説明

タッチ検出機能付きスイッチ装置

【課題】スイッチ操作部材を押圧操作する際の触感に影響を与えることなく、スイッチ操作部材へのタッチ操作を検出できるタッチ検出機能付きスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 操作ボタン1の内面において、操作面部1aから側面部1bにかけてメッキ部20を設け、操作面部1aの内面にタッチ検出用電極21、側面部1bの内面に可動電極22を配置する。電極21,22は矩形板状をなしており、メッキ部20によって電気的に接続される。側面部1bとボディ3との隙間に可動電極22と略同形状をなす固定電極23を可動電極22と対向するように配置し、プリント配線板24の挿入穴25を通じてコネクタ26を介して配線部に接続する。可動電極22及び固定電極23により平行平板コンデンサC1が形成され、タッチ検出用電極21と配線部とは容量性結合を介して電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ操作部材に手指が接触した際にこれを検出するためのタッチ検出用電極を有するタッチ検出機能付きスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複数のスイッチ操作部材として複数の操作ボタンを有するスイッチ装置と、その操作ボタンと対応する数の選択部を画面に表示する表示装置とを備え、使用者が選択した操作ボタンを手指にて押圧操作すると、操作ボタンの下側に配設されたスイッチ要素が押圧操作され、その操作ボタンに対応する画面上の選択部が決定されるというものが考えられている。
【0003】
なお、本発明が解決しようとする課題に対応するような公知文献は発見できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したようなものにおいては、使用者は、スイッチ装置の操作ボタンを見て選択してから操作する必要がある。このため、使用者は、スイッチ装置の操作ボタンと、表示装置の画面の両方を見る必要があり、操作性が良くないという問題がある。
そこで、このような問題に対処するため、発明者らは次のようなものを考えた。それは、スイッチ装置の操作ボタンに手指が接触した際に、これを検出して、その操作ボタンに対応する選択部の表示状態を変化させるような構成とするものである。このような構成のものによれば、表示画面を見れば、手指が接触している操作ボタンの位置が分かるため、スイッチ装置の操作ボタンを見ずに、表示画面のみを見て操作することが可能となる。
【0005】
これを実現させるためのスイッチ装置として、発明者らは例えば図3に示す構成のもの(比較例)を考えた。図3は、このスイッチ装置の縦断面図である。スイッチ操作部材を構成する操作ボタン1は合成樹脂により下面側が開口した逆U字状をなすように形成されていて、その操作面部1aの下面には、タッチ検出用電極2が設けられている。また、この操作ボタン1の周辺には、操作ボタン1の可動のための空間を挟んでボディ3が位置している。
操作ボタン1の下方には、矩形板状をなすプリント配線板4が配置されており、このプリント配線板4には、プリント配線がなされている。また、プリント配線板4の部品面中央付近には操作ボタン1の照明用のLED5が搭載されている。
【0006】
上記タッチ検出用電極2は、弾性変形可能なフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit,以下FPCと称す)6を介してプリント配線板4の図示しない配線部に電気的に接続されている。このFPC6は、プラスチックシート間に銅製の配線部(図示せず)を挟み込んだような構造となっていて、操作ボタン1の操作面部1aに配置される一端側の配線部をタッチ検出用電極2としている。
FPC6は、操作ボタン1の一方の側面部1bの内面、プリント配線板4の図3中左側の部品面及びはんだ面を沿うように屈曲して配置され、操作ボタン1の内部に内ケース1cが圧入されることで固定されている。そして、FPC6の他端側は、プリント配線板4のはんだ面に搭載されたコネクタ7を介して配線部に接続され、コネクタ7の手前部分において、固定部材8によって固定されている。
【0007】
プリント配線板4において、操作ボタン1の他方の側面部1dの下方に対応する部位に位置させて、スイッチ要素としてのタクトスイッチ9が配設されている。なお、操作ボタン1の側面部1bとプリント配線板4の部品面との間には、操作ボタン1の側面部1bの下方向への移動を許容する隙間が設定されている。
なお、図示した構成では、操作ボタン1が1個のみであるが、複数の選択部と対応させる場合には、操作ボタン1を含むユニットを複数個用意する。そして、各配線部及びタクトスイッチ9は、例えばマイクロコンピュータからなる制御装置(図示せず)に接続される。
【0008】
次に、このスイッチ装置のタッチ検出回路10について、図4を参照して説明する。このタッチ検出回路10は一般的な静電容量検出回路であり、高周波信号を出力する発振部11,負荷抵抗12,タッチ検出用電極2,高周波信号の検波及び平滑を行う検波部13,オペアンプ14を備えて構成されている。発振部11の出力端子には、負荷抵抗12及びFPC6を介してタッチ検出用電極2が接続されている。検波部13は、ダイオード及びコンデンサなどからなり、発振部11からの高周波信号が入力されている。また、検波部13の出力はオペアンプ14を介して、増幅及びオフセットされた信号Voutとして制御装置に入力されている。なお、発振部11,負荷抵抗12,検波部13,オペアンプ14は、パッケージ化され静電容量検出IC15を構成している。
【0009】
上記構成において、使用者の手指が操作ボタン1の上面の操作面部1aに接触すると、発振部11から出力された高周波信号は、タッチ検出用電極2及び使用者の手指により形成されたコンデンサCのインピーダンスと負荷抵抗12とで分圧されて検波部13に入力される。従って、手指が触れていない状態と比べて、検波部13に入力される高周波信号のレベルが小さくなるため、検波部13及びオペアンプ14を介して出力される信号Voutのレベルも小さくなる。制御装置は、この信号Voutのレベルの変化により操作ボタン1への手指の接触を検出し、図示しない表示装置の画面において、その操作ボタン1に対応する選択部の表示状態を変える。そして、その操作ボタン1が下方へ押圧操作され、この操作ボタン1の側面部1dによりタクトスイッチ9が押圧操作されると、制御装置は、例えば表示装置の画面上の選択部の表示状態を決定状態に変化させる。
【0010】
しかしながら、上記した構成のスイッチ装置では、使用者が操作ボタン1の押圧操作を行う際、屈曲したFPC6による弾性力が使用者に与える触感に影響を及ぼしてしまうことが考えられる。従って、本来意図していたものと違う触感を使用者に与えてしまうなどで使い心地が悪くなってしまうおそれがある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スイッチ操作部材を押圧操作する際の触感に影響を与えることなく、スイッチ操作部材へのタッチ操作を検出することができるタッチ検出機能付きスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために、本発明のタッチ検出機能付きスイッチ装置は、手指が接触したことを検出するためのタッチ検出用電極を有したスイッチ操作部材と、前記スイッチ操作部材が押圧操作されることに伴い当該スイッチ操作部材を介して押圧操作されるスイッチ要素と、前記スイッチ操作部材に設けられ、前記タッチ検出用電極に接続された第1の電極と、前記第1の電極と対向し容量結合するように配設された第2の電極と、前記第2の電極に接続されると共に、前記第1の電極及び第2の電極間の静電容量結合を介して前記タッチ検出用電極と電気的に接続された配線部を有したプリント配線板とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者の手指がスイッチ操作部材に接触するとタッチ検出用電極における静電容量が変化する。配線部側では、第1及び第2の電極による静電容量結合を介してこの静電容量の変化を検出することができる。そして、使用者がスイッチ操作部材を押圧してスイッチ要素を操作する場合、タッチ検出用電極が設けられたスイッチ操作部材と配線部が設けられたプリント配線板との間には、この押圧操作に影響を及ぼすものは存在しないのでスイッチ要素を押圧操作する触感のみが使用者に伝わる。従って、スイッチ操作部材の押圧操作の触感に影響を与えることなく、スイッチ操作部材へのタッチ操作を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図3及び図4と同一の部分については同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分のみ説明する。図1は、タッチ検出機能付きスイッチ装置の縦断面図である。本実施例において、操作ボタン1(スイッチ操作部材に相当)の内面には、操作面部1aから側面部1bにかけて、例えば銅メッキが施されメッキ部20が設けられている。これにより、操作面部1aの内面にタッチ検出用電極21、側面部1bの内面に可動電極22(第1の電極に相当)を配置している。また、これらの電極21,22は矩形板状をなしており、メッキ部20によって電気的に接続されている。
【0015】
操作ボタン1の側面部1bとボディ3との隙間には、可動電極22と略同形状をなす固定電極23(第2の電極に相当)が可動電極22と対向するように配置されている。この固定電極23は、プリント配線板24の挿入穴25を通じてはんだ面に搭載されたコネクタ26を介して図示しない配線部に接続されている。なお、可動電極22及び固定電極23により平行平板コンデンサC1が形成されるため、タッチ検出用電極21と配線部とは容量性結合を介して電気的に接続されている。
【0016】
次に、タッチ検出回路27の等価回路について図2を参照して説明する。タッチ検出回路27は、可動電極22及び固定電極23からなる平行平板コンデンサC1を備えて構成されており、発振部11の出力端子には、負荷抵抗12及び平行平板コンデンサC1を介してタッチ検出用電極21が接続されている。使用者の手指が操作ボタン1の上面の操作面部1aに接触した場合、タッチ検出用電極21及び使用者の手指とで形成されるコンデンサC2と、平行平板コンデンサC1とは直列接続された状態になる。この場合、C1とC2の合成コンデンサC3の静電容量は、次のように表わすことが出来る。
C3=(C1×C2)/(C1+C2)[F]
また、本実施例では、タッチ検出用電極21及び使用者の手指により形成されるコンデンサC2の静電容量が1〜数pFであるのに対して、平行平板コンデンサC1の静電容量は、可動電極22及び固定電極23の大きさや電極間距離などを調整することで、数百pFとコンデンサC2の静電容量よりも二桁大きい値、例えば100倍程度に設定されている(C1≫C2)。従って、C1はC2と比べて十分に大きい値であるので、上記式より合成コンデンサC3の静電容量は、コンデンサC2の静電容量と略同じとみなすことができる(C3≒C2)。
【0017】
上記構成において、使用者の手指が操作面部1aに接触すると、発振部11から出力された高周波信号は、合成コンデンサC3のインピーダンス、つまりタッチ検出用電極21及び使用者の手指により形成されたコンデンサC2のインピーダンスと負荷抵抗12とで分圧されて検波部13に入力される。すると、比較例の場合と同様に、信号Voutのレベルも小さくなるので、制御装置は、操作ボタン1への手指の接触を検出し、操作ボタン1に対応する選択部の表示状態を変える。
【0018】
また、使用者によって操作ボタン1が下方へ押圧操作され、操作ボタン1の側面部1dによりタクトスイッチ9(スイッチ要素に相当)が押圧操作された場合、操作ボタン1とプリント配線板24とはタクトスイッチ9のみを介して接触しているので、使用者には、タクトスイッチ9の押圧に伴う触感のみが伝わる。そして、制御装置は、比較例の場合と同様に選択部の表示状態を決定状態に変化させる。
【0019】
以上のように本実施例によれば、タッチ検出用電極21とプリント配線板24の配線部との電気的接続を、可動電極22及び固定電極23からなる平行平板コンデンサC1を介して行うことにより、操作ボタン1は、タクトスイッチ9のみを介してプリント配線板24と接触させるようにした。従って、操作ボタン1の押圧操作の触感に影響を与えることなく、操作ボタン1へのタッチ操作を検出することができる。
また、使用者が操作ボタン1を押圧操作するときの触感は、タクトスイッチ9の押圧に伴う触感と略同じになる。従って、タクトスイッチ9の押圧時における触感の設計を行うだけで、操作ボタン1の押圧操作に伴う所望の触感を実現することが可能となる。さらに、タッチ検出用電極21とプリント配線板24の配線部とを電気的にのみ接続し、非接触状態としたので組付け性が向上する。
【0020】
なお、本発明は上記し、且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形又は拡張が可能である。
本実施例では、可動電極22及び固定電極23からなるコンデンサC1の静電容量は、タッチ検出用電極21及び使用者の手指により形成されるコンデンサC2の静電容量の100倍程度に設定したが、検波部13,オペアンプ14,制御装置など後段の回路の精度に応じて操作ボタン1へのタッチ操作が検出できるような値に設定すれば、100倍より大きくても或いは小さくてもよい。
また、操作ボタン1の形状又は大きさなどに応じて、コンデンサC1の静電容量がコンデンサC2の100倍よりも大きくなるように可動電極22,固定電極23の形状又は大きさなどを変更してもよい。
【0021】
本実施例では、固定電極23とプリント配線板24の配線部との接続を、プリント配線板24の半田面に搭載されたコネクタ26を介して行うようにしたが、コネクタ26は部品面に搭載されていてもよい。また、接続強度など信頼性に問題が無ければ、コネクタ26を介さずに直接プリント配線板24にはんだ付けで接続してもよい。
また、タッチ検出用電極21及び可動電極22を銅メッキにより構成したが、金属板やフレキシブルプリント配線板を用いて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示すタッチ検出機能付きスイッチ装置の縦断面図
【図2】タッチ検出回路の等価回路を示す図
【図3】比較例を示す図1相当図
【図4】図2相当図
【符号の説明】
【0023】
図面中、1は操作ボタン(スイッチ操作部材)、9はタクトスイッチ(スイッチ要素)、21はタッチ検出用電極、22は可動電極(第1の電極)、23は固定電極(第2の電極)、24はプリント配線板を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手指が接触したことを検出するためのタッチ検出用電極を有したスイッチ操作部材と、
前記スイッチ操作部材が押圧操作されることに伴い当該スイッチ操作部材を介して押圧操作されるスイッチ要素と、
前記スイッチ操作部材に設けられ、前記タッチ検出用電極に接続された第1の電極と、
前記第1の電極と対向し容量結合するように配設された第2の電極と、
前記第2の電極に接続されると共に、前記第1の電極及び第2の電極間の静電容量結合を介して前記タッチ検出用電極と電気的に接続された配線部を有したプリント配線板とを備えていることを特徴とするタッチ検出機能付きスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−173067(P2007−173067A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369667(P2005−369667)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】