説明

タンク鏡板の現地製作方法、並びに、該方法に用いるタンク鏡板組立体及び鏡板組立用仮設架台

【課題】工場一体製作品と同様の寸法精度を有するタンク鏡板を現地製作できるようにする。
【解決手段】所望する鏡板3の形状を複数分割した形状となるよう形成した鏡板分割品3a,3b,3cの内面側と外面側に、それぞれ拘束治具7a,7b,7cと8a,8b,8cを取り付けてタンク鏡板組立体6a,6b,6cを製作しておく。各タンク鏡板組立体6a,6b,6cをタンク据付個所へ搬入し、それぞれの鏡板分割品3aと3bと3cによって所望の鏡板3形状が形成されるよう配置した後、内面側と外面側の拘束治具7a,7b,7c及び8a,8b,8c同士を連結する。この連結された拘束治具7a,7b,7c及び8a,8b,8cにより各鏡板分割品3a,3b,3c同士の相対変位と溶接歪を防止できるよう拘束した状態にて、鏡板分割品3a,3b,3cの溶接を行なって鏡板3を製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク鏡板を複数分割した状態でタンク据付個所へ搬入してタンク鏡板の現地製作を行なうことができるようにするタンク鏡板の現地製作方法と、該方法に使用するタンク鏡板組立体、及び、鏡板組立用仮設架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種製造設備等において所要の流体や粉粒体等を貯留するための容器として、図7に示す如く、上下方向の円筒状の胴部2の下端にタンク鏡板(以下、単に鏡板と云う)3を備え、且つ上記胴部2の上端に上蓋4を備えてなる構造を有する円筒型の鋼製タンク1が広く一般的に用いられている。
【0003】
この種の鋼製タンク1を製作する場合は、鏡板3の外周縁部の上端に、該鏡板3の外周縁部の周方向に沿う湾曲形状とした胴板2aを、周方向に配置してリング状にすると共に、上下方向にも胴板2aを千鳥状に配置しながら複数段配列した後、上記鏡板3と各胴板2a、及び、各胴板2a同士を溶接して胴部2を形成するようにしてある。その後、該胴部2の上側に、図示しないトップアングル等を介して上蓋4を載置すると共に溶接して取り付けるようにしてある。5は鏡板3の外周部の下側に取り付けて鋼製タンク1を支持するためのスカートである。その他、使用目的に応じて図示しない配管、ヒータ、各種計器、外部梯子等を適宜取り付けるようにしてある。
【0004】
上記の如き鋼製タンク1を建屋内のタンク据付個所に設置する場合、該タンク据付個所に至る搬入経路が該鋼製タンク1全体を通過させることが可能な寸法であれば、工場において上述したように製作した鋼製タンク1の一体製作品を、そのまま建屋内へ搬入して所定のタンク据付個所へ据え付けるようにすればよい。一方、比較的大型の鋼製タンク1を建屋内に設置する場合には、該建屋の建設途中にてタンク据付個所へのアクセスが容易な状態のときに、工場で予め製作した鋼製タンク1の一体製作品を該タンク据付個所へ搬入して据え付けを行い、その後、上記据え付けられた鋼製タンク1の周囲の建屋の建設を続けることで、該建屋内への鋼製タンク1の設置を実施させるようにすることが多く行なわれている。
【0005】
又、既存の建屋内に比較的大型の鋼製タンク1を設置する場合等、タンク据付個所へ至るために鋼製タンク1全体を通過させることが困難な狭い搬入経路を経由する必要がある場合は、上記鋼製タンク1の構成要素であるスカート5と鏡板3と胴板2aと上蓋4とを分離した状態で上記搬入経路を通過させてタンク据付個所へ搬入し、該タンク据付個所にて、上記鏡板3をスカート5を介して据え付けた後、上記工場における鋼製タンク1の製作時と同様にして、上記鏡板3の上側に胴板2aを接合して胴部2を形成し、しかる後、該胴部2の上側に上蓋4を取り付けて鋼製タンク1の現地製作を行なうようにすることが一般的に行なわれている。
【0006】
ところで、底部を平底としてある形式の鋼製タンクにおいては、平板部材同士を現地で溶接すると共にアニュラプレートを溶接して平底を製作し、該平底の外周縁部の上側に胴板(円弧状パネル)を数段に亘り接合して胴部(側板)を形成するようにすることも考えられてきている(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−179185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記図7に示した如き底部に鏡板3を備えてなる形式の鋼製タンク1は、たとえば、該鋼製タンク1を圧力容器として用いる場合には、湾曲形状としてある鏡板3の曲率について公差の偏差がJIS規格により定められる。
【0009】
そのために、タンク据付個所で鋼製タンク1の現地製作を行なう場合、上記鏡板3の上側における胴部2の組立作業や上蓋4の取付作業等については、作業領域に多少制約があるとしても通常の工場製作のときとほぼ同様の手法により実施することが可能であるのに対し、鏡板3は一体成型品でないと寸法精度の確保が困難であり、上記特許文献1に記載された鋼製タンクの平底のように現地で部材同士の溶接によって製作することは従来困難とされていた。
【0010】
すなわち、従来の上記鏡板3の製作方法は、工場にて、鋼板を溶接して所要大きさの平板な一枚板を作成した後、該一枚板を冷間プレスやスピニング加工により所望の曲率の湾曲形状に成形することにより、所定の寸法精度を備えた一体製作品としての鏡板3を製作するようにしてあり、部材同士を溶接する際の溶接歪による変形が鏡板3としての湾曲形状に影響する虞を排除できるようにしていた。なお、上記のように鏡板3を所要の湾曲形状に成形すると、この所要の湾曲形状を備えた鏡板3の一体製作品では、全体形状の保持が良好に行なわれるため、搬送する際にも変形が抑えられるようになる。
【0011】
したがって、従来の鋼製タンク1の現地製作方法では、少なくとも、上記鏡板3については工場で製作した一体製作品としてタンク据付個所へ搬入することが不可欠とされていたため、タンク据付個所に至る搬入経路が上記鏡板3の一体製作品を通過させることが困難なほど狭あいな場合は、上記鏡板3の一体製作品が搬入可能となるように、干渉物を撤去したり、建屋壁を壊す等して一時的に搬入経路を広げる必要が生じる。そのため、上記干渉物の撤去、復旧作業や、建屋壁の破壊、復旧作業等の付帯作業が必要となることから、工事期間、工事費用が嵩むと共に、タンク据付個所によっては干渉物の撤去や建屋壁を壊すことが困難で工事実現性に問題が生じる虞もある。
【0012】
そこで、本発明は、タンク据付個所に至る搬入経路における搬入可能寸法に応じてタンク鏡板を分割した状態でタンク据付個所まで搬入した後、タンク鏡板の現地製作を行なっても、製作されるタンク鏡板に所要の寸法精度を確保できるタンク鏡板の現地製作方法と、該方法で使用するタンク鏡板組立体、及び、鏡板組立用仮設架台を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明に対応して、タンク鏡板を複数分割してなる鏡板分割品を形成すると共に、該各鏡板分割品ごとの形状を保持するための拘束治具をそれぞれの鏡板分割品に取り付けてなる複数のタンク鏡板組立体を製作し、次に、上記各タンク鏡板組立体をタンク据付個所へ搬入して、該各タンク鏡板組立体を、それぞれの鏡板分割品の組み合わせによって所望のタンク鏡板形状が形成されるように配置し、次いで、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士を連結して、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と溶接歪を防止できるよう拘束した状態にて、上記各鏡板分割品同士を溶接してタンク鏡板を製作するようにするタンク鏡板の現地製作方法とする。
【0014】
又、上記構成における拘束治具として、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、リングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品の外周部を拘束できるようにしてある外面側拘束治具とを用いるようにする。
【0015】
更に、上記構成において、タンク据付個所に設置されるスカートの近傍位置に鏡板組立用仮設架台を撤去可能に設けて、タンク据付個所に搬入される各タンク鏡板組立体を、上記スカートの所要寸法上方位置に、鏡板分割品同士を内外両面側から溶接できるように保持した状態にて、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士の連結と、各鏡板分割品同士の溶接を行なうようにする。
【0016】
請求項4に係る発明に対応して、所望するタンク鏡板の形状を所要の分割線に沿って複数分割してなる形状の鏡板分割品と、該各鏡板分割品に取り付けて各鏡板分割品の形状を保持する拘束治具とからなり、上記各鏡板分割品同士を全体で所望するタンク鏡板の形状が形成されるように配置した状態で上記各鏡板分割品に取り付けられている拘束治具同士を連結することにより、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と、各鏡板分割品同士を溶接する際の溶接歪を防止できるようにした構成を有するタンク鏡板組立体とする。
【0017】
又、上記における拘束治具を、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面に沿うリングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品における所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面と対応する面部に取り付けた外面側拘束治具とからなる構成とする。
【0018】
請求項6に係る発明に対応して、タンク据付個所に設けるスカートよりも上方位置に、鏡板支持部材を複数配置すると共に、該各鏡板支持部材を、所要の支柱部材を介してタンク据付個所における基礎上に支持させてなり、タンク据付個所に搬入されるタンク鏡板組立体を、上記鏡板支持部材上に載置して上記スカートの真上に保持できるようにした構成を有する鏡板組立用仮設架台とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)タンク鏡板を複数分割してなる鏡板分割品を形成すると共に、該各鏡板分割品ごとの形状を保持するための拘束治具をそれぞれの鏡板分割品に取り付けてなる複数のタンク鏡板組立体を製作し、次に、上記各タンク鏡板組立体をタンク据付個所へ搬入して、該各タンク鏡板組立体を、それぞれの鏡板分割品の組み合わせによって所望のタンク鏡板形状が形成されるように配置し、次いで、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士を連結して、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と溶接歪を防止できるよう拘束した状態にて、上記各鏡板分割品同士を溶接してタンク鏡板を製作するようにするタンク鏡板の現地製作方法としてあるので、タンク据付個所への搬入時の歪による変形や溶接歪による変形を防止しながら鏡板分割品を溶接により接合することができて、工場一体成型品と同様のサイズ及び寸法精度を備えたタンク鏡板を現地製作することができる。これにより、工場一体成型品の鏡板の搬入が不可能な狭あいな搬入経路を経由する必要がある等、搬入経路に制約があるタンク据付個所であっても、工場一体成型品と同等のタンク鏡板を用いたタンクを現地製作して据え付けることが可能となる。又、タンク鏡板をタンク据付個所へ搬入する搬入経路を確保するために行なう干渉物の撤去、復旧作業や、建屋の破壊、復旧作業のような付帯工事量を削減することが可能になることから、工事期間、工事費用の削減化を図ることが可能になる。
(2)拘束治具として、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、リングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品の外周部を拘束できるようにしてある外面側拘束治具とを用いるようにすることにより、連結する上記内面側拘束治具によって所望のタンク鏡板形状が形成されるように配置する各鏡板分割品の湾曲形状を良好に保持できると共に、連結する外面側拘束治具によって上記所望のタンク鏡板形状が形成されるように配置する各鏡板分割品の全体の外周形状を真円形状に容易に保持できる。
(3)タンク据付個所に設置されるスカートの近傍位置に鏡板組立用仮設架台を撤去可能に設けて、タンク据付個所に搬入される各タンク鏡板組立体を、上記スカートの所要寸法上方位置に、鏡板分割品同士を内外両面側から溶接できるように保持した状態にて、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士の連結と、各鏡板分割品同士の溶接を行なうようにすることにより、鏡板を製作するときに該鏡板を裏返したり、スカートと別の場所で製作作業を行なう必要をなくすことができる。したがって、現地におけるタンク鏡板の製作作業を、タンク据付個所のみで実施できるため、周辺スペースに制約があるタンク据付個所においてもタンク鏡板の現地製作を行なうことができる。
(4)上記(2)に示した内面側及び外面側の拘束治具を用いて上記(1)で示したと同様にしてタンク鏡板を現地で製作し、該製作されたタンク鏡板を、外周縁部の外周面に各外面側拘束治具同士を連結してなるリング状構造が取り付けられている状態でスカートを介してタンク据付個所に設置すると共に、上記タンク鏡板の上側に胴板を取り付けて胴部を形成するようにすることにより、上記タンク鏡板を、連結された外周側拘束治具によって真円形状に保持した状態にて、該タンク鏡板の上側への胴板の取り付けを行なうことができることから、胴板を設計されたタンク鏡板の径に合わせた湾曲形状に製作することができて、該胴板をタンク鏡板の外周縁部の周方向に沿うように現場合わせする手間を省略することが可能となる。
(5)所望するタンク鏡板の形状を所要の分割線に沿って複数分割してなる形状の鏡板分割品と、該各鏡板分割品に取り付けて各鏡板分割品の形状を保持する拘束治具とからなり、上記各鏡板分割品同士を全体で所望するタンク鏡板の形状が形成されるように配置した状態で上記各鏡板分割品に取り付けられている拘束治具同士を連結することにより、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と、各鏡板分割品同士を溶接する際の溶接歪を防止できるようにした構成を有するタンク鏡板組立体、又、上記における拘束治具を、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面に沿うリングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品における所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面と対応する面部に取り付けた外面側拘束治具とからなる構成としたタンク鏡板組立体、更には、タンク据付個所に設けるスカートよりも上方位置に、鏡板支持部材を複数配置すると共に、該各鏡板支持部材を、所要の支柱部材を介してタンク据付個所における基礎上に支持させてなり、タンク据付個所に搬入されるタンク鏡板組立体を、上記鏡板支持部材上に載置して上記スカートの真上に保持できるようにした構成を有する鏡板組立用仮設架台を用いることにより、上記(1)(2)(3)に示したタンク鏡板の現地製作方法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図1(イ)(ロ)乃至図5(イ)(ロ)(ハ)(ニ)は本発明の実施の一形態としてタンク鏡板現地製作方法と、該方法で用いるタンク鏡板組立体及び鏡板組立用仮設架台を示すものである。
【0022】
ここで、先ず、図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)に示すタンク鏡板組立体6a,6b,6cについて説明する。上記タンク鏡板組立体6a,6b,6cは、図1(ロ)及び図2(ロ)に示す如き所定の寸法精度で湾曲する所望の鏡板3の形状をタンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能寸法となるように所要の分割線9に沿って複数分割した形状とする。たとえば、上記所望の鏡板3の形状をほぼ前後方向に延びる2本の分割線9に沿って左右に3分割した形状と一致するように鏡板分割品3a、3b、3cをそれぞれ成形し、該各鏡板分割品3a、3b、3cの内面と外面に、内面側拘束治具7a,7b,7cと外面側拘束治具8a,8b,8cとをそれぞれ取り付けてなる構成とする。これにより、上記各鏡板分割品3a,3b,3cの形状を、それぞれ内面側と外面側に取り付けてある拘束治具7aと8a,7bと8b,7cと8cによって個別に保持できるようにする。更に、上記各鏡板分割品3aと3bと3cを全体で所望の鏡板3の形状が形成されるように隣接させて配置した状態で上記内面側拘束治具7aと7bと7c同士及び外面側拘束治具8aと8bと8c同士を連結することにより、該連結された内面側拘束治具7a,7b,7cと外面側拘束治具8a,8b,8cとによって上記隣接配置された各鏡板分割品3a,3b,3cの全体の形状を保持できるようにする。
【0023】
詳述すると、図1や図2に示す中央のタンク鏡板組立体6bにおける内面側拘束治具7bは、対応する図上中央の鏡板分割品3bとその左右両側の鏡板分割品3a,3cとをそれぞれ分割した分割線9と交差する方向、たとえば、左右方向に上記鏡板分割品3bの内面の湾曲形状に沿って延び且つ長手方向両端部(左右両端部)が上記鏡板分割品3bの左右両端部よりも外方ヘ所要寸法ずつ突出する補強材(以下、左右方向の補強材を横行材と云う)10bを、前後方向に所要間隔で所要本数、たとえば、前後方向ほぼ等間隔に5本平行に配置する。更に、該各横行材10bと直角な方向、すなわち、前後方向に上記鏡板分割品3bの内面の湾曲形状に沿って延びる補強材(以下、前後方向の補強材を縦通材という)11bを、上記各横行材10bの前後方向の配列間隔とほぼ等しい間隔で左右方向に所要本数、たとえば、3本平行に配置し、該各横行材10bと縦通材11bとを交差させて井桁状に一体に連結した構造としてある。上記内面側拘束治具7bは、各横行材10bと縦通材11bの下端面を、それぞれ上記鏡板分割品3bの内面の対応する個所に溶接して固定する。これにより、上記鏡板分割品3bの形状を強固に保持して、上記タンク鏡板組立体6bのタンク据付個所への搬入作業時等に上記鏡板分割品3bが歪んで変形する虞が生じないようにしてある。
【0024】
又、図1や図2に示す左側のタンク鏡板組立体6aにおける内面側拘束治具7aは、上記中央のタンク鏡板組立体6bの内面側拘束治具7bにおける各横行材10bの前後いずれか片方の面に沿う前後方向位置にて対応する図上左側の鏡板分割品3aの内面の湾曲形状に沿って左右方向に延びる5本の横行材10aと、該各横行材10aと直角な前後方向に上記鏡板分割品3aの内面の湾曲形状に沿って延びる所要本数、たとえば、1本の縦通材11aとを交差させて一体に連結した構造としてある。上記内面側拘束治具7aは、各横行材10aと縦通材11aの下端面を、それぞれ上記鏡板分割品3aの内面の対応する個所に溶接して固定する。これにより、上記鏡板分割品3aの形状を強固に保持して、上記タンク鏡板組立体6aのタンク据付個所への搬入作業時等に上記鏡板分割品3aが歪んで変形する虞が生じないようにしてある。
【0025】
更に、図1や図2に示す右側のタンク鏡板組立体6cにおける内面側拘束治具7cは、上記図上左側のタンク鏡板組立体6aにおける内面側拘束治具7aと同様に、上記中央のタンク鏡板組立体6bの内面側拘束治具7bにおける各横行材10bの前後いずれか片方の面に沿う前後方向位置にて対応する図上右側の鏡板分割品3cの内面の湾曲形状に沿って左右方向に延びる5本の横行材10cと、該各横行材10cと直角な前後方向に上記鏡板分割品3cの内面の湾曲形状に沿って延びる所要本数、たとえば、1本の縦通材11cとを交差させて一体に連結してなる構造としてある。上記内面側拘束治具7cは、各横行材10cと縦通材11cの下端面を、それぞれ上記鏡板分割品3cの内面の対応する個所に溶接して固定する。これにより、上記鏡板分割品3cの形状を強固に保持して、上記タンク鏡板組立体6cのタンク据付個所への搬入作業時等に上記鏡板分割品3cが歪んで変形する虞が生じないようにしてある。
【0026】
更に又、図1(ロ)及び図2(ロ)に示す如く、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、それぞれの鏡板分割品3aと3bと3c同士が左右方向に隣接するようにして配置させると、上記中央のタンク鏡板組立体6bにおける内面側拘束治具7bの各横行材10bの左右両端部と、左右両側のタンク鏡板組立体6aと6cの内面側拘束治具7aと7cにおける各横行材10aと10cのタンク中央寄り側の端部とが、互いに所要寸法オーバーラップした状態で前後方向に接するようにしてある。これにより、上記のように各鏡板分割品3aと3bと3cを左右に隣接させて配置した状態にて、上記各横行材10aと10b及び10bと10cのオーバーラップしている端部同士を溶接することにより、上記各鏡板分割品3a,3b,3cの内面側全体に、上記各内面側拘束治具7aと7bと7cを連結してなる井桁構造を形成して、上記各鏡板分割品3a,3b,3c同士の相対的な変位を防止できるようにしてある。
【0027】
上記において、後述するように各鏡板分割品3a,3b,3c同士を溶接して鏡板3を製作する際に該鏡板3の形状の全面的にほぼ均等な強度で保持できるようにするという観点からは、上記のように各内面側拘束治具7a,7b,7c同士を連結するときに、各横行材10a,10b,10cの前後方向の配列間隔と、各縦通材11a,11b,11cが左右方向に配列されるようになるときの間隔がほぼ等しくなるようにして、前後左右方向にほぼ揃った格子を備えた井桁構造が形成されるようにすることが好ましい。
【0028】
又、上記各内面側拘束治具7a,7b,7cの横行材10a,10b,10cや縦通材11a,11b,11cの下端面を対応する各鏡板分割品3a,3b,3cの内面に固定する際には、上記各鏡板分割品3a,3b,3cの成形加工公差を吸収できるようにするために、図3に示す如く、該各鏡板分割品3a,3b,3cの内面に、上記横行材10a,10b,10cや縦通材11a,11b,11cを、所要形状のタブ板12を介して取り付けるようにしてもよい。
【0029】
一方、上記タンク鏡板組立体6a,6b,6cにおける外面側拘束治具8a,8b,8cは、所望する鏡板3の外周縁部の外周面に沿う真円形状のリングを上記各鏡板分割品3a,3b,3c同士の分割線9と対応する位置でそれぞれ分割してなる円弧形状としてあり、該円弧形状の各外面側拘束治具8a,8b,8cの内周側端面を、それぞれ対応する鏡板分割品3a,3b,3cにて所望する鏡板3の外周縁部の外周面と対応する面部に溶接して固定してある。これにより、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、図1(ロ)及び図2(ロ)に示す如く配置して、各鏡板分割品3a,3b,3c同士を左右に隣接配置させた状態にて、周方向に連なるよう配置される上記外面側拘束治具8aと8b,8bと8cの突合せ端部同士を、たとえば、図1(ロ)に二点差線で示す如き板状部材13で上下方向の両側から挟むと共に溶接等により固定し、上記各外面側拘束治具8aと8bと8cを各板状部材13を介してリング状に連結するようにする。このリング状構造により上記隣接配置させてある鏡板分割品3a,3b,3cの外周を真円形状に拘束させることができるようにしてある。
【0030】
なお、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを図1(ロ)及び図2(ロ)に示す如く配置するときに、上記中央の内面側拘束治具7bの各横行材10bが隣接配置される各鏡板分割品3a,3b,3c同士の間の各分割線9を横切る個所、及び、該各分割線9と対応する位置で突き合わせ配置される上記各外面側拘束治具8a,8b,8cの各端部の内周側には、それぞれスカラップ14を設けてなる構成とする。これにより、上記各鏡板分割品3aと3b,3bと3cの近接端同士を分割線9に沿って溶接するときに、上記内面側拘束治具7bの各横行材10bや上記各外面側拘束治具8a,8b,8cが溶接個所に干渉しないようにしてある。
【0031】
更に、上記各内面側拘束治具7a,7b,7cの各横行材10a,10b,10c及び各縦通材11a,11b,11cの下端面を対応する鏡板分割品3a,3b,3cの内面に対して固定するための溶接、及び、上記各外面側拘束治具8a,8b,8cの内周側端面を対応する鏡板分割品3a,3b,3cの対応する個所へ固定するための溶接は、上記各鏡板分割品3a,3b,3c同士を溶接して鏡板3を製作した後に、上記各内面側拘束治具7a,7b,7c及び各外面側拘束治具8a,8b,8cを取り外すことを考慮して、タック溶接の如き断続的な溶接とすることが好ましい。
【0032】
次に、図4(イ)(ロ)に示す鏡板組立用仮設架台15について説明する。上記鏡板組立用仮設架台15は、タンク据付個所に所望の鏡板3を支持させるために設置するスカート5より所要寸法上方に離れた位置に、上述した如き構成としてある各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、図1(ロ)及び図2(ロ)に示す如きそれぞれの鏡板分割品3a,3b,3c同士を互いに隣接配置させた状態で保持できる構成とする。
【0033】
具体的には、上記鏡板組立用仮設架台15は、上記スカート5の外周面近傍位置に、上端が上記スカート5よりも上方へ突出する所要の高さ寸法を有する外周側支柱部材17を、周方向に所要間隔で複数本(図では8本)配置する。又、上記スカート5の内側にて該スカート5と同心となる所要径の円周上に、上記スカート5の上端位置とほぼ同様の高さ寸法を有する内周側支柱部材18を、周方向に上記外周側支柱部材17と同位相となるように複数本(図では8本)配置する。内外方向に対応する上記支持部材17と18の上端部には、スカート5の径方向に沿って配した鏡板支持部材16の長手方向両端部における下端側をそれぞれ取り付ける。更に、上記各外周側支柱部材17は、上下方向の所要個所、たとえば、上下方向の2個所を、スカート5の外周面に沿って周方向に延びるリング状の連結部材20を介して一連に連結するようにしてある。又、上記各内周側支持部材18は、周方向に隣接するもの同士を所要の長さ寸法を有する梁状の連結材21を介して順次連結するようにしてある。
【0034】
上記各鏡板支持部材16の上端面には、ゴム養生19を設けて、該各鏡板支持部材16上に上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを載置するときに各鏡板分割品3a,3b,3cの外面に傷が生じないようにしてある。
【0035】
又、上記外周側支柱部材17の上端部と内周側支柱部材18の上端部の相対的な高さ位置の差によって決定される上記各鏡板支持部材16の内外方向の傾きが、上記各鏡板分割品3a,3b,3cの外面の湾曲形状に対応した角度となるように、上記外周側と内周側の各支柱部材17と18の高さ寸法を適宜設定するようにしてある。更に、上記外周側及び内周側の各支柱部材17,18は、周方向の配置間隔を適宜調整して、該各支柱部材17と18上に取り付けてある鏡板支持部材16の周方向の配置が、その上側に載置される上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cの鏡板分割品3a,3b,3c同士の分割線9と干渉しないようにしてある。
【0036】
更に、上記鏡板組立用仮設架台15は、タンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能寸法に分解可能な組立構造とする。すなわち、たとえば、外周側支柱部材17と内周側支柱部材18と鏡板支持部材19と連結部材20と各連結材21とを、それぞれ取り外し可能に連結してなる構成とする。更に、上記スカート5の外周に配置して各外周側支柱部材17を連結するためのリング状の連結部材20は、周方向の複数個所で分割可能な構造としてある。
【0037】
以上の構成としてあることにより、スカート5の近傍位置にて上記図4(イ)(ロ)に示す如く上記鏡板組立用仮設架台15を組み立てると、上記スカート5の所要寸法上方位置に配される各鏡板支持部材16の上側に、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、鏡板分割品3a,3b,3c同士を互いに隣接配置させた状態で載置できて、上記各鏡板分割品3a,3b,3cの近接端同士を、上記スカート5や鏡板支持部材16に邪魔されることなく、分割線9に沿って内外両面側から溶接できるようにしてある。又、上記各鏡板分割品3a,3b,3c同士の溶接により鏡板3を製作した後には、該鏡板3を一旦吊り上げることにより、その下方にて上記鏡板組立用仮設架台15を分解してスカート5の近傍位置より容易に撤去できるようにしてある。
【0038】
次いで、上記タンク鏡板組立体6a,6b,6c及び鏡板組立用仮設架台15を用いて行なうタンク鏡板の現地製作方法について説明する。
【0039】
かかるタンク鏡板の現地製作方法を実施する場合は、予め、工場にて、上記図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)に示した如きタンク鏡板組立体6a,6b,6cを製作する。更に、各タンク鏡板組立体6aと6bと6cを、図1(ロ)及び図2(ロ)に示す状態となるように左右に隣接させて、隣接させる各鏡板分割品3aと3bと3cの全体によって所望の鏡板3の形状が正確に形成されるよう仮組みを行ない、このときの上記タンク鏡板組立体6aと6bの内面側拘束治具7aと7bにおける各横行材10aと10bの端部同士のオーバーラップ量、及び、タンク鏡板組立体6bと6cの内面側拘束治具7bと7cにおける各横行材10bと10cの端部同士オーバーラップ量について、後で分かるようにそれぞれマーキング(図示せず)するようにしておく。又、鋼製タンク1のスカート5についても、所望する鏡板3よりもやや小さい径のスカート形状をタンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能寸法となるように上下方向及び周方向に適宜分割して、図5(イ)に示す如き湾曲形状のスカート分割品5aを予め製作しておく。
【0040】
そして、先ず、図5(イ)に示す如く、タンク据付個所に上記スカート分割品5aを搬入し、基礎上の正規のスカート設置位置にて、該スカート分割品5aを周方向及び上下方向に組み立てた後、該各スカート分割品5a同士を溶接してスカート5を形成すると共に、基礎への固定を行なう。
【0041】
次に、図5(ロ)に示す如く、タンク据付個所に、図4(イ)(ロ)に示した如き鏡板組立用仮設架台15を分解状態で搬入した後、上記スカート5近傍で組み立てて該鏡板組立用仮設架台15の設置を行なう。
【0042】
次いで、タンク据付個所に、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを個別に搬入して、図5(ハ)に示す如く、上記鏡板組立用仮設架台15の上側に、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、互いに左右に隣接させた状態で載置する。この際、上記鏡板組立用仮設架台15では、図4(イ)(ロ)に示したように内外方向に傾斜する鏡板支持部材16によって上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cの鏡板分割品3a,3b,3cの湾曲する外面を支持させるようにしてあることから、最初に中央のタンク鏡板組立体6bを上記鏡板組立用仮設架台15上に載置した後、その両側に、左右両側のタンク鏡板組立体6aと6cを、それぞれ鏡板支持部材16の傾斜に沿って滑らせるようにして載置させるようにする。このようにすれば、上記各タンク鏡板組立体6aと6bと6c同士を容易に隣接させることが可能になると共に、上記隣接配置させる各タンク鏡板組立体6a,6b,6cの、鏡板組立用仮設架台15上での位置ずれを抑制することが可能になる。
【0043】
その後、上記組立用仮設架台15上にて隣接するタンク鏡板組立体6aと6bの内面側拘束治具7aと7bにおける各横行材10aと10bの端部同士のオーバーラップ量と、タンク鏡板組立体6bと6cの内面側拘束治具7bと7cにおける各横行材10bと10cの端部同士のオーバーラップ量(図1(ロ)、図2(ロ)参照)が、工場での仮組み状態のときのマーキングと一致するように上記各鏡板組立体6a,6b,6cの配置を調整した後、上記各横行材10aと10bの端部同士、及び、各横行材10bと10cの端部同士を溶接して、上記内面側拘束治具7a,7b,7c同士を連結する。又、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cの外面側拘束治具8a,8b,8cの突合せ端部に、上下方向の両側から板状部材13(図2(ロ)参照)をそれぞれ溶接して、該各外面側拘束治具8a,8b,8c同士を連結する。これにより、上記各タンク鏡板組立体6a,6b,6cの各鏡板分割品3a,3b,3c同士が正確に隣接配置された状態で位置固定されると共に、上記連結された内面側拘束治具7a,7b,7cによる井桁構造によって上記各鏡板分割品3a,3b,3cの相対的な変位が防止され、且つ上記連結された外面側拘束治具8a,8b,8cによるリング状構造によって鏡板分割品3a,3b,3c全体の外周が真円形状に拘束される。
【0044】
よって、この状態で上記各鏡板分割品3aと3bと3cの近接する端部同士を、分割線9に沿って内外両面側から溶接する。これにより、溶接歪による変形を生じさせることなく各鏡板分割品3aと3bと3cを接合できて、上記各鏡板分割品3aと3bと3cを分割線9の位置で接合した形状、すなわち、所定の寸法精度で湾曲する所望の鏡板3が製作されるようになる。
【0045】
しかる後、上記製作された鏡板3は、図示しないクレーン等により一旦吊り上げて、上記鏡板組立用仮設架台15を分解してスカート5近傍から撤去した後、図5(ニ)に示す如く、上記鏡板3を上記スカート5の上側へ吊り下ろして載置させ、該スカート5の上端部と上記鏡板3の外周縁部との接触部分を溶接する。
【0046】
続いて、該鏡板3の外周縁部の形状が、上記連結された外面側拘束治具8aと8bと8cからなるリング状構造によって真円に拘束されている状態にて、図6(イ)に示す如く、上記タンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能な寸法で且つ上記鏡板3の外周縁部の周方向に沿う湾曲形状となるように予め工場で別途製作した胴板2aをタンク据付個所へ搬入して、上記鏡板3の外周縁部の上側に、周方向及び上下方向所要段に亘り組み立て、上記鏡板3の外周縁部の上端面と各胴板2a及び各胴板2a同士をそれぞれ溶接して胴部2を製作する。
【0047】
上記外面側拘束治具8a,8b,8cは、上記図6(イ)に示す如き鏡板3の上側への胴部2の取付工程以降に取り外すようにする。又、上記内周側拘束治具7a,7b,7cは、上記図5(ニ)に示した如くスカート上に鏡板3を設置する工程以降で且つ後述するように胴部2の上端への上蓋4の取り付けを開始する前の時点で、それぞれ製作された鏡板3から取り外すようにする。この各拘束治具8a,8b,8cや7a,7b,7cの取り外しを行なう際は、上記製作された鏡板3に対して熱が作用することは好ましくないため、グラインダ等を用いて鏡板3の外面あるいは内面より削り落とすようにすればよい。
【0048】
次いで、図6(ロ)に示す如く、タンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能寸法で且つ上蓋4を複数に分割(図では3分割)した形状となるように予め工場にて別途製作した上蓋分割品4aを、タンク据付個所に搬入し、上記胴部2の上側に各上蓋分割品4aを載置して組み立てた後、該各上蓋分割品4a同士を溶接して上蓋4を形成すると共に、該上蓋4を上記胴部2の上側に溶接等により取り付けて鋼製タンク1を製作するようにする。しかる後、使用目的に応じて図示しない配管、ヒータ、各種計器や、外部梯子等を適宜取り付ける。
【0049】
このように、本発明のタンク鏡板の現地製作方法によれば、上記図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)に示した如きタンク鏡板組立体6a,6b,6cを用いるようにしてあるため、タンク据付個所への搬入時の歪による変形や溶接歪による変形を防止しながら鏡板分割品3a,3b,3cを接合して、工場一体成型品と同様のサイズ及び寸法精度を備えた鏡板3を現地製作することができる。このため、工場一体成型品の鏡板3を搬入が不可能な狭あいな搬入経路を経由する必要がある等、従来、タンク据付が不可能とされていた個所であっても、工場一体成型品と同等の鏡板3を備えた鋼製タンク1の据え付けが可能となる。又、搬入経路の確保のための干渉物の撤去、復旧作業や建屋の破壊、復旧作業のような付帯工事量を削減することが可能になることから、工事期間、工事費用の削減化を図ることが可能になる。
【0050】
又、上記図4(イ)(ロ)に示した如き鏡板組立用仮設架台15を用いることにより、タンク据付個所に設置したスカート5の上方位置に上記各鏡板組立体6a,6b,6cを支持した状態で、各鏡板分割品3a,3b,3c同士を内外両面側から溶接して鏡板3を製作できる。更には、製作される鏡板3を上方へ吊り上げるのみで、その下方にてスカート5の近傍位置から上記鏡板組立用仮設架台15を撤去できる。このため、上記鏡板3の製作時に該鏡板3を裏返したり、スカート5と別の場所で製作作業を行なう必要はない。したがって、鏡板3の製作作業と、その後の鋼製タンク1の製作作業は、タンク据付個所に図示しない一基のクレーンがあれば実施可能となる。しかも、鏡板3や鋼製タンク1の製作作業は、タンク据付個所のみで実施可能であるため、周辺スペースに制約があるタンク据付個所においても鋼製タンク1の据え付けが可能となる。
【0051】
更に、上記現地製作した鏡板3上に胴板2aを組み立てて胴部2を形成する作業は、上記鏡板3の外周に、連結された外面側拘束治具8aと8bと8cによるリング状構造を取り付けた状態で行なうようにしてあるため、上記鏡板3は、予め設定されている所要径の真円形状に保たれることから、胴板2aの湾曲形状を鏡板3の外周縁部の周方向に沿うように現場合わせする手間を省略できる。
【0052】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、鏡板分割品は、タンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能な寸法に応じて、所望の鏡板3を2分割あるいは4分割以上に多数分割した鏡板分割品を用いるようにしてもよい。
【0053】
所望する鏡板3の形状を2本以上の分割線9に沿って分割して3つ以上の鏡板分割品を形成する場合は、各分割線9が該各分割線9を挟んで隣接する鏡板分割品同士の溶接個所となることから、分割線9同士を互いに交わらないように配置して、鏡板分割品同士の溶接時に3溶接線交差部が生じないようにすることが望ましい。しかし、分割線9同士が交わる配置となることを必ずしも禁ずるものではない。
【0054】
各タンク鏡板組立体6a,6b,6cにおける鏡板分割品3a,3b,3cの内面に取り付ける内面側拘束治具7a,7b,7cは、対応する鏡板分割品3a,3b,3cの形状を強固に保持できて、タンク据付個所への搬入時等に歪による変形が発生する虞を防止でき、且つ内面側拘束治具7a,7b,7c同士を連結することによって上記各鏡板分割品3aと3bと3cとを左右に隣接配置させた状態で相対位置変化を防止できるようにして、鏡板分割品3a,3b,3c同士を溶接する際に溶接歪による変形を防止できるようにしてあれば、井桁構造以外の構造を採用してもよい。
【0055】
胴部2を現地製作するための胴板2a、上蓋4を現地製作するための上蓋分割品4a、及び、スカート5を現地製作するためのスカート分割品5aの分割数や形状やサイズは、タンク据付個所に至る搬入経路にて搬入可能寸法となるようにすれば、それぞれ自在に設定してもよい。
【0056】
図4(イ)(ロ)に示した鏡板組立用仮設架台15において、外周側支柱部材17及び内周側支柱部材18の周方向の配置や数、内周側支柱部材18の径方向の配置等は、鏡板分割品のサイズや鏡板3形状に対する分割数や分割する位置に応じて適宜変更してもよい。又、鏡板組立用仮設架台15は、タンク据付個所に設置されたスカート5の所要寸法上方位置に、タンク鏡板組立体6a,6b,6cを、各鏡板分割品3a,3b,3c同士を隣接配置させた状態で支持でき、且つ該各鏡板分割品3a,3b,3c同士を分割線9に沿って内外両面側から溶接する際に障害となるよう配置された部材がなく、更に、タンク据付個所に至る搬入経路を通過可能な寸法まで容易に分解可能な組立構造としてあれば、図4(イ)(ロ)に示した構造以外の構造を採用してもよい。
【0057】
従来一体成型品として搬入することが必要とされていた形状であれば、皿形、半楕円体形、全半球形等の鏡板3にも適用できること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の一形態としてタンク鏡板の現地製作方法で用いるタンク鏡板組立体を示すもので、(イ)は各タンク鏡板組立体を分離配置した状態を、(ロ)は各タンク鏡板組立体を隣接させて配置した状態をそれぞれ示す概略平面図である。
【図2】図1のタンク鏡板組立体を示すもので、(イ)は各タンク鏡板組立体を分離配置した状態を、(ロ)は各タンク鏡板組立体を隣接させて配置した状態をそれぞれ示す概略切断側面図である。
【図3】図1のタンク鏡板組立体における鏡板分割品と横行材の取付け状態の別の例の要部を拡大して示す図である。
【図4】タンク鏡板の現地製作方法で用いる鏡板組立用仮設架台を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略切断側面図である。
【図5】本発明のタンク鏡板の現地製作方法の手順を示すもので、(イ)はタンク据付個所にスカートを設置した状態を、(ロ)は鏡板組立用仮設架台を設置した状態を、(ハ)は鏡板組立用仮設架台の上側にタンク鏡板組立体を載置した状態を、(ニ)はスカートの上側に鏡板を設置した状態をそれぞれ示す概要図である。
【図6】図4のタンク鏡板の現地製作方法に続けて行なうタンク現地製作方法の手順を示すもので、(イ)は鏡板の上側に胴部を取り付けた状態を、(ロ)は胴部の上側に上蓋を取り付けて鋼製タンクを製作した状態をそれぞれ示す概要図である。
【図7】従来一般的に用いられている円筒型の鋼製タンクを示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 鋼製タンク(タンク)
2 胴部
2a 胴板
3 鏡板(タンク鏡板)
3a,3b,3c 鏡板分割品
4 上蓋
5 スカート
6a,6b,6c タンク鏡板組立体
7a,7b,7c 内面側拘束治具
8a,8b,8c 外面側拘束治具
9 分割線
15 鏡板組立用仮設架台
16 鏡板支持部材
17 外周側支柱部材(支柱部材)
18 内周側支柱部材(支柱部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク鏡板を複数分割してなる鏡板分割品を形成すると共に、該各鏡板分割品ごとの形状を保持するための拘束治具をそれぞれの鏡板分割品に取り付けてなる複数のタンク鏡板組立体を製作し、次に、上記各タンク鏡板組立体をタンク据付個所へ搬入して、該各タンク鏡板組立体を、それぞれの鏡板分割品の組み合わせによって所望のタンク鏡板形状が形成されるように配置し、次いで、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士を連結して、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と溶接歪を防止できるよう拘束した状態にて、上記各鏡板分割品同士を溶接してタンク鏡板を製作するようにすることを特徴とするタンク鏡板の現地製作方法。
【請求項2】
拘束治具として、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、リングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品の外周部を拘束できるようにしてある外面側拘束治具とを用いるようにする請求項1記載のタンク鏡板の現地製作方法。
【請求項3】
タンク据付個所に設置されるスカートの近傍位置に鏡板組立用仮設架台を撤去可能に設けて、タンク据付個所に搬入される各タンク鏡板組立体を、上記スカートの所要寸法上方位置に、鏡板分割品同士を内外両面側から溶接できるように保持した状態にて、上記各タンク鏡板組立体の拘束治具同士の連結と、各鏡板分割品同士の溶接を行なうようにする請求項1又は2記載のタンク鏡板の現地製作方法。
【請求項4】
所望するタンク鏡板の形状を所要の分割線に沿って複数分割してなる形状の鏡板分割品と、該各鏡板分割品に取り付けて各鏡板分割品の形状を保持する拘束治具とからなり、上記各鏡板分割品同士を全体で所望するタンク鏡板の形状が形成されるように配置した状態で上記各鏡板分割品に取り付けられている拘束治具同士を連結することにより、該連結された拘束治具によって上記各鏡板分割品同士の相対変位と、各鏡板分割品同士を溶接する際の溶接歪を防止できるようにした構成を有することを特徴とするタンク鏡板組立体。
【請求項5】
拘束治具を、各鏡板分割品の内面側に取り付けて該各鏡板分割品の湾曲形状を保持できるようにした内面側拘束治具と、所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面に沿うリングを各鏡板分割品同士の分割位置と対応する位置で複数分割してなる円弧形状として、上記各鏡板分割品における所望するタンク鏡板の外周縁部の外周面と対応する面部に取り付けた外面側拘束治具とからなる構成とした請求項4記載のタンク鏡板組立体。
【請求項6】
タンク据付個所に設けるスカートよりも上方位置に、鏡板支持部材を複数配置すると共に、該各鏡板支持部材を、所要の支柱部材を介してタンク据付個所における基礎上に支持させてなり、タンク据付個所に搬入されるタンク鏡板組立体を、上記鏡板支持部材上に載置して上記スカートの真上に保持できるようにした構成を有することを特徴とする鏡板組立用仮設架台。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−237206(P2007−237206A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60697(P2006−60697)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】