説明

ターボチャージャ

【課題】 この発明は、ターボチャージャに関し、回転部分の重量増を最小限に抑えつつ、連結軸の軸曲がりを生じにくくさせながら固定部材の緩みを確実に防止することを目的とする。
【解決手段】 コンプレッサインペラ12とタービンインペラ14とを連結する連結軸16を備える。連結軸16は、一端にタービンインペラ14が固定された大径部16aと、大径部16aに比して径の小さな小径部16bとを有する。小径部16bにおいて、コンプレッサインペラ12を、平面部16cを基準として小型ナット42によって固定する。大径部16aにおいて、回転子32を、タービンインペラ14側の端部(フランジ部16d)を基準として大型ナット34によって固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャに係り、特に、コンプレッサインペラを電動機で駆動可能な電動機付ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、コンプレッサインペラを電動機で駆動可能な電動機付ターボチャージャが開示されている。このターボチャージャは、コンプレッサインペラとタービンインペラとを連結する連結軸を備えている。タービンインペラは、その連結軸の一端に固定されている。また、連結軸には、タービンインペラ側から、電動機の回転子、連結軸より線膨張係数の高いカラー、およびコンプレッサインペラの順で、これらの部材が組み込まれる。そして、これらの部材が組み込まれた状態で、コンプレッサインペラ側からナットによる締め付けが行われ、これらの部材がナットによる軸力で互いに押し付けられるように固定されている。このような構成によって、上記従来のターボチャージャでは、ターボチャージャが高熱となる状況下において、ナットが緩むのを防止している。
【0003】
【特許文献1】実開平3−13431号公報
【特許文献2】特開昭63−248926号公報
【特許文献3】特開昭63−266126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターボチャージャにおいて、連結軸におけるコンプレッサインペラとタービンインペラとの間には、例えば上記従来技術における電動機の回転子などの中間部材が配置されることがある。そのような中間部材が例えば電動機の回転子の場合、連結軸上に配置される回転子には、通電時に回転モーメントが作用する。このため、回転子をナット等の固定部材によって十分な軸力で確実に締め付ける必要がある。しかしながら、ナット等の締め付けトルクを不用意に増大させると、連結軸に軸曲がりが生じてしまう可能性があり、また、それに伴い、連結軸が高速回転する際に、振動が増大してしまうことにもなる。
【0005】
その一方で、連結軸は、ターボチャージャの良好な応答性を確保する観点からは、出来るだけ細いものとすることで軽量化がなされていることが望ましい。従って、中間部材を確実に固定する目的で、より大きな軸力に耐えられるように連結軸全体の径を増加させることとすると、回転部分の重量の増加を招くことになり、上記の応答性の要求を満たすことができなくなる。
【0006】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、回転部分の重量増を最小限に抑えつつ、連結軸の軸曲がりを生じにくくさせながら固定部材の緩みを確実に防止することのできるターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、コンプレッサインペラとタービンインペラとを連結する連結軸を備え、当該連結軸上における前記コンプレッサインペラと前記タービンインペラとの間に中間部材が配置されるターボチャージャであって、
前記連結軸は、前記コンプレッサインペラおよび前記タービンインペラのうちの一方のインペラが一端に固定された大径部と、当該大径部に比して径の小さな小径部とを有し、
前記連結軸の前記小径部において、前記コンプレッサインペラおよび前記タービンインペラのうちの他方のインペラを、前記大径部の他端との間で固定する第1固定部材と、
前記連結軸の前記大径部において、前記中間部材の少なくとも1つを前記一方のインペラとの間で固定する第2固定部材と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第2固定部材により固定される前記少なくとも1つの中間部材は、回転子であることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記回転子は、当該回転子の磁石を覆うように設けられ、前記連結軸に比して線膨張係数の高い磁石保持部材を備え、
前記磁石保持部材が、前記第2固定部材と前記一方のインペラとの間に介在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、連結軸における熱源(タービン)から近い側の部位を大径としているため、そのような大径部上に配置される中間部材を、軸曲がりを抑制しつつ、十分な軸力で固定することができる。そして、熱源から遠い側の小径部上に配置されるコンプレッサインペラは、熱源から離れた大径部の他端を基準として連結軸に固定されるため、熱による影響が受けにくくなる。このため、コンプレッサインペラを固定するための軸力が小さくて済む。このため、コンプレッサインペラを固定する部分の径が小さくても、軸曲がりが生じにくくなる。このように、本発明によれば、回転部分の重量増を最小限に抑えつつ、連結軸の軸曲がりを生じにくくさせながら固定部材の緩みを確実に防止することができる。
【0011】
第2の発明によれば、連結軸において、通電時に電動機が発する熱を受けて高温になり易い部位に組み込まれる回転子を、コンプレッサインペラと別の第2固定部材によって固定しているため、電動機が発する熱の影響をも排除して、より確実に固定部材の緩みを防止することができる。
【0012】
第3の発明によれば、高温時には、磁石保持部材が連結軸に比してより大きく伸びるため、第2固定部材が発生させる軸力の低下を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるターボチャージャ10の構成を説明するための断面図である。図1に示すように、本実施形態のターボチャージャ10は、コンプレッサインペラ12とタービンインペラ14とを連結する連結軸16を備えている。連結軸16は、ターボチャージャ10中央のセンタハウジング18の内部において、軸受20、22によって回転自在に支持されている。
【0014】
コンプレッサインペラ12は、センタハウジング18に隣接するコンプレッサハウジング24の内部に配置されており、また、タービンインペラ14は、センタハウジング18の他方に隣接するタービンハウジング26の内部に配置されている。本実施形態のターボチャージャ10は、また、センタハウジング18の内部に、コンプレッサインペラ12を強制的に駆動し得る電動機28を備えている。
【0015】
連結軸16は、大径部16aと、この大径部16aよりも径が小さい小径部16bを有している。大径部16a一端には、タービンインペラ14が溶接等によって固定されている。より具体的には、連結軸16におけるタービンインペラ14に近い側の部位が大径部16aとなっており、コンプレッサインペラ12が組み込まれる側の部位が小径部16bとなっている。大径部16aと小径部16bとの境界は、段差を有して径が切り換わるように構成されており、その境界部には、連結軸16の軸線に対して直交する平面部16cが設けられている。
【0016】
連結軸16の大径部16aには、タービンインペラ14側の端部に、径方向に突出したフランジ部16dが形成されている。大径部16aには、タービンインペラ14側から順に、スリーブ30、および電動機28の回転子32が組み込まれている。大径部16aには、平面部16cの近傍に、ネジ部16eが設けられている。スリーブ30および回転子32は、スリーブ30がフランジ部16dに当接した状態で、ネジ部16eと噛み合わされる大型ナット34によって回転子32側から締め付けられることで、連結軸16に対する位置が固定される。
【0017】
スリーブ30は、上述した軸受20と連結軸16との間に組み込まれている。スリーブ30の表面には、高周波焼入れ等の熱処理が施されている。回転子32は、磁石32aとその磁石32aを覆うように形成された磁石保持管32bとによって構成されている。磁石保持管32bには、連結軸16よりも線膨張係数の高い部材が用いられている。より具体的には、この磁石保持管32bが、スリーブ30および大型ナット34に対して、それぞれ接しており、これにより、スリーブ30と大型ナット34との間の位置が規定されている。
【0018】
連結軸16の小径部16bには、平面部16c側から順に、スリーブ36、スラストカラー38、シールリングカラー40、およびコンプレッサインペラ12が組み込まれている。小径部16bには、その先端部の近傍に、ネジ部16fが設けられている。これらのスリーブ36、スラストカラー38、シールリングカラー40、およびコンプレッサインペラ12は、スリーブ36が平面部16cに当接した状態で、ネジ部16fと噛み合わされる小型ナット42によってコンプレッサインペラ12側から締め付けられることで、連結軸16に対する位置が固定される。スリーブ36は、上述した軸受22と連結軸16との間に組み込まれている。スリーブ36の表面には、スリーブ30と同様の熱処理が施されている。
【0019】
尚、スラストカラー38は、連結軸16の軸方向の移動を規制するスラスト軸受44に係合する部材であり、シールリングカラー40は、軸受22を潤滑するオイルがセンタハウジング18側からコンプレッサハウジング24側に流出するのを防ぐためのシールリング46を収納するための部材である。シールリング46は、タービンインペラ14側の端部にも配置されている。また、センタハウジング18には、回転子32を覆うように固定子48が組み込まれている。固定子48は、ステータコア50とコイル巻き線部52とによって構成されている。センタハウジング18の内部には、通電時に発熱する固定子48を冷却するために、固定子48を取り囲むように水通路54が設けられている。更に、センタハウジング18には、軸受20、22にオイルを供給するためのオイル供給通路56と、そのオイルをセンタハウジング18から排出するためのオイルドレーン通路58とが設けられている。
【0020】
以上説明した通り、本実施形態のターボチャージャ10における連結軸16では、コンプレッサインペラ12と回転子32とを別々のナットで締め付けるようにしている。回転子32には、通電時に回転モーメントが作用するので、ナットによる軸力を大きくしたいという要求がある。上記の構成では、小径部16aに比して径の大きい大径部16b側に回転子32を組み込むこととし、大型ナット34によって締め付けている。このため、連結軸16の軸曲がりを抑制しつつ、十分な軸力で回転子32を連結軸16に固定することができる。また、大型ナット34によって軸力を上げられることにより、タービン側から受ける排気ガスの熱の影響により、連結軸16が熱膨脹する際の大型ナット34の緩みを低減することができる。
【0021】
また、上記の構成では、コンプレッサインペラ12は、連結軸16上において、熱源(タービン)からの位置が遠い平面部16cを基準として組み付けられている。このため、熱による影響を受けにくくすることができ、小径部16aにおける熱膨張による伸びが小さくなる。更に、大きな軸力で締め付けたい回転子32とは別の小径部16a側に組み付けられている。これらの要因によって、小型ナット42の締め付けトルクが小さくて済むようになる。
【0022】
これにより、連結軸16の軸曲がりを軽減することができ、回転時の振動を抑えることができる。また、連結軸16において、コンプレッサインペラ12を固定する部位(小径部16b)を、回転子32を固定する部位(大径部16a)に比して細くすることが可能となる。以上のように、本実施形態の構成によれば、ターボチャージャ10における回転部分の重量増を最小限に抑えつつ、連結軸16の軸曲がりを生じにくくさせながらナット34、42の緩みを確実に防止することができる。
【0023】
連結軸16における回転子32の近傍の部位は、熱源となるタービン側に近いのに加え、通電時に固定子48に発生する熱を受けて高温になり易い。上記の構成では、そのような環境にあり、熱の影響を受け易い部位に配置される回転子32を、コンプレッサインペラ12とは別の固定部材によって固定している。このため、電動機28が発する熱の影響をも排除して、より確実にナット34、42の緩みを防止することができる。
【0024】
また、上記の構成では、回転子32の磁石保持管32bが、連結軸16よりも線膨張係数の高い部材によって構成されている。磁石保持管32bは、熱源となるタービン側に近く、かつ、通電時に発熱する固定子48に近いため、高温になり易い。つまり、上記の構成によれば、連結軸16上に組み込まれる部材であって高温になり易い部材の線膨張係数を連結軸16よりも高くしている。このため、高温時に磁石保持管32bが連結軸16に比してより大きく伸びることで、大型ナット34が発生させる軸力の低下を効果的に防止することができる。
【0025】
また、上記の構成では、事前に熱処理を施したスリーブ30、36を連結軸16と軸受20、22との間に介在させることとしている。連結軸における軸受により保持される部位には、一般に、耐摩耗性向上のため、高周波焼入れ等の熱処理が施される。このような熱処理が行われる工程では、連結軸を高温にするため、軸曲がりが発生し易い。そのような軸曲がりが生ずると、連結軸とタービンインペラを一体化した状態で回転時のアンバランス量が大きくなり、製品の歩留まりが低下してしまう。これに対し、上記の構成によれば、スリーブ30、36が単品である状態で熱処理を行った後に仕上げ加工をするので、連結軸に軸曲がりが生ずるリスクを無くすことができる。
【0026】
尚、上述した実施の形態1においては、スリーブ30、回転子32、スリーブ36、スラストカラー38、シールリングカラー40、およびコンプレッサインペラ12が前記第1の発明における「中間部材」に、タービンインペラ14が前記第1の発明における「一方のインペラ」に、コンプレッサインペラ12が前記第1の発明における「他方のインペラ」に、小型ナット42が前記第1の発明における「第1固定部材」に、回転子32が前記第1の発明における「中間部材の少なくとも1つ」に、大型ナット34が前記第1の発明における「第2固定部材」に、それぞれ相当している。
また、磁石保持管32bが前記第3の発明における「磁石保持部材」に相当している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1におけるターボチャージャの構成を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ターボチャージャ
12 コンプレッサインペラ
14 タービンインペラ
16 連結軸
16a 大径部
16b 小径部
16c 平面部
28 電動機
30、36 スリーブ
32 回転子
34 大型ナット
38 スラストカラー
40 シールリングカラー
42 小型ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサインペラとタービンインペラとを連結する連結軸を備え、当該連結軸上における前記コンプレッサインペラと前記タービンインペラとの間に中間部材が配置されるターボチャージャであって、
前記連結軸は、前記コンプレッサインペラおよび前記タービンインペラのうちの一方のインペラが一端に固定された大径部と、当該大径部に比して径の小さな小径部とを有し、
前記連結軸の前記小径部において、前記コンプレッサインペラおよび前記タービンインペラのうちの他方のインペラを、前記大径部の他端との間で固定する第1固定部材と、
前記連結軸の前記大径部において、前記中間部材の少なくとも1つを前記一方のインペラとの間で固定する第2固定部材と、
を備えることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記第2固定部材により固定される前記少なくとも1つの中間部材は、回転子であることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記回転子は、当該回転子の磁石を覆うように設けられ、前記連結軸に比して線膨張係数の高い磁石保持部材を備え、
前記磁石保持部材が、前記第2固定部材と前記一方のインペラとの間に介在していることを特徴とする請求項2記載のターボチャージャ。

【図1】
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