タービンブレード及びベーン用途向けのレニウムを含まない単結晶超合金
【課題】レニウム添加の必要性を低減又は無くし、且つ良好な鋳造性及び相安定性などの望ましい他の特性を維持しつつも、優れた高温耐クリープ性を示す単結晶ニッケル基超合金を開発すること。
【解決手段】優れた高温耐クリープ性を示す一方、このような合金に望ましい他の特性をも示す単結晶鋳造物用のレニウムを含まないニッケル基超合金は、5.60%〜5.85%のアルミニウム、9.4%〜9.9%のコバルト、5.0%〜6.0%のクロム、0.08%〜0.35%のハフニウム、0.50%〜0.70%のモリブデン、8.0%〜9.0%のタンタル、0.60%〜0.90%のチタン、8.5%〜9.8%のタングステンを含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含む。
【解決手段】優れた高温耐クリープ性を示す一方、このような合金に望ましい他の特性をも示す単結晶鋳造物用のレニウムを含まないニッケル基超合金は、5.60%〜5.85%のアルミニウム、9.4%〜9.9%のコバルト、5.0%〜6.0%のクロム、0.08%〜0.35%のハフニウム、0.50%〜0.70%のモリブデン、8.0%〜9.0%のタンタル、0.60%〜0.90%のチタン、8.5%〜9.8%のタングステンを含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レニウムを実質的に含まないが、他の関連特性には悪影響を及ぼすことなく、優れた高温耐クリープ特性を示す単結晶ニッケル基超合金が開示される。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に希少な金属元素を多量に必要としてきた製品需要が世界的に増大しているので、希少金属元素の需要及び価格の両方が急激に増加している。その結果、製造業者は、このような金属元素の必要性を低減させるか、又は使用しない新規な技術を探索している。
【0003】
レニウムは様々な産業に重要な、真に希少な金属の一例である。極めて少量のレニウムが、銅−モリブデン製造及び銅製造の副産物として回収される。レニウムの高コストに加えて、その使用は経済的帰結及び戦略的帰結の両方のサプライチェーンに対してリスクをもたらす。
【0004】
ジェット機及び発電装置向けガスタービンの単結晶部品を鋳造するために使用されるニッケル基超合金の製造に、レニウムが幅広く使用されてきた。より具体的には、レニウムは特に長期間の高温(例えば、1,000℃超え)における拡散を遅延させ、したがってクリープ変形を遅延させる強力な効果のために、合金化添加物としてタービンブレード、ベーン及びシールセグメント向けの先進的な単結晶超合金に使用されている。高温耐クリープ特性は、ガスタービンの部品の有用な耐用年数、並びに出力、燃料燃焼及び二酸化炭素排出などのエンジン性能に直接関係する。
【0005】
単結晶鋳造物に使用される典型的なニッケル基超合金は、約3重量%〜約7重量%のレニウムを含有する。レニウムは比較的少量の添加物としてのみ使用され、拡散を阻止して高温耐クリープ性を改善するために単結晶ニッケル基超合金にとって肝要なものと見なされているが、このような合金の総コストをかなり高くしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JOM、2010年1月、62巻1号、第55〜57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の考察から、レニウム添加の必要性を低減又は無くし、且つ良好な鋳造性及び相安定性などの望ましい他の特性を維持しつつも、優れた高温耐クリープ性を示す単結晶ニッケル基超合金を開発することが非常に望まれているのは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示したレニウムを含まない単結晶ニッケル基超合金は、この合金からレニウムを実質的に排除しつつも、特に、タングステン、モリブデン及びクロムに富んだ有害な位相幾何学的最密充填相(TCP)が過度にないことを保証する許容可能な合金相安定性と共に、良好なクリープ破断機械特性を達成するために、総量約17%〜20%の耐熱性金属元素(タンタル、タングステン及びモリブデン)同士をバランスさせることにとりわけ左右される。
【0009】
優れた高温耐クリープ性、及びガスタービンの部品を鋳造する際の使用に良く適合する他の諸特性を示すレニウムを含まない単結晶ニッケル基超合金は、5.60重量%〜5.85重量%のアルミニウム、9.4重量%〜9.9重量%のコバルト、5.0重量%〜6.0重量%のクロム、0.08重量%〜0.35重量%のハフニウム、0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、8.0重量%〜9.0重量%のタンタル、0.60重量%〜0.90重量%のチタン、8.5重量%〜9.8重量%のタングステンを含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含有し、不可避元素の総量が実質的に1重量%未満である合金組成において、得られることが発見された。
【0010】
ある具体例によれば、このニッケル基超合金の不可避元素の最大値は、炭素が100ppm、ケイ素が0.04%、マンガンが0.01%、硫黄が3ppm、リンが30ppm、ホウ素が30ppm、ニオブが0.1%、ジルコニウムが150ppm、レニウムが0.15%、銅が0.01%、鉄が0.15%、バナジウムが0.1%、ルテニウムが0.1%、白金が0.15%、パラジウムが0.15%、マグネシウムが200ppm、窒素が5ppm及び酸素が5ppmに制御され、他の任意の各不可避元素は最大値として約25ppmの微量元素として存在している。
【0011】
ある具体例によれば、開示したニッケル基超合金の不可避不純物における微量元素の最大値は、銀が2ppm、ビスマスが0.2ppm、ガリウムが10ppm、カルシウムが25ppm、鉛が1ppm、セレンが0.5ppm、テルルが0.2ppm、タリウムが0.2ppm、スズが10ppm、アンチモンが2ppm、ヒ素が2ppm、亜鉛が5ppm、水銀が2ppm、カドミウムが2ppm、ゲルマニウムが2ppm、金が2ppm、インジウムが2ppm、ナトリウムが20ppm、カリウムが10ppm、バリウムが10ppm、リンが30ppm、ウランが2ppm及びトリウムが2ppmに制御される。
【0012】
耐酸化性、及び/又はコーティング及び断熱コーティング(TBC)寿命の向上が望まれるある具体例によれば、硫黄が最大量0.5ppm存在し、且つランタン及びイットリウムが、このニッケル基超合金から鋳造される単結晶の部品においてランタン及びイットリウムの総量が約5ppm〜約80ppmの目標となるように添加される。
【0013】
最大12°の小角粒界(LAB)の強化を必要とする、単結晶部品の大型工業用ガスタービン(IGT)用途に使用されるある具体例によれば、約0.02重量%〜約0.05重量%の炭素が添加され、且つ約40ppm〜約100ppmのホウ素が添加される。
【0014】
実質的にレニウムを含まない組成物において優れた高温耐クリープ性を達成する他に、開示した単結晶ニッケル基超合金のある具体例は、8.79g/cc(kg/dm3)などの約8.8g/cc以下の望ましい程度に過剰でない密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】A、B、Cは、開示した実施例の鋳造物(LA−11753、CMSX−7、試験片#C912、完全溶解処理品、一次時効1121℃(2050°F)/4時間)の完全溶解処理したミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図2】A、B、Cは、本明細書に開示した実施例の完全溶解処理した鋳造物(LA−11753、CMSX−7、試験片#C912、完全溶解処理品、一次時効1121℃(2050°F)/4時間)のミクロ組織の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図4】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図5】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図6】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#D912、1121℃(2050°F)/103MPa(15ksi)/141.6時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図7】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#D912、1121℃(2050°F)/103MPa(15ksi)/141.6時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図8】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11807、CMSX−7、小型平板#53701Y−F、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/880.0時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図9】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11807、CMSX−7、小型平板#53701Y−F、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/880.0時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図10】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#B913、982℃(1800°F)/248MPa(36ksi)/151.1時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図11】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#B913、982℃(1800°F)/248MPa(36ksi)/151.1時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図12】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#A912、850℃(1562°F)/651MPa(94.4ksi)/100.9時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図13】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#A912、850℃(1562°F)/651MPa(94.4ksi)/100.9時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図14】A、B、Cは、CMSX−7 MOD Bの単結晶試験片の完全溶解処理したミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】A、B、Cは、CMSX−7 MOD Bの単結晶試験片の完全溶解処理したミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図16】ブレードからの機械加工品(machined−from−blade)(MFB)の応力破断試験用の小型片及び小型平板試料の両方を機械加工するための設備を有する、本明細書に開示した合金から鋳造した単結晶中実のタービンブレードの横断図である。
【図17】試験温度に対する合金の引張特性を示す。
【図18】試験温度に対する合金の引張特性を示す。
【図19】A、B、Cは、本明細書に開示した合金(LA−11891、CMSX−7 MOD.B、試験片#M923、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/1176.5時間)の、長期高温応力破断試験から得られた試験後のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図20】A、B、Cは、本明細書に開示した合金(LA−11891、CMSX−7 MOD.B、試験片#M923、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/1176.5時間)の、長期高温応力破断試験から得られた試験後のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示した合金は、「CMSX(登録商標)−7」合金と呼ぶことにする。これは商業的に使用されることになる名称であり、「CMSX」という表記は、ニッケル基単結晶(SX)超合金のファミリー又はシリーズの販売に関連して使用されるキャノン・マスケゴン社(Cannon−Muskegon Corporation)の登録商標である。
【0017】
本明細書に開示した合金はレニウムを含まない、又はレニウムを実質的に含まないものとして表現される。本明細書で使用する場合、これらの用語は、この合金は添加されたレニウムを全く含有しない、及び/又は該合金中に存在するレニウムの量は最大0.15重量%であることを意味する。
【0018】
特に示されない限り、百分率はすべて重量基準であり、また百万分率(ppm)の量はすべて、合金組成物の総重量に基づく重量百万分率を指す。
【0019】
単結晶超合金及び鋳造物は、とりわけ高温耐クリープ性、長期疲労寿命、耐酸化性及び耐食性、望ましい鋳造特性及び低不良率を伴う固溶強化、並びに相安定性を含む、一連の優れた特性を示すように開発された。ある特定の特性のために、単一添加物の合金化元素を最適化することは可能であるが、他の特性に対する影響が非常に予測不能になる場合が多い。一般に、様々な特性と様々な元素成分の関係は非常に複雑であり、且つ予測不能であるので、少なくともある種の不可欠な特性に悪影響を及ぼすことなく、実質的な変化を組成物になし得る場合、これは驚くべきことである。
【0020】
本明細書に開示した実施例では、許容可能な合金相安定性(有害な位相幾何学的最密充填(TCP)相が過度にない。このタイプの合金では、通常タングステン、モリブデン及びクロムに富む。)と共に、良好なクリープ破断機械特性を達成するために、耐熱性金属元素(タンタル、タングステン及びモリブデン)同士の量をバランスさせながら、これらの耐熱性元素を約17重量%〜約20重量%の総量に維持した。クロム及びコバルトも、必要な相安定性を確保するために調節した。多量のタンタル(約8%)は、「フレックル」欠陥がない等の優れた単結晶鋳造性をもたらすために選択した。チタン(約0.8%)及びタンタル(約0.8%)の量は、高温クリープ強度及び室温での許容可能な密度(例えば、約8.8g/cc(8.79g/ccなど))となるように、低い負のγ/γ’ミスマッチをもたらすように調節した。アルミニウム、チタン及びタンタルは、適切なγ’体積率(Vf)を得るために調節する一方、アルミニウム、モリブデン、タンタル及びチタンの組合せは、高温での良好な耐酸化特性をもたらすために選択した。ハフニウムの添加量は、高温におけるコーティング寿命を実現するために選択した。
【0021】
本明細書に開示し、且つ特許請求した合金の典型的な化学組成を表1に列挙する。しかし、ある種のわずかな変更がある。第1に、耐酸化性の向上及び/又は断熱コーティングの寿命向上を達成するために、合金から作製した単結晶鋳造物中に、ランタン及びイットリウムの総量が約5ppm〜80ppmになることを目標とした量のランタン及び/又はイットリウムを添加することが望ましい。他の変更として、最大12°の小角粒界(LAB)強化を必要とする大型工業用ガスタービン(IGT)の単結晶用途の場合、炭素及びホウ素の添加目標を、それぞれ約0.02%〜0.05%及び40〜100ppmの範囲に定める。
【0022】
本発明のよりよい理解を促進すると見込まれるある種の例示的、非限定的な実施例について説明する。
【0023】
CMSX(登録商標)−7合金の100%未使用の初期溶解品181kg(400lb)を、CM KH 01/03/11(CM CRMP #81−1700 Issue 1)を目標化学組成として、CM V−5 Consarc VIMの炉内で、2011年1月に溶融した。溶解品(5V0424)の化学成分を表2に示す。
【0024】
SX NNS DL−10試験片の2つの鋳物(#912及び#913)を、ロールス・ロイス社(Rolls−Royce Corporation)(SCFO)によるCMSX−4(登録商標)鋳造パラメータに合わせて鋳造した。DL−10試験片の歩留まりは、全24点の鋳造品中、完全に許容可能なものが23点と優れていた。中実HP2タービンブレードの鋳物(#53701)も、本製造部品に対する典型的な鋳造歩留まりで、CMSX−4(登録商標)鋳造パラメータを用いたSCFOによってSX鋳造した。
【0025】
これらのDL−10試験片及びタービンブレードは、以下の通りCMSX(登録商標)−7の試験片に関する溶体化/均一化研究に基づいて、CMにおいて溶体化/均一化+2段時効加熱処理を行った。
【0026】
溶体化+均一化
2時間/2340°F(1282°C)+2時間/2360°F(1293°C)
+4時間/2380°F(1304°C)+4時間/2390°F(1310°C)
+12時間/2400°F(1316°C)AC−ステップ同士の間では17℃(1°F)/分で昇温。
2段時効
4時間/2050°F(1121°C)AC+20時間/1600°F(871°C)AC
【0027】
許容可能なミクロ組織造の実現は図1〜図2で明らかである。すなわち4時間/2050°F(1121°C)の高温時効の後に、γ’の完全な溶体化、一部残ったγ/γ’共溶物、部分溶融はなく、またγ’は平均が約0.5μmの立方体状で配列しており、これは適切なγ/γ’のミスマッチ及びγ/γ’の界面化学を示している。
【0028】
クリープ破断及び応力破断用の試料を低い応力で研磨して、ジョリエット・メタラージカル・ラボラトリーズ社(Joliet Metallurgical Labs)による試験を行い、現在までの結果を表3及び表4に示した。ラーソン・ミラー応力破断のグラフ(図3、4及び5)は、最大約1900°F(1038°C)までのCMSX−2/3(登録商標)合金(Reを含有しない)と比較すると、ブレードからの機械加工品(MFB)の1.78mm(0.070”)Φ小型片の結果を含めて、CMSX(登録商標)−7が優れており、驚くほど良好なクリープ強度/応力破断寿命特性を有し、2050°F(1121℃)では類似した特性を有することを示している。これらの特性すべてが、Rene’ N−5(3%Re)合金及びRene’ N−515(1.5%Re)合金に驚くほど類似している(GEの発表データ)[JOM、2010年1月、62巻1号、55〜57頁]。MFBの応力破断試験を、本明細書に開示した合金から鋳造し、小型片15及び小型平板試料20を機械加工するための設備を有する単結晶中実タービンブレード10(図16)について実施した。
【0029】
相安定性は驚くほど良好であり、現在まで調べた試験後のクリープ/応力破断片においてTCP相が全く存在しないことは、明らかである(図6〜図13)。
【0030】
バーナーリグ動力学試験、繰り返し酸化試験及び熱間腐食(硫化)試験を現在、タービンエンジンの大手の会社で計画中である。83MPa(12ksi)/1093℃(2000°F)におけるMFBのゲージ厚さ0.508mm(0.020”)の小型平板の結果(表4,図5)は、この合金に関して、あからさまに良好な高温耐酸化性を示している。
【0031】
CMSX−7の引張特性
この合金は、非常に大きい引張強度(1400°F(760°C)において最大200ksi(1379MPa)のUTS)及び同一温度における0.2%耐力(最大191ksi(1318MPa))、並びに良好な延性を示す(表5、図17及び図18)。1400°F(760°C)における異常に高いUTS及び0.2%PSは、おそらくこの温度におけるγチャンネル中にさらなる二次又は三次γ’析出がおこり転位移動を遅らせるために、この温度においてひずみ硬化があることを示している。この最大強度レベルにおける延性は、13%の伸び(4D)及び17%の絞り(RA)の範囲にある。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
CMSX(登録商標)−7のMod Bと称される100%未使用品(213kg)(470lbs)の他の溶解品(5V0459)を、CM KH 04/13/11(CM CRMP#81−1703 Issue 1)を目標化学組成に用いて、CM V−5 Consarc VIMの炉内で、2011年5月に溶融した。溶解品(5V0459)の化学成分を表6に示す。
【0040】
SX NNS DL−10試験片の2つの鋳物(#923及び#924)を、ロールス・ロイス社(SCFO)によってCMSX−4(登録商標)鋳造パラメータに合わせて鋳造した。DL−10試験片の歩留まりは、全24点の鋳造品中、完全に許容可能なものが22点と優れていた。
【0041】
これらのDL−10試験片は、以下の通りCMSX(登録商標)−7 Mod Bの試験片に関する溶体化/均一化研究に基づいて、キャノン・マスケゴン社において、溶体化/均一化+2段時効加熱処理を行った。
【0042】
溶体化及び均一化
2時間/2360°F(1293°C)+2時間/2370°F(1299°C)
+2時間/2380°F(1304°C)+12時間/2390°F(1310°C)AC−17℃(1°F)/分で昇温
2段時効加熱処理
4時間/2050°F(1121°C)AC
+20時間/1600°F(871°C)AC
【0043】
許容可能なミクロ組織の実現は図14及び図15で明らかである。すなわち、4時間/2050°F(1121°C)の高温時効の後に、γ’のほぼ完全な溶体化、残りはγ/γ’共溶物、部分溶融はなく、またγ’は平均が約0.45μmの立方体状で配列しており、これは適切なγ/γ’のミスマッチ及びγ/γ’の界面化学を示している。
【0044】
CMSX(登録商標)−7のMod Bのクリープ破断特性は、CMSX(登録商標)−7のそれと非常に類似しており、明確な優位点はない(表7)。
【0045】
より長期の、高温応力破断試験[2000°F/12ksi(1093°C/83MPa)/1176.5時間]から得られた試験後のミクロ組織(図19A〜19C)は、良好な応力破断寿命並びに破断延性(34%の伸び(4D))及び42%のRA(図19A〜20C)と兼ね備えた、TCP相(「針状」)が明らかに無視できる、良好な相安定性を示すことが示される。
【0046】
本明細書に開示した実施例は、実際に例示し、よりよい理解を促進するために提示した非限定的な実例であり、本発明の範囲は等価物の原理を含め、特許法の下で適切に解釈される添付の特許請求の範囲によって規定される。
【技術分野】
【0001】
レニウムを実質的に含まないが、他の関連特性には悪影響を及ぼすことなく、優れた高温耐クリープ特性を示す単結晶ニッケル基超合金が開示される。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に希少な金属元素を多量に必要としてきた製品需要が世界的に増大しているので、希少金属元素の需要及び価格の両方が急激に増加している。その結果、製造業者は、このような金属元素の必要性を低減させるか、又は使用しない新規な技術を探索している。
【0003】
レニウムは様々な産業に重要な、真に希少な金属の一例である。極めて少量のレニウムが、銅−モリブデン製造及び銅製造の副産物として回収される。レニウムの高コストに加えて、その使用は経済的帰結及び戦略的帰結の両方のサプライチェーンに対してリスクをもたらす。
【0004】
ジェット機及び発電装置向けガスタービンの単結晶部品を鋳造するために使用されるニッケル基超合金の製造に、レニウムが幅広く使用されてきた。より具体的には、レニウムは特に長期間の高温(例えば、1,000℃超え)における拡散を遅延させ、したがってクリープ変形を遅延させる強力な効果のために、合金化添加物としてタービンブレード、ベーン及びシールセグメント向けの先進的な単結晶超合金に使用されている。高温耐クリープ特性は、ガスタービンの部品の有用な耐用年数、並びに出力、燃料燃焼及び二酸化炭素排出などのエンジン性能に直接関係する。
【0005】
単結晶鋳造物に使用される典型的なニッケル基超合金は、約3重量%〜約7重量%のレニウムを含有する。レニウムは比較的少量の添加物としてのみ使用され、拡散を阻止して高温耐クリープ性を改善するために単結晶ニッケル基超合金にとって肝要なものと見なされているが、このような合金の総コストをかなり高くしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JOM、2010年1月、62巻1号、第55〜57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の考察から、レニウム添加の必要性を低減又は無くし、且つ良好な鋳造性及び相安定性などの望ましい他の特性を維持しつつも、優れた高温耐クリープ性を示す単結晶ニッケル基超合金を開発することが非常に望まれているのは明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示したレニウムを含まない単結晶ニッケル基超合金は、この合金からレニウムを実質的に排除しつつも、特に、タングステン、モリブデン及びクロムに富んだ有害な位相幾何学的最密充填相(TCP)が過度にないことを保証する許容可能な合金相安定性と共に、良好なクリープ破断機械特性を達成するために、総量約17%〜20%の耐熱性金属元素(タンタル、タングステン及びモリブデン)同士をバランスさせることにとりわけ左右される。
【0009】
優れた高温耐クリープ性、及びガスタービンの部品を鋳造する際の使用に良く適合する他の諸特性を示すレニウムを含まない単結晶ニッケル基超合金は、5.60重量%〜5.85重量%のアルミニウム、9.4重量%〜9.9重量%のコバルト、5.0重量%〜6.0重量%のクロム、0.08重量%〜0.35重量%のハフニウム、0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、8.0重量%〜9.0重量%のタンタル、0.60重量%〜0.90重量%のチタン、8.5重量%〜9.8重量%のタングステンを含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含有し、不可避元素の総量が実質的に1重量%未満である合金組成において、得られることが発見された。
【0010】
ある具体例によれば、このニッケル基超合金の不可避元素の最大値は、炭素が100ppm、ケイ素が0.04%、マンガンが0.01%、硫黄が3ppm、リンが30ppm、ホウ素が30ppm、ニオブが0.1%、ジルコニウムが150ppm、レニウムが0.15%、銅が0.01%、鉄が0.15%、バナジウムが0.1%、ルテニウムが0.1%、白金が0.15%、パラジウムが0.15%、マグネシウムが200ppm、窒素が5ppm及び酸素が5ppmに制御され、他の任意の各不可避元素は最大値として約25ppmの微量元素として存在している。
【0011】
ある具体例によれば、開示したニッケル基超合金の不可避不純物における微量元素の最大値は、銀が2ppm、ビスマスが0.2ppm、ガリウムが10ppm、カルシウムが25ppm、鉛が1ppm、セレンが0.5ppm、テルルが0.2ppm、タリウムが0.2ppm、スズが10ppm、アンチモンが2ppm、ヒ素が2ppm、亜鉛が5ppm、水銀が2ppm、カドミウムが2ppm、ゲルマニウムが2ppm、金が2ppm、インジウムが2ppm、ナトリウムが20ppm、カリウムが10ppm、バリウムが10ppm、リンが30ppm、ウランが2ppm及びトリウムが2ppmに制御される。
【0012】
耐酸化性、及び/又はコーティング及び断熱コーティング(TBC)寿命の向上が望まれるある具体例によれば、硫黄が最大量0.5ppm存在し、且つランタン及びイットリウムが、このニッケル基超合金から鋳造される単結晶の部品においてランタン及びイットリウムの総量が約5ppm〜約80ppmの目標となるように添加される。
【0013】
最大12°の小角粒界(LAB)の強化を必要とする、単結晶部品の大型工業用ガスタービン(IGT)用途に使用されるある具体例によれば、約0.02重量%〜約0.05重量%の炭素が添加され、且つ約40ppm〜約100ppmのホウ素が添加される。
【0014】
実質的にレニウムを含まない組成物において優れた高温耐クリープ性を達成する他に、開示した単結晶ニッケル基超合金のある具体例は、8.79g/cc(kg/dm3)などの約8.8g/cc以下の望ましい程度に過剰でない密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】A、B、Cは、開示した実施例の鋳造物(LA−11753、CMSX−7、試験片#C912、完全溶解処理品、一次時効1121℃(2050°F)/4時間)の完全溶解処理したミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図2】A、B、Cは、本明細書に開示した実施例の完全溶解処理した鋳造物(LA−11753、CMSX−7、試験片#C912、完全溶解処理品、一次時効1121℃(2050°F)/4時間)のミクロ組織の走査電子顕微鏡写真である。
【図3】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図4】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図5】開示した合金から作製した単結晶の試験片及びタービンブレードの鋳造物の驚くほど良好なクリープ強度、及び/又は応力破断寿命特性を示すラーソン・ミラー応力破断のグラフである。
【図6】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#D912、1121℃(2050°F)/103MPa(15ksi)/141.6時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図7】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#D912、1121℃(2050°F)/103MPa(15ksi)/141.6時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図8】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11807、CMSX−7、小型平板#53701Y−F、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/880.0時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図9】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11807、CMSX−7、小型平板#53701Y−F、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/880.0時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図10】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#B913、982℃(1800°F)/248MPa(36ksi)/151.1時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図11】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#B913、982℃(1800°F)/248MPa(36ksi)/151.1時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図12】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#A912、850℃(1562°F)/651MPa(94.4ksi)/100.9時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す光学顕微鏡写真である。
【図13】A、B、Cは、優れた相安定性を示し、且つTCP相を示さない、開示した合金(LA−11772、CMSX−7、試験片#A912、850℃(1562°F)/651MPa(94.4ksi)/100.9時間、ゲージ領域)の試験後の相安定性を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図14】A、B、Cは、CMSX−7 MOD Bの単結晶試験片の完全溶解処理したミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図15】A、B、Cは、CMSX−7 MOD Bの単結晶試験片の完全溶解処理したミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図16】ブレードからの機械加工品(machined−from−blade)(MFB)の応力破断試験用の小型片及び小型平板試料の両方を機械加工するための設備を有する、本明細書に開示した合金から鋳造した単結晶中実のタービンブレードの横断図である。
【図17】試験温度に対する合金の引張特性を示す。
【図18】試験温度に対する合金の引張特性を示す。
【図19】A、B、Cは、本明細書に開示した合金(LA−11891、CMSX−7 MOD.B、試験片#M923、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/1176.5時間)の、長期高温応力破断試験から得られた試験後のミクロ組織を示す光学顕微鏡写真である。
【図20】A、B、Cは、本明細書に開示した合金(LA−11891、CMSX−7 MOD.B、試験片#M923、1093℃(2000°F)/83MPa(12ksi)/1176.5時間)の、長期高温応力破断試験から得られた試験後のミクロ組織を示す走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示した合金は、「CMSX(登録商標)−7」合金と呼ぶことにする。これは商業的に使用されることになる名称であり、「CMSX」という表記は、ニッケル基単結晶(SX)超合金のファミリー又はシリーズの販売に関連して使用されるキャノン・マスケゴン社(Cannon−Muskegon Corporation)の登録商標である。
【0017】
本明細書に開示した合金はレニウムを含まない、又はレニウムを実質的に含まないものとして表現される。本明細書で使用する場合、これらの用語は、この合金は添加されたレニウムを全く含有しない、及び/又は該合金中に存在するレニウムの量は最大0.15重量%であることを意味する。
【0018】
特に示されない限り、百分率はすべて重量基準であり、また百万分率(ppm)の量はすべて、合金組成物の総重量に基づく重量百万分率を指す。
【0019】
単結晶超合金及び鋳造物は、とりわけ高温耐クリープ性、長期疲労寿命、耐酸化性及び耐食性、望ましい鋳造特性及び低不良率を伴う固溶強化、並びに相安定性を含む、一連の優れた特性を示すように開発された。ある特定の特性のために、単一添加物の合金化元素を最適化することは可能であるが、他の特性に対する影響が非常に予測不能になる場合が多い。一般に、様々な特性と様々な元素成分の関係は非常に複雑であり、且つ予測不能であるので、少なくともある種の不可欠な特性に悪影響を及ぼすことなく、実質的な変化を組成物になし得る場合、これは驚くべきことである。
【0020】
本明細書に開示した実施例では、許容可能な合金相安定性(有害な位相幾何学的最密充填(TCP)相が過度にない。このタイプの合金では、通常タングステン、モリブデン及びクロムに富む。)と共に、良好なクリープ破断機械特性を達成するために、耐熱性金属元素(タンタル、タングステン及びモリブデン)同士の量をバランスさせながら、これらの耐熱性元素を約17重量%〜約20重量%の総量に維持した。クロム及びコバルトも、必要な相安定性を確保するために調節した。多量のタンタル(約8%)は、「フレックル」欠陥がない等の優れた単結晶鋳造性をもたらすために選択した。チタン(約0.8%)及びタンタル(約0.8%)の量は、高温クリープ強度及び室温での許容可能な密度(例えば、約8.8g/cc(8.79g/ccなど))となるように、低い負のγ/γ’ミスマッチをもたらすように調節した。アルミニウム、チタン及びタンタルは、適切なγ’体積率(Vf)を得るために調節する一方、アルミニウム、モリブデン、タンタル及びチタンの組合せは、高温での良好な耐酸化特性をもたらすために選択した。ハフニウムの添加量は、高温におけるコーティング寿命を実現するために選択した。
【0021】
本明細書に開示し、且つ特許請求した合金の典型的な化学組成を表1に列挙する。しかし、ある種のわずかな変更がある。第1に、耐酸化性の向上及び/又は断熱コーティングの寿命向上を達成するために、合金から作製した単結晶鋳造物中に、ランタン及びイットリウムの総量が約5ppm〜80ppmになることを目標とした量のランタン及び/又はイットリウムを添加することが望ましい。他の変更として、最大12°の小角粒界(LAB)強化を必要とする大型工業用ガスタービン(IGT)の単結晶用途の場合、炭素及びホウ素の添加目標を、それぞれ約0.02%〜0.05%及び40〜100ppmの範囲に定める。
【0022】
本発明のよりよい理解を促進すると見込まれるある種の例示的、非限定的な実施例について説明する。
【0023】
CMSX(登録商標)−7合金の100%未使用の初期溶解品181kg(400lb)を、CM KH 01/03/11(CM CRMP #81−1700 Issue 1)を目標化学組成として、CM V−5 Consarc VIMの炉内で、2011年1月に溶融した。溶解品(5V0424)の化学成分を表2に示す。
【0024】
SX NNS DL−10試験片の2つの鋳物(#912及び#913)を、ロールス・ロイス社(Rolls−Royce Corporation)(SCFO)によるCMSX−4(登録商標)鋳造パラメータに合わせて鋳造した。DL−10試験片の歩留まりは、全24点の鋳造品中、完全に許容可能なものが23点と優れていた。中実HP2タービンブレードの鋳物(#53701)も、本製造部品に対する典型的な鋳造歩留まりで、CMSX−4(登録商標)鋳造パラメータを用いたSCFOによってSX鋳造した。
【0025】
これらのDL−10試験片及びタービンブレードは、以下の通りCMSX(登録商標)−7の試験片に関する溶体化/均一化研究に基づいて、CMにおいて溶体化/均一化+2段時効加熱処理を行った。
【0026】
溶体化+均一化
2時間/2340°F(1282°C)+2時間/2360°F(1293°C)
+4時間/2380°F(1304°C)+4時間/2390°F(1310°C)
+12時間/2400°F(1316°C)AC−ステップ同士の間では17℃(1°F)/分で昇温。
2段時効
4時間/2050°F(1121°C)AC+20時間/1600°F(871°C)AC
【0027】
許容可能なミクロ組織造の実現は図1〜図2で明らかである。すなわち4時間/2050°F(1121°C)の高温時効の後に、γ’の完全な溶体化、一部残ったγ/γ’共溶物、部分溶融はなく、またγ’は平均が約0.5μmの立方体状で配列しており、これは適切なγ/γ’のミスマッチ及びγ/γ’の界面化学を示している。
【0028】
クリープ破断及び応力破断用の試料を低い応力で研磨して、ジョリエット・メタラージカル・ラボラトリーズ社(Joliet Metallurgical Labs)による試験を行い、現在までの結果を表3及び表4に示した。ラーソン・ミラー応力破断のグラフ(図3、4及び5)は、最大約1900°F(1038°C)までのCMSX−2/3(登録商標)合金(Reを含有しない)と比較すると、ブレードからの機械加工品(MFB)の1.78mm(0.070”)Φ小型片の結果を含めて、CMSX(登録商標)−7が優れており、驚くほど良好なクリープ強度/応力破断寿命特性を有し、2050°F(1121℃)では類似した特性を有することを示している。これらの特性すべてが、Rene’ N−5(3%Re)合金及びRene’ N−515(1.5%Re)合金に驚くほど類似している(GEの発表データ)[JOM、2010年1月、62巻1号、55〜57頁]。MFBの応力破断試験を、本明細書に開示した合金から鋳造し、小型片15及び小型平板試料20を機械加工するための設備を有する単結晶中実タービンブレード10(図16)について実施した。
【0029】
相安定性は驚くほど良好であり、現在まで調べた試験後のクリープ/応力破断片においてTCP相が全く存在しないことは、明らかである(図6〜図13)。
【0030】
バーナーリグ動力学試験、繰り返し酸化試験及び熱間腐食(硫化)試験を現在、タービンエンジンの大手の会社で計画中である。83MPa(12ksi)/1093℃(2000°F)におけるMFBのゲージ厚さ0.508mm(0.020”)の小型平板の結果(表4,図5)は、この合金に関して、あからさまに良好な高温耐酸化性を示している。
【0031】
CMSX−7の引張特性
この合金は、非常に大きい引張強度(1400°F(760°C)において最大200ksi(1379MPa)のUTS)及び同一温度における0.2%耐力(最大191ksi(1318MPa))、並びに良好な延性を示す(表5、図17及び図18)。1400°F(760°C)における異常に高いUTS及び0.2%PSは、おそらくこの温度におけるγチャンネル中にさらなる二次又は三次γ’析出がおこり転位移動を遅らせるために、この温度においてひずみ硬化があることを示している。この最大強度レベルにおける延性は、13%の伸び(4D)及び17%の絞り(RA)の範囲にある。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
CMSX(登録商標)−7のMod Bと称される100%未使用品(213kg)(470lbs)の他の溶解品(5V0459)を、CM KH 04/13/11(CM CRMP#81−1703 Issue 1)を目標化学組成に用いて、CM V−5 Consarc VIMの炉内で、2011年5月に溶融した。溶解品(5V0459)の化学成分を表6に示す。
【0040】
SX NNS DL−10試験片の2つの鋳物(#923及び#924)を、ロールス・ロイス社(SCFO)によってCMSX−4(登録商標)鋳造パラメータに合わせて鋳造した。DL−10試験片の歩留まりは、全24点の鋳造品中、完全に許容可能なものが22点と優れていた。
【0041】
これらのDL−10試験片は、以下の通りCMSX(登録商標)−7 Mod Bの試験片に関する溶体化/均一化研究に基づいて、キャノン・マスケゴン社において、溶体化/均一化+2段時効加熱処理を行った。
【0042】
溶体化及び均一化
2時間/2360°F(1293°C)+2時間/2370°F(1299°C)
+2時間/2380°F(1304°C)+12時間/2390°F(1310°C)AC−17℃(1°F)/分で昇温
2段時効加熱処理
4時間/2050°F(1121°C)AC
+20時間/1600°F(871°C)AC
【0043】
許容可能なミクロ組織の実現は図14及び図15で明らかである。すなわち、4時間/2050°F(1121°C)の高温時効の後に、γ’のほぼ完全な溶体化、残りはγ/γ’共溶物、部分溶融はなく、またγ’は平均が約0.45μmの立方体状で配列しており、これは適切なγ/γ’のミスマッチ及びγ/γ’の界面化学を示している。
【0044】
CMSX(登録商標)−7のMod Bのクリープ破断特性は、CMSX(登録商標)−7のそれと非常に類似しており、明確な優位点はない(表7)。
【0045】
より長期の、高温応力破断試験[2000°F/12ksi(1093°C/83MPa)/1176.5時間]から得られた試験後のミクロ組織(図19A〜19C)は、良好な応力破断寿命並びに破断延性(34%の伸び(4D))及び42%のRA(図19A〜20C)と兼ね備えた、TCP相(「針状」)が明らかに無視できる、良好な相安定性を示すことが示される。
【0046】
本明細書に開示した実施例は、実際に例示し、よりよい理解を促進するために提示した非限定的な実例であり、本発明の範囲は等価物の原理を含め、特許法の下で適切に解釈される添付の特許請求の範囲によって規定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶鋳造物用のニッケル基超合金であって、
5.60重量%〜5.85重量%のアルミニウム、
9.4重量%〜9.9重量%のコバルト、
5.0重量%〜6.0重量%のクロム、
0.08重量%〜0.35重量%のハフニウム、
0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、
8.0重量%〜9.0重量%のタンタル、
0.60重量%〜0.90重量%のチタン、
8.5重量%〜9.8重量%のタングステン
を含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含み、不可避元素の総量は約1重量%以下である、ニッケル基超合金。
【請求項2】
前記不可避元素の最大値が、炭素が100ppm、ケイ素が0.04%、マンガンが0.01%、硫黄が3ppm、リンが30ppm、ホウ素が30ppm、ニオブが0.1%、ジルコニウムが150ppm、レニウムが0.15%、銅が0.01%、鉄が0.15%、バナジウムが0.1%、ルテニウムが0.1%、白金が0.15%、パラジウムが0.15%、マグネシウムが200ppm、窒素が5ppm、及び酸素が5ppmに制御され、
他の任意の各不可避元素は、約25ppmの最大値で微量元素として存在している、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項3】
前記微量元素の最大値が、銀が2ppm、ビスマスが0.2ppm、ガリウムが10ppm、カルシウムが25ppm、鉛が1ppm、セレンが0.5ppm、テルルが0.2ppm、タリウムが0.2ppm、スズが10ppm、アンチモンが2ppm、ヒ素が2ppm、亜鉛が5ppm、水銀が2ppm、カドミウムが2ppm、ゲルマニウムが2ppm、金が2ppm、インジウムが2ppm、ナトリウムが20ppm、カリウムが10ppm、バリウムが10ppm、リンが30ppm、ウランが2ppm及びトリウムが2ppmに制御されている、請求項2に記載されたニッケル基超合金。
【請求項4】
最大量0.5ppmの硫黄を含有し、且つ前記単結晶鋳造物中のランタン及びイットリウムの総含量が、約5ppm〜約80ppmになることを目標とした量のランタン及びイットリウムをさらに含む、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項5】
0.02重量%〜0.05重量%の炭素及び40ppm〜100ppmのホウ素を含有する、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項6】
約8.8g/cc(kg/dm3)の密度を有する、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項7】
請求項1に記載されたニッケル基超合金から鋳造された単結晶の部品。
【請求項8】
ガスタービンの部品である、請求項7に記載された単結晶の部品。
【請求項9】
ガスタービン用のブレード、ベーン又はシールセグメントである、請求項7に記載された単結晶の部品。
【請求項1】
単結晶鋳造物用のニッケル基超合金であって、
5.60重量%〜5.85重量%のアルミニウム、
9.4重量%〜9.9重量%のコバルト、
5.0重量%〜6.0重量%のクロム、
0.08重量%〜0.35重量%のハフニウム、
0.50重量%〜0.70重量%のモリブデン、
8.0重量%〜9.0重量%のタンタル、
0.60重量%〜0.90重量%のチタン、
8.5重量%〜9.8重量%のタングステン
を含み、残部がニッケル及び少量の不可避元素を含み、不可避元素の総量は約1重量%以下である、ニッケル基超合金。
【請求項2】
前記不可避元素の最大値が、炭素が100ppm、ケイ素が0.04%、マンガンが0.01%、硫黄が3ppm、リンが30ppm、ホウ素が30ppm、ニオブが0.1%、ジルコニウムが150ppm、レニウムが0.15%、銅が0.01%、鉄が0.15%、バナジウムが0.1%、ルテニウムが0.1%、白金が0.15%、パラジウムが0.15%、マグネシウムが200ppm、窒素が5ppm、及び酸素が5ppmに制御され、
他の任意の各不可避元素は、約25ppmの最大値で微量元素として存在している、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項3】
前記微量元素の最大値が、銀が2ppm、ビスマスが0.2ppm、ガリウムが10ppm、カルシウムが25ppm、鉛が1ppm、セレンが0.5ppm、テルルが0.2ppm、タリウムが0.2ppm、スズが10ppm、アンチモンが2ppm、ヒ素が2ppm、亜鉛が5ppm、水銀が2ppm、カドミウムが2ppm、ゲルマニウムが2ppm、金が2ppm、インジウムが2ppm、ナトリウムが20ppm、カリウムが10ppm、バリウムが10ppm、リンが30ppm、ウランが2ppm及びトリウムが2ppmに制御されている、請求項2に記載されたニッケル基超合金。
【請求項4】
最大量0.5ppmの硫黄を含有し、且つ前記単結晶鋳造物中のランタン及びイットリウムの総含量が、約5ppm〜約80ppmになることを目標とした量のランタン及びイットリウムをさらに含む、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項5】
0.02重量%〜0.05重量%の炭素及び40ppm〜100ppmのホウ素を含有する、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項6】
約8.8g/cc(kg/dm3)の密度を有する、請求項1に記載されたニッケル基超合金。
【請求項7】
請求項1に記載されたニッケル基超合金から鋳造された単結晶の部品。
【請求項8】
ガスタービンの部品である、請求項7に記載された単結晶の部品。
【請求項9】
ガスタービン用のブレード、ベーン又はシールセグメントである、請求項7に記載された単結晶の部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−108166(P2013−108166A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−145568(P2012−145568)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(510318712)キャノン−マスキーゴン コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145568(P2012−145568)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(510318712)キャノン−マスキーゴン コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]