説明

タービンハウジング

【課題】 排気ガスを無駄なく利用して、タービン効率の低下を防止することができるタービンハウジングを提供する。
【解決手段】 内側ハウジング10と外側ハウジング20とを備えたタービンハウジングにおいて、タービンホイールのシュラウド部1dを取り囲むためのシュラウド部材60を設け、シュラウド部材60と、外側ハウジング20の出口側端部とにより隙間G0を形成してその隙間G0に内側ハウジング10の出口側端部16を挿入し、この隙間G0を、タービンホイールの出口側に対し閉止すると共に、タービンホイールの上流側に開放させる。隙間G0がタービンホイールの出口側に対し閉止されるので、隙間G0からタービンホイールの出口側への排気ガスの漏れが防止される。また、隙間G0に存在する排気ガスはタービンホイールの上流側に流れ、タービンホイールの駆動に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタービンハウジングに係り、特に、内側ハウジングとこの内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを備えたターボ過給機のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ過給機のタービンハウジングとしては鋳造製のものが一般的である。これに対し、板金製のタービンハウジングも例えば特許文献1により提案されており、これにおいては、金属板を適宜加工してなる板金製の内側ハウジングと外側ハウジングとが備えられ、内側ハウジングを隙間を介して外側ハウジングにより覆う構造となっている。このタービンハウジングにおいては、内側ハウジングを二分割形成してそれらを嵌合させると共に、内側ハウジングの排気ガス出口側の一端部をタービン軸方向にスライド可能に支持することで、排気ガスの熱を直接受ける内側ハウジングが熱膨張したときの逃げを提供し、内側ハウジングへの応力を緩和することとしている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−004871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のタービンハウジングでは、内側ハウジングの嵌合部(特許文献1の図1、図4参照)から外側ハウジングと内側ハウジングとの間の隙間に排気ガスが流入するおそれがあり、その排気ガスが、内側ハウジングの一端部がスライド可能に支持されることに起因して、タービンホイールを通過せずに、そのスライド支持部を通過してタービン下流側に漏れ出てしまうことがある。こうなると排気ガスの一部が全く仕事をせずに捨て去られることになり、タービン効率の低下が生じるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、排気ガスを無駄なく利用して、タービン効率の低下を防止することができるタービンハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るタービンハウジングは、内側ハウジングと、該内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、タービンホイールのシュラウド部を取り囲むためのシュラウド部材を設け、該シュラウド部材と、前記外側ハウジングの出口側端部とにより隙間を形成してその隙間に前記内側ハウジングの出口側端部を挿入し、前記隙間を、前記タービンホイールの出口側に対し閉止すると共に、前記タービンホイールの上流側に開放させたことを特徴とする。
【0007】
このタービンハウジングでは、シュラウド部材と外側ハウジングの出口側端部とにより形成される隙間がタービンホイールの出口側に対し閉止されるので、該隙間からタービンホイールの出口側への排気ガスの漏れが防止される。また、該隙間は、タービンホイールの上流側に開放されるので、隙間に存在する排気ガスはタービンホイールの上流側に流れ、タービンホイールの駆動に供される。これによりタービン効率の低下を防止することができる。
【0008】
前記内側ハウジングの出口側端部が前記隙間にスライド可能に挿入されているのが好ましい。これにより内側ハウジングの出口側端部がスライド可能に支持される。
【0009】
さらに、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとがそれらの出口側端部において互いにスライド可能に嵌め合わされる嵌合部が設けられ、該嵌合部において、前記内側ハウジングの出口側端部に、前記外側ハウジング側に突出して前記外側ハウジングにスライド可能に当接する肉厚部が設けられたことを特徴とすると好ましい。これにより、内側ハウジングが排気ガスの熱により熱変形しても、その肉厚部がスライドするので、適切に応力緩和を図ることが可能となる。さらに、外側ハウジングに当接する肉厚部が内側ハウジングに設けられているので、当該肉厚部の部分で内側ハウジングの剛性を向上できると共に、当該肉厚部により外側ハウジングとの間の嵌め合い精度を高めるような加工代を内側ハウジングに確保することが出来る。
【0010】
さらに、前記シュラウド部材は管材からなるのが好ましい。これにより、シュラウド部材をプレス加工等により安価に且つ容易に作製することができる。
【0011】
さらに、前記内側ハウジングおよび前記外側ハウジングが板金製であると好ましい。これにより、内側ハウジングおよび外側ハウジングは、比較的容易に且つ安価に作製される。
【0012】
あるいは、前記内側ハウジングが鋳造製であり、前記外側ハウジングが板金製であると好ましい。これにより、内側ハウジングの設計の自由度を向上することができる。また外側ハウジングについては比較的容易に且つ安価に作製することが可能になる。内側ハウジングは鋳造製であるので、例えばその肉厚を必要に応じて部位毎に適切に設定することが可能であり、部分的に肉厚を厚くすることも可能になる。
【0013】
また、本発明に係る他のタービンハウジングは、内側ハウジングと、該内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、前記内側ハウジングを鋳造製とし、前記外側ハウジングを板金製としたことを特徴とする。これにより、内側ハウジングについては設計の自由度を向上することが可能になる。また外側ハウジングについては前述の如く比較的容易に且つ安価に作製することが可能になる。内側ハウジングは鋳造製であるので、例えばその肉厚を必要に応じて部位毎に適切に設定することが可能であり、部分的に肉厚を厚くすることも可能になる。
【0014】
この上記本発明に係る他のタービンハウジングにおいて、前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとが互いにスライド可能に嵌め合わされる嵌合部が設けられ、該嵌合部において、前記内側ハウジングに、前記外側ハウジング側に突出して前記外側ハウジングにスライド可能に当接する肉厚部が設けられたことを特徴とすると好ましい。これにより、内側ハウジングが排気ガスの熱により熱変形しても、その肉厚部がスライドするので、適切に応力緩和を図ることが可能となる。さらに、外側ハウジングに当接する肉厚部が内側ハウジングに設けられているので、当該肉厚部の部分で内側ハウジングの剛性を向上できると共に、当該肉厚部により外側ハウジングとの間の嵌め合い精度を高めるような加工代を内側ハウジングに確保することが出来る。これにより嵌合部のシール性を高め、排気ガスの漏れを防止し、タービン効率の低下を防止することが可能となる。
【0015】
また、上記本発明に係る他のタービンハウジングにおいて、前記内側ハウジングがタービンホイールの上流側から下流側に排気ガスをバイパスさせるためのバイパス通路を区画形成し、前記バイパス通路の出口部と、前記内側ハウジングの出口側端部とが互いに併設され、前記内側ハウジングの出口側端部が、少なくとも前記バイパス通路の出口部より下流側に位置するように延在されていることを特徴とすると好ましい。これにより、タービンホイールを回転駆動させた後の排気ガスの流れに、バイパスされた排気ガスの流れが干渉することが防止される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排気ガスを無駄なく利用して、タービン効率の低下を防止することができるという優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。なお以下の実施形態に係るタービンハウジングは、車両用ターボ過給機のラジアル形タービンに適用されるものである。
【0018】
図1から図3に、第一実施形態のタービンハウジング1の外観図を示す。図1はタービンハウジング1の側面図であり、図2はその正面図であり、図3はその背面図である。図1に白抜き矢印で排気ガスの流れを示す。エンジン(図示せず)からの排気ガスは、図中下方の入口70からタービンハウジング1内に入り、タービンハウジング1内で直角に向きを変え、タービン軸方向に沿って出口80からタービンハウジング1外に排出される。入口70付近には入口側フランジ部30が設けられ、入口側フランジ部30はエンジン側の排気管または排気マニホールド(図示せず)との接続に利用される。出口80付近には出口側フランジ部40が設けられ、出口側フランジ部40はその下流側の排気管(図示せず)との接続に利用される。またセンターハウジング5(図5参照)との接続に利用されるセンターフランジ部50も設けられる。
【0019】
タービンハウジング1の断面図を図4および図5に示す。図4は、図1におけるA−A線に沿った断面図、換言すると、タービン軸線Lに直交する面で切断した断面図である。図5は、図2のB−B線に沿った断面図、換言すると、タービン軸線Lを含む面で切断した断面図である。
【0020】
これら図から理解されるように、タービンハウジング1は、ともにプレス成形可能な板金製の内側ハウジング10および外側ハウジング20からなるいわゆる二重殻構造とされている。内側ハウジング10が、ハウジング内部の排気ガスの流路を実質的に区画形成し、外側ハウジング20は内側ハウジング10を隙間Gを介して覆い、内側ハウジング10を保護すると同時に断熱し、且つタービンハウジング1としての剛性を高める役割も担う外殻ないし構造体をなしている。内側ハウジング10によって区画される排気ガスの流路は、上流側から順に、入口70、助走室S1、スクロール室S2、タービンホイール室S3、出口室S4および出口80となっており、スクロール室S2の半径方向内側にタービンホイール室S3が形成され、タービンホイール室S3にはタービンホイール1aが回転可能に収容される。内側ハウジング10と外側ハウジング20との間の隙間Gには、該隙間の良好な維持や内側ハウジング10の形状保持、断熱等のため、SUSメッシュやセラミックウールなどの耐熱性、耐食性、可撓性に優れた充填部材が全体的または部分的に配設され得る。
【0021】
図5に示されるように、センターハウジング5の一端にタービンハウジング1のセンターフランジ部50が接続固定される。この固定には図示されるような断面コ字状且つリング状の締結具51が用いられる。センターハウジング5の他端には図示しないコンプレッサハウジングが接続固定されており、コンプレッサハウジングには、タービン軸5aによりタービンホイール1aと同軸連結されたコンプレッサホイールが収容される。
【0022】
内側ハウジング10は、第一内側ハウジング部材11と、第二内側ハウジング部材12との二つの部材から分割形成されていて、互いを嵌め合せ、全周に渡って溶接等により固定することで作製される。詳しくは、第一内側ハウジング部材11と第二内側ハウジング部材12とは、内側ハウジング10をタービン軸線Lに直交する面で二分割するように形成されている。そのタービン軸線Lに沿った分割位置は、スクロール室S2の最外径位置付近であり、助走室S1とスクロール室S2とを半割りするような位置である。第一内側ハウジング部材11は第二内側ハウジング部材12よりもタービン軸方向先端側に位置される。第一内側ハウジング部材11と第二内側ハウジング部材12とは、それぞれ金属の板材料をプレス成形することで作製される板金製である。これにより作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、例えば0.4mmから2.0mmとされ、外側ハウジング20をなす金属板材料よりも薄いものが使用される。内側ハウジング10の金属板材料は、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばステンレス鋼が用いられる。なお、本発明に係る内側ハウジングはこのような構成、寸法、材料等に限定されるものではない。内側ハウジングは異なる方法で分割されても良い。
【0023】
図4に示されるように、内側ハウジング10には、助走室S1からスクロール室S2への排気ガスの流入を円滑にすべく、舌片状のタングTが設けられている。当該タングTは、図6に示されるように、第一および第二内側ハウジング部材11、12に形成された凸平面状のタング部13、14を、互いの接合面13a、14aで接合させ、溶接等により固定して形成される。なお助走室S1とは入口70からタングTの下流端までの空間をいう。タング部13、14の基端位置には、互いに適合形状とされた位置決め部が設けられる。一方のタング部13の位置決め部のみを図4に13bで示す。第一内側ハウジング部材11と第二内側ハウジング部材12との嵌合時に、位置決め部同士を互いに適合ないし嵌め合わせることで、第一内側ハウジング部材11と第二内側ハウジング部材12との回転方向の位置決めを容易に且つ正確に行うことができる。内側ハウジング10においては、排気バイパスのためのバイパス穴17が助走室S1に設けられている。
【0024】
他方、外側ハウジング20は、内側ハウジング10と同様、第一外側ハウジング部材21と第二外側ハウジング部材22との二つの部材から分割形成されていて、互いを嵌め合せ、全周に渡って溶接等により固定することで作製される。第一外側ハウジング部材21と第二外側ハウジング部材22とは、外側ハウジング20をタービン軸線Lに直交する面で二分割するように形成されており、そのタービン軸線Lに沿った分割位置は内側ハウジング10と同じである。第一外側ハウジング部材21と第二外側ハウジング部材22とは、それぞれ金属製板材料をプレス成形することで作製される板金製である。これにより作製は比較的容易に且つ安価に行うことができる。金属板材料の厚さは、内側ハウジング10よりも厚くされ、例えば1.5mmから3.0mmとされる。外側ハウジング20の金属板材料も、耐食性および耐熱性に優れたものが採用され、例えばオーステナイト系ステンレス鋼やフェライト系ステンレス鋼が用いられる。なお、本発明に係る外側ハウジングはこのような構成、寸法、材料等に限定されるものではない。ただし外側ハウジング20はタービンハウジング1の外殻であるため、ある一定以上の強度、剛性を有することが必要とされる。
【0025】
外側ハウジング20は、入口側端部23(図7参照)と、出口側端部24と、バイパス穴25とを備えている。バイパス穴25は、前述の内側ハウジング10のバイパス穴17に整列され、排気バイパスのために利用される。これらバイパス穴17と共にバイパス穴25は、タービンホイール1aの上流側から下流側に排気ガスをバイパスさせるためのバイパス通路Pを区画形成する。このバイパス穴25は不図示のウェイストゲート弁により出口80側から開閉される(図3参照)。
【0026】
図4および図7に示されるように、入口側フランジ部30は例えば厚肉(5mmから15mm)の金属板材料のプレス加工により作製される。ここで入口側フランジ部30には外側ハウジング20の入口側端部23が挿入されて溶接等により固定される。なお入口側フランジ部30には、外側ハウジング20の入口側端部23を位置決めするための段部31が設けられている。
【0027】
これに対し、外側ハウジング20の入口側端部23の内側には、内側ハウジング10の入口側端部15が単にスライド可能に嵌め合わされるだけであり、これにより内側ハウジング10と外側ハウジング20との熱変形差が吸収されるようになっている。即ち、タービン運転時は内側ハウジング10が排気ガスの熱を直接受け、高温となるため、内側ハウジング10の方が外側ハウジング20より熱膨張量が大きい。このときの熱膨張差が、外側ハウジング20の入口側端部23に対する内側ハウジング10の入口側端部15のスライド移動により吸収され、内側ハウジング10内の流路の形状を保つと共に、内側ハウジング10に作用する応力を緩和するようにしている。いわばこのスライド部は熱膨張差を吸収するための内側ハウジング10のための逃げである。このようなスライド部は後述する出口側にも設けられ、このタービンハウジング1では入口側と出口側との二箇所で内側ハウジング10がスライド可能に支持される。このスライド部では、微視的に見れば、部材間の境界に隙間があり、この隙間を排気ガスが微量ながら通過する。この点については後に詳しく述べる。入口側の隙間が図7に誇張してG4で示され、この隙間G4はメインの隙間Gに連通される。隙間G4は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。
【0028】
一方、図5に示されるように、内側ハウジング10および外側ハウジング20はセンターフランジ部50に溶接等により接続固定される。内側ハウジング10はセンターフランジ部50の内側端面52に接続固定され、外側ハウジング20はセンターフランジ部50に形成された段部53に接続固定される。
【0029】
タービンハウジング1の出口側では、外側ハウジング20の出口側端部24に出口管41を介して出口側フランジ部40が取り付けられている。外側ハウジング20の出口側端部24は、全体として円筒状をなすと共に、その末端部24aが縮径されるようクランク状に成形され、その末端部24aの外側に出口管41の一端部が嵌められ、溶接等により固定されている。出口管41の他端部はプレス加工等により直角に曲げられ、そこに平板リング状の出口側フランジ部40が溶接等により固着される。出口側フランジ部40は管材を切断したり鋳造したりすることによって作製できる。これら出口管41および出口側フランジ部40により出口室S4および出口80が形成される。
【0030】
特に本第一実施形態のタービンハウジング1は、タービンホイール1aのシュラウド部1dを取り囲むためのシュラウド部材60を備えている。シュラウド部材60は、円筒状に形成され、その上流側部分60aがタービンホイール1aのシュラウド部1dのシュラウド曲線に倣うようなフレア形状とされ、その下流側端部60bが、外側ハウジング20の末端部24aの内側に嵌め入れられて、全周に亘って溶接等により固定される。これによりシュラウド部材60はタービン軸線L上に中心を持ち、外側ハウジング20の円筒状の出口側端部24と同軸に配置されるようになる。
【0031】
特に本第一実施形態においてシュラウド部材60は管材からなり、この管材をプレス加工にて曲げ成形することにより容易に且つ安価に作製できる。タービンホイール1aのシュラウド部1dと、シュラウド部材60との間のクリアランス(チップクリアランス)は、タービン効率に影響を及ぼすため重要である。そこでこのチップクリアランスを高精度に保つため、そのシュラウド部1dに対向するシュラウド部材60の表面は機械加工により高精度に仕上げられる。ただし曲げ成形のみで精度が得られる場合は機械加工を省略しても良い。シュラウド部材60をなす管材の厚さは、機械加工を行う場合は加工代を見込んで内側ハウジング10よりも厚くされ(例えば1.5mmから3.0mm程度)、機械加工を行わない場合は内側ハウジング10よりも厚くされるかまたは同等とされる。なお、シュラウド部材60の厚さを大きくするとその剛性が高くなり、運転中の熱変形が抑制される。シュラウド部材60の内側には高温の排気ガスが通過するので、シュラウド部材60は耐熱性、耐食性に優れた材料で作製される。このシュラウド部材60によりタービンホイール室S3が形成される。
【0032】
このようにして外側ハウジング20にシュラウド部材60を組み付けると、外側ハウジング20とシュラウド部材60との間にリング状の隙間G0が形成される。この隙間G0は、シュラウド部材60の出口側端部60bと外側ハウジング20の末端部24aとの固着部即ち閉止部により、タービンホイール1aの出口側即ち出口室S4および出口80に対し閉止され、他方、タービンホイール1aの上流側即ちスクロール室S2に対しては開放されることとなる。この隙間G0に、内側ハウジング10の出口側端部16が挿入されている。内側ハウジング10の出口側端部16は、第一内側ハウジング部材11のスクロール室形成部11aから出口側に向かって突出形成され、全体として円筒状に形成されると共に、シュラウド部材60の外周面に沿う湾曲形状とされている。そしてその先端部が隙間G0に挿入されている。この挿入部において出口側端部16はスライド可能であり、即ち、出口側端部16の内周面がシュラウド部材60の外周面に対しスライド可能であり、出口側端部16の外周面が外側ハウジング20の出口側端部24の内周面に対しスライド可能である。
【0033】
こうして、内側ハウジング10の出口側端部16がタービン軸線L方向にスライド可能に支持され、内側ハウジング10と外側ハウジング20との熱変形差を吸収するスライド支持部が、タービン出口側にも形成されることになる。このスライド支持部においても、微視的に見れば部材間の境界に隙間がある。この隙間は、図8に誇張して示されるように、出口側端部16と外側ハウジング20との間の隙間G1、および出口側端部16とシュラウド部材60との間の隙間G3である。隙間G1、G3は、例えば0.1mmから0.25mmとされる。出口側端部16と前記閉止部との間にも軸方向の比較的大きな隙間G2があり、この隙間G2により出口側端部16の移動が十分許容される。なお本第一実施形態ではスクロール室形成部11a付近の出口側端部16がシュラウド部材60に重ね合わされており、これらの境界部に前記隙間G3に連通する隙間が形成される。以下これらを総じて隙間G3とする。
【0034】
結局、図8に示されるように、隙間G1,G2,G3によりUターン状の流路が形成され、この流路は、内側ハウジング10と外側ハウジング20との間のメインの隙間Gにその上流端が連通接続されると共に、その下流端がタービンホイール1aのリーディングエッジ部1c直前のスクロール室S2に連通接続される。
【0035】
次に、上記第一実施形態のタービンハウジング1に関し、その作用および効果について詳述する。
【0036】
ターボ過給機の運転時、エンジンからの排気ガスは、入口70からタービンハウジング1内へ入り、助走室S1、スクロール室S2を順に経てタービンホイール室S3に入り、ここでタービンホイール1aを回転駆動する。その後、出口室S4を経て出口80から排出される。タービンホイール1aの回転駆動によりコンプレッサホイールが回転駆動され、エンジンへ空気が過給されることとなる。
【0037】
一方、図7に示した隙間G4から、微量ながら排気ガスが隙間Gに流入する。この排気ガスは、図8に矢印で示されるように、出口側の隙間G0に到達し、隙間G1,G2,G3を順に経てタービンホイール1aの上流側に戻される。隙間G0がタービンホイール1aの出口側に対し閉止されているので、隙間Gに流入した排気ガスがタービンホイール1a(シュラウド部1dの外周面とシュラウド部材60の内周面との間)を通過せずに出口室S4側へ漏れ出すことはない。一方、この隙間G0がタービンホイール1aの上流側に開放されているので、隙間Gに流入した排気ガスは全てタービンホイール1aの駆動に供される。結局、隙間Gに流入した排気ガスを無駄にすることなく全て回収してタービンホイール1aの駆動に利用できるので、タービン効率の低下を防止することが可能となる。
【0038】
また、本第一実施形態のシュラウド部材60は、管材を適宜加工して作られるので、容易且つ安価に作製することができる。もっとも本発明にいうシュラウド部材には管材以外からなるものも含まれ、例えば鋳造品であってもよい。シュラウド部材60は、その出口側端部60bでのみ固定されており、反対側の上流側端部は熱伸縮可能である。これによりシュラウド部材60の熱応力も緩和できる。また、シュラウド部材60は軸対称な円筒状であるため熱変形も軸対称となり、つまり拡縮径するのみである。よってチップクリアランスを全周に渡り良好に維持することが可能となる。さらに、シュラウド部材60は内側ハウジング10とは別個の部材であるから、内側ハウジング10が熱変形の繰り返し等で劣化してもその影響はシュラウド部材60には及ばず、チップクリアランスに影響を及ぼさない。従って内側ハウジング10の劣化に伴うタービン性能の劣化を回避することができる。
【0039】
上記の如く、隙間G0に挿入された内側ハウジング10の出口側端部16は移動可能であり、それ故、内側ハウジング10が排気ガスからの熱により膨張することとなっても、その出口側端部16が移動する(つまり逃げる)ことにより、内側ハウジング10への応力が緩和され、タービンハウジング1の劣化は抑制される。即ち、仮にその出口側端部16が外側ハウジング20等に固定され拘束されていれば、内側ハウジング10が熱膨張するときの応力によりタービンハウジング1の劣化は早まるであろう。また、内側ハウジング10の出口側端部16がタービン軸線L方向に移動して内側ハウジング10の熱膨張や熱収縮を緩衝するため、内側ハウジング10の半径方向の張り出しは抑制される。たとえ内側ハウジング10の半径方向内側への張り出しが生じることがあっても、強固なシュラウド部材60がタービンホイール1aの周囲に存在し、タービンホイール1aを保護するので、内側ハウジング10のタービンホイール1aへの干渉は確実に防止される。
【0040】
同様に、タービンハウジング1の入口側にも内側ハウジング10のためのスライド支持部があるので、内側ハウジング10の熱膨張時における応力が、内側ハウジング10の助走室方向への伸びにより緩和され、タービンハウジング1の劣化は抑制される。
【0041】
さらに、タービンハウジング1は上記の如く二重殻構造とされている。このため、タービンハウジングを一体の鋳造品とする場合に比して、ハウジングの肉厚(本第一実施形態の場合、内側ハウジング10と外側ハウジング20との合計肉厚)を薄くできる。また、隙間Gによって断熱効果が発揮されて、内側ハウジング10の内部から外部への散熱が抑制される。従って、タービンハウジング1内で排気ガスから熱が奪われることが抑制され、より高温の排気ガスがタービンハウジング1から排出されることとなる。タービンハウジング1の下流側に排気浄化用の触媒がある場合には、エンジン冷間始動後における触媒の早期活性化に貢献できる。加えて、ハウジングの肉厚が薄くされるので、過給機の軽量化も達成されることとなり、ひいては燃費向上にもつながることとなる。内側ハウジング10と外側ハウジング20との間の隙間Gにセラミックウールなどの部材を充填した場合には、その空間を埋めると同時に内側ハウジング10の変形を抑制でき、さらには隙間Gへの排気ガスの流入も抑制することが可能となり、比較的厳しい使用条件下(排気ガス温度が高温の場合など)においてもタービン性能の低下が抑制される。
【0042】
以上、本発明に係るタービンハウジングを第一実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記第一実施形態においてはシュラウド部材60と外側ハウジング20とを直接固定して隙間G0の閉止部を形成するようにしたが、この閉止部の構造は様々なものが考えられ、例えば、シュラウド部材60と外側ハウジング20との間に他の部材(例えば出口管41)を介装し、これら3部材をまとめて固着して閉止部を形成するようにしてもよい。またタービンハウジングの出口側および(または)入口側のスライド部に、スライドを良好にさせるための緩衝部材(例えばSUSメッシュやセラミックウール(触媒マット))を介在させてもよい。内側ハウジングや外側ハウジングを助走室側とスクロール室側とに分けて分割形成しても良い。あるいは、第一内側ハウジング部材11と第二内側ハウジング部材12とを一体に成形することとしても良い。また本発明に係るタービンハウジングは例えば斜流タービンや可変容量タービン等の他のタービン形式にも適用できる。
【0043】
次に、本発明の第二実施形態について、図9に基づいて説明する。第二実施形態のタービンハウジング101は、上記第一実施形態のタービンハウジング1と比較して、内側ハウジング110を板金製ではなく鋳造製とし、その出口側端部116に肉厚部118を設けた点で異なる。以下相違点について主に説明し、共通点については図中同一符号を付して説明を省略する。なお、本第二実施形態のタービンハウジング101の外観は上記第一実施形態の外観と概ね同じである(図1〜図3参照)。図9は図2のB−B線断面相当図である。
【0044】
本第二実施形態のタービンハウジング101における内側ハウジング110は鋳造製であり一体として作製される。外側ハウジング20とシュラウド部材60との間の隙間G0に、内側ハウジング110の出口側端部116の先端部に形成された肉厚部118がスライド可能に挿入される。なお内側ハウジング110の出口側端部116は、内側ハウジング110のスクロール室形成部111aから出口側に向かって突出形成され、全体として略円筒状に形成されると共に、上記シュラウド部材60の外周面に沿う湾曲形状とされている。
【0045】
内側ハウジング110と外側ハウジング20とは、それら出口側端部116,24において互いにスライド可能に嵌め合わされ、嵌合部を形成している。そして、内側ハウジング110の出口側端部116には、外側ハウジング20側即ち径方向外側に突出して外側ハウジング20にスライド可能に当接する肉厚部118が設けられている。肉厚部118の外周面は、好ましくは、外側ハウジング20の出口側端部24の当接面26と所定の嵌め合い公差をなすように機械加工される。言い換えればこのような機械加工のための加工代を確保すべく肉厚部118が設けられる。これにより嵌合部の嵌め合い状態が最適化され、その嵌め合い精度を高めることができる。この肉厚部118の利点については後にさらに詳述する。
【0046】
このタービンハウジング101では、内側ハウジング110が鋳造により作製されているので、内側ハウジング110の設計の自由度を増すことができる。まず、内側ハウジング110を概ね薄肉とすることが可能になる。本第二実施形態の内側ハウジング110は外側ハウジング20とほぼ同じ厚みを有するが、本発明はこれに限定されず、内側ハウジング110を外側ハウジング20よりも薄肉にしても良い。さらに、内側ハウジング110を部分的に薄肉にしたり、部分的に厚肉にしたりして、内側ハウジング110が部位毎に応じて必要な強度を有するように厚みを変えることが可能である。このため強度確保と軽量化とが両立可能である。なお、内側ハウジング110を薄肉とする場合には、例えば2.0mm程度、もしくはそれより薄い厚さにすることが可能でなる。薄肉の内側ハウジングにすることで、排気ガスの熱が内側ハウジング110に奪われることが抑制され、触媒の暖機に有利となる。さらに、内側ハウジング110の形状自由度も高まる。例えば内側ハウジングを所謂ツインスクロール形状とすることが容易に可能である。さらに可変ノズル(Variable Nozzle;VN)型ターボチャージャ用の形状とすることも容易に可能である。さらに、きつい曲がり形状や複雑形状も容易に作れるので小型ターボチャージャに好適である。
【0047】
かかる鋳造製内側ハウジング110の材質としては、排気ガスの温度に照らして、鋳鉄や耐熱鋳鋼などが選択され得るが、オーステナイト鋳鉄(例えばニレジスト)、オーステナイト系耐熱鋳鋼もしくはフェライト系耐熱鋳鋼が用いられると良い。
【0048】
上記第一及び第二実施形態に係るタービンハウジングでは、内側ハウジングを覆うように外側ハウジングが配置されるので、内側ハウジングが板金製か鋳造製かのいずれかを問わず、薄く作製された場合、喩えタービンハウジング内に収容されたタービンホイールが破損等して、その破片などが内側ハウジングを突き破るようなことがあっても、外側ハウジングでそれらの外部への飛散等が防止可能である。
【0049】
ところで、背景技術の欄でも触れたように、ターボ過給機のタービンハウジングとしては一体且つ単一の鋳造製のものが一般的である。これに対して、軽量化、低熱容量化などを目的として、上記第一実施形態の如く板金製の内側ハウジングと板金製の外側ハウジングとを備えるタービンハウジングが好適である。一方、上記第二実施形態の如く、外側ハウジングを板金製としつつ内側ハウジングを鋳造製としたタービンハウジングは、上記したような鋳造製内側ハウジングの利点に鑑みれば、それ自体好ましいことが理解される。そこで、以下このような鋳造製内側ハウジングと板金製外側ハウジングとを備えたタービンハウジングに関する発明(以下、当該発明を第二発明と称し、これに対して上記の実施形態に関わる発明を第一発明と称する。)について、その実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する第二発明の実施形態は、シュラウド部材60が備えられていない点で上記第一発明の実施形態と異なる。また上記第一発明の実施形態と同一の構成については図中同一符号を付し説明を省略する。以下のいずれの実施形態も、タービンハウジングの外観は上記第一発明の実施形態と同様である(図1〜図3参照)。
【0050】
図10及び図11に示すように、本第二発明の第一実施形態に係るタービンハウジング201は、鋳造製の内側ハウジング210と板金製の外側ハウジング20とからなるいわゆる二重殻構造とされている。これら内側ハウジング210と外側ハウジング20とは、それら出口側端部216、24同士が互いに嵌め合わされ、それら入口側端部同士215、23も互いに嵌め合わされる。そして内側ハウジング210は、そのセンター嵌合部219において、センターフランジ部50に嵌め合わされ、結局、タービンハウジング201には3カ所の嵌合部(入口側嵌合部α、出口側嵌合部β及びセンター側嵌合部γ)が形成される。内側ハウジング210の外側ハウジング20に対する熱膨張差を吸収し、内側ハウジング210への熱応力を低減するため、これら3カ所の嵌合部は、少なくともいずれか1カ所がスライド可能とされる。そしてスライド可能とされない箇所は溶接等で互いに固定される。本第二発明の第一実施形態の場合、入口側嵌合部αとセンター側嵌合部γとがスライド可能とされ残りの嵌合部(出口側嵌合部β)は固定されるが、残りの嵌合部をスライド可能としてもよい。スライド可能とされる箇所では、嵌合部の直径方向の隙間が0.25mm以下とされるのが好ましい。シュラウド部材の省略に伴い、タービンホイール(図示せず)のシュラウド部を取り囲む内側ハウジング210の内面は、機械加工される。この第二発明の第一実施形態のタービンハウジング201により、鋳造製の内側ハウジング210が有する上記作用効果を発揮することができる。
【0051】
次に、第二発明の第二実施形態に係るタービンハウジングを図12及び図13に基づいて説明する。図示されるように、このタービンハウジング301では、内側ハウジング310がツインスクロール形状をなすように形成されており、スクロール室を仕切る隔壁310Pが内側ハウジング310に一体に形成されている。3カ所の嵌合部α、β、γは全てスライド可能に嵌め合わされており、そのうち特に入口側嵌合部αと出口側嵌合部βとにおいては、内側ハウジング310に肉厚部320、318が設けられている。肉厚部320、318は、上記第一発明の第二実施形態(図9参照)と同様のものであり、それぞれ入口側端部αと出口側端部βとの先端部に、外側ハウジング20側に突出して設けられている。そして肉厚部320、318の外周面が外側ハウジング20の入口側端部23及び出口側端部24の内周面にそれぞれスライド可能に当接する。肉厚部320、318の外周面は、好ましくは、外側ハウジング20の入口側端部23と出口側端部24との内周面と所定の嵌め合い公差をなすように機械加工される。センター側嵌合部γでは前記同様のセンター嵌合部319が内側ハウジング310に設けられる。なおセンター側嵌合部γの内側の開口部には排気ガス通路の一部を区画するインシュレータ55がセンターフランジ部50に支持されて設けられる。
【0052】
これら肉厚部320、318によれば、入口側嵌合部αと出口側嵌合部βとにおけるシール性を高め、排気ガスの通過を防止することができる。即ち、まず、肉厚部320、318により機械加工のための加工代が十分確保でき、肉厚部320、318の外周面と被接触側の内周面との間の嵌め合い精度をバラツキなく高精度に保つことができる。また、肉厚部320、318により、自由端である入口側端部315と出口側端部316との剛性を向上でき、タービン作動時の振れを抑制することができる。これらにより、タービン作動時には、内側ハウジング310の熱膨張時も含め、内側ハウジング310と外側ハウジング20との好適な嵌め合い状態を維持でき、これをもって嵌合部のシール性を高め、ガスの通過を防ぐことができる。特に、出口側嵌合部βの肉厚部318によれば、排気ガスの外部への漏れを防止でき、タービン効率の向上に寄与できる。
【0053】
このように、スライド可能な嵌合部には肉厚部を設けることが好ましいが、必ずしも必須ではない。本第二発明の第二実施形態においても、その第一実施形態の入口側端部215を図11に示したように、入口側端部315の肉厚部を省略してもよい。また図14に示すように、センター側嵌合部γにおいて、内側ハウジング310のセンター嵌合部319に肉厚部321を設け、出口側嵌合部βから肉厚部を省略してもよい。
【0054】
上述の如く、かかる第二発明によれば、内側ハウジングが鋳造性なのでその形状には高い自由度がある。そこで、ここで説明する第二発明の第三実施形態においては、既述の実施形態において内側ハウジングと別体であった部材を内側ハウジングと一体とする。例えば、図15に示すように、センターフランジ部422が内側ハウジング410と一体に形成されていてもよい。この場合、センター側嵌合部が存在しないので、入口側嵌合部αと出口側嵌合部βとの少なくともいずれか一方をスライド可能とすることが必要である。勿論、スライド可能な嵌合部には肉厚部を設けることが好ましい。
【0055】
ところで、図3からも理解されるように、既述の実施形態においてはいずれも、内側ハウジングの出口側端部とバイパス通路Pの出口部とが並設されている。そして、ターボチャージャの作動時にウェイストゲート弁が開かれて排気バイパスが実行されると、バイパス通路Pを抜け出た排気ガスが、タービンホイールを通過した後の主流の排気ガスに干渉し、タービン効率低減の原因となる場合がある。そこで、このような干渉を防止するための構成が以下の第二発明の第四実施形態において採用されている。
【0056】
図16および図17に示すように、当該第四実施形態において、内側ハウジング510の出口側端部516は、少なくともバイパス通路Pの出口部P1より下流側に位置するように延在される。即ち、出口側端部516の先端516Aは、少なくとも図17中Xで示すバイパス通路Pの出口端位置よりも下流側に位置される。出口側端部516のうち、位置Xより下流側に位置される部分を延在部516Eとする。前記干渉防止という観点からは、内側ハウジング510の出口側端部516はできるだけ下流側に延在されるのが好ましい。本第二発明の第四実施形態では、出口側端部516の先端516Aの位置が出口側フランジ部40の表面40Aの位置に一致され、つまりタービンハウジングからはみ出ない最大限の長さまで、内側ハウジング510の出口側端部516が延在されている。これによれば、バイパス通路Pの出口部P1から出たバイパスガスが、隔壁としての延在部516Eによって、内側ハウジング510内に逆流・混入することが妨げられる。そして、タービンホイールを通過した後の主流の排気ガスは、バイパスガスにより干渉されることなく、延在部516Eによって出口80に導かれ、タービンハウジング501の外部に排出される。特に本実施形態の構成によれば、出口側端部516がタービンハウジング501からはみ出ないぎりぎりの長さまで延在されているので、少なくともタービンハウジング501内における干渉は確実に防止される。これにより、タービンホイール1a通過後の排気ガスの抜けが向上してタービン効率の向上に寄与できる。なお、延在部516Eの長さは、タービンハウジング下流側の触媒への排気ガスの供給が好適になるように定めてもよい。
【0057】
なお、上記では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明については、特許請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明は特許請求の範囲およびその等価物の範囲および趣旨に含まれる修正および変更を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本第一発明の第一実施形態に係るタービンハウジングの右側面図である。
【図2】図1に示したタービンハウジングの正面図である。
【図3】図1に示したタービンハウジングの背面図である。
【図4】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図2のB−B線に沿った断面図である。
【図6】図4のC−C線に沿った断面図であり、図4に示されない第二内側ハウジング部材も併せて示す。
【図7】図4のI1部拡大図である。
【図8】図5のI2部拡大図である。
【図9】本第一発明の第二実施形態のタービンハウジングの、図2のB−B線断面相当図である。
【図10】本第二発明の第一実施形態のタービンハウジングの、図2のB−B線断面相当図である。
【図11】本第二発明の第一実施形態のタービンハウジングの、図3のD−D線断面相当図である。
【図12】本第二発明の第二実施形態のタービンハウジングの、図2のB−B線断面相当図である。
【図13】本第二発明の第二実施形態のタービンハウジングの、図3のD−D線断面相当図である。
【図14】図12に示したタービンハウジングの変形例を説明するための、図2のB−B線断面相当図である。
【図15】本第二発明の第三実施形態のタービンハウジングの、図2のB−B線断面相当図である。
【図16】本第二発明の第四実施形態のタービンハウジングの、図2のB−B線断面相当図である。
【図17】本第二発明の第四実施形態のタービンハウジングの、図3のE−E線断面相当図である。
【符号の説明】
【0059】
1、101、201、301、401、501 タービンハウジング
1a タービンホイール
1b タービンブレード
1c リーディングエッジ部
1d シュラウド部
10、110、210、310、410、510 内側ハウジング
11 第一内側ハウジング部材
12 第二内側ハウジング部材
20 外側ハウジング
21 第一外側ハウジング部材
22 第二外側ハウジング部材
30、40、50 フランジ部
60 シュラウド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側ハウジングと、該内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、
タービンホイールのシュラウド部を取り囲むためのシュラウド部材を設け、
該シュラウド部材と、前記外側ハウジングの出口側端部とにより隙間を形成してその隙間に前記内側ハウジングの出口側端部を挿入し、
前記隙間を、前記タービンホイールの出口側に対し閉止すると共に、前記タービンホイールの上流側に開放させたことを特徴とするタービンハウジング。
【請求項2】
前記内側ハウジングの出口側端部が前記隙間にスライド可能に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとがそれらの出口側端部において互いにスライド可能に嵌め合わされる嵌合部が設けられ、
該嵌合部において、前記内側ハウジングの出口側端部に、前記外側ハウジング側に突出して前記外側ハウジングにスライド可能に当接する肉厚部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のタービンハウジング。
【請求項4】
前記シュラウド部材が管材からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記内側ハウジングおよび前記外側ハウジングが板金製であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタービンハウジング。
【請求項6】
前記内側ハウジングが鋳造製であり、前記外側ハウジングが板金製であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタービンハウジング。
【請求項7】
内側ハウジングと、該内側ハウジングを覆う外側ハウジングとを備えたタービンハウジングにおいて、
前記内側ハウジングを鋳造製とし、前記外側ハウジングを板金製としたことを特徴とするタービンハウジング。
【請求項8】
前記内側ハウジングと前記外側ハウジングとが互いにスライド可能に嵌め合わされる嵌合部が設けられ、
該嵌合部において、前記内側ハウジングに、前記外側ハウジング側に突出して前記外側ハウジングにスライド可能に当接する肉厚部が設けられたことを特徴とする請求項7に記載のタービンハウジング。
【請求項9】
前記内側ハウジングが、タービンホイールの上流側から下流側に排気ガスをバイパスさせるためのバイパス通路を区画形成し、
前記バイパス通路の出口部と、前記内側ハウジングの出口側端部とが互いに併設され、
前記内側ハウジングの出口側端部が、少なくとも前記バイパス通路の出口部より下流側に位置するように延在されていることを特徴とする請求項7に記載のタービンハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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