説明

ターボ圧縮機

【課題】高荷重に対応することができるターボ圧縮機の提供。
【解決手段】基準平面Bに沿って設けられ、駆動モータによって回転駆動するブルギア軸52と、ブルギア軸52の周面に対向するジャーナル面61aに、ブルギア軸52の軸方向に沿って給油溝61bが形成され、且つ、該給油溝61bに沿って分割可能な分割面100を有する軸受60と、を有するターボ圧縮機であって、分割面100は、上記回転駆動しているブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる荷重の方向と異なる位置に配置されているという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ロータを支承する直接潤滑方式のジャーナル軸受を採用した回転構造体が開示されている。この軸受は、基準平面に対して半円状の凹部を有する軸受台に固定支持される2つ割り型の軸受ハウジングを有している。軸受ハウジングの内側には、複数のティルテイングパッドが配置されている。
【0003】
この2つ割り型の軸受ハウジングは、それぞれ半リング状をなす上側軸受ハウジングと下側軸受ハウジングとに分割可能な水平分割面を有しており、下側軸受ハウジングが軸受台の凹部に嵌合固定される。そして、上側軸受ハウジングが、位置決めピンや結合ボルトによって下側軸受ハウジングに結合される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−116958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、駆動機によりロータを回転駆動させて所定のガスを圧縮するターボ圧縮機において、ロータの周面に対向するジャーナル面(すべり面)を有する軸受に、上記2つ割り型構造を採用する場合がある。そして、この2つ割り型構造の軸受においては、加工のし易さから、上記水平分割面に沿って軸方向に延在する給油溝を形成することがある。
【0006】
しかしながら、ロータからジャーナル面に加わる荷重には、ロータの自重に起因する重力方向の荷重だけでなく、はすば歯車のかみ合いによるスラスト方向の荷重や圧縮の際の流体との衝突等に起因する重力方向と異なる方向の荷重が含まれる。このため、ロータからジャーナル面に加わる荷重方向が、上記水平分割面の給油溝付近となることがあり、当該荷重をしっかりと面で受けることができず、この場合には高荷重に対応することができないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高荷重に対応することができるターボ圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、基準平面に沿って設けられ、駆動機によって回転駆動するロータと、上記ロータの周面に対向するジャーナル面に、上記ロータの軸方向に沿って給油溝が形成され、且つ、該給油溝に沿って分割可能な分割面を有する軸受と、を有するターボ圧縮機であって、上記分割面は、上記回転駆動している上記ロータから上記ジャーナル面に加わる荷重の方向と異なる位置に配置されているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ロータ駆動中にジャーナル面に加わる荷重方向に給油溝が配置されないため、従来よりも高荷重まで対応可能となる。
【0009】
また、本発明においては、上記回転駆動している上記ロータから上記ジャーナル面に加わる水平成分を含む方向の荷重に基づいて上記分割面を上記基準平面に対して傾かせた姿勢で、上記軸受を固定する固定部を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ロータからジャーナル面に加わる水平成分を含む方向の荷重に基づいて、軸受の姿勢を変更して固定することにより、分割面を基準平面から傾かせる。これにより、水平成分を含む荷重方向に給油溝が配置されないようにしつつ、その荷重をしっかりとジャーナル面で受けさせることができるため、従来よりも高荷重まで対応可能となる。
【0010】
また、本発明においては、上記分割面は、水平面に対して傾いているという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、分割面を水平面に対して傾けることで、ロータからジャーナル面に加わる荷重方向が水平方向の場合に、その荷重方向に給油溝が配置されないようにしつつ、その荷重をしっかりとジャーナル面で受けさせることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記ロータは、第2のロータと第3のロータとを回転駆動させるギアを有し、上記軸受は、上記ギアを挟んで上記駆動機側に設けられた第1の軸受と、上記ギアを挟んで上記駆動機と逆側に設けられた第2の軸受と、を有し、上記固定部は、上記第1の軸受を第1の姿勢で固定する第1の固定部と、上記第2の軸受を上記第1の姿勢で固定する第2の固定部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ギアを挟んで駆動機側に設けられた第1の軸受を第1の姿勢で固定し、ギアを挟んで駆動機と逆側に設けられた第2の軸受を第1の軸受と同じ第1の姿勢で固定して、両者の分割面を一致させることで、それぞれの軸受のロータに対する組み付け作業を一括で行うことができる。
【0012】
また、本発明においては、上記ロータは、第2のロータと第3のロータとを回転駆動させるギアを有し、上記軸受は、上記ギアを挟んで上記駆動機側に設けられた第1の軸受と、上記ギアを挟んで上記駆動機と逆側に設けられた第2の軸受と、を有し、上記固定部は、上記第1の軸受を第1の姿勢で固定する第1の固定部と、上記第2の軸受を上記第1の姿勢と異なる第2の姿勢で固定する第2の固定部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、ギアを挟んで駆動機側に設けられた第1の軸受を第1の姿勢で固定し、ギアを挟んで駆動機と逆側に設けられた第2の軸受を第1の軸受と異なる第2の姿勢で固定して、両者の分割面を違わせることで、それぞれの軸受において最適な分割面の傾きとして、より高荷重に対応することができる。
【0013】
また、本発明においては、上記第2のロータ及び上記第3のロータは、それぞれ上記軸方向において上記ギアと当接可能なスラストカラーを有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2のロータ及び第3のロータからの軸方向の荷重によって、ロータからジャーナル面にモーメント荷重が加わる場合の高荷重に対応することができる。
【0014】
また、本発明においては、上記第2のロータ及び上記第3のロータは、それぞれ上記基準平面に沿って設けられ、且つ、上記ロータを挟んだ位置関係を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、第2のロータ及び第3のロータからの軸方向の荷重によって、ロータからジャーナル面に、略基準平面に沿うモーメント荷重が加わる場合に、分割面を基準平面に対して傾けることで、そのモーメント荷重方向に給油溝が配置されないようにしつつ、そのモーメント荷重をしっかりとジャーナル面で受けさせることができる。
【0015】
また、本発明においては、上記軸受は、上記ジャーナル面を有するジャーナル軸受部と、上記ジャーナル軸受部と一体で設けられたスラスト軸受部と、を有するという構成を採用する。
この構成を採用することによって、本発明では、軸受がスラスト荷重を積極的に受ける場合の高荷重に対応することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高荷重に対応することができるターボ圧縮機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態におけるターボ圧縮機の主要部を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態における第1の軸受のギアケースに対する固定姿勢を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態における第1の軸受の構成を示す背面図である。
【図4】図3における矢視A図である。
【図5】本発明の実施形態におけるブルギア軸からジャーナル面に加わる水平成分を含む荷重について説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態におけるブルギア軸から第1の軸受のジャーナル面に加わる荷重に関するグラフである。
【図7】本発明の実施形態における第1の軸受における軸受回転角と最小油膜厚さとの関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施形態におけるブルギア軸から第2の軸受のジャーナル面に加わる荷重に関するグラフである。
【図9】本発明の実施形態における第2の軸受における軸受回転角と最小油膜厚さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るターボ圧縮機の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態におけるターボ圧縮機1の主要部を示す断面図である。
ターボ圧縮機1は、第一段圧縮機10と、第二段圧縮機20と、第三段圧縮機30と、第四段圧縮機40と、駆動モータ(駆動機)Mと、歯車装置50とを有する。また、ターボ圧縮機1は、ガスGを、第一段圧縮機10から、第二段圧縮機20、第三段圧縮機30、第四段圧縮機40の順に導く、不図示のガス流路を備えている。
【0020】
歯車装置50は、ブルギア51を有するブルギア軸(ロータ)52と、第1のピニオンギア53を有する低速ピニオン軸(第2のロータ)54と、第2のピニオンギア55を有する高速ピニオン軸(第3のロータ)56と、ギアケース57と、を有する。ブルギア51は、第1のピニオンギア53及び第2のピニオンギア55とそれぞれ噛合している。ブルギア51、第1のピニオンギア53及び第2のピニオンギア55は、静音性及びトルク伝達性に優れる、はすば歯車から構成されている。
【0021】
低速ピニオン軸54は、ブルギア軸52と平行に配置され、ギアケース57に設けられた不図示のジャーナル軸受によってギアケース57に対し回転自在に軸支される。低速ピニオン軸54の一端部には、第一段圧縮機10の羽根車11が設けられ、他端部には、第二段圧縮機20の羽根車21が設けられている。また、低速ピニオン軸54は、ブルギア51と軸方向両側において当接可能なスラストカラー58を有する。
【0022】
一方、高速ピニオン軸56は、ブルギア軸52に平行で且つ低速ピニオン軸54とはブルギア軸52を挟んで反対側に配置され、ギアケース57に設けられた不図示のジャーナル軸受によってギアケース57に対し回転自在に軸支される。高速ピニオン軸56の一端部には、第三段圧縮機30の羽根車31が設けられ、他端部には、第四段圧縮機40の羽根車41が設けられている。また、高速ピニオン軸56は、ブルギア51と軸方向両側において当接可能なスラストカラー59を有する。
【0023】
羽根車11,21,31,41は、ラジアルインペラであり、軸方向で吸気したガスGを半径方向に導出する不図示の3次元的ねじれを含むブレードを有する。羽根車11,21,31,41の周りには、それぞれディフューザ流路が設けられており、半径方向に導出したガスGを、当該流路において圧縮・昇圧し、また、さらにその周りに設けられたスクロール流路を介して次の段の圧縮機に供給することができる。
【0024】
ブルギア軸52は、駆動モータMの出力軸2と接続されており、駆動モータMによって回転駆動する構成となっている。ブルギア軸52は、ギアケース57に設けられた軸受60によってギアケース57に対し回転自在に軸支される。軸受60は、ブルギア51を挟んで駆動モータM側に設けられた第1の軸受60Aと、ブルギア51を挟んで駆動モータM側と逆側に設けられた第2の軸受60Bと、を有する。
【0025】
上記構成のターボ圧縮機1によれば、駆動モータMによってブルギア軸52を回転駆動させると、ブルギア軸52の回転と同期して、低速ピニオン軸54及び高速ピニオン軸56が回転駆動する。これにより、ガスGが、第一段圧縮機10の吸気口12から導入されて第一段圧縮され、その後、ガスGは、不図示のガス流路を介して、第二段圧縮機20の吸気口22、第三段圧縮機30の吸気口32、第四段圧縮機40の吸気口42、の順に導入されて多段圧縮される。なお、当該多段圧縮されたガスGは、ターボ圧縮機1に接続された不図示の産業用機械や空気分離装置等に供給されることとなる。
【0026】
次に、図2〜図4を参照して、軸受60の構成について詳しく説明する。なお、以下の説明では、第1の軸受60Aの構成についてのみ説明し、第1の軸受60Aと構成を同じくする第2の軸受60Bの構成については、重複説明を避けるため割愛する。
図2は、本発明の実施形態における第1の軸受60Aのギアケース57に対する固定姿勢を示す正面図である。図3は、本発明の実施形態における第1の軸受60Aの構成を示す背面図である。図4は、図3における矢視A図である。
【0027】
第1の軸受60Aは、図2に示すように、ブルギア軸52が設けられた基準平面Bに対して半円状の凹部57aを有するギアケース57に対して所定の姿勢で固定されている。本実施形態の基準平面Bは、図2に図示されている下側のギアケース57と、図2に図示されていない上側のギアケースとの組み合せ面と一致している。また、本実施形態の基準平面Bは、水平面と一致している。なお、基準平面Bと水平面とは、ほとんどの場合一致するが、ターボ圧縮機1の設置箇所や仕様によっては、基準平面Bと水平面とが一致しない場合もある。
【0028】
第1の軸受60Aは、ジャーナル面(すべり面)61aを有するジャーナル軸受部61と、ジャーナル軸受部61と一体で設けられたスラスト軸受部62と、を有する。
ジャーナル軸受部61は、半円状の凹部57aに嵌合可能な略円筒形状を有する真円軸受である(図3及び図4参照)。ジャーナル面61aは、例えばホワイトメタルから形成されている。このジャーナル面61aには、ブルギア軸52の軸方向に沿って給油溝61bが対となって形成されている(図3参照)。
【0029】
スラスト軸受部62は、ジャーナル軸受部61よりも拡径した略円環板状のテーパランド軸受である。スラスト軸受部62は、ブルギア軸52と一体で回転する略円板状のスラストディスク63(図1参照)と対向配置され、且つ、ギアケース57に対してジャーナル軸受部61と共に一体で固定される。
【0030】
上記構成の第1の軸受60Aは、図3に示すように、給油溝61bに沿って分割可能な分割面100を有する2つ割り型構造となっている。以下、分割面100で分割されたうちの、一方側をアッパーハーフ70Aと称し、他方側をロアーハーフ70Bと称する。アッパーハーフ70A及びロアーハーフ70Bは、それぞれ略半円環形状を有する。
【0031】
アッパーハーフ70Aは、ロアーハーフ70Bに対して位置決めピン71で位置決めされ、結合ボルト72によってロアーハーフ70Bに結合される。なお、位置決めピン71及び結合ボルト72は、それぞれジャーナル軸受部61に設けられる。図4に示すように、ジャーナル軸受部61には、位置決めピン71を挿入するピン挿入孔73、結合ボルト72を挿入するボルト挿入孔74が、それぞれ対角の2点において設けられている。
【0032】
アッパーハーフ70Aのジャーナル軸受部61に対応する位置には、第1の軸受60Aをギアケース57に対して所定の姿勢で固定する軸受固定孔(固定部)75が形成されている。本実施形態の軸受固定孔75は、不図示のピンが挿入される穴として形成されている。軸受固定孔75は、図2に示すように、第1の軸受60Aをギアケース57に固定する際に、基準平面Bに対して直角(90°)に配置される。
【0033】
軸受固定孔75には、下側のギアケース57と、不図示の上側のギアケースとを組み合わせる際に、不図示のピンが上方から挿入される。これにより、第1の軸受60Aがギアケース57に対して回転することが規制されて固定される。軸受固定孔75は、分割面100に対して所定角度で設けられており、図2に示すように分割面100を基準平面B(水平面)に対して傾かせるよう構成されている。なお、図2に示す所定角度(60°)とは、基準平面Bを0°に設定し、ブルギア軸52の回転方向(図2において時計回り)を+として規定したものである。
【0034】
分割面100の基準平面Bに対する傾きは、回転駆動中にブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる水平成分を含む荷重に基づいて設定されている。
続いて、このブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる水平成分を含む荷重について詳しく説明する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態におけるブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる水平成分を含む荷重について説明するための図である。なお、図5(a)は、基準平面Bに沿う方向に加わる荷重を模式的に示す図である。また、図5(b)は、基準平面Bと直交する面に沿う方向に加わる荷重を模式的に示す図である。
【0036】
図5(a)に示すように、ブルギア軸52は、駆動モータMからトルクが伝達され回転駆動する。ブルギア軸52が回転駆動すると、ブルギア51を介して、基準平面Bに沿って左右に配置された低速ピニオン軸54及び高速ピニオン軸56が回転駆動する。低速ピニオン軸54及び高速ピニオン軸56は、それぞれ不図示のジャーナル軸受で支えられ、はすば歯車及び圧縮ガスにより発生する軸方向の荷重(スラスト荷重)は、スラストカラー58,59によりブルギア51側に伝達される。ブルギア軸52の軸受60は、伝達されたスラスト荷重をスラスト軸受部62で受けると共に、ブルギア軸52からの半径方向の荷重(ジャーナル荷重)をジャーナル軸受部61で受けることとなる。
【0037】
ジャーナル軸受部61のジャーナル面61aには、図5(b)に示すように、ブルギア軸52の自重による荷重と、低速ピニオン軸54及び高速ピニオン軸56への伝達動力(反力)と、が加わるが、さらに、低速ピニオン軸54及び高速ピニオン軸56からのスラスト荷重に起因するモーメント荷重が加わる(図5(a)参照)。このモーメント荷重は、はすば歯車及び圧縮ガスにより発生するスラスト荷重のうち、特に圧縮ガスによるガス・スラスト力による影響が大きい。ガス・スラスト力は、低速ピニオン軸54の両端に設けられた羽根車11,21からのものと、高速ピニオン軸56の両端に設けられた羽根車31,41からのものとがある。
【0038】
ガス・スラスト力が、低速ピニオン軸54側、高速ピニオン軸56側が共に均等に発生する場合は、ブルギア軸52の軸受60は、そのスラスト軸受部62の軸受面62aに対し垂直に荷重を受けることができる。しかしながら、低速ピニオン軸54側、高速ピニオン軸56側で発生するガス・スラスト力に不均衡がある場合(ほとんどの場合そうである)は、抉るようなモーメントとなってブルギア軸52の軸受60のジャーナル面61aに影響を与える。このとき発生するガス・スラスト力の大きさにより、軸受60のジャーナル面61aに加わる荷重方向が略水平方向となる場合がある。このようにして、ブルギア軸52からジャーナル面61aに水平成分を含む荷重が加わる。
【0039】
図6は、本発明の実施形態におけるブルギア軸52から第1の軸受60Aのジャーナル面61aに加わる荷重に関するグラフである。図7は、本発明の実施形態における第1の軸受60Aにおける軸受回転角と最小油膜厚さとの関係を示すグラフである。図8は、本発明の実施形態におけるブルギア軸52から第2の軸受60Bのジャーナル面61aに加わる荷重に関するグラフである。図9は、本発明の実施形態における第2の軸受60Bにおける軸受回転角と最小油膜厚さとの関係を示すグラフである。なお、図6及び図8は、分割面100を基準平面Bに配置したとき(0°と180°に配置したとき)のジャーナル面61aの軸方向中央位置の周方向におけるグラフを示す。
【0040】
図6に示すように、第1の軸受60Aのジャーナル面61aには、ブルギア軸52から加わる水平成分を含む荷重による影響で、180°に配置された給油溝61b近傍に潤滑油の油膜圧力の最大値が出現し、油膜厚さの最小値が出現していることが分かる。また、180°に配置された給油溝61b近傍においては、軸受温度上昇の最大値が出現していることが分かる。
このように、第1の軸受60Aの分割面100を基準平面Bに配置したときは、ブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる荷重を給油溝61b近傍で受けてしまい、しっかりと面で受けることができないため、この場合には高荷重に対応することができないことが分かる。
【0041】
一方、図7に示すように、第1の軸受60Aの基準平面Bに対する軸受回転角度を30°毎に変更していくと、ジャーナル面61aの周方向における最小油膜厚さは、0°から徐々に上昇し、90°を最大値として、その後徐々に下降することが分かる。
このように、第1の軸受60Aの姿勢を、例えば30°、60°、90°と変更し、分割面100を基準平面Bから傾かせることにより、ブルギア軸52から加わる水平成分を含む荷重方向に給油溝61bが配置されないようにしつつ、その荷重をしっかりとジャーナル面61aで受けさせることができる。したがって、分割面100を基準平面Bに配置したときよりも高荷重まで対応可能とさせることができる。
【0042】
他方、図8に示すように、第2の軸受60Bのジャーナル面61aには、ブルギア軸52から加わる水平成分を含む荷重による影響で、0°(360°)に配置された給油溝61b近傍に潤滑油の油膜圧力の最大値が出現し、油膜厚さの最小値が出現していることが分かる。また、0°(360°)に配置された給油溝61b近傍においては、軸受温度上昇の最大値が出現していることが分かる。なお、各値の最大値の出現位置が第1の軸受60Aと半位相ズレているのは、ブルギア51を中心としてブルギア軸52にモーメントがかかることに起因すると考えられる(図5(a)参照)。
このように、第2の軸受60Bの分割面100を基準平面Bに配置したときも、ブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる荷重を給油溝61b近傍で受けてしまい、しっかりと面で受けることができないため、この場合には高荷重に対応することができないことが分かる。
【0043】
一方、図9に示すように、第2の軸受60Bの基準平面Bに対する軸受回転角度を30°毎に変更していくと、ジャーナル面61aの周方向における最小油膜厚さは、0°から徐々に上昇し、120°を最大値として、その後徐々に下降することが分かる。
このように、第2の軸受60Bの姿勢を、例えば60°、90°、120°と変更し、分割面100を基準平面Bから傾かせることにより、ブルギア軸52から加わる水平成分を含む荷重方向に給油溝61bが配置されないようにしつつ、その荷重をしっかりとジャーナル面61aで受けさせることができる。したがって、分割面100を基準平面Bに配置したときよりも高荷重まで対応可能とさせることができる。
【0044】
図2に戻り、本実施形態の第1の軸受60Aの軸受固定孔75は、分割面100に対して30°で設けられており、分割面100を基準平面Bに対して60°傾かせるよう構成されている。ところで、図7に示すように、第1の軸受60Aの軸受回転角度は90°とすることが最も好ましいが、第1の軸受60Aの軸受回転角度を90°とすると、軸受固定孔75の形成位置が分割面100と一致してしまい、位置決めピン71等と干渉してしまう。したがって、本実施形態では、第1の軸受60Aの軸受回転角度を60°とする姿勢(第1の姿勢)でギアケース57に対し固定し、分割面100を基準平面Bに対して60°傾かせるよう構成している。
【0045】
本実施形態の第2の軸受60Bは、図1に示すように、その分割面100と第1の軸受60Aの分割面100とを一致させるように、第1の軸受60Aと同じ第1の姿勢でギアケース57に対し固定されている。このように、両者の分割面100を一致させることで、それぞれの軸受60のブルギア軸52に対する組み付け作業を一括で行うことができる。具体的には、凹部57aに支持されたそれぞれのロアーハーフ70Bの上にブルギア軸52を載置し、それらにそれぞれのアッパーハーフ70Aを、位置決めピン71及び結合ボルト72を用いて組み付ける。その後、ブルギア軸52に組み付けた第1の軸受60A及び第2の軸受60Bを共に60°回転させ、両者その姿勢で、第1の軸受60Aの軸受固定孔75(第1の固定部)及び第2の軸受60Bの軸受固定孔75(第2の固定部)に対し、それぞれ不図示のピンを挿入して、ギアケース57に一括で固定することができる。
【0046】
ところで、第2の軸受60Bを、第1の軸受60Aと同じ第1の姿勢で固定する理由としては、第1の軸受60Aの方が第2の軸受60Bよりもブルギア軸52から加わる水平成分を含む荷重が大きいためである。すなわち、図6及び図8に示すように、駆動モータM側に設けられた第1の軸受60Aの方が、駆動モータMと逆側に設けられた第2の軸受60Bよりも、油膜圧力の最大値が大きいため、第2の軸受60Bの姿勢(第2の姿勢)に合わせて両者の軸受回転角度を120°とするよりも、第1の軸受60Aの姿勢(第1の姿勢)に合わせて両者の軸受回転角度を60°とした方が、より高荷重に対応することができる。
なお、組み付け作業には手間がかかるが、第1の軸受60Aを第1の姿勢(60°)で固定し、第2の軸受60Bを第1の軸受60Aと異なる第2の姿勢(120°)で固定して、両者の分割面100を違わせて、それぞれの軸受60において最適な分割面100の傾きとさせることで、さらにより高荷重に対応させることもできる。
【0047】
したがって、上述の本実施形態によれば、基準平面Bに沿って設けられ、駆動モータMによって回転駆動するブルギア軸52と、ブルギア軸52の周面に対向するジャーナル面61aに、ブルギア軸52の軸方向に沿って給油溝61bが形成され、且つ、該給油溝61bに沿って分割可能な分割面100を有する軸受60と、を有するターボ圧縮機1であって、分割面100は、上記回転駆動しているブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる荷重の方向と異なる位置に配置されており、また、上記回転駆動しているブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる水平成分を含む方向の荷重に基づいて分割面100を基準平面Bに対して傾かせた姿勢で、軸受60を固定する軸受固定孔75を有するという構成を採用することによって、ブルギア軸52からジャーナル面61aに加わる水平成分を含む方向の荷重に基づいて、軸受60の姿勢を変更して固定することにより、分割面100を基準平面Bから傾かせ、水平成分を含む荷重方向に給油溝61bが配置されないようにしつつ、その荷重をしっかりとジャーナル面61aで受けさせることができる。
このため、本実施形態によれば、高荷重に対応することができるターボ圧縮機1が得られる。
【0048】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、駆動機として駆動モータMを採用したが、例えばガスタービン等であっても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…ターボ圧縮機、B…基準平面、M…駆動モータ(駆動機)、51…ブルギア(ギア)、52…ブルギア軸(ロータ)、54…低速ピニオン軸(第2のロータ)、56…高速ピニオン軸(第3のロータ)、58,59…スラストカラー、60…軸受、60A…第1の軸受、60B…第2の軸受、61…ジャーナル軸受部、61a…ジャーナル面、61b…給油溝、62…スラスト軸受部、75…軸受固定孔(固定部、第1の固定部、第2の固定部)、100…分割面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準平面に沿って設けられ、駆動機によって回転駆動するロータと、前記ロータの周面に対向するジャーナル面に、前記ロータの軸方向に沿って給油溝が形成され、且つ、該給油溝に沿って分割可能な分割面を有する軸受と、を有するターボ圧縮機であって、
前記分割面は、前記回転駆動している前記ロータから前記ジャーナル面に加わる荷重の方向と異なる位置に配置されていることを特徴とするターボ圧縮機。
【請求項2】
前記回転駆動している前記ロータから前記ジャーナル面に加わる水平成分を含む方向の荷重に基づいて前記分割面を前記基準平面に対して傾かせた姿勢で、前記軸受を固定する固定部を有することを特徴とする請求項1に記載のターボ圧縮機。
【請求項3】
前記分割面は、水平面に対して傾いていることを特徴とする請求項1または2に記載のターボ圧縮機。
【請求項4】
前記ロータは、第2のロータと第3のロータとを回転駆動させるギアを有し、
前記軸受は、前記ギアを挟んで前記駆動機側に設けられた第1の軸受と、前記ギアを挟んで前記駆動機と逆側に設けられた第2の軸受と、を有し、
前記固定部は、前記第1の軸受を第1の姿勢で固定する第1の固定部と、前記第2の軸受を前記第1の姿勢で固定する第2の固定部と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ圧縮機。
【請求項5】
前記ロータは、第2のロータと第3のロータとを回転駆動させるギアを有し、
前記軸受は、前記ギアを挟んで前記駆動機側に設けられた第1の軸受と、前記ギアを挟んで前記駆動機と逆側に設けられた第2の軸受と、を有し、
前記固定部は、前記第1の軸受を第1の姿勢で固定する第1の固定部と、前記第2の軸受を前記第1の姿勢と異なる第2の姿勢で固定する第2の固定部と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ圧縮機。
【請求項6】
前記第2のロータ及び前記第3のロータは、それぞれ前記軸方向において前記ギアと当接可能なスラストカラーを有することを特徴とする請求項4または5に記載のターボ圧縮機。
【請求項7】
前記第2のロータ及び前記第3のロータは、それぞれ前記基準平面に沿って設けられ、且つ、前記ロータを挟んだ位置関係を有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のターボ圧縮機。
【請求項8】
前記軸受は、前記ジャーナル面を有するジャーナル軸受部と、前記ジャーナル軸受部と一体で設けられたスラスト軸受部と、を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のターボ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83168(P2013−83168A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221988(P2011−221988)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】