出ていたり、タグが曲面に取り付けられて湾曲していたり、あるいはカメラで取り込んだタグの画像の焦点が合っていない場合でもタグの情報を正確に読み取ることが可能である。この点は、コード全体をレーザー等のスキャナで走査する従来のバーコードと著しく異なる。
【0022】
さらに、本発明のタグのカラーコード情報は、可視光領域の色を使用しているため、視認可能である。そのため、カメラで取り込んだ画像を表示装置に表示させ、その表示された画像のうち所望のタグの画像部分をポインタで特定して処理することができる。あるいは、表示装置としてタッチパネルを使用し、カメラで取り込んだ画像をタッチパネル画面に表示させてタッチパネル画面上の所望のタグの画像部分を特定して処理することができる。
【0023】
単純に、不透明な着色層のみによるタグとした場合、暗所においては読み取るのに充分なコントラストを得ることはできない。また光を照射した場合でも、光が乱反射するため、輝度が著しく低下し、カメラ等で撮影した際に、画像が全体として白くなってしまうため、カメラタグ上の色を読み取る場合に困難が伴う。
【0024】
しかしながら上記のように再帰反射層の上に透明な着色層を配置する構成とした場合は、光を照射することにより、暗所において可視光領域においてタグの存在を確認することが容易にできる。
【0025】
さらに着色層の各色に応じた再帰反射光を取り込むことができるため、通常よりも高いコントラストで色信号をカメラに取り込むことができる。
【0026】
本発明のタグの採用により、従来よりも暗所、あるいは遠方であっても光を照射することにより対象物品に設けられたタグ情報を正確かつ安定に読み込むことができる。また、複数のタグが存在する場合でも、照射した光の再帰反射光により得られる色情報をもとに読み取るため、特定タグの読込及び位置の同定が著しく容易となる。
【0027】
また電波を用いない安価なRFID方式と同程度、あるいはそれ以上の通信距離(例えばUHF帯RFIDでは5m程度)を達成することが容易である。さらに、カメラ等により取り込んだ可視光領域の色情報を利用するため、周囲の金属の影響を全く受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を、工場の内外における水、ガス、電気等の各種配管の点検及び管理のためにそれらの上にまたはその近傍に配置されるタグを例にとって説明する。
【0029】
図1は工場の内外における水、ガス、電気等の各種配管と、それに付されたタグ、タグの読取方法、及びそれらを用いた点検・管理システムの一例をモデル化して示したものである。以下システムの構成を説明する。
【0030】
各種配管107,109等には、タグ108,110が貼り付けられている。これらのタグの情報を取得するために読取装置104、読み取った情報を保持管理するためにローカルホスト103、ネットワーク102及びサーバーシステム101が用意される。
【0031】
図示した例では携帯型の読取装置104によって光ビーム105,106を照射し、タグ108,110によって生成される再帰反射光を読取装置104に取り込むことによりタグ108,110の情報が読み取られる。
【0032】
読み取られた情報は読取装置104に内蔵される記憶媒体の中に記憶され、ローカルホスト103に所定のインタフェースを通じて取り込まれる。かかる情報取り込みの際の通信手段としては、例えば、USB等の標準シリアルインタフェースを通じた入出力装置や無線LAN,Bluetooth(登録商標),IR等の無線通信インタフェースが使用可能である。
【0033】
ここでローカルホスト103は限られたエリアの配管情報を管理することを主目的とすることを前提としている。このように特定エリアの配管の管理用に設けられたローカルホスト103は取り込んだデータを、より上位のホスト乃至サーバーシステム101への送信を必要とする場合がある。
【0034】
あるいは、ホスト乃至サーバーシステム等の上位からの指示に基づき、ローカルホスト103は対象とする特定エリアへの作業指示あるいは作業指示を支援する情報を提供することもできる。これらの情報はローカルホスト103を通じて読取装置104の記憶媒体に格納することができ、読取装置104を使用した点検管理業務等に利用することができる。
【0035】
本実施例では読取装置は携帯型としたが、本発明の読取装置は、携帯型に限定されるものではなく、例えば据置型の読取装置を使用することもできる。
【0036】
またローカルホスト103とサーバーシステム101は、上述のようにネットワークを介して通信可能な状態で別の場所に設置されていても良いし、あるいはローカルホストとサーバーシステムを一体化したものとすることもできる。後者の場合、読取装置104の記憶媒体へのアクセスは直接サーバーシステムから行うことができる。
【0037】
図2を参照して、本発明のタグ108,110の構成と機能を説明する。
図2に示したタグは、支持層313と再帰反射材層310とを積層した再帰性反射層320と、再帰性反射層320に積層されたカラーシート層305とを具備する。カラーシート層305は透明フィルムであり、可視光領域の色により符号化されたカラーコード情報が印刷されている。カラーシート層305と、該カラーシート層305の一方の面(裏面)に配置された再帰性反射層310は、該カラーシート層305の他方の面(表面)を通して入ってくる入射光314,316を再帰反射し、再帰反射光315,317を発生する。
【0038】
本実施例では再帰反射材層310は特定の誘電率とプリズム構造を持つアクリル等の材料を従来公知の方法を用いて形成される。かかるプリズム構造を有する再帰反射製品の例として、3M社製スコッチライト<TM>ハイグロス反射フィルムアンシールド6200シリーズ等が挙げられる。再帰反射層としては、その他、ガラスビーズ等の透明微小球を用いた再帰反射材等を利用することが可能である。 かかる透明微小球を使用した再帰反射製品の例として、3M社製スコッチライト<TM>8910シリーズ反射性ファブリック、スコッチライト<TM>3290シリーズエンジニアグレード再帰反射性シート材料、またはスコッチライト<TM>3870シリーズ高輝度グレード再帰反射性シート材料等が挙げられる。
【0039】
後述する所定の読取装置より照射された光は前記入射光314,316としてカラーシート層305の表面、すなわちタグ108,110に照射される。前記入射光314,316は、可視光領域において特別な色への強度の偏りはなく、ほぼ白色光と見なせるものを使用することができる。これらの入射光314,316はカラーシート層305の各色に応じた色のみが通過し、再帰反射材層310に入射する。この再帰反射材層310ではカラーシート層305の各色に応じた色のみが入射光と平行な方向に再帰反射する。
【0040】
すなわち入射光314は、カラーシート層305の第1色の部分307により、第1色の強度が他の色に対して強調されて入射光314と平行な再帰反射光315となり、読取装置の方向に反射して戻る。同様に、入射光316はカラーシート層305の第2色部分308により、第2色に対応した色の再帰反射光317となり読取装置に戻る。
【0041】
照射光は、入射、再帰反射およびその他の多重反射、カラーシート層における吸収等によりその強度が減衰することになるためカラーシート層は適切な薄さを有する必要がある。
【0042】
尚、図2に示したタグ108,110は点検及び管理対象であり被探索物となる配管等に取り付けて使用するため、タグの裏面に空気層312及び支持層313を設けることが好ましい。支持層313はタグを支持する基体を兼ねており、その再帰反射材層310と反対側の面に、前記被探索物にタグを固定するための接着層311を設けることが好ましい。あるいは、接着層311を設けず、その代わりに従来公知の手段により、タグを固定することもできる。この様な手段としては、例えば、透明なオーバーラミネートフィルムでタグを覆うようにしてタグを固定する、支持層313と被探索体とを両面テープで固定する、あるいはタグの少なくとも一部を接着テープや、ネジ、ビスを用いて固定する手段等が挙げられる。いずれの場合も、カメラで再帰反射光を取り込む際に、入射光及び再帰反射光をさえぎらないこと、被探索物に損傷を与えないことが必要となる。
【0043】
本発明のタグは、さまざまな物品(被探索物)に固定して使用することができる。特に、暗所に存在するもの、バーコード検出に使用されるビームが届かないところに存在するもの、人が接近するのが難しい場所や手の届きにくい場所に存在するもの等を挙げることができる。また、フローティングイメージを利用したタグは、特に模造防止用途で使用することができる。被探索物としては、例えば、工場、住居、事務所等の建築物の内部あるいは外部に存在する各種配管、電柱に備えられたクロージャーや変圧器、看板、線路の枕木、トンネル内の配管やその他備品を含む物品、倉庫内に保管したダンボール、事務所内の事務用機器が考えられる。また、模倣防止用途の場合、パスポート、各種IDカード、CDやDVDに取付けて使用できる他、医薬品、電気電子製品、ブランド品等のID管理用のタグとして使用可能である。尚、模倣用途の場合、ID機能のみならず、真贋認定機能も発揮することができる。
【0044】
図3は、透明なカラーシート層305における、着色による符号化の例を示す図である。本発明においては、色の情報を符号にするための符号化方式については特に限定されないが、例えば、色の長さ、すなわち色の配列方向に対する色の長さ、色の絶対値、または隣接する色との変化(違い)等の情報を、公知の方式により、例えばID番号等に符号化することができる。本発明のカラーシート層は、色の情報をより多くの符号に符号化するためには、2種類の色相の異なる色、あるいは3種類以上の色相の異なる色を有することが好ましい。
【0045】
例えば図3には、(a)欄に示すようにカラーシート層の一方の面に、色を直線上に配列したタグの例や、(b)欄に示すように、円形状のカラーシート層の一方の面に、パイチャートのように色を配置したタグの例が示されている。
【0046】
(a)欄の例の場合、タグの端部201,209に黒色の部分を設け再帰反射光が得られないようにし、例えば第1色202、第2色203、第3色204等々適当な種類の色を適当数用いて、色の情報を符号化情報とするようにしている。例えば第1色を“1”、第2色を“2”、第3色を“3”といったようにデータを割り付け、ある特定の色、色の組み合わせあるいは色の並びを識別子として使用することができる。
【0047】
(b)欄の例では同様に黒色214および第1色211、第2色212、第3色213を用いた例を挙げている。この例では、円形のパイチャート状に色を配色することにより符号化情報を作成することができる。
【0048】
上記(b)欄の例のように、一部に黒色のような無彩色の部分を設けることで、画像処理の際にタグを背景の色と区別することが容易になる。前記無彩色の部分を、カラーシート層の外側部分に該カラーシート層を囲むように設けると、逆光の場合にもタグの画像をカメラ等で取り込むことが容易になる。前記無彩色の部分は、黒色の他、通常無彩色(彩度の無い色)といわれる白、黒、及びその中間にある全ての灰色を使用することができる。カラーシート層がその一部あるいは周囲に無彩色の部分を有する場合、カラーコードが一色の場合にも、符号化された情報を有効に取り込むことができる。
【0049】
このようなカラーシート層は、例えば、透明なフィルムの一方の面(例えば裏面)に、色により構成されるコード(カラーコード)を公知の方法により印刷することにより得られる。所望のカラーコードをコンピュータ上で生成し、これをコンピュータに接続されたプリンタで透明フィルムの例えば裏面に印刷することにより得られる。透明フィルムは、公知のフィルムを使用することができ特に限定されない。例えば、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリ塩化ビニルフイルム、ポリ塩化ビニリデンフイルム、ポリスチレンフイルム、またはポリアミドフイルム等を使用することが出来る。これらのフィルムは、無色透明であるか、またはカラーコードの色が透けて見える程度の透明度を有していることが好ましい。また印刷は、公知のグラビア印刷法、カレンダー印刷法または昇華転写を利用することも可能である。
【0050】
カラーシート層は、あらかじめカラーコードを印刷した透明フィルムを再帰反射層に接着、粘着などの公知の方法により積層するか、あるいは印刷を施していない透明フィルムを再帰反射層に積層した後、透明フィルムの表面に印刷することもできる。この際、カラーシート層は、再帰反射層に直接積層することもできるし、再帰反射層とカラーシート層の間に保護層を設けることができる。特に、再帰反射層がアクリル製の場合、保護層を設けることにより、接着または粘着によるカラーシート層の積層が容易になる。
また、カラーシート層として、着色フィルムを使用することもできる。
【0051】
図4を参照して、工場内での各種配管の点検・管理を例として、本発明のタグのための読取装置の構成、かかる装置を使用したタグの読取方法、及び運用方法の具体的な実施例について説明する。
【0052】
各種配管411,413,415および417には、図2,3を参照して詳述したタグが夫々409,418,414および416、のように取り付けられている。配管近辺での照明はあまりなく、極端な例では暗所であり、照明がある場合でも、ものの影による明暗が存在し、遠方からの認証には困難が伴うことが想定される。
【0053】
図4には、本発明の一実施例に係る読取装置406の構成が概念的に示されている。読取装置406には照射光407を生成する照射部401と再帰反射光408を取り込むことのできるカメラ402が設けられており、読取装置406で受け取った画像信号は電気信号に変換され信号処理部403で色による符号化情報の復号化が行われる。この処理においては読取装置406に内蔵されるメモリ404の内容を参照情報として利用する場合や、処理結果をメモリ404に格納する場合がある。
【0054】
本発明において、カメラは再帰反射光を読み取ることができるものであれば特に限定されない。例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ、あるいは携帯電話に搭載されたデジタルカメラ等を挙げることができる。携帯電話に搭載されているデジタルカメラでタグの写真を撮影した場合は、その映像データをローカルホストあるいはサーバーに送信して復号処理することができる。
【0055】
また読取装置406には、カメラ402で取り込まれる画像の表示、処理された結果の表示、あるいは上位ホストからの指示内容の実行促進を目的とした表示装置405が内蔵されている。本発明のタグは、視認可能な可視光領域の色を使用しているため、読取装置により取り込んだ画像データそのものを表示装置405に表示して操作することができる。この際表示装置405がタッチパネル方式を採用していると、取り込んだ画像を見ながら、タッチパネル上の所望のタグの画像部分をタッチすることにより、当該タグの情報を復号して、データベース上の情報と照合することができる。また、表示装置405と照射部401を連動させることにより、タッチした単一のタグに照射光をあてて、そのタグの情報のみを復号処理することも可能である。特に、広大なプラント内で作業する場合、あるいは多数のタグの情報を処理する場合には、プラント内のどこのどのタグの情報を処理しているのか容易に認識することができ、処理効率が格段に向上する。
【0056】
実際の探索手順に基づいて読取方式の実施例を説明する。本実施例では配管411に関する点検・管理のための位置確認作業をするものとする。配管411にはタグ409が貼付されている。
【0057】
最初に読取装置406の照射装置401を用いて図4右上方にある配管群に光を照射する。このとき、照射された光(照射光)は領域412で示す範囲であるものとする。照射光の広がりが領域412の範囲である場合は、その範囲内に配管411,413,415および417の各々のタグ409,418,414および416が含まれることになる。
【0058】
領域412の範囲の画像をカメラ402で取り込む場合、これら複数(4つ)のタグからの再帰反射光に基づく画像を得ることができる。信号処理部403の処理能力やメモリ404の容量が充分確保されている場合は4つの画像に基づく情報をほぼ同時に復号することができる。しかし、読取装置406の負荷や作業効率を考慮して、タグ一つ一つを順次読み込みたい場合は、領域412に含まれる複数のタグをひとつに絞ることが好ましい。
【0059】
読取装置406が、照射光の範囲を調整可能な照射範囲調整機構を具備する場合、照射部401からの照射光の広がりを調整することができる。本実施例では当初広がりが領域412程度であったものを、それより面積の小さな領域410に絞り、読取対象を配管411に貼付されるタグ409のみとする。
【0060】
また別の方法として、照射部401による照射光の広がりが領域412の範囲であったとしても、カメラ402をズームアップすることにより、撮像範囲を領域410の範囲に制限することにより、読取対象を配管411に貼付されるタグ409のみとすることができる。
【0061】
上記のような手法により配管411に関する点検・管理のための位置確認作業を実行することができる。仮に復号結果が、所望のタグでない、例えばタグ409でないことを示している場合は、領域412範囲内にあるタグの画像を順次走査していくことにより、所望のタグ409の確定に至ることができる。
【0062】
図5は読取方式の一例をフローチャートで示す。
読取装置406より光を照射したのち(ステップ501)画像をカメラ402で取り込む(ステップ502)。当該画像には、タグの画像が含まれないか、あるいは一以上のタグの画像が含まれる。タグの色による符号化情報としての信号(タグ信号)がない場合、すなわちタグの画像が含まれない場合(ステップ503)は、照射光の方向を変更し(ステップ504)、該信号を検出するまで、再度カメラでの取り込みを繰り返す。照射光の方向の変更は、例えば、読取装置406に具備されている照射光の方向を調整可能な照射方向調整機構により行うことができる。
【0063】
上記操作によりタグ信号が確認された場合は、その信号の数が複数か単一であるかを判断する(ステップ505)。複数の場合は、照射光の方向を変えるか、あるいは範囲を絞ること(ステップ506)によりタグの信号が単一となるようにする。タグ信号が単一になったところで色信号にもとづく復号処理(ステップ507)を開始し、符号化情報の内容を決定(ステップ508)する。
【0064】
得られた符号化情報は対象とする被探索物(この場合配管)の認識番号と関連付けられており、読取装置内のメモリに格納済みの情報あるいはサーバーシステム上に格納されているデータベース情報と比較、検証され対象とする被探索物の情報(詳細情報を含む)を得ることができる(ステップ509)。「被探索物の情報」とは、例えば、配管の位置、過去の点検の時期、被探索物の役割、その他被探索物に関する情報等である。ステップ509における読取装置とデータベースとの間のデータのやり取りは本実施例ではシリアルインタフェースを通じて行われるが、他の公知の方法により行うことも可能である。
【0065】
得られた情報の全部乃至一部は信号処理部403を通じて表示装置405に表示される(ステップ510)。
【0066】
第1の実施例(図5に示すフロー)では読取装置406の演算処理能力あるいは作業の効率等を考慮して、タグを一個ずつ読み取ることを前提としていた。しかしながら読取装置の演算処理能力が充分高い場合は図6に示すようなフローにて点検管理作業を進めたほうが効率の向上をはかることができる。
【0067】
図5に示すフローと同様、読取装置406より照射(ステップ601)をしたのち画像をカメラ402で取り込む(ステップ602)。タグ信号がない場合は、照射部の操作により照射光の方向を変更し(ステップ604)、再度カメラでの取り込みを繰り返す。
【0068】
これらの処理後、タグ信号の入力(ステップ603)が確認された場合は、タグ信号の数量に関わらず、撮像したデータに基づき撮像データの復号化(ステップ605)及び復号化情報の決定(ステップ606)を行う。
【0069】
これ以降は単一のタグの場合と同様である。すなわち、得られた符号化情報は対象とする被探索物(この場合配管)の認識番号と関連付けられており、読取装置内のメモリに格納済みの情報あるいはサーバーシステム上に格納されてデータベース情報と比較、検証され対象とする被探索物の情報(詳細情報を含む)を得ることができる(ステップ607)。
【0070】
得られた単一乃至複数のタグ情報の全部乃至一部は信号処理部403を通じて表示装置405に表示される(ステップ608)。
【0071】
この様にして、例えば、点検の対象となっている配管の位置を特定することができる。或いはまた、領域412内にそれぞれのタグ(配管)がどの様に配置されているかを知ることにより、当該タグが取付けられた被探索物(配管)がどのように配置されているかを知ることができる。領域412を写した画像にタグの認識結果を重ねて表示した画像を、タグ(配管)の配置を示すデータとしてサーバーシステム101に保存し、適宜読み出して表示することも可能である。
【0072】
前述した、領域412内の複数のタグ409,418,414,416の順次的な走査、あるいは領域412の内の複数のタグの一括復号において、複数のタグが含まれる画像を読取装置406の表示装置405に表示し、タッチパネルの操作でタグを順次選択して復号するように構成することも可能である。
【0073】
図7は、透明微小球を使用した再帰性反射層を有するタグ710、720の例である。
(a)欄には、透明微小球712の一部が材料層716を介して支持層714aに埋め込まれており、透明微小球712に保護層724a、カラーシート層718aを積層してなるタグの例が示されている。
(b)欄には、透明微小球722の一部がスペーサ層728及び材料層726を介して支持層714bに埋め込まれており、透明微小球722に保護層724b、カラーシート層718bを積層してなるタグの例が示されている。
材料層716,726は、感光性材料あるいは反射性材料からなる。前記感光性材料あるいは反射性材料としては、特に限定されないが、例えば、金属、金属合金、金属酸化物、金属亜酸化物、高分子、半導体材料、誘電体ミラーなどの多層の薄膜材料、またはサーモクロミック材料を挙げることができる。
【0074】
図8は、前記特許文献4に図9として示されている、表面に合成画像(フローティングイメージ)が浮かんで見える再帰性反射シート材料の模式図である。
図8において、このシート材料へ入射する光の大部分は透明微少球10によるレンズ作用と材料層12による反射で、参照符号L1で示すように、入射光の方向へ再帰性反射される。しかしながら、材料層12の一部は参照番号14(除去部)で示すように除去されているので入射光の一部は材料層12によって反射されずに、除去部14により吸収される。この反射されない光の方向を示す破線がシートの前方108aに集まって所望の像を結ぶように除去部14を形成すれば、シートの前方に暗い像が結ばれてフローティングイメージが形成される。
このような再帰性反射シート材料として、3M社製の3M<TM>Confirm<TM>シリーズの製品を使用することができる。
【0075】
このような、再帰反射シート材料を、図2あるいは図7の再帰反射材層310、710、720と置き換えて、フローティングイメージが形成されるタグを製造することができる。図2を参照して説明したタグの再帰反射材層310として用いれば、自然光のもとでもフローティングイメージがカラーコードの上に浮き出て見え、また、暗所で光ビームを照射し、再帰反射を利用してタグの情報を読み取る場合には、更にくっきりとイメージが浮かび上がる。
【0076】
材料層12の除去部14の位置を調整することにより所望の形状のフローティングイメージを形成させることができる。例えば、特定の情報を有する複数のタグに、同様のフローティングイメージを付加することにより、当該タグ群の特定をすることが可能である。すなわち、フローティングイメージを有しないタグ、あるいは異なるフローティングイメージを有するタグとの区別が可能である。
【0077】
また、被探索物に固定された本発明のタグの模倣をすることが可能である場合でも、当該タグが有するフローティングイメージまでも模倣することは、材料層に特定の除去部を形成するという、フローティングイメージを実現する再帰反射層の加工上の問題から難しい。そのため、フローティングイメージを有するタグの利用により、タグの模倣を防止することが可能である。したがって、特に模造防止用途、例えば、医薬品、電気電子製品、ブランド品等のID管理用のタグとして用いることもできる。
【0078】
図9は、カメラで取得したタグの画像を読取装置の一部である表示装置906の画面920に表示した図である。
画面920には、タグ910、914、916、918、及び各種配管911、913、915をカメラで取得した画像が表示されている。例えば、タグ910が貼付された配管911の情報を知りたい場合には、画面上でタグ910の部分をポインタでクリックすることによりタグ910のカラーコード情報が復号されてID番号に変換されかかるID番号と配管911に関するデータベース上の情報を照合することにより、配管911の情報を知ることができる。画面920としてタッチパネルを採用している場合は、画面上のタグ910の部分にタッチすることで同様の処理が可能である。
【0079】
図10は、本発明のタグが照射光の範囲1002からはみ出ている状態を示す。
本発明のタグはそのカラーコード情報、すなわち色の種類と色の配列を再帰反射光によりカメラで取り込むため、カラーコード情報を構成する全ての色をカメラで取り込んでいさえすれば、カラーコード情報の復号が可能である。図10に示すように、タグ1004のすべての部分が領域1002内に収まっておらず、その一部分が領域1002からはみ出している場合でも、カラーコード情報を構成する全ての色、第1の色1010乃至第10の色1019が、領域1002に含まれていれば、タグ1004の情報を読み取ることが可能である。さらに、同様の理由により、タグが曲面に固定されタグ表面が湾曲しているような場合、あるいはカメラに取り込まれた画像の焦点が合っていない場合であってもタグの情報を読み取ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明で適用される配管の点検及び管理のためのシステムをモデル化して示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るタグの構成と機能を説明する図である。
【図3】着色層の例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る読取装置の構成と機能を説明する図である。
【図5】本発明におけるタグの読み取り方式の第1の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明におけるタグの読み取り方式の第2の例を示すフローチャートである。
【図7】透明微小球を含む再帰性反射材を使用した、本発明のタグの断面図である。
【図8】フローティングイメージを形成する再帰性反射層の一例である。
【図9】カメラで取得した画像を表示装置の画面に表示した図である。
【図10】タグをカメラで取得した画像の一例を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層と再帰反射材層とを有する再帰性反射層と、前記再帰性反射層の反射面側に設けられたカラーシート層とを具備し、前記カラーシート層が透明フィルムの一方の面に可視光領域で判別可能な色により符号化されたカラーコード情報を含むタグ。
【請求項2】
前記カラーコード情報が、少なくとも2種以上の色により符号化されている請求項1に記載のタグ。
【請求項3】
前記カラーコード情報が、少なくとも3種以上の色により符号化されている請求項1または2に記載のタグ。
【請求項4】
前記カラーコード情報が、その一部に無彩色の領域を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のタグ。
【請求項5】
前記再帰性反射層において、前記反射材層が透明微小球層と反射性物質からなる材料層とを有し、
前記透明微小球層の各透明微小球は、前記支持層にその少なくとも一部が埋め込まれており、前記微小球層のうちの前記支持層に埋め込まれた部分と、前記材料層が直接あるいは間接に接している請求項1〜4のいずれか一項に記載のタグ。
【請求項6】
前記材料層が除去部を有し、前記再帰性反射層へ光を入射した場合に、その光の一部は前記透明微小球層を通って前記材料層により再帰反射され、また光の他の一部は前記除去部により吸収されることにより、前記タグの前方または後方に暗い像が結ばれてフローティングイメージが形成される請求項5に記載のタグ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のタグに光を照射して再帰性反射光を生成させ、前記再帰性反射光をカメラで取り込むことにより前記タグの画像を取得し、取得した画像から、前記タグのカラーコード情報を復号することによるタグの読取方法。
【請求項8】
タグへの照射光を生成するための照射部、
前記タグからの再帰反射光を取り込むことの可能なカメラ、および
前記カメラで取得された画像に含まれるタグが有するカラーコード情報を復号する信号処理部とを含む読取装置を具備する物品認識システム。
【請求項9】
前記読取装置が、さらに表示装置を含む請求項8に記載の物品認識システム。
【請求項10】
前記表示装置に、前記カメラで取得したタグの画像を表示し、かかる画像を画面上で操作することにより、所望のタグを選択する手段をさらに具備する請求項9に記載の物品認識システム。
【請求項11】
前記表示装置がタッチパネルであり、前記カメラで取得した画像中に複数のタグが存在する場合に、前記タッチパネルの操作により、前記複数のタグの中から所望のタグを選択する手段をさらに具備する請求項9または10に記載の物品認識システム。
【請求項12】
前記読取装置が、照射光の範囲を調整可能な照射範囲調整機構を有し、前記カメラで取得された画像に複数のタグの画像が含まれる場合に、前記光照射範囲調節機構により照射光の範囲を縮小することにより、前記カメラで取得された画像に所望の数のタグの画像を捉える手段をさらに具備する請求項8〜11のいずれか一項に記載の物品認識システム。
【請求項13】
前記カメラで取得された画像に複数のタグの画像が含まれる場合に、前記カメラの撮像範囲を変更することにより、前記カメラで取得された画像に所望の数のタグの画像を捉える手段をさらに具備する請求項8〜11のいずれか一項に記載の物品認識システム。
【請求項14】
前記読取装置が、照射光の方向を調整可能な照射方向調整機構を有し、前記カメラで取得された画像にタグのカラーコード情報が含まれない場合に、前記調整可能な照射光調整機構により照射位置を変更することにより、タグの画像を走査する手段をさらに具備する請求項8〜13のいずれか一項に記載の物品認識システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−20813(P2009−20813A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184555(P2007−184555)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】