説明

タッチパネル装置

【課題】透明導電膜の上層に金属層が形成されている構造を有する場合に、金属層が溶けたり腐食したりして透明導電膜との接着性が低下することを防止できるタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】ガラス等による基板11上にITOなどの透明導電膜12が成膜されている。透明導電膜12の上に形成される金属層14として、銀パラジウム合金(AgPd)が用いられる。また、金属層14と透明導電膜12との間に、ICO(インジウムセリウムオキサイド)を用いた接着層13が設けられている。さらに、金属層14の上に、保護層15としてのICOが積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル装置に関し、特に、透明導電膜の上層に金属層が形成されているタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置は、人間の指やペン等の接触体が接触したり近接したりすると、接触位置や近接位置を検出する装置である。接触を検出する方式として、抵抗検出方式、静電容量方式、光学方式、超音波方式等がある。
【0003】
図2は、静電容量方式によるタッチパネル装置における位置検出の原理を説明するための説明図である。ただし、図2には、説明を簡単にするために、一次元での位置を検出する場合が示されている。静電容量方式を用いる場合には、一般に、可視光領域の光透過率が高いガラス、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルムなどの基材(基板)11上にITO(Indium Tin Oxide:錫または酸化錫が添加された酸化インジウム)12などの透明導電膜が成膜されたタッチパネル20が用いられる。
【0004】
図2(A)に示すように、タッチパネル20の両端には、電流検出用抵抗rを介して電流源から同位相の交流電圧が印加される。接触体51が接触したり近接したりしていない場合には、タッチパネル20に電流は流れない。図2(B)に示すように、導体である接触体51がタッチパネル20に接触したり近接したりすると、接触体51とタッチパネル20との間にキャパシタが形成され、接触体51に微弱な電流が流れる。よって、電流源から電流I,Iが流れる。接触体51の接触位置が異なると電流I,Iの値が異なるので、電流I,Iの値を検出することによって、接触体51が接触したり近接したりした位置を検出できる。
【0005】
実際には、タッチパネルは、接触体51が接触したり近接したりした二次元的な位置(以下、接触位置という。)を検出することが一般的であるから、タッチパネルにおける4箇所から交流電圧が印加される。図3は、特許文献1に記載されたタッチパネル100の構成を示す平面図である。図3に示す構成では、タッチパネル100におけるタッチ領域101の外側に、導電体層102が形成されている。そして、タッチ領域101の外側に形成されている導電体層102のうち、タッチパネル100における四隅の導電体層102が電極に割り当てられる。そして、電極に電圧が印加される。なお、タッチ領域101とは、接触位置の検出が可能な領域である。また、図3には明示されていないが、導電体層102の下層において、タッチパネル100の全面にわたって透明導電膜が成膜されている。
【0006】
また、図4は、特許文献2に記載されたタッチパネル110の構成を示す平面図である。図4に示す構成では、各電源からの交流信号の干渉防止等のために、タッチパネル110におけるタッチ領域111の外側に、接地パターンとしての導電体層112が形成されている。図4には明示されていないが、タッチ領域111の外側には、金属の電極が形成されている。
【0007】
なお、導電体層102,112は、タッチパネルの抵抗値R(図2参照)を下げる作用を果たすこともできる。抵抗値Rが低いほど、接触位置の検出感度は向上する。
【0008】
【特許文献1】特開2006−23904号公報(図2)
【特許文献2】特開2005−84982号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
タッチパネルにおいて透明導電膜は、基板上にスパッタリング法などで成膜される。導電体層102,112は、透明導電膜の上に金属ペーストを塗布したり、金属を接着剤で透明導電膜に固着することによって形成される。図5は、タッチパネルを保護するための保護基板を配設したタッチパネルの構成を模式的に示す断面図である。図5に示す構成は、例えば図3や図4に示された構成において、導電体層102,112が形成された領域における断面での構成に相当する。
【0010】
図5に示す例では、基板11上に成膜された透明導電膜としてのITO12の上に金属層14aが載置された後、保護基板16を配設する。保護基板16は、例えば加圧されると硬化する接着剤13aで基板11に固着される。
【0011】
金属層14aとして、例えば、モリブデン(Mo)と、アルミニウムネオジウム合金(AlNd)と、モリブデン(Mo)とを積層したものを使用可能である。しかし、そのような材質による金属層14aを用いる場合には、接着剤13aに酸性物質が含まれるときには、酸性物質によって溶けたり腐食したりする可能性がある。その結果、金属層14aとITO12との接着性が低下し、抵抗が上昇し、位置検出精度が悪化するという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、透明導電膜の上層に金属層が形成されている構造を有する場合に、金属層が溶けたり腐食したりして透明導電膜との接着性が低下することを防止できるタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるタッチパネル装置は、基板と、基板の上に形成された物体の近接位置または接触位置の検出が可能な領域であるタッチ領域と、タッチ領域の外側に形成され、基板上の透明導電膜の上に金属層を配置した導電体層とを備えたタッチパネル装置であって、金属層は貴金属または貴金属合金で形成され、透明導電膜と金属層との間に金属酸化物による接着層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
例えば、金属層は銀パラジウム合金で形成され、接着層はインジウムセリウムオキサイドで形成されている。
【0015】
保護基板をさらに備え、保護基板は少なくとも導電体層の位置において接着剤で基板と固定され、金属層の上に金属酸化物による保護層が配設されているように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属層が溶けたり腐食したりして透明導電膜との接着性が低下し、抵抗が上昇することを防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明によるタッチパネル装置におけるタッチパネルの一部を示す断面図である。なお、タッチパネルの全体的な構成は、図3や図4に示された構成と同じである。また、図1には、例えば図3や図4に示された構成において、導電体層102,112が形成された領域における断面での構成が示されている。また、タッチパネル装置は、図3や図4に示された構成のタッチパネルの他に、タッチパネルの電極に信号を印加したり物体(人間の指など)の接触位置を検出するための回路部分を含むものである。
【0018】
この実施の形態では、透明導電膜12の上に形成される金属層14として、銀パラジウム合金(AgPd)が用いられる。また、金属層14と透明導電膜12との間に、ICO(インジウムセリウムオキサイド(Indium Cerium Oxide ):セリウムまたは酸化セリウムが添加された酸化インジウム)を用いた接着層13が設けられている。なお、ガラス等による基板11上にITOなどの透明導電膜12が成膜されている。
【0019】
ここでは、金属層14の材質としてAgPdを例示するが、酸性物質に対する耐性が高い金属すなわち腐食性が低い金属であって、かつ、電気抵抗率が低い金属であれば、他の金属を用いてもよい。酸性物質に対する耐性が高いことが要求されるので、貴金属(noble metal )または貴金属の合金を用いることが好ましい。
【0020】
また、接着層13は、金属層14と透明導電膜12との接着性を高めるために用いられているが、金属層14と透明導電膜12との接着性を高めることができ、かつ、電気抵抗率が低い金属酸化物であれば、他の金属酸化物を用いてもよい。
【0021】
さらに、金属層14の上に、保護層15としてのICOが積層されている。図1には示されていないが、図5に示された構成と同様に、少なくとも、接着層13、金属層14および保護層15が形成された位置において保護基板16が基板11に固着される。保護層15は、接着剤から金属層14を保護したり、保護基板から金属層14を保護したりする役割を果たす。
【0022】
なお、接着層13、金属層14および保護層15の厚さは、一例として、それぞれ、50〜100Å、1500〜2000Å、50〜100Åである。
【0023】
図1に示された構造を実現する場合に、まず、例えば、透明導電膜12が、基板11上にスパッタリング法などで成膜される。次いで、透明導電膜12の上における所定領域に接着層13の材料を成膜し、その上に金属層14の材料を成膜する。さらにその上に、保護層15の材料を成膜する。その後、接着層13の材料、金属層14の材料および保護層15の材料を一時にエッチング等して、所望の形状を形成する(図3および図4の導電体層102,112の形状参照)。
【0024】
この実施の形態では、金属層14として、腐食性が低く、かつ、電気抵抗率が低い金属を用いる。よって、金属層14等を透明導電膜12に固着する際に酸性物質を含む接着剤を用いても、金属層14が溶けたり腐食したりする可能性が低減する。また、金属層14と透明導電膜12との間に、金属層14と透明導電膜12との接着性を高め、かつ、電気抵抗率が低い接着層12が設けられているので、金属層14がタッチパネル全体の電気抵抗率を低める役割は損なわれず、かつ、金属層14と透明導電膜12とがより強固に固着される。
【0025】
なお、この実施の形態では、金属層14として、図3に示された導電体層102や図4に示された導電体層112に相当するものを想定したが、すなわち、電極や接地パターンとしての役割も果たす金属層14について説明したが、例えば、金属層14がタッチパネル全体の電気抵抗率を低める目的でのみ使用される場合にも、本発明を適用できる。
【0026】
また、この実施の形態では、タッチパネルの全面にわたって透明導電膜12が成膜されていることを想定したが、タッチパネルの一部にのみ透明導電膜12が成膜されている場合でも、タッチ領域の外側において透明導電膜12の上に金属層14を形成する必要がある構造では本発明を適用できる。なお、例えば、タッチパネルにおいて、複数の透明導電膜12が直線状に形成されていたり、多数の検出電極としてのITOが離散的に形成されている場合に、タッチパネルの一部にのみ透明導電膜12が成膜されている状態が生ずることがある。
【0027】
さらに、タッチパネル装置の下側に液晶表示装置などの表示装置が設置される場合には、表示装置の上側の基板を、タッチパネルの基板11と兼用することもできる。また、金属層の上の保護層15として、一括でエッチングしてパターニングすることが容易なICOを例示したが、他の金属酸化物、例えば酸化珪素や酸化アルミニウムなどを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、透明導電膜の上層に金属層が形成されている構造を有するタッチパネル装置に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明によるタッチパネル装置におけるタッチパネルの一部を示す断面図。
【図2】静電容量方式によるタッチパネル装置における位置検出の原理を説明するための説明図。
【図3】従来のタッチパネルの構成を示す平面図。
【図4】従来の他のタッチパネルの構成を示す平面図。
【図5】タッチパネルを保護するための保護基板を配設したタッチパネルの構成を模式的に示す断面図
【符号の説明】
【0030】
11 基板
12 透明導電膜
13 接着層
14 金属層
15 保護層
16 保護基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板の上に形成された物体の近接位置または接触位置の検出が可能な領域であるタッチ領域と、該タッチ領域の外側に形成され、基板上の透明導電膜の上に金属層を配置した導電体層とを備えたタッチパネル装置において、
前記金属層は、貴金属または貴金属合金で形成され、
前記透明導電膜と前記金属層との間に、金属酸化物による接着層が形成されている
ことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
金属層は、銀パラジウム合金で形成され、
接着層は、インジウムセリウムオキサイドで形成されている
請求項1記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
保護基板をさらに備え、
保護基板は少なくとも導電体層の位置において接着剤で基板と固定され、
金属層の上に金属酸化物による保護層が配設されている
請求項1または請求項2記載のタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80743(P2008−80743A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265784(P2006−265784)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】