説明

タッチパネル用導電性基材用の製造方法、および該基材を具備してなるタッチパネル

【課題】本発明は、従来の問題を有しない、配線構造を有するタッチパネル用導電性基材の製造方法であって、該製造方法により製造されたタッチパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】 基材上に配線構造を有するタッチパネル用導電性基材の製造方法であって、
前記配線構造の少なくとも一部が、イオン性を有する保護物質により被覆された、平均粒子径が1〜100nmである導電性微粒子を含む材料を基材上に被膜形成させることによって得られることを特徴とするタッチパネル用導電性基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造を有するタッチパネル用導電性基材の製造方法であって、前記配線構造の少なくとも一部が、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料を被膜形成することを特徴とするタッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化や多様化や小型軽量化が進むに伴い、液晶等の表示素子の前面に透明タッチパネルを装着し、この透明タッチパネルを通して表示素子に表示された文字や記号、絵柄などの視認、選択を行い、透明タッチパネルの操作によって機器の各機能の切り替えを行うものが増えている。
【0003】
タッチパネルパネルは、例えば、銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(PDA、UMPC)、複写機、ファクシミリ、携帯ゲーム機、案内板、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置されている多機能端末)、携帯電話、鉄道車両のモニタ装置、クイズ番組などの回答用機器等の入力機器として急激に普及している。
【0004】
既存のタッチパネルの方式としては、抵抗膜式、光学方式、静電容量方式、超音波方式、圧力方式、電磁波誘導方式、画像認識方式、振動検出方式などに分けられる。なかでも、構造の単純さなどから抵抗膜方式のタッチパネルが最も広く用いられている。
【0005】
図1に、抵抗膜式のタッチパネルの概略断面図を示す。図2には、タッチパネルの概略斜視図を示す。タッチパネルは、上部電極基板11と下部電極基板12から成り、スペーサー7を介して貼り合わせ剤により相対させる構造となっている。また、前記上部電極基板11の透明導電膜3上には、平行な一対の接続電極5が配置され、前記下部電極基板12の前記透明導電膜3上には、平行な一対の接続電極5がそれぞれ配置され、前記上部電極基板11上の接続電極と前記上部電極基板12上の接続電極5が方形配置となるように対抗配置されている。
【0006】
さらに、前記上部電極基板11の接続電極5と、前記下部電極基板12の接続電極5とが導電性接着剤などによって接続され、その接続部から引き回し回路6によってフレキシブルケーブル8に接続される。前記接続電極5と引き回し回路6によって配線構造21が構成されている。また、引き回し回路6は、透明導電膜に接していても接していなくてもよい。
【0007】
尚、通常は、前記下部電極基板12の下基材2は透明ガラス、前記上部電極基板11の上基材1は可動の高分子フィルムで構成されている。
【0008】
ところで、最近では、上記のようなタッチパネルにおいて、製品の高性能化、小型化、画面部分の大型化のため、配線構造21部分が、省スペースで構成されるよう求められている。
【0009】
したがって、配線構造21には、配線構造21の細線化、薄膜化、体積抵抗値の低減化等が求められる。さらに、タッチパネルの性能安定性のためには、上記に加え、細線構造21部の環境安定性、基材との密着性が求められている。
【0010】
配線構造21を形成する手段として、基材上に、銀ペーストなどの導電ペーストを印刷する方法が行われている。バインダーとして含有する樹脂のために、導電性フィラーの固有体積抵抗以上の抵抗が発生し、配線構造21を細線化、薄膜化することによって、配線構造21の導電性のばらつきが大きくなり、タッチ位置検出の差が生じるという問題が起こる。
【0011】
この問題の解決策として、配線構造21の導電性のばらつきを減らすため、配線構造21の線幅を太くするか、配線構造21の厚みを厚く形成する方法がある。
【0012】
しかし、この方法は、配線構造21の導電性のばらつきは減らすことが出来るが、配線構造21の面積が大きくなり、タッチパネルの大型化につながるという問題がある。
【0013】
また、配線構造21を形成する手段として、基材上に、銀ペーストなどの導電性ペーストを印刷する方法は、バインダーとして含有する樹脂のために、高温、高湿環境下において、導電性ペーストの特性が劣化し、配線構造21部分の端子間抵抗値が上昇する問題が起こる。
【0014】
この問題の解決策として、導電性ペーストの抵抗を下げるために、導電性ペーストにより配線構造21を印刷した後、約500℃の高温で加熱し、樹脂を除去する方法がある。
【0015】
しかし、この方法は、配線構造21の体積抵抗値を低減することは出来るが、バインダー樹脂成分の消失により基材との密着性が確保できないという問題や、高温加熱処理により透明導電膜3の導電性のばらつきが大きくなり、タッチパネル分解能が悪くなる等といった問題がある(特許文献1参照)。
【0016】
また、配線構造21を形成する手段として、基材上に、銀ペーストなどの導電性ペーストを印刷する方法は、主にスクリーン印刷法によって行われため、導電性フィラーによる版の目詰まり等の問題が生じ、配線構造21の膜厚のばらつき、抵抗値のばらつきが生じるという問題があった。抵抗値のばらつきは、導電性ペーストを厚く印刷すれば解決できるが、配線構造21の小面積化は実現できない。
【0017】
また、上記導電性ペーストの課題の解決策として、透明導電膜上に、導電性金属膜をスパッタやメッキ法でコーティングする方法、透明導電膜上に金属箔を導電性接着剤で配置する方法等が行われている。
【0018】
これらの方法は、配線構造21にバインダー樹脂成分を含まないため、配線構造21の体積抵抗値を低くすることが出来、配線構造21の細線化、薄膜化が可能である。
【0019】
しかし、これらの方法は、基材への密着性が悪く、さらに、配線構造21を形成する際、エッチング操作が含まれるため操作が煩雑で、高コストである上、廃液処理等の問題もあり、さらには環境面からも好ましくない。また、エッチング操作の際に、同時に透明導電膜もエッチングされてしまう危険が高い。また、エッチング操作を含むため、使用できる基材が、ガラス及びプラスチックフィルム等の、エッチング耐性のあるものに限定されるという問題がある。
【0020】
上記より、タッチパネルの配線構造21として、基材及び/又は透明導電膜3との密着性が良好で、細線及び/又は薄膜でも十分な導電性が得られるタッチパネル用導電性基材が求められていた。
【特許文献1】特開2002−358163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、上述した問題を生じることなく、タッチパネルの配線構造21の基材への密着性が良好で、細線及び/又は薄膜でも十分な導電性が得られ、かつ、製造が容易なタッチパネル用導電性基材およびそれを用いたタッチパネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明は、基材上に配線構造を有するタッチパネル用導電性基材の製造方法であって、
前記基材上の配線構造の少なくとも一部が、イオン性を有する保護物質により被覆された、平均粒子径が1〜100nmである導電性微粒子を含む材料を基材上に被膜形成させることによって得られることを特徴とするタッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0023】
また、本発明は、タッチパネル用導電性基材が、透明導電膜上に配線構造を有することを特徴とする、上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0024】
また、本発明は、導電性微粒子を含む材料が、少なくとも1種の液状媒体を含むことを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0025】
また、本発明は、導電性微粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた金属、またはこれら金属の合金の少なくとも1種であることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0026】
また、本発明は、導電性微粒子が、銀であることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0027】
また、本発明は、導電性微粒子が、液体媒体中で導電性金属化合物を還元して得られることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0028】
また、本発明は、導電性微粒子が、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、導電性金属化合物を還元して得られることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0029】
【化1】

(式中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。)
また、本発明は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と、前記保護物質に対するイオン交換能を有する物質とを接触させることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0030】
また、本発明は、イオン交換能を有する物質を含むイオン交換層を形成した後、前記イオン交換層上に、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料により配線用被膜を形成することを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0031】
また、本発明は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料により配線用被膜を形成して導電性微粒子層とした後、前記導電性微粒子層上にイオン交換能を有する物質を含むイオン交換層を形成することを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0032】
また、本発明は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料を印刷して被膜を形成することを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材の製造方法に関する。
【0033】
また、本発明は、上記製造方法で製造されてなる、基材上に配線構造を有するタッチパネル用導電性基材に関する。
【0034】
また、本発明は、配線構造が、透明導電膜と接続する接続電極、及び/または、引き回し回路部であることを特徴とする上記タッチパネル用導電性基材に関する。
【0035】
また、本発明は、一対の導電性基材を、短絡しない間隔をもって配置してなるタッチパネルであって、
少なくとも一方の導電性基材が、上記タッチパネル用導電性基材であるタッチパネルに関する。
【発明の効果】
【0036】
本発明のタッチパネル用導電性基材において、平均粒子径1〜100nmの導電性微粒子を含む材料を用いて配線構造21を形成することにより、配線構造21の線幅を細く、厚みを薄くすることが出来る。すなわち、配線構造21部分の面積を狭くすることができ、高性能化、小型化、薄型化タッチパネルを提供できる。
【0037】
また、本発明の製造方法で形成された上記配線構造21は、導電性ペーストと異なり、バインダー成分を必要としないために、導電性の損失が少なく、線幅および膜厚によらず安定した導電性を有する配線構造21を形成することが出来る。
【0038】
さらに、本発明の製造方法では、低温かつ短時間で配線構造21を形成できるため、配線構造21を形成する基材や透明導電膜を痛めることなく、配線構造21を形成することが出来、タッチパネルの分解能を低下させることなくタッチパネルを製造することが出来る。
【0039】
さらに、本発明のタッチパネル用導電性基材において、導電性微粒子を含む材料を用いて配線構造21を形成すれば、各種プラスチィック、ガラス基材等への密着性が優れ、さらには、透明導電膜3への密着も優れるため、耐久性、耐熱耐湿性の優れたタッチパネルを提供できる。
【0040】
また、本発明のタッチパネル用導電性基材における配線構造21を形成するために用いられる印刷方式は、基材の種類やタッチパネルの面積に合わせて、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷を始めとした各種印刷方式を適宜選択することが出来るため、量産性良く、低コストで製造が容易なタッチパネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を更に詳しく説明する。しかし、本発明は本発明の技術的思想を逸脱しない限り、以下の説明あるいは実施の形態に限定されるものではない。
【0042】
まず、本発明のタッチパネル用導電性基材の製造方法は、配線構造の少なくとも一部が、イオン性を有する保護物質により被覆された、平均粒子径が1〜100nmである導電性微粒子を含む材料を基材上に被膜形成させることによって得られることを特徴としている。
【0043】
以下、本発明で用いられる、イオン性を有する保護物質(B)によって被覆された導電性微粒子(A)、イオン交換能を有する物質(C)、被膜形成用組成物(D)、基材(E)、タッチパネル導電性部材(F)について順次詳細に説明する。
【0044】
本発明で用いられる、イオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子について、導電性微粒子(A)、およびイオン性を有する保護物質(B)について説明する。
(A)導電性微粒子
本発明で用いられる導電性微粒子は、タッチパネル用配線構造に導電性を与えるために用いられるものであり、被膜に導電性を与えるものである限りどのようなものであってもよい。また、導電性微粒子の平均粒子径は1〜100nmの範囲である。このような導電性微粒子としては、代表的なものとして導電性の金属物質が挙げられる。このような金属物質としては、導電性の金属単体、例えば、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、コバルト、タングステン、チタン、インジウム、イリジウム、ロジウム、アルミニウム、クロム、アモルファス銅等の金属;これら金属の合金、例えば銀−銅合金など;これら金属の金属複合体、例えば銀−銅複合体など;金属を更に他の導電性金属で被覆したもの、例えば、銀めっき銅などが挙げられる。導電性金属としては、なかでも、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、鉄が好ましく、金、銀、銅、ニッケルがより好ましく、導電性、コストの点から銀が更に好ましい。その他の導電性微粒子としては、例えば、上記導電性の金属物質で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、カーボンブラック、グラファイト、金属錯体、有機導電性微粒子等を用いることもできる。導電性微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の導電性微粒子を組み合わせて用いる場合、これら複数の物質は、混合物、混融物、分散物、被覆物など任意の形態であってよい。これらの導電性微粒子を用いることにより、低温かつ短時間で優れた導電性能を有する配線構造の形成が可能となる。
【0045】
上記、導電性の金属物質として、例えば、湿式法、アトマイズ法、電解法等の従来周知あるいは公知の製法によって得られる導電性の金属物質(A−1)が挙げられる。この導電性金属物質(A−1)は、いずれの形状のものをも本発明では使用することができる。
【0046】
更に、導電性金属物質の他のものとして、例えば、ガス中蒸発法等の気相法、液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて金属化合物を還元する液相法(特開平11−80647号公報および特開昭61−276907号公報を参照)、あるいは溶融法、電解法等により得られる導電性微粒子(A−2)が挙げられる。
【0047】
上記導電性金属物質(A−1)および導電性微粒子(A−2)は、各々1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明の導電性微粒子は、低温かつ短時間で優れた導電性能を有する配線構造を形成するが、これは、平均粒子径が小さい微粒子を用いることで融点降下が働き、金属固有の融点よりも飛躍的に低温域で金属同士の融着が起こるためである。
【0049】
導電性微粒子の平均粒子径は1〜100nmの範囲であるが、低温化といった観点から、1〜50nmであることがより好ましい。
【0050】
より平均粒子径が小さいという観点から、導電性微粒子(A−2)が、上記導電性金属物質(A−1)に比べて好ましく、この導電性微粒子(A−2)中では、製造コスト、工数を考慮すると、金属化合物を液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて還元する液相法によって得られる導電性微粒子が好ましい。
【0051】
金属化合物を液相中で超音波、紫外線や還元剤を用いて還元する液相法によって得られる導電性微粒子について説明する。
【0052】
本発明では、液体媒体中、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、金属化合物を還元することによって得られた導電性微粒子分散体を好ましく用いることができる(詳しくはPCT/JP2006/320493号明細書を参照)。この方法においては、還元反応が高温に加熱しなくても迅速に進行するため、反応後の導電性微粒子の凝集が抑えられ、微小で粒子径の揃った導電性微粒子を得ることができる。このため、この方法で得られた導電性微粒子分散物は流動性や安定性に優れており、例えば、インキとして用いた場合、低温での乾燥でも、良好な導電性を有する配線構造および/またはパターンを形成することができる。この方法では、金属塩として例えば脂肪酸金属塩を用いることにより、脂肪酸を含む保護物質で被覆された導電性微粒子を直接製造することができる。上記、脂肪酸を含む保護物質に代表される、イオン性を有する保護物質(B)については後述するが、この方法で得られた導電性微粒子は諸特性が優れていることから、本発明では該方法で得られた導電性微粒子を、配線構造を形成するために好ましく用いることができる。
【0053】
【化2】

(式中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。)
上記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドとしては、例えば、二塩基酸ジヒドラジド、三塩基酸トリヒドラジド、四塩基酸テトラヒドラジド等が挙げられ、二塩基酸ジヒドラジドとしては、例えば、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、タルタロジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ヘキサデカン酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0054】
また三塩基酸トリヒドラジドとしては、例えば、クエン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド等があげられる。四塩基酸テトラヒドラジドとしては、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等があげられる。上記以外の多塩基酸ポリヒドラジドとしては、ポリアクリル酸ポリヒドラジド等が挙げられる。
【0055】
これらの多塩基酸ポリヒドラジドは、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができ、カルボジヒドラジドと組み合わせて用いることもできる。
【0056】
カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、固体で添加しても、溶媒に溶解して添加しても良いが、反応がより均一に効率よく進行するためには溶媒に溶解して添加することが好ましい。
【0057】
さらに、反応後の精製を考慮すると、水溶液として添加することが好ましい。水溶液として添加する場合においては、水への溶解性を考慮するとアジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジドを用いることが好ましい。カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドは、水素の1つまたは2つ以上が水酸基等の官能基で置換されていてもよい。
【0058】
カルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの添加量については、金属化合物の種類や濃度によっても異なるが、通常は少なくとも金属化合物溶液から金属が還元析出するのに必要な化学量論比の量を使用すればよい。本発明の製造方法に使用される還元剤はジヒドラジド類であり、還元能のある官能基を2個以上有していることから、金属が還元析出するのに必要な化学量論比はヒドラジド基で換算して添加するのが好ましい。還元後に水相を除去する場合には、余剰の還元剤も同時に除去できるため、化学量論比以上の還元剤を使用しても良く、その上限は特に定められるものではないが、洗浄工程やコストを考えると、ヒドラジド換算の化学量論比で金属化合物を還元するのに必要な添加量の6倍以下であることが好ましい。
【0059】
また、本発明の製造方法では、上記のように、液体媒体と金属化合物とを混合した後にカルボジヒドラジド、または、多塩基酸ポリヒドラジドを添加して還元する方法でも金属微粒子分散体を得ることができるが、液体媒体とカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドとを混合した後に金属化合物を添加して還元することもできる。
【0060】
上記金属化合物は特に限定されないが、脂肪酸塩、無機塩の形がよく知られており、脂肪酸塩については公知の方法を用いて簡単に得ることができる。例えば、市販の脂肪酸ナトリウムもしくは、脂肪酸と水酸化ナトリウムを水中で混合して得られた脂肪酸ナトリウム塩を、純水中で溶解させておき、得ようとする金属の無機塩を等量添加し、析出した脂肪酸の金属塩化合物を吸引濾過して濾別し、乾燥させることで容易に脂肪酸の金属塩化合物を得ることができる。
【0061】
上記金属の無機塩としては、特に限定されないが、例えば、塩化金酸、塩化白金酸、塩化銀等の塩化物、硝酸銀等の硝酸塩、酢酸銀、酢酸銅(II)等の酢酸塩、過塩素酸銀等の過塩素酸塩、硫酸銅(II)等の硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等が挙げられ、所望の金属に応じて適宜選択することができる。
【0062】
また、これらの金属の無機塩は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0063】
脂肪酸の金属塩化合物を分散させる液状媒体としては、特に限定されないが、不純物の除去等の工程を考慮すると、水と相分離する非水性溶媒が好ましく、非水性溶媒に脂肪酸の金属塩化合物を分散させた後に、還元剤であるカルボジヒドラジドまたは多塩基酸ポリヒドラジドの水溶液を添加することが好ましい。
【0064】
このとき、還元反応は脂肪酸の金属塩化合物が非水性溶媒中に水性の液滴として存在する還元剤と接触した際のみに起こり、還元された金属は速やかに非水性溶媒中で安定化されるため、局所的な反応が起こりにくく、そのため、粒子径の揃った微小な金属微粒子を得ることができる。また、余剰の還元剤や塩残基等は水相に存在するため、反応後に静置して水相を除去するのみで、容易に精製を行うこともできるため好ましい。
【0065】
上記非水性溶媒としては、水と相分離するものであれば特に限定されず、例えば、
クロロホルム、シクロヘキサン、ベンゼン、ノルマルヘキサン、トルエン、シクロヘキサノン、1−メトキシイソプロパノールアセテート、ジエチルエーテル、メチルイソブチルケトン、四塩化炭素、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、シリコンオイル等があげられる。
【0066】
また、非水性溶媒としては、反応性有機溶剤を用いることもできる。反応性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。非水性溶媒は1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
上記還元反応は、イオン性を有する保護物質(B)の存在下で行うことが好ましいが、このとき保護物質は、非極性溶媒相および非極性溶媒と水相との界面に存在しており、水相からの導電性微粒子の移動を助け、また、抽出された導電性微粒子を安定化させる働きをしていると考えられる。
【0068】
還元反応は、室温でも十分に終了するが、加熱して反応を行っても差し支えない。但し、あまり高温になると金属粒子のブラウン運動が激しくなり、凝集が起こりやすくなる恐れや、保護物質が熱で変性してしまう恐れがあるため、90℃以下で還元反応を行うのが好ましい。更に好ましくは70℃以下で行うのが好ましい。
【0069】
反応を通じて大気中で行っても差し支えないが、生成した導電性微粒子の酸化や硫化を防ぐ、または酸素が存在することによる副反応の生成を防ぐため、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
【0070】
本発明の導電性微粒子の製造方法では、必要に応じて水相を除去した後に加熱や減圧蒸留等の方法を用いて非水性溶媒の一部を除去し、任意の濃度まで濃縮することができる。また、非水性溶媒を完全に除去した後、目的に応じて合成時と異なる溶媒を加えて再分散させ、任意の濃度の導電性微粒子分散体に調整することも可能である。このときの溶媒は非水性溶媒でも水性溶媒でも良いが、金属微粒子近傍に存在する保護物質が溶解する溶媒であることが好ましい。
【0071】
上記、非水性溶媒を除去する際の方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱、減圧蒸留、また、分散剤を用いる場合には、分散剤に応じて分散剤が溶解しない貧溶媒を添加し導電性微粒子を沈殿させることで固体として取り出した後に任意の溶媒に再分散させることも可能である。
(B)イオン性を有する保護物質
本発明の導電性微粒子(A)は、イオン性を有する保護物質(B)によって被覆されているものが用いられる。該保護物質は、導電性微粒子の凝集を防ぎ、例えば、インキ、塗料などの導電性微粒子を含む配線用被膜を形成するために用いられる材料とした際に、該材料中での導電性微粒子の分散安定性を高めるために用いられているものであり、このような目的を達成できる物質としては導電性微粒子表面に親和性のあるイオン性を有する物質を用いることが好ましい。イオン性を有する保護物質としては、例えばイオン性基を化合物中に1個または複数個有する化合物が挙げられ、カチオン性基、アニオン性基の一つもしくは両方を有する。金属表面に親和性のあるイオン性基としては、一般的には、例えば、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸、リン酸エステル等のアニオン性基、例えば、アミノ基、アミド基、4級アンモニウム、メルカプト基、スルフェニル基、スルファンジイル基等のカチオン性基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのイオン性基は、化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは側鎖と主鎖の双方に含まれていてもよい。
【0072】
導電性微粒子表面に親和性のあるイオン性基を化合物中に1個または複数個有する化合物としては、例えば、顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤、脂肪酸、アミン、酸アミド、チオール、スルフィド化合物等が挙げられる。
【0073】
本発明において保護物質として用いることができる顔料分散剤としては、導電性微粒子表面に親和性を有するイオン性基を化合物中に1個または複数個有するものであればよく、特に限定されるものではない。顔料分散剤は既に多種、多様のものが市販されており、これら市販の顔料分散剤の何れのものをも、本発明において導電性微粒子の保護物質として用いることができる。本発明において保護物質として用いることができる市販の顔料分散剤としては、例えば、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17(共栄社化学株式会社製)、ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース17000、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース36000、ソルスパース41000(日本ルーブリゾール株式会社製)、SMA1000、SMA2000、SMA3000、SMA1440、SMA17352、SMA2625、SMA3840(川原油化株式会社製)、EFKA4009、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4080、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4080、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4330、EFKA4340、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6230、EFKA6525、EFKA6700、EFKA6745、EFKA6780、EFKA6782、EFKA6903、EFKA6906、EFKA6950、EFKA7462、EFKA8502、EFKA8503、EFKA8511、EFKA8512、EFKA8580、EFKA8590(いずれもエフカアディティブズ社製)、アジスパーPB821、アジスパーPB711、アジスパーPB822、フェイメックスL−12、アジスパーPN411、アジスパーPA111(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR−UV20、TEXAPHOR−UV21、TEXAPHOR−UV61(いずれもコグニスジャパン株式会社製)、Disperbyk−101、Disperbyk−102、Disperbyk−103、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−140、Disperbyk−142、Disperbyk−145、Disperbyk−161、Disperbyk−162、Disperbyk−163、Disperbyk−164、Disperbyk−166、Disperbyk−167、Disperbyk−168、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−182、Disperbyk−2000、Disperbyk−2001、Disperbyk−2050、Disperbyk−2070、Disperbyk−2090(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロンKS−860、ディスパロンKS−873N、ディスパロン7004、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロンDA−400N、ディスパロンPW36、ディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−7301、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−234、ディスパロンDN−900、ディスパロンDA−1200(いずれも楠本化成株式会社製)等が挙げられる。これら顔料分散剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、顔料分散剤と顔料分散剤以外の本発明の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
また、界面活性剤は一般に、陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系のものが知られているが、本発明においては、保護物質としてこれらのいずれのものをも用いることができる。本発明において用いられる界面活性剤は、界面活性剤として知られた化合物であればよく、特に限定されるものではないが、入手が容易である点からは、界面活性剤として市販されている化合物を使用することが好ましい。以下に、陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系界面活性剤の例を具体的に示すが、本発明において用いることのできる界面活性剤が、下記のものに限定されるものではない。
【0075】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルファオレインスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、メチルタウリン酸塩等が挙げられる。
【0076】
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸モノグリセリド等が挙げられる。
【0077】
両性イオン界面活性剤としては、例えば、アミノ酸、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0078】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、N−メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム等が挙げられる。
【0079】
また、これらとは分類形態が異なるものとして、フッ素系界面活性剤、アリル系反応性界面活性剤等の反応性界面活性剤、カチオン性セルロース誘導体、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸等の高分子界面活性剤も知られている。これらは湿潤分散剤としても市販されているが、このような湿潤分散剤をも含め、前記いずれの界面活性剤も本発明においては保護物質として用いることができる。これらの界面活性剤の市販品の一例を示せば、EFKA5010、EFKA5044、EFKA5244、EFKA5054、EFKA5055、EFKA5063、EFKA5064、EFKA5065、EFKA5066、EFKA5070、EFKA5071、EFKA5207(いずれもエフカアディティブズ社製)、Disperbyk−101、Disperbyk−108、Disperbyk−130(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0080】
これら界面活性剤は、1種類を単独で用いることも、また2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、本発明においては、界面活性剤と界面活性剤以外の本発明の保護物質を組み合わせて導電性微粒子の保護物質として用いることもできる。
【0081】
また、カップリング剤としては、一般に、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が知られているが、これらのいずれのものをも本発明の保護物質として使用することができる。以下に、本発明において用いることのできる市販のカップリング剤をいくつか例示するが、本発明で用いられるカップリング剤が下記のものに限定されるものではない。
【0082】
シランカップリング剤としては、例えば、KA−1003、KBM−1003、KBE−1003、KBM−303、KBM−403、KBE−402、KBE403、KBM−1403、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−575、KBM−6123、KBE−585、KBM−703、KBM−802、KBM−803、KBE−945、KBE−846、KBE−9007(いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0083】
また、チタネート系カップリング剤としては、例えば、プレンアクトKR−TTS、プレンアクトKR−46B、プレンアクトKR−55、プレンアクトKR−41B、プレンアクトKR−38S、プレンアクトKR−138S、プレンアクトKR−238S、プレンアクト338X、プレンアクトKR−44、プレンアクトKR−9SA(いずれも味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0084】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、プレンアクトAL−M(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0085】
ジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ケンリアクト(ケンリッチペトロケミカルス株式会社製)が挙げられる。
【0086】
これらのカップリング剤は、1種類を単独で、または2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、カップリング剤とカップリング剤以外の本発明の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
本発明において使用される脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができ、例えば直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐脂肪酸、3級脂肪酸などを挙げることができる。
【0088】
直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等が挙げられる。
【0089】
直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等があげられる。中でも、安定性や低温分解性を考慮するとカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸が好ましい。
【0090】
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸、イソヘプタン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸等が挙げられる。
【0091】
3級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学株式会社製)、エクアシッド13(出光石油化学株式会社製)などが挙げられる。
【0092】
これらの脂肪酸は、炭素数3〜22のものが好ましく用いられる。また、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、脂肪酸と脂肪酸以外の本発明の保護物質を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
アミン化合物として、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アミン塩等のアルキルアミン、ジアミン、アルカノールアミン等が挙げられ、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘクサドデシルアミン、オクタデシルアミン、ココアミン、タロウアミン、水素化タロウアミン、オレイルアミン、ラウリルアミン、及びステアリルアミン等の第一級アミン、ジココアミン、ジ水素化タロウアミン、及びジステアリルアミン等の第二級アミン、ドデシルジメチルアミン、ジドデシルモノメチルアミン、テトラデシルジメチルアミン、オクタデシルジメチルアミン、ココジメチルアミン、ドデシルテトラデシルジメチルアミン、及びトリオクチルアミン等の第三級アミン、ナフタレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、オクタメチレンジアミン、及びノナンジアミン等のジアミン、2-メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ブトキシプロピルアミン、ジエチルメチルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
【0094】
酸アミド化合物としては特に限定されないが、例えば、カルボン酸アミド、アミノカルボン酸塩が挙げられる。
【0095】
チオール化合物としては特に限定されないが、例えば、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、チオジプロピオン酸、メルカプトコハク酸、チオ酢酸等の酸チオール類、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、アリルメルカプタン、ジメチルメルカプタン、メルカプトエタノール、アミノエチルメルカプタン、チオジエチルアミン等の脂肪族チオール類、シクロヘキシルチオール等の脂環式チオール類、チオフェノール等の芳香族チオール類、チオジエチレングリコール、チオジグリコール酸、エチレンチオグリコール等のチオグリコール類等が挙げられる。
【0096】
スルフィド化合物としては特に限定されないが、例えば、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド等が挙げられる。
【0097】
本発明では、イオン性を有する保護物質は、導電性微粒子100重量部に対する保護物質の総量で0.1〜2000重量部の範囲で用いることが好ましいが、0.1〜100重量部の範囲で用いることが更に好ましい。保護物質の使用量が1重量部未満の場合、保護物質の効果が得られず、導電性微粒子の凝集を生じるためである。また、2000重量部を超える場合、安定化に寄与しない余剰の保護物質の存在が、配線構造の導電性低下等、タッチパネル基板物性に悪影響を与えるため好ましくない。
【0098】
これらイオン性を有する保護物質(B)を導電性微粒子(A)に被覆する方法としては、予め製造された導電性微粒子と保護物質とを乾式、または湿式で混合するなどして導電性微粒子を保護物質により被覆する方法、導電性微粒子を製造する際保護物質の存在下に導電性微粒子を形成して、保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法、脂肪酸金属塩など保護物質として機能する物質の金属塩を、還元剤などを用いて還元することにより保護物質で被覆された導電性微粒子を得る方法などが知られている。これら方法はいずれも公知の方法であり、適宜の方法が用いられればよい。

(C)イオン交換能を有する物質
本発明のタッチパネル用導電性基材における配線構造は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子(A)と、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質(C)とを接触させて被膜形成することが好ましい。
【0099】
本発明において、導電性微粒子はイオン性を有する保護物質により被覆され分散安定化しているが、前記イオン交換能を有する物質と接触することにより、保護物質がイオン交換能を有する物質によって導電性微粒子の表面から奪われたり、あるいは保護物質が、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、ClO3-、SO42-、NO3-、CrO4-、CO32-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、OH-、H+、Li+、K+、Na+、Rb+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Al3+、NH4+等のイオンに交換されたりすることにより、活性エネルギーの高い導電性微粒子の表面が露出する。これにより導電性微粒子は、分散安定性を失い凝集して、融着しやすくなるため、室温等低温での被膜形成時においても、導電性微粒子の被膜化が速やかに進行して配線用被膜の形成が可能となると考えられる。
【0100】
これらイオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質とを接触させる態様としては、(I)イオン性を有する保護物質により被覆さ
れた導電性微粒子を含んだ層と、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含んだ層(イオン交換層)とを隣接層として設ける、あるいは(II)イオン性を有する保護物質とイオン交換能
を有する物質とを同一層内に互いに接触させるような状態で含ませる方法がある。(I)の方法で
の配線構造の製造方法としては、例えば、(I−1)保護物質に対するイオン交換能を有する物質
を含んだイオン交換層を形成し、次に、上記イオン交換層上に、イオン性を有する保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成して配線構造を形成する方法、および、(I−2)基材
上に、イオン性を有する保護物質で被覆された導電性微粒子を含んだ被膜層を形成し、次に、該被膜層上に、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含んだイオン交換層を形成して配線構造を形成する方法が挙げられる。また(II)の方法での配線構造の製造方法としては、例えば、基材上に、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含んだ被膜形成用材料からなる層を形成する方法が挙げられる。これらの層は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む被膜形成用材料、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含む被膜形成用材料、あるいはイオン性を有する保護物質で被覆された導電性微粒子と該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含む被膜形成用材料を、基材に例えば塗布、印刷などにより被覆し、配線構造を形成する方法が挙げられる。しかし、本発明のタッチパネル用導電性基板における配線構造の製造方法では、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と該保護物質に対するイオン交換能を有する物質とが何らかの方法により接触していればよいのであり、イオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子と該保護物質に対するイオン交換能を有する物質とを接触させる方法が、上記例示方法に限られるものではない。
【0101】
次に、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と接触される、該保護物質に対するイオン交換能を有する物質(C)について説明する。
【0102】
本発明においてイオン交換能を有する物質とは、イオン交換反応を示す物質のことをいう。
【0103】
イオン交換反応とは、一般に、固体または液体中のイオンが、それと接する外部溶液中にある同符号のイオンと交換する現象であり、交換するイオンによって、陰イオン交換反応と陽イオン交換反応とがある。イオン交換能を有する物質は、導電性微粒子を被覆しているイオン性を有する保護物質のイオンに応じて選択することができる。
【0104】
まず、陰イオン交換能を有する物質によりイオン交換反応を利用する場合について説明する。陰イオン性を有する保護物質としては、陰イオン交換能を有する物質により陰イオン交換反応を起こし得る物質であれば特に限定されないが、例えば、分子中に水酸基、シアノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル等のイオン性基を有する保護物質等が挙げられる。これらのイオン性基は化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは側鎖と主鎖の双方に含まれていても良い。イオン性基を化合物中に1個または複数個有する化合物としては、例えば、顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤、脂肪酸等が挙げられる。本発明においては、陰イオン交換能を有する物質と組み合わされる保護物質は分散剤を含むものが好ましく、さらには分散剤としては脂肪酸が好ましく、さらに脂肪酸の中では炭素数3〜22である飽和または不飽和の脂肪酸であることが好ましい。これは、脂肪酸を含んだ保護物質により被覆された導電性微粒子が用いられると、より低温かつ短時間での配線構造の形成が可能となるからである。
【0105】
本発明で用いられる陰イオン交換能を有する物質としては、分子中に陰イオン交換にあずかるイオン性基、陰イオン交換基を有するものが挙げられる。陰イオン交換にあずかるイオン性基、陰イオン交換基としては、例えば、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンが挙げられる。
【0106】
本発明の陰イオン交換能を有する物質としては、例えば陰イオン交換樹脂、カチオン活性剤等のカチオン性化合物、無機陰イオン交換体等が挙げられる。
【0107】
陰イオン交換樹脂は、一般に、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体からなる橋かけ高分子母体を、クロロメチル化後アミノ化することにより作ることができる。クロロメチル基は、無水塩化アルミニウム触媒の存在下、クロロメチルエーテルを反応させることで容易に導入される。アミノ化は、クロロメチル基をアミンで処理する反応であるが、アミンの種類により各種の陰イオン交換樹脂ができる。陰イオン交換樹脂には、強塩基性陰イオン交換樹脂および弱塩基性イオン交換樹脂があり、トリメチルアミンを用いて第4アンモニウム基を導入したものは強塩基性I型、ジメチルエタノールアミンを用いて4級化したものは強塩基性II型といわれている。また、第1級ないし第3級アミンを導入すると弱塩基性イオン樹脂となる。また、上記スチレン/ジビニルベンゼン共重合体は、懸濁重合により得られるが、透明で均質な橋かけ球状粒子のものを一般にゲル型と呼び、他方、水不溶性の芳香族炭化水素等の高沸点有機溶媒を加えて多孔質化したものはマクロポーラス型、生成した重合体をほとんど膨潤させない2−ブタノール等の有機溶媒を添加して得られた多孔体はMR型樹脂と呼ばれている。本発明においては、これらの陰イオン交換樹脂を含め陰イオン交換樹脂であれば何れのものでも陰イオン交換能を有する物質として用いることができる。
【0108】
一方、カチオン性化合物としては、例えば、第4アンモニウム塩、または第4アンモニウム塩を有する化合物などが挙げられる。第4アンモニウム塩は、一般に、第3アミンにハロゲン化アルキルを作用させて作ることができる。この第4アンモニウム塩としては、例えば、窒素原子を環内に持つN−メチルピペリジンメチオジドや、キノリンメチオジド等の環状第4アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウム、高級アミンのハロゲン酸塩等のカチオン活性剤が挙げられ、これらのいずれをも本発明の陰イオン交換能を有する物質として使用することができる。
【0109】
また、これらの第4アンモニウム塩基を導入した樹脂化合物や、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基、アミノ基や、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンを導入した樹脂化合物も同様に使用することができる。樹脂化合物としては、例えば、アクリル系樹脂や、ウレタン系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アリルアミン重合樹脂、ジアリルアミン重合樹脂等が挙げられる。更に、ジシアンジアミジンやジシアンジアミドの重合樹脂等や、樹脂を直接カチオン変性したカチオン変性樹脂や、例えばアリルアミン重合樹脂を架橋させた樹脂ビーズ等も挙げられ、これらも使用することができる。
【0110】
また、第4アンモニウム塩の酸基としては、例えば、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、ClO3-、SO42-、NO3-、CrO4-、CO32-、PO43-、HPO42-、H2PO4-、OH-等いずれの酸基も用いることができる。
【0111】
無機イオン交換体、いわゆる固体塩基としては、例えば、活性炭や、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩、ZnO/ZrO2、MgO/TiO2、CaO/P25、SiO2/CaO/MgO、SiO2/Al23、SiO2/SrO、SiO2/BaO、ZnO/SiO2、TiO2/ZrO2、Al23/TiO2、SiO2/ZrO2、Al23+ZrO2、SiO2/TiO2、MoO3/SiO2、MoO3/Al23、Al23/MgO等の複合酸化物、ゼオライト、Na/MgO、K/MgO、Na/Al23等の金属蒸着金属酸化物、KNH2/Al23、EuNH/K−Y等のイミン担持金属酸化物、KF/Al23、LiCO3/SiO2等のアルカリ金属塩類等が挙げられる。更に、無機イオン交換体としては、例えばシリカ、コロイダルシリカ、チタニア上に、例えば酸化アルミニウム等で被覆して、表面の電荷をカチオン化したものなども使用することができる。
【0112】
上記陰イオン交換能を有する物質は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0113】
次に、陽イオン交換能を有する物質によりイオン交換反応を利用する場合について説明する。陽イオン性を有する保護物質としては、陽イオン交換能を有する物質により陽イオン交換反応を起こし得る物質であれば特に限定されないが、例えば、分子中に窒素原子および/または硫黄原子を含んでいることが好ましく、さらに窒素原子および/または硫黄原子は、塩基性基として存在していることが好ましい。前記塩基性基としては、例えば、アミノ基、アミド基、メルカプト基、スルフェニル基、スルファンジイル基等が挙げられる。これらのイオン性基は化合物の主鎖に含まれていても、側鎖もしくは側鎖と主鎖の双方に含まれていても良い。イオン性基を化合物中に1個または複数個有する化合物としては、例えば、顔料分散剤、界面活性剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0114】
本発明の陽イオン交換能を有する物質としては、特に限定されないが、例えば、陽イオン交換樹脂、アニオン活性剤等のアニオン性化合物、無機陽イオン交換体等の固体酸が挙げられる。
【0115】
また、陽イオン交換にあずかる酸性基を導入した樹脂化合物も同様に使用することができる。樹脂化合物としては、例えば、アクリル系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。さらに、樹脂を直接アニオン変性したアニオン変性樹脂も使用することができる。

上記陽イオン交換樹脂は、イオン交換基として、一般的に、スルホン酸基、カルボン酸基を有し、まれにリン酸基、ホスホン酸基、ヒ酸基、セレン酸基をもつものが挙げられる。
【0116】
イオン交換基としてスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂は強酸性、カルボン酸基は弱酸性として働き、それ以外は中酸性として働く。本発明では、強酸性、弱酸性、中酸性陽イオン交換樹脂のいずれも使用することができる。
【0117】
上記陽イオン交換樹脂としては、一般に陽イオン交換樹脂として市販されているものを使用することができる。
【0118】
強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオンSK104、ダイヤイオンSK1B、ダイヤイオンSK110、ダイヤイオンSK112、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンPK212、ダイヤイオンPK216、ダイヤイオンPK218、ダイヤイオンPK220、ダイヤイオンPK228、ダイヤイオンUBK08、ダイヤイオンUBK10、ダイヤイオンUBK12、ダイヤイオンUBK510L、ダイヤイオンUBK530、ダイヤイオンUBK550、ダイヤイオンUBK535、ダイヤイオンUBK555(三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0119】
弱酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、ダイヤイオンWK10、ダイヤイオンWK11、ダイヤイオンWK100、ダイヤイオンWK40L(三菱化学株式会社製)が挙げられる。
【0120】
これら1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、陽イオン交換樹脂とそれ以外の陽イオン交換能を有する物質を組み合わせて使用してもよい。
【0121】
上記アニオン性化合物としては、例えば、アニオン界面活性剤、脂肪酸、およびカルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基を含む化合物およびそれらの塩等が挙げられる。
【0122】
アニオン界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤として知られているものを使用することができる。例えば、アルキルカルボン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルコハク酸塩等の高級脂肪酸塩系界面活性剤、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル塩、メチルタウリン酸塩、アルファオレインスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩等のスルホン酸塩系界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はリン酸エステル塩界面活性剤等が挙げられる。
【0123】
これらは1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、アニオン界面活性剤とそれ以外の陽イオン交換能を有する物質を組み合わせて使用してもよい。
【0124】
上記脂肪酸としては、特に限定されず、一般に脂肪酸として知られているものを使用することができる。
【0125】
直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等が挙げられる。
【0126】
直鎖不飽和脂肪酸としては、例えば、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が挙げられる。
【0127】
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルイソヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−ブチルオクタン酸、2−イソブチルイソオクタン酸、2−ペンチルノナン酸、2−イソペンチルノナン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−ヘキシルイソデカン酸、2−ブチルドデカン酸、2−イソブチルドデカン酸、2−ヘプチルウンデカン酸、2−イソヘプチルウンデカン酸、2−イソペプチルイソウンデカン酸、2−ドデシルヘキサン酸、2−イソドデシルヘキサン酸、2−オクチルドデカン酸、2−イソオクチルドデカン酸、2−オクチルイソドデカン酸、2−ノニルトリデカン酸、2−イソノニルイソトリデカン酸、2−デシルドデカン酸、2−イソデシルドデカン酸、2−デシルイソドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−オクチルヘキサデカン酸、2−イソオクチルヘキサデカン酸、2−ウンデシルペンタデカン酸、2−イソウンデシルペンタデカン酸、2−ドデシルヘプタデカン酸、2−イソドデシルイソヘプタデカン酸、2−デシルオクタデカン酸、2−デシルイソオクタデカン酸、2−トリデシルヘプタデカン酸、2−イソトリデシルイソヘプタデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−イソテトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルヘキサデカン酸、2−ヘキサデシルテトラデカン酸、2−ヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−イソヘキサデシルイソヘキサデカン酸、2−ペンタデシルノナデカン酸、2−イソペンタデシルイソノナデカン酸、2−テトラデシルベヘン酸、2−イソテトラデシルベヘン酸、2−テトラデシルイソベヘン酸、2−イソテトラデシルイソベヘン酸、イソヘプタン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0128】
3級脂肪酸としては、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学株式会社製)、エクアシッド13(出光石油化学株式会社製)などが挙げられる。
【0129】
脂肪酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物などが挙げられる。
【0130】
二塩基酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0131】
これら1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、脂肪酸とそれ以外の陽イオン交換能を有する物質を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
無機陽イオン交換体、いわゆる固体酸としては、例えば、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、クロライト、バーミキュライト、ハロイサイト、雲母、脆雲母等の粘土鉱物、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化クロム等の金属酸化物、SiO2/CaO、SiO2/SrO、ZnO/MgO、ZnO/Sb23、SiO2/MgO、TiO2/B23、ZnO/SiO2、ZnO/ZrO2、Al23/Bi23、SiO2/WO3、SiO2/V25、Al23/MoO3、Al23/WO3、Al23/V25、SiO2/Al23、SiO2/ZrO2、Cr23/Al23、SiO2/BeO、SiO2/Y23、SiO2/La23、SiO2/Ga23、TiO2/Al23、TiO2/ZrO2、Al23/ZrO2、ZnO/Al23、SiO2/MoO3等の複合酸化物等が挙げられる。
【0133】
上記陽イオン交換能を有する物質は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用して使用してもよい。
(D)被膜形成用組成物
本発明の、イオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む配線構造を形成するために用いられる材料の組成物(D−1)、イオン交換能を有する物質を含む被膜層形成用組成物(D−2)について説明する。
(D−1)イオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む配線構造形成用材料の組成物
次に、イオン性を有する保護物質(B)に被覆された導電性微粒子(A)を含む材料として用いられる配線構造形成用材料の組成物について説明する。
【0134】
本発明で用いるイオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子は前記したとおり種々の方法で製造することができ、このとき利用した製造方法により、保護物質によって被覆された導電性微粒子が溶媒分散液として直接得られる場合には、これを配線構造形成用材料の組成物として用いてもよい。しかし、保護物質によって被覆された導電性微粒子が溶媒分散物として得られない場合は、導電性微粒子を被覆している保護物質の溶解性を損なわない範囲で、各種の液状媒体を使用して、導電性微粒子を含む配線構造形成用材料の組成物とすることができる。使用できる液状媒体としては特に限定されず、印刷・塗布方法、基材、粘度、表面張力、乾燥温度、保護物質の溶解性等に応じて自由に選択することができる。また、前述のとおり、イオン性を有する保護物質に被覆された導電性微粒子を含む材料に使用される液状媒体は、導電性微粒子を合成する際に用いる液状媒体と同一である必要はなく、自由に選択することができる。
【0135】
本発明の導電性微粒子を含む材料で用いられる液状媒体としては、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等が挙げられる。これら溶剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。以下、これら各溶剤について、更に詳細に説明する。
【0136】
上記エステル系溶剤としては、例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0137】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2−(1−シクロヘキセニル)シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0138】
また、グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、およびこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0139】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルパラフィン系溶剤として、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、0号ソルベントL、M、H、(新日本石油株式会社製)、ノルマルパラフィンSL、L、M(新日本石油株式会社製)、イソパラフィン系溶剤としては、イソヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、パラオール100、130、50、750(昭和シェル石油株式会社)アイソパーL、M(エクソン石油化学株式会社)、アイソゾール200、300、400(新日本石油株式会社製)、スーパゾルFP2、25、30、38(いずれも出光興産株式会社製)、シクロパラフィン系溶剤としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ナフテゾール160、200、220、MS−20P(新日本石油株式会社製)、AFソルベント4号、5号、6号、7号(いずれも新日本石油株式会社製)、テトラヒドロナフタリン、デカヒドロナフタリン、テレピン油、p−ペンタジエン、リモネン、工業用揮発油1号、2号、3号、4号、5号、リグロイン等が挙げられる。
【0140】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、テトラリン、ソルベントナフサ、芳香族混合炭化水素等が挙げられる。
【0141】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘプタノール、n−アミルアルコール、sec−アミルアルコール、n−ヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、アリルアルコール、エチレンクロロヒドリン、オクチルドデカノール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、イソアミルアルコール、t−アミルアルコール、sec−イソアミルアルコール、ネオアミルアルコール、ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、ターピネオールC、L−α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノールテルソルブMTPH、テルソルブDTO−210、テルソルブTHA−90、テルソルブTHA−70(日本テルペン化学株式会社製)シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール、1,4−ブタンジオール、オクタンジオール等や、ファインオキソコール140N、ファインオキソコール1600、ファインオキソコール180、ファインオキソコール180N、ファインオキソコール2000(日産化学工業株式会社製)等の側鎖高級アルコール等が挙げられる。
【0142】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。
【0143】
エーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、環状エーテル系溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0144】
また、液状媒体として、反応性有機溶剤を用いることもできる。反応性有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物、ポリアリル化合物等のエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0145】
また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、フルフラールが挙げられる。
【0146】
上記液状媒体は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0147】
導電性微粒子を含む配線構造形成用材料や、被膜形成方法など種々の条件で異なるものの、これら液体媒体は、導電性微粒子を含む配線構造形成用材料100重量%中、通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
【0148】
本発明の導電性微粒子を含む配線構造形成用材料の組成物には、得られる配線構造の導電性を向上させるために、レベリング剤、消泡剤、および滑剤のうち少なくとも一種以上を含むことができる。
【0149】
安定かつ優れた導電性を得るためには、膜厚バラツキのない配線構造を形成する必要があり、そのためには、基材上に導電性微粒子を含む材料が塗布されたとき均一に濡れ広がることが好ましい。
【0150】
レベリング剤、消泡剤、滑剤は配線構造組成物の表面張力を調整し、基材との親和性を高める働きをするため、基材上に導電性微粒子を含む材料が塗布されたとき均一に濡れ広がり、膜厚バラツキのない被膜を形成することが可能であり、安定かつ優れた導電性を有する配線構造を得ることができる。
【0151】

本発明の導電性物質を含む被膜層形成用材料において用いられるレベリング剤としては、例えば、サーフィノール104PA、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール504、サーフィノールSE−F(いずれもエアープロダクツジャパン株式会社製)、EFKA3030、EFKA3031、EFKA3033、EFKA3034、EFKA3035、EFKA3232、EFKA3236、EFKA3239、EFKA3299、EFKA3522、EFKA3523、EFKA3580、EFKA3835、EFKA3883、EFKA3886、EFKA3888、EFKA3277、EFKA3500、EFKA3570、EFKA3600、EFKA3650、EFKA3772、EFKA3777、EFKA3778(いずれもエフカアディティブズ社製)、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−340、BYK−344、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−392、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Siclean3700、BYK−301、BYK−302、BYK−307、BYK−325、BYK−331、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−375、BYK−380N、BYK−381、Byketol−OK、Byketol−Special、Byketol−WS(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン1970、ディスパロン230、ディスパロンLF−1970、ディスパロンLF−1982、ディスパロンLF−1983、ディスパロンLF−1984、ディスパロンLF−1985(いずれも楠本化成株式会社製)等が挙げられる。レベリング剤は、導電性物質を含む被膜層形成用材料100重量%中、通常0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるように添加して用いることができる。
【0152】
本発明の導電性物質を含む被膜層形成用材料において用いられる消泡剤としては、例えば、サーフィノールDF−70、サーフィノールDF−75、サーフィノールDF−210、サーフィノールDF−695(いずれもエアープロダクツジャパン株式会社製)、EFKA2022、EFKA2023、EFKA2025、EFKA2028、EFKA2035、EFKA2038、EFKA2040、EFKA2048、EFKA2527、EFKA2550、EFKA2721、EFKA2722、EFKA2723(いずれもエフカアディティブズ社製)、BYK−051、BYK−052、BYK−053、BYK−054、BYK−055、BYK−057、BYK−1752、BYK−1790、BYK−060N、BYK−063、BYK−065、BYK−067A、BYK−070、BYK−077、BYK−080A、BYK−088、BYK−141、BYK−354、BYK−392、BYK−011、BYK−012、BYK−017、BYK−018、BYK−019、BYK−020、BYK−021、BYK−022、BYK−023、BYK−024、BYK−025、BYK−028、BYK−038、BYK−044、BYK−080A、BYK−094、BYK−1610、BYK−1615、BYK−1650、BYK−1730、BYK−1770(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロンOX−880EF、ディスパロンOX−881、ディスパロンOX−883、ディスパロンOX−77EF、ディスパロンOX−710、ディスパロンOX−8040、ディスパロン1922、ディスパロン1927、ディスパロン1950、ディスパロン1951、ディスパロンP−410EF、ディスパロンP−420、ディスパロンP−425、ディスパロンPD−7(いずれも楠本化成株式会社製)等が挙げられる。消泡剤は、導電性物質を含む被膜層形成用材料100重量%中、通常0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるように添加して用いることができる。

本発明の導電性物質を含む被膜層形成用材料において用いられる滑剤としては、例えば、CERAFLOUR914、CERAFLOUR915、CERAFLOUR916、CERAFLOUR950、CERAFLOUR970、CERAFLOUR980、CERAFLOUR988、CERAFLOUR990、CERAFLOUR991、CERAFLOUR994、CERAFLOUR995、CERAFLOUR996、CERAFLOUR998、AQUACER498、AQUACER515、AQUACER526、AQUACER531、AQUACER537、AQUACER539、AQUACER593、AQUAMAT263、AQUAMAT270、CERACOL79、CERACOL601、CERAFAK103、CERAFAK106、CERAFAK110、CERATIX8461、CERATIX8463(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。滑剤は、導電性物質を含む被膜層形成用材料100重量%中、通常0.005〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%となるように添加して用いることができる。
【0153】
本発明のイオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料には、被膜にした際の膜強度、導電性の向上、被印刷・塗布体との密着性を高める、また、各種塗布方法に適用した際における材料の特性を最適化するため、必要に応じて樹脂および/またはその前駆体を添加してもよい。
【0154】
前記、樹脂および/またはその前駆体としては特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、(不飽和)ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0155】
樹脂の前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、単官能であっても、多官能であってもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、本発明において「(メタ)アクリル酸」という場合、アクリル酸およびメタクリル酸を含む意味で使用される。また「(メタ)アクリレート」という場合にも、同様に、アクリレートとメタクリレートを含む意味で用いられる。その他(メタ)アクリロイルなどでも、同様である。
【0156】
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0157】
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
【0158】
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0159】
さらに、上記化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−メタリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ステアリルアクリレート、テトラメチルピペジリルメタクリレート等が挙げられる。
【0160】
これらの樹脂および/またはその前駆体は、種々の条件によって異なるものの、導電性微粒子を含む配線構造形成用材料100重量%中、通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
【0161】
本発明のイオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む被膜形成組成物を形成する際には、保護物質により被覆された導電性微粒子を、必要に応じて、液体媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、樹脂および/またはその前駆体等と混合し、従来公知の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合すればよい。
【0162】
次に、配線構造形成用材料の組成物の印刷方法について説明する。印刷する方法は特に限定されないが、基材等に応じて適宜選択するのが好ましい。
【0163】
前記印刷法としては、一般的に知られている方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、ディスペンサー印刷、パッド印刷等があげられる。
【0164】
印刷後、使用する基材に応じて、50〜150℃程度の温度で、数秒から数10分程度乾燥することによって、低抵抗値を有する配線構造を得ることができる。例えば室温25℃で数時間、放置あるいは真空乾燥することにより溶剤を除去することによっても導電性を有する被膜が得られるが、十分な導電性を得るためには、前記した温度での乾燥が好ましい。
【0165】
乾燥方法としては特に限定されず、乾燥温度、印刷方式、基材によって適宜選択することができるが、熱風乾燥、真空乾燥、赤外線、近赤外線、遠赤外線、紫外線、電子線、マイクロ波等のエネルギー線等を用いて乾燥させることも出来る。基材に制限があり、どうしても上記のごとき温度がかけられない場合は、イオン交換能を有する物質を含んだイオン交換層上に、イオン性を有する保護物質で被覆された導電性微粒子を含む配線構造を形成した後、例えば、40℃で一晩、オーブン中で加熱することで十分な導電性を得ることができる。
【0166】
導電性微粒子を含む配線構造の厚さは、特に限定されないが、一般的には、0.01〜20μm程度、好ましくは0.05〜10μm程度とされる。0.01μm以下であると導電性の低下が起こる恐れがあるため好ましくない。
【0167】
以上の方法によって、基材に対する密着性、導電性に優れた導電性被膜を得ることができる
また、配線構造形成後に、更にその保護を目的として、オーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工しても良い。これらの各種ワニス、コーティング剤としてが、従来印刷分野で用いられているものを利用すればよい。これらワニスやコーティング剤は通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。また、イオン交換層を、導電性微粒子層上に形成する場合には、該イオン交換層を導電性被膜層の保護層として機能させることもできる。
(D−2)イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用材料(イオン交換層形成用材料)
次に、イオン性を有する保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含む被膜形成用材料(イオン交換層形成用材料)について説明する。
【0168】
イオン交換能を有する物質を含むイオン交換層を形成する際には、該イオン交換能を有する物質の特性、イオン交換層形成用材料の塗布または印刷方法などに応じて適宜の液状媒体を使用することができる。また、更に必要に応じて消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、イオン交換能を有する樹脂意外のその他の樹脂および/またはその前駆体、イオン交換能を有するまたは有さない、無機または有機微粒子等を添加することもできる。これらは、適宜、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより製造することができる。
【0169】
イオン交換層形成用材料を製造する際に用いられる液状媒体としては、導電性微粒子を含む配線構造を形成するための材料を製造する際に挙げられた液状媒体と同様の液状媒体、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、エーテル系溶剤、水等を使用することができ、これらは2種類以上を混合して使用することもできる。これら各溶剤の具体例も導電性微粒子を含む配線構造を形成するために用いる材料を製造する際に挙げられたものと同様のものが使用できるが、本発明ではイオン交換能を有する樹脂に対する溶解性の理由から、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、グリコール系溶剤、あるいはこれらの溶剤と水の混合溶剤等が、イオン交換層形成用材料の溶剤として好ましく用いられる。また、必要に応じて用いられる消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤なども導電性微粒子を含む配線構造を形成するために用いられる材料を製造する際に挙げられたものと同様のものが用いられる。
【0170】
一方、イオン交換能を有する物質として用いられる樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体は、イオン交換能を有する物質を含む被膜形成用材料が塗布あるいは印刷される基材に対する密着性や、保護物質によって被覆された導電性微粒子を含んだ配線構造との密着性を高める、あるいは形成された配線構造を保護する目的で添加される。このような目的で添加されるその他の樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、飽和または不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース、ベンジルセルロース、セルロース(トリ)アセテート、カゼイン、シェラック、ゼラチン、ギルソナイト、ロジン、ロジンエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルニトロセルロース、エチレン/ビニルアルコール樹脂、スチレン/無水マレイン酸樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は上記添加目的を達成するべく、基材、被膜形成方法、導電性被膜特性などに応じ適宜のものが選定される。これらの中では、イオン交換層被膜の基材に対する密着性、被膜強度の理由から、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、(メタ)アクリル樹脂、スチレン/(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等が好ましいものとして挙げられる。これらその他の樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0171】
上記樹脂のうち、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等に、アミン類、酸無水物類、メルカプト類、イミダゾール類、イソシアネート類、ジシアンジアミド類、ジヒドラジド類等の硬化剤を組み合わせて用いることによって、得られた被膜の耐溶剤性や耐薬品性等の物性を高めることができる。
【0172】
また、樹脂の前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート化合物、ビニルエーテル化合物等のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。これらエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、単官能であっても、多官能であってもよい。これらの化合物は、1種を単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0173】
(メタ)アクリレート化合物のうち、単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルホルムアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0174】
また、多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ロジン変性アクリレート等が挙げられる。
【0175】
ビニルエーテル化合物のうち、単官能のビニルエーテル化合物として、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能のビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンジビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサンジビニルエーテル、ビスフェノールAジエトキシジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
【0176】
さらに、上記化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、例えば、N−ビニルアセトアミド、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、2−メタリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、ステアリルアクリレート、テトラメチルピペジリルメタクリレート等が挙げられる。
【0177】
樹脂の前駆体を含むイオン交換層形成用材料を、電子線照射により硬化する場合には、樹脂の前駆体(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)の分子鎖切断によってラジカル重合が起こる。これに対し、紫外線を照射して硬化する場合は、前記被膜形成用材料に光重合開始剤を添加するのが一般的である。
【0178】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、ベンゾイン系、アシルフォスフィンオキサイド系、ビスイミダゾール系、アクリジン系、カルバゾール−フェノン系、トリアジン系、オキシム系等の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤は、樹脂の前駆体100重量部に対して、1〜20重量部の量で用いることができる。
【0179】
前記光重合開始剤について更に具体的に説明すると、前記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。また、チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルキサントン等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセエトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等が挙げられる。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。ビスイミダゾール系開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラ(4−メチルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられる。アクリジン系開始剤としては、例えば、1,7−ビス(9−アクリジル)ヘプタン、カルバゾール−フェノン系開始剤としては、例えば、3,6−ビス(1−ケト−2−メチル−2−モルホリノプロピル)−9−オクチルカルバゾール、トリアジン系光開始剤としては、例えば、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が挙げられる。その他、オキシム系開始剤等が挙げられる。
【0180】
樹脂の前駆体を含む本発明のイオン交換膜形成用材料には、光重合開始剤と共に、光重合促進剤、増感剤を含ませることができる。光重合促進剤および増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル等の脂肪族や芳香族のアミン類が挙げられる。
【0181】
また、樹脂の前駆体を含むイオン交換層形成用材料には、材料の安定性を高める目的で、(熱)重合禁止剤を含ませることができる。(熱)重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノン、2,6−t−ブチル−p−クレゾ−ル、2,3−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、アンスラキノン、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
【0182】
その他の樹脂またはその前駆体は、イオン交換層形成用材料100重量%中、通常0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜95重量%となるように添加して用いることができる。
【0183】
更に、本発明のイオン交換層形成用材料には、必要に応じてイオン交換能を有するまたは有さない、有機または無機微粒子を含ませることができる。例えば、上記被膜形成用材料中に上記有機微粒子および/または無機微粒子が含まれることによって、イオン交換能を有する物質がイオン交換層中に均一に存在することとなり、これによってイオン交換能を有する物質が導電性微粒子と接触した際に、イオン交換反応が更に効率良く行われる。
【0184】
また、用いる上記イオン交換能を有するまたは有さない微粒子の平均粒子径は、0.001〜20μmであることが好ましい。平均粒子径が20μmを超える微粒子を用いると、導電性発現効果が劣るだけでなく、被膜形成用材料の安定性、物性等も低下するため好ましくない。前記微粒子は、イオン交換層形成用材料100重量%中、通常1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%となるように添加して用いることができる。
【0185】
上記イオン交換能を有するまたは有さない無機微粒子としては、例えば、クレー、珪藻土、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、タルク、カオリン、焼成カオリン、サポナイト、モルデナイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉛、リン酸マグネシウム、塩化アルミニウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、モンモリロナイト等が挙げられる。これらの無機微粒子のなかでも、非晶質シリカ、コロイダルシリカが好ましい。
【0186】
一方、有機微粒子としては、例えば、デンプン等の天然物、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン系、スチレン/アクリル系、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン6−12等のナイロン系、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4フッ化エチレン等のオレフィン系、ポリエステル系、フェノール系、ベンゾグアナミン系の樹脂微粒子が挙げられる。
【0187】
これらの微粒子は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0188】
イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と該保護物質に対するイオン交換能を有する物質とを同一層内で互いに接触させる場合、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子および該保護物質に対するイオン交換能を有する物質を含む材料は、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子およびイオン交換能を有する物質とを必要に応じ液状媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、イオン交換能を有する樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体、イオン交換能を有するまたは有さない無機または有機微粒子等と共に、従来公知の方法、例えばボールミル、アトライター、サンドミル、ジェットミル、3本ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて分散するか、または、従来公知の方法、例えば、ミキサー、ディソルバーを用いて撹拌、混合することにより製造することができる。その際必要に応じ用いられる液状媒体、消泡剤、レベリング剤、滑剤、分散剤、イオン交換能を有する樹脂以外のその他の樹脂および/またはその前駆体、イオン交換能を有するまたは有さない無機または有機微粒子等は、イオン性を有する保護物質によって被覆された導電性微粒子を含む材料あるいはイオン交換能を有する物質を含む材料を製造する際に用いられるものと同様のものの中から、この材料が被覆される基材、塗布または印刷方法、塗布後の膜特性、配線特性に応じて適宜選択して用いればよい。
【0189】
本発明のイオン交換膜の厚さは、特に限定されないが、一般的には0.1〜200μm、好ましくは1〜100μm程度とされる。
【0190】
以上の方法によって、イオン交換層を形成することができる。


本発明の製造方法では、印刷により配線構造を形成することができ、また、密着性、導電性の優れた配線構造を形成ることができるため、得られたタッチパネル用導電性部材としては、特に、タッチパネルにおいて接続電極および/または引き回し回路の部分に好適に用いることができる。本発明のタッチパネル用導電性部材を用いたタッチパネルは、抵抗膜式のタッチパネルに限定されず、静電容量方式のタッチパネルなど、他の適切な方式のタッチパネルにも適用可能である。
【0191】
(F)タッチパネル導電性部材
以下、本発明の、タッチパネル用導電性部材、および、タッチパネルについて説明する。
【0192】
図1に、抵抗膜式のタッチパネルの概略断面図を示す。図2には、タッチパネルの概略斜視図を示す。タッチパネルは、上部電極基板11と下部電極基板12から成り、スペーサー7を介して貼り合わせ剤により相対させる構造となっている。また、前記上部電極基板11の透明導電膜3上には、平行な一対の接続電極5が配置され、前記下部電極基板12の前記透明導電膜3上には、平行な一対の接続電極5がそれぞれ配置され、前記上部電極基板11上の接続電極と前記上部電極基板12上の接続電極5が方形配置となるように対抗配置されている。
【0193】
さらに、前記上部電極基板11の接続電極5と、前記下部電極基板12の接続電極5とが導電性接着剤などによって接続され、その接続部から引き回し回路6によってフレキシブルケーブル8に接続される。前記接続電極5と引き回し回路6によって配線構造21が構成されている。また、引き回し回路6は、透明導電膜に接していても接していなくてもよい。
【0194】
タッチパネルの作製方法については、特に限定されず公知の方法を用いて作製することができる。例えば、タッチパネルは、上部電極基板11と下部電極基板12から成り、スペーサーを介して貼り合わせ剤により相対させる構造となっていることはすでに述べたとおりであるが、上部電極基板11上は、上基板1上に透明電極膜3を形成し、さらにその上に接続電極5、引き回し回路6を形成することにより得られる。また、下部電極基板は12、例えば、下基材2の一部または全面に透明導電膜3を形成し、さらにその上にスペーサー7、接続電極5、引き回し回路6を形成することにより得られる。
(E)基材
本発明の製造方法で形成される配線構造は、前記上基板1もしくは下基板2に直接あるいは、透明電極膜3を介して形成され、タッチパネル用導電性部材として接続電極5および/または引き回し回路6部に好適に用いることができる。特に、接続電極5として用いる場合には、透明導電膜3上に形成されることが好ましい。
【0195】
上記、上基板1および下基板2に使用する基材としては、特に限定されず、公知のガラス基材およびプラスチック基材を使用することができる。特に、タッチパネルとして使用する場合には、光透過性の基材であることが好ましく、更に、上基板1は、抵抗膜式のタッチパネルにおいて、可動部分であるため、プラスチック基材であることが好ましい。
【0196】
ガラス基材としては、一般に基板用ガラスとして使用されているものは、いずれも使用することができる。例えば、ソーダライムガラス、マイクロシートガラス、無アルカリガラス、パイレツクスガラス(登録商標)、バイコールガラス、石英ガラス等が挙げられる。
【0197】
プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、などのポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルフォン、セロハン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ナイロン、ポリイミド(PI)、ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース、ポリスルフォン、ポリプ、ポリカーボネート、ジアセチルセルロース、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ノルボルネン系樹脂等の従来から使用されているプラスチックからなる基材の中から適宜選択して利用することが可能である。いずれも、単独重合体の他に共重合体も含むものである。これら透明フィルムは一般的な溶融押出法もしくは溶液流延法等により好適に形成される。タッチパネルのペンあるいは指で入力する際に、透明導電膜3にクラック、剥離などが生じないためには、機械強度が高い光透過性フィルムを用いるのが好ましく、PET、PC、PMMAが好ましい。
【0198】
プラスチック基材の表面には、形成される配線構造の密着性を高めたり、塗布、あるいは印刷される配線構造のパターンの印刷再現性を高める目的で、必要に応じて、コロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、ポリウレタン、ポリイソシアネート、有機チタネート、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン等の樹脂コーティング剤を塗布したりすることもできる。
【0199】
また、これらの基材は、表面にハードコート層、防湿層、耐薬品性層、ナトリウムイオンバリアー層などを設けたものであってもよい。これらの層は、絶縁基板の片面に設けることができるが、所望により、両面に設けてもよい。

上記ハードコート層を構成する材料としては、特に限定されないが、硬化性樹脂が挙げられる。例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のケイ素アルコキシドの重合体、エーテル化メチロールメラミン等のメラミン系熱硬化性樹脂、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂を多官能イソシアネート化合物で架橋させた樹脂等のフェノキシ系熱硬化性樹脂、ノボラック系架橋エポキシ樹脂等のエポキシ系熱硬化性樹脂、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の多官能アクリレート系放射線硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中でも、多官能アクリレート系樹脂等の放射線硬化性樹脂は、放射線の照射により比較的短時間に架橋度の高い層が得られることから、製造プロセスへの負荷が少なくまた膜強度が強い特徴があり、最も好ましく用いられる。
【0200】
ハードコート層は、基材上に直接設けても、機能を有する1層を介して設けられても良い。機能を有する層としては、例えば、密着性を向上させる機能を有する層や、K 値が負の値となる三次元屈折率特性を有する層等の各種の位相補償層、水分や空気の透過を防止する機能もしくは水分や空気を吸収する機能を有する層、紫外線や赤外線を吸収する機能を有する層、基材の外表面の帯電性を低下させる機能を有する層が挙げられる。
【0201】
また、ハードコート層に微粒子を含有させることにより、滑り性、干渉縞防止製、アンチグレア性を付与することが可能である。含有させる微粒子は、特に限定されず、公知の無機及び有機フィラーを使用することができ、例えば、シリカ微粒子、架橋アクリル微粒子、架橋ポリスチレン微粒子等が挙げられる。粒子径としては、平均粒形1〜4μmの粒形のものを用いることにより、ハードコート層表面に微細な凹凸を形成できるため好ましい。
【0202】
ハードコート層の基材への実際の塗工法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて塗工することができ、一般的には、前記の化合物ならびに各種添加剤(硬化剤、触媒等)を各種有機溶剤に溶解して、濃度や粘度を調節した塗工液を用いて、基材上に塗工後、放射線照射や加熱処理等により層を硬化させることにより得られる。塗工方式としては、例えば、マイクログラビヤコート法、マイヤーバーコート法、ダイレクトグラビヤコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、コンマコート法、ダイコート法、ナイフコート法、スピンコート法等の各種塗工方法が用いられる。
【0203】
前述の、透明導電膜3を形成する材料は、導電性を有し透明な膜が形成できるものでれば特に限定されず、公知の透明導電膜形成用材料を用いることができる。例えば、スズがドープされた酸化インジウム膜(ITO膜)、フッ素がドープされた酸化スズ膜(FTO膜)、アンチモンがドープされた酸化亜鉛膜などが挙げられる。中でもITOは透明性が高く、導電性にも優れることから抵抗膜式タッチパネルで好適に用いられる。
【0204】
透明導電膜3を形成する方法は、特に限定されず公知慣用手法により形成することが可能である。例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成膜法等が挙げられるがこれに限定されるものではない。スパッタ法では、ターゲットの金属添加量を変え、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法ではペレットの組成を変えることに対処することが可能である。また、上記方法で透明導電膜3を形成する場合、基材1の全面であっても一部であってもよい。
【0205】
また、透明導電膜3の表面抵抗値は、タッチパネルにおいては、200〜1000Ω/□が適切であり、好ましくは300〜500Ω/□である。膜厚は比抵抗値によって決まるが、抵抗値の均一性、透明性の観点から10〜50nmが好ましい。

[上部電極基板11の作製例]
上部電極基板11の作製方法について説明する。
【0206】
上基材1のハードコート層を形成した面とは反対側の面に、スパッタ法にて結晶質のITOより成る透明導電膜3を、30nmの厚さで形成し、ハードコート層、PET、ITO膜の3層からなる、透明導電フィルムを形成し、透明導電膜3上に、接続電極5、引き回し回路6を形成し、上部電極基板11を作製した。
[下部電極基板12の作製例]
次に、下部電極基板12の作製方法について説明する。
【0207】
厚さ100〜200μmのガラスより成る下基材2に、両面にディップコーティング法にてSiO2膜を設けた後、400℃の電気炉にて焼結を行い、スパッタリング法により厚さ20nmのITO膜を透明導電膜3として設けることにより、ガラス電極基板タイプの下部電極基板12を形成した。
【0208】
次に、ITOより成る透明導電膜3上に、高さ1μm、直径50μm、ピッチ1.5mmの例えば樹脂製のスペーサー7をスクリーン印刷等により設けた。透明導電膜3上に、接続電極5、引き回し回路6を形成し、下部電極基板12を作製した。

以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
[導電性微粒子合成例1]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で撹拌しながらトルエン200部およびオレイン酸銀38.9部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)を添加し溶解させた。その後、20%コハク酸ジヒドラジド(以降SUDHと略記する)水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下すると液色が淡黄色から濃茶色に変化した。更に反応を促進させるために40℃に昇温し、反応を進行させた。静置、分離した後、水層を取り出すことで過剰の還元剤や不純物を除去し、更にトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄・分離を繰り返し、銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銀濃度は73%であった。
[導電性微粒子合成例2]
原料の金属塩をヘキサン酸銀22.3部に変更した以外は、合成例2と同様にして銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体の、銀微粒子の平均粒子径は5±2nmであり、銀濃度は80%であった。
[導電性微粒子合成例3]
原料の金属塩をペンタン酸銅26.6部、還元剤を20%SUDH水溶液292.3部(金属1molに対しヒドラジド基4mol倍)に変更した以外は合成例1と同様にして赤色の銅微粒子分散体を得た。得られた銅微粒子分散体の銅微粒子の平均粒子径は7±2nmであり、銅濃度は50%であった。
[導電性微粒子合成例4]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素ガスを導入しながら1M硝酸銀水溶液を100部仕込み、攪拌しながらソルスパース32000(日本ルーブリゾール株式会社製、重量平均分子量約50000)1.9部を、トルエン10.8部中に溶解させた溶液を滴下した。室温で30分攪拌した後、20%SUDH水溶液73.1部(金属1molに対しヒドラジド基2mol倍)を滴下し、そのまま室温で一晩攪拌し反応を進行させた。水層を取り出し、数回蒸留水で洗浄・分離を繰返すことで過剰の還元剤と不純物の洗浄を行い、銀微粒子分散体を得た。得られた銀微粒子分散体は、銀微粒子の平均粒子径は25±10nmであり、銀濃度は50%であった。
[導電性微粒子合成例5]
セパラブル4口フラスコに冷却管、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付け、窒素雰囲気下、室温で攪拌しながらトルエン200部およびペンタン酸銀26.6部を仕込み、0.5Mの溶液とした後に、分散剤としてジエチルアミノエタノール2.3部(金属1molに対し0.2mol倍)、オレイン酸2.8部(金属1molに対し0.1mol倍)を添加し溶解させた。その後、ヒドラジン3.2部(金属1molに対し2mol倍)を加えると激しく反応が起こり、沈殿物が生じた。静置、分離した後、水層を取り出すことで沈殿物、過剰の還元剤や不純物を除去し、さらにトルエン層に数回蒸留水を加え、洗浄、分離を繰り返して銀微粒子分散体トルエン溶液を得た。得られた銀微粒子分散体の銀微粒子の平均粒子径は20±5nmであり、銀濃度は30%であった。

[実施例1]
前述した上部電極基板11の作製例および下部電極基板12の作製例によって、基材にITOからなる透明導電膜3を形成し、上部電極基板11および下部電極基板12を作製した。それぞれの透明導電膜3上に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、ディスペンサ法にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥させて、導電性微粒子層を形成した。
【0209】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、前述の図1及び図2に示す構成の抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
[実施例2]
陰イオン交換能を有する物質としてカチオン性樹脂(三菱化学株式会社製「サフトマーST−3000」、固形分25%)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1、重量比)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
【0210】
次に、透明導電膜3上に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、スクリーン印刷により印刷した後、75℃で5分間乾燥することにより、陰イオン交換層を得た。
【0211】
次に、導電性微粒子合成例1に示される銀微粒子分散体を用いて、上記陰イオン交換層上に、ディスペンサ法にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃で10分間乾燥させ、導電性微粒子層を形成した。
【0212】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
【0213】
[実施例3]
透明導電膜3上に、導電性微粒子合成例2に示される銀微粒子分散体を用いて、ディスペンサ法にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥させて、導電性微粒子層を得た。
【0214】
次に、陰イオン交換能を有する物質としてコロイダルシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックスAK」、固形分20%)60部、その他の樹脂としてポリアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKW−1」、固形分20%)15部、液状媒体(水/ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート=4/6)25部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陰イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。次に、この陰イオン交換能を有する塗料を用いて、インクジェット法により上記導電性微粒子層上に印刷し、熱風乾燥オーブン中、100℃で5分間乾燥して、上部電極板11および下部電極板12を得た。
【0215】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
[実施例4]
導電性微粒子合成例3で得られたペンタン酸で被覆された銅微粒子分散体に貧溶媒であるアセトンを添加して銅微粒子を固形物として取り出し、乾燥させた。得られた銅微粒子をエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解させ銅濃度20%に調整し、銅微粒子分散体を得た。
【0216】
得られた銅微粒子分散体を用いて、インクジェット装置にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥させて、導電性微粒子層を形成した。
【0217】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
[実施例5]
導電性微粒子合成例4で得られたsol32000で被覆された銀微粒子分散体に貧溶媒であるアセトンを添加して銀微粒子を固形物として取り出し乾燥させた。得られた銀微粒子をエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解させ銀濃度20%に調整し、銀微粒子分散体を得た。
【0218】
得られた銀微粒子分散体を用いて、透明導電膜3上にインクジェット装置にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥させて、導電性微粒子層を形成した。
【0219】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
【0220】
[実施例6]
陽イオン交換能を有する物質としてアニオン性樹脂(日本合成化学株式会社製「ゴーセナールT−350」)60部、液状媒体(水/イソプロピルアルコール=1/1、重量比)40部を混合し、ディソルバーを用いて20分間撹拌して陽イオン交換能を有する物質を含んだ塗料を得た。
【0221】
次に、透明導電膜3上に、この陽イオン交換能を有する塗料を用いて、スクリーン印刷により印刷した後、75℃で5分間乾燥することにより、陰イオン交換層を得た。
【0222】
次に、導電性微粒子合成例4で得られたsol32000で被覆された銀微粒子分散体に貧溶媒であるアセトンを添加して銀微粒子を固形物として取り出し乾燥させた。得られた銀微粒子をエチレングリコールモノブチルエーテルに溶解させ銀濃度20%に調整し、銀微粒子分散体を得た。
【0223】
得られた銀微粒子分散体を用いて、インクジェット装置にて配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥させて、導電性微粒子層を形成した。
【0224】
完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
[実施例7]
銀微粒子分散体として、導電性微粒子合成例5に示される分散体を使用した以外は、実施例1と同様にしてタッチパネルを形成した。
[実施例8]
導電性微粒子層の乾燥条件を100℃、20分間に変更した以外は、実施例2と同様にしてタッチパネルを形成した。

[比較例1]
オレイン酸で表面処理したフレーク状銀粉(平均粒子径4.0μm)50部、液状媒体(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)40部、ビスフェノール樹脂(昭和化成株式会社製MR‐1)10部を混合し、プラネタリーミキサーを用いて30分間撹拌して、銀ペーストを得た。
【0225】
透明導電膜3上に、上記銀ペーストを用いて、スクリーン印刷により配線構造21を印刷した後、熱風乾燥オーブン中、150℃10分間乾燥し、完成した上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
[比較例2]
透明導電性膜3上に、スパッタにて銀薄膜を形成した後、エッチングにて配線構造21を形成し、上部電極板11および下部電極板12を両面テープにて貼り合わせ、抵抗膜式のタッチパネルを形成した。
【0226】

以上の実施例に係るタッチパネルについて、配線の密着性、端子間抵抗値、配線構造の体積抵抗値、環境保存後のリニアリティ、耐久試験後のリニアリティを評価した。
[配線構造の密着性]
透明導電膜上に形成された配線構造21に、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、幅12mm)を貼り付け、セロハン粘着テープを急激に引き剥がした時、剥離した配線構造の程度を、下記評価基準により評価した。
(評価基準)
○:ほとんど剥離しない(剥離面積10%未満)
△:部分的に剥離した(剥離面積10%以上50%未満)
×:ほとんど剥離した(剥離面積50%以上)
【0227】
[体積抵抗値]
得られた配線構造部分を、30mm間隔で4箇所はさみ、その抵抗値を四探針抵抗測定器(三和電気計器株式会社製「DR−1000CU型」)で測定した。配線構造部分の膜厚を膜厚計(株式会社仙台ニコン製「MH−15M型」)で測定し、得られた抵抗値と膜厚から体積抵抗値を算出した。
【0228】
なお、透明導電膜3上に、導電性微粒子層、イオン交換層の順に積層した場合は、一部イオン交換層を剥離、導電性微粒子層を露出させて抵抗値、膜厚を測定して体積抵抗値を算出した。

環境試験としては、60℃、90%RH、10日間の高温高湿試験を行った。
【0229】
耐久試験としては、250g、R0.8のペンで3Vの電圧をかけ、100万回の打鍵試験を行った。
得られるリニアリティとしては、タッチパネルの特性を考慮して1.5%以下であることが望ましい。
(評価基準)
○:リニアリティが1.5%未満
△:リニアリティが1.5%以上3.0%未満
×:リニアリティが3.0%未満
【0230】
リニアリティの測定は、上部電極基板11上又は下部電極基板12上の平行な接続電極5間に、直流電圧5Vを印加する。平行な接続電極5と垂直方向に9mm間隔で電圧を測定する。測定開始位置Aの電圧をEA、測定終了位置Bの電圧をEB、Aからの距離Xにおける電圧実測値をEX、理論値をET、リニアリティをLとすると、
ET=(EB−EA)・X/(B−A)+EA
L(%)=(|ET−EX|)/(EB−EA)・100

【0231】
【表1】

【0232】
【表2】

【0233】
表1および表2に示すように、実施例1〜8のタッチパネルは、配線構造の密着性および導電性が良好であり、耐久試験、環境試験後のリニアリティ結果も良好であった。これに対し、比較例1〜2のタッチパネルは、耐久試験、環境試験後のリニアリティ結果のいずれかが不良であり、すべてが良好となるものは得られなかった。
【0234】
実施例1〜8と比較例1を比較すると、実施例1〜8のタッチパネルは、配線構造の体積抵抗値が低く、耐久試験、環境試験後のリニアリティ結果が良好となった。本発明の、タッチパネル用導電性基材を用いると、従来の銀ペーストを用いたタッチパネルよりも線幅が細く、かつ、膜厚が薄い配線構造を形成することができると考えられる。さらに、従来よりも耐久性、耐熱耐湿性に優れ、リニアリティの変化を低く抑えることが出来ると分かる。
【0235】
実施例1〜8と比較例2を比較すると、実施例1〜8のタッチパネルは、配線構造の密着性、耐久試験、環境氏堅固のリニアリティ結果が良好となった。本発明の、タッチパネル用導電性基材を用いると、従来の銀スパッタ、エッチング法よりも配線構造の密着性がよく、耐久性に優れたタッチパネルを製造する事が出来ると分かる。
【0236】
なかでも、実施例1と実施例7を比較すると、実施例1の方が、配線構造の体積抵抗値が低く、導電性微粒子を合成する際の還元剤としてヒドラジンを使用するよりもSUDHを使用するほうがタッチパネル用導電性基材の配線構造としてより好ましい事が分かる。
【0237】
さらに実施例1と実施例2、実施例5と実施例6を比較すると、実施例2および実施例6の方が、体積抵抗値が低く、配線構造を形成する際にイオン交換層を設ける方が、タッチパネル用導電性基材としてより好ましい事が分かる。
【図面の簡単な説明】
【0238】
【図1】本発明の、タッチパネルの一例の概略断面構成図である。
【図2】本発明の、タッチパネルの一例の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0239】
(1)上基材
(2)下基材
(3)透明導電膜
(4)絶縁層
(5)接続電極
(6)引き回し回路
(7)スペーサー
(8)フレキシブルケーブル
(11)上部電極基板
(12)下部電極基板
(21)配線構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に配線構造を有するタッチパネル用導電性基材の製造方法であって、
前記配線構造の少なくとも一部が、イオン性を有する保護物質により被覆された、平均粒子径が1〜100nmである導電性微粒子を含む材料を基材上に被膜形成させることによって得られることを特徴とするタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項2】
タッチパネル用導電性基材が、透明導電膜上に配線構造を有することを特徴とする、タッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項3】
導電性微粒子を含む材料が、少なくとも1種の液状媒体を含むことを特徴とする、請求項1または2記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項4】
導電性微粒子が、金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、および鉄から選ばれた金属、またはこれら金属の合金の少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項5】
導電性微粒子が、銀であることを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項6】
導電性微粒子が、液体媒体中で金属化合物を還元して得られることを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項7】
導電性微粒子が、下記式(1)で示されるカルボジヒドラジドまたは下記式(2)で示される多塩基酸ポリヒドラジドを用いて、金属化合物を還元して得られることを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【化1】

(式中、Rはn価の多塩基酸残基を表す。)
【請求項8】
イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子と、前記保護物質に対するイオン交換能を有する物質とを接触させることを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項9】
イオン交換能を有する物質を含むイオン交換層を形成した後、前記イオン交換層上に、イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料により配線用被膜を形成することを特徴とする請求項8記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項10】
イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料により配線用被膜を形成して導電性微粒子層とした後、前記導電性微粒子層上にイオン交換能を有する物質を含むイオン交換層を形成することを特徴とする請求項8記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項11】
イオン性を有する保護物質により被覆された導電性微粒子を含む材料を印刷して被膜を形成することを特徴とする請求項1〜10いずれかに記載のタッチパネル用導電性基材の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11いずれかに記載の製造方法で製造されてなる、基材上に配線構造を有するタッチパネル用導電性基材。
【請求項13】
配線構造が、透明導電膜と接続する接続電極、及び/または、引き回し回路部であることを特徴とする、請求項12に記載のタッチパネル用導電性基材。
【請求項14】
一対の導電性基材を、短絡しない間隔をもって配置してなるタッチパネルであって、
少なくとも一方の導電性基材が、請求項12または13記載のタッチパネル用導電性基材であるタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−116452(P2009−116452A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286188(P2007−286188)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】