説明

ターボチャージャ

【課題】コンプレッサインペラ23の許容応力の低下を抑制して、ターボチャージャ1の寿命を十分に延ばすこと。
【解決手段】ベアリングハウジング3におけるコンプレッサインペラ21の背面(コンプレッサハブ23の背面)に対向する部位に、冷却水を流通させる冷却水路35が円周方向へ沿って設けられ、冷却水路35は、冷却水を循環供給する冷却水供給源37に接続可能であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給するターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ターボチャージャについては種々の開発がなされており、先行技術に係るターボチャージャ(特許文献1及び特許文献2参照)の構成等について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
即ち、先行技術に係るターボチャージャは、ベアリングハウジングを具備しており、このベアリングハウジングには、タービン軸がベアリングを介して回転可能に設けられている。また、ベアリングハウジングの一側には、タービンハウジングが設けられており、このタービンハウジング内には、タービンインペラが設けられてあって、このタービンインペラは、タービン軸の一端部に一体的に連結してある。更に、ベアリングハウジングの他側には、コンプレッサハウジングが設けられており、このコンプレッサハウジング内には、コンプレッサインペラが設けられてあって、このコンプレッサインペラは、タービン軸の他端部に一体的に連結してある。
【0004】
従って、タービンハウジング内に取り入れた排気ガスがタービンインペラ側へ供給されると、排気ガスのエネルギーによってタービンインペラを回転駆動させることができ、コンプレッサインペラをタービン軸を介して連動して回転駆動させることができる。これにより、コンプレッサハウジング内に取り入れた空気をコンプレッサインペラによって圧縮して、エンジンへ供給される空気を過給することができる。
【特許文献1】特開2005−42588号公報
【特許文献2】特開2006−132386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ターボチャージャの高圧力比及び高回転化に伴って、コンプレッサインペラの出口側の温度が高くなる共に、所謂円盤摩擦によってコンプレッサインペラとベアリングハウジングの間の温度が高くなる。そのため、ターボチャージャの運転中に、コンプレッサインペラの温度が高くなって、コンプレッサインペラの許容応力の低下を招き、ターボチャージャの寿命を十分に延ばすことが困難になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給するターボチャージャにおいて、ベアリングハウジングと、前記ベアリングハウジングにベアリングを介して回転可能に設けられたタービン軸と、前記ベアリングハウジングの一側に設けられたタービンハウジングと、前記タービンハウジング内に設けられ、前記タービン軸の一端部に一体的に連結したタービンインペラと、前記ベアリングハウジングの他側に設けられたコンプレッサハウジングと、前記コンプレッサハウジング内に設けられ、前記タービン軸の他端部に一体的に連結したコンプレッサインペラと、を具備し、前記コンプレッサインペラの背面に対向する部位に、冷却水を流通させる冷却水路が円周方向へ沿って設けられ、前記冷却水路は、冷却水を循環供給する冷却水供給源に接続可能であることを要旨とする。
【0008】
本発明の特徴によると、前記タービンハウジング内に取り入れた排気ガスが前記タービンインペラ側へ供給されると、排気ガスのエネルギーによって前記タービンインペラを回転駆動させることができ、前記コンプレッサインペラを前記タービン軸を介して連動して回転駆動させることができる。これにより、前記コンプレッサハウジング内に取り入れた空気を前記コンプレッサインペラによって圧縮して、前記エンジンへ供給される空気を過給することができる(前記ターボチャージャの運転動作)。
【0009】
また、前記ターボチャージャの運転中に、前記冷却水供給源からの冷却水を前記冷却水路に流通させることにより、前記ベアリングハウジングと前記コンプレッサインペラの間の空気を十分に冷却する。これにより、前記コンプレッサインペラを背面側から十分に冷却することができる(前記ターボチャージャの冷却作用)。
【発明の効果】
【0010】
本発明よれば、前記ターボチャージャの運転中に、前記コンプレッサインペラを背面側から十分に冷却することができるため、前記コンプレッサインペラの許容応力の低下を抑制して、前記ターボチャージャの寿命を十分に延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0012】
ここで、図1は、第1実施形態に係るターボチャージャの断面図、図2は、第1実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面図である。なお、図面中、「F」は、前方向を指し、「R」は、後方向を指してある。
【0013】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係るターボチャージャ1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給するものである。そして、ターボチャージャ1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0014】
ターボチャージャ1は、ベアリングハウジング3を具備しており、このベアリングハウジング3内には、複数のベアリング5が設けられてあって、複数のベアリング5には、前後方向へ延びたタービン軸7が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、タービン軸7がベアリング5を介して回転可能に設けられている。
【0015】
ベアリングハウジング3の後側には、タービンハウジング9が設けられている。また、タービンハウジング9内には、タービンインペラ11が設けられており、このタービンインペラ11は、タービン軸7の後端部(一端部)に一体的に連結されている。ここで、タービンインペラ11は、タービン軸7の後端部に一体的に連結されたタービンハブ13と、このタービンハブ13の外周面に等間隔に設けられた複数枚のタービンブレード15とを備えている。
【0016】
タービンハウジング9の適宜位置には、排気ガスを取り入れるガス取入口(図示省略)が形成されており、このガス取入口は、エンジンのシリンダ(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング9の内部には、タービンスクロール流路17がタービンインペラ11を囲むように形成されており、このタービンスクロール流路17は、ガス取入口に連通してある。更に、タービンハウジング9の後側(換言すれば、タービンインペラ11の出口側)には、排気ガスを排出するガス排出口19が形成されており、このガス排出口19は、タービンスクロール流路17に連通してあって、排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0017】
ベアリングハウジング3の前側(他側)には、コンプレッサハウジング21が設けられている。また、コンプレッサハウジング21内には、コンプレッサインペラ23が設けられており、このコンプレッサインペラ23は、タービン軸7の前端部(他端部)に一体的に連結されている。ここで、コンプレッサインペラ23は、タービン軸7の前端部に一体的に連結されたコンプレッサハブ25と、このコンプレッサハブ25の外周面に等間隔に設けられた複数枚のコンプレッサブレード27とを備えている。
【0018】
コンプレッサハウジング21の前側(換言すれば、コンプレッサインペラ23の入口側)には、空気を取り入れる空気取入口29が形成されており、この空気取入口29は、エアクリーナー(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング21の間におけるコンプレッサインペラ23の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路31が形成されており、このディフューザ流路31は、空気取入口29に連通してある。更に、コンプレッサハウジング21の内部には、コンプレッサスクロール流路33がコンプレッサインペラ23を囲むように形成されており、このコンプレッサスクロール流路33は、ディフューザ流路31に連通してある。そして、コンプレッサハウジング21の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口(図示省略)が形成されており、この空気排出口は、コンプレッサスクロール流路33に連通してあって、エンジンのシリンダに接続可能である。
【0019】
ベアリングハウジング3におけるコンプレッサハブ25の背面の径方向外側部分に対向する部位には、冷却水を流通させる1つ又は複数(1つのみ図示)の第1冷却水路35が円周方向へ沿って設けられており、第1冷却水路35は、冷却水を循環供給するエンジンの冷却水循環回路等の冷却水供給源37に接続可能である。また、ベアリングハウジング3におけるタービンインペラ11の出口近傍には、冷却水を流通させる1つ又は複数(1つのみ図示)の第2冷却水路39が円周方向へ沿って設けられており、この第2冷却水路39は、第1冷却水路35に連絡水路(図示省略)を介して連通してあって、冷却水供給源37に接続可能である。
【0020】
続いて、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0021】
ガス取入口からタービンハウジング9内に取り入れた排気ガスがタービンスクロール流路17を経由してタービンインペラ11側へ供給されると、排気ガスのエネルギーによってタービンインペラ11を回転駆動させることができ、コンプレッサインペラ23をタービン軸7を介して連動して回転駆動させることができる。これにより、空気取入口29から取り入れた空気をコンプレッサインペラ23によって圧縮して、ディフューザ流路31及びコンプレッサスクロール流路33を経由して空気排出口から排出することができ、エンジンのシリンダへ供給される空気を過給することができる(ターボチャージャ1の運転動作)。
【0022】
ターボチャージャ1の運転中に、冷却水供給源37からの冷却水を第1冷却水路35に流通させることにより、ベアリングハウジング3とコンプレッサハブ25の間の空気を十分に冷却する。これにより、コンプレッサインペラ23をコンプレッサハブ25の背面側から十分に冷却することができる。
【0023】
なお、冷却水供給源37からの冷却水を第2冷却水路39を経由して第2冷却水路39に流通させることにより、ベアリングハウジング3の後側部分(タービンインペラ11側部分)の温度上昇を抑えることができる(ターボチャージャ1の冷却作用)。
【0024】
従って、第1実施形態によれば、ターボチャージャ1の運転中に、コンプレッサインペラ23をコンプレッサハブ25の背面側から十分に冷却することができるため、コンプレッサインペラ23の許容応力の低下を抑制して、ターボチャージャ1の寿命を十分に延ばすことができる。
【0025】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図3を参照して説明する。
【0026】
ここで、図3は、第2実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【0027】
図3に示すように、第2実施形態に係るターボチャージャ41は、第1実施形態に係るターボチャージャ1と略同じ構成を有しており、第2実施形態の係るターボチャージャ41の構成のうち、第1実施形態に係るターボチャージャ1の構成と異なる部分について説明する。なお、第2実施形態に係るターボチャージャ41における複数の構成要素のうち、第1実施形態に係るターボチャージャ1における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して、説明を省略する。
【0028】
ベアリングハウジング3の外周面の前側部分(他側部分)には、径方向へ延びた環状のシールプレート43が設けられている。そして、コンプレッサハウジング21は、シールプレート43の外周面に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3の前側(他側)にシールプレート43を介して設けられている。また、ベアリングハウジング3とシールプレート43は、断熱されるように局所的に接触している。更に、ベアリングハウジング3の外周面とシールプレート43の内周面との境界部分Bは、コンプレッサインペラ23の外周縁よりも径方向内側に位置するようになっている。
【0029】
続いて、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
第2実施形態についても、第1実施形態と同様の作用を奏する他に、ベアリングハウジング3とシールプレート43が断熱されるように局所的に接触しているため、ディフューザ流路31の温度が高くなっても、ベアリングハウジング3の前側部分の温度上昇を抑えることができる。これにより、冷却水を第1冷却水路35流通させるだけで、コンプレッサインペラ23をコンプレッサハブ25の背面側から十分かつ効率よく冷却することができる。
【0031】
また、ベアリングハウジング3の外周面とシールプレート43の内周面との境界部分Bがコンプレッサインペラ23の外周縁よりも径方向内側に位置するようになっているため、ベアリングハウジング3とシールプレート43の間で断熱されるようにしても、ディフューザ流路31における空気流の乱れを抑えることができる。
【0032】
従って、第2実施形態によれば、ディフューザ流路31における空気流の乱れを抑えつつ、コンプレッサインペラ23をコンプレッサハブ25の背面側から十分かつ効率よく冷却することができるため、第1実施形態の効果をより一層向上させることができる。
【0033】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について図4及び図5を参照して説明する。
【0034】
ここで、図4及び図5は、第3実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【0035】
図4に示すように、第3実施形態に係るターボチャージャ45は、第2実施形態に係るターボチャージャ41と略同じ構成を有しており、第3実施形態の係るターボチャージャ45の構成のうち、第2実施形態に係るターボチャージャ41の構成と異なる部分について説明する。なお、第3実施形態に係るターボチャージャ41における複数の構成要素のうち、第2実施形態に係るターボチャージャ41における構成要素と対応するものについては、図中に同一番号を付して、説明を省略する。
【0036】
ベアリングハウジング3は、コンプレッサハブ25の背面の径方向外側部分に対向する部位に、円周方向へ延びた1つ又は複数(1つのみ図示)の水路構成部材47を備えており、水路構成部材47の内側には、第1冷却水路35に相当する第1冷却水路49が形成されている。また、第1冷却水路49の縁部は、Oリング51によって防水処理が施されている。更に、図5に示すように、水路構成部材47の断面形状をパイプ状に構成することにより、Oリング51を省略しても構わない。
【0037】
ここで、第3実施形態においても、第2実施形態と同様の作用及び効果を奏するものである。
【0038】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1実施形態に係るターボチャージャの断面図である。
【図2】第1実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【図3】第2実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【図4】第3実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【図5】第3実施形態に係るターボチャージャの要部の拡大断面である。
【符号の説明】
【0040】
1 ターボチャージャ
3 ベアリングハウジング
5 ベアリング
7 タービン軸
9 タービンハウジング
11 タービンインペラ
21 コンプレッサハウジング
23 コンプレッサインペラ
35 第1冷却水路
37 冷却水供給源
39 第2冷却水路
41 ターボチャージャ
43 シールプレート
45 ターボチャージャ
47 水路構成部材
49 第1冷却水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジンに供給される空気を過給するターボチャージャにおいて、
ベアリングハウジングと、
前記ベアリングハウジングにベアリングを介して回転可能に設けられたタービン軸と、
前記ベアリングハウジングの一側に設けられたタービンハウジングと、
前記タービンハウジング内に設けられ、前記タービン軸の一端部に一体的に連結したタービンインペラと、
前記ベアリングハウジングの他側に設けられたコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサハウジング内に設けられ、前記タービン軸の他端部に一体的に連結したコンプレッサインペラと、を具備し、
前記コンプレッサインペラの背面に対向する部位に、冷却水を流通させる冷却水路が円周方向へ沿って設けられ、前記冷却水路は、冷却水を循環供給する冷却水供給源に接続可能であることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記冷却水路は、前記ベアリングハウジングにおける前記コンプレッサインペラの背面に対向する部位に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記ベアリングハウジングの外周面の他側部分に、径方向へ延びた環状のシールプレートが設けられ、前記コンプレッサハウジングは、前記ベアリングハウジングの他側に前記シールプレートを介して設けられ、
前記ベアリングハウジングと前記シールプレートは、断熱されるように局所的に接触していることを特徴とする請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記ベアリングハウジングの外周面の他側部分に、径方向へ延びた環状のシールプレートが設けられ、前記コンプレッサハウジングは、前記ベアリングハウジングの他側に前記シールプレートを介して設けられ、
前記ベアリングハウジングと前記シールプレートは、断熱されるように局所的に接触しており、
前記ベアリングハウジングは、前記コンプレッサインペラの背面に対向する部位に円周方向へ延びた水路構成部材を備え、前記水路構成部材の内側に、前記冷却水路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記ベアリングハウジングの外周面と前記シールプレートの内周面との境界部分は、前記コンプレッサインペラの外周縁よりも径方向内側に位置していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のターボチャージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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