説明

タンニン系接着剤、及びそれを用いた木質系複合材料

【課題】タンニン系接着剤の反応性を高め、硬化時間ひいては熱圧成形時間を短縮して生産性を高め、また、従来のタンニン系接着剤に比しより低温でも硬化時間ひいては熱圧成形時間を同等とし、省エネを図ることの可能なタンニン系接着剤、該タンニン系接着剤を用いた実用強度に優れた木質系複合材料を提供する。
【解決手段】タンニン系接着剤を、タンニンまたは変性タンニンと、架橋剤または硬化剤と、弱酸強アルカリ塩とが配合されてなるものとし、木質系複合材料を、複数の木質系成形材料が上記タンニン系接着剤によって互いに接着されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンニン系接着剤、及びそれを用いた木質系複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系成形材料として木材を破砕した細長い木質チップを得たのち、この木質チップに接着剤を付着させ、木質チップをその長手方向に略揃えて配向させてマット状に積層して木質マットを形成し、この木質マットを加熱加圧することによって、木質系複合材料を得る方法が知られ、得られる木質系複合材料は、木質チップを配向させることによって曲げ強度が高くなる(例えば、特許文献1参照)。
上記のように木質チップが接着剤で結合されてなる木質系複合材料としては、例えば、単板積層材(LVL)、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、ハードボード等が挙げられる。
しかしながら、従来の上記木質系複合材料は、使用される木質チップが植物資源からなり再生可能な資源材料であるものの、木質チップを結合させるための接着剤には、再生可能な天然資源ではない、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂などの石油系材料が主原料として一般的に用いられている。したがって、得られる木質系複合材料は、循環型材料とは言えない。
【0003】
このような問題を解決する方法として、例えば、使用済みの廃木材を、リサイクル使用するために破砕機で破砕されて分級された細長い木質チップと、天然成分由来のタンニン系接着剤を混和し、加熱して、硬化させた接着剤で木質チップ同士を結合させることによって、再生可能な資源を原料とする天然型資源からなる木質系複合材料を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、これらのタンニン系接着剤を使用する場合、接着剤を塗布等により被着させた木質チップ等の木質系成形材料を熱圧成形して木質系複合材料とするに際し、熱盤を用いるのが簡便ではあるものの、熱盤で厚物の複合材料を製造する場合には、例えば、一対の熱盤間に配設された、木質チップ等を配向、積層させてなる木質マットに対し、その央部までも温度を十分に上げるには時間がかかるなどの問題があり、スチームプレスを併用しなければ難しいという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−107507号公報
【特許文献2】特許第3515099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来のタンニン系接着剤の問題点に鑑み、木質材を、該接着剤を用いて熱圧成形し、接着剤を硬化させ、接着一体化させて木質複合材とするに際し、厚物の複合材料を製造する場合であっても、スチームプレスを併用することなしに、特に熱盤での圧締による場合であっても、被圧締物、例えば木質マット等の央部の温度を所望の程度まで上げるのに時間がかかるなどの問題点を解消し、タンニン系接着剤の反応性を高め、硬化時間ひいては熱圧成形時間を短縮して生産性を高め、また、従来のタンニン系接着剤に比しより低温でも硬化時間ひいては熱圧成形時間を同等とし、省エネを図ることの可能なタンニン系接着剤、及び該タンニン系接着剤を用いた実用強度に優れた木質系複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、タンニン系接着剤を、タンニンまたは変性タンニンと、架橋剤または硬化剤と、弱酸強アルカリ塩とが配合されてなるものとすることにより、上記課題が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、タンニンまたは変性タンニンと、架橋剤または硬化剤と、弱酸強アルカリ塩とが配合されてなることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、弱酸強アルカリ塩の陽イオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属に由来することを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、上記陽イオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはカルシウムイオンに由来することを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、架橋剤または硬化剤が、第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物及びアミノ樹脂の中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、第三級アミンがヘキサメチレンテトラミンであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第4または5の発明において、メチロール基を有する化合物が、トリスヒドロキシメチルニトロメタンであることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、さらに、pHが10より大きく13以下に調整されていることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0014】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、架橋剤または硬化剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニンに対し、質量基準で1〜20%であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0015】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、弱酸強アルカリ塩の含有割合がタンニンまたは変性タンニンに対し、質量基準で5〜50%であることを特徴とするタンニン系接着剤が提供される。
【0016】
また、本発明の第10の発明によれば、複数の木質系成形材料が第1〜9のいずれかの発明のタンニン系接着剤によって互いに接着されていることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0017】
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする木質系複合材料が提供される。
【0018】
また、本発明の第12の発明によれば、第10または11の発明の木質系複合材料を用いることを特徴とする構造材が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の接着剤によれば、その反応性を高め、硬化時間ひいては熱圧成形時間を短縮して生産性を高めうるし、また、従来のタンニン系接着剤に比しより低温でも硬化時間ひいては熱圧成形時間を同等とし、省エネを図りうるなどの顕著な効果が奏される。
【0020】
また、本発明の木質系複合材料によれば、複数の木質系成形材料が、本発明の接着剤によって互いに接着され、天然資源を主原料としているので、再生可能になるとともに、タンニン系接着剤には有害な触媒などが用いられていないので、有害物、例えば揮発性物質等が発生しないという顕著な効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の接着剤において主組成成分として用いられるタンニンは、木材からの抽出物であり、木質系成形材料との親和性が良く、適度な粘着性を有し、更に、硬化すると高強度になる。
タンニンが抽出される木材は特に限定されないが、ラジアータパインやミモザ(別称:ワットル、アカシア)、ケブラチョから採取される縮合型タンニンが好ましい。これらのタンニンは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
タンニンを抽出する樹木の樹齢は特に限定されるものではないが、例えばミモザの場合には樹齢8〜10年のものが接着剤としての性能や生産性から好ましい。生産地についても特に限定されるものではないが、例えばミモザの場合には南米やアフリカ産のものが好ましく、ケブラチョの場合には南米産のものが好ましい。
【0022】
タンニンには糖などの不純物が混入していても特に問題にはならないが、高強度の木質系複合材料を得ようとする場合には、不純物は少ない方がよい。タンニンの純度は例えばStiasny Value(以下、「SV」と記す)で評価することができ、SVは好ましくは50以上、より好ましくは70以上である。
なお、上記SVは、例えば以下のようにして求めることができる。
すなわち、予め乾燥した試料(樹皮抽出物、或いは標準カテキン)を、容量25mlの丸底フラスコに約100mg秤取り、蒸留水10ml、37%ホルムアルデヒド水溶液2ml、塩酸(10規定)1mlをこの順に添加した後、フラスコを加熱し、30分間沸騰させる。加熱後直ちに、予め質量を測定したガラスフィルターで試料を一気にろ過し、熱水、メタノールで順次洗浄する。ガラスフィルターを105℃のオーブンで一晩乾燥させ、質量を測定し、残渣質量を算出し、以下の式を用いて算出する。なお、値の補正のために、標準カテキンのSVも測定する。
SV=(残渣質量/試料質量)×(104.1/標準カテキンのSV)×100
【0023】
タンニンは、木材から抽出したままのものを用いてもよいが、接着剤としての性能や粘度等で改質の必要がある場合には変性して改質した変性タンニンとして用いてもよい。以下、タンニンや変性タンニンを総称して(変性)タンニンということもある。
(変性)タンニンは、粉体のまま取り扱ってもよいが、取扱いやすさや接着剤に用いて得られる木質系複合材料の性能等を考慮すると水に溶解又は分散させ液状で使用することが好ましい。この場合、(変性)タンニン濃度は20〜70質量%が好ましい。粘度については10,000cps以下が好ましく、木質系成形材料との混和を接着剤のスプレー塗布によって行う場合には2,000cps以下が取扱い易く好ましい。
【0024】
本発明の接着剤において用いられる架橋剤または硬化剤は、(変性)タンニンと混合し、加熱することにより硬化作用を呈するものであれば特に制限されず、このようなものとしては、例えば第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、中でも第三級アミンが、それを含む本発明接着剤を用いて得られる木質系複合材料について、それを強度及び耐水性に優れたものとしうるので好ましい。
【0025】
第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリエチルテトラミン、トリブチルアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族第三級アミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン等が挙げられる。
これらの第三級アミンは単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、ヘキサメチレンテトラミンを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
ヘキサメチレンテトラミンは粉体状のものでもペレット状のものでもどちらでもよい。
【0026】
メチロール基を有する化合物は、メチロール基を有する脂肪族化合物、メチロール基を有する脂環式化合物、メチロール基を有する芳香族化合物に大別されるが、タンニンとの反応性の高さからメチロール基を有する脂肪族化合物が好ましい。
メチロール基を有する脂肪族化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン(2−ヒドロキシメチル−2−アミノ−1,3プロパンジオール)、ジヒドロキシメチルアミノメタン(2−メチル−2−アミノ−1,3プロパンジオール)、トリスヒドロキシメチルニトロメタン(2−ヒドロキシメチル−2−ニトロ−1,3プロパンジオール)、ジヒドロキシメチルニトロメタン(2−メチル−2−ニトロ−1,3プロパンジオール)等が挙げられる。
これらのメチロール基を有する脂肪族化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、トリスヒドロキシメチルニトロメタンを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
トリスヒドロキシメチルニトロメタンは粉体状のものでもペレット状のものでもどちらでもよい。
【0027】
エポキシ基を有する化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えば、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらのエポキシ基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0028】
イソシアネート基を有する化合物としては、多官能性化合物が好ましく、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、αジメチルベンジルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
これらのイソシアネート基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよいが、ポリメリックMDIを用いるのが、後述の木質複合材料を高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価であるので、好ましい。
【0029】
アルデヒド基を有する化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒド、マレアルデヒド、フマルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
これらのアルデヒド基を有する化合物は単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0030】
アミノ樹脂としては、例えば、ユリア樹脂(尿素樹脂)、メラミン樹脂、メラミン・ユリア共縮合樹脂等が挙げられる。
これらのアミノ樹脂は単独で用いても2種類以上を併用してもよい
【0031】
本発明の接着剤において、架橋剤または硬化剤の含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは3〜10質量部である。この割合が少なすぎると(変性)タンニンの硬化が進行しにくく実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあるし、また、多すぎても硬化反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまう惧れがあり、また経済的でなくなることとなる。
【0032】
本発明の接着剤においては、さらに弱酸強アルカリ塩が配合されることが肝要である。
上記弱酸強アルカリ塩としては、炭酸アルカリ塩、炭酸水素アルカリ塩、燐酸アルカリ塩、亜硫酸アルカリ塩、酢酸アルカリ塩などが挙げられ、正塩の他、酸性塩であってもよく、強アルカリの陽イオンとして、アルカリ金属、アルカリ土類金属に由来するものが好ましく、さらに言えば、汎用性、価格の観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンが好ましい。さらに、入手のしやすさ、コスト等から言えば、弱酸強アルカリ塩として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩や、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩等が好ましい。
弱酸強アルカリ塩の配合により、緩衝作用の影響で、接着剤中のpHが安定し、その影響で、タンニン系接着剤の反応性が高められ、硬化時間が早められるようになり、或いは硬化温度を従来のタンニン系接着剤に比しより低温としても硬化時間を該接着剤と同等としうるようになる。
弱酸強アルカリ塩の含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。この割合が少なすぎると所期の効果が発現しにくくなるし、また、多すぎても接着剤全体に占めるタンニンの含有割合が下がってしまい接着強度が低くなってしまう惧れがある。
【0033】
本発明の接着剤においては、さらにレゾール型フェノール樹脂、界面活性剤及び炭化水素系ワックスから選ばれた少なくとも1種、中でもレゾール型フェノール樹脂及び界面活性剤の一方又は両方が配合されるのが好ましい。
【0034】
上記レゾール型フェノール樹脂は、上記架橋剤または硬化剤ともどもタンニンを架橋・硬化するための硬化剤として作用する。レゾール型フェノール樹脂と架橋剤または硬化剤を併用することでタンニン系接着剤の架橋構造(例えば、分子間距離、架橋密度)が適度なものとなり、その結果タンニン系接着剤の強度や耐水性が向上する。
本発明の接着剤においてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合、その含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、1〜50質量部、中でも5〜25質量部であるのが好ましい。この割合が少なすぎると添加効果が十分には発現されないし、また、多すぎても接着剤に占めるタンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなってしまう惧れがある。
【0035】
また、硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂を単独で用いた場合には、架橋密度が十分に上がらず、硬い硬化体となりにくく、接着剤として十分な強度と耐水性が発現しない。レゾール型フェノール樹脂は、上記架橋剤または硬化剤(中でも第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物、アミノ樹脂)と併用することにより、単独使用における欠点を補完し、接着剤として適度な架橋構造となり、タンニン系接着剤の強度や耐水性が向上する。その結果、タンニン系接着剤で木質材料を接着させて得られる木質系複合材料をより高強度なものとすることができ、生産性にすぐれ、有害な揮発性物質が発生せず、さらに材料コストが安価な木質系複合材料とすることができる。
【0036】
フェノール樹脂はノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂に大別され、その合成条件と化学的性質が異なる。本発明ではレゾール型フェノール樹脂を用いることで大きな効果が得られる。
レゾール型フェノール樹脂は一般的に、フェノールとホルムアルデヒドを、フェノールに対するホルムアルデヒドのモル比F/Pを1〜3の割合にして、塩基性の触媒下で反応させて製造され、触媒の種類、量、反応温度、反応時間、溶剤の種類などで用途に応じた処方がなされている。
レゾール型フェノール樹脂は特に特殊なものである必要はなく、一般的に紙含浸用や木材加工用に用いられているものであればよく、このようなものとしては、例えばJIS A 5908(パーチクルボード)に記載されているフェノール樹脂が挙げられる。レゾール型フェノール樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、300〜1000程度が好ましい。
レゾール型フェノール樹脂は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の接着剤においてレゾール型フェノール樹脂を用いる場合、その含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対して、1〜50質量部、中でも5〜25質量部であるのが好ましい。この割合が少なすぎるとタンニンの硬化が進行しにくく実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあり、また、多すぎても接着剤に占めるタンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなり、また硬化反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまう惧れがあるとともに、経済的でなくなる上に、接着剤の粘着性が高くなりすぎるために木質系成形材料との混和物が製造ラインに付着し、ライントラブルの原因になったり清掃頻度が高くなるので好ましくない。
【0038】
上記界面活性剤は、タンニン系接着剤の被着体への浸透力を高めると共に、表面張力を低下させて被着体との濡れ性を高める作用を示す。
一般的に接着剤に界面活性剤を添加することは、被着体と接着剤との接着界面に界面活性剤が作用し接着力の低下を引き起こす原因となるので接着剤の処方としては好ましくない。一方、タンニン系接着剤は粘度が高く、また凝集力も高いため、そのままでは被着体との濡れ性が良くなく、接着強度を十分に発現できない原因の一つとなっている。つまり、タンニン系接着剤の被着体との接着メカニズムは、被着体との化学結合によるものではなく、被着体の表面の凹凸や間隙にタンニン系接着剤が入り込んで硬化し、タンニン系接着剤の強い凝集力によるアンカー効果によって接着力が発現するものである。よって、タンニン系接着剤においては被着体との濡れ性が接着強度に与える影響が大きく、濡れ性を改善することが接着強度向上に大きく寄与する。
そこで、界面活性剤をあえて添加することで、タンニン系接着剤の濡れ性が改善され接着強度向上に結びつけられ、特に、被着体が木材の場合には、タンニン系接着剤は木材との濡れ性が極端に悪くて弾いてしまい均一に塗布できないことがあるが、界面活性剤を添加することによって木材表面との濡れ性が大幅に改善され、均一、且つ適度に木材内部まで浸透した接着界面ができ、結果として接着強度が向上する。
【0039】
界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、被着体への湿潤、浸透作用を高める効果があるものであればよい。このような界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤の種類はアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤であり、特にアニオン界面活性剤はタンニン系接着剤の濡れ性の改善効果が大きく、接着強度の向上効果も大きい。
界面活性剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の接着剤において界面活性剤を用いる場合、その含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対し、0.05〜10質量部、中でも0.1〜3質量部であるのが好ましい。この割合が少なすぎるとタンニン系接着剤の濡れ性改善効果が小さくて実用上十分な接着強度が発現しない惧れがあるし、また、多すぎても逆に接着強度を低下させてしまう惧れがあり、また経済的でない。
【0041】
上記炭化水素系ワックスは、炭化水素を主成分とするワックスであればよく、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックスや、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等の合成ワックス等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
炭化水素系ワックスは、防水性が高く、タンニン系接着剤の耐水性を向上させ、該接着剤を被着させて形成される接着層への水分の吸着や膨潤を大幅に低減することが可能になり、接着層の強度低下を抑制することが可能になり、その結果、かかる接着剤を用いた木質系複合材料の耐水性が大幅に向上し、高い耐水性が要求される広範な用途への展開が可能になる。
また、炭化水素系ワックスは、(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤との反応を阻害しないので好ましい。炭化水素系ワックス以外の極性基を有するワックスの場合には、極性基の種類によっては(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤の反応を阻害して十分な接着強度が発現しない場合がある。
(変性)タンニンを水溶液や水分散液にして用いる場合には炭化水素系ワックスはエマルションとして用いるのが好ましい。エマルションとすることで(変性)タンニンとの分散性が良くなり、その結果、接着剤の耐水性が向上する。
【0042】
本発明の接着剤において炭化水素系ワックスを用いる場合、その含有割合は、(変性)タンニン100質量部に対して、0.5〜40質量部、中でも1.0〜10質量部であるのが好ましい。この割合が少なすぎると実用上充分な耐水性が発現しない惧れがあり、また、多すぎても接着剤に占める(変性)タンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなる惧れがあるので好ましくない。
【0043】
本発明の接着剤においては、さらに易スリップ性表面改質剤が配合されるのが好ましい。
易スリップ性表面改質剤は、本発明の接着剤の塗布或いは混和された、木質チップ等の木質系成形材料について、それを配向積層させ木質マットを形成するに際し、その表面の摩擦抵抗を低下させ、自重による傾倒により左右方向の水平面内だけでなく、上下方向についても一方向に配列させるのを可能とし、また、木質チップ等の木質系成形材料の表面に付着させた接着剤の凝集力を増大させ、製造ラインを流れる間に飛散される粉塵量を大幅に抑制し、作業環境の悪化を低減するのを可能とする作用を示し、水性であるのが好ましく、その例の一つとして、アクリル酸系、アクリル酸エステル系、メタクリル酸系、メタクリル酸エステル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレン系、エチレン系、ブタジエン系、ビニルピリジン系、アクリロニトリル系、ウレタン系等の合成樹脂エマルションや、それらの変性物、例えばカルボキシル変性物、エーテル変性物、エステル変性物等や、共重合物などが挙げられ、中でもカルボキシル変性等の変性スチレンブタジェン系共重合体エマルション、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体エマルション、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルションなどが好ましい。
また、合成樹脂エマルションは、ガラス転移温度が通常−10〜30℃、好ましくは0〜20℃であるのがよい。この温度が低すぎても、また、高すぎても粉塵の発生を十分には抑えにくくなる。
【0044】
また、他の例として、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等の変性ポリシロキサン化合物などのシリコン系化合物が挙げられる。
易スリップ性表面改質剤として好ましくは、水性合成樹脂エマルションや変性ポリシロキサン化合物が用いられる。
易スリップ性表面改質剤は、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の接着剤において易スリップ性表面改質剤を用いる場合、その含有割合は、タンニンまたは変性タンニンに対し不揮発分として、配列の面からは、質量基準で通常0.01〜20%であって、シリコン系化合物の場合には、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.01〜1%、それ以外の場合には、好ましくは3〜15%、より好ましくは5〜10%であるのがよく、この割合が少なすぎると上下方向に充分に配向させることができず、また、多すぎても接着剤に占めるタンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなるし、また、粉塵抑止の面からは、質量基準で通常1〜20%、好ましくは3〜15%、より好ましくは5〜10%であり、この割合が少なすぎると粉塵の発生を十分には抑えにくくなるし、また、多すぎても接着剤に占めるタンニンの比率が下がってしまい、十分な硬化強度が得られにくくなる。
【0046】
また、本発明の接着剤には、必要に応じ、所期の目的を損なわない範囲で、この種接着剤に通常用いられる各種添加剤を含有させてもよい。この添加剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルエマルション、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルエマルション等の水溶性高分子;トルエン、キシレン、メタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の有機溶剤;フタル酸エステル等の可塑剤;造膜剤;クレー、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、マイカ、ケイ酸粉末等の体質顔料;小麦粉、コーンスターチ、木粉、ヤシ殻粉等の充填剤または増量剤;酸化チタン等の着色顔料;染料;増粘剤;粘性改質剤;分散剤;乳化剤;尿素等の湿潤剤;消泡剤;凍結防止剤;防腐剤;防かび剤;防虫剤;防錆剤、その他改質剤等を挙げることができる。さらに、本発明の接着剤には、強度の補強、粘性、機械的特性等を改善するために、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等やそのプレポリマー、そして澱粉、キトサン、リグニン、レゾルシノール等を含有させてもよい。
【0047】
本発明の接着剤において、(変性)タンニンと、架橋剤または硬化剤と、弱酸強アルカリ塩との混合順序は特に限定されず、(変性)タンニンと架橋剤または硬化剤を混合した後に弱酸強アルカリ塩を混合してもよいし、逆に、(変性)タンニンと弱酸強アルカリ塩を混合した後に架橋剤または硬化剤を混合してもよいし、また、架橋剤または硬化剤と弱酸強アルカリ塩を混合したものを、(変性)タンニンに混合してもよい。
【0048】
本発明のタンニン系接着剤として好ましくは、(変性)タンニンまたは、アルカリ性に調整されていてもよい(変性)タンニン水溶液又は水分散液に、架橋剤または硬化剤と弱酸強アルカリ塩との組合せを含む水性液を配合してなるものが挙げられる。
【0049】
本発明の接着剤は、pHがアルカリ性であるのがよく、さらにはpHが7より大きく13以下、中でも7より大きく12以下であるのが好ましい。
タンニンの水溶液は通常pH4〜7程度であるが、タンニン水溶液は、pHを調整することでタンニン系接着剤の反応性や物性を調整することができる。
本発明の接着剤においてpHをアルカリ性にすることによって、接着剤の反応速度を適度に遅延させることができ、接着剤の取り扱いがしやすくなり、また、接着剤を木質系成形材料に供して得られる木質複合材料について、その生産性と性能の向上に資するものとなる。これは、例えば、接着剤のpHが酸性の場合には、反応が早すぎてプレス機投入前に硬化してしまうことがあるのに対し、pHがアルカリ性であることから適度な反応速度となるために、接着剤配合後、プレス機に投入するまでには接着剤の硬化は起こらず、プレス機で加熱加圧した時に初めて硬化することに如実に示される。
また、接着剤のpHが酸性の場合には、接着剤を加熱硬化させる時に第三級アミンの過剰な分解が起こり有害な揮発性物質が発生する惧れがあるが、pHをアルカリ性にすることによって、接着剤を加熱硬化させる時に第三級アミンの過剰な分解が抑えられるので有害な揮発性物質が発生しにくくなる。また、レゾール型フェノール樹脂を用いる場合、pHが酸性の場合にはレゾール型フェノール樹脂の溶解性が悪くなり、(変性)タンニン水溶液又は水分散液と均一に混ざらずに分離してしまうことがあるが、pHをアルカリ性にすることによって分離することなく均一に混合することができる。接着剤のpHをアルカリ性にすることでこれらの効果が発現するわけであるが、pHを調整するアルカリとして水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いた場合には、pHが高くなるに従って接着剤の反応性が低くなる傾向があり、早い反応速度の望まれる用途には対応することが難しい。
本発明の弱酸強アルカリ塩を添加する配合においては、従来のpH調整方法である水酸化ナトリウムや水酸化カリウムとはまったく逆の傾向があり、弱酸強アルカリ塩を添加してアルカリ性を高くしながら反応性も高めることができる。
【0050】
また、pHをアルカリ性にすることでプレス時における木質系成形材料中のヘミセルロースの加水分解、ひいてはそれによる木質系成形材料の軟化が更に促進される。この軟化作用によって、低いプレス圧力でも木質チップの圧密が可能となり、製品の厚さ方向の密度を均一にすることができ、耐水性が良くなり、さらに、プレス時の圧力を下げることができるので好ましい。更にその結果として強度や耐水性などの製品性能が良くなる。
【0051】
もっとも、pHが13より大きくなり、アルカリ性が強くなりすぎると、取り扱いに注意する必要があるし、また、木材成分(例えば、ヘミセルロース)が軟化を通り越して一部分解して変性し、木質複合材料が黒く着色する惧れがあるので好ましくない。
タンニンが水溶液として供される場合、そのpHは架橋剤または硬化剤と混合する前に予め調整しておくことが好ましい。pHを調整するアルカリについては特に限定されないが、好ましくは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0052】
本発明のタンニン系接着剤は、木材チップ、ベニア等の木質系成形材料を相互に接着して、木質パネル等の木質系複合材料を製造するのに用いられる。
本発明の木質系複合材料は、複数の木質系成形材料が上記タンニン系接着剤によって互いに接着されていることで特徴付けられるものである。
木質系複合材料は、木質系成形材料とタンニン系接着剤とを混和して木質マットを形成させた後、この木質マットを、熱盤間で加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることによって製造することができる。
【0053】
木質系成形材料としては、特に限定されないが、木質チップが好ましい。木質チップの形状については特に限定されず、例えば、ブロック状、平板状、ストランド状、フレーク状、チップ、木粉、ファイバーなどが挙げられる。
木質系成形材料の原料材の樹種としては、スギ、ヒノキ、マツ、スプルース、ファーなどの針葉樹類や、シラカバ、アピトン、センゴンラウト、アスペンなどの広葉樹類が挙げられる。
【0054】
原料材の形態としては、上記樹種の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄される廃パレット材、建築解体時に発生する解体廃材等が挙げられる。特に、解体廃材、廃パレット材、間伐材、製材時に発生する端材、燃料や製紙用原料として使用される木質材料等のリサイクル材が好ましい。
【0055】
上記原料材を木質チップに加工する方法としては、ハンマーミル、表面に刃物のついたロールを回転させて木材を破砕する一軸破砕機、回転刃がかみ合った構造の二軸もしくは多軸破砕機等の破砕機が使用されるが、ベニア加工をしたものを割り箸状に切断してスチックにするロータリーカッター、丸太などを回転刃で切削してストランドにするフレーカー等も使用できる。特に原料としてリサイクル材料を使用する場合、異物が混入しやすいので回転刃の耐久性を考慮して、破砕機が好ましい。
【0056】
上記の方法で得られた木質チップはサイズのバラツキがあるので、分級工程によって所定のサイズに揃えるのが好ましい。
この際の分級方法としては、ローラースクリーン方式、振動メッシュ方式、風選方式等があり、必要に応じて使い分ければよい。
上記木質チップの大きさは特に限定されないが、強度・弾性率が必要な場合には長さを20mm以上150mm以下とするのが好ましい。長さが短すぎると製品の強度・弾性率が低くなってしまうし、また、長すぎても強度ばらつきが大きくなってしまう惧れがある。
【0057】
また、木質系成形材料は、予め含水率を一定範囲に調整しておくことが好ましい。すなわち、含水率を一定にすることで生産時の成形品の品質バラツキがなくなる。
木質系成形材料の含水率は、0〜14質量%に調整することが好ましく、さらにタンニン系接着剤を水溶液として使用する場合には0〜10質量%に調整することが好ましい。タンニン系接着剤を水溶液として使用する場合、含水率が10質量%を超えると製造直後の木質複合材料の含水率が高くなってしまい、出荷するまでに長期間の養生を必要とする惧れがある。
【0058】
含水率が調整された木質系成形材料は、上記接着剤と混和されるが、接着剤の混和量は、木質系成形材料の密度、形状、表面状態にもよるが、通常、木質系成形材料の質量に対して、タンニンの固形分で換算して1〜20質量%とすることが好ましい。
上記木質系成形材料と接着剤とを混和させる方法としては、木質系成形材料と接着剤をヘンシェルミキサー(ヘンシェル社製、高速混合機)のような高速ミキサーに投入して混和する方法が挙げられ、さらに、接着剤が液体の場合には、例えばコンベア上やドラムブレンダー内等で木質系成形材料に対し、スプレー塗布を施すなどして、木質系成形材料の表面に接着剤を付着させ、混和物とする方法等も挙げられ、また、木質系成形材料が板材やブロック状の部材の場合は、刷毛塗りやローラー塗り方法等も挙げられる。
このようにして得られた混和物は積層させて木質マットに形成され、木質マットを加熱及び加圧し、例えば加熱しながらプレス成形するなどして、接着剤を硬化させ、均一で安定した強度の木質系複合材料とすることができる。
【0059】
木質系成形材料を一方向に配向させる必要がある場合には、一定間隔に分割されたフォーミング型や、オリエンテッドストランドボード(OSB)等の製造で用いられるディスクオリエンター等の配向積層装置が用いられる。
【0060】
木質系複合材料は、上記のようにして木質マットを形成し、この木質マットを加熱及び加圧してタンニン系接着剤を硬化させることによって製造することができる。
すなわち、木質マットを加熱及び加圧するプレス装置の熱盤の間に配置して加圧及び加熱成形することが好ましい。加熱と加圧とは同時に行ってもよいし、加圧をした後に加熱をしてもよいし、加熱した後に加圧してもよい。加熱温度は100℃〜250℃が好ましい。加熱温度が低すぎるとタンニン系接着剤の硬化が十分に進まず、木質系複合材料の性能が十分に発現しないし、また、木質マットが厚い(おおよそ40mm以上)場合には、高温水蒸気を使用しない通常のプレス機ではマットの中心まで熱が伝わるのに時間がかかっていたが、本発明のタンニン系接着剤は、反応性が高く、それ故、硬化時間が早まるので、これまでのタンニン系接着剤使用の場合に比し、短時間でタンニン系接着剤の硬化を十分に進め、生産性を高めることができ、結果として木質系複合材料の性能を十分なものとすることができる。また、プレス装置による加圧圧力は、1〜10MPaが好ましい。また、加熱・加圧処理は、接着剤が硬化する時間だけ行えばよい。
【0061】
前記木質系複合材料は、種々の形状のものとすることができ、また、種々の用途に供することができ、例えばインシュレーションボード、パーティクルボード、ハードボード、配向性ボード(OSB)、ウェハーボード、中密度繊維板(MDF)等のいわゆる木質ボード類、合板、単板積層材(LVL)、集成材、突き板化粧板、構造材等として用いられ、特に構造材、例えば柱、梁、土台、根太、大引、桁、母屋、垂木、棟木、筋交い、火打などに適している。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により比較例と対比させながら本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
以下の実施例や比較例における接着剤の硬化時間(ゲルタイム)は、以下のとおりの測定方法により求めた。
<ゲルタイム>の測定方法
1)調製したタンニン接着剤を10g測り取り、20mlガラス製サンプル管に入れる
2)100℃のオイルバスにサンプル管を浸漬する
3)ステンレスのヘラで撹拌を続けながら、接着剤が硬化する時間を測定する
【0064】
実施例1
タンニンとしては、SV82のミモザタンニンを使用し、タンニン系接着剤を以下のようにして調製した。
先ず、タンニンの粉体を約40℃の温水に濃度40質量%になるように溶解させた。その後、濃度50質量%の水酸化ナトリウム水溶液でpH10に調整した。
次いで、タンニン100質量部(固形分)に対して弱酸強アルカリ塩として、炭酸カリウム粉末を30質量部添加し、さらにヘキサメチレンテトラミンの40質量%水溶液を、タンニン100質量部に対してヘキサメチレンテトラミンが10質量部になるように配合し、接着剤を調製した。
この接着剤の硬化時間(ゲルタイム)は9分であった。
【0065】
実施例2
炭酸カリウム粉末の添加量を20質量部に変えた以外は実施例1と同様にして接着剤を調製した。
この接着剤の硬化時間(ゲルタイム)は10分であった。
【0066】
比較例1
炭酸カリウムを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして接着剤を調製した。
この接着剤の硬化時間(ゲルタイム)は13分であった。
以上の各実施例と比較例より、実施例では、比較例に比し、硬化時間(ゲルタイム)が30%強、及び1/4弱短縮されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の接着剤は、その反応性が高められ、硬化時間ひいては熱圧成形時間が短縮されて生産性が高められるし、また、従来のタンニン系接着剤に比しより低温でも硬化時間ひいては熱圧成形時間を同等とでき、省エネが図れるので、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンニンまたは変性タンニンと、架橋剤または硬化剤と、弱酸強アルカリ塩とが配合されてなることを特徴とするタンニン系接着剤。
【請求項2】
弱酸強アルカリ塩の陽イオンが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属に由来することを特徴とする請求項1に記載のタンニン系接着剤。
【請求項3】
上記陽イオンが、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはカルシウムイオンに由来することを特徴とする請求項2に記載のタンニン系接着剤。
【請求項4】
架橋剤または硬化剤が、第三級アミン、メチロール基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、アルデヒド基を有する化合物及びアミノ樹脂の中から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
【請求項5】
第三級アミンがヘキサメチレンテトラミンであることを特徴とする請求項4に記載のタンニン系接着剤。
【請求項6】
メチロール基を有する化合物が、トリスヒドロキシメチルニトロメタンであることを特徴とする請求項4または5に記載のタンニン系接着剤。
【請求項7】
さらに、pHが10より大きく13以下に調整されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
【請求項8】
架橋剤または硬化剤の含有割合がタンニンまたは変性タンニンに対し、質量基準で1〜20%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
【請求項9】
弱酸強アルカリ塩の含有割合がタンニンまたは変性タンニンに対し、質量基準で5〜50%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のタンニン系接着剤。
【請求項10】
複数の木質系成形材料が請求項1〜9のいずれかに記載のタンニン系接着剤によって互いに接着されていることを特徴とする木質系複合材料。
【請求項11】
木質系成形材料が、木質チップであることを特徴とする請求項10に記載の木質系複合材料。
【請求項12】
請求項10または11に記載の木質系複合材料を用いることを特徴とする構造材。

【公開番号】特開2010−43236(P2010−43236A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238775(P2008−238775)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】