説明

タービンエンジンファン

本発明は、ロータディスクを含むタービンエンジンエアブロワーに関する。ロータディスクは、外周に、ディスクを下流側の圧縮機ロータに取り付けるための半径方向ラグ(26)をそれぞれ備える長手方向リブ(12)を備える。ラグ(26)の側面はディスクに取り付けられた羽根を保持するための当接部を形成し、ラグ(26)の側面を保護するための手段(32)がラグ(26)と羽根との間で円周方向に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ジェットエンジンまたはターボプロップエンジンのようなタービンエンジンのファンに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の形では、タービンエンジンファンは、その外周に複数の長手方向リブを有するロータディスクを備え、複数の長手方向リブ間にブレード根元部を軸方向に取り付けて半径方向に保持するためのスロットが画定される。それぞれのリブの下流側端部は、半径方向ラグを備え、半径方向ラグは、ファンディスクをファンの下流側に配置される低圧圧縮機の上流側フランジに固定するためのネジまたはボルトを通すためのオリフィスを備える。したがって、低圧圧縮機は、タービンシャフトによってファンのロータと一緒に回転駆動される。
【0003】
各々のラグの側面は、ブレードを保持するためのストッパとなって、ブレードの角移動を制限する。ブレードが脱落した場合に、ディスクから分離されたブレードは隣接ブレードに衝突し、隣接ブレードは角度傾斜してラグの側面に当接し、ラグの側面が分離されたブレードの隣接ブレードへの衝突によって放出されたエネルギーをディスク全体に伝達して、翼列内のブレードの脱落を防ぐ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機が地上にあってタービンエンジンが停止している時、タービンエンジンの回転部品は、自転(「空転(windmilling)」と呼ばれる)する場合がある。これは、タービンエンジンに流入する空気がファンのロータを約40〜50回転/秒の速度で回転させるためである。この低回転速度では、ブレードをスロット内の適切な位置で係止するのにブレードの十分な遠心力が得られない。結果として、ファンのブレードがディスクリブのラグの側面に傾斜する可能性がある。ブレードの度重なる接触がラグの側面とブレードとの間の摩擦を引き起こし、このことがストッパの早期の摩耗につながるので、ストッパをより頻繁に修理する必要がある。
【0005】
現在では、ラグの側面の修理は、金属層のプラズマ蒸着によって行われる。しかしながら、このように修理されたディスクのラグの疲労強度は新しいディスクのラグの疲労強度よりも低い。さらに、これらの金属蒸着物は、限られた耐衝撃性を有し、時間と共に徐々に崩壊する可能性がある。
【0006】
最後に、この作業は翼の下で行うことができないので、分解して、メンテナンス作業場内で修理する必要がある。これは、結果として、拘束時間が長時間になり、コストがかかり、また高価で複雑なツーリングが必要になる。
【0007】
本発明の目的は、特に、上述した種々の問題に対する簡単で経済的で有効な解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、ブレード根元部を取り付けるためのスロットを外周に有するロータディスクを備え、スロットはディスクを下流側圧縮機ロータに固定するための半径方向ラグを各々有する長手方向リブによって画定され、ラグの側面はディスクに取り付けられたブレードを保持するためのストッパを形成するタービンエンジンファンであって、ディスクのラグにU字状クリップが取り付けられ、その各々が半径方向ラグの側面を覆う2つの側方タブを備えることを特徴とするタービンエンジンファンを提案する。
【0009】
したがって、本発明は、ディスクのラグを保護するためのクリップを組み込んで、ファンが自転を始めた時にブレードの度重なる接触によって生じるラグの側面の摩耗を防ぐことを提案する。
【0010】
したがって、ファンディスクのリブのラグを修理するのにタービンエンジンを分解する必要がなくなる。これらのクリップの組み込みは、容易に実現でき、航空機の翼の下に取り付けられたタービンエンジンで行うことができるので、分解やメンテナンス作業場への輸送を避けることができる。
【0011】
クリップは、ラグの上流側から軸方向に嵌め込まれてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態では、各々のクリップは、ラグの半径方向上流側面に当てられる横壁で、下流側圧縮機ロータに固定するのにネジまたはボルトを通すためのラグ内の対応オリフィスと位置合わせされたオリフィスを備える横壁を備える。
【0013】
したがって、各々のクリップは、ディスクを下流側圧縮機ロータと固定する時に、ディスクの半径方向ラグに締め付けられる。横壁の厚さは、固定ネジまたはボルトをさらに大きなネジまたはボルトに交換する必要がない程度に薄い。
【0014】
有利には、クリップの各々の側方タブは、半径方向ラグの側面のストッパに適合する長手方向のU字状のフォールド部を備え、確実にクリップをラグに軸方向に取り付けて、このクリップをこのラグ上で半径方向に保持することができる。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、クリップの各々の横壁は、少なくとも1つの半径方向タブを備え、その自由端部はディスクのリブに沿って上流側に延びる。
【0016】
好ましくは、各クリップは、平行で互いに円周方向に離間した上述の2つの半径方向タブを備え、クリップがラグに締め付けられる時にクリップが回転するのを防ぐ。
【0017】
本発明はさらに、上述したようなファンディスクの周辺リブの半径方向ラグの側面を保護するためのクリップであって、中央オリフィスを備える横壁によって接続される2つのほぼ平行な側方タブを備え、各々のクリップの横壁は2つの曲がったタブによって延長され、タブの自由端部はクリップの側方タブと反対方向に延びることを特徴とするクリップに関する。
【0018】
添付図面を参照して、非限定的な例として挙げられた以下の説明を読むことによって、本発明はよりよく理解され、本発明の他の詳細、利点、および特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】先行技術のファンディスクの部分概略斜視図である。
【図2】先行技術のファンディスクのスロットに取り付けられるブレードの部分概略断面図である。
【図3】本発明のディスクのラグを保護する手段を備えるディスク部分を上流側から見た概略図である。
【図4A】本発明のファンディスクの半径方向ラグを保護するためのクリップの斜視図である。
【図4B】本発明のファンディスクの半径方向ラグを保護するためのクリップの斜視図である。
【図5】下流側に配置されている低圧圧縮機ロータに本発明のファンディスクを固定した軸方向断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
最初に、図1を参照する。図1は、外周に長手方向リブ12を備え、長手方向リブ12間にブレード16を軸方向に取り付けて半径方向に保持するためのスロット14が画定されるタービンエンジンファンディスク10の一部を示す概略図である。各々のブレード16は、羽根18と、羽根の基部に形成され、タービンエンジンに流入する空気流の環状ストリームを内側に画定するプラットフォーム20とを備える。「プロップ」として周知のゾーン22は、プラットフォーム20と羽根18とをブレード根元部24に接続するゾーンである。
【0021】
ファンディスク10の各々のリブ12は、下流側端部に形成される半径方向ラグ26を備える。これらのラグ26はそれぞれ、下流側に配置される低圧圧縮機ロータの環状フランジに形成される対応オリフィスと位置合わせされる軸方向オリフィス28を備える(図5参照)。固定ネジは、ディスク10のラグ26のオリフィス28と、圧縮機ロータの環状フランジのオリフィスとに挿入される。
【0022】
各々の半径方向ラグ26は、各々が突出した長手方向ストッパ30を有する側面を備える。ラグ26の側面に形成される各ストッパ30は、隣接ラグのストッパ30と円周方向に位置合わせされる(図2)。
【0023】
ブレード16がファンディスク10に取り付けられると、長手方向ストッパ30の向かい側に位置するのはプロップ22である。
【0024】
ブレードが脱落した場合、分離されたブレードは隣接するブレード16に衝突し、隣接ブレードが傾斜して、プロップ22が半径方向ラグ26のストッパ30と接触する。したがって、これらのストッパ30は、分離されたブレードの圧力を受けるブレード16の角移動を制限して、衝突のエネルギーをファンディスク10に伝達することができる。
【0025】
先行技術では、これらのストッパ30が、主にタービンエンジンの始動および停止の衝撃、および地上で停止している時に時々生じる自転の作用により、比較的大きい摩耗を受けたことがわかった。これは、タービンエンジンに流入する空気により、ブレード16の遠心作用およびスロット14の安定位置でのブレード根元部24の係止を達成するのには十分でないファンの回転が生じるためである。その結果、ブレード16が連続的に傾斜して、プロップ22とストッパ30との摩擦を引き起こし、半径方向ラグ26のストッパ30が摩耗することになる。
【0026】
先行技術で提案された上述の解決策は、耐久性がなく、メンテナンス作業場での修理を行うためにはタービンエンジンを分解しなければならず、高価な設備が必要である。
【0027】
本発明によれば、クリップ32は、ファンディスク10の半径方向ラグ26に取り付けられて、ストッパ30を保護するためにラグ26の側面を覆う(図3)。
【0028】
各々のクリップは、U字状であり、2つの平行な側方タブ36、38に接続されるほぼ長方形の横壁34を備える。横壁34は、中央オリフィス40を備え、平行で端部が側方タブ36、38と反対方向に曲がった2つの半径方向の扁平タブ42、44によって延長され、これらの2つの半径方向タブ42、44は、互いに離間している(図4Aおよび図4B)。
【0029】
クリップ32の側方タブ36、38はそれぞれ、ディスク10のラグ26の長手方向ストッパ30に適合するようにU字状の長手方向フォールド部41を備える。
【0030】
タービンエンジンディスク10のラグ26にクリップ32を取り付けるために、クリップ32は、半径方向ラグ42、44がリブ12に沿ってディスク10の上流側に向かって延びるようにディスク10に位置決めされる。その後、クリップ32は、側方タブ36、38のU字状フォールド部41がディスク10の半径方向ラグ26の長手方向ストッパ30に適合するように下流側に平行移動され、クリップ32の横壁34は半径方向ラグ26の上流側半径方向面に当てられる。その後、固定ネジ46が下流側から、クリップ32、ラグ26、および低圧圧縮機ロータの環状フランジ48の位置合わせされたオリフィスに挿入される。固定ナット50が、クリップ32の上流側面で締められる(図5)。
【0031】
横壁34が約10分の数ミリメートルの非常に薄い厚さであることを考えると、クリップ32の挿入により固定ネジ46の寸法が変わることはない。
【0032】
半径方向ラグ26のオリフィス28の半径方向位置決めの許容差を補償して、どんな場合でも確実にクリップ32のオリフィス40を半径方向ラグ26のオリフィス28と位置合わせできるように、半径方向タブ42、44がディスク10のリブ12に対して半径方向間隙Jを空けて取り付けられるようなサイズでクリップ32を形成するのが望ましい。
【0033】
ラグの側面を保護するためのこのタイプの保護クリップ32は、新しいファンディスク10および使用中のディスクの両方に使用できる。使用中のディスクでは、ストッパ30にある程度摩耗が見られる場合、ストッパ30の表面をクリップ32と接触する滑らかな表面にするように研磨することによってブリーチングを行う必要がある。したがって、この作業は、摩耗したラグの側面の0.2mm〜0.5mmの材料を除去するステップから成る。
【0034】
クリップ32は、タービンエンジンが航空機の翼の下の定位置にある時に、ファンディスク10のラグ26に組み込むことができる。このことで、拘束時間を低減することができ、各々のクリップ32は既存の固定要素で固定されるので複雑な設備は必要でない。
【0035】
クリップ32は、INCONELなどの金属材料で製造することができ、ブレード16は、チタン製にすることができる。こうすることで、クリップ32がブレード16よりも早く摩耗することがほとんどなくなる。
【0036】
クリップ32は、金属板を折り曲げて切り取るという連続的な作業によって、または材料ブロックを機械加工することによって、製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード根元部(24)を取り付けるためのスロット(14)を外周に有するロータディスク(10)を備え、スロット(14)はディスク(10)を下流側の圧縮機ロータに固定するための半径方向ラグ(26)を各々備える長手方向リブ(12)によって画定され、ラグ(26)の側面はディスク(10)に取り付けられたブレード(16)を保持するためのストッパを形成するタービンエンジンファンであって、U字状クリップ(26)は、ディスクのラグに取り付けられ、それぞれ半径方向ラグの側面を覆う2つの側方タブ(36、38)を備えることを特徴とする、タービンエンジンファン。
【請求項2】
クリップ(32)が、ラグ(26)に上流側から軸方向に嵌め込まれることを特徴とする、請求項1に記載のファン。
【請求項3】
各々のクリップ(32)が、ラグ(26)の半径方向上流側面に当てられる横壁(34)で、下流側の圧縮機ロータに固定するためのネジまたはボルトを通すためにラグ(32)内の対応オリフィス(28)と位置合わせされるオリフィス(40)を備える横壁(34)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のファン。
【請求項4】
各々の側方タブ(36、38)が、半径方向ラグ(26)の側面のストッパに適合する長手方向フォールド部(41)を備えることを特徴とする、請求項3に記載のファン。
【請求項5】
クリップ(32)の横壁(34)が、少なくとも1つの半径方向タブ(42、44)を備え、その端部はディスク(10)のリブ(12)に沿って上流側に向かって延びることを特徴とする、請求項3または4に記載のファン。
【請求項6】
各々のクリップが、平行で互いに円周方向に離間した上述の2つの半径方向タブ(42、44)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のファン。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のファンディスク(10)の周辺リブ12の半径方向ラグ(26)の側面を保護するためのクリップ(32)であって、中央オリフィス(40)を備える横壁(34)によって接続される2つのほぼ平行な側方タブ(36、38)を備えることを特徴とする、クリップ(32)。
【請求項8】
横壁(34)が、2つの曲がったタブ(42、44)によって延長され、その自由端部はクリップ(32)の側方タブ(36、38)と反対方向に延びることを特徴とする、請求項7に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519030(P2013−519030A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551662(P2012−551662)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050116
【国際公開番号】WO2011/095722
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】