タグ通信装置、タグ通信装置の制御方法、タグ通信制御プログラム、および、タグ通信管理システム。
【課題】 電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、簡単な構成により、各RFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置を提供する。
【解決手段】 方向推定部11が、各アンテナ3におけるRFIDタグ1からの電波の到来方向を推定する。位置算出部14は、方向推定部11において推定された到来方向に基づいて、該RFIDタグ1の位置を算出する。
【解決手段】 方向推定部11が、各アンテナ3におけるRFIDタグ1からの電波の到来方向を推定する。位置算出部14は、方向推定部11において推定された到来方向に基づいて、該RFIDタグ1の位置を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置、タグ通信装置の制御方法、タグ通信制御プログラム、および、タグ通信管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグ(無線タグ)の利用が普及しつつある。無線タグは、バーコードを代替するものとして特に物流の分野において期待を集めており、近い将来において広く普及することが予想されている。
【0003】
現在、無線タグ向けの周波数帯域としては、13.56MHz帯、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯、2.45GHz帯などがある。このうち、UHF帯や2.45GHz帯の電波(radio wave)は、13.56MHz帯の電波に比べて通信距離を伸長し易いという利点がある。また、UHF帯の電波は、2.4GHz帯の電波に比べて、物陰に回り込み易いという利点がある。このため、UHF帯の電波を利用する無線タグおよびリーダ/ライタの開発が進められている。
【0004】
UHF帯の電波を利用する場合、現在主流である13.56MHz帯の電波を利用する場合に比べて、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な距離を数10cm程度から数m程度に伸長することができる。よって、UHF帯の電波を利用すれば、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な空間領域である通信エリアを比較的広範囲に拡大することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−198722号公報(2002年7月12日公開)
【特許文献2】特開平9−5431号公報(1997年1月10日公開)
【非特許文献1】「GPS技術の展望」、電子情報通信学会論文誌 B Vol. J84-B No.12 pp.2082-2091 2001年12月
【非特許文献2】「屋内でも位置情報サービスを利用できる、携帯電話を使った高精度位置測定技術」 http://www.hitachi.co.jp/Sp/TJ/2001/hrnjan01/hrn0111j.htm
【非特許文献3】「アレーアンテナによる適応信号処理」、第9章 アレーアンテナによる高分解能到来方向推定、菊間信良、科学技術出版、発行日(1998年11月25日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な距離を数m程度とする場合、通信エリアが広くなるので、通信エリア内に存在する無線タグが必要以上に多くなってしまうという弊害がある。そこで、通信エリアを特定の空間領域に制限するための手法が各種考えられる。
【0006】
図15(a)は、ビームフォーミングを重ね合わせることによって通信エリアを制御する例を示している。この例では、ビームフォーミングによって指向性を狭くしたアンテナ51が複数並べて配置されている。これにより、リーダ/ライタに備えられた各アンテナ51による各通信エリア52が重ね合わされた空間領域が、該リーダ/ライタによる通信エリアとして設定されることになる。
【0007】
図15(b)は、ビームスキャンによって通信エリアを制御する例を示している。この例では、指向性を狭くしたアンテナ51において、指向方向を所定の範囲で順次変化させることによって所定の空間領域をスキャンするようになっている。また、この例では、それぞれ異なる空間領域をスキャンする2つのアンテナ51・51を設け、各スキャン領域が重ね合わされた空間領域が、該リーダ/ライタによる通信エリアとして設定されている。
【0008】
以上の2つの例では、指向性の強いアンテナ51を利用しているので、指向性の弱いアンテナ51を利用する場合に比べて次のようなメリットがある。まず1つのアンテナ51がカバーする通信エリア52が狭いので、通信のコリジョンの発生を抑えることができ、通信の信頼性を向上させることができる。通信のコリジョンとは、あるアンテナ51に対応する通信エリア52内に多数の無線タグが同時に存在することにより、アンテナ51と多数の無線タグとの間で通信のコリジョン(衝突)が発生することである。この通信のコリジョンが発生すると、通信の信頼性が低下することになる。
【0009】
また、指向性の弱いアンテナを利用する場合には、リーダ/ライタからの直接波と床面や壁面にて反射した反射波との干渉により、リーダ/ライタが無線タグと通信できない通信不能部分が通信領域内に発生していたが、指向性の強いアンテナ51を利用する場合には、このような不具合を解消することができる。
【0010】
しかしながら、上記の方式には、次のような問題点がある。第1の問題点としては、マルチパスによる影響(通信不能領域)が生じることである。図16(a)は、マルチパスが生じている状態を示している。アンテナ51の指向性の方向に反射物54が存在している場合、アンテナ51から出射されたビームが反射物54で反射されることによって、アンテナ51の指向性の方向から外れた空間領域にもビームが照射される。これにより、想定している通信エリア以外の空間領域以外に位置する無線タグとも通信が行われてしまうことになる。
【0011】
このエリア歪みを防止するためには、リーダ/ライタが設置される場所ごとに、設置環境のチューニングを行ったり、マルチパスの影響を受けないような電波遮断構造を設けたりする必要がある。例えば、図16(b)に示すように、通信エリアにおいて、アンテナ51と対向する面などに電波吸収体を設けることによってマルチパスを防止している。
【0012】
また、第2の問題点としては、アンテナ51の構造が大きくなるということである。上記の方式のように、ビームフォーミングを重ね合わせたりスキャンさせたりすることによって通信エリアを制御する場合、アンテナ51の指向性を比較的強くする必要がある。アンテナ51は、例えばパッチアンテナやアレーアンテナなどによって構成されるが、指向性を強くするためには、アンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の数を大きくする必要がある。図17(a)は、指向性が比較的弱い場合のアンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の状態、図17(b)は、指向性が比較的強い場合のアンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の状態をそれぞれ示している。
【0013】
また、第3の問題点としては、ビームスキャンを行う場合、スキャン方向の分解能を高くするためには、アンテナ素子51a…に対して印加する電圧およびその位相の制御が複雑になることである。図18は、アンテナ51におけるスキャン方向を変化させる場合の様子を示している。同図に示すように、各アンテナ素子51aには電圧制御位相器51bが設けられている。そして、スキャン方向を変化させる場合には、各電圧制御位相器51bに対して、対応するアンテナ素子51a…に対して印加する電圧およびその位相を制御する必要がある。ここで、スキャン方向の変化の分解能を高めるためには、各電圧制御位相器51bに対する制御をより細かく行う必要が生じるので、制御演算が複雑化するとともに、各電圧制御位相器51bも高精度なものにする必要が生じる。
【0014】
一方、通信を行っている無線タグの位置を特定し、該無線タグの位置が所定の空間領域内にあるか否かを判定することによって、通信エリアを制限する手法も考えられる。ここで、上記の非特許文献1には、GPSを用いてGPS受信機の位置を特定する技術について開示されている。この技術では、GPS受信機が複数のGPS衛星からの電波の到達時間を測定することによって、各GPS衛星との距離を算出し、これに基づいて位置を特定するようになっている。
【0015】
また、上記の非特許文献2には、GPSによる位置検出と同様の方式を携帯電話機に適用することによって携帯電話機の位置を特定する技術が開示されている。この技術では、GPSにおけるGPS衛星の役割を携帯電話網における基地局が担うことによって位置計測が行われるようになっている。
【0016】
以上のような技術を無線タグの位置の特定に適用することによって、通信エリアを制限することが考えられるが、この場合には次のような問題が生じる。まず、無線タグ側において、例えば複数のアンテナとの距離を測定するための複雑な回路が必要となる。例えば、アンテナとの距離を測定するためには、電波の伝送時間を測定するための計時手段が必要となるが、数m以内程度の電波の伝送時間を測定するには、極めて高精度な計時を行う必要があるとともに、各アンテナとの時間の同期も極めて高精度に行う必要がある。無線タグは、基本的には、安価、小型、低消費電力の特性を有することが好ましいので、このような高機能の回路を無線タグに搭載することは好ましくないことになる。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、簡単な構成により、各RFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置、タグ通信装置の制御方法、タグ通信制御プログラム、および、タグ通信管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタグ通信装置は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、上記RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナと、上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定手段と、上記方向推定手段によって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るタグ通信装置の制御方法は、RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナを備え、該RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置の制御方法において、上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定ステップと、上記方向推定ステップによって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出ステップとを有することを特徴としている。
【0020】
上記の構成および方法では、まずタグ通信装置に1つまたは複数のアンテナが備えられている。そして、各アンテナにおけるRFIDタグからの電波の到来方向が推定されるようになっている。このように、1つまたは複数のアンテナにおいて、それぞれ電波の到来方向が推定されると、これらの到来方向が収束する点の近傍にRFIDタグが位置していることを推定することが可能となる。したがって、上記の構成および方法によれば、RFIDタグ側に何ら特別な構成を付加することなく、タグ通信装置側で、複数のアンテナで受信された信号の信号処理を行うことのみによって、通信可能なRFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置を提供することができる。
【0021】
なお、ESPRITと称される方向推定方式によれば、1つのアンテナを構成するアレーアンテナの2箇所を使って、それぞれの箇所における電波の到来方向を推定することが可能である。すなわち、この方向推定方式を用いれば、見かけ上では1つのアンテナによって本発明に係る上記の構成および方法を実現することが可能である。
【0022】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置が、所定の空間領域内にあるか否かを判定する領域判定手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0023】
従来では、所定の空間領域内に位置するRFIDタグとのみ通信を行うためには、例えばその所定の空間領域の周囲に電波吸収体などの構成を設置するなどの必要性が生じていた。これに対して、上記の構成によれば、位置算出手段によって算出された位置に基づいて、RFIDタグが所定の空間領域内にあるか否かを判定するようになっている。よって、RFIDタグが存在する可能性のある領域に特別な構成などを設けることなく、また、設置環境に影響を受けずに、エリア制限を行うことが可能となる。
【0024】
また、タグ通信装置側においても、信号処理によってエリア制限を行っているので、エリア制限の変更などを容易に行うことが可能となる。よって、よりフレキシビリティの高いタグ通信装置を提供することができる。
【0025】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記各アンテナにおいて実際に受信された上記RFIDタグからの電波の強度を測定する電波測定手段と、上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置と各アンテナとの距離に基づいて、各アンテナにおいて受信される電波の強度の比を推定する強度比推定手段と、上記位置算出手段が、上記電波測定手段によって測定された各アンテナにおける電波の強度の比と、上記強度比推定手段によって推定された各アンテナにおける電波の強度の比とに基づいて、当該位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置の妥当性を判断する構成としてもよい。
【0026】
各アンテナにおいてRFIDタグから受信される電波には、場合によっては前記したマルチパスの影響を受けていることがある。マルチパスの影響を受けている場合、位置算出手段によって算出されるRFIDタグの位置は実際の位置とは異なることになる。これに対して、上記の構成では、マルチパスを含む方向推定に基づいて検出されたRFIDタグの位置と、実際のRFIDタグ1の位置とでは、各アンテナ3までの距離が異なっていることを利用してマルチパスの検出を行っている。すなわち、マルチパスを含む方向推定が行われた場合には、実際の受信電波電力の比と算出位置に基づく受信電波電力の比とが異なることになるので、これを検出することによって、位置算出手段は、マルチパスに基づく位置検出の誤りを検出することができる。したがって、より精度の高い位置検出を行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記各アンテナが、複数のアンテナ素子を備えた構成となっており、上記方向推定手段が、上記複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンが行われ、到来方向が推定されるようになっているので、例えば物理的にアンテナの方向を変えてスキャンを行うというような構成と比較して、構造的により簡単な構成によってスキャンアンテナを実現することができる。よって、より安価なタグ通信装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記方向推定手段が、ヌル走査方式によって電波の到来方向を推定する構成としてもよい。
【0030】
ヌル走査方式によって到来方向を推定する場合、ビーム走査方式と比較して、同じアンテナ構成、同じ条件下において、より分解能の高い到来方向検出を行うことが可能となる。逆に言えば、同じ分解能とする場合、ヌル走査方式を用いれば、ビーム走査方式と比較して、アンテナにおけるアンテナ素子の数を少なくすることが可能となり、アンテナのサイズをより小さくすることが可能となる。
【0031】
なお、本発明に係るタグ通信装置が備える各手段は、コンピュータにより実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記各手段をコンピュータにて実現させることができる。
【0032】
また、本発明に係るタグ通信管理システムは、上記本発明に係るタグ通信装置と、上記タグ通信装置によって上記RFIDタグと通信が行われた結果に基づいて、該RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する管理装置とを備えていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する上で、その位置情報に関しても認識することが可能なシステムを容易に構築することが可能となる。
【0034】
また、本発明に係るタグ通信管理システムは、上記の構成において、上記管理装置が、所定の空間領域を撮影する撮影手段と、上記撮影手段における撮影方向および/または撮影範囲を制御する撮影制御手段とを備え、上記撮影制御手段が、上記タグ通信装置によって特定された上記RFIDタグの位置に基づいて撮影制御を行う構成としてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、RFIDタグとの通信結果により、特定の物品、人、または生物などを特定する必要が生じた場合に、特定されたRFIDタグの位置に向けて撮影手段による撮影を行うことによって、該当物の特定およびその証拠を残すことが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るタグ通信装置、およびその制御方法は、以上のように、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定し、この推定された到来方向に基づいてRFIDタグの位置を算出するようになっている。よって、RFIDタグ側に何ら特別な構成を付加することなく、タグ通信装置側で、複数のアンテナで受信された信号の信号処理を行うことのみによって、通信可能なRFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態について図1ないし図14に基づいて説明すると以下の通りである。
【0038】
(リーダ/ライタの構成)
図1は、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムの概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、RFIDタグ通信システムは、1つ以上のRFIDタグ1…およびリーダ/ライタ(タグ通信装置)2を備えた構成となっている。
【0039】
RFIDタグ1は、各種物品に取り付けられるものであり、取り付けられている物品あるいはそれに関連する物や人に関する情報を記憶するものである。このRFIDタグ1は、無線通信用IC(Integrated Circuit)、記憶部、およびアンテナなどを備えた構成となっている。一般的なRFIDタグ1は、電池などの電源を有しておらず、リーダ/ライタ2から電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダ/ライタ2と無線通信を行う。
【0040】
リーダ/ライタ2は、各RFIDタグ1との間で無線通信を行い、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行うものである。なお、本実施形態では、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行うものとしているが、これに限定されるものではなく、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み出しのみを行うRFIDリーダであってもよい。
【0041】
本実施形態では、リーダ/ライタ2が送信する電波の周波数帯域は、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯としている。このような周波数帯域の電波を用いることにより、リーダ/ライタ2は、数m程度の距離範囲内に位置するRFIDタグ1と通信可能となる。
【0042】
リーダ/ライタ2は、2つ以上のアンテナ3、位置検出部4、エリア判定部(領域判定手段)5、タグ通信制御部6、エリア情報記憶部7、および外部通信部8を備えた構成となっている。
【0043】
アンテナ3は、RFIDタグ1…に対して電波を送信するとともに、RFIDタグ1…から送られてきた電波を受信するためのアンテナである。このアンテナ3は、例えばパッチアンテナやアレーアンテナなどによって構成され、複数のアンテナ素子および各アンテナ素子に対応した電圧制御位相器などを備えた構成となっている。
【0044】
位置検出部4は、各アンテナ3における電波の受信状態に基づいて、各RFIDタグ1の位置を検出するブロックである。この位置検出部4は、方向推定部(方向推定手段)11、電力計測部(電波測定手段)12、電力比推定部(強度比推定手段)13、および位置算出部(位置算出手段)14を備えている。
【0045】
方向推定部11は、各アンテナ3において特定のRFIDタグ1からの電波が受信された場合に、各アンテナ3における該RFIDタグ1が位置する方向(角度)を推定する処理を行うブロックである。この方向推定の処理の詳細については後述する。
【0046】
電力計測部12は、各アンテナ3において特定のRFIDタグ1からの電波が受信された場合に、各アンテナ3における受信電波の強度を計測するブロックである。具体的には、電力計測部12は、各アンテナ3における受信電波の電力を計測している。なお、受信電波の強度は、電力を計測することに限らず、その他、電波の強度を測定することが可能な物理量であれば、どのような物理量を計測してもよい。
【0047】
位置算出部14は、方向推定部11によって推定された、各アンテナ3における特定のRFIDタグ1が位置する方向に基づいて、該RFIDタグ1の位置を算出するブロックである。この位置の算出処理の詳細については後述する。
【0048】
電力比推定部13は、位置算出部14によって算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、各アンテナ3における該RFIDタグ1からの受信電波の強度の比を推定する処理を行うブロックである。ここで推定された各アンテナ3における推定受信電波強度の比と、実際に電力計測部12によって計測された実受信電波強度の比とが位置算出部14において比較され、これによってマルチパスに基づく位置検出の誤りが検出される。なお、電力比推定処理の詳細および位置検出の誤りの検出処理の詳細については後述する。
【0049】
エリア判定部5は、位置算出部14において算出された位置に基づいて、該RFIDタグ1が所定の空間領域(通信エリア)内に位置しているか否かを判定するブロックである。通信エリアがどのような空間領域であるかについてのエリア情報は、エリア情報記憶部7に記憶されている。エリア判定部5は、位置算出部14において算出された位置が、上記エリア情報で規定される通信エリア内に存在するか否かを判定することによって、該RFIDタグ1が通信エリア内に存在しているかを判定する。
【0050】
タグ通信制御部6は、エリア判定部5によって通信エリア内に存在すると判定されたRFIDタグ1に関して、アンテナ3を介して情報の読み出しおよび/または書き込み制御を行うブロックである。
【0051】
外部通信部8は、リーダ/ライタ2において読み出されたRFIDタグ1の情報を外部装置に送信したり、外部装置からのRFIDタグ1に対する書き込み情報を受信したりするブロックである。外部装置と外部通信部8との間は、有線または無線によって通信接続されている。ここで、リーダ/ライタ2によるRFIDタグ1に対する読み書き処理に基づいて動作する外部装置が、該リーダ/ライタ2を内蔵する構成であっても構わない。
【0052】
なお、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報は、リーダ/ライタ2が設置される環境に応じて設定されることになる。このエリア情報の設定は、例えば外部通信部8を介して外部装置から行われるようになっていてもよいし、リーダ/ライタ2に、エリア情報を入力するためのユーザインターフェースが備えられていてもよい。
【0053】
なお、上記リーダ/ライタ2が備える位置検出部4、エリア判定部5、タグ通信制御部6、および外部通信部8は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、位置検出部4、エリア判定部5、タグ通信制御部6、および外部通信部8の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0054】
この記録媒体としては、コンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0055】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0056】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0057】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0058】
(アンテナにおける方向推定)
次に、方向推定部11が、アンテナ3において受信された電波に基づいて、該アンテナ3に対してどの方向に受信電波の送信元となるRFIDタグ1が位置するかを推定する方法について説明する。図2(a)は、アンテナ3が備えるアンテナ素子3a…の出力に基づいて方向推定を行う方式を概念的に示す図である。同図に示すように、方向推定部11は、各アンテナ素子51aの出力に対してそれぞれ異なる重み付けWnを与え、これらの和の信号に基づいて、特定の方向の電波強度を検出する。そして、各アンテナ素子51aの出力に対する重み付けWnの組み合わせを変化させることによってスキャンを信号処理によって実現している。図2(b)および図2(c)は、重み付けWnの組み合わせを変化させた場合の指向性(メインローブ)の変化を示している。
【0059】
このように、複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定する技術はDOA(Direction Of Arrival)と呼ばれている。DOAの方式としては、Beamformer法、Capon法、LP(Linear Prediction)法、Min-Norm法、MUSIC法、およびESPRIT法などが挙げられる。これらの方式のうち、Beamformer法、およびCapon法は、ビーム走査方式による方向推定方式に分類され、LP法、Min-Norm法、MUSIC法、およびESPRIT法は、ヌル走査方式による方向推定方式に分類される。
【0060】
ビーム走査方式は、受信電波の電力の大きさに基づいて到来方向を推定する方式である。図3(a)は、ビーム走査方式における指向性の例を示したグラフである。ビーム走査方式の場合、メインローブの太さ(ビーム幅)が角度分解能に影響する。よって、分解能を上げるためには、アンテナ3におけるアンテナ素子3aの数を増やすなどを行ってビーム幅を小さくする必要がある。
【0061】
一方、ヌル走査方式は、ビーム走査方式の発想を逆にしたものであり、受信電波の電力の小ささに基づいて到来方向を推定する方式である。図3(b)は、ヌル走査方式における指向性の例を示したグラフである。ヌル走査方式の場合、少ないアレイ数(アンテナ素子数)でも高精度な方向分解能が得られるというメリットがある。
【0062】
ここで、ビーム走査方式とヌル走査方式とにおける角度分解能の精度の違いについて説明する。図4(a)は、ビーム走査方式の例としてBeamformer法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフであり、図4(b)は、ヌル走査方式の例としてLP法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は方向に対応する角度を示しており、縦軸は角度に対応する強度を示している。強度が強い角度から電波が到来していると判定されることになる。なお、どちらの例においても、6個のアンテナ素子をλ(到来波波長)/2の間隔でリニアに並べたアンテナが用いられ、3つの到来波が0°、10°、および60°の角度方向から同じ強度でアンテナに到来している。また、SNR(Signal to Noise Ratio)は20dBとなっている。
【0063】
これらのグラフに示すように、Beamformer法では、分解能が比較的低く、0°および10°からの到来波の検出が重なってしまって不明瞭になっている一方、LP法では、3つの到来波が精度良く検出されていることがわかる。
【0064】
このように、ヌル走査方式によるLP法を用いれば、ビーム走査方式と比較して、同じアンテナ構成、同じ条件下において、より分解能の高い到来方向検出を行うことが可能となる。逆に言えば、同じ分解能とする場合、ヌル走査方式によるLP法を用いれば、ビーム走査方式と比較して、アンテナにおけるアンテナ素子の数を少なくすることが可能となり、アンテナのサイズをより小さくすることが可能となる。図5(a)および図5(b)に、同じ分解能とする場合の、ビーム走査方式におけるアンテナ3の構成およびヌル走査方式におけるアンテナ3の構成をそれぞれ示す。
【0065】
以上のように、ヌル走査方式によれば、アンテナ3のサイズの増大を抑えつつ、到来方向の角度分解能を高くすることが可能となっている。本実施形態では、方向推定部11は、ヌル走査方式のLP法を用いて方向推定を行うものとする。なお、方向推定部11が採用するDOAの方式は、LP法に限定されるものではなく、ヌル走査方式の他の方式であってもよい。また、アンテナ3のサイズの許容量や、必要とされる分解能によっては、方向推定部11がビーム走査方式を採用しても構わない。
【0066】
(位置算出処理)
次に、位置算出部14が、方向推定部11によって推定された各アンテナ3におけるRFIDタグ1の配置方向に基づいて、該RFIDタグ1の配置位置を算出する方法について説明する。図6は、2つのアンテナ3X・3Yによる到来方向推定に基づいて、RFIDタグ1の位置を推定する方法を説明する図である。
【0067】
まず、方向推定部11は、アンテナ3Xにおける受信状況に基づいて、RFIDタグ1の配置方向を示す角度がθ1であることを推定する。また、同様にして、方向推定部11は、アンテナ3Yにおける受信状況に基づいて、RFIDタグ1の配置方向を示す角度がθ2であることを推定する。
【0068】
そして、位置算出部14は、上記のθ1およびθ2、および、アンテナ3Xおよびアンテナ3Yの配置位置P1・P2に基づいて、RFIDタグ1の位置を算出する。具体的には、アンテナ3Xから角度θ1の方向に向く直線と、アンテナ3Yから角度θ2の方向に向く直線との交点をRFIDタグ1の位置として算出する。
【0069】
(マルチパス検出処理)
次に、位置算出部14が、マルチパスに基づく位置検出の誤りの検出方法について説明する。まず図7を参照しながら、マルチパスによって誤った位置検出が行われる現象について説明する。同図において、RFIDタグ1は、P11で示される位置に配置されている。2つのアンテナ3X・3Yが、このRFIDタグ1から直接電波を受信していれば、位置P11を正確に検出することが可能である。しかしながら、同図に示すように、反射物Xが存在している場合、例えばアンテナ3Yが、RFIDタグ1から出射し、反射物Xで反射された電波を受信した場合には、方向推定部11は、アンテナ3Yにおける電波の到来方向を、実際のRFIDタグ1が配置される方向とは異なる方向として認識することになる。この結果、位置算出部14は、RFIDタグ1の配置位置を、実際の位置とは異なる位置P12として算出してしまうことになる。
【0070】
そこで、位置算出部14は、電力比推定部13によって推定された各アンテナ3における推定受信電波強度の比と、実際に電力計測部12によって計測された実受信電波強度の比とを比較することによって、位置検出の誤りを検出する。
【0071】
詳しく説明すると、まず電力計測部12において、アンテナ3Xにおける受信電波の電力PX、およびアンテナ3Yにおける受信電波の電力PYが計測される。一方、電力比推定部13は、位置算出部14において算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、アンテナ3XからRFIDタグ1までの距離、およびアンテナ3YからRFIDタグ1までの距離を認識する。そして、これらの距離に基づいて、アンテナ3Xにおける受信電波の推定電力PX’、およびアンテナ3Yにおける受信電波の推定電力PY’との比を算出する。
【0072】
その後、位置算出部14は、PX/PYとPX’/PY’との差を算出し、この差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合に、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定する。すなわち、位置算出部14による位置検出の誤りの検出は、次のような原理を用いていることになる。まず、マルチパスを含む方向推定に基づいて検出されたRFIDタグ1の位置と、実際のRFIDタグ1の位置とでは、各アンテナ3までの距離が異なっていることになる。よって、マルチパスを含む方向推定が行われた場合には、実際の受信電波電力の比と算出位置に基づく受信電波電力の比とが異なることになる。以上のような処理により、位置算出部14は、マルチパスに基づく位置検出の誤りを検出することができる。
【0073】
(位置検出によるエリア判定)
次に、エリア判定部5におけるエリア判定処理について説明する。図8は、エリア判定処理を説明する図である。エリア判定部5は、位置算出部14から、算出されたRFIDタグ1の位置情報を取得するとともに、エリア情報記憶部7に記憶されている通信エリアに関するエリア情報を読み出す。
【0074】
例えば、図8に示す例において、通信エリアが21で示される空間領域であり、算出されたRFIDタグ1の位置が位置P21であった場合、位置P21は通信エリア21内の位置となるので、該RFIDタグ1は通信エリア内に存在するものとして認識される。一方、算出されたRFIDタグ1の位置が位置P22であった場合、位置P22は通信エリア21の外の位置となるので、該RFIDタグ1は通信エリアの外に存在するものとして認識される。
【0075】
ここで、通信エリア内に障害物などが存在する場合、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報に、この障害物の位置情報を含めるようにしてもよい。この場合、位置算出部14によって算出された位置が、通信エリア内であったとしても、障害物が位置する空間領域に位置すると判定された場合には、位置の誤検出があったものとして認識することができる。
【0076】
(リーダ/ライタにおける処理の流れ)
次に、リーダ/ライタ2における処理の流れについて、図9に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。まずステップ1(以降、S1のように称する)において、初期設定が行われる。初期設定としては、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報の設定、および、位置算出部14においてマルチパスによる誤検出の検出処理に用いられる所定値Psの設定などが上げられる。この初期設定処理は、前記したように、例えば外部通信部8を介して外部装置から行われてもよいし、リーダ/ライタ2に備えられている、エリア情報を入力するためのユーザインターフェースによって入力されてもよい。この初期設定は、例えばリーダ/ライタ2を最初に設置する際などに行われる。一旦初期設定が行われれば、以降、初期設定の変更の必要がない限り、リーダ/ライタ2の使用開始(電源投入)時には初期設定は行われずに、次のS2からの処理が開始されることになる。
【0077】
初期設定が行われた後は、各アンテナ3においてRFIDタグ1からの電波の受信が待機される。そして、S2において、各アンテナ3においてRFIDタグ1からの電波が受信されると、各アンテナ3における到来角度推定処理が方向推定部11によって行われる。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける到来角度θ1、θ2が方向推定部11によって算出される。
【0078】
次に、S3において、各アンテナ3において受信されたRFIDタグ1からの電波の電力が、電力計測部12によって計測される。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける受信電力PX、PYが電力計測部12によって計測される。
【0079】
次に、S4において、S2において方向推定部11によって算出された各アンテナにおける到来角度に基づいて、位置算出部14が該RFIDタグ1の位置を算出する。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける到来角度θ1、θ2に基づいて、該RFIDタグ1の位置が算出される。
【0080】
次に、S5において、S4において位置算出部14によって算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、電力比推定部13が各アンテナ3における該RFIDタグ1からの受信電波の強度の比(パワー比)を推定する処理を行う。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、受信電波の強度の比PX’/PY’が推定される。
【0081】
次に、S6において、位置算出部14が、マルチパスに基づく位置検出の誤りの検出処理を行う。具体的には、位置算出部14は、PX/PYとPX’/PY’との差を算出し、この差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合に、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定する。
【0082】
S6においてNO、すなわち、PX/PYとPX’/PY’との差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合には、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定され(S7)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。一方、S6においてYES、すなわち、PX/PYとPX’/PY’との差の絶対値が所定値Psよりも小さい場合には、この位置検出はマルチパスの影響を受けていないものと判定され、次のS8からの処理が行われる。
【0083】
S8では、エリア判定部5が、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア内にあるか否かが判定される。S8においてNO、すなわち、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア外であると判定された場合には、該RFIDタグ1は通信エリアの外に位置しているものと判定され(S9)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。
【0084】
一方、S8においてYES、すなわち、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア内であると判定された場合には、S10において、エリア判定部5が、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していないかを判定する。S10においてNO、すなわち、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していると判定された場合には、算出された位置は誤計測によるものであると判定され(S11)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。
【0085】
一方、S10においてYES、すなわち、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していないと判定された場合には、位置の算出は適切に行われたものと判定され、該RFIDタグ1との通信処理がタグ通信制御部6の制御のもとに行われる(S12)。また、タグ通信制御部6による通信結果は、外部通信部8を介して外部装置に送信される。さらに、外部通信部8を介して外部装置から受信された通信指示に基づいて、タグ通信制御部6が通信処理を行う。その後、リーダ/ライタ2の動作停止指示が行われるまで、S2からの処理が繰り返される。
【0086】
(アンテナを3つ以上設ける場合の位置算出)
上記の例では、2つのアンテナ3・3を設けてRFIDタグ1の位置算出を行うようになっていたが、アンテナ3を3つ以上設けるとともに、これら全てのアンテナ3…による到来方向推定に基づいてRFIDタグ1の位置算出を行うようにしてもよい。この場合、複数のアンテナ3…の中から、2つのアンテナ3・3を取り出す組み合わせを想定し、各組み合わせによって算出される位置に基づいてRFIDタグ1の位置を特定することになる。より具体的には、各組み合わせによって算出される位置から多数決によってRFIDタグ1の位置が特定される。
【0087】
図10は、4つのアンテナ3X・3Y・3W・3Zを設けた場合の位置算出方法を説明する図である。この場合、アンテナ3Xとアンテナ3Y、アンテナ3Xとアンテナ3W、アンテナ3Xとアンテナ3Z、アンテナ3Yとアンテナ3W、アンテナ3Yとアンテナ3Z、およびアンテナ3Wとアンテナ3Zの6通りの位置が算出されることになる。
【0088】
同図に示す場合、アンテナ3Xとアンテナ3Y、アンテナ3Xとアンテナ3Z、およびアンテナ3Yとアンテナ3Zによって算出された位置がP31、アンテナ3Yとアンテナ3Wによって算出された位置がP32、アンテナ3Xとアンテナ3Wによって算出された位置がP33、および、アンテナ3Wとアンテナ3Zによって算出された位置がP34となっている。このような状況の場合、位置P31を算出したアンテナ3の組み合わせが多数あるので、位置算出部14は、この位置P31を該当RFIDタグ1の位置として算出する。すなわち、位置P32、位置P33、および位置P34がマルチパスの影響による誤検出であると認識されることになる。同図に示す例では、マルチパスによりアンテナ3WにおけるRFIDタグ1の方向推定が誤っていることが原因で、位置P32、位置P33、および位置P34が検出されている。
【0089】
このように、アンテナ3を3つ以上設けることによって、マルチパスによる位置検出の誤りを検出することが可能となる。よって、例えばパワー比の比較によって検出されなかったマルチパスの影響を、上記の位置検出によって検出することが可能となる。したがって、より的確な位置算出を行うことが可能となる。
【0090】
なお、各アンテナ3の組み合わせによって算出される位置が、比較的小さい所定の距離範囲内でずれている場合には、方向推定の誤差によって位置のずれが生じていることが予想される。よって、大きく位置が離れているものを除外し、所定の距離範囲内に収まっている位置の平均位置を、RFIDタグ1の位置として算出するようにしてもよい。
【0091】
(RFIDタグ通信システムの適用例)
次に、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムを具体的なシステムに適用する例について説明する。図11は、物品の流通が行われるシステムにおいて、流通される物品の検査・確認などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。同図に示す例では、フォークリフトによって搬送される貨物41の内部に、RFIDタグ1が取り付けられた物品が複数格納されている。そして、このフォークリフトが通信エリア21を通過することによって、リーダ/ライタ2が各RFIDタグ1と通信を行い、各物品の流通を管理することが可能となる。
【0092】
このようなシステムの場合、通信エリア21が明確に設定されないRFIDタグ通信システムであると、通信を行う必要のないRFIDタグ1がリーダ/ライタ2から比較的近い場所に位置していると、そのRFIDタグ1とも通信を行ってしまうことになる。よって、明確に通信エリア21を設定する必要があるが、環境的に電波吸収体などを設置することが困難である場合が多い。これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、リーダ/ライタ2における処理によって通信エリア21を確定するので、環境に対しては何ら設置する必要はない。すなわち、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、設置環境によらずに容易にセッティングを行うことが可能となる。
【0093】
図12は、店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。従来、例えばCDショップなどでは、商品としてのCDなどにRFIDタグを取り付けておくとともに、店舗の入口にRFIDタグと通信を行うリーダ/ライタを備えたゲートを設けるシステムが採用されている。しかしながら、このようなシステムの場合、店舗への入口の全てにゲートを設ける必要があり、図12に示すようなオープンなスペースに店舗を設ける場合には、適用が難しいという問題があった。
【0094】
これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、通信エリア21を図12に示すように店舗の全体をカバーするようなエリアに設定することによって、ゲートなどを設ける必要をなくすことができる。よって、様々な店舗環境において柔軟にRFIDタグ通信システムを構築することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、店舗全体を通信エリア21に設定することが可能となるので、商品の盗難監視のみならず、ある商品がどこにあるかを検知することも可能となる。
【0096】
図13は、例えば駅や映画館などの改札が必要となる場所に本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。昨今では、例えば駅の改札において、RFIDタグを用いた改札を行うシステムが普及しているが、このシステムでは、ゲートにリーダ/ライタを設けることによって改札を行っている。これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、改札が行われる通路の全体を通信エリア21に設定することによって、ゲートを設けることなく改札を行うことが可能となる。なお、この場合には、RFIDタグ1を利用者が所持する携帯電話機に内蔵させた構成としてもよい。
【0097】
(RFIDタグ通信システムのシステム構成例)
次に、上記したRFIDタグ通信システムに、監視カメラを設けたシステムについて説明する。例えば上記した図13に示すシステム適用例において、RFIDタグ1との通信結果により、通過を許可できない利用者が存在した場合、その不許可利用者を特定する必要が生じることが考えられる。この場合、リーダ/ライタ2によって特定された不許可利用者の位置に向けて監視カメラによる撮影を行うことによって、不許可利用者の特定およびその証拠を残すことが可能となる。図14は、RFIDタグ通信システムに監視カメラ(撮影手段)43を設けた場合の構成例を示す。
【0098】
同図に示すように、監視カメラ43は、通信部44、方向制御部(撮影制御手段)45、ズーム制御部(撮影制御手段)46、および撮像部47を備えた構成となっている。通信部44は、リーダ/ライタ2と通信するものであり、リーダ/ライタ2から撮影すべき位置に関する情報を取得する。
【0099】
方向制御部45は、通信部44が受信した撮影すべき位置に関する情報に基づいて、撮像部47による撮影方向の変更制御を行う。ズーム制御部46は、通信部44が受信した撮影すべき位置と撮像部47との距離に基づいて、撮像部47におけるズームの制御を行う。以上のような構成によって、不許可利用者の撮影を適切に行うことが可能となる。
【0100】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るタグ通信装置およびこれを備えたタグ通信システムは、例えば上記した流通される物品の検査・確認などを行うシステム、店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステム、駅や映画館などの改札が必要となる場所に設置される改札システムなどの用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態に係るRFIDタグ通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同図(a)は、アンテナが備えるアンテナ素子の出力に基づいてスキャンを行うことを概念的に示す図であり、同図(b)および同図(c)は、重み付けWnの組み合わせを変化させた場合の指向性の変化を示す図である。
【図3】同図(a)は、ビーム走査方式における指向性の例を示したグラフであり、同図(b)は、ヌル走査方式における指向性の例を示したグラフである。
【図4】同図(a)は、ビーム走査方式の例としてBeamformer法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフであり、同図(b)は、ヌル走査方式の例としてLP法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフである。
【図5】同図(a)および同図(b)は、同じ分解能とする場合の、ビーム走査方式におけるアンテナの構成およびヌル走査方式におけるアンテナの構成をそれぞれ示す概略図である。
【図6】2つのアンテナによる到来方向推定に基づいて、RFIDタグの位置を推定する方法を説明する図である。
【図7】マルチパスによって誤った位置検出が行われる現象を説明する図である。
【図8】エリア判定処理を説明する図である。
【図9】リーダ/ライタにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】4つのアンテナを設けた場合の位置算出方法を説明する図である。
【図11】物品の流通が行われるシステムにおいて、流通される物品の検査・確認などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図12】店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図13】例えば駅や映画館などの改札が必要となる場所に本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図14】RFIDタグ通信システムに、監視カメラを設けたシステムの構成例を示すブロック図である。
【図15】同図(a)は、ビームフォーミングを重ね合わせることによって通信エリアを制御する例を示す図であり、同図(b)は、ビームスキャンによって通信エリアを制御する例を示す図である。
【図16】同図(a)は、マルチパスが生じている状態を示す図であり、同図(b)は、電波吸収体を設けることによってマルチパスを防止する例を示す図である。
【図17】同図(a)は、指向性が比較的弱い場合のアンテナが備えるアンテナ素子の状態、同図(b)は、指向性が比較的強い場合のアンテナが備えるアンテナ素子の状態をそれぞれ示す図である。
【図18】アンテナにおけるスキャン方向を変化させる場合の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 RFIDタグ
2 リーダ/ライタ(タグ通信装置)
3・3X・3Y・3W・3Z アンテナ
3a アンテナ素子
4 位置検出部
5 エリア判定部(領域判定手段)
6 タグ通信制御部
7 エリア情報記憶部
8 外部通信部
11 方向推定部(方向推定手段)
12 電力計測部(電波測定手段)
13 電力比推定部(強度比推定手段)
14 位置算出部(位置算出手段)
21 通信エリア
43 監視カメラ(撮影手段)
44 通信部
45 方向制御部(撮影制御手段)
46 ズーム制御部(撮影制御手段)
47 撮像部
X 反射物
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置、タグ通信装置の制御方法、タグ通信制御プログラム、および、タグ通信管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグ(無線タグ)の利用が普及しつつある。無線タグは、バーコードを代替するものとして特に物流の分野において期待を集めており、近い将来において広く普及することが予想されている。
【0003】
現在、無線タグ向けの周波数帯域としては、13.56MHz帯、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯、2.45GHz帯などがある。このうち、UHF帯や2.45GHz帯の電波(radio wave)は、13.56MHz帯の電波に比べて通信距離を伸長し易いという利点がある。また、UHF帯の電波は、2.4GHz帯の電波に比べて、物陰に回り込み易いという利点がある。このため、UHF帯の電波を利用する無線タグおよびリーダ/ライタの開発が進められている。
【0004】
UHF帯の電波を利用する場合、現在主流である13.56MHz帯の電波を利用する場合に比べて、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な距離を数10cm程度から数m程度に伸長することができる。よって、UHF帯の電波を利用すれば、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な空間領域である通信エリアを比較的広範囲に拡大することが可能となる。
【特許文献1】特開2002−198722号公報(2002年7月12日公開)
【特許文献2】特開平9−5431号公報(1997年1月10日公開)
【非特許文献1】「GPS技術の展望」、電子情報通信学会論文誌 B Vol. J84-B No.12 pp.2082-2091 2001年12月
【非特許文献2】「屋内でも位置情報サービスを利用できる、携帯電話を使った高精度位置測定技術」 http://www.hitachi.co.jp/Sp/TJ/2001/hrnjan01/hrn0111j.htm
【非特許文献3】「アレーアンテナによる適応信号処理」、第9章 アレーアンテナによる高分解能到来方向推定、菊間信良、科学技術出版、発行日(1998年11月25日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、リーダ/ライタが無線タグと通信可能な距離を数m程度とする場合、通信エリアが広くなるので、通信エリア内に存在する無線タグが必要以上に多くなってしまうという弊害がある。そこで、通信エリアを特定の空間領域に制限するための手法が各種考えられる。
【0006】
図15(a)は、ビームフォーミングを重ね合わせることによって通信エリアを制御する例を示している。この例では、ビームフォーミングによって指向性を狭くしたアンテナ51が複数並べて配置されている。これにより、リーダ/ライタに備えられた各アンテナ51による各通信エリア52が重ね合わされた空間領域が、該リーダ/ライタによる通信エリアとして設定されることになる。
【0007】
図15(b)は、ビームスキャンによって通信エリアを制御する例を示している。この例では、指向性を狭くしたアンテナ51において、指向方向を所定の範囲で順次変化させることによって所定の空間領域をスキャンするようになっている。また、この例では、それぞれ異なる空間領域をスキャンする2つのアンテナ51・51を設け、各スキャン領域が重ね合わされた空間領域が、該リーダ/ライタによる通信エリアとして設定されている。
【0008】
以上の2つの例では、指向性の強いアンテナ51を利用しているので、指向性の弱いアンテナ51を利用する場合に比べて次のようなメリットがある。まず1つのアンテナ51がカバーする通信エリア52が狭いので、通信のコリジョンの発生を抑えることができ、通信の信頼性を向上させることができる。通信のコリジョンとは、あるアンテナ51に対応する通信エリア52内に多数の無線タグが同時に存在することにより、アンテナ51と多数の無線タグとの間で通信のコリジョン(衝突)が発生することである。この通信のコリジョンが発生すると、通信の信頼性が低下することになる。
【0009】
また、指向性の弱いアンテナを利用する場合には、リーダ/ライタからの直接波と床面や壁面にて反射した反射波との干渉により、リーダ/ライタが無線タグと通信できない通信不能部分が通信領域内に発生していたが、指向性の強いアンテナ51を利用する場合には、このような不具合を解消することができる。
【0010】
しかしながら、上記の方式には、次のような問題点がある。第1の問題点としては、マルチパスによる影響(通信不能領域)が生じることである。図16(a)は、マルチパスが生じている状態を示している。アンテナ51の指向性の方向に反射物54が存在している場合、アンテナ51から出射されたビームが反射物54で反射されることによって、アンテナ51の指向性の方向から外れた空間領域にもビームが照射される。これにより、想定している通信エリア以外の空間領域以外に位置する無線タグとも通信が行われてしまうことになる。
【0011】
このエリア歪みを防止するためには、リーダ/ライタが設置される場所ごとに、設置環境のチューニングを行ったり、マルチパスの影響を受けないような電波遮断構造を設けたりする必要がある。例えば、図16(b)に示すように、通信エリアにおいて、アンテナ51と対向する面などに電波吸収体を設けることによってマルチパスを防止している。
【0012】
また、第2の問題点としては、アンテナ51の構造が大きくなるということである。上記の方式のように、ビームフォーミングを重ね合わせたりスキャンさせたりすることによって通信エリアを制御する場合、アンテナ51の指向性を比較的強くする必要がある。アンテナ51は、例えばパッチアンテナやアレーアンテナなどによって構成されるが、指向性を強くするためには、アンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の数を大きくする必要がある。図17(a)は、指向性が比較的弱い場合のアンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の状態、図17(b)は、指向性が比較的強い場合のアンテナ51が備えるアンテナ素子51a…の状態をそれぞれ示している。
【0013】
また、第3の問題点としては、ビームスキャンを行う場合、スキャン方向の分解能を高くするためには、アンテナ素子51a…に対して印加する電圧およびその位相の制御が複雑になることである。図18は、アンテナ51におけるスキャン方向を変化させる場合の様子を示している。同図に示すように、各アンテナ素子51aには電圧制御位相器51bが設けられている。そして、スキャン方向を変化させる場合には、各電圧制御位相器51bに対して、対応するアンテナ素子51a…に対して印加する電圧およびその位相を制御する必要がある。ここで、スキャン方向の変化の分解能を高めるためには、各電圧制御位相器51bに対する制御をより細かく行う必要が生じるので、制御演算が複雑化するとともに、各電圧制御位相器51bも高精度なものにする必要が生じる。
【0014】
一方、通信を行っている無線タグの位置を特定し、該無線タグの位置が所定の空間領域内にあるか否かを判定することによって、通信エリアを制限する手法も考えられる。ここで、上記の非特許文献1には、GPSを用いてGPS受信機の位置を特定する技術について開示されている。この技術では、GPS受信機が複数のGPS衛星からの電波の到達時間を測定することによって、各GPS衛星との距離を算出し、これに基づいて位置を特定するようになっている。
【0015】
また、上記の非特許文献2には、GPSによる位置検出と同様の方式を携帯電話機に適用することによって携帯電話機の位置を特定する技術が開示されている。この技術では、GPSにおけるGPS衛星の役割を携帯電話網における基地局が担うことによって位置計測が行われるようになっている。
【0016】
以上のような技術を無線タグの位置の特定に適用することによって、通信エリアを制限することが考えられるが、この場合には次のような問題が生じる。まず、無線タグ側において、例えば複数のアンテナとの距離を測定するための複雑な回路が必要となる。例えば、アンテナとの距離を測定するためには、電波の伝送時間を測定するための計時手段が必要となるが、数m以内程度の電波の伝送時間を測定するには、極めて高精度な計時を行う必要があるとともに、各アンテナとの時間の同期も極めて高精度に行う必要がある。無線タグは、基本的には、安価、小型、低消費電力の特性を有することが好ましいので、このような高機能の回路を無線タグに搭載することは好ましくないことになる。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、簡単な構成により、各RFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置、タグ通信装置の制御方法、タグ通信制御プログラム、および、タグ通信管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタグ通信装置は、電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、上記RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナと、上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定手段と、上記方向推定手段によって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0019】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るタグ通信装置の制御方法は、RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナを備え、該RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置の制御方法において、上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定ステップと、上記方向推定ステップによって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出ステップとを有することを特徴としている。
【0020】
上記の構成および方法では、まずタグ通信装置に1つまたは複数のアンテナが備えられている。そして、各アンテナにおけるRFIDタグからの電波の到来方向が推定されるようになっている。このように、1つまたは複数のアンテナにおいて、それぞれ電波の到来方向が推定されると、これらの到来方向が収束する点の近傍にRFIDタグが位置していることを推定することが可能となる。したがって、上記の構成および方法によれば、RFIDタグ側に何ら特別な構成を付加することなく、タグ通信装置側で、複数のアンテナで受信された信号の信号処理を行うことのみによって、通信可能なRFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置を提供することができる。
【0021】
なお、ESPRITと称される方向推定方式によれば、1つのアンテナを構成するアレーアンテナの2箇所を使って、それぞれの箇所における電波の到来方向を推定することが可能である。すなわち、この方向推定方式を用いれば、見かけ上では1つのアンテナによって本発明に係る上記の構成および方法を実現することが可能である。
【0022】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置が、所定の空間領域内にあるか否かを判定する領域判定手段をさらに備えている構成としてもよい。
【0023】
従来では、所定の空間領域内に位置するRFIDタグとのみ通信を行うためには、例えばその所定の空間領域の周囲に電波吸収体などの構成を設置するなどの必要性が生じていた。これに対して、上記の構成によれば、位置算出手段によって算出された位置に基づいて、RFIDタグが所定の空間領域内にあるか否かを判定するようになっている。よって、RFIDタグが存在する可能性のある領域に特別な構成などを設けることなく、また、設置環境に影響を受けずに、エリア制限を行うことが可能となる。
【0024】
また、タグ通信装置側においても、信号処理によってエリア制限を行っているので、エリア制限の変更などを容易に行うことが可能となる。よって、よりフレキシビリティの高いタグ通信装置を提供することができる。
【0025】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記各アンテナにおいて実際に受信された上記RFIDタグからの電波の強度を測定する電波測定手段と、上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置と各アンテナとの距離に基づいて、各アンテナにおいて受信される電波の強度の比を推定する強度比推定手段と、上記位置算出手段が、上記電波測定手段によって測定された各アンテナにおける電波の強度の比と、上記強度比推定手段によって推定された各アンテナにおける電波の強度の比とに基づいて、当該位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置の妥当性を判断する構成としてもよい。
【0026】
各アンテナにおいてRFIDタグから受信される電波には、場合によっては前記したマルチパスの影響を受けていることがある。マルチパスの影響を受けている場合、位置算出手段によって算出されるRFIDタグの位置は実際の位置とは異なることになる。これに対して、上記の構成では、マルチパスを含む方向推定に基づいて検出されたRFIDタグの位置と、実際のRFIDタグ1の位置とでは、各アンテナ3までの距離が異なっていることを利用してマルチパスの検出を行っている。すなわち、マルチパスを含む方向推定が行われた場合には、実際の受信電波電力の比と算出位置に基づく受信電波電力の比とが異なることになるので、これを検出することによって、位置算出手段は、マルチパスに基づく位置検出の誤りを検出することができる。したがって、より精度の高い位置検出を行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記各アンテナが、複数のアンテナ素子を備えた構成となっており、上記方向推定手段が、上記複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンが行われ、到来方向が推定されるようになっているので、例えば物理的にアンテナの方向を変えてスキャンを行うというような構成と比較して、構造的により簡単な構成によってスキャンアンテナを実現することができる。よって、より安価なタグ通信装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明に係るタグ通信装置は、上記の構成において、上記方向推定手段が、ヌル走査方式によって電波の到来方向を推定する構成としてもよい。
【0030】
ヌル走査方式によって到来方向を推定する場合、ビーム走査方式と比較して、同じアンテナ構成、同じ条件下において、より分解能の高い到来方向検出を行うことが可能となる。逆に言えば、同じ分解能とする場合、ヌル走査方式を用いれば、ビーム走査方式と比較して、アンテナにおけるアンテナ素子の数を少なくすることが可能となり、アンテナのサイズをより小さくすることが可能となる。
【0031】
なお、本発明に係るタグ通信装置が備える各手段は、コンピュータにより実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記各手段をコンピュータにて実現させることができる。
【0032】
また、本発明に係るタグ通信管理システムは、上記本発明に係るタグ通信装置と、上記タグ通信装置によって上記RFIDタグと通信が行われた結果に基づいて、該RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する管理装置とを備えていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する上で、その位置情報に関しても認識することが可能なシステムを容易に構築することが可能となる。
【0034】
また、本発明に係るタグ通信管理システムは、上記の構成において、上記管理装置が、所定の空間領域を撮影する撮影手段と、上記撮影手段における撮影方向および/または撮影範囲を制御する撮影制御手段とを備え、上記撮影制御手段が、上記タグ通信装置によって特定された上記RFIDタグの位置に基づいて撮影制御を行う構成としてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、RFIDタグとの通信結果により、特定の物品、人、または生物などを特定する必要が生じた場合に、特定されたRFIDタグの位置に向けて撮影手段による撮影を行うことによって、該当物の特定およびその証拠を残すことが可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係るタグ通信装置、およびその制御方法は、以上のように、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定し、この推定された到来方向に基づいてRFIDタグの位置を算出するようになっている。よって、RFIDタグ側に何ら特別な構成を付加することなく、タグ通信装置側で、複数のアンテナで受信された信号の信号処理を行うことのみによって、通信可能なRFIDタグの位置を特定することが可能なタグ通信装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態について図1ないし図14に基づいて説明すると以下の通りである。
【0038】
(リーダ/ライタの構成)
図1は、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムの概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、RFIDタグ通信システムは、1つ以上のRFIDタグ1…およびリーダ/ライタ(タグ通信装置)2を備えた構成となっている。
【0039】
RFIDタグ1は、各種物品に取り付けられるものであり、取り付けられている物品あるいはそれに関連する物や人に関する情報を記憶するものである。このRFIDタグ1は、無線通信用IC(Integrated Circuit)、記憶部、およびアンテナなどを備えた構成となっている。一般的なRFIDタグ1は、電池などの電源を有しておらず、リーダ/ライタ2から電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダ/ライタ2と無線通信を行う。
【0040】
リーダ/ライタ2は、各RFIDタグ1との間で無線通信を行い、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行うものである。なお、本実施形態では、リーダ/ライタ2は、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み書きを行うものとしているが、これに限定されるものではなく、RFIDタグ1に記憶されている情報の読み出しのみを行うRFIDリーダであってもよい。
【0041】
本実施形態では、リーダ/ライタ2が送信する電波の周波数帯域は、800MHz〜960MHz前後のいわゆるUHF帯としている。このような周波数帯域の電波を用いることにより、リーダ/ライタ2は、数m程度の距離範囲内に位置するRFIDタグ1と通信可能となる。
【0042】
リーダ/ライタ2は、2つ以上のアンテナ3、位置検出部4、エリア判定部(領域判定手段)5、タグ通信制御部6、エリア情報記憶部7、および外部通信部8を備えた構成となっている。
【0043】
アンテナ3は、RFIDタグ1…に対して電波を送信するとともに、RFIDタグ1…から送られてきた電波を受信するためのアンテナである。このアンテナ3は、例えばパッチアンテナやアレーアンテナなどによって構成され、複数のアンテナ素子および各アンテナ素子に対応した電圧制御位相器などを備えた構成となっている。
【0044】
位置検出部4は、各アンテナ3における電波の受信状態に基づいて、各RFIDタグ1の位置を検出するブロックである。この位置検出部4は、方向推定部(方向推定手段)11、電力計測部(電波測定手段)12、電力比推定部(強度比推定手段)13、および位置算出部(位置算出手段)14を備えている。
【0045】
方向推定部11は、各アンテナ3において特定のRFIDタグ1からの電波が受信された場合に、各アンテナ3における該RFIDタグ1が位置する方向(角度)を推定する処理を行うブロックである。この方向推定の処理の詳細については後述する。
【0046】
電力計測部12は、各アンテナ3において特定のRFIDタグ1からの電波が受信された場合に、各アンテナ3における受信電波の強度を計測するブロックである。具体的には、電力計測部12は、各アンテナ3における受信電波の電力を計測している。なお、受信電波の強度は、電力を計測することに限らず、その他、電波の強度を測定することが可能な物理量であれば、どのような物理量を計測してもよい。
【0047】
位置算出部14は、方向推定部11によって推定された、各アンテナ3における特定のRFIDタグ1が位置する方向に基づいて、該RFIDタグ1の位置を算出するブロックである。この位置の算出処理の詳細については後述する。
【0048】
電力比推定部13は、位置算出部14によって算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、各アンテナ3における該RFIDタグ1からの受信電波の強度の比を推定する処理を行うブロックである。ここで推定された各アンテナ3における推定受信電波強度の比と、実際に電力計測部12によって計測された実受信電波強度の比とが位置算出部14において比較され、これによってマルチパスに基づく位置検出の誤りが検出される。なお、電力比推定処理の詳細および位置検出の誤りの検出処理の詳細については後述する。
【0049】
エリア判定部5は、位置算出部14において算出された位置に基づいて、該RFIDタグ1が所定の空間領域(通信エリア)内に位置しているか否かを判定するブロックである。通信エリアがどのような空間領域であるかについてのエリア情報は、エリア情報記憶部7に記憶されている。エリア判定部5は、位置算出部14において算出された位置が、上記エリア情報で規定される通信エリア内に存在するか否かを判定することによって、該RFIDタグ1が通信エリア内に存在しているかを判定する。
【0050】
タグ通信制御部6は、エリア判定部5によって通信エリア内に存在すると判定されたRFIDタグ1に関して、アンテナ3を介して情報の読み出しおよび/または書き込み制御を行うブロックである。
【0051】
外部通信部8は、リーダ/ライタ2において読み出されたRFIDタグ1の情報を外部装置に送信したり、外部装置からのRFIDタグ1に対する書き込み情報を受信したりするブロックである。外部装置と外部通信部8との間は、有線または無線によって通信接続されている。ここで、リーダ/ライタ2によるRFIDタグ1に対する読み書き処理に基づいて動作する外部装置が、該リーダ/ライタ2を内蔵する構成であっても構わない。
【0052】
なお、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報は、リーダ/ライタ2が設置される環境に応じて設定されることになる。このエリア情報の設定は、例えば外部通信部8を介して外部装置から行われるようになっていてもよいし、リーダ/ライタ2に、エリア情報を入力するためのユーザインターフェースが備えられていてもよい。
【0053】
なお、上記リーダ/ライタ2が備える位置検出部4、エリア判定部5、タグ通信制御部6、および外部通信部8は、CPUなどの演算手段が、ROM(Read Only Memory)やRAMなどの記憶手段に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。したがって、これらの手段を有するコンピュータが、上記プログラムを記録した記録媒体を読み取り、当該プログラムを実行するだけで、位置検出部4、エリア判定部5、タグ通信制御部6、および外部通信部8の各種機能および各種処理を実現することができる。また、上記プログラムをリムーバブルな記録媒体に記録することにより、任意のコンピュータ上で上記の各種機能および各種処理を実現することができる。
【0054】
この記録媒体としては、コンピュータで処理を行うために図示しないメモリ、例えばROMのようなものがプログラムメディアであっても良いし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することにより読取り可能なプログラムメディアであっても良い。
【0055】
また、何れの場合でも、格納されているプログラムは、マイクロプロセッサがアクセスして実行される構成であることが好ましい。さらに、プログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータのプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であることが好ましい。なお、このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0056】
また、インターネットを含む通信ネットワークを接続可能なシステム構成であれば、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的にプログラムを担持する記録媒体であることが好ましい。
【0057】
さらに、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであることが好ましい。
【0058】
(アンテナにおける方向推定)
次に、方向推定部11が、アンテナ3において受信された電波に基づいて、該アンテナ3に対してどの方向に受信電波の送信元となるRFIDタグ1が位置するかを推定する方法について説明する。図2(a)は、アンテナ3が備えるアンテナ素子3a…の出力に基づいて方向推定を行う方式を概念的に示す図である。同図に示すように、方向推定部11は、各アンテナ素子51aの出力に対してそれぞれ異なる重み付けWnを与え、これらの和の信号に基づいて、特定の方向の電波強度を検出する。そして、各アンテナ素子51aの出力に対する重み付けWnの組み合わせを変化させることによってスキャンを信号処理によって実現している。図2(b)および図2(c)は、重み付けWnの組み合わせを変化させた場合の指向性(メインローブ)の変化を示している。
【0059】
このように、複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力に基づいて、信号処理によってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定する技術はDOA(Direction Of Arrival)と呼ばれている。DOAの方式としては、Beamformer法、Capon法、LP(Linear Prediction)法、Min-Norm法、MUSIC法、およびESPRIT法などが挙げられる。これらの方式のうち、Beamformer法、およびCapon法は、ビーム走査方式による方向推定方式に分類され、LP法、Min-Norm法、MUSIC法、およびESPRIT法は、ヌル走査方式による方向推定方式に分類される。
【0060】
ビーム走査方式は、受信電波の電力の大きさに基づいて到来方向を推定する方式である。図3(a)は、ビーム走査方式における指向性の例を示したグラフである。ビーム走査方式の場合、メインローブの太さ(ビーム幅)が角度分解能に影響する。よって、分解能を上げるためには、アンテナ3におけるアンテナ素子3aの数を増やすなどを行ってビーム幅を小さくする必要がある。
【0061】
一方、ヌル走査方式は、ビーム走査方式の発想を逆にしたものであり、受信電波の電力の小ささに基づいて到来方向を推定する方式である。図3(b)は、ヌル走査方式における指向性の例を示したグラフである。ヌル走査方式の場合、少ないアレイ数(アンテナ素子数)でも高精度な方向分解能が得られるというメリットがある。
【0062】
ここで、ビーム走査方式とヌル走査方式とにおける角度分解能の精度の違いについて説明する。図4(a)は、ビーム走査方式の例としてBeamformer法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフであり、図4(b)は、ヌル走査方式の例としてLP法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフである。これらのグラフにおいて、横軸は方向に対応する角度を示しており、縦軸は角度に対応する強度を示している。強度が強い角度から電波が到来していると判定されることになる。なお、どちらの例においても、6個のアンテナ素子をλ(到来波波長)/2の間隔でリニアに並べたアンテナが用いられ、3つの到来波が0°、10°、および60°の角度方向から同じ強度でアンテナに到来している。また、SNR(Signal to Noise Ratio)は20dBとなっている。
【0063】
これらのグラフに示すように、Beamformer法では、分解能が比較的低く、0°および10°からの到来波の検出が重なってしまって不明瞭になっている一方、LP法では、3つの到来波が精度良く検出されていることがわかる。
【0064】
このように、ヌル走査方式によるLP法を用いれば、ビーム走査方式と比較して、同じアンテナ構成、同じ条件下において、より分解能の高い到来方向検出を行うことが可能となる。逆に言えば、同じ分解能とする場合、ヌル走査方式によるLP法を用いれば、ビーム走査方式と比較して、アンテナにおけるアンテナ素子の数を少なくすることが可能となり、アンテナのサイズをより小さくすることが可能となる。図5(a)および図5(b)に、同じ分解能とする場合の、ビーム走査方式におけるアンテナ3の構成およびヌル走査方式におけるアンテナ3の構成をそれぞれ示す。
【0065】
以上のように、ヌル走査方式によれば、アンテナ3のサイズの増大を抑えつつ、到来方向の角度分解能を高くすることが可能となっている。本実施形態では、方向推定部11は、ヌル走査方式のLP法を用いて方向推定を行うものとする。なお、方向推定部11が採用するDOAの方式は、LP法に限定されるものではなく、ヌル走査方式の他の方式であってもよい。また、アンテナ3のサイズの許容量や、必要とされる分解能によっては、方向推定部11がビーム走査方式を採用しても構わない。
【0066】
(位置算出処理)
次に、位置算出部14が、方向推定部11によって推定された各アンテナ3におけるRFIDタグ1の配置方向に基づいて、該RFIDタグ1の配置位置を算出する方法について説明する。図6は、2つのアンテナ3X・3Yによる到来方向推定に基づいて、RFIDタグ1の位置を推定する方法を説明する図である。
【0067】
まず、方向推定部11は、アンテナ3Xにおける受信状況に基づいて、RFIDタグ1の配置方向を示す角度がθ1であることを推定する。また、同様にして、方向推定部11は、アンテナ3Yにおける受信状況に基づいて、RFIDタグ1の配置方向を示す角度がθ2であることを推定する。
【0068】
そして、位置算出部14は、上記のθ1およびθ2、および、アンテナ3Xおよびアンテナ3Yの配置位置P1・P2に基づいて、RFIDタグ1の位置を算出する。具体的には、アンテナ3Xから角度θ1の方向に向く直線と、アンテナ3Yから角度θ2の方向に向く直線との交点をRFIDタグ1の位置として算出する。
【0069】
(マルチパス検出処理)
次に、位置算出部14が、マルチパスに基づく位置検出の誤りの検出方法について説明する。まず図7を参照しながら、マルチパスによって誤った位置検出が行われる現象について説明する。同図において、RFIDタグ1は、P11で示される位置に配置されている。2つのアンテナ3X・3Yが、このRFIDタグ1から直接電波を受信していれば、位置P11を正確に検出することが可能である。しかしながら、同図に示すように、反射物Xが存在している場合、例えばアンテナ3Yが、RFIDタグ1から出射し、反射物Xで反射された電波を受信した場合には、方向推定部11は、アンテナ3Yにおける電波の到来方向を、実際のRFIDタグ1が配置される方向とは異なる方向として認識することになる。この結果、位置算出部14は、RFIDタグ1の配置位置を、実際の位置とは異なる位置P12として算出してしまうことになる。
【0070】
そこで、位置算出部14は、電力比推定部13によって推定された各アンテナ3における推定受信電波強度の比と、実際に電力計測部12によって計測された実受信電波強度の比とを比較することによって、位置検出の誤りを検出する。
【0071】
詳しく説明すると、まず電力計測部12において、アンテナ3Xにおける受信電波の電力PX、およびアンテナ3Yにおける受信電波の電力PYが計測される。一方、電力比推定部13は、位置算出部14において算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、アンテナ3XからRFIDタグ1までの距離、およびアンテナ3YからRFIDタグ1までの距離を認識する。そして、これらの距離に基づいて、アンテナ3Xにおける受信電波の推定電力PX’、およびアンテナ3Yにおける受信電波の推定電力PY’との比を算出する。
【0072】
その後、位置算出部14は、PX/PYとPX’/PY’との差を算出し、この差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合に、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定する。すなわち、位置算出部14による位置検出の誤りの検出は、次のような原理を用いていることになる。まず、マルチパスを含む方向推定に基づいて検出されたRFIDタグ1の位置と、実際のRFIDタグ1の位置とでは、各アンテナ3までの距離が異なっていることになる。よって、マルチパスを含む方向推定が行われた場合には、実際の受信電波電力の比と算出位置に基づく受信電波電力の比とが異なることになる。以上のような処理により、位置算出部14は、マルチパスに基づく位置検出の誤りを検出することができる。
【0073】
(位置検出によるエリア判定)
次に、エリア判定部5におけるエリア判定処理について説明する。図8は、エリア判定処理を説明する図である。エリア判定部5は、位置算出部14から、算出されたRFIDタグ1の位置情報を取得するとともに、エリア情報記憶部7に記憶されている通信エリアに関するエリア情報を読み出す。
【0074】
例えば、図8に示す例において、通信エリアが21で示される空間領域であり、算出されたRFIDタグ1の位置が位置P21であった場合、位置P21は通信エリア21内の位置となるので、該RFIDタグ1は通信エリア内に存在するものとして認識される。一方、算出されたRFIDタグ1の位置が位置P22であった場合、位置P22は通信エリア21の外の位置となるので、該RFIDタグ1は通信エリアの外に存在するものとして認識される。
【0075】
ここで、通信エリア内に障害物などが存在する場合、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報に、この障害物の位置情報を含めるようにしてもよい。この場合、位置算出部14によって算出された位置が、通信エリア内であったとしても、障害物が位置する空間領域に位置すると判定された場合には、位置の誤検出があったものとして認識することができる。
【0076】
(リーダ/ライタにおける処理の流れ)
次に、リーダ/ライタ2における処理の流れについて、図9に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。まずステップ1(以降、S1のように称する)において、初期設定が行われる。初期設定としては、エリア情報記憶部7に記憶されているエリア情報の設定、および、位置算出部14においてマルチパスによる誤検出の検出処理に用いられる所定値Psの設定などが上げられる。この初期設定処理は、前記したように、例えば外部通信部8を介して外部装置から行われてもよいし、リーダ/ライタ2に備えられている、エリア情報を入力するためのユーザインターフェースによって入力されてもよい。この初期設定は、例えばリーダ/ライタ2を最初に設置する際などに行われる。一旦初期設定が行われれば、以降、初期設定の変更の必要がない限り、リーダ/ライタ2の使用開始(電源投入)時には初期設定は行われずに、次のS2からの処理が開始されることになる。
【0077】
初期設定が行われた後は、各アンテナ3においてRFIDタグ1からの電波の受信が待機される。そして、S2において、各アンテナ3においてRFIDタグ1からの電波が受信されると、各アンテナ3における到来角度推定処理が方向推定部11によって行われる。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける到来角度θ1、θ2が方向推定部11によって算出される。
【0078】
次に、S3において、各アンテナ3において受信されたRFIDタグ1からの電波の電力が、電力計測部12によって計測される。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける受信電力PX、PYが電力計測部12によって計測される。
【0079】
次に、S4において、S2において方向推定部11によって算出された各アンテナにおける到来角度に基づいて、位置算出部14が該RFIDタグ1の位置を算出する。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、それぞれにおける到来角度θ1、θ2に基づいて、該RFIDタグ1の位置が算出される。
【0080】
次に、S5において、S4において位置算出部14によって算出されたRFIDタグ1の位置に基づいて、電力比推定部13が各アンテナ3における該RFIDタグ1からの受信電波の強度の比(パワー比)を推定する処理を行う。2つのアンテナ3・3が設けられている場合、受信電波の強度の比PX’/PY’が推定される。
【0081】
次に、S6において、位置算出部14が、マルチパスに基づく位置検出の誤りの検出処理を行う。具体的には、位置算出部14は、PX/PYとPX’/PY’との差を算出し、この差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合に、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定する。
【0082】
S6においてNO、すなわち、PX/PYとPX’/PY’との差の絶対値が所定値Psよりも大きい場合には、この位置検出がマルチパスによる誤検出であると判定され(S7)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。一方、S6においてYES、すなわち、PX/PYとPX’/PY’との差の絶対値が所定値Psよりも小さい場合には、この位置検出はマルチパスの影響を受けていないものと判定され、次のS8からの処理が行われる。
【0083】
S8では、エリア判定部5が、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア内にあるか否かが判定される。S8においてNO、すなわち、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア外であると判定された場合には、該RFIDタグ1は通信エリアの外に位置しているものと判定され(S9)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。
【0084】
一方、S8においてYES、すなわち、位置算出部14によって算出された位置が通信エリア内であると判定された場合には、S10において、エリア判定部5が、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していないかを判定する。S10においてNO、すなわち、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していると判定された場合には、算出された位置は誤計測によるものであると判定され(S11)、該RFIDタグ1との通信は行わずにS2からの処理に戻る。
【0085】
一方、S10においてYES、すなわち、位置算出部14によって算出された位置に障害物が存在していないと判定された場合には、位置の算出は適切に行われたものと判定され、該RFIDタグ1との通信処理がタグ通信制御部6の制御のもとに行われる(S12)。また、タグ通信制御部6による通信結果は、外部通信部8を介して外部装置に送信される。さらに、外部通信部8を介して外部装置から受信された通信指示に基づいて、タグ通信制御部6が通信処理を行う。その後、リーダ/ライタ2の動作停止指示が行われるまで、S2からの処理が繰り返される。
【0086】
(アンテナを3つ以上設ける場合の位置算出)
上記の例では、2つのアンテナ3・3を設けてRFIDタグ1の位置算出を行うようになっていたが、アンテナ3を3つ以上設けるとともに、これら全てのアンテナ3…による到来方向推定に基づいてRFIDタグ1の位置算出を行うようにしてもよい。この場合、複数のアンテナ3…の中から、2つのアンテナ3・3を取り出す組み合わせを想定し、各組み合わせによって算出される位置に基づいてRFIDタグ1の位置を特定することになる。より具体的には、各組み合わせによって算出される位置から多数決によってRFIDタグ1の位置が特定される。
【0087】
図10は、4つのアンテナ3X・3Y・3W・3Zを設けた場合の位置算出方法を説明する図である。この場合、アンテナ3Xとアンテナ3Y、アンテナ3Xとアンテナ3W、アンテナ3Xとアンテナ3Z、アンテナ3Yとアンテナ3W、アンテナ3Yとアンテナ3Z、およびアンテナ3Wとアンテナ3Zの6通りの位置が算出されることになる。
【0088】
同図に示す場合、アンテナ3Xとアンテナ3Y、アンテナ3Xとアンテナ3Z、およびアンテナ3Yとアンテナ3Zによって算出された位置がP31、アンテナ3Yとアンテナ3Wによって算出された位置がP32、アンテナ3Xとアンテナ3Wによって算出された位置がP33、および、アンテナ3Wとアンテナ3Zによって算出された位置がP34となっている。このような状況の場合、位置P31を算出したアンテナ3の組み合わせが多数あるので、位置算出部14は、この位置P31を該当RFIDタグ1の位置として算出する。すなわち、位置P32、位置P33、および位置P34がマルチパスの影響による誤検出であると認識されることになる。同図に示す例では、マルチパスによりアンテナ3WにおけるRFIDタグ1の方向推定が誤っていることが原因で、位置P32、位置P33、および位置P34が検出されている。
【0089】
このように、アンテナ3を3つ以上設けることによって、マルチパスによる位置検出の誤りを検出することが可能となる。よって、例えばパワー比の比較によって検出されなかったマルチパスの影響を、上記の位置検出によって検出することが可能となる。したがって、より的確な位置算出を行うことが可能となる。
【0090】
なお、各アンテナ3の組み合わせによって算出される位置が、比較的小さい所定の距離範囲内でずれている場合には、方向推定の誤差によって位置のずれが生じていることが予想される。よって、大きく位置が離れているものを除外し、所定の距離範囲内に収まっている位置の平均位置を、RFIDタグ1の位置として算出するようにしてもよい。
【0091】
(RFIDタグ通信システムの適用例)
次に、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムを具体的なシステムに適用する例について説明する。図11は、物品の流通が行われるシステムにおいて、流通される物品の検査・確認などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。同図に示す例では、フォークリフトによって搬送される貨物41の内部に、RFIDタグ1が取り付けられた物品が複数格納されている。そして、このフォークリフトが通信エリア21を通過することによって、リーダ/ライタ2が各RFIDタグ1と通信を行い、各物品の流通を管理することが可能となる。
【0092】
このようなシステムの場合、通信エリア21が明確に設定されないRFIDタグ通信システムであると、通信を行う必要のないRFIDタグ1がリーダ/ライタ2から比較的近い場所に位置していると、そのRFIDタグ1とも通信を行ってしまうことになる。よって、明確に通信エリア21を設定する必要があるが、環境的に電波吸収体などを設置することが困難である場合が多い。これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、リーダ/ライタ2における処理によって通信エリア21を確定するので、環境に対しては何ら設置する必要はない。すなわち、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、設置環境によらずに容易にセッティングを行うことが可能となる。
【0093】
図12は、店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。従来、例えばCDショップなどでは、商品としてのCDなどにRFIDタグを取り付けておくとともに、店舗の入口にRFIDタグと通信を行うリーダ/ライタを備えたゲートを設けるシステムが採用されている。しかしながら、このようなシステムの場合、店舗への入口の全てにゲートを設ける必要があり、図12に示すようなオープンなスペースに店舗を設ける場合には、適用が難しいという問題があった。
【0094】
これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、通信エリア21を図12に示すように店舗の全体をカバーするようなエリアに設定することによって、ゲートなどを設ける必要をなくすことができる。よって、様々な店舗環境において柔軟にRFIDタグ通信システムを構築することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、店舗全体を通信エリア21に設定することが可能となるので、商品の盗難監視のみならず、ある商品がどこにあるかを検知することも可能となる。
【0096】
図13は、例えば駅や映画館などの改札が必要となる場所に本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示している。昨今では、例えば駅の改札において、RFIDタグを用いた改札を行うシステムが普及しているが、このシステムでは、ゲートにリーダ/ライタを設けることによって改札を行っている。これに対して、本実施形態に係るRFIDタグ通信システムによれば、改札が行われる通路の全体を通信エリア21に設定することによって、ゲートを設けることなく改札を行うことが可能となる。なお、この場合には、RFIDタグ1を利用者が所持する携帯電話機に内蔵させた構成としてもよい。
【0097】
(RFIDタグ通信システムのシステム構成例)
次に、上記したRFIDタグ通信システムに、監視カメラを設けたシステムについて説明する。例えば上記した図13に示すシステム適用例において、RFIDタグ1との通信結果により、通過を許可できない利用者が存在した場合、その不許可利用者を特定する必要が生じることが考えられる。この場合、リーダ/ライタ2によって特定された不許可利用者の位置に向けて監視カメラによる撮影を行うことによって、不許可利用者の特定およびその証拠を残すことが可能となる。図14は、RFIDタグ通信システムに監視カメラ(撮影手段)43を設けた場合の構成例を示す。
【0098】
同図に示すように、監視カメラ43は、通信部44、方向制御部(撮影制御手段)45、ズーム制御部(撮影制御手段)46、および撮像部47を備えた構成となっている。通信部44は、リーダ/ライタ2と通信するものであり、リーダ/ライタ2から撮影すべき位置に関する情報を取得する。
【0099】
方向制御部45は、通信部44が受信した撮影すべき位置に関する情報に基づいて、撮像部47による撮影方向の変更制御を行う。ズーム制御部46は、通信部44が受信した撮影すべき位置と撮像部47との距離に基づいて、撮像部47におけるズームの制御を行う。以上のような構成によって、不許可利用者の撮影を適切に行うことが可能となる。
【0100】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明に係るタグ通信装置およびこれを備えたタグ通信システムは、例えば上記した流通される物品の検査・確認などを行うシステム、店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステム、駅や映画館などの改札が必要となる場所に設置される改札システムなどの用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態に係るRFIDタグ通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同図(a)は、アンテナが備えるアンテナ素子の出力に基づいてスキャンを行うことを概念的に示す図であり、同図(b)および同図(c)は、重み付けWnの組み合わせを変化させた場合の指向性の変化を示す図である。
【図3】同図(a)は、ビーム走査方式における指向性の例を示したグラフであり、同図(b)は、ヌル走査方式における指向性の例を示したグラフである。
【図4】同図(a)は、ビーム走査方式の例としてBeamformer法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフであり、同図(b)は、ヌル走査方式の例としてLP法を用いた場合の方向推定結果を示すグラフである。
【図5】同図(a)および同図(b)は、同じ分解能とする場合の、ビーム走査方式におけるアンテナの構成およびヌル走査方式におけるアンテナの構成をそれぞれ示す概略図である。
【図6】2つのアンテナによる到来方向推定に基づいて、RFIDタグの位置を推定する方法を説明する図である。
【図7】マルチパスによって誤った位置検出が行われる現象を説明する図である。
【図8】エリア判定処理を説明する図である。
【図9】リーダ/ライタにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】4つのアンテナを設けた場合の位置算出方法を説明する図である。
【図11】物品の流通が行われるシステムにおいて、流通される物品の検査・確認などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図12】店舗などにおいて、商品の盗難監視などを行うシステムに本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図13】例えば駅や映画館などの改札が必要となる場所に本RFIDタグ通信システムを適用した場合の例を示す図である。
【図14】RFIDタグ通信システムに、監視カメラを設けたシステムの構成例を示すブロック図である。
【図15】同図(a)は、ビームフォーミングを重ね合わせることによって通信エリアを制御する例を示す図であり、同図(b)は、ビームスキャンによって通信エリアを制御する例を示す図である。
【図16】同図(a)は、マルチパスが生じている状態を示す図であり、同図(b)は、電波吸収体を設けることによってマルチパスを防止する例を示す図である。
【図17】同図(a)は、指向性が比較的弱い場合のアンテナが備えるアンテナ素子の状態、同図(b)は、指向性が比較的強い場合のアンテナが備えるアンテナ素子の状態をそれぞれ示す図である。
【図18】アンテナにおけるスキャン方向を変化させる場合の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0103】
1 RFIDタグ
2 リーダ/ライタ(タグ通信装置)
3・3X・3Y・3W・3Z アンテナ
3a アンテナ素子
4 位置検出部
5 エリア判定部(領域判定手段)
6 タグ通信制御部
7 エリア情報記憶部
8 外部通信部
11 方向推定部(方向推定手段)
12 電力計測部(電波測定手段)
13 電力比推定部(強度比推定手段)
14 位置算出部(位置算出手段)
21 通信エリア
43 監視カメラ(撮影手段)
44 通信部
45 方向制御部(撮影制御手段)
46 ズーム制御部(撮影制御手段)
47 撮像部
X 反射物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、
上記RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナと、
上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定手段と、
上記方向推定手段によって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出手段とを備えていることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項2】
上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置が、所定の空間領域内にあるか否かを判定する領域判定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のタグ通信装置。
【請求項3】
上記各アンテナにおいて実際に受信された上記RFIDタグからの電波の強度を測定する電波測定手段と、
上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置と各アンテナとの距離に基づいて、各アンテナにおいて受信される電波の強度の比を推定する強度比推定手段と、
上記位置算出手段が、上記電波測定手段によって測定された各アンテナにおける電波の強度の比と、上記強度比推定手段によって推定された各アンテナにおける電波の強度の比とに基づいて、当該位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置の妥当性を判断することを特徴とする請求項1または2記載のタグ通信装置。
【請求項4】
上記各アンテナが、複数のアンテナ素子を備えた構成となっており、
上記方向推定手段が、上記複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力を信号処理することによってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定することを特徴とする請求項1記載のタグ通信装置。
【請求項5】
上記方向推定手段が、ヌル走査方式によって電波の到来方向を推定することを特徴とする請求項4記載のタグ通信装置。
【請求項6】
RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナを備え、該RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置の制御方法において、
上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定ステップと、
上記方向推定ステップによって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出ステップとを有することを特徴とするタグ通信装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のタグ通信装置が備える各手段としてコンピュータを動作させるタグ通信制御プログラム。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のタグ通信装置と、
上記タグ通信装置によって上記RFIDタグと通信が行われた結果に基づいて、該RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する管理装置とを備えていることを特徴とするタグ通信管理システム。
【請求項9】
上記管理装置が、
所定の空間領域を撮影する撮影手段と、
上記撮影手段における撮影方向および/または撮影範囲を制御する撮影制御手段とを備え、
上記撮影制御手段が、上記タグ通信装置によって特定された上記RFIDタグの位置に基づいて撮影制御を行うことを特徴とする請求項8記載のタグ通信管理システム。
【請求項1】
電波を介してRFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置において、
上記RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナと、
上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定手段と、
上記方向推定手段によって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出手段とを備えていることを特徴とするタグ通信装置。
【請求項2】
上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置が、所定の空間領域内にあるか否かを判定する領域判定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載のタグ通信装置。
【請求項3】
上記各アンテナにおいて実際に受信された上記RFIDタグからの電波の強度を測定する電波測定手段と、
上記位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置と各アンテナとの距離に基づいて、各アンテナにおいて受信される電波の強度の比を推定する強度比推定手段と、
上記位置算出手段が、上記電波測定手段によって測定された各アンテナにおける電波の強度の比と、上記強度比推定手段によって推定された各アンテナにおける電波の強度の比とに基づいて、当該位置算出手段によって算出されたRFIDタグの位置の妥当性を判断することを特徴とする請求項1または2記載のタグ通信装置。
【請求項4】
上記各アンテナが、複数のアンテナ素子を備えた構成となっており、
上記方向推定手段が、上記複数のアンテナ素子を備えたアンテナからの出力を信号処理することによってスキャンを実現し、電波の到来方向を推定することを特徴とする請求項1記載のタグ通信装置。
【請求項5】
上記方向推定手段が、ヌル走査方式によって電波の到来方向を推定することを特徴とする請求項4記載のタグ通信装置。
【請求項6】
RFIDタグからの電波を受信する1つまたは複数のアンテナを備え、該RFIDタグと無線通信を行うタグ通信装置の制御方法において、
上記各アンテナにおいて上記RFIDタグからの電波が受信された場合に、各アンテナにおける該RFIDタグからの電波の到来方向を推定する方向推定ステップと、
上記方向推定ステップによって推定された方向に基づいて、上記RFIDタグの位置を算出する位置算出ステップとを有することを特徴とするタグ通信装置の制御方法。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のタグ通信装置が備える各手段としてコンピュータを動作させるタグ通信制御プログラム。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のタグ通信装置と、
上記タグ通信装置によって上記RFIDタグと通信が行われた結果に基づいて、該RFIDタグと関連付けられている物品、人、および生物を管理する管理装置とを備えていることを特徴とするタグ通信管理システム。
【請求項9】
上記管理装置が、
所定の空間領域を撮影する撮影手段と、
上記撮影手段における撮影方向および/または撮影範囲を制御する撮影制御手段とを備え、
上記撮影制御手段が、上記タグ通信装置によって特定された上記RFIDタグの位置に基づいて撮影制御を行うことを特徴とする請求項8記載のタグ通信管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−10345(P2006−10345A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184094(P2004−184094)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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