説明

タレット式洗浄装置

【課題】液中洗浄と気中洗浄とを行うことができるタレット式洗浄装置を提供すること。
【解決手段】タレット式洗浄装置1は、クイル21に固定されたセンターポスト22と、センターポスト22に軸支されたタレットヘッド4と、ワークWを洗浄するための洗浄工具Tと、タレットヘッド4を旋回させるタレット駆動装置6と、タレットヘッド4が配置された洗浄室3と、洗浄液Cを貯溜する洗浄槽7と、ワークWを回動させる回動ユニット8と、洗浄液Cを供給する第1洗浄液供給流路14と、洗浄液Cを供給する第2洗浄液供給流路15と、第1洗浄液供給流路14及び第2洗浄液供給流路15に洗浄液Cを供給する洗浄液供給源16と、洗浄槽7内の洗浄液Cを排出する排出口7aと、を備えている。タレット式洗浄装置1は、選択された洗浄工具TからワークWに洗浄液Cを噴射することによって液中洗浄、半液中洗浄及び気中洗浄することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのバリ取りや、ワークに付着した切屑(以下、切粉や、研削した際に落下した砥粒等含めて「切屑」という。)等を除去する洗浄を行うタレット式洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穴あけされたワークのバリ取りや洗浄を行う装置の一つとして、タレット式洗浄装置(タレット式バリ取り洗浄装置)がある。
このような洗浄装置としては、例えば、自動車に搭載されるミッションケースやシリンダヘッド等の精密部品内におけるバリや切屑の除去を行う際に、ワークに対して洗浄液を重力方向または左右方向へ噴射させて、バリや切屑を洗浄液と共に押し流すことによって洗浄する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この洗浄装置は、ワークの表面や外部形状に発生したバリや切屑の除去を洗浄液が貯溜される洗浄槽外で行う気中洗浄装置である。
【0003】
この他の洗浄装置としては、ワークを洗浄槽の洗浄液中に浸漬させた状態で、ワークに洗浄液を噴射させることによって、ワークの内部に渦流を発生させ、多面的に満遍なく洗浄する装置等が知られている(例えば、特許文献2,3,4参照)。この洗浄装置は、ワークの内部形状部位に発生したバリや切屑の除去を洗浄槽の洗浄液中で行う液中洗浄装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3065905号公報(図1〜図4参照)
【特許文献2】特許第4203298号公報(図9〜図12参照)
【特許文献3】特許第3788899号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献4】特許第3739035号公報(図1、図2、図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2〜4に記載されているような液中洗浄装置は、液中洗浄のみでワークを洗浄する場合には、洗浄槽の洗浄液中に浮遊する切屑等の浮遊物が、洗浄液の排水時にワークに付着するため、ワークに付着した付着物を除去する除去作業が不可欠である。従来の液中洗浄装置は、1台の洗浄装置では充分な洗浄を行うことができず、ワークを洗浄槽から別の場所に移動させて、追加的に気中洗浄等を行って付着物を除去することが不可欠であるため、効率よくバリ取りや洗浄を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、特許文献1に記載された気中洗浄用のタレット式洗浄装置は、様々なワークに合わせてバリ取りや洗浄を効率よく確実に行うことを可能にするために、特許文献2〜4に記載の液中洗浄装置を付加して多機能化しようとした場合には、気中洗浄を行う専用のテーブルがある加工スペースと、この加工スペースの他に、洗浄槽を内設した洗浄室とが不可欠なため、装置全体が大掛かりな構造となり、装置が大型化するという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、液中洗浄と気中洗浄とを効率よく行うことができるタレット式洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に記載のタレット式洗浄装置の発明は、架台に対して移動自在に配設されたクイルに固定されたセンターポストと、このセンターポストに旋回自在に軸支されたタレットヘッドと、このタレットヘッドに取り付けられ、ワークに洗浄液を噴射してバリ取り、あるいは、洗浄を行うための洗浄工具と、前記タレットヘッドに連結されて、当該タレットヘッドを旋回させるタレット駆動手段と、前記タレットヘッドが配置された洗浄室と、この洗浄室内に設置されて、洗浄液を貯溜する洗浄槽と、前記洗浄工具に前記洗浄液を供給する第1洗浄液供給流路と、前記洗浄槽に前記洗浄液を供給する第2洗浄液供給流路と、前記第1洗浄液供給流路及び前記第2洗浄液供給流路に前記洗浄液を供給する洗浄液供給源と、前記洗浄槽の下部に開閉可能に設けられて当該洗浄槽内の前記洗浄液を排出するための排出口と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、タレットヘッドを旋回させて選択された洗浄工具からワークに洗浄液を噴射することによって、ワークのバリがある箇所に向けて洗浄液を狙い撃ちするように噴射して気中洗浄を行うことができる。さらに、タレット式洗浄装置は、ワークを洗浄槽の洗浄液に浸した状態で、洗浄工具から噴射された洗浄液をワークに当てることによって、液中洗浄及び半液中洗浄を行うことができる。
また、タレット式洗浄装置は、液中洗浄、半液中洗浄、及び、気中洗浄を組み合わせた洗浄を行うことが可能であるので、例えば、液中洗浄した際に、ワークに切屑等が付着したとしても、その後、洗浄槽内の洗浄液を排出し、同じ洗浄槽内でワークを移動させずに、気中洗浄を行ってワークに付着した切屑を落すことができる。このため、ワークを洗浄した後に、バリや切屑がワークの表面に付着して残るのを解消し、効率のよく限られたスペースで、バリ取り及び洗浄を確実に行うことができる。
また、タレット式洗浄装置は、タレットヘッドに取り付けた複数種の中から選択した洗浄工具から噴射される洗浄液によって、ワークを液中洗浄、半液中洗浄及び気中洗浄することができるので、様々な形状したワークに対応させて最適な洗浄工具、及び、洗浄方法で効率よくバリ取り、及び、洗浄を行うことができる。
また、タレット式洗浄装置は、同じ洗浄室内で複数の種類の洗浄ができるので、限られたスペースで、多彩な種類のワークの洗浄に対してフレキシブルに対応することができるため、多種多様なワークの洗浄を行うことが可能な小型の洗浄装置を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項1に記載のタレット式洗浄装置であって、前記洗浄液を加圧する高圧ポンプと、前記洗浄槽よりも高い位置に配置すると共に、前記第2洗浄液供給流路と連結し、前記洗浄液を貯溜しておく給水タンクと、前記洗浄液を前記洗浄室から排出する排水用流路と、この排水用流路から送られて来た前記洗浄液を濾過する濾過手段と、前記洗浄液の供給及び排出の流量を調整する流量調整手段と、を含んで構成される洗浄液循環機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、洗浄工具からワークに噴射して洗浄した洗浄液と、洗浄槽に供給した洗浄液との二箇所に供給した両方の洗浄液を1つの洗浄液循環機構によって回収し効率よく循環して、濾過手段で濾過することにより、浄化された洗浄液を長期に亘って無駄なく使用することができる。
また、タレット式洗浄装置は、流量調整手段を備えていることによって、洗浄液の供給及び排出の流量を、ワークをバリ取りや洗浄するのに最適な流量に自動的に調整して洗浄作業を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項1または請求項2に記載のタレット式洗浄装置であって、前記洗浄室には、この洗浄室の内壁に形成され、前記ワークを当該洗浄室内に搬入するための洗浄室搬入出口と、この洗浄室搬入出口を開閉する第1開閉体と、が配置され、前記洗浄槽には、この洗浄槽の側面に形成され、前記ワークを当該洗浄槽に搬入するための洗浄槽搬入出口と、この洗浄槽搬入出口を開閉する第2開閉体と、が配置されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、洗浄室にワークを搬入する洗浄室搬入出口を開閉する第1開閉体を配置し、さらに、洗浄槽に洗浄槽搬入出口を開閉する第2開閉体が配置されていることによって、ワークの洗浄が行われる洗浄槽の周辺を2つの開閉体で覆っているので、洗浄時に洗浄液が洗浄室搬入出口側に飛び散って洗浄室外に漏れるのを防止することができる。
また、洗浄槽は、この洗浄槽の側壁に洗浄槽搬入出口を設けたことによって、ワークを洗浄槽搬入出口から洗浄槽内に水平移動させて搬出入できるため、ワークの搬入作業が容易である。このため、様々な形状をした大型で重いワークであっても、容易に洗浄槽内に搬送させることができる。
さらに、洗浄槽は、洗浄槽搬入出口を第2開閉体で開閉することによって、洗浄液を貯溜する液槽を自由に形成することができる。このようにして形成される洗浄槽は、側壁としての機能も果たす第2開閉体を自由に開閉できるので、洗浄槽内の清掃や点検作業やワークの搬入を容易に行える。
【0014】
請求項4に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置であって、前記洗浄室には、この洗浄槽内に配置されたワークを回動させる回動ユニットが設けられていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、洗浄槽内のワークを回動ユニットにより自由に回動してその向きを変えることができるので、洗浄工具から噴射される洗浄液によってバリ取りや洗浄するときに、ワークの被洗浄箇所を洗浄工具の方向に合致した方向に向けて効率よく洗浄を行うことができる。
【0016】
請求項5に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項4に記載のタレット式洗浄装置であって、前記ワークを保持するパレットと、前記洗浄槽搬入出口から前記パレットを前記洗浄槽内の前記回動ユニットに搬送する搬送手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、搬送手段を有することによって、ワークをパレットと共に回動ユニットに送る搬送作業、及び、元の位置に戻す搬送作業を効率よく行うことができるため、大型で重いワークの洗浄であっても、容易に搬送して洗浄作業を短時間で行うことができる。
【0018】
請求項6に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置であって、前記回動ユニットは、前記洗浄槽外に配置され、前記ワークを回動させるための回動駆動手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、ワークを回動させるための回動駆動手段を備えた回動ユニットが洗浄槽外に配設されていることによって、精密に加工された箇所への洗浄液の浸入や、噴射された洗浄液によるバリ及び切屑の跳ね返りによる装置内部の損傷を防ぐことができる。
【0020】
請求項7に記載のタレット式洗浄装置の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置は、前記洗浄室内には、ワークに対してエアを吹き付けるためのエアブロー装置のエア噴出口が設けられていること特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、タレット式洗浄装置は、洗浄室内にエアブロー装置のエア噴出口が設けられていることによって、ワークに対してエアを吹き付けて、ワークに付着した切屑や洗浄液等の付着物を吹き飛ばして容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るタレット式洗浄装置によれば、複数の洗浄工具を取り付けたタレットヘッドを旋回させて、液中用、半液中用あるいは気中用の洗浄工具を適宜に選択することにより、ワークの形状等に合わせた液中洗浄と半液中洗浄と気中洗浄とを効率よく1台の洗浄装置によって行うことができる。また、タレット式洗浄装置は、たとえ、液中洗浄あるいは半液中洗浄の際にワークに切屑等が付着したとしても、同じ装置で気中洗浄することによって付着物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置を示す左側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置の洗浄室を示す横断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置の洗浄室を示す要部縦断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置のタレット装置を示す要部拡大平面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置のタレットヘッドの構成を示す要部拡大断面図である。
【図8】ロータリジョイントの構成を示すタレットヘッドの要部拡大断面図である。
【図9】スライド扉の構成を示し、(a)は要部拡大斜視図、(b)は扉が閉じた状態を示す要部拡大平面図、(c)は扉が開いた状態を示す要部拡大平面図である。
【図10】片開き式ドアの構成を示し、(a)は要部拡大斜視図、(b)は扉が閉じた状態を示す要部拡大平面図、(c)は扉が開いた状態を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置1を説明する。
本発明の実施形態に係るタレット式洗浄装置1を説明するのに先立って、タレット式洗浄装置1によってバリ取りや洗浄が行われるワークW(図3参照)について説明する。
【0025】
≪ワークの構成≫
図3に示すワークWは、高圧水によってバリ取り、あるいは、洗浄を行うことが可能な物であればよく、材質や形状や使用用途等は特に限定されない。タレット式洗浄装置1で処理される被処理物としてのワークWは、バリが生成される金属製品や、樹脂製品等に特に有効である。さらに、ワークWの具体例を挙げると、タレット式洗浄装置1によって液中洗浄する場合は、シリンダヘッド、シリンダブロック、ロストワックス鋳造部品等が適している。また、タレット式洗浄装置1で気中洗浄する場合のワークWは、トランスミッションケース、クランクシャフト、ABSボディ、油圧バルブボディ等が適している。タレット式洗浄装置1でバリ取りや洗浄を行う場合のワークWは、ABSボディ、油圧バルブボディ、ドリルあるいはバイト等の工具、コネクタ、バルブボディ、トランジスタあるいはダイオード等の樹脂モールド製品等が適している。
以下、シリンダブロックをワークWとした場合を例に挙げてタレット式洗浄装置1を説明する。
図4に示すように、ワークWは、例えば、V型8気筒のエンジンのシリンダブロックであり、側面視してVの字方向に複数の気筒Wa(孔)が形成されている。
【0026】
≪タレット式洗浄装置の構成≫
図1に示すように、タレット式洗浄装置1は、ワークW(図3参照)を洗浄する複数のそれぞれ相違する洗浄工具Tを備え、ワークWの洗浄する際に、洗浄箇所の形状等に最適な洗浄工具Tを選択してワークWのバリ取り及び洗浄を行う洗浄装置である。このタレット式洗浄装置1は、タレットヘッド4を旋回させて選択された洗浄工具Tから洗浄槽7内の洗浄液C(図4参照)中、あるいは、洗浄液C外のワークWに洗浄液Cを噴射することによって液中洗浄、半液中洗浄、及び、気中洗浄を行うことができるようになっている。
【0027】
そのタレット式洗浄装置1は、架台11と、ワークWのバリ取りや洗浄を行うための洗浄液C(図4参照)を噴射する洗浄工具Tと、その洗浄工具Tを選択するタレット装置2と、タレット装置2をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向へ移動させるXYZ機構12と、ワークWの洗浄が行われる洗浄室3と、洗浄液Cを回収して再生処理させる洗浄液処理装置13と、洗浄工具T及び洗浄槽7に供給する洗浄液Cを循環させるための洗浄液循環機構Aと、ワークWを保持するパレット10(図3参照)と、ワークWを積載したパレット10を搬送する搬送手段20と、洗浄液Cを一時的に貯溜する洗浄槽7と、ワークWに吹き付けるためのエアを供給するエアブロー装置38と、タレット式洗浄装置1を制御する制御盤36(図2参照)と、電源(図示省略)と、電源スイッチ等のスイッチが配列された操作盤37(図3参照)と、から主に構成されている。
【0028】
≪架台の構成≫
図1に示すように、架台11は、タレット装置2、洗浄室3、洗浄槽7、シュータ34等を下方から支持する基台であり、地面に沿って横設された金属製の骨格部材からなる。架台11の下面端部には、この架台11を水平に調整するための調整具がそれぞれ設置されている。
【0029】
≪洗浄工具の構成≫
図4に示すように、洗浄工具Tは、ノズルから洗浄液Cを噴射してバリを除去するウォータジェット洗浄工具、あるいは、洗浄液Cを噴射しながらブラシやドリル等で機械的にバリを除去するバリ取り工具であり、ワークWの形状等に応じてバリ取り洗浄工程の制御が適切に設定される。この洗浄工具Tは、複数の相違するノズル状部材からなり、タレットヘッド4にそれぞれ回転自在、かつ、交換自在に装着される。洗浄工具Tは、さらに、具体例を挙げると、ランスノズル、平射ノズル、L型ノズル、ブラシ等の多様な工具に対応可能になっている。
【0030】
≪エアブロー装置の構成≫
図1に示すように、エアブロー装置38は、ワークWに付着した洗浄液Cや切屑を吹き飛ばして除去するためのエア噴射装置であり、エアの供給源である送風機38aと、この送風機38aに基端部が接続されたエアブロー供給パイプ(図示省略)と、このエアブロー供給パイプの先端に接続されたエアブロー用ノズル38bと、洗浄室3内の水分を含むエアを排出するためのエア排出パイプ38cと、このエア排出パイプ38cから送られて来たエアを浄化して大気中に排出するミストコレクタ38dと、送風機38aに電力を供給する電源(図示省略)と、から構成されている。このエアブロー用ノズル38b(エア噴出口)は、洗浄工具Tとは異なり、別途、洗浄室3の底部等に設置される。エアブローパイプには、液中洗浄の際に、エアブロー用ノズル38bから洗浄液Cがエアブローパイプ内に浸入しないようにチェックバルブ(図示省略)が設けられている。
【0031】
≪タレット装置の構成≫
図1に示すように、タレット装置2は、タレット式洗浄装置1に搭載された複数の洗浄工具Tを選択する装置である。このタレット装置2は、架台11に対して移動自在に配設されたクイル21と、クイル21に固定されたセンターポスト22(図7参照)と、このセンターポスト22に旋回自在に軸支されたタレットヘッド4と、洗浄工具Tを回転させるスピンドル駆動装置5と、タレットヘッド4を旋回させるタレット駆動装置6と、タレットヘッド4の旋回及び洗浄工具Tの回転とをNC制御させるためのNC制御部(図示省略)と、を備えている。
【0032】
<クイルの構成>
図6に示すように、クイル21は、スピンドル減速装置54の主軸部位を回転可能に軸支する略筒状の部材であり、タレットヘッド4の装置本体(図示省略)に、架台11に対して移動自在に配置されている。
【0033】
<センターポストの構成>
図7に示すように、センターポスト22は、クイル21及び第1洗浄液供給流路14をタレットヘッド4に連結するための部材であり、クイル21及び第1洗浄液供給流路14とタレットヘッド4との間に介在されている。センターポスト22は、軸部22aと、クイル21に固定されたフランジ部22bと、を備えている。軸部22aの先端部には、ロータリジョイント22cが装着されている。ロータリジョイント22cには、タレットヘッド4の先端部を回転自在に支持する軸受45a,45bが配設されている。センターポスト22の軸部22aには、後記する外歯車である平歯車54aが回転自在に装着されている。
【0034】
そして、この平歯車54aの外側に位置するように、円筒形状をした第1ガイドリング23がセンターポスト22のフランジ部22bに端面を当接させて固定され、この第1ガイドリング23にさらに円筒形状をした第2ガイドリング24が固定されている。この第2ガイドリング24は、外周面を後記するタレットヘッドボディ42の内周面に当接させてタレットヘッド4を旋回自在に支持する役割を奏する。
【0035】
また、フランジ部22bの径方向外側の縁部には、略円筒形状をしたベアリング押さえ41a,41bが、端面をフランジ部22bに当接するようにして固定され、このベアリング押さえ41a,41bによりベアリング41の外輪側を支持している。
ベアリング41の内輪側は、タレットヘッドボディ42と、タレットヘッドボディ42に固定された内歯車64aの外周部を回転自在に支持するように構成されている。
【0036】
このようにして、タレットヘッド4の後端部をベアリング41と第2ガイドリング24により支持し、タレットヘッド4の先端部をロータリジョイント22cの軸受45a,45bで支持することで、タレットヘッド4がセンターポスト22に旋回自在に軸支されている。
【0037】
<タレットヘッドの構成>
図7に示すように、タレットヘッド4は、洗浄工具Tを旋回させて切り換える装置であり、センターポスト22に旋回自在に軸支されている。タレットヘッド4は、スプラッシュパッド等の遮蔽装置35(図1参照)を貫通して洗浄室3内に移動自在に配設されている。タレットヘッド4は、例えば、円周方向に六等配して配置される6本の洗浄工具T(3本のみ表示)が装着可能であり、ワークWの洗浄に使用する洗浄工具Tを下方向へ旋回させることによって使用可能にする。
【0038】
図7に示すように、前記タレットヘッド4は、円筒形状をしたタレットヘッドボディ42と、円盤形状をした洗浄工具Tを回転自在に支持する工具支持部材43と、洗浄液Cの流路Lが形成された切換ヘッドボディ44と、切換ヘッドボディ44に内装され洗浄液Cを供給または停止する切換バルブ46と、を備えている。
【0039】
タレットヘッドボディ42には、後端部から延設するように後記する内歯車64aが固定されている。切換バルブ46は、タレットの割り出しが完了して洗浄工具Tが図7に示す真下の位置に来たときにバルブを押し開いて洗浄液Cの流路Lを連通させ、洗浄液Cを噴射するタイミングで図示しない高圧三方弁を開放して洗浄液Cが洗浄工具Tまで供給されるように構成されている。
【0040】
<スピンドル駆動装置の構成>
図6に示すように、スピンドル駆動装置5(スピンドル駆動手段)は、スピンドルモータ51に連結されたスピンドル駆動軸52に嵌挿されたスピンドルピニオン53からスピンドル減速装置54を介して、洗浄工具Tを回転させるための駆動装置である。
具体的には、図7に示すように、スピンドル減速装置54は、スピンドルピニオン53に一方の端部で噛合する外歯車である平歯車54aと、この平歯車54aの他方の端部で噛合する傘歯車54bと、センターポスト22に連結されたロータリジョイント22cに回転自在に軸支されたスピンドル軸54cと、スピンドル軸54cと洗浄工具Tを一体として回転自在に連結するジョイント装置54dと、を備えている。
【0041】
そして、ジョイント装置54dは、溝部54dに嵌挿されたキー54dにより、スピンドル軸54cの回転を洗浄工具Tに伝達すると共に、タレットヘッド4が旋回する際には溝部54dとキー54dが摺動することで、タレットヘッド4が旋回自在に構成されている。
【0042】
<タレット駆動装置の構成>
図6に示すように、タレット駆動装置6(タレット駆動手段)は、タレットヘッド4に連結されて、このタレットヘッド4を旋回させる駆動装置である。タレット駆動装置6は、タレット旋回モータ61に連結された旋回駆動軸62に嵌挿された旋回ピニオン63からタレット減速装置64を介してタレットヘッド4を旋回させる。
具体的には、タレット減速装置64は、図7に示すように、旋回ピニオン63に一方の端部で噛合する内歯車64aの他方の端部にタレットヘッドボディ42を連結したことによって、タレットヘッドボディ42をセンターポスト22の軸部22aに対して旋回させるようにしている。
ここで、図6に示すように、スピンドルモータ51に連結されたスピンドル駆動軸52、及びタレット旋回モータ61に連結された旋回駆動軸62は、水平方向に同じ高さで平行になるようにクイル21に配設されている。
【0043】
かかる構成により、タレット式洗浄装置1は、駆動系のコンパクト化及び軽量化を図ることができるため、スピンドルモータ51とタレット旋回モータ61を洗浄室3の外に配設することができる。そして、タレット式洗浄装置1は、スピンドルモータ51とタレット旋回モータ61を洗浄室3の外に配設したことによって、洗浄液Cがスピンドルモータ51やタレット旋回モータ61に浸入してモータの寿命が短くなったり、故障が発生し易くなったりすることを防止して装置の耐久性及び信頼性を向上させている。
【0044】
≪XYZ機構の構成≫
図1に示すように、XYZ機構12は、タレットヘッド4を上下・前後・左右方向へそれぞれ直線移動させる移動装置である。このXYZ機構12は、タレットヘッド4をX軸(左右)方向に移動させるためのX軸送り機構と、タレットヘッド4をY軸(前後)方向に移動させるためのY軸送り機構と、タレットヘッド4をZ軸(上下)方向に移動させるためのZ軸送り機構と、から構成されている。
【0045】
≪洗浄室の構成≫
図1に示すように、洗浄室3は、ワークW(図4参照)の洗浄及びバリ取りが行われる洗浄空間である。この洗浄室3内には、タレットヘッド4、洗浄槽7、パレット10、回動ユニット8(図3参照)及びワークW等が配置されている。
図2に示すように、洗浄室3は、この洗浄室3の周囲壁部を形成するカバー部材31と、洗浄室3の正面側の側壁を形成するカバー部材31aに配設され、ワークWを洗浄室3内に搬入するための洗浄室搬入出口3aと、この洗浄室搬入出口3aを開閉する直線移動するスライド扉32(第1開閉体)と、洗浄室3の両側側面の側壁を形成するカバー部材31bにそれぞれ配設された片開き式扉33と、によって主に形成されている。
【0046】
図9(a)に示すように、スライド扉32が配設されたカバー部材31aは、勾配32bを有するくさび形状の固定シール部材32aを備え、スライド扉32は、勾配32dを有するくさび形状の扉シール部材32cを備えている。
【0047】
そして、扉シール部材32cの勾配32dは、スライド扉32を閉める進行方向に対して先端側よりも後端側の方が固定シール部材32aに近接するように傾斜させて形成され、固定シール部材32aの勾配32bは、スライド扉32の勾配32dに対応して平行に形成され、固定シール部材32aの両端側よりも中央部の方が扉シール部材32cに近接するように傾斜させている。
【0048】
このため、図9(b)に示すように、スライド扉32を閉じた状態で扉シール部材32cと固定シール部材32aが密着するため、洗浄室3の気密性を高めて洗浄液Cや洗浄時の音が外に漏れることを防止することができる。したがって、このような気密性の高いスライド扉32を設けたタレット式洗浄装置1は、良好な作業環境を確保することが可能となる。
【0049】
また、図10(a)、(b)、(c)に示すように、前記洗浄室3は、筐体となる側面のカバー部材31bと、このカバー部材31bに配設されたヒンジ部33aを中心として回動する片開き式扉33と、を有している。
片開き式扉33は、洗浄室3のカバー部材31bに配設されたヒンジ部33aを中心として回動し、ヒンジ部33aの下部には洗浄液回収穴33bが設けられている。一方、片開き式扉33の内壁面33cには、ヒンジ部33aから遠い縁部からヒンジ部33aに近づくにつれて高さが低くなるように配設された樋33dを備えている。
【0050】
かかる構成により、内壁面33cを伝わって落下する洗浄液Cを樋33dで受けて洗浄液回収穴33bから洗浄室3の内側に落下させてシュータ34(図1参照)から回収できるようになっている。
したがって、このような片開き式扉33を設けたタレット式洗浄装置1は、片開き式扉33を開けたときに扉の内壁面33cに付着していた洗浄液Cが外の床に落ちてしまうことを効果的に防止することができるため、良好な作業環境を確保することが可能となる。
【0051】
≪パレットの構成≫
図2に示すように、パレット10は、ワークWを保持するための保持装置であり、ワークWを積載した状態でタレット式洗浄装置1外から洗浄室3、洗浄槽7内に亘ってスライド移動させて出し入れできるようになっている。
【0052】
≪回動ユニットの構成≫
図3及び図4に示すように、回動ユニット8は、ワークWが積載されたパレット10を回動させることによって、洗浄工具Tに対するワークWの向きを調整するための装置である。回動ユニット8は、ワークWをパレット10を介在して間接的に回動させるための回動駆動装置81(回動駆動手段)と、テールストック部と、を備えて構成され、洗浄槽7の外に配置されている。
なお、前記回動ユニット8は、チルトテーブルを備えたタイプのものであってもよく、洗浄室3の新たな回転駆動手段を設け、回転や昇降や水平移動が可能なオート機能を有するユニットとしても構わない。
【0053】
≪搬送手段の構成≫
図1に示すように、搬送手段20は、ワークWを積載したパレット10を洗浄室搬入出口3aを介して洗浄槽搬入出口7bから洗浄槽7内の回動ユニット8に搬送したり、回動ユニット8上にあったパレット10をワークWと共に元の洗浄室3外に戻したりするための装置である。本実施形態では、搬送手段20の一例をして、手動式の装置で手作業で搬入出を行う場合を説明する。搬送手段20は、例えば、この搬送手段20とパレット10との間に配置された転動体(ローラ)などを配置した装置からなる。
【0054】
≪洗浄液循環機構の構成≫
図4に示すように、洗浄液循環機構Aは、洗浄工具Tから噴射されて洗浄室3の床下に落下して回収された洗浄液Cと、ワークWを洗浄槽7の洗浄液C中で洗浄するのに使用した洗浄液Cと、を洗浄槽7の排出口7aから排出して洗浄液処理装置13(図1参照)に送って浄化して再生処理した後、再度、洗浄液Cが洗浄工具Tに供給されるように循環させる装置である。
図1に示すように、この洗浄液循環機構Aは、ワークWの洗浄に使用した洗浄液Cを再利用可能にするための洗浄液処理装置13と、洗浄工具Tに洗浄液Cを供給する第1洗浄液供給流路14と、洗浄槽7に洗浄液Cを供給する第2洗浄液供給流路15と、第1洗浄液供給流路14及び第2洗浄液供給流路15に洗浄液Cを供給する洗浄液供給源Pと、洗浄液Cを一時的に貯溜しておく給水タンク9と、上部が開口され底部に排出口7aを有する洗浄槽7と、排出口7aから排出された排水(洗浄液C)を排水用流路17に送るためのシュータ34と、洗浄液Cを洗浄室3外へ排出する排水用流路17と、排水を一時的に貯溜する一次タンク91と、循環する洗浄液Cの流量を調整する液面高さ検出装置92(流量調整手段)と、洗浄後の洗浄液Cを濾過するためのチップコンベア付ロータリフィルタ39と、を備えて構成されている。
【0055】
<洗浄液処理装置の構成>
前記洗浄液処理装置13は、ワークWの洗浄に使用した洗浄液Cを再生処理して、洗浄工具T及び第2洗浄液供給流路15の吐出口15aから吐出してワークWを洗浄するのに再度使用可能にして送り出す装置である。前記洗浄液処理装置13は、排水された洗浄液Cを濾過する水処理フィルタ18(濾過手段)と、洗浄液Cを加温するための加温用ヒータHと、を備えている。
前記水処理フィルタ18は、一次タンク91内から前記フィルタポンプP2によって吸い上げられた使用済の洗浄液Cを浄化して再生する濾過器である。水処理フィルタ18は、洗浄液処理装置13の適宜な複数個所に交換可能に設置されている。
加温用ヒータHは、循環する洗浄液Cの温度を適宜な温度(例えば、50℃)に加温するための加熱機である。
【0056】
<第1洗浄液供給流路の構成>
図1に示すように、第1洗浄液供給流路14は、洗浄工具Tに洗浄液Cを供給するための供給路である。図1と図7に示すように、この第1洗浄液供給流路14は、洗浄液処理装置13からタレットヘッド4の洗浄工具Tまで連通するように形成され、洗浄液処理装置13から洗浄室3の外に配設された洗浄液供給口14bまで連結された高圧ホース14aと、洗浄液供給口14bからタレットヘッド4のジョイント14dまで連結された供給管14cと、センターポスト22内に形成された流路14eと、この流路14eからロータリジョイント22cまで連結された流路14fと、この流路14fと洗浄工具Tとを連結する切換ヘッドボディ44内に形成された流路Lと、を備えている。
【0057】
ここで、ロータリジョイント22cは、図8に示すように、固定されたセンターポスト22から回転するタレットヘッド4に装着された洗浄工具Tまで洗浄液Cを供給する役割を果たしている。
具体的には、ロータリジョイント22cの外周部に配設された軸受45aと軸受45bの間には円筒形状のスペーサリング45cが嵌挿され、このスペーサリング45cに形成された導通孔45dを通って、流路14fから流路Lまで洗浄液Cが流通するように構成されている。
【0058】
このように、図1と図7に示す洗浄液処理装置13から供給される洗浄液Cは、第1洗浄液供給流路14により、洗浄室3の外に配設された洗浄液供給口14bからセンターポスト22の内部を通ってセンターポスト22の先端部に装着されたロータリジョイント22cまで供給され、ロータリジョイント22cからタレットヘッド4に装着された洗浄工具Tまで流通されている。
かかる構成により、洗浄室3内に高圧ホース14aを配置する必要がないので、高圧ホース14aが損傷するのを回避すると共に、タレットヘッド4を円滑に移動できるようにして移動範囲の拡大を図ることができる。また、第1洗浄液供給流路14の高圧ホース14aは、センターポスト22の基端部に接続されて、洗浄室3内において、タレットヘッド4に内設されて剥き出し状態になっていないので、タレットヘッド4の回動等に伴って捩じれたり、経年劣化することがない。さらに、第1洗浄液供給流路14は、タレットヘッド4の移動範囲を制限させることもない。
【0059】
<第2洗浄液供給流路の構成>
図1に示すように、第2洗浄液供給流路15は、水処理フィルタ18で濾過した洗浄液Cを洗浄槽7に供給するための流路である。第2洗浄液供給流路15は、フィルタポンプP2から給水タンク9を介して洗浄槽7の脇まで延在されて、洗浄槽7に浄化された洗浄液Cを供給できるように配置されている。
【0060】
<洗浄液供給源の構成>
図1に示すように、洗浄液供給源Pは、洗浄液Cを洗浄工具Tに送る高圧ポンプP1と、洗浄液Cを洗浄槽7に送るフィルタポンプP2と、給水タンク9に洗浄液Cを送る給水タンク供給ポンプP3の3つのポンプからなる。
高圧ポンプP1は、例えば、洗浄液Cを50MPa程度に加圧した状態で第1洗浄液供給流路14、タレットヘッド4を介して洗浄工具Tに供給するポンプであり、洗浄液処理装置13に設置されている。
フィルタポンプP2は、第2洗浄液供給流路15に浄化された洗浄液Cを供給する洗浄液供給源であり、一次タンク91の上部に設置されている。フィルタポンプP2には、連通する近隣の循環路にシリンダバルブが設置されている。
給水タンク供給ポンプP3は、給水タンク9に浄化された洗浄液Cを供給する洗浄液供給源であり、一次タンク91の上部に設置されている。
【0061】
<給水タンクの構成>
給水タンク9は、第2洗浄液供給流路15中の洗浄液Cを一時的に貯溜しておく貯溜槽であり、洗浄液開閉弁V1を介して第2洗浄液供給流路15と連結されている。この給水タンク9は、洗浄槽7よりも高い位置である洗浄室3の天井に配置されて、洗浄液開閉弁V1を開弁することによって、洗浄液Cを位置エネルギーでも供給可能になっている。また、給水タンク9は、洗浄室3を形成する構造体の天井部位に載設したことによって、他の装置の設置に邪魔にならない有効スペースに設置されているため、装置全体の小型化及び省スペース化を図ることができる。
【0062】
≪洗浄槽の構成≫
図5に示すように、洗浄槽7は、第2洗浄液供給流路15の吐出口15a(図5参照)から吐出して洗浄槽7に供給する洗浄液Cと、洗浄工具Tから噴射して落下した洗浄液Cとを一時的に貯溜するための槽であり、タレットヘッド4が配置された洗浄室3内に設置されている。洗浄槽7には、この洗浄槽7の下部に配置され、洗浄槽7内の洗浄液Cを排出するための開閉可能な排出口7aと、この洗浄槽7の側面に形成され、ワークWを洗浄槽7に搬入するための洗浄槽搬入出口7bと、この洗浄槽搬入出口7bを開閉するシャッタ71(第2開閉体)と、が配置されている。
【0063】
排出口7aは、洗浄槽7の底面部に形成された開口穴を開閉可能な排水弁V2を、操作盤37に設置された制御スイッチ(図示省略)を遠隔操作して開閉させることによって、洗浄槽7内の洗浄液Cの排出流量を適宜に調整できるようになっている。
なお、この排出口7aは、水中洗浄、半液中洗浄、気中洗浄などから構成される洗浄パターン(工程)、洗浄時間などを考慮した排出のタイミングを変化させることができるようになっている。また、排出口7aから洗浄槽7に貯溜している洗浄液Cの排水に伴う付勢力によって、ワークWに付着している切屑などが排出され易くなっている。
【0064】
図5に示すように、洗浄槽搬入出口7bは、洗浄槽7の洗浄室搬入出口3a側の側面部の略全体に形成されている。
シャッタ71は、その洗浄槽搬入出口7bの下端部から上方に向けて伸縮自在に設置されて、シャッタ71の上端部を手で掴んで引き上げたり、押し下げたりすることによって、洗浄槽搬入出口7bを開閉できる。シャッタ71は、洗浄槽7の高さよりも、さらに高く引き上げることによって、洗浄工具Tから噴射された洗浄液Cがスライド扉32に飛び散るのを防止することができる。
【0065】
<シュータ及び排水用流路の構成>
図1に示すように、シュータ34は、洗浄槽7の下の排出口7a(図5参照)から排出された排水(洗浄液C)を排水用流路17に向けて送るための配管であり、斜めに下がるように形成されている。
排水用流路17は、洗浄槽7から排出及び溢れ出た切屑を含んだ洗浄液Cを洗浄室3から排出して、切屑と共に一次タンク91に送るための流路である。排水用流路17は、上流側がシュータ34に接続され、下流側が一次タンク91の上部に接続されて、全体が斜めに配置されている。
【0066】
<一次タンクの構成>
一次タンク91は、前記シュータ34、排水用流路17を介在して送られて来た使用済の洗浄液C(排水)を一時的に貯溜するタンクである。このため、この一次タンク91内に貯溜されている洗浄液Cは、ワークWのバリや、ワークWに付着していた切屑等が混じった状態になっている。この一次タンク91には、洗浄液Cの液面に浮上した切削油、摺動部からの潤滑油等を除去するためのオイルスキマー(図示省略)が設置されている。
【0067】
<液面高さ検出装置の構成>
図1に示すように、液面高さ検出装置92(流量調整手段)は、一次タンク91内に貯溜されている洗浄液Cの液面を検出して、循環する洗浄液Cの流量を調整するための制御装置である。液面高さ検出装置92は、前記フィルタポンプP2に電気的に接続され、一次タンク91内の洗浄液Cの流量に応じてフィルタポンプP2が駆動するようになっている。
【0068】
<チップコンベア付ロータリフィルタの構成>
チップコンベア付ロータリフィルタ39は、切屑を含んだ使用済の洗浄液を、洗浄液と切屑とに分離して濾過する濾過装置である。このチップコンベア付ロータリフィルタ39は、例えば、洗浄液C中に混入する切屑を濾過する不図示の円筒状スクリーンからなるロータリフィルタと、ロータリフィルタを回転駆動させるコンベアチェーン(図示省略)と、コンベヤチェーンを駆動させるための駆動モータ(図示省略)と、から主に構成されている。
【0069】
≪制御盤及び操作盤の構成≫
図2に示すように、制御盤36は、タレット式洗浄装置1おいて、電気で駆動するものを制御する制御装置であり、平面視して中央部分に配置されている。つまり、制御盤36は、タレット装置2、回動ユニット8、液面高さ検出装置92、XYZ機構12、エアブロー装置38及び洗浄液循環機構Aの制御を行う装置である。
図3に示すように、操作盤37は、電源スイッチ等の複数のスイッチが配列されたスイッチ操作盤であり、スライド扉32の近傍の洗浄室3の外壁に設置されている。
【0070】
≪作用≫
以上のように構成された本実施形態に係るタレット式洗浄装置1の動作について説明する。
まず、図2に示すように、ワークWをパレット10にセットする。次に、そのパレット10ごとワークWを搬送手段20によって洗浄室3に搬送し、洗浄槽7内に押し込む。
【0071】
続いて、洗浄室3の外側に配置されたタレット式洗浄装置1の起動ボタン(図示省略)を押圧操作する。そして、洗浄槽7のシャッタ71を上側に引き出して洗浄槽搬入出口7bを閉めると共に、洗浄室3のスライド扉32を引っ張って洗浄室搬入出口3aを閉める。次に、パレット10をクランプする。
【0072】
高圧ポンプP1を駆動させて、洗浄室3の天井にある給水タンク9内に貯溜されている洗浄液Cを洗浄槽7へ給水する。給水完了後においても、高圧ポンプP1によって継続的に給水タンク9へ洗浄液Cを供給し、次の洗浄サイクル時の準備をしておく。
【0073】
タレット式洗浄装置1は、洗浄工具Tを回転させる場合、スピンドルモータ51を駆動させて、この駆動力をスピンドル駆動軸52からスピンドルピニオン53を介して外歯車である平歯車54aから傘歯車54bに伝達してスピンドル軸54cを回転させ、ジョイント装置54dを介して洗浄工具Tを回転させる。
【0074】
また、タレット式洗浄装置1は、図7に示すように、タレットヘッド4を旋回させて洗浄工具Tを選択する場合、図6に示すように、タレット旋回モータ61を駆動させて、この駆動力を旋回駆動軸62から旋回ピニオン63を介して内歯車64a及びタレットヘッドボディ42に伝達してタレットヘッド4を旋回させる。タレットヘッド4は、いわゆるX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させて所望位置に洗浄工具Tを移動させることができる。
また、図4に示すように、ワークWの固定部位である回動駆動装置81は、A軸旋回させて、洗浄工具Tに対するワークWの向きを調整することができる。
【0075】
このようにして、タレット式洗浄装置1は、タレットヘッド4を旋回させて選択されたブラシや噴射ノズル等の洗浄工具Tを回転させながらワークWの気筒Wa等に洗浄液Cを噴射してバリ取りや洗浄を行うことができる。
【0076】
ワークWをNC洗浄する場合は、まず、洗浄槽7内の洗浄液C中に浸水させたワークWに対して、7MPa程度の水圧の洗浄液Cを液中洗浄用の洗浄工具Tから噴射して噴き付けて液中洗浄を行う。ワークWを洗浄する際に、洗浄槽7の洗浄液C中で洗浄することにより、洗浄音を80dB以下に抑えることができる。洗浄後は、洗浄槽7内の洗浄液Cを排出口7a(図5参照)から排出する。
【0077】
次に、図4に示すように、タレットヘッド4を旋回して液中洗浄用の洗浄工具Tから気中洗浄用の洗浄工具Tにツールチェンジする。そして、ワークWを非浸水状態で、35MPa程度の水圧の洗浄液Cを気中用の洗浄工具Tから噴射させて気中洗浄を行う。
続いて、回動ユニット8を駆動させてワークWの気筒Wa等の洗浄した箇所や切屑が付着している部分をブロアー側に向くように回動させて、エアブロー装置38(図1及び図2参照)のエアブロー用ノズル38bによってワークWに圧縮空気を噴き付け、ワークWに付着している洗浄液Cを落すエアブローを行う。ワークWの付着物を除去する作業は、回動ユニット8によって揺動させて向きを変えながらエアブロー用ノズル38bから吹き出たエアをワークWに当てることにより、効率よく付着物を吹き飛ばすことができる。
【0078】
排出口7aは、洗浄槽7の下部に開閉可能に配置されていることに加えて、排水用流路17等が傾斜して形成されて、洗浄液Cが流れ易い形状になっているため、洗浄液Cをスムーズに排出して循環させることができる。
次に、パレット10のクランプを解除し、図9(a)に示すように、洗浄槽7のシャッタ71を押し下げて下降させ、洗浄室3のスライド扉32を開放させる。そして、作業者は、パレット10を洗浄室3内から引き出し、ワークWをパレット10から外すことによって、ワークWの洗浄作業が終了する。
【0079】
以上のように、本発明のタレット式洗浄装置1は、種々の洗浄工具Tの中からワークWの洗浄に合った洗浄工具Tを選択し、一台の洗浄装置で液中洗浄、半液中洗浄、気中洗浄及びエアブロアーによってワークWのバリ取り及び洗浄を確実に行うことができるので、様々なワークWに対して最適な対応ができる。
【0080】
なお、タレット式洗浄装置1は、スピンドルモータ51やタレット旋回モータ61等の駆動源や、高圧ホース14aが洗浄室3の外部に配置されていることによって、洗浄の際に、その駆動源が洗浄液Cで濡れたり、高圧な洗浄液Cを供給する高圧ホース14aが捩じれたりすることがない。このため、本装置は、高圧ホース14aの経年劣化及び装置寿命が防止することができると共に、タレットヘッド4の移動範囲が高圧ホース14aによって制限されることもなく、洗浄作業が行い易い洗浄装置である。
【0081】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0082】
前記実施形態で説明した搬送手段20は、手動式のものに限定されるものではなく、自動搬送手段であってもよい。この場合、搬送手段20は、本装置の外部に、搬送手段20とローダなどの腕部を備え自動洗浄及び自動搬送を行うことができる。
その他、搬送手段は、スライド式自動搬送装置であってもよい。つまり、搬送手段20は、例えば、ワークWを積載したパレット10を搬送できるものであれば、手動的な装置でも、自動的な装置であってもよく、その型式等は特に限定されない。
例えば、搬送手段20は、上下・前後・左右方向にパレット10を移動させることが可能なクレーンや、アーム式搬送用ロボットや、パレットチェンジャ等であっても構わない。その他、搬送手段20は、上下方向(Z軸方向)に移動、前後方向(Y軸方向)に移動、Y軸方向に回動、左右方向(X軸方向)に移動、及び、X軸方向に回動可能なシステムを備えた搬送装置であってもよい。
【0083】
洗浄槽7に設けたシャッタ71は、洗浄槽搬入出口7bを開閉できるものであればよく、例えば、水平方向にスライドするスライドドアや、上下方向にスライドするスライドドアであっても構わない。
【0084】
また、洗浄工具Tから噴射する洗浄液は、高圧水のみに限定されず、氷を混入させてワークWに向けて噴射するようにしてもよい。このようにすれば、さらにバリ取り機能をアップさせることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 タレット式洗浄装置
3 洗浄室
3a 洗浄室搬入出口
4 タレットヘッド
6 タレット駆動装置(タレット駆動手段)
7 洗浄槽
7a 排出口
7b 洗浄槽搬入出口
8 回動ユニット
9 給水タンク
10 パレット
11 架台
14 第1洗浄液供給流路
15 第2洗浄液供給流路
17 排水用流路
18 水処理フィルタ(濾過手段)
20 搬送手段
21 クイル
22 センターポスト
32 スライド扉(第1開閉体)
38 エアブロー装置
71 シャッタ(第2開閉体)
81 回動駆動装置(回動駆動手段)
92 流量制御装置(流量調整手段)
A 洗浄液循環機構
C 洗浄液
P 洗浄液供給源
P1 高圧ポンプ
P2 フィルタポンプ
P3 給水タンク供給ポンプ
T 洗浄工具
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に対して移動自在に配設されたクイルに固定されたセンターポストと、
このセンターポストに旋回自在に軸支されたタレットヘッドと、
このタレットヘッドに取り付けられ、ワークに洗浄液を噴射してバリ取り、あるいは、洗浄を行うための洗浄工具と、
前記タレットヘッドに連結されて、当該タレットヘッドを旋回させるタレット駆動手段と、
前記タレットヘッドが配置された洗浄室と、
この洗浄室内に設置されて、洗浄液を貯溜する洗浄槽と、
前記洗浄工具に前記洗浄液を供給する第1洗浄液供給流路と、
前記洗浄槽に前記洗浄液を供給する第2洗浄液供給流路と、
前記第1洗浄液供給流路及び前記第2洗浄液供給流路に前記洗浄液を供給する洗浄液供給源と、
前記洗浄槽の下部に開閉可能に設けられて当該洗浄槽内の前記洗浄液を排出するための排出口と、を備えていることを特徴とするタレット式洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液を加圧する高圧ポンプと、
前記洗浄槽よりも高い位置に配置すると共に、前記第2洗浄液供給流路と連結し、前記洗浄液を貯溜しておく給水タンクと、
前記洗浄液を前記洗浄室から排出する排水用流路と、
この排水用流路から送られて来た前記洗浄液を濾過する濾過手段と、
前記洗浄液の供給及び排出の流量を調整する流量調整手段と、を含んで構成される洗浄液循環機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載のタレット式洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄室には、この洗浄室の内壁に形成され、前記ワークを当該洗浄室内に搬入するための洗浄室搬入出口と、
この洗浄室搬入出口を開閉する第1開閉体と、が配置され、
前記洗浄槽には、この洗浄槽の側面に形成され、前記ワークを当該洗浄槽に搬入するための洗浄槽搬入出口と、
この洗浄槽搬入出口を開閉する第2開閉体と、が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタレット式洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄室には、この洗浄槽内に配置されたワークを回動させる回動ユニットが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置。
【請求項5】
前記ワークを保持するパレットと、
前記洗浄槽搬入出口から前記パレットを前記洗浄槽内の前記回動ユニットに搬送する搬送手段と、を備えたことを特徴とする請求項4に記載のタレット式洗浄装置。
【請求項6】
前記回動ユニットは、前記洗浄槽外に配置され、前記ワークを回動させるための回動駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄室内には、前記ワークに対してエアを吹き付けるためのエアブロー装置のエア噴出口が設けられていること特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のタレット式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−76215(P2012−76215A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80776(P2011−80776)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】