説明

ターゲティング組成物及びその製造方法

本発明は、癌標的療法と腫瘍の画像化に関し、特に、小さなマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドの新規誘導体に関する。この新規な誘導体とは、親水性ペプチドGRENYHGCTTHWGFTLCとその誘導体である。このペプチドの溶解性は増加しており、適切なリンカー分子、例えばPEG、と共にターゲティング組成物を製造するのに用いることができる。このようなターゲティング組成物は、癌の治療と診断のための治療用及び画像化用リポソーム組成物に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌標的療法と腫瘍の画像化に関し、特に、小さなマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドの新規誘導体に関する。得られたペプチド誘導体は改良された特性を有し、適切なリンカー分子と共にターゲティング組成物を製造するのに用いることができる。このようなターゲティング組成物は、癌の治療と診断のための治療用及び画像化用リポソーム組成物に有用である。
【背景技術】
【0002】
化学療法においては、薬物の一部のみが癌細胞に到達し、残りの薬物は正常な組織を損傷する可能性がある。副作用は、リポソームに封入した癌治療剤を投与することで低減することができる(Lasic et al., 1995)。安定性と循環器中での寿命を延ばすように改良したリポソーム組成物について報告されている(Tardi et al., 1996)。このような組成物の中では、モノメトキシポリエチレングリコール(PEG)と複合化したリン脂質が広く使用されているが、これは1984年にシアーズ(Sears)がアミド結合を介してカルボキシPEGと精製大豆ホスファチジルエタノールアミン(PE)とのカップリングに成功して以来のことである(Sears, 1984)。リポソーム表面に付加したPEGはリポソームの周りに水層を引き寄せる。この水層は種々の血漿タンパク質(オプソニン)がリポソーム表面に吸着されるのを防ぐので、リポソームが網内系によって認識されて取り込まれることはない。標的細胞の細胞膜抗原を認識する特異的な抗体や小さなペプチドをリポソーム表面に結合して、標的細胞によるリポソームの取り込みを増加することで選択性を向上することができる(Storm and Crommelin, 1998;Dagar et al., 2001;Penate Medina et al., 2001)。
【0003】
マトリックスメタロプロティナーゼ(MMP)は、基底膜と細胞外マトリックスを分解することができる酵素のファミリーを構成する。MMPはサブグループに分類することができ、その1つは、IV型コラゲナーゼ又はゲラチナーゼであるMMP−2とMMP−9からなる。ゲラチナーゼや他のMMPの増加した又は未制御の発現は、腫瘍の血管新生と転移、慢性関節リウマチ、多発性硬化症及び歯周炎などの種々の疾患の発病の一因となり得る。このMMPサブグループに対する選択的阻害剤を開発するためにランダムなファージペプチドライブラリーのスクリーニングを行った。誘導した中で最も活性の高いペプチド(CTTと称する)は、MMP−2とMMP−9の活性を選択的に阻害することが判明した(Koivunen et al., 1999)。腫瘍の異種移植片を有するマウスの実験は、CTTを提示したファージを静脈注射すると、レシピエントマウスの腫瘍血管系にファージが蓄積されることを示した。ファージの腫瘍へのターゲティングは、CTTペプチドの共投与によって阻害された(Koivunen et al., 1999)。MMP−2(Toth et al., 1997)とMMP−9(Brooks et al., 1996)が共に特異的細胞表面受容体と結合することは、これら酵素が、腫瘍細胞や血管新生内皮細胞などの侵襲性細胞に対するリポソームターゲティングのための潜在的な受容体であることを示す。CTTペプチドをリポソームと混合することで、腫瘍ターゲティングを向上し、取り込みを増加することができる(Penate Medina et al., 2001)。
【0004】
ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングは、標的に結合するペプチドの迅速な同定を可能にする。しかし、多くの場合、ファージ配列の機能分析とファージ配列を可溶性で安定なペプチドの形で再現することが、スクリーニングにおいて最も時間のかかる部分である。インテインを用いた方法(intein-directed methodology)をファージディスプレイで得られたペプチドの合成と設計に使用することができる(Bjorklund et al., 2003)。この技術を用いてペプチド誘導体のライブラリーを作製した。新規なCTTペプチド誘導体(CTT2= GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)-NH2)が同定された。このペプチドは生理的溶液における溶解性が向上しており、生物学的に活性である。
【0005】
発明の概要
本明細書において、癌の治療及び腫瘍の画像化(イメージング;imaging)に用いることのできるCTT2ペプチドの種々の誘導体、並びに上記誘導体の製造方法について開示する。CTT2ペプチドとその誘導体は、適切なリンカー分子、特に合成脂質、に共有結合することができる。ペプチド/脂質組成物は特異的な方法で精製する。この組成物は水溶液中でミセルを構成し、リポソームに導入することができる。使用するペプチドが標的特性を有するので、本発明は、医薬品及び画像化剤(imaging agent)となる色々な種類のリポソーム製剤のための新規で多目的なターゲティングツールを創出する。このターゲティングツールの使用で薬物製剤の生体内分布プロファイルと治療効果が向上することが明らかとなっている。ペプチド/脂質組成物そのものも、in vivoにおける腫瘍画像化機能を有する。CTT2ペプチドの他の誘導体は、ペプチドの溶解性と腫瘍の画像化における有用性を向上させるために作製した。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、癌治療及び腫瘍の画像化に用いることのできる親水性ペプチドとその誘導体、並びにこれらペプチドを合成するための方法を開示する。本発明の最も好ましい態様においては、ペプチドはアミノ酸配列 GRENYHGCTTHWGFTLC(配列番号1)を有する環状CTT2ペプチドであり、このペプチドを医薬品及び画像化剤となるリポソーム製剤のための効率的なターゲティングツールとして使用する。初めにペプチド(CTT2)を、PEGリン脂質(DSPE−PEG)のポリエチレングリコール鎖の末端基に共有結合(カップリング)する。水溶液中でミセルを形成するCTT2−PEG−DSPE懸濁液を、事前に作成しておいた、医薬又は画像化剤を内包するリポソームに組み込む。CTT2ペプチドとその誘導体は標的特性を有するので、本発明では、医薬品及び画像化剤となる色々な種類のリポソーム製剤のための新規で多目的なターゲティングツールを創出する。このターゲティングツールの使用で薬物製剤の生体内分布プロファイルと治療効果が向上することが明らかとなっている。カップリング工程と組み込み工程とを分けることによってこのシステムはより汎用になる。従来のリポソーム作製工程がペプチドとそのPEGリン脂質への結合に与えていた物理的負荷を防ぐことができる。本発明は、向上した溶解性と腫瘍画像化へのより高い適合性を示すCTT2ペプチドの誘導体も開示する。
【0007】
原則的に、適切な標的能を有する限りいかなるペプチドも、いかなる組成物と共にリポソームに結合してもよく、リポソームは、いかなる物質を内包していてもかまわない。そのためリポソームは、医薬又は化学療法薬として、例えばドキソルビシン、シスプラチン又はパクリタキセル、を内包することができる。リポソームは、更に画像化剤も内包することができる。ペプチドは適切なナノ粒子にも結合することができる。
【0008】
適切な標的能を有する有用なペプチドとしては、例えば、国際公開公報WO99/47550とWO02/072618に記載のマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドが挙げられる。
【0009】
具体的には、アミド化したCTT2ペプチド(即ち、GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)-NH2)と、本願に記載するその新規な誘導体(即ち、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2)が、ターゲティング組成物の作成に特に適している。
【0010】
従って、本発明の総体的な目的は、適切な脂質に結合した、腫瘍標的能を有するペプチド、好ましくは上述したペプチドの1つ、を含むターゲティング組成物を提供することである。得られる組成物は、種々の医療用途及び診断用途においてリポソームを所望の標的に向かわせるためのターゲティング分子(targeting moiety)として使用することができる。腫瘍標的能を有するこのようなターゲティング組成物の製造方法は、親水性ペプチドをポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合することを包含する。
【0011】
本発明の更なる目的は、環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体をポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合することによって得られたターゲティング組成物の精製方法を提供することである。この精製方法においては、得られたペプチド−脂質混合物を有機溶媒と共にインキュベートして沈殿物を得、得られた沈殿物を遠心分離に付し、有機溶媒で洗浄し、再度遠心分離に付すことでペレットを得、得られたペレットを適切な緩衝液に懸濁し、そしてサイズ排除クロマトグラフィーを行って精製されたターゲティング組成物を得る。
【0012】
本発明の更なる目的は、少なくとも一種の化学療法薬又は画像化剤を内包するリポソームを得、小さなマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドをポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合させて、腫瘍標的能を有するターゲティング組成物を製造し、そして該リポソームと該ターゲティング組成物を組み合わせて懸濁液を形成することを包含する、治療用又は画像化用リポソーム組成物の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、少なくとも一種の化学療法薬を内包するリポソームを得、小さなマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドの誘導体とポリエチレングリコールの合成誘導体を含むターゲティング組成物を得、該リポソームと該ターゲティング組成物を組み合わせて懸濁液を形成し、そして得られた懸濁液を患者に投与することを包含する、患者の癌を治療する方法を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、小さなマトリックスメタロプロティナーゼ阻害性ペプチドの誘導体とポリエチレングリコールの合成誘導体を含むターゲティング組成物、及び少なくとも一種の画像化剤を内包するリポソームを包含する、診断用又は画像化用組成物あるいはこのような組成物を包含する診断試験キットを提供することである。
【0015】
略語
AUC 曲線下面積
CMC 臨界ミセル濃度
CTT2 アミド化環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド
DMF ジメチルフォルムアミド
DOTA 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸
DoxilR/CaelyxR 市販の注射用塩酸ドキソルビシンリポソーム組成物
(Johnson & Johnson/Schering Plough Corporation
の子会社であるOrtho Biotech社製)
DSPE−PEG−NHS 1, 2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノール
アミン-n-[ポリ(エチレングリコール)]-N-ヒドロキシ
サクシナミジルカーボネート
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
MMP マトリックスメタロプロティナーゼ
PEG ポリ(エチレングリコール)
RT 室温
SL ステルスリポソーム
TFA トリフルオロ酢酸
TLC 薄層クロマトグラフィー
【実施例】
【0016】
ペプチドのカップリング
この工程においては、ペプチドの末端アミンと、PEGリン脂質のポリ(エチレングリコール)ポリマー鎖の末端に存在する官能基であるNHS(ヒドロキシサクシニミジル)との化学反応によって、CTT2ペプチドをPEGリン脂質に共有結合させた。末端アミンとPEGカルボン酸の活性サクシニミジルエステルとの反応は安定なアミド結合を生じた。カップリング反応を最適化するために、反応時間と温度のみならず、ペプチドとPEGリン脂質の種々のモル比を試験した。
【0017】
ジメチルフォルムアミド(DMF)(BDH Laboratory Supplies製)のpHを、トリフルオロ酢酸(TFA)(Merck製)で8.0に調整した。4mgの合成アミド化GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2)(Neosystem S. A.製)と8.6mgの1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-フォスフォエタノールアミン-n-[ポリ(エチレングリコール)3400]-N-ヒドロキシサクシナミジルカーボネート(DSPE−PEG−NHS 3400)(Nektar Corporation製)を1mlのDMF(pH8.0)に溶解した。得られた混合物(モル比は1:1)を+37℃、振とう下で2時間インキュベートした。
【0018】
精製
生成物を精製するために2段階の精製方法を用いた。初めに、ジメチルエーテルを用いてCTT2−PEG−DSPEとCTT2を反応混合物から抽出した(図1)。次に、HPLCゲルろ過法でCTT2−PEG−DSPEをCTT2から分離した(図2)。
【0019】
反応混合物(1ml)を5mlのジエチルエーテルと共に−20℃で1時間インキュベートした。これを、事前に+4℃まで冷却しておいた遠心分離機の中で13,000rpm、10分の遠心分離に付した。得られたペレットを5mlの冷たいジメチルエーテルに再懸濁し、再び遠心分離に付した。得られたペレットは1時間凍結乾燥した。
【0020】
HPLCの移動相である、50mMの酢酸アンモニウム緩衝液に0.1%TFAを加えたもの(pH4.5)100μlにペレットを溶解した。50μlのサンプルを1回ごとに注入した。1ml/分の均一濃度溶離を、Superdex 75 10/300 GLゲルろ過カラム(Amersham製、1.5ml)を用いたAKTAピューリファイヤー10(AKTA Purifier 10)(Amersham製)でカラム容積の1.5倍まで行った。検出波長は221nmで、付加的な情報を得るために230nmと280nmでも検出した。生成物を含む画分を凍結乾燥し、次いで400μlの水に再懸濁し、再び凍結乾燥することで酢酸アンモニウムを除去した。
【0021】
生成物の量は、後述するルーセル(Rousell)アッセイの変法によって求めた。生成物の純度と正体を確認するためにMALDI−TOF分析を用いた(図3A、図3Bと図3C)。CTT2ペプチドの環状構造の健全性は、後述するエルマン試験(Ellman's test)によって裏付けた。長期保存のためには、凍結乾燥標品を−20℃の乾燥した環境下で保存した。
【0022】
カップリング効率の測定
生成したCTT2−PEG−DSPEはそれぞれ1分子のリン脂質DSPEを含有する。従って、リン脂質DSPEの濃度を測定することで、生成物の濃度を求めることができる。リン脂質濃度は、ルーセル(Rousell)アッセイの変法(Bottcher et al., 1961)によって求めた。
【0023】
10μlの生成物を0.2mlの過塩素酸の入ったガラス管に加え、180℃〜190℃で30分間加熱した。標準リン酸系列を作製するために、0.2mlの過塩素酸の入ったガラス管を8本用意し、0.4mMのNa2HPO4溶液を0μl、10μl、25μl、50μl、75μl、100μl、150μl又は200μl加えた。サンプルを加熱し冷ました後に、2mlのモリブデン試薬(3.5mMの(NH46Mo724と1%のH2SO4)をサンプルの入ったガラス管と標準リン酸系列の入ったガラス管に加えた。0.25mlのアスコルビン酸も各ガラス管に加えた。ガラス管を沸騰水中で5分間インキュベートした後に冷ました。吸光度を812nmで測定した。標準リン酸溶液の吸光度を用いて直線回帰関数を作製し、この関数を用いてサンプルの濃度を計算した。
【0024】
生成物の量と出発材料の量とを比較することで、カップリング反応の収率を計算できる。平均してカップリング収率は約15%であった。従って、1mgのCTT2ペプチドと2.05mgのDSPE−PEG−NHSを出発材料とすると、約0.5mgのCTT2−PEG−DSPEが製造できる。
【0025】
エルマン試験
従来このアッセイは、1つのシステイン残基が存在するペプチド(3〜26量体)について用いられていたが、複数のシステイン残基が存在するペプチドにも使用可能である。DNTBと呼ばれる5,5’−ジチオ−ビス−(2−ニトロ安息香酸)を用いて溶液中の遊離スルフヒドリル基を定量することができる。この化合物の溶液は、遊離スルフヒドリル基と反応してジスルフィドと2−ニトロ−5−チオ安息香酸(TNB)の混合物を生成する際に、定量可能な黄色い生成物を生じる。スルフヒドリル基は、DNTBの消散係数に参照して定量することができる。環状ペプチドでは、システインがS−S結合を介して結合しているのでスルフヒドリル基は存在しない。環状ペプチドを還元すれば、スルフヒドリル基をエルマン試験によって定量することができる。この試験は、環状ペプチドが活性型であることを確認するために用いることができる。
【0026】
エルマン試薬を製造者(Pierce社)の指示書に従って用い、試験を実施した。試験結果は、412nmでの分光分析によって測定した。得られた値が0.020よりも大きい場合、ペプチドは活性を失っている。それ以外の場合は、ペプチドの環状構造は維持されている。カップリング工程はCTT2ペプチドの環状構造を乱すことはないことが示された。しかしこの試験は、結合ペプチドの新しいバッチを製造する度に、その品質を確認するために実施すべきである。
【0027】
CTT2被覆リポソーム性ドキソルビシン
ある種の脂質をリポソームと共にインキュベートすると、脂質がリポソームに組み込まれることが示されている(Kanda et al., 1982)。正確なメカニズムは未だ分っていない。この現象は、脂質濃度が臨界ミセル濃度(CMC)を超えている場合には水溶液中で自動的にミセルが形成され、そのミセルがリポソームに融合することによって生じるか、あるいは、ミセルとリポソームの間でリン脂質の交換が起こることによって生じると考えられる。一例として、事前に作製したリポソーム性ドキソルビシンをCTT2−PEG−DSPEミセルに組み込むことで、CTT2ペプチドで被覆したリポソーム性ドキソルビシンを調製した。実験では、市販の注射用リポソーム性ドキソルビシン組成物(DoxilR/CaelyxR)と、発明者らの実験室で調製したリポソーム性ドキソルビシン(データは示さない)を使用した。更に、CTT2ペプチド被覆DoxilR/CaelyxRの生体内分布プロファイルと治療効果の向上を実証した。
【0028】
CTT2被覆DoxilR/CaelyxR
1mgのCTT2−PEG−DSPEを400μlの緩衝液(100mMヒスチジン、55mMショ糖、pH6.5)に懸濁した。1mlのDoxilR/CaelyxR溶液(Ortho Biotech製)に100μlのCTT2−PEG−DSPEミセル懸濁液を加えた。この混合物を+60℃で30分間インキュベートした。この懸濁液は、マウスやヒトに直ちに注射することができる。懸濁液は、+4℃で最低3週間は保存可能である。
【0029】
組み込み効率は放射性同位元素で標識したペプチドと、リポソームから未反応のミセルを分離するためのゲルろ過を用いて測定することができる。組み込み効率は、全活性に対するリポソーム画分中の活性のパーセントとして表すことができる。種々のインキュベーション時間と温度について試験したところ、+60℃で30分のインキュベーションが至適反応条件であることが分った。この条件下での組み込み効率は100%に近かった。リポソームの平均サイズと平均表面積に基づいて、リポソームあたりのCTT2ペプチド量を求めることができる。上述した反応条件では、1つのリポソームあたり約500個のCTT2分子が存在する。従って、この量のCTT2ペプチドが結合すると、リポソームに十分に高い標的活性が付与される。
【0030】
実験前と実験後の遊離ドキソルビシン量を比較することで、種々の反応時間や温度における組み込み実験後のリポソームからのドキソルビシンの漏れについて測定した。漏れは最小値(組み込む前の遊離ドキソルビシンが平均4.5%で、反応後が平均4.2%)であった。
【0031】
CTT2被覆DoxilR/CaelyxRに関するin vivoの研究
CTT2ペプチドの標的能を示すために、CTT2被覆を施したDoxilR/CaelyxRと未被覆のものを注射した際の生体内分布プロファイルと治療効果を比較した。放射性同位元素で標識したCTT2ペプチドを用いた生体内分布研究を、初めに種々のヒト腫瘍の異種移植片を有するマウスで行った。このペプチドは、卵巣癌異種移植片に最も多く蓄積されていた。従って、A2780卵巣癌モデルマウスを、続く生体内分布および治療に関する研究のために選んだ。
【0032】
生体内分布研究
A2780卵巣癌細胞を、10%ウシ胎児血清(Biowhittaker製)を含有するRPMI 1640培地(Biowhittaker製)で培養した。細胞を回収した後に、5.0×106個の細胞を5〜6週齢の雌のNMRIヌードマウスの後部脇腹に皮下注射した。腫瘍の大きさが直径約10mmになった時点で生体内分布研究を実施した。A2780卵巣癌を有するマウスに、1kg当たりのドキソルビシン投与量が9mgとなるようにリポソーム性ドキソルビシンを尾静脈に注射した。血液、心臓、肝臓、肺、筋肉、脳、脾臓及び腫瘍のサンプルを採取するために、マウスは注射後2時間、6時間、24時間、48時間、72時間及び96時間に屠殺した。血液は、血漿を得るために+4℃、5,000rpmで10分間遠心分離に付した。組織は液体窒素中で凍結し、暗黒条件下で2日間凍結乾燥した。乾燥組織の重量を測定し、終濃度が20mg/mlとなるように酸アルコール(0.3MのHClを含む50%のEtOH)で抽出した。組織ホモジェネートを+4℃、13,000×gで10分の遠心分離に付した。残渣を取り除いた血漿と残渣を取り除いた細胞抽出液について、ドキソルビシンの蛍光を分光光度計(Varian製)で測定した。470nmの励起波長を用いて590nmにおける蛍光強度を観測し、既知量のドキソルビシを含有する、同様に処理した標準サンプルと比較することでドキソルビシンの蛍光を分析した。
【0033】
96時間で腫瘍に蓄積されるCTT2被覆DoxilR/CaelyxR(CTT−SL)のAUCは、DoxilR/CaelyxR(SL)のAUCよりも46.2%高かった(図4)。これは、CTT2被覆DoxilR/CaelyxRにおいて腫瘍標的能が顕著に増加していることを示す。
【0034】
異種移植マウスにおける治療効果
A2780細胞を50匹の雌のNMRIヌードマウスの後部脇腹に皮下注射した。マウスは無作為に5つの処置群に分けた。生存率に対する種々の治療の影響を調べるために、腫瘍の直径が5mm(65mm3)になったら薬剤による処置を行った。この実験では、3日間隔で1kgあたり9mgのリポソーム性ドキソルビシン又は遊離ドキソルビシンを各マウスに3回注射した。CTT2被覆DoxilR/CaelyxR(CTT−SL)、DoxilR/CaelyxR(SL)及び遊離製剤のいずれにおいてもドキソルビシン濃度は2mg/mlなので、注射した容量は120〜150μlの範囲で異なっていた。
【0035】
処置を開始した後、マウスの体重と腫瘍の大きさを週2回測定した。腫瘍の大きさが1000mm3を超えたら、マウスを屠殺した。
【0036】
処置を開始してから5週間後には、緩衝液で処置した群とCTT2ミセル又は遊離ドキソルビシンで処理した群の全てのマウスが屠殺されており、DoxilR/CaelyxR処置マウスはたった33%のみが生存していた。しかし、この時、CTT2被覆DoxilR/CaelyxR処置マウスの75%が生存していた(図5)。平均生存時間は、CTT2被覆DoxilR/CaelyxR処置群では38.6日であり、DoxilR/CaelyxR処置群では27.9日だった。
【0037】
CTT2−PEG−DSPEの生体内分布
CTT2−PEG−DSPEを上述のように製造した。CTT2−PEG3400−DSPE分子の癌異種移植モデルにおける組織分布を研究するために、10匹の免疫不全マウスにヒト卵巣癌細胞(OV−90)を植え付けた。腫瘍異種移植片が完全に形成した時(異種移植から約3週間後)に、ヨウ素標識CTT2−PEG−DSPE(200μg;〜1MBq)を含む200μlのPBSをマウスの尾静脈に注射して生体内分布研究を実施した。注射後6時間と24時間にマウスを屠殺し、その血液と組織を解剖により採取し、ガンマ線を計測した。検討した両方の時点において、最も高い放射能の蓄積が腫瘍異種移植片に見られた(腫瘍/筋肉比:43)(図6)。
【0038】
CTT2ペプチドの誘導体
CTT2は、2つの特徴的な構造からなる部位を有すると見ることができる。ペプチドの環状(-CTTHWGFTLC) 部位は、ペプチドの直鎖状 GRENYHG- 部位より疎水性である。CTT2ペプチドと何らかの分子構造との結合点(N末端 対 C末端)は、複合体の溶解性と生物活性に影響しているかもしれない。複合体の溶解性と生物活性を向上させるために、2つの異なるペプチド誘導体(表1のペプチド1とペプチド4)を合成した。
【0039】
上記ペプチドは、in vivoの生理学的な状態や過程の画像化に用いることができる。CTT2ペプチドは放射性ヨウ素で直接標識することができる。より高度な放射性画像化試薬、例えば、111Inや99mTcは、元のペプチドと複合化したキレーター分子を必要とする。CTT2ペプチドのDOTA誘導体(表1のペプチド2、ペプチド3とペプチド5)を合成し、その1つ(表1のペプチド3)を非放射性インジウムで標識した。ペプチド−DOTA複合体(表1のペプチド2とペプチド5)は、診断に用いる放射性同位元素(111In)や治療に用いる放射性同位元素(177Lu、90Y)で標識することができる。
【0040】
天然に存在しないアミノ酸であるフルオロトリプトファンを合成の際に導入することによって、2つのCTT2−ペプチド誘導体、即ち、6F−Trp CTT2と5F−Trp CTT2(表1のペプチド6とペプチド7)を得た。6F−Trp CTT2は野生型ペプチドと比べて、血清安定性の増加と腫瘍に対する細胞遊走阻害能の向上を示した(「6F−Trp CTT2ペプチドの生体内分布」の項を参照)。5−OH−Trp誘導体も調製した(表1のペプチド8)。
【0041】
Applied Biosystems(カリフォルニア州、フォスターシティー)製のモデル433Aでペプチドを合成した。合成には公知のFmoc−化学(Koivunen et al., 1999)を用いたが、ジスルフィド結合の形成は過酸化水素を用いて行った。
【0042】
簡単に説明すると、ペプチドを50mMの酢酸アンモニウム(pH7.5)に1mg/mlの濃度で溶解し、100mgのペプチドに対して0.5mlの3%過酸化水素を加えた。30分間インキュベートした後、pHを3.0に調製し、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル直線勾配(30分間で0%〜70%)を用いた逆相HPLCで、環化したペプチドを精製した。
【0043】
DOTA誘導ペプチドのインジウム標識: 1.2mgのK(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)を100μlの酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.5)に溶解した。InCl3を酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.5)に溶解した。2モル等量のInCl3溶液をペプチド溶液に加えた。反応混合物はRTで一晩放置した。インジウム標識ペプチドは、酢酸アンモニウム緩衝液(pH6.5)とアセトニトリル溶液の混合液(50%/50%)を用いた逆相C−18カートリッジで精製した。溶出液を凍結した後に凍結乾燥し、白い固体状のインジウム標識ペプチドを得た。インジウム標識ペプチドはMALDI−TOF MSで同定した。
【0044】
【表1】

【0045】
6F−Trp CTT2ペプチドの生体内分布
6F−Trp CTT2ペプチドを生体内分布の研究に用い、その動態と腫瘍標的特性を評価した。研究は、形成したヒト卵巣癌腫(OV−90)を有するマウスで行った。6F−Trp CTT2ペプチドをヨウ素−125で標識した。40μgの精製した標識ペプチド(〜1MBq)をマウスの尾静脈に注射した。ペプチド注射から30分後と180分後にマウスを屠殺し、血液と組織のサンプルを採取した。蓄積された放射能をガンマ線計測器で測定した。その結果、腫瘍組織に著しい放射能の蓄積が見られ、30分後と180分後の放射能蓄積における腫瘍/筋肉比はそれぞれ14.9と23.3であった。一方、その他の全ての組織では、放射能の蓄積量は無視できる値であり、クリアランスは血液と同等であった(図8)。非天然のアミノ酸をペプチド合成に使用することが可能なので、腫瘍のターゲティングのための活性が高くより安定なペプチドを提供できるであろう。
【0046】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】カップリング反応の薄層クロマトグラフィー(TLC)分析。レーン1,対照CTT2ペプチド;レーン2,対照DSPE−PEG−NHS;レーン5,ジエチルエーテル処理後の上清;レーン8,ジエチルエーテル処理後のペレット懸濁液。
【図2】CTT2−PEG−DSPE化合物をCTT2ペプチドから分離するためのHPLCゲルろ過の結果。グラフ中の第一のピークが生成物であるCTT2−PEG−DSPEを含み、グラフ中の最後のピークがCTT2ペプチドを含んでいる。
【図3a】CTT2ペプチドのMALDI−TOF解析。
【図3b】DSPE−PEG−NHSのMALDI−TOF解析。
【図3c】HPLCで精製した後のCTT2−PEG−DSPEのMALDI−TOF解析。
【図4】卵巣癌異種移植マウスにおける、CTT2−被覆DoxilR/CaelyxRとDoxilR/CaelyxRの96時間にわたる腫瘍内蓄積。
【図5】種々の薬物/リポソーム製剤による処置を行った後の、腫瘍を有するマウスの生存率。
【図6】I−125−CTT2−PEG−DSPEの生体内分布研究。後部背面にヒト卵巣癌を有するNMRI/ヌードマウスにおける、125I標識ミセルのin vivo 生体内分布を2つの時点で計測した。結果は組織1gあたりの注射量に対するパーセント(%ID/1g)で表した。全ての結果を、5匹のマウスの平均±SDで示した。
【図7a】アミド化CTT2ペプチドの分子構造。
【図7b】CTT2ペプチドのG→K誘導体の分子構造。
【図7c】CTT2ペプチドのG→K(DOTA)誘導体の分子構造。
【図7d】インジウム標識G→K(DOTA)−CTT2ペプチドの分子構造。
【図7e】Ac−CTT2−K−NH2ペプチドの分子構造。
【図7f】Ac−CTT2−K(DOTA)−NH2ペプチドの分子構造。
【図7g】CTT2ペプチドの6F−Trp誘導体の分子構造。
【図7h】CTT2ペプチドの5F−Trp誘導体の分子構造。
【図7i】CTT2ペプチドの5−OH−Trp誘導体の分子構造。
【図8】I−125標識6F−Trp CTT2(GRENYHGCTTH[6-フルオロ]WGFTLC)ペプチドの生体内分布研究。後部背面にヒト卵巣癌を有するNMRI/ヌードマウスにおける、125I標識ペプチドの in vivo 生体内分布を2つの時点で計測した。結果は組織1gあたりの注射量に対するパーセント(%ID/1g)で表した。全ての結果を、5匹のマウスの平均±SDで示した。
【配列表フリーテキスト】
【0048】
配列番号1: CTT2ペプチド
配列番号2: CTT2ペプチドのLys置換体
配列番号3: CTT2ペプチドのLys付加体
配列番号4: 12位にトリプトファン類似体を有するCTT2ペプチド
12位のXaaは5−OH−Trp、5−F−Trp又は6−F−Trpである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体をポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合させることを包含する、腫瘍標的能を有するターゲティング組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリエチレングリコールの合成誘導体がDSPE−PEGであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DSPE−PEGがDSPE−PEG−NHSであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリエチレングリコールの合成誘導体がDSPE−PEG−NHSであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(a)少なくとも一種の化学療法薬又は画像化剤を内包するリポソームを得、
(b)環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体をポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合させて、腫瘍標的能を有するターゲティング組成物を製造し、そして
(c)該リポソームと該ターゲティング組成物を組み合わせて懸濁液を形成する
ことを包含する、治療用又は画像化用リポソーム組成物の製造方法。
【請求項7】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)少なくとも一種の化学療法薬を内包するリポソームを得、
(b)以下の(1)と(2):
(1) 環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体と
(2) ポリエチレングリコールの合成誘導体
を含むターゲティング組成物を得、
(c)該リポソームと該ターゲティング組成物を組み合わせて懸濁液を形成し、そして
(d)得られた懸濁液を患者に投与する
ことを包含する、患者の癌を治療する方法。
【請求項9】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
化学療法薬がドキソルビシンであることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
患者に存在すると考えられる腫瘍の検出を目的とした診断方法を実施するための診断用又は画像化用試験キットであって、
− 環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体と、ポリエチレングリコールの合成誘導体を含むターゲティング組成物、及び
− 少なくとも一種の画像化剤を内包するリポソーム
を包含する試験キット。
【請求項12】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項11に記載の試験キット。
【請求項13】
− 環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体と、ポリエチレングリコールの合成誘導体を含むターゲティング組成物、及び
− 少なくとも一種の画像化剤を内包するリポソーム
を包含する、診断用又は画像化用組成物。
【請求項14】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(1)以下の(a)と(b):
(a) 環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体と
(b) 上記(a)成分に共有結合したポリエチレングリコールの合成誘導体
を含むターゲティング組成物、及び
(2)少なくとも一種の化学療法薬を内包するリポソーム
を含有する懸濁液を用いて製造した医薬組成物。
【請求項16】
CTT2ペプチドの誘導体が、KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチドであることを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
KRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA)RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、K(DOTA(In))RENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K-NH2、Ac-GRENYHG-シクロ(CTTHWGFTLC)K(DOTA)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-6-フルオロ-W)GFTLC)-NH2、GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-フルオロ-W)GFTLC)-NH2 及び GRENYHG-シクロ(CTTH(d,l-5-OH-W)GFTLC)-NH2 からなる群より選ばれるペプチド。
【請求項18】
環状 GRENYHGCTTHWGFTLC ペプチド(CTT2ペプチド)又はその誘導体をポリエチレングリコールの合成誘導体に共有結合することによって得られるターゲティング組成物の精製方法であって、
(a)反応混合物を有機溶媒で処理して沈殿物を得、
(b)得られた沈殿物を遠心分離に付し、有機溶媒で洗浄し、再度遠心分離に付すことでペレットを得、
(c)得られたペレットを緩衝液に懸濁し、そして
(d)サイズ排除クロマトグラフィーを行って精製されたターゲティング組成物を得る
ことを包含する精製方法。
【請求項19】
工程(a)と工程(b)で使用する有機溶媒がジエチルエーテルであり、工程(c)で使用する緩衝液がpH4.5の酢酸アンモニウム−TFA緩衝液であることを特徴とする、請求項18に記載の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図7h】
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【図7i】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−505049(P2008−505049A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534777(P2006−534777)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/FI2004/050150
【国際公開番号】WO2005/037862
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(503348847)シーティーティー キャンサー ターゲッティング テクノロジーズ オイ (6)
【氏名又は名称原語表記】CTT Cancer Targeting Technologies Oy
【Fターム(参考)】