説明

タッチパネルシステム及びタッチパネルシステムの動作方法

【課題】 検出面に接触した指示体を迅速かつ精度良く検出するとともに消費電力を抑制したタッチパネルシステムや、当該タッチパネルシステムの動作方法を提供する。
【解決手段】 タッチパネルシステムに備えられる制御部は、指示体を継続的に検出しないアイドル状態であることを認識すると、アイドル状態時検出方法が実行されるように指示体検出部を制御する(ステップ#1)。また、制御部は、指示体を継続的または断続的に検出するアクティブ状態であることを認識すると、アイドル状態時検出方法よりも指示体を検出する時間的分解能及び空間的分解能の少なくとも一方が高いアクティブ状態時検出方法が実行されるように指示体検出部を制御する(ステップ#3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置などに設けられるタッチパネルシステムや、当該タッチパネルシステムの動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、検出面に接触する指示体(例えば、ユーザの指やスタイラスなど、以下同じ)の位置を検出することで、ユーザの指示を受け付けるタッチパネルシステムが、携帯電話やパソコン、カーナビゲーションシステムなどに利用されることが多くなってきている。また最近では、このようなタッチパネルシステムにおいて、操作性の向上が求められている。具体的に例えば、検出面に接触した指示体を迅速に検出することで、ユーザの操作に対して即応することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、検出面の水平方向に沿って複数の送信導体が配列されるとともに検出面の垂直方向に沿って複数の受信導体が配列される静電容量方式のタッチパネルシステムにおいて、所定本数(所定間隔)毎の送信導体に対して選択的かつ同時に信号を印加し、所定本数(所定間隔)毎の受信導体に生成される信号を選択的に取得するようにしたものが提案されている。このタッチパネルシステムでは、信号を印加する送信導体と信号を取得する受信導体とのそれぞれを、上記の所定本数(所定間隔)毎の関係を維持しながら所定時間毎に切り替えることで、全ての送信導体に対して迅速に信号を印加するとともに、全ての受信導体から迅速に信号を取得することを可能にしている。
【0004】
また、特許文献2では、検出面の垂直方向及び水平方向のそれぞれに沿って電極が配列される静電容量方式のタッチパネルシステムにおいて、電極を1本ずつ順番に検出するとともに、検出された指示体の接触位置に近い電極の検出期間を、以後他の電極よりも長くすることで、指示体を精度良く検出するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−128982号公報
【特許文献2】特開2010−262460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案されるタッチパネルシステムでは、駆動する送信導体及び信号を処理する受信導体のそれぞれを、順次切り替える必要がある。そのため、検出面に指示体が接触したときから検出されるまでに時間的な遅れが生じることで、検出面に接触した指示体を迅速に検出することが困難になる。さらに、当該タッチパネルシステムでは、指示体を検出したか否かにかかわらず、常に同様の動作を行う。そのため、常に精度良く指示体を検出しようとすれば消費電力が増大し、逆に消費電力を低減しようとすれば指示体を精度良く検出することができなくなる。
【0007】
一方、特許文献2で提案されるタッチパネルシステムでは、検出された指示体の接触位置に応じて、異なる動作を行う。しかしながら、当該タッチパネルシステムでは、電極を1本ずつ順番に検出する必要があり、検出面に接触した指示体を検出するまでに、特許文献1で提案されているタッチパネル以上の、相当な時間的遅れが生じ得る。したがって、当該タッチパネルシステムでも、検出面に接触した指示体を迅速に検出することが困難になる。
【0008】
そこで、本発明は、検出面に接触した指示体を迅速かつ精度良く検出するとともに消費電力を抑制したタッチパネルシステムや、当該タッチパネルシステムの動作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、検出面に接触または近接する指示体の検出を順次試行する指示体検出部と、
前記指示体検出部から得られる試行結果に基づいて、以後に前記指示体検出部が実行する前記指示体の検出方法を順次制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記指示体検出部が前記指示体を継続的に検出しないアイドル状態であることを認識すると、前記指示体検出部がアイドル状態時検出方法を実行するように制御し、
前記指示体検出部が前記指示体を継続的または断続的に検出するアクティブ状態であることを認識すると、前記アイドル状態時検出方法と比較して、前記指示体を検出する時間的分解能及び空間的分解能の少なくとも一方を高くしたアクティブ状態時検出方法を前記指示体検出部が実行するように制御し、
前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が前記検出面に近接している前記指示体を検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識することを特徴とするタッチパネルシステムを提供する。
【0010】
このタッチパネルシステムでは、アイドル状態における指示体を検出する分解能が、アクティブ状態における指示体を検出する分解能よりも、低くなる。そのため、アクティブ状態における指示体を検出する分解能を高くするとともに、アイドル状態における消費電力を低減することが可能になる。さらに、当該タッチパネルシステムでは、アイドル状態で検出面に近接する(検出面上に浮いている状態の、ホバー状態の)指示体を検出すると、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する。そのため、指示体が検出面に近接してから接触する(タッチ状態になる)前に、アイドル状態からアクティブ状態に遷移して、指示体を検出する分解能を高くすることができる。したがって、検出面に接触する指示体を、アクティブ状態において迅速に検出することが可能になる。
【0011】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記指示体検出部が前記指示体の検出を試行する前記検出面内の領域である検出試行領域を設定するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行領域が、前記制御部が直近に認識した前記指示体の位置を含むものであると、好ましい。
【0012】
このタッチパネルシステムでは、アクティブ状態において、指示体を検出する空間的分解能を高くするだけでなく、消費電力を低減することが可能になる。さらに、指示体の検出を試行する領域を限定することができるため、指示体の検出の試行によって生じるノイズを、極力低減することが可能になる。
【0013】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第1単位時間以内に前記検出面に近接している前記指示体を第1回数以上検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識するものであり、
前記制御部は、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識するとき、前記指示体検出部が前記第1単位時間以内に検出した前記第1回数の前記指示体のそれぞれの位置に基づいて算出した位置を、前記指示体の位置として認識して、当該位置を含む前記検出試行領域を設定すると、好ましい。
【0014】
このタッチパネルシステムでは、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する直前における、検出面に近接する指示体の位置に基づいて、アクティブ状態における検出試行領域を設定する。そのため、アクティブ状態に遷移した直後であっても、検出試行領域を設定することが可能になる。
【0015】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記アクティブ状態であると認識しているとき、前記指示体検出部が検出した前記検出面に接触する前記指示体の位置を、前記指示体の位置として認識して、当該位置を含む前記検出試行領域を設定すると、好ましい。
【0016】
このタッチパネルシステムでは、アクティブ状態において、検出面に接触する指示体が以後含まれる可能性が高い検出試行領域を、順次設定することが可能になる。
【0017】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記指示体検出部が前記指示体の検出を試行する前記検出面内の領域である検出試行領域を設定するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行領域が、前記検出面の全面に及んでもよい。
【0018】
このタッチパネルシステムでは、アクティブ状態において、検出面全面に接触または近接する指示体を、確実に検出することが可能になる。
【0019】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記アイドル状態時検出方法における、前記検出試行領域または前記検出面から前記検出試行領域を除いた領域が、一次元方向または二次元方向に対して均等に分散していると、好ましい。
【0020】
このタッチパネルシステムでは、アイドル状態において、検出面全面に近接する指示体を検出可能としながらも、指示体を検出する空間的分解能を低くして消費電力を低減することが可能になる。
【0021】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記指示体検出部が第2単位時間当たりに前記指示体の検出を試行する回数である検出試行回数を制御するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行回数が、前記アイドル状態時検出方法における前記検出試行回数よりも、多いと、好ましい。
【0022】
このタッチパネルシステムでは、アイドル状態における検出試行回数(フレームレート)を少なくすることで、消費電力を低減することが可能になる。さらに、アクティブ状態における検出試行回数を多くすることで、指示体を検出する時間的分解能を高くすることが可能になる。
【0023】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第1単位時間以内に前記検出面に近接している前記指示体を第1回数以上検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識すると、好ましい。
【0024】
このタッチパネルシステムにおいて、第1回数を、1回としてもよいが、2回以上にするとノイズ等に起因する誤検出を好適に排除することが可能になり、精度良く検出面に近接する指示体を検出することが可能になるため、好ましい。
【0025】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、
前記アクティブ状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が前記検出面に接触している前記指示体を検出したことを確認すると、その検出結果を外部に出力し、
前記指示体検出部が前記検出面に接触している前記指示体を検出しないことを確認すると、前記アクティブ状態から前記アイドル状態に遷移したと認識すると、好ましい。
【0026】
このタッチパネルシステムでは、アクティブ状態において、検出面に接触する指示体が検出されない場合に、アイドル状態に戻る。そのため、制御部が、積極的にアイドル状態であると認識し、指示体検出部がアイドル状態時検出方法を実行するように制御することで、消費電力を積極的に低減することが可能になる。
【0027】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記制御部は、前記アクティブ状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第3単位時間以内に前記検出面に接触している前記指示体を検出しないことを確認すると、前記アクティブ状態から前記アイドル状態へ遷移したと認識すると、好ましい。
【0028】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記アイドル状態時検出方法における、前記検出面に接触または近接する前記指示体を検出する前記指示体検出部の検出感度は、
前記アクティブ状態時検出方法における、前記検出面に接触または近接する前記指示体を検出する前記指示体検出部の検出感度よりも、大きいと、好ましい。
【0029】
このタッチパネルシステムでは、アイドル状態において、検出面に近接する指示体を、漏れ無く検出することが可能になるとともに、アクティブ状態において、検出面に接触する指示体を、ノイズや検出面に近接する指示体と区別して精度良く検出することが可能になる。
【0030】
さらに、上記特徴のタッチパネルシステムにおいて、前記指示体検出部が、
前記検出面に沿って設けられる複数の平行なドライブラインと、
前記検出面に沿って設けられ、前記ドライブラインと立体交差する複数の平行なセンスラインと、
前記ドライブラインを駆動することで当該ドライブラインと立体交差する前記センスラインに状態信号を生成するドライブライン駆動部と、
前記センスラインに生成される状態信号を処理することで、前記検出面に接触または近接する前記指示体の位置を算出する位置算出部と、を備え、
前記制御部が、前記ドライブライン駆動部が駆動する前記ドライブラインと、前記位置算出部が前記状態信号を処理する前記センスラインと、の少なくとも一方を制御すると、好ましい。
【0031】
このタッチパネルシステムでは、ドライブラインを選択的に駆動したり、センスラインに生成される状態信号を選択的に処理したりすることで、指示体検出部の空間的分解能を制御することができる。具体的に例えば、駆動するドライブラインを少なくしたり、状態信号を処理するセンスラインを少なくしたりすることで、指示体を検出する空間的分解能を低くして、消費電力を低減することが可能になる。
【0032】
また、本発明は、検出面に接触または近接する指示体の検出を試行する指示体検出ステップと、
前記指示体検出ステップにより得られた試行結果に基づいて、以後の前記指示体検出ステップで実行される前記指示体の検出方法を制御する制御ステップと、を備え、
前記指示体検出ステップ及び前記制御ステップのそれぞれを順次行い、
前記制御ステップは、
前記指示体検出ステップで前記指示体が継続的に検出されないアイドル状態である場合に、前記指示体検出ステップでアイドル状態時検出方法が実行されるように制御し、
前記指示体検出ステップで前記指示体が継続的または断続的に検出されるアクティブ状態である場合に、前記アイドル状態時検出方法と比較して、前記指示体を検出する時間的分解能及び空間的分解能の少なくとも一方を高くしたアクティブ状態時検出方法が前記指示体検出ステップで実行されるように制御するものであり、
前記アイドル状態である場合に、前記指示体検出ステップによって前記検出面に近接している前記指示体が検出されると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移することを特徴とするタッチパネルシステムの動作方法を提供する。
【0033】
このタッチパネルシステムの動作方法では、アイドル状態における指示体を検出する分解能が、アクティブ状態における指示体を検出する分解能よりも、低くなる。そのため、アクティブ状態における指示体を検出する分解能を高くするとともに、アイドル状態における消費電力を低減することが可能になる。さらに、当該タッチパネルシステムの動作方法では、アイドル状態で検出面に近接する(検出面上に浮いている、ホバー状態である)指示体を検出すると、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する。そのため、指示体が検出面に近接してから接触する(タッチ状態になる)前に、アイドル状態からアクティブ状態に遷移して、指示体を検出する分解能を高くすることができる。したがって、検出面に接触する指示体を、アクティブ状態において迅速に検出することが可能になる。
【発明の効果】
【0034】
上記特徴のタッチパネルシステムやタッチパネルシステムの動作方法によれば、アクティブ状態における指示体を検出する分解能を高くするとともに、アイドル状態における消費電力を低減することが可能になる。さらに、アクティブ状態において、検出面に接触する指示体を、迅速に検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態のタッチパネルシステムの概略構成例について示すブロック図。
【図2】図1に示す制御部による指示体検出部の制御例について示すフローチャート。
【図3】図1に示すタッチパネルシステムのアイドル状態における動作例について示すブロック図。
【図4】図1に示すタッチパネルシステムのアクティブ状態における動作例について示すブロック図。
【図5】図1に示すタッチパネルシステムの状態遷移について説明する模式図。
【図6】本発明の第2実施形態のタッチパネルシステムのアクティブ状態における動作例について示すブロック図。
【図7】図6に示すタッチパネルシステムのアイドル状態からアクティブ状態に遷移した直後における検出試行領域の設定方法の各例について説明する模式図。
【図8】制御部による指示体検出部の制御の別例について示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態として、ドライブラインとセンスラインとが検出面に沿って設けられる投影型の静電容量方式のタッチパネルシステムを例示して説明する。
【0037】
<<第1実施形態>>
<タッチパネルの概略構成例>
最初に、本発明の第1実施形態のタッチパネルシステムについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態のタッチパネルシステムの概略構成例について示すブロック図である。
【0038】
図1に示すように、タッチパネルシステム1は、検出面Pに接触または近接する指示体の検出を順次試行する指示体検出部2と、指示体検出部2から得られる試行結果に基づいて以後に指示体検出部2が実行する指示体の検出方法を順次制御する制御部3と、を備える。
【0039】
検出面Pに指示体が接触するとは、指示体が検出面Pに直接接触する(タッチ状態になる)ことである。また、検出面Pに指示体が近接するとは、指示体が検出面Pに直接接触せずに、検出面P上に浮いている状態(ホバー状態)になることである(以下同様とする)。
【0040】
指示体検出部2は、検出面Pに沿って設けられる複数の平行なドライブラインDLと、検出面Pに沿って設けられドライブラインDLと立体交差する複数の平行なセンスラインとSLと、ドライブラインDLを駆動することで当該ドライブラインと立体交差するセンスラインSLに状態信号を生成するドライブライン駆動部21と、センスラインSLに生成される状態信号を処理することで検出面Pに接触または近接する指示体の位置を算出する位置算出部22と、を備える。
【0041】
ドライブラインDL及びセンスラインSLは、例えば透明の樹脂材料から成るパネル体に配線される。ドライブライン駆動部21によってドライブラインDLが駆動されると、当該ドライブラインと立体交差するセンスラインSLに、状態信号が生成される。状態信号は、検出面P内の上記の立体交差部分やその近傍部分(以下、検出領域Xとする)上における指示体の状態を示す信号である。なお、図1では、ドライブラインDLとセンスラインSLとが垂直に立体交差する場合について例示しているが、垂直以外の角度で立体交差してもよい。
【0042】
状態信号は、ドライブラインDLとセンスラインSLとの間の静電容量に応じた値となり、検出面P内の検出領域Xに対して指示体がどの程度近接しているか(検出領域Xに対する指示体の接触の有無や、検出領域Xと指示体との離間距離など)を示す信号となる。なお、検出領域Xに指示体が近接するほど、静電容量は小さくなる。
【0043】
位置算出部22は、センスラインSLに生成される状態信号を増幅する増幅部221と、増幅部221が増幅した状態信号を取得して時分割で出力する信号取得部222と、信号取得部222が出力したアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部223と、A/D変換部223が変換したデジタル信号に基づいて検出面P内の容量分布の変化量を求める復号処理部224と、復号処理部224が求めた容量分布の変化量に基づいて検出面P上の指示体の位置を算出し当該位置を示す指示体位置情報を生成する指示体位置算出部225と、を備える。
【0044】
制御部3は、ドライブライン駆動部21が駆動するドライブラインDLを制御する。また、制御部3は、位置算出部22が状態信号を処理するセンスラインSLを制御する。なお、以下では、制御部3がこれらの両方の制御を行う場合について例示するが、制御部3がこれらの一方の制御のみを行うものであってもよい。また、制御部3によるドライブライン駆動部21及び位置算出部22の制御方法の詳細については、後述する。
【0045】
図1に示す制御部3は、その一部または全部の機能が、指示体位置情報が入力されるとともに必要に応じてタッチパネルシステム1を制御する図示しないホスト(例えば、コンピュータ)によって実現されてもよい。また、制御部3は、ホストから独立して、指示体検出部2とともに一つの装置内に組み込まれて構成されるものであってもよい。なお、以下では説明の簡略化のため、制御部3がホストから独立して存在しているものとする。
【0046】
<タッチパネルの概略動作例>
次に、図1を参照して、タッチパネルシステム1の概略動作例について説明する。なお、ここでは、タッチパネルシステム1が検出面Pに接触または近接する指示体を検出する1回の試行動作について、説明する。
【0047】
最初に、ドライブライン駆動部21がドライブラインDLを駆動して、センスラインSLに状態信号を生成する。次に、増幅部221が、センスラインSLに生成される状態信号の増幅を行う。さらに、信号取得部222が、増幅部221が増幅した状態信号を、時分割で出力する。なお、詳細については後述するが、ドライブライン駆動部21、増幅部221及び信号取得部222のそれぞれは、制御部3によってその動作が制御され得る(即ち、駆動すべきドライブラインDL、状態信号を処理すべきセンスラインSLが制御され得る)。
【0048】
次に、A/D変換部223が、信号取得部222が出力するアナログ信号を、所定のビット数のデジタル信号に変換する。なお、A/D変換部223によって生成されるデジタル信号のビット数は、いくつであってもよいが、後段の復号処理部224及び指示体位置算出部225における処理の精度を考慮すると、例えば12ビット以上16ビット以下であれば、好ましい。
【0049】
復号処理部224は、A/D変換部223が変換したデジタル信号に基づいて、検出面P内の容量分布の変化量を求める。例えば、復号処理部224は、指示体の検出前に、検出面P上に指示体が存在しない場合のデジタル信号を取得して、検出面P上に指示体が存在しない場合の容量分布をあらかじめ求めておく。そして、復号処理部224は、指示体の検出時のデジタル信号を取得して容量分布を求め、あらかじめ求めておいた指示体が存在しない場合の容量分布と比較して、容量分布の変化量(指示体に起因する静電容量の変化量)を求める。
【0050】
指示体位置算出部225は、復号処理部224が求めた容量分布の変化量に基づいて、検出面P上の指示体の位置を算出し、指示体位置情報を生成する。例えば、指示体位置算出部225は、検出面P内で静電容量の変化量が、検出閾値を超えて大きくなっている部分に指示体が存在すると判断して、検出面P上の指示体の位置を算出する。なお、詳細については後述するが、指示体位置算出部225は、制御部3によってその動作が制御される(上記の検出閾値、即ち、指示体検出部2の検出感度が制御される)。また、指示体位置算出部225は、指示体の位置を算出できなかった場合に、算出できなかった旨を示す指示体位置情報を生成してもよい。
【0051】
制御部3は、指示体位置算出部225が出力する指示体位置情報を、必要に応じて後段のホストに出力する。例えば、制御部3は、検出面Pに接触した指示体の位置を示す指示体位置情報を、ホストに出力する。また、制御部3は、後述のように指示体検出部2の各部の制御を行う。
【0052】
タッチパネルシステム1は、上述した試行動作を繰り返し行うことで、指示体の検出を継続的に試行する。
【0053】
<制御部による指示体検出部の制御例>
次に、図1に示したタッチパネルシステム1における、制御部3による指示体検出部2の制御例について、図面を参照して説明する。図2は、図1に示す制御部による指示体検出部の制御例について示すフローチャートである。
【0054】
制御部3は、タッチパネルシステム1の状態に応じて、指示体検出部2による指示体の検出方法を異ならせる。具体的に、制御部3は、指示体検出部2が指示体を継続的に検出しないアイドル状態であると認識すると、指示体検出部2がアイドル状態時検出方法を実行するように制御する。また、制御部3は、指示体検出部2が指示体を継続的または断続的に検出するアクティブ状態であると認識すると、指示体検出部2がアクティブ状態時検出方法を実行するように制御する。また、制御部3は、例えばホストからのコマンド指示や指示体検出部2による指示体の検出状態などに基づいて、スリープ状態であることを認識すると、指示体検出部2が指示体の検出を行わないように制御する。
【0055】
ここでは主として、制御部3によるタッチパネルシステム1のアイドル状態及びアクティブ状態の認識方法と、タッチパネルシステム1のアイドル状態及びアクティブ状態における指示体検出部2による指示体の検出方法と、についてそれぞれ説明する。なお、図2に示すフローチャートは、制御部3が、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識している状態を起点としたものである。
【0056】
[アイドル状態]
図2に示すように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識しているとき、指示体検出部2がアイドル状態時検出方法を実行するように制御する(ステップ#1)。このアイドル状態時検出方法について、図面を参照して説明する。図3は、図1に示すタッチパネルシステムのアイドル状態における動作例について示すブロック図である。
【0057】
図3に示すように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識しているとき、指示体検出部2が指示体の検出を試行する検出面P内の領域である検出試行領域A1が、検出面P内の一部の領域となるように設定する。具体的に、制御部3は、検出試行領域A1または検出面Pから検出試行領域A1を除いた領域が、一次元方向または二次元方向に対して均等に分散するように(検出試行領域A1が検出面P内でまばらになるように)設定する。これにより、タッチパネルシステム1のアイドル状態において、指示体を検出する空間的分解能を低くすることで、消費電力を低減することが可能になる。
【0058】
このような検出試行領域A1は、制御部3が、ドライブライン駆動部21を制御したり、位置算出部22を制御したりすることで、設定することができる。例えば、制御部3が、ドライブライン駆動部21がドライブラインDLを所定本数置き(図3では1本置き)に駆動するように制御すると、検出試行領域A1は、ドライブラインDLの整列方向に沿って分散したものとなる。
【0059】
また例えば、制御部3が、位置算出部22が状態信号を処理するセンスラインSLが所定本数置き(図3では1本置き)になるように制御すると、検出試行領域A1は、センスラインSLの整列方向に沿って分散したものとなる。このとき、図3に示すように、制御部3が、増幅部221や信号取得部222における処理を制御すると(具体的に、増幅部221が状態信号を選択的に増幅するようにしたり、信号取得部222が取得した状態信号を選択的に後段に出力するようにしたりすると)、増幅部221の増幅処理における消費電力を低減したり、信号取得部222の後段の処理における消費電力を低減したりすることができるため、好ましい。
【0060】
また、制御部3が、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識しているとき、制御部3は、指示体検出部2が単位時間(例えば1秒、第2単位時間)当たりに指示体の検出を試行する回数である検出試行回数(フレームレート)を、アクティブ状態よりも少なくする。具体的に例えば、50Hz以上60Hz以下程度にする。これにより、タッチパネルシステム1のアイドル状態において、指示体を検出する時間的分解能を低くすることで、消費電力を低減することが可能になる。
【0061】
さらに、制御部3は、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識しているとき、検出面Pに接触または近接する指示体を検出する指示体検出部2の検出感度を、アクティブ状態よりも大きくする。具体的に、制御部3は、指示体位置算出部225における検出閾値を、アクティブ状態よりも大きくする(検出面Pに近接する指示体が検出される大きさにする)。これにより、アイドル状態のタッチパネルシステム1が、検出面Pに近接する指示体を、迅速かつ漏れ無く検出することが可能になる。
【0062】
このように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアイドル状態であるときに、指示体を検出する分解能がアクティブ状態よりも低いアイドル状態時検出方法を指示体検出部2が実行するように制御する。そのため、タッチパネルシステム1のアイドル状態における消費電力を、低減することが可能になる。
【0063】
[アイドル状態からアクティブ状態への遷移]
上述のように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識しているときに、指示体検出部2を制御して、検出面Pに近接する指示体の検出を試行する。そして、制御部3は、指示体検出部2の試行結果(即ち、指示体位置情報)を参照することで、指示体検出部2が検出面Pに近接する指示体を検出したか否かを確認する(ステップ#2)。
【0064】
このとき、制御部3は、指示体検出部2が所定の単位時間(第1単位時間)以内に検出面Pに近接している指示体を所定の回数(第1回数)以上検出したことを確認すると(ステップ#2、YES)、アイドル状態からアクティブ状態に遷移したと認識する(ステップ#3)。
【0065】
一方、指示体検出部2が、上記のように検出面Pに近接する指示体を検出しない場合(ステップ#2、NO)、制御部3は、指示体検出部2に対して、アイドル状態時検出方法を継続して実行させる(ステップ#1)。
【0066】
なお、上記のステップ#2において、制御部3がアイドル状態からアクティブ状態に遷移したと認識するために確認する検出面Pに近接する指示体を検出する上記の所定の回数(第1回数)は、1回としてもよいが、2回以上にするとノイズ等に起因する誤検出を好適に排除することが可能になり、精度良く検出面に近接する指示体を検出することが可能になるため、好ましい。
【0067】
[アクティブ状態]
図2に示すように、制御部3が、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であると認識しているとき、指示体検出部2がアクティブ状態時検出方法を実行するように制御する(ステップ#3)。このアイドル状態時検出方法について、図面を参照して説明する。図4は、図1に示すタッチパネルシステムのアクティブ状態における動作例について示すブロック図である。
【0068】
図4に示すように、制御部3が、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であると認識しているとき、制御部3は、検出試行領域A2が検出面Pの全面に及ぶように設定する。これにより、タッチパネルシステム1のアクティブ状態において、指示体を検出する空間的分解能を、高くすることが可能になる。
【0069】
このような検出試行領域A2は、制御部3が、ドライブライン駆動部21を制御したり、位置算出部22を制御したりすることで、設定することができる。例えば、制御部3が、ドライブライン駆動部21が全てのドライブラインDLを駆動するように制御し、かつ、位置算出部22が全てのセンスラインSLから得られる状態信号を処理するように制御すると、検出試行領域A2は、検出面Pの全面に及ぶものとなる。
【0070】
また、制御部3が、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であると認識しているとき、制御部3は、検出試行回数をアイドル状態よりも多くする。具体的に例えば、100Hz以上200Hz以下程度にする。これにより、タッチパネルシステム1のアクティブ状態において、指示体を検出する時間的分解能を、高くすることが可能になる。
【0071】
さらに、制御部3は、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であると認識しているとき、検出面Pに接触または近接する指示体を検出する指示体検出部2の検出感度を、アイドル状態よりも小さくする。具体的に例えば、制御部3は、指示体位置算出部225における検出閾値を、検出面Pに接触する(極めて近接する場合も含み得る)指示体が検出されて検出面Pに近接する指示体が検出されない程度の大きさにする。これにより、アクティブ状態のタッチパネルシステム1が、検出面Pに接触する指示体を、ノイズや検出面Pに近接する指示体と区別して精度良く検出することが可能になる。
【0072】
このように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であるときに、指示体を検出する分解能がアイドル状態よりも高いアクティブ状態時検出方法を指示体検出部2が実行するように制御する。そのため、タッチパネルシステム1のアクティブ状態において、指示体を検出する分解能を、高くすることが可能になる。
【0073】
[アクティブ状態からアイドル状態への遷移]
上述のように、制御部3は、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であると認識しているときに、指示体検出部2を制御して、検出面Pに接触する指示体の検出を試行する。そして、制御部3は、指示体検出部2の試行結果(即ち、指示体位置情報)を参照することで、指示体検出部2が検出面Pに接触する指示体を検出したか否かを確認する(ステップ#4)。
【0074】
このとき、制御部3は、指示体検出部2が所定の単位時間(第3単位時間)以内に検出面Pに接触する指示体を検出したことを確認すると(ステップ#4、YES)、指示体検出部2(指示体位置算出部225)から得られた指示体位置情報を、後段のホストに出力するとともに(ステップ#5)、指示体検出部2に対して、アクティブ状態時検出方法を継続して実行させる(ステップ#3)。
【0075】
一方、指示体検出部2が、上記の所定の単位時間以内に検出面Pに接触する指示体を検出しない場合(ステップ#4、NO)、制御部3は、アクティブ状態からアイドル状態に遷移したと認識する(ステップ#1)。
【0076】
このように、制御部3が、積極的にタッチパネルシステム1がアイドル状態であると認識し、指示体検出部2がアイドル状態時検出方法を実行するように制御することで、消費電力を積極的に低減することが可能になる。
【0077】
以上のように、タッチパネルシステム1では、アイドル状態における指示体を検出する分解能が、アクティブ状態における指示体を検出する分解能よりも、低くなる。そのため、アクティブ状態における指示体を検出する分解能を高くするとともに、アイドル状態における消費電力を低減することが可能になる。さらに、当該タッチパネルシステム1では、アイドル状態で検出面Pに近接する指示体を検出すると、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する。そのため、指示体が検出面Pに近接してから接触する前に、アイドル状態からアクティブ状態に遷移して、指示体を検出する分解能を高くすることができる。したがって、検出面Pに接触する指示体を、アクティブ状態において迅速に検出することが可能になる。
【0078】
<タッチパネルシステムの各状態の遷移>
次に、タッチパネルシステム1の各状態(アイドル状態、アクティブ状態及びスリープ状態)の遷移について、図面を参照して説明する。図5は、図1に示すタッチパネルシステムの状態遷移について説明する模式図である。
【0079】
上述のように、制御部3は、タッチパネルシステム1の各状態(アイドル状態、アクティブ状態及びスリープ状態)を認識し、それぞれの状態に応じて指示体検出部2の動作を制御する。この各状態は、タッチパネルシステム1の動作状況やホスト等からのコマンド指示に応じて、適宜遷移する。
【0080】
図5に示すように、タッチパネルシステム1は、アイドル状態とアクティブ状態との間で、相互に遷移する。上述のように、アイドル状態において、検出面Pに近接する指示体が検出されると、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する(図2のステップ#2)。一方、アクティブ状態において、検出面Pに接触する指示体が検出されないと、アイドル状態からアクティブ状態に遷移する(図2のステップ#4参照)。さらに、ホスト等から与えられるコマンド指示に応じて、アクティブ状態からアイドル状態へ遷移する。
【0081】
また、タッチパネルシステム1は、アクティブ状態とスリープ状態との間で、ホスト等から与えられるコマンド指示に応じて、相互に遷移する。また、タッチパネルシステム1は、検出面Pに近接する指示体が所定期間検出されない場合や、ホスト等から与えられるコマンド指示に応じて、アイドル状態からスリープ状態へと遷移する。
【0082】
なお、タッチパネルシステム1が、ホスト等から与えられるコマンド指示に応じて、スリープ状態からアイドル状態に遷移してもよい。また、タッチパネルシステム1が、ホスト等から与えられるコマンド指示に応じて、アイドル状態からアクティブ状態に遷移してもよい。
【0083】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の第2実施形態のタッチパネルシステムについて、図面を参照して説明する。図6は、本発明の第2実施形態のタッチパネルシステムのアクティブ状態における動作例について示すブロック図であり、第1実施形態のタッチパネルシステム1について示した図4に相当するものである。なお、第2実施形態のタッチパネルシステム1aは、アクティブ状態における指示体検出部2の動作(アクティブ状態時検出方法、図2のステップ#3参照)を除き、第1実施形態のタッチパネルシステム1と同様である。そのため、以下では、第2実施形態のタッチパネルシステム1aのアクティブ状態における指示体検出部2の動作についてのみ詳細に説明し、他の動作については、第1実施形態のタッチパネルシステム1の説明を適宜参酌するものとして、説明を省略する。
【0084】
図6に示すように、制御部3aは、タッチパネルシステム1aがアクティブ状態であると認識しているとき、直近に認識した指示体の位置を含むように、検出試行領域A3を設定する。これにより、検出面Pに接触する指示体が以後含まれる可能性が高い検出試行領域A3を、順次設定することが可能になる。そのため、タッチパネルシステム1aのアクティブ状態において、指示体検出する分解能を高くするだけでなく、消費電力を低減することが可能になる。また、検出試行領域A3を限定することができるため、指示体の検出の試行によって生じるノイズを、極力低減することが可能になる。
【0085】
このような検出試行領域A3は、制御部3aが、直近に得られた指示体位置情報を参照するとともに、ドライブライン駆動部21を制御したり、位置算出部22を制御したりすることで、設定することができる。例えば、制御部3aが、直近に検出された指示体の位置を含む所定領域(即ち、検出試行領域A3)を通過するドライブラインDLを選択的に駆動するようにドライブライン駆動部21を制御し、当該所定領域を通過するセンスラインSLに生成される状態信号を選択的に処理するように位置算出部22を制御することで、検出試行領域A3を設定することができる。
【0086】
また、制御部3aが、タッチパネルシステム1aがアクティブ状態であると認識しているとき、制御部3は、検出試行回数をアイドル状態よりも多くする。具体的に例えば、100Hz以上200Hz以下程度にする。これにより、タッチパネルシステム1aのアクティブ状態において、指示体を検出する分解能を、高くすることが可能になる。
【0087】
さらに、制御部3aは、タッチパネルシステム1aがアクティブ状態であると認識しているとき、検出面Pに接触または近接する指示体を検出する指示体検出部2の検出感度を、アイドル状態よりも小さくする。具体的に、制御部3aは、指示体位置算出部225における検出閾値を、アイドル状態よりも小さくする。これにより、アイドル状態のタッチパネルシステム1aが、検出面Pに接触する指示体を、精度良く検出することが可能になる。
【0088】
このように、制御部3aは、タッチパネルシステム1がアクティブ状態であるときに、指示体を検出する分解能がアイドル状態よりも高いアクティブ状態時検出方法を指示体検出部2が実行するように制御する。そのため、タッチパネルシステム1のアクティブ状態において、指示体を検出する分解能を、高くすることが可能になる。
【0089】
なお、図6に示すように、タッチパネルシステム1aがアクティブ状態であるとき、制御部3aが、直近に認識した指示体の位置を含む検出試行領域A3以外に、検出試行領域を設定してもよい。具体的に例えば、検出面Pの内部かつ検出試行領域A3の外部に、アイドル状態と同様の検出試行領域A1(図3参照)を設定してもよい。
【0090】
また、制御部3aは、タッチパネルシステム1aがアイドル状態からアクティブ状態に遷移した直後において、検出面Pに近接している指示体の位置を認識しているが、この位置に基づいて、上述の検出試行領域A3を設定してもよい。この場合における検出試行領域の設定方法の各例について、図面を参照して説明する。図7は、図6に示すタッチパネルシステムのアイドル状態からアクティブ状態に遷移した直後における検出試行領域の設定方法の各例について説明する模式図である。
【0091】
図7(a)は、制御部3aが、検出面Pに近接する指示体が単位時間(第1単位時間)以内に1回(第1回数)検出されたことを確認することで、アイドル状態からアクティブ状態に遷移したことを認識するものである(図2のステップ#2参照)。
【0092】
この場合、制御部3aは、ドライブライン駆動部21を制御して、包含領域R11の端辺及び内部を通過するドライブラインDLを選択的に駆動する。また、制御部3aは、位置算出部22を制御して、包含領域R11の端辺及び内部を通過するセンスラインSLに生成される状態信号を選択的に処理する。これにより、検出試行領域A10が設定されたことになる。
【0093】
包含領域R11とは、ドライブラインDL及びセンスラインSLの一部から成る領域であり、検出面Pに近接する指示体の位置H11を包含する最小の領域である。なお、後述する包含領域R21,R22,R31〜R33も同様である。
【0094】
図7(b)は、制御部3aが、検出面Pに近接する指示体が単位時間(第1単位時間)以内に2回(第1回数)検出されたことを確認することで、アイドル状態からアクティブ状態に遷移したことを認識するものである(図2のステップ#2参照)。
【0095】
この場合、制御部3aは、まず、検出面Pに近接する指示体の位置H21を包含する包含領域R21の重心と、検出面Pに近接する指示体の位置H22を包含する包含領域R22の重心と、を結んで成る線分の中点C20を求める。
【0096】
そして、制御部3aは、ドライブライン駆動部21を制御して、中点C20を通過する1本のドライブラインDL(中点C20を通過するドライブラインDLが存在しない場合は中点C20に隣接する2本のドライブラインDL)と、当該ドライブラインDLの両隣のそれぞれに存在する所定の本数(図7(b)に示す例では1本、マージン)のドライブラインDLと、を選択的に駆動する。
【0097】
また、制御部3aは、位置算出部2を制御して、中点C20を通過する1本のセンスラインSL(中点C20を通過するセンスラインSLが存在しない場合は中点C20に隣接する2本のセンスラインSL)と、当該センスラインSLの両隣のそれぞれに存在する所定の本数(図7(b)に示す例では1本、マージン)のセンスラインSLと、に生成される状態信号を選択的に処理する。これにより、検出試行領域A20が設定されたことになる。
【0098】
図7(c)は、制御部3aが、検出面Pに近接する指示体が単位時間(第1単位時間)以内に3回(第1回数)検出されたことを確認することで、アイドル状態からアクティブ状態に遷移したことを認識するものである(図2のステップ#2参照)。
【0099】
この場合、制御部3aは、まず、検出面Pに近接する指示体の位置H31を包含する包含領域R31の重心と、検出面Pに近接する指示体の位置H32を包含する包含領域R32の重心と、検出面Pに近接する指示体の位置H33を包含する包含領域R33の重心と、を結んで成る三角形の重心C30を求める。
【0100】
そして、制御部3aは、ドライブライン駆動部21を制御して、重心C30を通過する1本のドライブラインDL(重心C30を通過するドライブラインDLが存在しない場合は重心C30に隣接する2本のドライブラインDL)と、当該ドライブラインDLの両隣のそれぞれに存在する所定の本数(図7(c)に示す例では0本、マージン)のドライブラインDLと、を選択的に駆動する。
【0101】
また、制御部3aは、位置算出部2を制御して、重心C30を通過する1本のセンスラインSL(重心C30を通過するセンスラインSLが存在しない場合は重心C30に隣接する2本のセンスラインSL)と、当該センスラインSLの両隣のそれぞれに存在する所定の本数(図7(c)に示す例では1本、マージン)のセンスラインSLと、に生成される状態信号を選択的に処理する。これにより、検出試行領域A30が設定されたことになる。
【0102】
なお、図7(a)〜図7(c)では、制御部3aが、検出面Pに近接する指示体を単位時間(第1単位時間)に1〜3回(第1回数)検出されたことを確認することで、アイドル状態からアクティブ状態に遷移したことを認識する場合について例示したが、この回数(第1回数)は4回以上であってもよい。この場合、例えば図7(c)と同様に、それぞれの包含領域の重心を結んでなる多角形の重心を基準として、駆動すべきドライブラインDL及び状態信号を処理すべきセンスラインSLを選択してもよい。
【0103】
また、図7(b)及び図7(c)では、包含領域H21,H22,H31〜H33の重心をそれぞれ等価的に扱って、中点C20及び重心C30を算出する場合について例示したが、包含領域H21,H22,H31〜H33の重心は、等価的に扱わなくてもよい。例えば、時間的に後に検出された指示体の位置を包含する包含領域の重心ほど、これらを結んで成る線分の中点や多角形の重心を算出する際に、重みを大きくしてもよい。
【0104】
また、マージンの本数は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。例えば後者の場合、包含領域が大きいほどマージンの本数を多くしてもよいし、包含領域の重心間の距離が大きいほどマージンの本数を多くしてもよい。
【0105】
また、最低限選択すべきドライブラインDLやセンスラインSLの本数を設定してもよい。例えば、マージンが0本の場合であっても、最低限2本のドライブラインDLまたはセンスラインSLが選択されるように設定してもよい。
【0106】
<<変形等>>
[1] 上述の第1実施形態及び第2実施形態のタッチパネルシステム1,1aにおいて、アイドル状態とアクティブ状態とで検出感度(指示体位置算出部225における検出閾値)を切り替える場合について例示したが、検出感度を切り替えなくてもよい。具体的に例えば、アクティブ状態における指示体位置算出部225の検出閾値を、アイドル状態における指示体位置算出部225の検出閾値(検出面Pに近接する指示体が検出される大きさ)と、等しくしてもよい。この場合であっても、アクティブ状態における指示体を検出する分解能を高くするとともに、アイドル状態における消費電力を低減することが可能になる。さらに、検出面Pに接触する指示体を、アクティブ状態において迅速に検出することが可能になる。
【0107】
また、第2実施形態のタッチパネルシステム1aでは、アクティブ状態において、直近に検出された指示体の位置を含む検出試行領域A3内で指示体の検出が行なわれる。そのため、上記のようにアイドル状態とアクティブ状態とに応じて検出感度を切り替えない場合であっても、指示体の検出の試行に伴うノイズ等の影響を抑制して、精度良く指示体を検出することが可能になる。
【0108】
[2] 上述の第1実施形態及び第2実施形態のタッチパネルシステム1,1aにおいて、制御部3が、アクティブ状態であるときに、指示体検出部2の試行結果(指示体位置情報)を参照して、指示体検出部2が検出面Pに接触する指示体を検出したか否かを確認する(図2のステップ#4参照)としたが、当該確認を行なわなくてもよい。この場合の制御部3,3aによる指示体検出部2の制御例を、図8に示す。図8は、制御部による指示体検出部の制御の別例について示すフローチャートである。なお、図8に示す制御例において、ステップ#1〜#3については図2に示した制御例と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
図8に示す制御例では、制御部3,3aが、指示体検出部2がアクティブ状態時検出方法を実行するように制御して(ステップ#3)、指示体検出部2(指示体位置算出部225)から指示体位置情報を得ると、当該指示体位置情報を後段のホストに出力し(ステップ#5a)、さらに指示体検出部2に対してアクティブ状態時検出方法を継続して実行させる(ステップ#3)。
【0110】
[3] 上述の第1実施形態及び第2実施形態のタッチパネルシステム1,1aは、組み合わせて実施することが可能である。
【0111】
具体的に例えば、第2実施形態のタッチパネルシステム1aにおいて、アイドル状態からアクティブ状態に遷移した後、指示体検出部2が最初に検出面Pに接触する指示体を検出する前(図2において、ステップ#2がYESになった後、最初にステップ#4がYESになる前)に、制御部3aが、検出面Pの全面に及ぶ検出試行領域A2(図4参照)を設定してもよい。
【0112】
また反対に、第1実施形態のタッチパネルシステム1において、アイドル状態からアクティブ状態に遷移した後、指示体検出部2が最初に検出面Pに接触する指示体を検出する前(図2において、ステップ#2がYESになった後、最初にステップ#4がYESになる前)に、制御部3が、直近に認識した指示体の位置を含む検出試行領域A3(図6参照)を設定してもよい。
【0113】
[4] 上述の第1実施形態及び第2実施形態のタッチパネルシステム1,1aにおいて、制御部3,3aがアイドル状態からアクティブ状態に遷移したことを認識するためのトリガを、「指示体検出部2が検出面Pに近接する指示体を検出したこと」としたが(図2のステップ#2参照)、当該トリガが、例えばユーザ等の指示によって「指示体検出部2が検出面Pに接触する指示体を検出したこと」に切り替えられ得る構成であってもよい。
【0114】
[5] 本発明の1つの実施形態として、投影型の静電容量方式のタッチパネルシステムについて例示したが、本発明は、他の静電容量方式や光学式など、検出面Pに近接する指示体及び検出面Pに接触する指示体が検出可能であり、指示体を検出する分解能が可変であるタッチパネルシステムであれば、どのような方式のタッチパネルシステムであっても適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のタッチパネルシステムやその動作方法は、例えばカーナビゲーションシステムなどの迅速な応答が要求される装置に、好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0116】
1,1a : タッチパネルシステム
2 : 指示体検出部
21 : ドライブライン駆動部
22 : 位置算出部
221 : 増幅部
222 : 信号取得部
223 : A/D変換部
224 : 復号処理部
225 : 指示体位置算出部
3,3a : 制御部
DL : ドライブライン
SL : センスライン
P : 検出面
X : 検出領域
A1〜A3,A10,A20,A30 : 有効領域
H11,H21,H22,H31〜H33 : 検出面に近接した指示体の位置
R11,R21,R22,R31〜R33 : 包含領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出面に接触または近接する指示体の検出を順次試行する指示体検出部と、
前記指示体検出部から得られる試行結果に基づいて、以後に前記指示体検出部が実行する前記指示体の検出方法を順次制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記指示体検出部が前記指示体を継続的に検出しないアイドル状態であることを認識すると、前記指示体検出部がアイドル状態時検出方法を実行するように制御し、
前記指示体検出部が前記指示体を継続的または断続的に検出するアクティブ状態であることを認識すると、前記アイドル状態時検出方法と比較して、前記指示体を検出する時間的分解能及び空間的分解能の少なくとも一方を高くしたアクティブ状態時検出方法を前記指示体検出部が実行するように制御し、
前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が前記検出面に近接している前記指示体を検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識することを特徴とするタッチパネルシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記指示体検出部が前記指示体の検出を試行する前記検出面内の領域である検出試行領域を設定するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行領域が、前記制御部が直近に認識した前記指示体の位置を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第1単位時間以内に前記検出面に近接している前記指示体を第1回数以上検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識するものであり、
前記制御部は、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識するとき、前記指示体検出部が前記第1単位時間以内に検出した前記第1回数の前記指示体のそれぞれの位置に基づいて算出した位置を、前記指示体の位置として認識して、当該位置を含む前記検出試行領域を設定することを特徴とする請求項2に記載のタッチパネルシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記アクティブ状態であると認識しているとき、前記指示体検出部が検出した前記検出面に接触する前記指示体の位置を、前記指示体の位置として認識して、当該位置を含む前記検出試行領域を設定することを特徴とする請求項2または3に記載のタッチパネルシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記指示体検出部が前記指示体の検出を試行する前記検出面内の領域である検出試行領域を設定するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行領域が、前記検出面の全面に及ぶことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルシステム。
【請求項6】
前記アイドル状態時検出方法における、前記検出試行領域または前記検出面から前記検出試行領域を除いた領域が、一次元方向または二次元方向に対して均等に分散していることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記指示体検出部が第2単位時間当たりに前記指示体の検出を試行する回数である検出試行回数を制御するものであり、
前記アクティブ状態時検出方法における前記検出試行回数が、前記アイドル状態時検出方法における前記検出試行回数よりも、多いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記アイドル状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第1単位時間以内に前記検出面に近接している前記指示体を第1回数以上検出したことを確認すると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移したと認識することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項9】
前記制御部は、
前記アクティブ状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が前記検出面に接触している前記指示体を検出したことを確認すると、その検出結果を外部に出力し、
前記指示体検出部が前記検出面に接触している前記指示体を検出しないことを確認すると、前記アクティブ状態から前記アイドル状態に遷移したと認識することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項10】
前記制御部は、前記アクティブ状態であると認識しているときに、前記指示体検出部が第3単位時間以内に前記検出面に接触している前記指示体を検出しないことを確認すると、前記アクティブ状態から前記アイドル状態へ遷移したと認識することを特徴とする請求項9に記載のタッチパネルシステム。
【請求項11】
前記アイドル状態時検出方法における、前記検出面に接触または近接する前記指示体を検出する前記指示体検出部の検出感度は、
前記アクティブ状態時検出方法における、前記検出面に接触または近接する前記指示体を検出する前記指示体検出部の検出感度よりも、大きいことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項12】
前記指示体検出部が、
前記検出面に沿って設けられる複数の平行なドライブラインと、
前記検出面に沿って設けられ、前記ドライブラインと立体交差する複数の平行なセンスラインと、
前記ドライブラインを駆動することで当該ドライブラインと立体交差する前記センスラインに状態信号を生成するドライブライン駆動部と、
前記センスラインに生成される状態信号を処理することで、前記検出面に接触または近接する前記指示体の位置を算出する位置算出部と、を備え、
前記制御部が、前記ドライブライン駆動部が駆動する前記ドライブラインと、前記位置算出部が前記状態信号を処理する前記センスラインと、の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のタッチパネルシステム。
【請求項13】
検出面に接触または近接する指示体の検出を試行する指示体検出ステップと、
前記指示体検出ステップにより得られた試行結果に基づいて、以後の前記指示体検出ステップで実行される前記指示体の検出方法を制御する制御ステップと、を備え、
前記指示体検出ステップ及び前記制御ステップのそれぞれを順次行い、
前記制御ステップは、
前記指示体検出ステップで前記指示体が継続的に検出されないアイドル状態である場合に、前記指示体検出ステップでアイドル状態時検出方法が実行されるように制御し、
前記指示体検出ステップで前記指示体が継続的または断続的に検出されるアクティブ状態である場合に、前記アイドル状態時検出方法と比較して、前記指示体を検出する時間的分解能及び空間的分解能の少なくとも一方を高くしたアクティブ状態時検出方法が前記指示体検出ステップで実行されるように制御するものであり、
前記アイドル状態である場合に、前記指示体検出ステップによって前記検出面に近接している前記指示体が検出されると、前記アイドル状態から前記アクティブ状態に遷移することを特徴とするタッチパネルシステムの動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89072(P2013−89072A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229711(P2011−229711)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】