説明

ダイアフラムポンプ

本発明は、ダイアフラムポンプ1であって、ポンプ運動中、下死点及び上死点の間を往復動する作業ダイアフラム3が設けられており、該作業ダイアフラムはポンプ室壁6との間にポンプ室7を制限しており、作業ダイアフラムが上死点でポンプ室壁6に当接する形式のものに関する。本発明では、作業ダイアフラム3が内側リング区域8と外側リング区域9とを有しており、これらのリング区域8,9はポンプ運動中に変形可能であって、これらのリング区域の間に、補強された、ポンプ運動中にほぼ変形不能なダイアフラム領域が配置されていることを特徴とする。この場合、この変形不能なダイアフラム領域は例えば、半径方向に向けられ、周方向で互いに間隔をおいて配置された支持リブ10によって補強することができる。本発明では作業ダイアフラム3は、ダイアフラム上面と下面との間に差圧負荷が生じた場合も、吸込室体積を縮小するようなことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプであって、ポンプ運動中、下死点及び上死点の間を往復運動する作業ダイアフラムが設けられており、該作業ダイアフラムは、該作業ダイアフラムと有利には凹状に湾曲されたポンプ室壁との間にポンプ室を制限しており、作業ダイアフラムが、上死点でポンプ室壁に当接している形式のものに関する。
【0002】
冒頭で述べた形式のダイアフラムポンプは既に種々様々な構成で公知である。このようなダイアフラムポンプが低い真空領域で運転されると、作業ダイアフラムが、ダイアフラム上面と下面との間に生じる差圧によって膨出したり、これにより吸込室体積が小さくなったりする恐れがある。このように低い真空領域ではまさに、ダイアフラム上面と下面との間に大きな差圧が生じる。ダイアフラム下面には通常、大気圧がかかっていて、ダイアフラム上面にはそれぞれ排気圧が作用する。この場合、最大の差圧は大気圧からダイアフラムポンプの最終圧力をひいたものである。
【0003】
従来のダイアフラムポンプの通常のダイアフラムでは、特に、このダイアフラムポンプが最終圧力の範囲で作業し、ダイアフラムに大きな差圧がかかる場合、フレキシブルなダイアフラムの側方の弾性的な区域が大気圧によってフィード室の方向に膨出することが確認されている。このようなダイアフラムの「膨出」は、吸込室体積を著しく縮小することとなり、ダイアフラムポンプの吸込能力に不都合に作用する。
【0004】
低い最終圧力を有する2段式のおよび多段式のダイアフラムポンプではこのような形状変化は特に顕著である。このようなポンプでは、より低い真空段は、そこで最も大きな差圧が生じるので最も強く影響を受ける。
【0005】
従って本発明の課題は、冒頭で述べた形式のダイアフラムポンプを改良して、ダイアフラム上面とダイアフラム下面との間に生じる高い差圧負荷のもとでも、デッドスペース体積の拡大や吸込室体積の縮小が生じないようなダイアフラムポンプを提供することである。
【0006】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭で述べた形式のダイアフラムポンプにおいて、特に作業ダイアフラムが内側リング区域と外側リング区域とを有しており、これらのリング区域はポンプ運動中に変形可能であって、これらのリング区域の間に、補強された、ポンプ運動中にほぼ変形不能なダイアフラム領域が配置されているようにした。
【0007】
本発明によるダイアフラムポンプは、内側リング区域と外側リング区域とを有した作業ダイアフラムを有しており、これらのリング区域の間には補強された、ポンプ運動中に変形不能なダイアフラム領域が配置されている。内側リング区域と外側リング区域とが、行程により必要な作業ダイアフラムの屈曲をこの領域で可能にする2つのヒンジ領域を形成し、この間に位置する変形不能なダイアフラム領域は、高い差圧負荷のもとで生じる作業ダイアフラムの出力を減じる不都合な膨出に反作用する。この場合、変形不能なダイアフラム領域におけるダイアフラム領域の補強は、作業ダイアフラムが上死点でなお妨げられずに、有利には凹状に湾曲されたポンプ室壁に当接するように行われる。
【0008】
内側リング区域および外側リング区域によって制限される変形不能なダイアフラム領域におけるダイアフラムの補強は例えば補強ダイアフラム挿入材によって行われる。しかしながら本発明の有利な構成では、作業ダイアフラムは変形不能なダイアフラム領域において半径方向に向けられて、周方向で互いに間隔をおいて配置された支持リブによって補強されていて、これらの支持リブは、ポンプ室壁とは反対側のダイアフラム下面に配置されている。
【0009】
ポンプ室壁とは反対側のダイアフラム下面でこのように補強する支持リブを有する作業ダイアフラムは、少なくとも変形不能なダイアフラム領域において単層の材料層から形成されていて良い。この場合、支持リブまたは補強リブは、形状的および寸法的に、例えば、低い最終圧力のもとで、吸込行程中にダイアフラム下面に生じる大気圧が、変形不能なダイアフラム領域におけるダイアフラムを屈曲しないように形成されている。このようなダイアフラム領域を補強する支持リブは両側で、変形可能なリング区域によって制限されており、このリング区域は、ポンプ運動中のダイアフラムのこね変形運動のために必要なヒンジ領域を形成する。
【0010】
支持リブは半径方向でダイアフラム下面に配置することができる。しかしながら半径方向に対する支持リブの角度が大きくなるほど、支持リブの半径方向の変形および、デッドスペースの拡大や最終真空の減少につながる、圧縮室に面したリブの輪郭の変形が僅かになる。この場合、本発明の別の構成では、支持リブが湾曲された長手方向の延在を有しており、従って実質的には螺旋状にダイアフラム下面に配置されている。
【0011】
これに対してリブがまっすぐな長手方向の延在を有しているならば、支持リブが有利には±30°まで半径方向からずれていると有利である。
【0012】
この場合、周方向で互いに間隔をおいて配置されている複数の支持リブが、同じ湾曲方向または同じ半径方向に対するずれを有していると有利である。
【0013】
特に、変形不能なダイアフラム領域における均一な厚さの作業ダイアフラムも、上死点において良好に、有利には凹状に湾曲されたポンプ室壁に当接することができるように、支持リブのポンプ室壁に面した側がポンプ室壁の形状の輪郭に適合するようになっていると特に有利である。
【0014】
本発明のさらなる特徴は、本発明の次の実施例と、請求項および図面により明らかである。個々の特徴は、それ自体でも本発明の構成において組み合わせても実現可能である。
【0015】
次に図面につき本発明の実施例を詳しく説明する。
【0016】
図1及び図2には、ポンプヘッド2の領域のダイアフラムポンプ1が示されている。ダイアフラムポンプ1は作業ダイアフラム3を有しており、この作業ダイアフラムの外周縁はポンプヘッドに緊締されている。作業ダイアフラム3には中央の固定コア4が加工成形されており、この固定コア4にはクランク駆動装置(図示せず)のコンロッド5が結合されている。ポンプ運動中に図1に示した上死点と図2に示した下死点との間で往復運動する作業ダイアフラム3は、該作業ダイアフラム3と凹状に湾曲されたポンプ室壁6との間にポンプ室7を制限している。
【0017】
ここに示したダイアフラムポンプ1が、例えばターボ分子ポンプ1の予備ポンプとして低い真空領域で作業する場合は特に、ダイアフラムの上面と下面との間に大きな差圧が生じる。作業ダイアフラム3が、ダイアフラム上面と下面との間に生じる差圧負荷のもとで膨出したり、これにより吸込室容積が著しく小さくなったりしないように、作業ダイアフラム3は、補強され、ポンプ運動中ほぼ変形不能なリング区域を有している。このような変形不能なダイアフラム領域は内側リング区域8と外側リング区域9とによって制限されており、これらはポンプ運動中に変形可能なヒンジ領域として働く。
【0018】
変形不能なダイアフラム領域におけるダイアフラムを補強するために、ここでは半径方向に向けられた支持リブ10が設けられている。これらの支持リブは、ポンプ室壁6とは反対の側のダイアフラム下面に配置されている。これらの支持リブ10は周方向で互いに均一な間隔を置いて配置されている。図1に示したように作業ダイアフラム3が上死点で、ポンプ室壁6に有利には全面的に当接するように、支持リブ10の、ポンプ室壁6に面した側は、ポンプ室壁6の輪郭に形状的に合わせられている。
【0019】
図3に示したように、支持リブ10はまっすぐな長手方向の延在を有している。変形不能なリング区域における作業ダイアフラム3の補強を最良にするために、支持リブ10が有利には±30°まで半径方向からずれていると有利である。しかしながら、図4に示したように支持リブが湾曲された長手方向の延在を有していて、実質的には螺旋状にダイアフラム下面に配置されていても良い。
【0020】
図3及び図4に示した支持リブ10の半径方向に対する角度が大きくなるほど、支持リブ10の半径方向の変形は小さくなり、かつデッドスペースの拡大や最終真空の低下につながる支持リブ10の圧縮室またはポンプ室7に面した輪郭の変形が減じられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ポンプ運動の上死点におけるダイアフラムポンプの作業ダイアフラムを示す図であって、この場合、作業ダイアフラムは、変形可能なヒンジ領域として働く2つのリング区域を有しており、これらのリング区域の間には支持リブによって補強された変形不能なダイアフラム領域が配置されている。
【図2】ポンプ運動の下死点における図1の作業ダイアフラムを示した図である。
【図3】図1と比較可能な作業ダイアフラムのダイアフラム下面を示した図である。
【図4】図1〜図3の作業ダイアフラムの変化実施例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアフラムポンプ(1)であって、ポンプ運動中、下死点及び上死点の間を往復運動する作業ダイアフラム(3)が設けられており、該作業ダイアフラムは、該作業ダイアフラムとポンプ室壁(6)との間にポンプ室(7)を制限しており、前記作業ダイアフラムが上死点でポンプ室壁(6)に当接している形式のものにおいて、
作業ダイアフラム(3)が内側リング区域(8)と外側リング区域(9)とを有しており、これらのリング区域(8,9)はポンプ運動中に変形可能であって、これらのリング区域(8,9)の間に、補強された、ポンプ運動中にほぼ変形不能なダイアフラム領域が配置されており、作業ダイアフラム(3)が変形不能なダイアフラム領域で、半径方向に向けられ、周方向で互いに間隔をおいて配置された支持リブ(10)によって補強されていて、該支持リブ(10)はポンプ室壁(6)とは反対のダイアフラム下面に配置されていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
ポンプ室壁が凹状に湾曲されている、請求項1記載のダイアフラムポンプ。
【請求項3】
支持リブ(10)が湾曲された長手方向の延在を有している、請求項1又は2記載のダイアフラムポンプ。
【請求項4】
支持リブ(10)がまっすぐの長手方向の延在を有している、請求項1又は2記載のダイアフラムポンプ。
【請求項5】
支持リブ(10)が、有利には±30°まで半径方向に対してずれている、請求項1から4までのいずれか1項記載のダイアフラムポンプ。
【請求項6】
周方向で互いに間隔をおいて配置された支持リブ(10)が、同じ湾曲方向又は半径方向からのずれを有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のダイアフラムポンプ。
【請求項7】
支持リブ(10)の、ポンプ室壁(6)に面した側が、ポンプ室壁(6)の輪郭に形状が適合するように形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のダイアフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−520868(P2006−520868A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504472(P2006−504472)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001887
【国際公開番号】WO2004/083639
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(591049066)カー エヌ エフ ノイベルガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (5)
【氏名又は名称原語表記】KNF Neuberger GmbH
【住所又は居所原語表記】Alter Weg 3, D−79112 Freiburg−Munzingen, Germany
【Fターム(参考)】