説明

タンタル焼結体の製造方法及びコンデンサの製造方法

【課題】 粘性の大きな電極材料、とくに固体の電極材料を使用した場合の容量出現率及びコンデンサの耐湿値を向上させる。
【解決手段】 タンタルの粉体を加圧成形した後、焼結するタンタル焼結体の製造方法において、加圧成形時の圧力が、前記粉体の成形が可能な圧力以上で、得られる焼結体の細孔直径分布ピークが1つになる圧力より小さい範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量出現率が大きなタンタル系コンデンサ、及びそのコンデンサ用のタンタル焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタルは、化学的に安定な金属であるため多様な用途に使用され、例えば、携帯電話やパーソナルコンピューター等の電子機器用のコンデンサ材料として広く利用されている。コンデンサ材料として使用されるタンタルの形態は、通常粉体であり、該粉体を成形後焼結することにより一体化され焼結体と言われる電極になる。該焼結体内部は、前記粉体が電気的・機械的に連結した三次元の複雑な形状をとる。これら焼結体内部及び外部に誘電体皮膜層を形成した後、対電極となる材料を含浸してコンデンサが構成される。作製されたコンデンサの容量は、誘電体皮膜層が焼結体内外部の表面に均一に付着している限り、微視的には、対電極材料と誘電体皮膜層との接触状況に大きく依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−143316号公報
【特許文献2】特開2001−155963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対電極材料として、燐酸水溶液を用いたとき、誘電体皮膜層との接触状況が完全として、その時の容量出現率を100%とすると、粘性の大きな電極材料、とくに固体の電極材料を使用した場合、該容量出現率を100%とすることは困難であった。とりわけ、前記コンデンサ用タンタル粉体の平均粒子径が小さい場合や、タンタル粉体から作製した焼結体の形状が大きな場合、困難さが増加し、極端な場合には、容量出現率は、50%にも満たないこともあった。また、このような低容量出現率の場合、作製したコンデンサの耐湿値も不十分となることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、焼結体が複数のピークよりなる細孔直径分布を持つものを使用すると、高い容量出現率を達成できること、および該粉体を用いたコンデンサの耐湿値が良好になることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のタンタル焼結体及びそれを用いたコンデンサに関する。
1.複数のピークを有する細孔径分布を持つことを特徴とするタンタル焼結体。
2.複数のピークの内、相対強度の大きい方から2つのピークの細孔直径が、0.2〜0.7μm及び0.7〜3μmである前項1に記載のタンタル焼結体。
3.複数のピークの内、最も相対強度の大きいピークの細孔直径が、0.7〜3μmである前項1に記載のタンタル焼結体。
4.焼結体が、細孔空隙容積を含めて10mm3以上の体積を持つ前項1乃至3のいずれか1項に記載のタンタル焼結体。
5.0.2〜7m2/gの比表面積を持つ前項1乃至4のいずれか1項に記載のタンタル焼結体。
6.焼結体の一部が窒化している前項1乃至5のいずれか1項に記載のタンタル焼結体。
7.焼結体が、1300℃で焼結した場合40000〜200000μFV/gのCV値を持つ焼結体を与えるタンタル粉成形体より得られた焼結体である前項1乃至6のいずれか1項に記載のタンタル焼結体。
8.前項1乃至7のいずれか1項に記載の焼結体を電極とし、その表面上に形成された誘電体と、この誘電体上に形成された対電極とから構成されたコンデンサ。
9.誘電体の主成分が酸化タンタルである前項8に記載のコンデンサ。
10.酸化タンタルが、電解酸化により形成されたものである前項9に記載のコンデンサ。
11.対電極が、下記式(1)または式(2)
【化1】

(式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1乃至10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基あるいはアルキルエステル基、またはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1級、2級もしくは3級アミノ基、CF3基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。R1とR2及びR3とR4の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよい。前記環状結合鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよい。Xは酸素、硫黄または窒素原子を表わし、R5はXが窒素原子の時のみ存在して、独立して水素または炭素数1乃至10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基を表わす。)で示される繰り返し単位を含む重合体に、ドーパントをドープした導電性高分子である前項8乃至10のいずれか1項に記載のコンデンサ。
12.重合体が、ポリピロール、ポリチオフェンおよびこれらの置換誘導体から選ばれた少なくとも一種である前項11に記載のコンデンサ。
13.重合体が、下記式(3)
【化2】

(式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。)で示される繰り返し単位を含む導電性高分子である前項12に記載のコンデンサ。
14.導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)にドーパントをドープしたものである前項13に記載のコンデンサ。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の焼結体および該焼結体を用いたコンデンサを得るための一実施形態を説明する。
本発明に原料として使用されるタンタル粉は、コンデンサ用電極として用いることの出来る焼結体が作製できるものであり、タンタルだけでなく、タンタルを主成分とする組成物も含まれる。その代表例として、タンタルを主成分とする合金があげられる。主成分とは50%より多い成分であることを意味する。これらタンタルを主成分とする粉体は、一般に入手できるタンタル化合物より製造することができる。たとえば、ハロゲン化タンタルのマグネシウムやナトリウムによる還元、フッ化タンタル酸カリウムのナトリウム還元、フッ化タンタル酸カリウムのニッケル陰極上への溶融塩(NaCl+KCl)電解、タンタルの五酸化物のアルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素または水素による還元、タンタルインゴットへの水素導入後の粉砕・脱水素等によって、タンタル粉を得ることができる。
【0007】
このようにして得たタンタル粉を、さらに加工してもよい。加工方法としては、例えば、粉体を500℃〜2000℃の高温真空下に放置した後、湿式または乾式解砕する方法、アクリル樹脂やポリビニルアルコール等の適当なバインダーと粉体を混合した後解砕する方法、アクリル樹脂や樟脳等の適当な化合物と混合した後高温真空下に放置し、その後湿式または乾式解砕する方法等があげられる。
【0008】
最終的な粉体の粒径は、通常、平均粒径で10μm〜300μmのものが使用される。平均粒子径は、例えば、粉砕後分級して、または粉砕後に粉砕前の粉体を適量混合して、任意に調整可能である。
【0009】
前記タンタル粉体は、一部窒化した粉体であっても良い。該粉体から焼結体を作製し、後記するように該焼結体の表面に誘電体を形成して、小さいLC値とするには、窒化量は10〜100000質量ppmが好ましく、300〜7000質量ppmがさらに好ましい。ここで窒化量とは、粉体に吸着した窒素ではなく、タンタルと反応して窒化物を形成した窒素量の焼結体中の割合である。
【0010】
粉体の窒化は、上記いずれの工程のタンタル粉に対して行ってもよい。窒化は、液体窒化、イオン窒化、ガス窒化などの方法のうちいずれかあるいはそれらを組み合わせた方法で実施することができる。
【0011】
窒素ガス雰囲気によるガス窒化処理は、装置が簡便で操作が容易なため好ましい。たとえば窒素ガス雰囲気によるガス窒化方法は、前記粉体を窒素雰囲気中に放置することによって達成される。窒化する雰囲気温度は、2000℃以下、放置時間は、数時間以内で目的とする窒化量の粉体が得られる。高温で処理することにより処理時間を短くすることができる。前記粉体の窒化量は、被窒化物の窒化温度と窒化時間を予備実験等で確認した条件で管理することができる。
【0012】
本発明の焼結体は、前述した粉体を焼結して製造する。焼結体の製造方法の1例を以下に示す。なお、焼結体の製造方法は、この例に限定されるものではない。
【0013】
例えば、粉体を所定の形状に加圧成形した後、10-1〜10-4Paで、数分〜数時間、500〜2000℃で加熱して得られる。加圧成形時の圧力は、粉体の成形が可能な圧力以上で、得られる焼結体の細孔直径分布ピークが1つになる圧力より小さくする。この圧力範囲は、粉体の性状や用いる加圧成形機等の条件により異なるが、予備実験により決定出来る。
【0014】
このような方法で得られた成形体を、例えば、1300℃で焼結した場合、焼結体のCV値(0.1質量%燐酸水溶液中で、80℃120分化成した場合の化成電圧値と120Hz容量との積)は、40000〜200000μFV/gとなる。
【0015】
このようにして得た本発明の焼結体は、複数のピークよりなる細孔直径分布を持つ。複数のピークの内、相対強度の大きい2つのピークの細孔直径が、それぞれ0.2〜0.7μm及び0.7〜3μmである。好ましくはそれぞれ0.2〜0.7μm及び0.9〜3μmであり、この場合、該焼結体から作製したコンデンサの耐湿性は良好になる。さらに、これら2つのピークのうち、大径側のピークの相対強度が大きい場合、より耐湿性が良好なコンデンサとなるため特に好ましい。なお、相対強度は累積細孔容積の微分値である。
【0016】
このように作製した本発明の焼結体の比表面積は、一例として0.2m2/g以上で7m2/g以下になる。
【0017】
一般的に、焼結体の形状が大きいほど対電極の含浸が困難になるので、本発明の焼結体は、大きい焼結体を必要とするコンデンサに好ましく適用でき、該焼結体の大きさが10mm3以上である場合特に有効である。
【0018】
また、本発明の焼結体は、一部窒化されていても良い。焼結体の窒化は前述した粉体の窒化と同様の方法で行うことができる。窒化量(濃度)も前述した粉体の窒化量と同程度が好ましい。
【0019】
焼結体を作製するタンタル粉の一部を窒化しておき、さらに該粉体から作製した焼結体の一部を窒化することも可能である。
【0020】
通常、本発明の焼結体は、タンタル粉に含まれている自然酸化酸素と焼結後に自然酸化したことによって加わった酸素が、500〜70000質量ppm含まれている。また、本発明の焼結体中のタンタル、該タンタルとの合金形成元素、酸素、窒素以外の元素の含有量は、400質量ppm以下である。
【0021】
本発明の焼結体の作製時に、適当な形状・長さの、ニオブやタンタル等の弁作用金属からなるリードワイヤーを用意し、前述した粉体の加圧成形時に該リードワイヤーの一部が成形体の内部に挿入されるように一体成形して、該リードワイヤーを前記焼結体の引き出しリードとなるように設計することもできる。
【0022】
前述した焼結体を一方の電極とし対電極の間に介在した誘電体とからコンデンサを製造することができる。コンデンサの誘電体として酸化タンタルを主成分とする誘電体があげられる。例えば、酸化タンタルを主成分とする誘電体は、一方の電極であるタンタル焼結体を電解液中で化成することによって得られる。タンタル電極を電解液中で化成するには、通常プロトン酸水溶液、例えば、0.1%酢酸水溶液または硫酸水溶液を用いて行われる。タンタル電極を電解液中で化成して酸化タンタルを主成分とする誘電体を得る場合、本発明のコンデンサは電解コンデンサとなり、タンタル焼結体側が陽極となる。
【0023】
一方、本発明のコンデンサの対電極として、例えば、アルミ電解コンデンサ業界で公知である電解液、有機半導体および無機半導体から選ばれた少なくとも1種の化合物があげられる。
【0024】
電解液の具体例としては、イソブチルトリプロピルアンモニウムボロテトラフルオライド電解質を5質量%溶解したジメチルホルムアミドとエチレングリコールの混合溶液、テトラエチルアンモニウムボロテトラフルオライドを7質量%溶解したプロピレンカーボネートとエチレングリコールの混合溶液などが挙げられる。
【0025】
有機半導体の具体例としては、ベンゾピロリン4量体とクロラニルからなる有機半導体、テトラチオテトラセンを主成分とする有機半導体、テトラシアノキノジメタンを主成分とする有機半導体、下記式(1)または(2)で表わされる繰り返し単位を含む高分子にドーパントをドープした電導性高分子を主成分とした有機半導体があげられる。
【化3】

【0026】
式中、R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1乃至10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、アルコキシ基あるいはアルキルエステル基、またはハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、1級、2級もしくは3級アミノ基、CF3基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基を表わす。R1とR2及びR3とR4の炭化水素鎖は互いに任意の位置で結合して、かかる基により置換を受けている炭素原子と共に少なくとも1つ以上の3〜7員環の飽和または不飽和炭化水素の環状構造を形成する二価鎖を形成してもよい。前記環状結合鎖には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノの結合を任意の位置に含んでもよい。Xは酸素、硫黄または窒素原子を表わし、R5はXが窒素原子の時のみ存在して、独立して水素または炭素数1乃至10の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基を表わす。
【0027】
さらに、本発明においては、前記式(1)で表わされる繰り返し単位を含む電導性高分子として、好ましくは下記式(3)で示される構造単位を繰り返し単位として含む電導性高分子が挙げられる。
【化4】

【0028】
式中、R6及びR7は、各々独立して水素原子、炭素数1乃至6の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル基、または該アルキル基が互いに任意の位置で結合して、2つの酸素元素を含む少なくとも1つ以上の5〜7員環の飽和炭化水素の環状構造を形成する置換基を表わす。また、前記環状構造には置換されていてもよいビニレン結合を有するもの、置換されていてもよいフェニレン構造のものが含まれる。
【0029】
このような化学構造を含む電導性高分子は、荷電されており、ドーパントがドープされる。ドーパントには公知のドーパントが制限なく使用できる。
【0030】
式(1)乃至(3)で表わされる繰り返し単位を含む高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリオキシフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリピロール、ポリメチルピロール、およびこれらの置換誘導体や共重合体などが挙げられる。中でもポリピロール、ポリチオフェン及びこれらの置換誘導体(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)等)が好ましい。
【0031】
無機半導体の具体例としては、二酸化鉛または二酸化マンガンを主成分とする無機半導体、四三酸化鉄からなる無機半導体などがあげられる。このような半導体は、単独でも、または2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0032】
上記有機半導体および無機半導体として、電導度10ー2〜103S/cmの範囲のものを使用すると、作製したコンデンサのインピーダンス値がより小さくなり、高周波での容量をさらに一層大きくすることができる。
【0033】
さらに対電極が固体の場合には、その上に外部引き出しリード(例えば、リードフレーム)との電気的接触をよくするために、導電体層を設けてもよい。
【0034】
導電体層は、例えば、導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フイルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましいが、これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。導電ペーストを適用した後、空気中に放置するか、または加熱して固化せしめる。メッキとしては、ニッケルメッキ、銅メッキ、銀メッキ、アルミメッキ等があげられる。また蒸着金属としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀等があげられる。
【0035】
具体的には、例えば対電極上にカーボンペースト、銀ペーストを順次積層しエポキシ樹脂のような材料で封止してコンデンサが構成される。このコンデンサは、前記焼結体と一体に焼結成形された、または後で溶接されたニオブまたはタンタルリードを有していてもよい。
【0036】
以上のような構成の本発明のコンデンサは、例えば、樹脂モールド、樹脂ケース、金属製の外装ケース、樹脂のディッピング、ラミネートフイルムによる外装などの外装により各種用途のコンデンサ製品とすることができる。
【0037】
また、対電極が液体の場合には、前記両極と誘電体から構成されたコンデンサを、例えば、対電極と電気的に接続した缶に収納してコンデンサが形成される。この場合、焼結体の電極側は、前記したタンタルまたはニオブリードを介して外部に導出すると同時に、絶縁性ゴムなどにより、缶との絶縁がはかられるように設計される。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を具体例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例により何等限定されるものではない。
【0039】
下記の例において、タンタル焼結体の窒素および酸素含有量は、LECO社製の窒素・酸素分析計を用いて求めた。
焼結体の細孔径分布は、島津製作所製のAutopore9200で測定した。
コンデンサの容量は、ヒューレットパッカード社製LCRメーターで測定した。
焼結体のCV値は、0.1%酢酸水溶液中で20V印加、80℃、200分化成した後に、30%硫酸中で測定した容量と、化成電圧20Vとの積から求めた。
容量出現率は、前記した条件で1000分間化成したときの30%硫酸中での容量を100%として、コンデンサ形成後の容量との比で表現した。
コンデンサの耐湿値は、作製したコンデンサを、60℃95%RHで500時間放置したときの容量が、初期値の110%未満および120%未満の個数で表現した。110%未満の個数が多いほど、耐湿性は良好と判断した。容量出現率および耐湿値を求めるための試料数は、各例とも30個とした。
粒子径測定は、マイクロトラック社製 HRA 9320−X100を用い粒度分布をレーザー回折散乱法で測定した。その累積体積%が、50体積%に相当する粒径値(D50;μm)を平均粒子径とした。
【0040】
実施例1〜6:
タンタルインゴットの水素化物を粉砕し脱水素することにより平均粒径0.7μmの一次粒子を得た。該一次粒子を焼成後粉砕することを複数回繰り返してタンタルの造粒粉を得た。さらに該造粒粉0.15gを、別途用意した長さ10mm、太さ0.30mmのタンタル線と共に金型に入れ、成形機で表1に示した加重(N)を加えることにより加圧し、大きさ4.0×3.5×1.8mmの成形体を作製した。ついで1300℃で30分焼結して表1に示した焼結体を得た。
実施例1の焼結体の大きさ、比表面積、CV値は、各々順に、23.7mm3、0.8m2/g、52000μFV/gであり、他の実施例1の対応する各数値も実施例1の±3%以内であった。
【0041】
実施例7〜9:
実施例1〜3で、一次粒子を分級することにより一次粒子の平均粒径を0.5μmとした以外は、実施例1〜3と同様にして焼結体を得た。実施例7の焼結体の大きさ、比表面積、CV値は各々順に、24.9mm3、1.1m2/g、69000μFV/gであり、他の例の各数値も実施例7の±1%以内であった。
【0042】
比較例1〜3:
実施例1〜3で使用したタンタル造粒粉の代わりに、フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元して得たタンタル粉を1100℃で熱処理して得たタンタル粉とした以外は実施例1〜3と同様にして焼結体を作製した。作製した比較例1の焼結体の大きさ、比表面積、CV値は各々順に、24.3mm3、0.8m2/g、53000μFV/gであり、他の比較例の諸数値も比較例1の±2%以内であった。作製した焼結体の細孔直径分布を表1に記載した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜9および比較例1〜3で作製した焼結体と同様な焼結体を各々60個作製し、各焼結体を、0.1%燐酸水溶液中で80℃、1000分間、20Vで化成し焼結体表面に誘電体酸化皮膜層を形成した。次に該化成済み焼結体を各々30個づつに分け、各30個組の焼結体に表2に示したA、Bの2種類の陰極剤を含浸させた後、カーボンペースト、銀ペーストを順に積層し、エポキシ樹脂で封口してチップ型コンデンサを作製した。作製したコンデンサの容量出現率および耐湿値を表3に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
表1および表3を比較することにより、本発明のタンタル焼結体は、該焼結体の細孔直径分布が、複数のピークを持つために、容量出現率が大きく耐湿性能が良好なコンデンサを作製できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の複数のピークを有する細孔径分布を持つタンタル焼結体、特に、複数のピークの内、相対強度の大きい方から2つのピークの細孔直径が、それぞれ0.2〜0.7μm及び0.7〜3μmであるタンタル焼結体をコンデンサに用いると、容量出現率が大きく耐湿値が良好なコンデンサを作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタルの粉体を加圧成形した後、焼結するタンタル焼結体の製造方法において、加圧成形時の圧力が、前記粉体の成形が可能な圧力以上で、得られる焼結体の細孔直径分布ピークが1つになる圧力より小さい範囲であることを特徴とするタンタル焼結体の製造方法。
【請求項2】
焼結温度が、500〜2000℃である請求項1に記載のタンタル焼結体の製造方法。
【請求項3】
タンタルの粉体が、タンタルの一次粒子を焼成後粉砕した造粒粉である請求項1または2に記載のタンタル焼結体の製造方法。
【請求項4】
タンタルの一次粒子を焼成後粉砕することを複数繰り返す請求項3に記載のタンタル焼結体の製造方法。
【請求項5】
タンタルの粉体の平均粒径が、10μm〜300μmである請求項3に記載のタンタル焼結体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の方法で得られた焼結体を電極とし、その表面上に誘電体を形成し、この誘電体上に対電極を形成するコンデンサの製造方法。

【公開番号】特開2009−239312(P2009−239312A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167469(P2009−167469)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【分割の表示】特願2003−535215(P2003−535215)の分割
【原出願日】平成14年9月30日(2002.9.30)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】