ターゲット供給装置、極端紫外光生成装置
【課題】ターゲット供給装置の性能を安定させる。
【解決手段】ノズル部86の下方に設けられ、第1の開口領域が形成された電極88と、ターゲット物質と電極88との間に電圧を印加する電源と、を備える。電極88の第1の開口領域は、ターゲット物質がノズル部86から重力方向に滴下するときにターゲット物質が第1の導電部材とは離間して通過するように形成されている。
【解決手段】ノズル部86の下方に設けられ、第1の開口領域が形成された電極88と、ターゲット物質と電極88との間に電圧を印加する電源と、を備える。電極88の第1の開口領域は、ターゲット物質がノズル部86から重力方向に滴下するときにターゲット物質が第1の導電部材とは離間して通過するように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット供給装置、及び極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
極端紫外光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO2010/137625
【特許文献2】特開2010−199560号公報
【特許文献3】米国特許7,122,816
【特許文献4】米国特許7,405,416
【概要】
【0005】
一実施形態に係るターゲット供給装置によれば、ターゲット物質を出力するノズルと、重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第1の開口領域が形成された第1の導電部材と、前記ターゲット物質と前記第1の導電部材との間に電圧を印加する電源と、を備えていてもよい。前記第1の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第1の導電部材とは離間して通過するように形成されていてもよい。
【0006】
一実施形態に係る極端紫外光生成装置によれば、チャンバと、前記チャンバ内にターゲット物質を出力する上記ターゲット供給装置と、パルスレーザ光を生成するレーザ装置と、前記レーザ装置によって生成されるパルスレーザ光を集光して、前記ターゲット供給装置から滴下されるターゲット物質に照射し、それによってターゲット物質をプラズマ化する集光光学系と、プラズマ化したターゲット物質から放射される極端紫外光を集光して出力する集光ミラーと、を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1A】図1Aは、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる場合について説明する図である。
【図1B】図1Bは、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる場合について説明する図である。
【図2】図2は、例示的なEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図3】図3は、第1の実施形態によるターゲット供給装置の構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。
【図4】図4は、第1の実施形態によるターゲット供給装置の先端部の部分拡大図である。
【図5】図5は、図4に示すターゲット供給装置のV−V面における断面図である。
【図6】図6は、開口領域の形状の一変形例を示す。
【図7A】図7Aは、第1の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、第1の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態のターゲット供給装置の構成の変形例を示す図である。
【図9】図9は、第1の実施形態のターゲット供給装置の構成の変形例における先端部の部分拡大図である。
【図10】図10は、図9の矢視Aから見た図である。
【図11】図11は、第2の実施形態による例示的なターゲット供給装置の構成を概略的に示す。
【図12】図12は、第2の実施形態のターゲット供給装置の先端部の部分拡大図である。
【図13】図13は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIII−XIII面における断面図である。
【図14】図14は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIV−XIV面における断面図である。
【図15A】図15Aは、第2の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。
【図15B】図15Bは、第2の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。
【実施形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
実施形態に関連し、以下の順に説明する。
1.概要
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.第1の実施形態のターゲット供給装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 変形例
3.3.1 変形例1
3.3.2 変形例2
4.第2の実施形態のターゲット供給装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
【0010】
1.概要
LPP方式のEUV光生成装置では、ターゲット供給装置は、例えば錫などのターゲット物質を、ノズルを介してチャンバ内に出力するように構成されてもよい。チャンバ内では、ターゲット物質の液滴(以下、適宜「ドロップレット」という。)にレーザ光を照射することによってターゲット物質をプラズマ状態とさせうる。ターゲット物質がプラズマ状態となったときに放射されるEUV光は、チャンバ内の集光ミラーによって所定の位置に集光されて露光装置へ出力されうる。このとき、露光装置側の要請に基づいて、所望の角度で露光装置へEUV光が出力されるように、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用することがある。
【0011】
EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用することがあるのは、以下の理由であり得る。つまり、仮にEUV光生成装置を傾斜させずにミラーを追加することでEUV光の露光装置への所望の出力角度を得たとすると、追加したミラーのために、露光装置へ出力されるEUV光の効率が大きく低下する場合があるためである。なお、EUV光生成装置を傾斜させて運用すると、ターゲット物質を出力するノズルも重力方向に対して傾斜され得る。そこで、EUV光生成装置を傾斜させた場合でもチャンバ内の所定のプラズマ生成領域(レーザ光の照射位置)にドロップレットが出力されるように、ターゲット物質を静電気力によって吸引するための静電吸引機構が設けられてもよい。静電吸引機構は、例えば、ノズルに対向して設けられ、ドロップレットが通過するための開口領域が形成された平板状の導電部材を電極として含みうる。
【0012】
ところで、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、ターゲット物質のドロップレットが重力方向に滴下することがあり得る。これは、大き過ぎるドロップレットに対して作用する力として、静電吸引機構による静電気力よりも重力が支配的となり、ドロップレットが重力方向に落下することが原因であると考えてもよい。その結果、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合に、ドロップレットがノズルの下方にある導電部材と接触して、導電部材に付着することがあり得る。ドロップレットが導電部材に付着すると静電気力を及ぼす電界が乱れることがあり得る。このため、正常なドロップレットが安定して出力できなくなる場合があり得る。
【0013】
ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる原因について、図1を参照して説明する。先ず第1に、図1Aに示すように、ノズルの先端領域がターゲット物質に対して濡れ性の高い状態であると、その濡れ性の高い部分によりターゲット物質に作用する表面張力が増加する。このため、静電気力によってターゲット物質を切り離すことができず、ノズルの先端部から突出したターゲット物質が大きく成長しうる。第2に、図1Bに示すように、静電吸引機構による静電気力が何らかの原因で予定した値より小さくなった場合には、ノズルの先端部のターゲット物質に作用する静電気力がターゲット物質に作用する表面張力よりも弱くなりうる。その場合、静電気力によりターゲット物質を切り離すことができず、ノズルの先端部のターゲット物質が成長して大きくなりうる。いずれの場合も、ノズルの先端部のターゲット物質が成長して非常に大きくなり、ターゲット物質に作用する重力が支配的となったときに重力方向にドロップレットとして落下し得る。
【0014】
上述した観点に鑑み、本願では、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合であっても、ターゲット物質のドロップレットが導電部材に付着することを回避するように構成されたターゲット供給装置が開示される。
【0015】
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
図2に、例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。図2に示すように、EUV光生成装置1は、レーザ装置30、集光光学系3、チャンバ2、ターゲット供給装置8、及び、チャンバ2と露光装置100との間に介在する接続部29を含んでもよい。図2に示すように、EUV光生成装置1は、全体として、重力方向に対して傾斜させて運用されてもよい。EUV光生成装置1が重力方向に対して傾斜させられるのは、露光装置100に対してEUV光を、所望の角度で出力することを目的としてもよい。
【0016】
ターゲット供給装置8は、ターゲット物質をドロップレットDLの形態で、チャンバ2内のプラズマ生成領域PGに向けて出力するよう構成されてもよい。ドロップレットDLの径は、例えば20〜30μmでもよい。なお、プラズマ生成領域PGは、ドロップレットDLがパルスレーザ光L1に照射されることによりプラズマ化して、そのプラズマからEUV光が放射される領域でもよい。ターゲット供給装置8は、ターゲット物質を収容するためのタンクと、タンク内のターゲット物質を出力するためのノズルとを備えてもよい。ターゲット供給装置8は、例えばチャンバ2の壁2aに取り付けられてもよい。ターゲット供給装置8から供給されるターゲット物質の材料は、錫、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0017】
EUV光生成装置1は、高電圧生成器7、圧力調節器9、及びガス貯蔵器10を含んでもよい。ガス貯蔵器10には、例えばアルゴンガス等の不活性ガスが貯蔵されており、圧力調節器9と連通していてもよい。圧力調節器9は、ガス貯蔵器10内の不活性ガスによって、タンク内のターゲット物質に所定の圧力を加え、それによりターゲット物質をノズルから突出させるよう構成されてもよい。
【0018】
ターゲット供給装置8は、高電圧生成器7を利用した静電吸引機構を備えてもよい。静電吸引機構において、高電圧生成器7は、ターゲット供給装置8のノズル先端からターゲット物質を静電気力によって切り離し、かつクーロン力によってターゲット物質のドロップレットDLを所望の方向に出力させるための電界を生成するための電圧を印加するよう構成されてもよい。なお、ターゲット供給装置8及び静電吸引機構については、後に詳述する。
【0019】
レーザ装置30は、ターゲット物質をプラズマ化するためのパルスレーザ光L1を出力するよう構成されてもよい。レーザ装置30は、例えばCO2パルスレーザ装置を含んでもよい。レーザ装置30の仕様は、例えば、波長10.6μm、出力20kW、パルス繰返し周波数30〜100kHz、パルス幅20nsとしてもよいが、これに限られない。なお、レーザ装置30は、CO2パルスレーザ装置以外の他のレーザ装置を含んでもよい。
【0020】
集光光学系3は、レーザ装置30から出力されるパルスレーザ光L1をプラズマ生成領域PGへ導くよう配置されてもよい。集光光学系3は、高反射ミラー31,32と、軸外放物面ミラー22と、平面ミラー23とを備えてもよい。集光光学系3を構成する光学要素の一部(図2の構成例では、軸外放物面ミラー22及び平面ミラー23)は、チャンバ2内に配置されてもよい。チャンバ2の壁2aには、少なくとも1つのウィンドウ21が設けられてもよく、パルスレーザ光L1は、ウィンドウ21を透過してもよい。
【0021】
チャンバ2には例えば図示しない排気ポンプが接続されてもよく、それによってチャンバ2内が例えば、10−3Pa程度の低圧状態または真空状態に維持されてもよい。チャンバ2内には、EUV集光ミラー25を支持するためのプレート24が設けられてもよい。プレート24には、貫通孔24aが形成されてもよく、ウィンドウ21を介してチャンバ2内に導入されるパルスレーザ光L1は、貫通孔24aを通過してもよい。
【0022】
EUV集光ミラー25の中央部には、貫通孔25aが設けられてもよく、貫通孔24aを通過したパルスレーザ光L1は、貫通孔25aを通過してもよい。EUV集光ミラー25の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されてもよい。EUV集光ミラー25は、第1及び第2の焦点を有してもよい。例えば、EUV集光ミラー25は、第1の焦点がプラズマ生成領域PGに位置し、かつ第2の焦点が中間集光点に位置するように、配置されることが好ましい。EUV集光ミラー25の反射表面は、例えば回転楕円面形状でもよいが、EUV集光ミラー25が所望の第1及び第2の焦点を備える限り、如何なる形状でもよい。
【0023】
チャンバ2内には、ターゲット供給装置8のノズルと対向する位置にドロップレットDLを回収するためのターゲット回収部26が設けられてもよい。また、チャンバ2内には、パルスレーザ光L1を吸収するためのビームダンプ27が設けられてもよい。ビームダンプ27によってパルスレーザ光L1を吸収することで、パルスレーザ光L1が直接、またはチャンバ2の内壁で反射されて、接続部29へ出力されるのを抑制してもよい。ビームダンプ27は、チャンバ2の内壁に取り付けられた支持部28によって所望の位置に固定されてもよい。
【0024】
接続部29は、チャンバ2の内部と露光装置100とを連通させるために設けられてもよい。接続部29は、チャンバ2の壁2aに設けられた貫通孔2bを介してチャンバ2の内部と連通するようにチャンバ2に接続されてもよい。接続部29内部には、アパーチャ291aが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、アパーチャ291aの中心位置がEUV集光ミラー25の第2の焦点位置(中間集光点)と一致するように配置されてもよい。
【0025】
EUV光生成装置1はさらに、ターゲットセンサ4、ターゲット制御装置5、及びEUV光生成制御装置6を含んでもよい。EUV光生成制御装置6は、マイクロコントローラを主要な要素として構成されてよく、EUV光生成装置1の制御を統括するよう構成されてもよい。EUV光生成制御装置6は、例えば、露光装置100のコントローラ(不図示)と通信可能に接続されてもよい。EUV光生成制御装置6は、露光装置100のコントローラからEUV光の出力要求を受けると、その出力要求に応じたEUV光が露光装置100へ出力されるように、EUV光生成装置1を制御するよう構成されてもよい。
【0026】
ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4による検出信号を受け入れ可能に構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、ターゲット供給装置8から出力されるドロップレットDLを検出するよう構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、所定の領域内におけるドロップレットの有無、軌道、速度、及び位置のうち少なくとも1つを検出するよう構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、ドロップレットを検出するための撮像装置(例えば、イメージセンサ等)を備えてもよい。
【0027】
ターゲット制御装置5は、レーザ装置30、高電圧生成器7、圧力調節器9、及びEUV光生成制御装置6と電気的に接続されてもよい。ターゲット制御装置5は、EUV光生成制御装置6からの供給指示信号に応じて、圧力調節器9を制御するよう構成されてもよい。圧力調節器9は、ターゲット供給装置8のタンク内のターゲット物質に加えられる圧力が、ターゲット物質をノズルから突出させるのに適切な圧力となるように、不活性ガスの圧力を制御するよう構成されてもよい。
【0028】
ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4の検出信号に基づき、ドロップレットDLがプラズマ生成領域PGに到達するタイミングでパルスレーザ光L1がドロップレットDLに照射されるように、レーザ装置30の発振タイミングを制御するよう構成されてもよい。例えば、ターゲット制御装置5は、レーザ装置30に対してレーザ装置30を発振させるためのトリガ信号を出力するように構成されてもよい。
【0029】
2.2 動作
図2を参照に、レーザ装置30から出力されたパルスレーザ光L1は、高反射ミラー31,32で反射され、ウィンドウ21を透過し、チャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光L1は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、軸外放物面ミラー22及び平面ミラー23でそれぞれ反射されて、少なくとも1つのドロップレットDLに集光されてもよい。
【0030】
ターゲット供給装置8は、ターゲット物質をドロップレットDLの形態でプラズマ生成領域PGに向けて出力するよう構成されてもよい。ターゲット供給装置8が適切に動作している場合、EUV光生成装置1が全体として重力方向に傾斜して配置されている場合であっても、ターゲット供給装置8の静電吸引機構によって、ドロップレットDLはプラズマ生成領域PGに向かって出力され得る。ドロップレットDLには、パルスレーザ光L1に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光L1が照射されたドロップレットDLはプラズマ化し、そのプラズマからEUV光L2が放射され得る。EUV光L2は、例えば13.5nmの波長の光を含んでもよい。EUV光L2は、EUV集光ミラー25によって選択的に反射されてもよい。EUV集光ミラー25で反射されたEUV光L2は、中間集光点に集光されてもよい。
【0031】
ターゲットセンサ4は、ターゲット供給装置8から出力されるドロップレットDLを検出し、その検出結果を逐次、ターゲット制御装置5へ送信してもよい。ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4からの検出結果に基づき、プラズマ生成領域PGにおいてドロップレットDLにパルスレーザ光L1が照射されるように、レーザ装置30を制御するよう構成されてもよい。ターゲット制御装置5は、パルスレーザ光L1の出力タイミング、進行方向等を制御するよう構成されてもよい。
【0032】
3.ターゲット供給装置の説明
3.1 構成
以下、図3〜図6を参照して、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の構成について説明する。図3は、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。図4は、ターゲット供給装置8の先端部E1の部分拡大図である。図5は、図4に示すターゲット供給装置8のV−V面における断面図である。図6は、開口領域の形状の一変形例を示す。
【0033】
図3に示すように、ターゲット供給装置8は、タンク81、ヒータ82、電極83、導入端子84、及び管85を含んでもよい。ターゲット供給装置8は、チャンバ2の壁2aに取り付けられてもよく、その先端部E1がチャンバ2内に突出してもよい。図3に示す構成の場合には、タンク81は、電気的絶縁材料で構成されることが好ましい。タンク81は、フランジ部81a、ターゲット物質TGが収容される収容部81c、及び収容部81cとノズル部86とを連通させる連通路81pを含んでもよい。フランジ部81aは、チャンバ2の壁2aの外側部分に、図示しない固定手段によって固定されてもよい。固定手段は、限定するものではないが、例えばボルト及びナットによる締結、溶接等でもよい。
【0034】
タンク81の周囲にはヒータ82が設けられてもよく、これによって収容部81c内のターゲット物質TGが溶融状態に維持されてもよい。ヒータ82は、ターゲット物質TGが錫の場合、収容部81c内の錫の温度が錫の融点よりも高い温度(例えば、300℃)となるように加熱可能なように構成されてもよい。ヒータ82の種類は、特に限定するものではないが、例えばセラミックヒータ等でもよい。
【0035】
図4及び図5に示すように、ターゲット供給装置8の先端部E1には、略円筒形状の絶縁部材87が設けられてもよい。絶縁部材87の一つの面には凹部87aが形成され、その反対側の面には開口断面積がそれぞれ異なる凹部87b,87cが連続的に形成されてもよい。絶縁部材87の凹部87aにはノズル部86とタンク81の端部とが順に嵌合し、絶縁部材87の凹部87bには第1の導電部材としての電極88が嵌合してもよい。これによって、ノズル部86と電極88とが対向し、かつ離間して配置されてもよい。
【0036】
電極88は、例えばモリブデン等の導電性材料を含んでもよく、その表面には、セラミックス等の絶縁材がコーティングされてもよい。ノズル部86の中央部は、絶縁部材87の凹部87c内に突出するように構成されてもよい。ノズル部86の突出した円錐部の頂点付近には、ターゲット物質を出力するための出力孔86aが設けられてもよい。出力孔86aの先端部は、ターゲット供給装置8の静電吸引機構において、ターゲット物質に電界を集中させるために、絶縁体で構成されてもよい。なお、ターゲット供給装置8において、タンク81、ノズル部86等、ターゲット物質が接触する部材は、ターゲット物質に対する耐浸食性を備えた材料で構成されることが好ましい。当該部材は、ターゲット物質が錫である場合、例えばセラミックス等で構成されてもよい。
【0037】
図3に示すように、電極83は、収容部81c内のターゲット物質の中に配置されてもよい。タンク81を貫通するように設けられる導入端子84を介して、電極83に接続される導線が高電圧生成器7へ接続されてもよく、それによって、電極83と高電圧生成器7とが電気的に接続されてもよい。チャンバ2の壁2aを貫通するよう設けられる導入端子201を介して、電極88に接続される導線が、壁2aとの絶縁が確保されつつ、高電圧生成器7へ接続されてもよい。それにより、電極88と高電圧生成器7とが電気的に接続されてもよい。
【0038】
図4及び図5に示すように、電極88は、出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るドロップレットDLの移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状に構成されてもよい。電極88には、第1の開口領域としての開口領域88aが形成されてもよい。図4及び図5に示すように、電極88は、ノズル部86の円錐部の中心軸CL上に、電極88の中心位置88cが位置するように配置されてもよい。
【0039】
図5に示すように、開口領域88aの一例として、円板形状の電極88の中心位置88cから周縁に向かって直線状に延びる開口領域88aが形成されてもよい。図6に示すように、開口領域88aの別の例として、中心位置88cから所定の径の略円形の開口部88kが設けられてもよい。この場合、開口部88kの径は、ドロップレットDLの出力方向がばらついた場合であっても、ドロップレットDLが電極88に接触しないように決定されてもよい。
【0040】
3.2 動作
次に、図3〜図7Bを参照して、ターゲット供給装置8の動作について説明する。図7A及び図7Bは、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。図3に示す構成において、ターゲット制御装置5は、高電圧生成器7及び圧力調節器9の動作タイミングを規定するための制御信号を送信するように構成されてもよい。
【0041】
ターゲット供給装置8の動作前の状態では、タンク81内の溶融状態のターゲット物質が、タンク81の連通路81p及びノズル部86の連通路86pを充満してもよい(図7Aの状態Sa)。ターゲット供給装置8の動作が開始されると、先ず、圧力調節器9は、ターゲット制御装置5からの制御信号に基づいて、ガス貯蔵器10から供給される不活性ガスの圧力を所定の圧力に調節してもよい。その結果、タンク81内のターゲット物質が加圧され、それによってノズル部86の出力孔86aでは、ターゲット物質が出力孔86aから突出し得る(図7Aの状態Sb)。この状態は、不活性ガスの加圧による力と、ターゲット物質に作用する重力と、ターゲット物質の先端部分に作用する表面張力とが釣り合った状態であり得る。
【0042】
次に、高電圧生成器7は、ターゲット制御装置5からの制御信号に基づいて、電極83と電極88との間に所定の電圧を断続的に印加してもよい。このとき、一例として、電極88に印加される電位をV2としたときに、電極83に印加される電位をV2→V1→V2→V1→…(V1>V2)と変化させてもよい。つまり、高電圧生成器7は、電極83と電極88との間に電圧(V1−V2)を断続的に印加してもよい。印加される電圧(V1−V2)の値は、例えば20kV程度でもよい。状態Sbにおいて出力孔86aから突出したターゲット物質には、上記電圧が印加されることにより生成される電界が集中しやすくなるため、電界による静電気力により、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質は、出力孔86aから離脱してドロップレットDLとして出力され得る。この時、ドロップレットDLは正に帯電してもよい(図7Aの状態Sc)。ノズル部86の出力孔86aの近傍のターゲット物質と電極88との間に生成される電界によるクーロン力が作用することで、ドロップレットDLは、中心軸CL(図4参照)の方向に出力されてもよい。
【0043】
なお、図5に示したように、電極88には開口領域88aが設けられてもよいが、その場合であっても、実質的には、電極88は、中心位置88cを通る中心軸CLに対してほぼ回転対称な導体として作用するのが好ましい。このとき、出力孔86aと電極88との間における電位分布は、中心軸CLを中心にほぼ回転対称に生じるのが好ましい。中心軸CL上に電極88の中心位置88cが位置している場合には、ドロップレットDLの出力方向は、中心軸CLの方向となり得る。すなわち、図2に示したように、EUV光生成装置1が全体として重力方向に対して傾斜して配置された場合でも、ドロップレットDLは、EUV光生成装置1の重力方向に対する傾斜角度に沿った方向に出力され得る。
【0044】
図7Bに示すように、ターゲット供給装置8が動作している間、高電圧生成器7によって電極83と電極88との間に電圧が印加されない期間T1と、電極83と電極88との間に所定の電圧が印加される期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。この場合、期間T1では、タンク81内のターゲット物質には、実質的に圧力のみが印加され、出力孔86aからターゲット物質が突出した状態となりうる(状態Sb)。期間T1では、ドロップレットDLが生成されなくてもよい。一方、期間T2では、タンク81内のターゲット物質に圧力が印加され、電極83と電極88との間に電圧が印加されて、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質が、静電気力によって出力孔86aから離脱してドロップレットDLとして出力され得る(状態Sc)。つまり、第1の実施形態によるターゲット供給装置8では、ターゲット物質が出力孔86aから突出した状態が生成される期間T1と、ドロップレットDLが生成されて出力される期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。以上が、ターゲット供給装置8が正常に動作している場合における動作である。
【0045】
一方、前述したように、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合に、ノズル部の出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、それが重力方向(図4における方向G)に滴下する場合がある。このとき、電極88は、出力孔86aから見た重力方向に開口領域88aが位置するよう配置されるのが好ましく、滴下したターゲット物質は、開口領域88aを通過し得る。つまり、重力方向に滴下したターゲット物質が電極88に接触しないように、電極88が配置されてもよい。そのため、第1の実施形態によるターゲット供給装置8では、ターゲット物質が電極88に付着する可能性を低減することができ、ドロップレットDLが正常に安定して出力される可能性が向上され得る。
【0046】
3.3 変形例
次に、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の変形例について説明する。
【0047】
3.3.1 変形例1
図3に示したターゲット供給装置8のタンク81は、電気的絶縁材料ではなく、伝導性材料で構成されてもよい。その場合におけるターゲット供給装置8の構成を図8に示す。図8に示すように、タンク81Aが伝導性材料で構成される場合、タンク81Aの外壁に電極83Aを取り付け、電極83Aと高電圧生成器7とを導線で接続してもよい。これによって、タンク81Aに導線を貫通させることなく、タンク81A内のターゲット物質TGを所定の電位とすることができる。なお、この構成では、図8に示すように、タンク81Aをチャンバ2から絶縁するために、タンク81Aのフランジ部81Aaとチャンバ2の壁2aとの間に、絶縁部材801を介在させるよう構成されてもよい。絶縁部材801は、例えば酸化アルミニウム焼結材等のセラミックスでもよい。
【0048】
3.3.2 変形例2
第1の実施形態によるターゲット供給装置8の先端部E1は、図4に示した構成に限られず、図9及び図10に示した構成を備えてもよい。図4に示した構成では、ノズル部86と電極88との間に介在する絶縁部材87が比較的薄く、かつノズル部86内のターゲット物質と電極88との間の電圧は非常に大きい(例えば20kV)ため、絶縁部材87の表面で沿面放電による絶縁破壊が生ずる場合がある。絶縁部材87において絶縁破壊が生じた場合には、ノズル部86内のターゲット物質と電極88との間に静電気力が生じ難くなるため、ドロップレットDLの生成が阻害される場合がある。かかる観点から、図9に示した構成において、絶縁部材87Aは、沿面放電による絶縁破壊が低減されるような絶縁距離を確保できる形状を有してもよい。図9及び図10に示した構成では、電極88Aは、支持部882及び取付部881を介して絶縁部材87Aに取り付けられてもよい。電極88と同様に、電極88Aは円板形状でもよく、その中心位置から周縁に向かって直線状に延びる開口領域88Aaが形成されてもよい。
【0049】
4.第2の実施形態のターゲット供給装置の説明
ターゲット供給装置からチャンバ内のプラズマ生成領域に出力されるドロップレット同士の間隔が短い場合には、1つのドロップレットにレーザ光が照射されて発生するデブリが、後続するドロップレットに悪影響を与える場合がある。例えば、1つのドロップレットから発生したデブリが後続するドロップレットに衝突して、後続するドロップレットの進行方向が変化させられることで、安定したEUV光の生成が阻害される場合がある。そこで、第2の実施形態では、ターゲット供給装置は、ターゲット供給装置から出力されたドロップレットを加速させ、ドロップレット同士の間隔を長く出来るように構成されてもよい。そこで、ターゲット供給装置に第2の静電吸引機構が設けられてもよい。
【0050】
4.1 構成
以下、図11〜図14を参照して、第2の実施形態によるターゲット供給装置8Aの構成について説明する。図11は、第2の実施形態によるターゲット供給装置8Aの構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。図12は、ターゲット供給装置8Aの先端部E1Aの部分拡大図である。図13は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIII−XIII面における断面図である。図14は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIV−XIV面における断面図である。図11〜図14において、図3〜図5に示したものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0051】
図12に示すように、ターゲット供給装置8Aでは、第1の実施形態における電極88に相当する電極88B(第1の導電部材)のドロップレット進行方向下流に、第2の導電部材としての電極89が設けられてもよい。ターゲット供給装置8Aは、電極88Bと電極89との間で電界を生じさせ、それによってドロップレットDLを加速させるための第2の静電吸引機構を備えてもよい。電界を生じさせるために、電極88Bと電極89との間に電圧を印加する電源を備えてもよい。または、図11に示すように、電極89を接地して電極88Bに接地電位以外の電圧を印加することで、電極89との間に電圧を生じさせてもよい。
【0052】
図12〜図14に示すように、ターゲット供給装置8Aの先端部E1Aには、略円筒形状の絶縁部材87Bが設けられてもよい。絶縁部材87Bの一つの面には凹部87Baが形成され、その反対側の面には開口断面積がそれぞれ異なる凹部87Bb,87Bcが連続的に形成されてもよい。凹部87Baにはノズル部86とタンク81の端部とが順に嵌合し、凹部87Bcには電極88Bが嵌合し、凹部87Bbには電極89が嵌合してもよい。これにより、ノズル部86と電極88Bとが対向し、かつ離間して配置されてもよい。また、電極88Bと電極89とが対向し、かつ離間して配置されてもよい。電極88B及び電極89は、例えばモリブデン等の導電性材料を含み、それらの表面には、セラミックス等の絶縁材がコーティングされてもよい。
【0053】
図12〜図14に示すように、電極88B及び電極89は、出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るターゲット物質の移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状でもよい。電極88B及び電極89には、それぞれ開口領域が形成されてもよい。すなわち、図13に示すように、電極88Bには第1の開口領域として開口領域88bが設けられ、図14に示すように、電極89には第2の開口領域として開口領域89aが設けられてもよい。図12〜図14に示すように、電極88B及び電極89は、中心軸CL上に電極88Bの中心位置88Bc及び電極89の中心位置89cがそれぞれ位置するように配置されてもよい。
【0054】
ここで、開口領域88bの一例として、中心位置88Bcから周縁に向かって直線状に延びる開口領域88bが形成されてもよい。同様に、電極89には、中心位置89cから周縁に向かって直線状に延びる開口領域89aが設けられてもよい。なお、図6に示した形状と同様に、開口領域88b及び開口領域89aの別の例として、中心位置88Bc及び89cから所定の径の円形の開口部がそれぞれ設けられてもよい。
【0055】
4.2 動作
次に、図11〜図15Bを参照して、ターゲット供給装置8Aの動作について説明する。図15A及び15Bは、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。なお、以下の説明では、主として、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の動作と異なる点について説明する。
【0056】
ターゲット供給装置8Aを動作させる前の状態において、図15Aの状態Saは、図7Aの状態Saと同様でもよく、図15Aの状態Sbは、図7Aの状態Sbと同様でもよい。状態Sa及び状態Sbでは、電極88Bと電極89との間にはドロップレットを加速させるため電圧が印加されても、印加されなくてもよい。
【0057】
次に、高電圧生成器7は、第1の実施形態と同様に、電極88Bに印加される電位をV2としたときに、電極83に印加する電位をV2→V1→V2→V1→…(V1>V2)と変化させてもよい。電極89は、V2よりもさらに低い電位V3(例えば、図11に示したようにグラウンド電位)に設定されてもよい。つまり、高電圧生成器7は、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)を断続的に印加し、電極88Bと電極89との間に電圧(V2−V3)を維持するように構成されてもよい。状態Sbにおいて、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)が印加されると、静電気力により、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質は離脱してドロップレットDLとして出力され得る(図15Aの状態Sc)。この時、ドロップレットDLは正に帯電してもよい。ドロップレットDLは、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)が印加されることによって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、中心軸CL(図4参照)の方向に出力されてもよい。また、ドロップレットDLは、開口領域88bを通過した後、電極88Bと電極89との間に印加される電圧(V2−V3)によって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、中心軸CLの方向に加速されてもよい(図15Aの状態Sd)。
【0058】
図15Bを参照に、ターゲット供給装置8Aを動作させている間、電極83と電極88Bとの間に電圧が印加されない期間T1と、電極83と電極88Bとの間に所定の電圧が印加される期間T2とが交互に繰り返されてもよい。この場合、期間T1では、実質的には、ターゲット物質には圧力のみが印加され、出力孔86aからターゲット物質が突出した状態となり得る(状態Sb)。一方、期間T2では、ターゲット物質に圧力が印加され、電極83と電極88Bとの間に電圧が印加され、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質が、静電気力によって出力孔86aから離脱して、ドロップレットDLとして出力され得る(状態Sc)。さらに、電極88Bと電極89との間に電圧が印加されることによって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、ドロップレットDLが加速されてもよい(状態Sd)。つまり、ターゲット供給装置8Aは、状態Sbの期間T1と、状態Sc及び状態Sdの期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。以上が、ターゲット供給装置8Aが正常に動作している場合の動作である。
【0059】
一方、前述したように、ノズル部の出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、それが重力方向(図12における方向G)に滴下する場合がある。このとき、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合には、電極88Bは、出力孔86aの重力方向下方に開口領域88bが位置するよう配置されるのが好ましく、滴下したターゲット物質は、開口領域88bを通過し得る。さらに、電極89は、出力孔86aの重力方向下方に開口領域89aが位置するよう配置されのが好ましく、開口領域88bを通過したターゲット物質は、開口領域89aを通過し得る。つまり、重力方向に滴下したターゲット物質が、電極88B及び電極89に接触しないように、電極88B及び電極89が配置されてもよい。そのため、第2の実施形態のターゲット供給装置8Aによれば、電極88Bまたは電極89にターゲット物質が付着する可能性を低減することができ、ドロップレットDLが正常に安定して出力され、十分に加速される可能性が向上し得る。
【0060】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、上述した実施形態では、ノズル部に対向して設けられた電極は、ノズル部の出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るターゲット物質の移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状に形成された場合について説明したが、本開示はこれに限られない。チャンバ内で任意の位置に設定したプラズマ生成領域へドロップレットを導くために、所望の方向に静電気力をターゲット物質に作用させるように、電極の形状を設定してもよい。かかる所望の方向は、ターゲット物質の移動経路と同軸であるとは限らない。電極の形状が如何なる形状であれ、ターゲット物質がノズル部から重力方向に滴下した際にターゲット物質が、電極に接触しないように開口領域を設定してよい。つまり、電極の開口領域は、ターゲット物質がノズル部から重力方向に滴下したときにターゲット物質が電極とは離間して通過するように形成されていればよい。
【0061】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1…EUV光生成装置、2…チャンバ、2a…壁、2b…貫通孔、201…導入端子、21…ウィンドウ、22…軸外放物線ミラー、23…平面ミラー、24…プレート、24a…貫通孔、25…EUV集光ミラー、25a…貫通孔、26…ターゲット回収部、27…ビームダンプ、28…支持部、29…接続部、291…壁、291a…アパーチャ、3…集光光学系、4…ターゲットセンサ、5…ターゲット制御装置、6…EUV光生成制御装置、7…高電圧生成器、8,8A…ターゲット供給装置、81…タンク、81a…フランジ部、81p…連通路、82…ヒータ、84…導入端子、85…管、86…ノズル部86a…出力孔、86p…連通路、83,83A,88,88A,88B,89…電極、87,87A,87B,801…絶縁部材、88a,88Aa,88b,89a…開口領域、881…取付部、882…支持部、9…圧力調節器、10…ガス貯蔵器、30…レーザ装置、31,32…高反射ミラー、100…露光装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット供給装置、及び極端紫外光生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、たとえば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
極端紫外光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマが用いられるDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光が用いられるSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO2010/137625
【特許文献2】特開2010−199560号公報
【特許文献3】米国特許7,122,816
【特許文献4】米国特許7,405,416
【概要】
【0005】
一実施形態に係るターゲット供給装置によれば、ターゲット物質を出力するノズルと、重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第1の開口領域が形成された第1の導電部材と、前記ターゲット物質と前記第1の導電部材との間に電圧を印加する電源と、を備えていてもよい。前記第1の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第1の導電部材とは離間して通過するように形成されていてもよい。
【0006】
一実施形態に係る極端紫外光生成装置によれば、チャンバと、前記チャンバ内にターゲット物質を出力する上記ターゲット供給装置と、パルスレーザ光を生成するレーザ装置と、前記レーザ装置によって生成されるパルスレーザ光を集光して、前記ターゲット供給装置から滴下されるターゲット物質に照射し、それによってターゲット物質をプラズマ化する集光光学系と、プラズマ化したターゲット物質から放射される極端紫外光を集光して出力する集光ミラーと、を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1A】図1Aは、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる場合について説明する図である。
【図1B】図1Bは、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる場合について説明する図である。
【図2】図2は、例示的なEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図3】図3は、第1の実施形態によるターゲット供給装置の構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。
【図4】図4は、第1の実施形態によるターゲット供給装置の先端部の部分拡大図である。
【図5】図5は、図4に示すターゲット供給装置のV−V面における断面図である。
【図6】図6は、開口領域の形状の一変形例を示す。
【図7A】図7Aは、第1の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。
【図7B】図7Bは、第1の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。
【図8】図8は、第1の実施形態のターゲット供給装置の構成の変形例を示す図である。
【図9】図9は、第1の実施形態のターゲット供給装置の構成の変形例における先端部の部分拡大図である。
【図10】図10は、図9の矢視Aから見た図である。
【図11】図11は、第2の実施形態による例示的なターゲット供給装置の構成を概略的に示す。
【図12】図12は、第2の実施形態のターゲット供給装置の先端部の部分拡大図である。
【図13】図13は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIII−XIII面における断面図である。
【図14】図14は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIV−XIV面における断面図である。
【図15A】図15Aは、第2の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。
【図15B】図15Bは、第2の実施形態のターゲット供給装置において、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。
【実施形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
実施形態に関連し、以下の順に説明する。
1.概要
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.第1の実施形態のターゲット供給装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 変形例
3.3.1 変形例1
3.3.2 変形例2
4.第2の実施形態のターゲット供給装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
【0010】
1.概要
LPP方式のEUV光生成装置では、ターゲット供給装置は、例えば錫などのターゲット物質を、ノズルを介してチャンバ内に出力するように構成されてもよい。チャンバ内では、ターゲット物質の液滴(以下、適宜「ドロップレット」という。)にレーザ光を照射することによってターゲット物質をプラズマ状態とさせうる。ターゲット物質がプラズマ状態となったときに放射されるEUV光は、チャンバ内の集光ミラーによって所定の位置に集光されて露光装置へ出力されうる。このとき、露光装置側の要請に基づいて、所望の角度で露光装置へEUV光が出力されるように、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用することがある。
【0011】
EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用することがあるのは、以下の理由であり得る。つまり、仮にEUV光生成装置を傾斜させずにミラーを追加することでEUV光の露光装置への所望の出力角度を得たとすると、追加したミラーのために、露光装置へ出力されるEUV光の効率が大きく低下する場合があるためである。なお、EUV光生成装置を傾斜させて運用すると、ターゲット物質を出力するノズルも重力方向に対して傾斜され得る。そこで、EUV光生成装置を傾斜させた場合でもチャンバ内の所定のプラズマ生成領域(レーザ光の照射位置)にドロップレットが出力されるように、ターゲット物質を静電気力によって吸引するための静電吸引機構が設けられてもよい。静電吸引機構は、例えば、ノズルに対向して設けられ、ドロップレットが通過するための開口領域が形成された平板状の導電部材を電極として含みうる。
【0012】
ところで、ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、ターゲット物質のドロップレットが重力方向に滴下することがあり得る。これは、大き過ぎるドロップレットに対して作用する力として、静電吸引機構による静電気力よりも重力が支配的となり、ドロップレットが重力方向に落下することが原因であると考えてもよい。その結果、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合に、ドロップレットがノズルの下方にある導電部材と接触して、導電部材に付着することがあり得る。ドロップレットが導電部材に付着すると静電気力を及ぼす電界が乱れることがあり得る。このため、正常なドロップレットが安定して出力できなくなる場合があり得る。
【0013】
ノズルの出力孔から突出するターゲット物質が大きくなり過ぎる原因について、図1を参照して説明する。先ず第1に、図1Aに示すように、ノズルの先端領域がターゲット物質に対して濡れ性の高い状態であると、その濡れ性の高い部分によりターゲット物質に作用する表面張力が増加する。このため、静電気力によってターゲット物質を切り離すことができず、ノズルの先端部から突出したターゲット物質が大きく成長しうる。第2に、図1Bに示すように、静電吸引機構による静電気力が何らかの原因で予定した値より小さくなった場合には、ノズルの先端部のターゲット物質に作用する静電気力がターゲット物質に作用する表面張力よりも弱くなりうる。その場合、静電気力によりターゲット物質を切り離すことができず、ノズルの先端部のターゲット物質が成長して大きくなりうる。いずれの場合も、ノズルの先端部のターゲット物質が成長して非常に大きくなり、ターゲット物質に作用する重力が支配的となったときに重力方向にドロップレットとして落下し得る。
【0014】
上述した観点に鑑み、本願では、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合であっても、ターゲット物質のドロップレットが導電部材に付着することを回避するように構成されたターゲット供給装置が開示される。
【0015】
2.EUV光生成システムの全体説明
2.1 構成
図2に、例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。図2に示すように、EUV光生成装置1は、レーザ装置30、集光光学系3、チャンバ2、ターゲット供給装置8、及び、チャンバ2と露光装置100との間に介在する接続部29を含んでもよい。図2に示すように、EUV光生成装置1は、全体として、重力方向に対して傾斜させて運用されてもよい。EUV光生成装置1が重力方向に対して傾斜させられるのは、露光装置100に対してEUV光を、所望の角度で出力することを目的としてもよい。
【0016】
ターゲット供給装置8は、ターゲット物質をドロップレットDLの形態で、チャンバ2内のプラズマ生成領域PGに向けて出力するよう構成されてもよい。ドロップレットDLの径は、例えば20〜30μmでもよい。なお、プラズマ生成領域PGは、ドロップレットDLがパルスレーザ光L1に照射されることによりプラズマ化して、そのプラズマからEUV光が放射される領域でもよい。ターゲット供給装置8は、ターゲット物質を収容するためのタンクと、タンク内のターゲット物質を出力するためのノズルとを備えてもよい。ターゲット供給装置8は、例えばチャンバ2の壁2aに取り付けられてもよい。ターゲット供給装置8から供給されるターゲット物質の材料は、錫、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又はこれらのうちのいずれか2つ以上の組合せを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0017】
EUV光生成装置1は、高電圧生成器7、圧力調節器9、及びガス貯蔵器10を含んでもよい。ガス貯蔵器10には、例えばアルゴンガス等の不活性ガスが貯蔵されており、圧力調節器9と連通していてもよい。圧力調節器9は、ガス貯蔵器10内の不活性ガスによって、タンク内のターゲット物質に所定の圧力を加え、それによりターゲット物質をノズルから突出させるよう構成されてもよい。
【0018】
ターゲット供給装置8は、高電圧生成器7を利用した静電吸引機構を備えてもよい。静電吸引機構において、高電圧生成器7は、ターゲット供給装置8のノズル先端からターゲット物質を静電気力によって切り離し、かつクーロン力によってターゲット物質のドロップレットDLを所望の方向に出力させるための電界を生成するための電圧を印加するよう構成されてもよい。なお、ターゲット供給装置8及び静電吸引機構については、後に詳述する。
【0019】
レーザ装置30は、ターゲット物質をプラズマ化するためのパルスレーザ光L1を出力するよう構成されてもよい。レーザ装置30は、例えばCO2パルスレーザ装置を含んでもよい。レーザ装置30の仕様は、例えば、波長10.6μm、出力20kW、パルス繰返し周波数30〜100kHz、パルス幅20nsとしてもよいが、これに限られない。なお、レーザ装置30は、CO2パルスレーザ装置以外の他のレーザ装置を含んでもよい。
【0020】
集光光学系3は、レーザ装置30から出力されるパルスレーザ光L1をプラズマ生成領域PGへ導くよう配置されてもよい。集光光学系3は、高反射ミラー31,32と、軸外放物面ミラー22と、平面ミラー23とを備えてもよい。集光光学系3を構成する光学要素の一部(図2の構成例では、軸外放物面ミラー22及び平面ミラー23)は、チャンバ2内に配置されてもよい。チャンバ2の壁2aには、少なくとも1つのウィンドウ21が設けられてもよく、パルスレーザ光L1は、ウィンドウ21を透過してもよい。
【0021】
チャンバ2には例えば図示しない排気ポンプが接続されてもよく、それによってチャンバ2内が例えば、10−3Pa程度の低圧状態または真空状態に維持されてもよい。チャンバ2内には、EUV集光ミラー25を支持するためのプレート24が設けられてもよい。プレート24には、貫通孔24aが形成されてもよく、ウィンドウ21を介してチャンバ2内に導入されるパルスレーザ光L1は、貫通孔24aを通過してもよい。
【0022】
EUV集光ミラー25の中央部には、貫通孔25aが設けられてもよく、貫通孔24aを通過したパルスレーザ光L1は、貫通孔25aを通過してもよい。EUV集光ミラー25の表面には、例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されてもよい。EUV集光ミラー25は、第1及び第2の焦点を有してもよい。例えば、EUV集光ミラー25は、第1の焦点がプラズマ生成領域PGに位置し、かつ第2の焦点が中間集光点に位置するように、配置されることが好ましい。EUV集光ミラー25の反射表面は、例えば回転楕円面形状でもよいが、EUV集光ミラー25が所望の第1及び第2の焦点を備える限り、如何なる形状でもよい。
【0023】
チャンバ2内には、ターゲット供給装置8のノズルと対向する位置にドロップレットDLを回収するためのターゲット回収部26が設けられてもよい。また、チャンバ2内には、パルスレーザ光L1を吸収するためのビームダンプ27が設けられてもよい。ビームダンプ27によってパルスレーザ光L1を吸収することで、パルスレーザ光L1が直接、またはチャンバ2の内壁で反射されて、接続部29へ出力されるのを抑制してもよい。ビームダンプ27は、チャンバ2の内壁に取り付けられた支持部28によって所望の位置に固定されてもよい。
【0024】
接続部29は、チャンバ2の内部と露光装置100とを連通させるために設けられてもよい。接続部29は、チャンバ2の壁2aに設けられた貫通孔2bを介してチャンバ2の内部と連通するようにチャンバ2に接続されてもよい。接続部29内部には、アパーチャ291aが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、アパーチャ291aの中心位置がEUV集光ミラー25の第2の焦点位置(中間集光点)と一致するように配置されてもよい。
【0025】
EUV光生成装置1はさらに、ターゲットセンサ4、ターゲット制御装置5、及びEUV光生成制御装置6を含んでもよい。EUV光生成制御装置6は、マイクロコントローラを主要な要素として構成されてよく、EUV光生成装置1の制御を統括するよう構成されてもよい。EUV光生成制御装置6は、例えば、露光装置100のコントローラ(不図示)と通信可能に接続されてもよい。EUV光生成制御装置6は、露光装置100のコントローラからEUV光の出力要求を受けると、その出力要求に応じたEUV光が露光装置100へ出力されるように、EUV光生成装置1を制御するよう構成されてもよい。
【0026】
ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4による検出信号を受け入れ可能に構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、ターゲット供給装置8から出力されるドロップレットDLを検出するよう構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、所定の領域内におけるドロップレットの有無、軌道、速度、及び位置のうち少なくとも1つを検出するよう構成されてもよい。ターゲットセンサ4は、ドロップレットを検出するための撮像装置(例えば、イメージセンサ等)を備えてもよい。
【0027】
ターゲット制御装置5は、レーザ装置30、高電圧生成器7、圧力調節器9、及びEUV光生成制御装置6と電気的に接続されてもよい。ターゲット制御装置5は、EUV光生成制御装置6からの供給指示信号に応じて、圧力調節器9を制御するよう構成されてもよい。圧力調節器9は、ターゲット供給装置8のタンク内のターゲット物質に加えられる圧力が、ターゲット物質をノズルから突出させるのに適切な圧力となるように、不活性ガスの圧力を制御するよう構成されてもよい。
【0028】
ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4の検出信号に基づき、ドロップレットDLがプラズマ生成領域PGに到達するタイミングでパルスレーザ光L1がドロップレットDLに照射されるように、レーザ装置30の発振タイミングを制御するよう構成されてもよい。例えば、ターゲット制御装置5は、レーザ装置30に対してレーザ装置30を発振させるためのトリガ信号を出力するように構成されてもよい。
【0029】
2.2 動作
図2を参照に、レーザ装置30から出力されたパルスレーザ光L1は、高反射ミラー31,32で反射され、ウィンドウ21を透過し、チャンバ2内に入射してもよい。パルスレーザ光L1は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、軸外放物面ミラー22及び平面ミラー23でそれぞれ反射されて、少なくとも1つのドロップレットDLに集光されてもよい。
【0030】
ターゲット供給装置8は、ターゲット物質をドロップレットDLの形態でプラズマ生成領域PGに向けて出力するよう構成されてもよい。ターゲット供給装置8が適切に動作している場合、EUV光生成装置1が全体として重力方向に傾斜して配置されている場合であっても、ターゲット供給装置8の静電吸引機構によって、ドロップレットDLはプラズマ生成領域PGに向かって出力され得る。ドロップレットDLには、パルスレーザ光L1に含まれる少なくとも1つのパルスが照射されてもよい。パルスレーザ光L1が照射されたドロップレットDLはプラズマ化し、そのプラズマからEUV光L2が放射され得る。EUV光L2は、例えば13.5nmの波長の光を含んでもよい。EUV光L2は、EUV集光ミラー25によって選択的に反射されてもよい。EUV集光ミラー25で反射されたEUV光L2は、中間集光点に集光されてもよい。
【0031】
ターゲットセンサ4は、ターゲット供給装置8から出力されるドロップレットDLを検出し、その検出結果を逐次、ターゲット制御装置5へ送信してもよい。ターゲット制御装置5は、ターゲットセンサ4からの検出結果に基づき、プラズマ生成領域PGにおいてドロップレットDLにパルスレーザ光L1が照射されるように、レーザ装置30を制御するよう構成されてもよい。ターゲット制御装置5は、パルスレーザ光L1の出力タイミング、進行方向等を制御するよう構成されてもよい。
【0032】
3.ターゲット供給装置の説明
3.1 構成
以下、図3〜図6を参照して、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の構成について説明する。図3は、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。図4は、ターゲット供給装置8の先端部E1の部分拡大図である。図5は、図4に示すターゲット供給装置8のV−V面における断面図である。図6は、開口領域の形状の一変形例を示す。
【0033】
図3に示すように、ターゲット供給装置8は、タンク81、ヒータ82、電極83、導入端子84、及び管85を含んでもよい。ターゲット供給装置8は、チャンバ2の壁2aに取り付けられてもよく、その先端部E1がチャンバ2内に突出してもよい。図3に示す構成の場合には、タンク81は、電気的絶縁材料で構成されることが好ましい。タンク81は、フランジ部81a、ターゲット物質TGが収容される収容部81c、及び収容部81cとノズル部86とを連通させる連通路81pを含んでもよい。フランジ部81aは、チャンバ2の壁2aの外側部分に、図示しない固定手段によって固定されてもよい。固定手段は、限定するものではないが、例えばボルト及びナットによる締結、溶接等でもよい。
【0034】
タンク81の周囲にはヒータ82が設けられてもよく、これによって収容部81c内のターゲット物質TGが溶融状態に維持されてもよい。ヒータ82は、ターゲット物質TGが錫の場合、収容部81c内の錫の温度が錫の融点よりも高い温度(例えば、300℃)となるように加熱可能なように構成されてもよい。ヒータ82の種類は、特に限定するものではないが、例えばセラミックヒータ等でもよい。
【0035】
図4及び図5に示すように、ターゲット供給装置8の先端部E1には、略円筒形状の絶縁部材87が設けられてもよい。絶縁部材87の一つの面には凹部87aが形成され、その反対側の面には開口断面積がそれぞれ異なる凹部87b,87cが連続的に形成されてもよい。絶縁部材87の凹部87aにはノズル部86とタンク81の端部とが順に嵌合し、絶縁部材87の凹部87bには第1の導電部材としての電極88が嵌合してもよい。これによって、ノズル部86と電極88とが対向し、かつ離間して配置されてもよい。
【0036】
電極88は、例えばモリブデン等の導電性材料を含んでもよく、その表面には、セラミックス等の絶縁材がコーティングされてもよい。ノズル部86の中央部は、絶縁部材87の凹部87c内に突出するように構成されてもよい。ノズル部86の突出した円錐部の頂点付近には、ターゲット物質を出力するための出力孔86aが設けられてもよい。出力孔86aの先端部は、ターゲット供給装置8の静電吸引機構において、ターゲット物質に電界を集中させるために、絶縁体で構成されてもよい。なお、ターゲット供給装置8において、タンク81、ノズル部86等、ターゲット物質が接触する部材は、ターゲット物質に対する耐浸食性を備えた材料で構成されることが好ましい。当該部材は、ターゲット物質が錫である場合、例えばセラミックス等で構成されてもよい。
【0037】
図3に示すように、電極83は、収容部81c内のターゲット物質の中に配置されてもよい。タンク81を貫通するように設けられる導入端子84を介して、電極83に接続される導線が高電圧生成器7へ接続されてもよく、それによって、電極83と高電圧生成器7とが電気的に接続されてもよい。チャンバ2の壁2aを貫通するよう設けられる導入端子201を介して、電極88に接続される導線が、壁2aとの絶縁が確保されつつ、高電圧生成器7へ接続されてもよい。それにより、電極88と高電圧生成器7とが電気的に接続されてもよい。
【0038】
図4及び図5に示すように、電極88は、出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るドロップレットDLの移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状に構成されてもよい。電極88には、第1の開口領域としての開口領域88aが形成されてもよい。図4及び図5に示すように、電極88は、ノズル部86の円錐部の中心軸CL上に、電極88の中心位置88cが位置するように配置されてもよい。
【0039】
図5に示すように、開口領域88aの一例として、円板形状の電極88の中心位置88cから周縁に向かって直線状に延びる開口領域88aが形成されてもよい。図6に示すように、開口領域88aの別の例として、中心位置88cから所定の径の略円形の開口部88kが設けられてもよい。この場合、開口部88kの径は、ドロップレットDLの出力方向がばらついた場合であっても、ドロップレットDLが電極88に接触しないように決定されてもよい。
【0040】
3.2 動作
次に、図3〜図7Bを参照して、ターゲット供給装置8の動作について説明する。図7A及び図7Bは、ターゲット物質のドロップレットが形成される過程を説明するための図である。図3に示す構成において、ターゲット制御装置5は、高電圧生成器7及び圧力調節器9の動作タイミングを規定するための制御信号を送信するように構成されてもよい。
【0041】
ターゲット供給装置8の動作前の状態では、タンク81内の溶融状態のターゲット物質が、タンク81の連通路81p及びノズル部86の連通路86pを充満してもよい(図7Aの状態Sa)。ターゲット供給装置8の動作が開始されると、先ず、圧力調節器9は、ターゲット制御装置5からの制御信号に基づいて、ガス貯蔵器10から供給される不活性ガスの圧力を所定の圧力に調節してもよい。その結果、タンク81内のターゲット物質が加圧され、それによってノズル部86の出力孔86aでは、ターゲット物質が出力孔86aから突出し得る(図7Aの状態Sb)。この状態は、不活性ガスの加圧による力と、ターゲット物質に作用する重力と、ターゲット物質の先端部分に作用する表面張力とが釣り合った状態であり得る。
【0042】
次に、高電圧生成器7は、ターゲット制御装置5からの制御信号に基づいて、電極83と電極88との間に所定の電圧を断続的に印加してもよい。このとき、一例として、電極88に印加される電位をV2としたときに、電極83に印加される電位をV2→V1→V2→V1→…(V1>V2)と変化させてもよい。つまり、高電圧生成器7は、電極83と電極88との間に電圧(V1−V2)を断続的に印加してもよい。印加される電圧(V1−V2)の値は、例えば20kV程度でもよい。状態Sbにおいて出力孔86aから突出したターゲット物質には、上記電圧が印加されることにより生成される電界が集中しやすくなるため、電界による静電気力により、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質は、出力孔86aから離脱してドロップレットDLとして出力され得る。この時、ドロップレットDLは正に帯電してもよい(図7Aの状態Sc)。ノズル部86の出力孔86aの近傍のターゲット物質と電極88との間に生成される電界によるクーロン力が作用することで、ドロップレットDLは、中心軸CL(図4参照)の方向に出力されてもよい。
【0043】
なお、図5に示したように、電極88には開口領域88aが設けられてもよいが、その場合であっても、実質的には、電極88は、中心位置88cを通る中心軸CLに対してほぼ回転対称な導体として作用するのが好ましい。このとき、出力孔86aと電極88との間における電位分布は、中心軸CLを中心にほぼ回転対称に生じるのが好ましい。中心軸CL上に電極88の中心位置88cが位置している場合には、ドロップレットDLの出力方向は、中心軸CLの方向となり得る。すなわち、図2に示したように、EUV光生成装置1が全体として重力方向に対して傾斜して配置された場合でも、ドロップレットDLは、EUV光生成装置1の重力方向に対する傾斜角度に沿った方向に出力され得る。
【0044】
図7Bに示すように、ターゲット供給装置8が動作している間、高電圧生成器7によって電極83と電極88との間に電圧が印加されない期間T1と、電極83と電極88との間に所定の電圧が印加される期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。この場合、期間T1では、タンク81内のターゲット物質には、実質的に圧力のみが印加され、出力孔86aからターゲット物質が突出した状態となりうる(状態Sb)。期間T1では、ドロップレットDLが生成されなくてもよい。一方、期間T2では、タンク81内のターゲット物質に圧力が印加され、電極83と電極88との間に電圧が印加されて、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質が、静電気力によって出力孔86aから離脱してドロップレットDLとして出力され得る(状態Sc)。つまり、第1の実施形態によるターゲット供給装置8では、ターゲット物質が出力孔86aから突出した状態が生成される期間T1と、ドロップレットDLが生成されて出力される期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。以上が、ターゲット供給装置8が正常に動作している場合における動作である。
【0045】
一方、前述したように、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合に、ノズル部の出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、それが重力方向(図4における方向G)に滴下する場合がある。このとき、電極88は、出力孔86aから見た重力方向に開口領域88aが位置するよう配置されるのが好ましく、滴下したターゲット物質は、開口領域88aを通過し得る。つまり、重力方向に滴下したターゲット物質が電極88に接触しないように、電極88が配置されてもよい。そのため、第1の実施形態によるターゲット供給装置8では、ターゲット物質が電極88に付着する可能性を低減することができ、ドロップレットDLが正常に安定して出力される可能性が向上され得る。
【0046】
3.3 変形例
次に、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の変形例について説明する。
【0047】
3.3.1 変形例1
図3に示したターゲット供給装置8のタンク81は、電気的絶縁材料ではなく、伝導性材料で構成されてもよい。その場合におけるターゲット供給装置8の構成を図8に示す。図8に示すように、タンク81Aが伝導性材料で構成される場合、タンク81Aの外壁に電極83Aを取り付け、電極83Aと高電圧生成器7とを導線で接続してもよい。これによって、タンク81Aに導線を貫通させることなく、タンク81A内のターゲット物質TGを所定の電位とすることができる。なお、この構成では、図8に示すように、タンク81Aをチャンバ2から絶縁するために、タンク81Aのフランジ部81Aaとチャンバ2の壁2aとの間に、絶縁部材801を介在させるよう構成されてもよい。絶縁部材801は、例えば酸化アルミニウム焼結材等のセラミックスでもよい。
【0048】
3.3.2 変形例2
第1の実施形態によるターゲット供給装置8の先端部E1は、図4に示した構成に限られず、図9及び図10に示した構成を備えてもよい。図4に示した構成では、ノズル部86と電極88との間に介在する絶縁部材87が比較的薄く、かつノズル部86内のターゲット物質と電極88との間の電圧は非常に大きい(例えば20kV)ため、絶縁部材87の表面で沿面放電による絶縁破壊が生ずる場合がある。絶縁部材87において絶縁破壊が生じた場合には、ノズル部86内のターゲット物質と電極88との間に静電気力が生じ難くなるため、ドロップレットDLの生成が阻害される場合がある。かかる観点から、図9に示した構成において、絶縁部材87Aは、沿面放電による絶縁破壊が低減されるような絶縁距離を確保できる形状を有してもよい。図9及び図10に示した構成では、電極88Aは、支持部882及び取付部881を介して絶縁部材87Aに取り付けられてもよい。電極88と同様に、電極88Aは円板形状でもよく、その中心位置から周縁に向かって直線状に延びる開口領域88Aaが形成されてもよい。
【0049】
4.第2の実施形態のターゲット供給装置の説明
ターゲット供給装置からチャンバ内のプラズマ生成領域に出力されるドロップレット同士の間隔が短い場合には、1つのドロップレットにレーザ光が照射されて発生するデブリが、後続するドロップレットに悪影響を与える場合がある。例えば、1つのドロップレットから発生したデブリが後続するドロップレットに衝突して、後続するドロップレットの進行方向が変化させられることで、安定したEUV光の生成が阻害される場合がある。そこで、第2の実施形態では、ターゲット供給装置は、ターゲット供給装置から出力されたドロップレットを加速させ、ドロップレット同士の間隔を長く出来るように構成されてもよい。そこで、ターゲット供給装置に第2の静電吸引機構が設けられてもよい。
【0050】
4.1 構成
以下、図11〜図14を参照して、第2の実施形態によるターゲット供給装置8Aの構成について説明する。図11は、第2の実施形態によるターゲット供給装置8Aの構成を、その周辺の構成要素とともに概略的に示す。図12は、ターゲット供給装置8Aの先端部E1Aの部分拡大図である。図13は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIII−XIII面における断面図である。図14は、図12に示すターゲット供給装置8AのXIV−XIV面における断面図である。図11〜図14において、図3〜図5に示したものと同一の構成要素には同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0051】
図12に示すように、ターゲット供給装置8Aでは、第1の実施形態における電極88に相当する電極88B(第1の導電部材)のドロップレット進行方向下流に、第2の導電部材としての電極89が設けられてもよい。ターゲット供給装置8Aは、電極88Bと電極89との間で電界を生じさせ、それによってドロップレットDLを加速させるための第2の静電吸引機構を備えてもよい。電界を生じさせるために、電極88Bと電極89との間に電圧を印加する電源を備えてもよい。または、図11に示すように、電極89を接地して電極88Bに接地電位以外の電圧を印加することで、電極89との間に電圧を生じさせてもよい。
【0052】
図12〜図14に示すように、ターゲット供給装置8Aの先端部E1Aには、略円筒形状の絶縁部材87Bが設けられてもよい。絶縁部材87Bの一つの面には凹部87Baが形成され、その反対側の面には開口断面積がそれぞれ異なる凹部87Bb,87Bcが連続的に形成されてもよい。凹部87Baにはノズル部86とタンク81の端部とが順に嵌合し、凹部87Bcには電極88Bが嵌合し、凹部87Bbには電極89が嵌合してもよい。これにより、ノズル部86と電極88Bとが対向し、かつ離間して配置されてもよい。また、電極88Bと電極89とが対向し、かつ離間して配置されてもよい。電極88B及び電極89は、例えばモリブデン等の導電性材料を含み、それらの表面には、セラミックス等の絶縁材がコーティングされてもよい。
【0053】
図12〜図14に示すように、電極88B及び電極89は、出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るターゲット物質の移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状でもよい。電極88B及び電極89には、それぞれ開口領域が形成されてもよい。すなわち、図13に示すように、電極88Bには第1の開口領域として開口領域88bが設けられ、図14に示すように、電極89には第2の開口領域として開口領域89aが設けられてもよい。図12〜図14に示すように、電極88B及び電極89は、中心軸CL上に電極88Bの中心位置88Bc及び電極89の中心位置89cがそれぞれ位置するように配置されてもよい。
【0054】
ここで、開口領域88bの一例として、中心位置88Bcから周縁に向かって直線状に延びる開口領域88bが形成されてもよい。同様に、電極89には、中心位置89cから周縁に向かって直線状に延びる開口領域89aが設けられてもよい。なお、図6に示した形状と同様に、開口領域88b及び開口領域89aの別の例として、中心位置88Bc及び89cから所定の径の円形の開口部がそれぞれ設けられてもよい。
【0055】
4.2 動作
次に、図11〜図15Bを参照して、ターゲット供給装置8Aの動作について説明する。図15A及び15Bは、ターゲット物質のドロップレットが形成されて加速される過程を説明するための図である。なお、以下の説明では、主として、第1の実施形態によるターゲット供給装置8の動作と異なる点について説明する。
【0056】
ターゲット供給装置8Aを動作させる前の状態において、図15Aの状態Saは、図7Aの状態Saと同様でもよく、図15Aの状態Sbは、図7Aの状態Sbと同様でもよい。状態Sa及び状態Sbでは、電極88Bと電極89との間にはドロップレットを加速させるため電圧が印加されても、印加されなくてもよい。
【0057】
次に、高電圧生成器7は、第1の実施形態と同様に、電極88Bに印加される電位をV2としたときに、電極83に印加する電位をV2→V1→V2→V1→…(V1>V2)と変化させてもよい。電極89は、V2よりもさらに低い電位V3(例えば、図11に示したようにグラウンド電位)に設定されてもよい。つまり、高電圧生成器7は、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)を断続的に印加し、電極88Bと電極89との間に電圧(V2−V3)を維持するように構成されてもよい。状態Sbにおいて、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)が印加されると、静電気力により、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質は離脱してドロップレットDLとして出力され得る(図15Aの状態Sc)。この時、ドロップレットDLは正に帯電してもよい。ドロップレットDLは、電極83と電極88Bとの間に電圧(V1−V2)が印加されることによって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、中心軸CL(図4参照)の方向に出力されてもよい。また、ドロップレットDLは、開口領域88bを通過した後、電極88Bと電極89との間に印加される電圧(V2−V3)によって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、中心軸CLの方向に加速されてもよい(図15Aの状態Sd)。
【0058】
図15Bを参照に、ターゲット供給装置8Aを動作させている間、電極83と電極88Bとの間に電圧が印加されない期間T1と、電極83と電極88Bとの間に所定の電圧が印加される期間T2とが交互に繰り返されてもよい。この場合、期間T1では、実質的には、ターゲット物質には圧力のみが印加され、出力孔86aからターゲット物質が突出した状態となり得る(状態Sb)。一方、期間T2では、ターゲット物質に圧力が印加され、電極83と電極88Bとの間に電圧が印加され、出力孔86aから突出した状態のターゲット物質が、静電気力によって出力孔86aから離脱して、ドロップレットDLとして出力され得る(状態Sc)。さらに、電極88Bと電極89との間に電圧が印加されることによって生ずる電界によるクーロン力が作用することで、ドロップレットDLが加速されてもよい(状態Sd)。つまり、ターゲット供給装置8Aは、状態Sbの期間T1と、状態Sc及び状態Sdの期間T2とが交互に繰り返されるよう構成されてもよい。以上が、ターゲット供給装置8Aが正常に動作している場合の動作である。
【0059】
一方、前述したように、ノズル部の出力孔から突出するターゲット物質が正常な場合よりも大きくなり過ぎて、それが重力方向(図12における方向G)に滴下する場合がある。このとき、EUV光生成装置を重力方向に対して傾斜させて運用する場合には、電極88Bは、出力孔86aの重力方向下方に開口領域88bが位置するよう配置されるのが好ましく、滴下したターゲット物質は、開口領域88bを通過し得る。さらに、電極89は、出力孔86aの重力方向下方に開口領域89aが位置するよう配置されのが好ましく、開口領域88bを通過したターゲット物質は、開口領域89aを通過し得る。つまり、重力方向に滴下したターゲット物質が、電極88B及び電極89に接触しないように、電極88B及び電極89が配置されてもよい。そのため、第2の実施形態のターゲット供給装置8Aによれば、電極88Bまたは電極89にターゲット物質が付着する可能性を低減することができ、ドロップレットDLが正常に安定して出力され、十分に加速される可能性が向上し得る。
【0060】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。例えば、上述した実施形態では、ノズル部に対向して設けられた電極は、ノズル部の出力孔86aからプラズマ生成領域PGに至るターゲット物質の移動経路に対して直交する平面上に設けられ、かつ実質的に円板形状に形成された場合について説明したが、本開示はこれに限られない。チャンバ内で任意の位置に設定したプラズマ生成領域へドロップレットを導くために、所望の方向に静電気力をターゲット物質に作用させるように、電極の形状を設定してもよい。かかる所望の方向は、ターゲット物質の移動経路と同軸であるとは限らない。電極の形状が如何なる形状であれ、ターゲット物質がノズル部から重力方向に滴下した際にターゲット物質が、電極に接触しないように開口領域を設定してよい。つまり、電極の開口領域は、ターゲット物質がノズル部から重力方向に滴下したときにターゲット物質が電極とは離間して通過するように形成されていればよい。
【0061】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1…EUV光生成装置、2…チャンバ、2a…壁、2b…貫通孔、201…導入端子、21…ウィンドウ、22…軸外放物線ミラー、23…平面ミラー、24…プレート、24a…貫通孔、25…EUV集光ミラー、25a…貫通孔、26…ターゲット回収部、27…ビームダンプ、28…支持部、29…接続部、291…壁、291a…アパーチャ、3…集光光学系、4…ターゲットセンサ、5…ターゲット制御装置、6…EUV光生成制御装置、7…高電圧生成器、8,8A…ターゲット供給装置、81…タンク、81a…フランジ部、81p…連通路、82…ヒータ、84…導入端子、85…管、86…ノズル部86a…出力孔、86p…連通路、83,83A,88,88A,88B,89…電極、87,87A,87B,801…絶縁部材、88a,88Aa,88b,89a…開口領域、881…取付部、882…支持部、9…圧力調節器、10…ガス貯蔵器、30…レーザ装置、31,32…高反射ミラー、100…露光装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質を出力するノズルと、
重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第1の開口領域が形成された第1の導電部材と、
前記ターゲット物質と前記第1の導電部材との間に電圧を印加する電源と、
を備え、
前記第1の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第1の導電部材とは離間して通過するように形成されている、
ターゲット供給装置。
【請求項2】
重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第2の開口領域が形成された第2の導電部材と、
を備え、
前記電源が、さらに前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の間に電圧を印加し、
前記第2の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第2の導電部材と離間して通過するように形成されている、
請求項1に記載されたターゲット供給装置。
【請求項3】
前記第1の導電部材は、円形形状の平板で形成されており、
前記第1の開口領域は、前記円形形状の平板の中心位置から周縁に向かって延びて形成されている、
請求項2に記載されたターゲット供給装置。
【請求項4】
前記第2の導電部材は、円形形状の平板で形成されており、
前記第2の開口領域は、前記円形形状の平板の中心位置から周縁に向かって延びて形成されている、
請求項3に記載されたターゲット供給装置。
【請求項5】
チャンバと、
前記チャンバ内にターゲット物質を出力する、請求項1に記載されたターゲット供給装置と、
パルスレーザ光を生成するレーザ装置と、
前記レーザ装置によって生成されるパルスレーザ光を集光して、前記ターゲット供給装置から滴下されるターゲット物質に照射し、それによってターゲット物質をプラズマ化する集光光学系と、
プラズマ化したターゲット物質から放射される極端紫外光を集光して出力する集光ミラーと、
を備えた、極端紫外光生成装置。
【請求項1】
ターゲット物質を出力するノズルと、
重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第1の開口領域が形成された第1の導電部材と、
前記ターゲット物質と前記第1の導電部材との間に電圧を印加する電源と、
を備え、
前記第1の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第1の導電部材とは離間して通過するように形成されている、
ターゲット供給装置。
【請求項2】
重力方向に対して傾斜した、前記ノズルの前記ターゲット物質出力方向に設けられ、第2の開口領域が形成された第2の導電部材と、
を備え、
前記電源が、さらに前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の間に電圧を印加し、
前記第2の開口領域は、前記ターゲット物質が前記ノズルから重力方向に滴下するときにターゲット物質が前記第2の導電部材と離間して通過するように形成されている、
請求項1に記載されたターゲット供給装置。
【請求項3】
前記第1の導電部材は、円形形状の平板で形成されており、
前記第1の開口領域は、前記円形形状の平板の中心位置から周縁に向かって延びて形成されている、
請求項2に記載されたターゲット供給装置。
【請求項4】
前記第2の導電部材は、円形形状の平板で形成されており、
前記第2の開口領域は、前記円形形状の平板の中心位置から周縁に向かって延びて形成されている、
請求項3に記載されたターゲット供給装置。
【請求項5】
チャンバと、
前記チャンバ内にターゲット物質を出力する、請求項1に記載されたターゲット供給装置と、
パルスレーザ光を生成するレーザ装置と、
前記レーザ装置によって生成されるパルスレーザ光を集光して、前記ターゲット供給装置から滴下されるターゲット物質に照射し、それによってターゲット物質をプラズマ化する集光光学系と、
プラズマ化したターゲット物質から放射される極端紫外光を集光して出力する集光ミラーと、
を備えた、極端紫外光生成装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2013−73733(P2013−73733A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210696(P2011−210696)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】
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