説明

ダイオキシン類無害化処理装置

【課題】 ダイオキシン類により汚染された固体を、安全かつ効率的で低コストにより無害化処理を行うことが可能なダイオキシン類無害化処理装置を提供する。
【解決手段】 ダイオキシン類を含有する汚染廃棄物Wを真空状態で加熱することにより前記ダイオキシン類を前記汚染廃棄物Wから分離する真空加熱手段10と、前記真空加熱手段10により前記汚染廃棄物Wから分離された前記ダイオキシン類を分解して無害化する電子線処理手段20と、を備えることを特徴とするダイオキシン類無害化処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体が含有するダイオキシン類を除去して無害化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成12年1月から、ダイオキシン類による環境汚染の防止等の対策を総合的に推進するために「ダイオキシン類対策特別処置法」が施行されるようになり、施策の基本とすべき基準として、耐容1日摂取量(4ピコグラム/体重kg/日)と大気汚染(年間平均値0.6ピコグラム−TEQ/m3)、水質汚染(1ピコグラム−TEQ/m3)、水質汚濁(150ピコグラム−TEQ/m3)及び土壌の汚染(1000ピコグラム−TEQ/m3)に関わる環境基準が定められた。
【0003】
このため、ダイオキシン類による汚染廃棄物(以下単に「汚染廃棄物」という場合がある)は、特別管理を受け入れる特定の最終処分場である、管理処分場で最終処分している。また、その代替案として、高温燃焼することでダイオキシン類を分解し汚染廃棄物の浄化を行う方法や、溶融固化、セメントやアスファルト類の添加による固化等の中間処理を施すことで、含有するダイオキシン類を固定化・安定化して最終処分する方法が採用されている。
【0004】
しかし、管理処分場及び中間処理の可能な施設がともに少なく、輸送も許可を受けた収集運搬業者に限定されるため、前記汚染廃棄物の受入量がその排出量に追いつかないといった問題がある。また、一般産業廃棄物と比較して、厳しい管理と処理体系とが要求されるため、積替え・輸送中の飛散防止、追跡管理が必要となり、廃棄物処理コストが増大するという問題も有している。一方、セメントやアスファルト類による固化処理では、処分すべき廃棄物量が固化材の添加分だけ増大するので処分費が増加するとともに、近年受入量が逼迫している最終処分場への環境負荷が増大するという、問題点を有している。
【0005】
そのため、特別な管理を必要とせずに、最終処分場への負荷を可能な限り低減するために、廃棄物に含まれるダイオキシン類の処理方法として種々の技術が開示されており、汚染廃棄物の処理にともなって発生するダイオキシン類による環境の汚染の防止またはその除去等をするために必要な処置を講じている。例えば、特許文献1に記載の発明には、ダイオキシン類を含むタールや灰を分散若しくは溶解させ、この被焼却体溶解若しくは分散液に高エネルギーの電子線照射を施すことにより、ダイオキシン類の塩素を解離させて、脱塩素化処理により無害化する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−192818号公報([0014]−[0023]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の処理方法は、焼却炉から発生したタールや灰に含まれるダイオキシン類を分離するものであり、産業廃棄物等の固体の処理を直接的に行うものではない。そのため、ダイオキシン類を含有していると思われる施設の解体により発生した固体状の廃棄物に関しては、無害化処理を行うことができず、その処理対象は限定されていた。また、大量に発生した廃棄物を焼却処理場に輸送した後、一旦焼却処理した後でなければ、ダイオキシン類の無害化処理ができないため、厳しい管理下で汚染廃棄物の輸送と焼却処理を行った後、さらに、ダイオキシン類の無害化処理を行うため、その費用が増大するという問題も有していた。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、ダイオキシン類により汚染された固体を、安全かつ効率的で低コストにより無害化処理を行うことが可能なダイオキシン類無害化処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ダイオキシン類を含有する固体を真空状態で加熱することにより前記ダイオキシン類を前記固体から分離する真空加熱手段と、前記真空加熱手段により前記固体から分離された前記ダイオキシン類を分解して無害化する電子線処理手段を備えるダイオキシン類無害化処理装置である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記真空加熱手段は、前記固体の流入口から排出口に向かって順に、当該固体を中真空まで減圧処理するパージ室と、前記パージ室において中真空まで減圧処理された前記固体を高真空で加熱処理する真空加熱炉と、前記真空加熱炉において高真空で加熱処理された前記固体を大気圧まで戻しながら冷却する冷却室との3室と、前記3室の各処理過程において前記固体から分離された前記ダイオキシン類を含有する気体を前記電子線処理手段へ送気する真空送気手段とを備え、前記電子線処理手段は、前記真空送気手段により送気された前記気体が内部に流入する照射チャンバと、前記照射チャンバと接続されており当該照射チャンバ内の前記気体に電子線の照射処理を行う電子線照射装置とを備えていることを特徴としている。
【0010】
かかるダイオキシン類無害化処理装置により、真空加熱手段に加えて電子線処理手段により分解を行うため、真空加熱手段単独でダイオキシン類を分解する場合に比べ、加熱温度を低く設定することが可能となる。このため、分解へのエネルギー効率が向上するとともに、真空加熱手段の小型化が可能となり、当該ダイオキシン類無害化処理装置に要するスペースを小さくすることができる。また、この小型化により、ダイオキシン類無害化処理装置を車載することが可能となるため、当該ダイオキシン類無害化処理装置が移動自在となり、厳しい管理下で汚染廃棄物を輸送することなく、当該汚染廃棄物の発生個所において、無害化処理を行うことが可能となる。
ここで、真空状態とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間内の状態をいう。また、中真空及び高真空は、この真空状態の程度を区別した圧力の領域を示しており、中真空は圧力が100Pa以下0.1Paより大、高真空は圧力が0.1Pa以下10μPaより大の範囲とされている。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記照射チャンバが、当該照射チャンバ内において流入してきた前記気体を旋回させる気体旋回機構を有することを特徴としている。
【0012】
かかるダイオキシン類無害化処理装置により、照射チャンバに流入する汚染ガスを当該照射チャンバ内において旋回させることで、汚染ガスの混合、均質化を図るとともに、照射効率の向上も可能となる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記ダイオキシン類を含有する前記固体に予め予熱乾燥処理を施す予熱乾燥手段を備えていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記予熱乾燥手段が、前記ダイオキシン類を含有する前記固体の予熱乾燥処理により発生する気体を前記電子線処理手段に送気する送気手段を備えていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記電子線処理手段が、前記真空加熱手段及び前記予熱乾燥手段から吸引したダイオキシン類を含有する気体を混合する混合チャンバを備えおり、前記混合チャンバにより混合された前記気体が照射チャンバへ送気されることを特徴としている。
【0016】
かかるダイオキシン類無害化処理装置により、真空加熱の前処理として予熱乾燥処理を行うことで、熱効率の高い真空加熱処理を行うことが可能である。また、真空加熱処理手段及び予熱乾燥手段において発生したダイオキシン類を含有する気体(以下「汚染ガス」という場合がある)の全てを電子線処理手段により混合して均質化した後、無害化処理を行う構成であるため、外部に汚染ガスが流出することがなく、安全に処理することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記電子線照射装置が、前記照射チャンバ内へ流入する前記気体が含有するダイオキシン類の濃度を検知する濃度センサと、前記濃度センサと連動して前記電子線照射装置の照射線量の制御を行う照射量制御機構を備えていることを特徴としている。
【0018】
かかるダイオキシン類無害化処理装置により、照射チャンバに流入する汚染ガスの流量及びダイオキシン類の濃度に応じて、照射量制御機構により電子線照射装置の照射線量を制御することで、分解効率に応じた確実で効率的な無害化処理が可能となる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載のダイオキシン類無害化処理装置であって、前記電子線処理手段が、前記照射チャンバ内へ流入する前記気体の温度を検知する温度センサと、前記気体の温度に応じて冷却ガスを送風する冷却ガス送風手段とを備えていることを特徴としている。
【0020】
かかるダイオキシン類無害化処理装置により、温度センサが汚染ガスの温度を検知して、冷却ガス送風機を制御することにより、処理する汚染ガスの温度を、電子線照射装置の許容温度以下に調節することが可能となる。
【0021】
さらに、ダイオキシン類無害化処理装置が、何らかの原因により電子線照射装置が停止した場合でも、真空送気手段、送気手段及び冷却ガス送風手段等の各送気手段等が自動的に停止されるように、送気手段制御機構を備えていれば、汚染ガスが未処理のまま外部に流出することを防止することができ、好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、焼却炉解体工事等で発生するダイオキシン類により汚染された固体廃棄物の無害化処理を、安全かつ効率的に行うことが可能となるため、処理後の廃棄物は特別な管理が不要な一般の産業廃棄物として処分することや、砕石や骨材として再利用することが可能となる。
このため、セメントやアスファルト等で安定処理する場合と比較すると廃棄物量が増加しないため、最終処分場への負荷を軽減することができ、また、特別な管理が不要なため、最終処分場や輸送手段の選択の自由度が高まり、最終的な処分に要する費用を大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0024】
[構成]
図1は、本実施の形態にかかるダイオキシン類無害化処理装置の構成と処理手順を示す概略図である。本実施の形態では、焼却施設の解体工事に伴い発生する、ダイオキシン類により汚染された固体廃棄物(以下「汚染廃棄物」という場合がある)Wを破砕装置2により所定の形状にまで破砕した後、ダイオキシン無害化処理装置1により無害化処理する場合について記載する。
【0025】
ダイオキシン類無害化処理装置1は、図1に示すように、真空加熱手段10と、電子線処理手段20と、予熱乾燥手段30とを主要部として構成されている。
【0026】
真空加熱手段10は、箱型に形成された内部が4室に分割された密閉容器からなる。そして、真空加熱手段10は、予熱乾燥手段30により予熱乾燥処理された汚染廃棄物Wを投入する投入口11を有し、投入口11と対向する位置には真空加熱処理によりダイオキシン類が分離された固体廃棄物(以下「処理廃棄物」という場合がある)W’を当該ダイオキシン類無害化処理装置1から排出する排出口16を有している。なお、真空加熱手段10の材質は限定されるものではない。
ここで、予熱乾燥手段30は、真空加熱手段10の投入口11と電子線処理手段20の混合チャンバ21とに接続されており、汚染廃棄物Wに予熱乾燥処理を施すキルン31と、キルン31による予熱乾燥処理に伴い発生する汚染ガスを混合チャンバ21に送気するブロワ32とから構成されている。
【0027】
そして、真空加熱手段10の内部の4室は、投入口11から順に、汚染廃棄物Wを中真空まで減圧処理するパージ室12、中真空まで減圧処理された汚染廃棄物Wを真空状態で加熱処理して処理廃棄物W’とする真空加熱炉13、真空状態で加熱処理された処理廃棄物W’を自然冷却する通過室14、自然冷却された処理廃棄物W'を冷却する冷却室15から構成されており、パージ室12、真空加熱炉13、通過室14及び冷却室15は、それぞれ汚染廃棄物Wから分離されたダイオキシン類を含有する気体(以下「汚染ガス」という場合がある)を電子線処理手段20へと送気する真空送気手段17に接続されている。なお、汚染廃棄物Wの各室間の輸送は、ベルトコンベヤ等の輸送装置を利用して行うものとし、投入口11から投入された汚染廃棄物Wが機械的にパージ室12から冷却室15を通過して無害化処理がなされて排出口16から排出されることになる。
ここで、冷却室15における、汚染廃棄物Wの冷却方法は限定されるものではなく、例えば、冷却ガス送風手段によって冷却ガスをあてることにより、冷却する構成としてもよい。また、通過室14を冷却室15の手前に配置するものとしたが、冷却室15を手前にして、所定の温度まで冷却した後、通過室14にて自然冷却する構成としてもよい。
【0028】
真空加熱手段10の各室からは、真空送気手段17を介して電子線処理手段20の混合チャンバ21に接続するパイプ部材が配管されている。
真空送気手段17は、混合チャンバ21側から順に配設された、真空ポンプ17aとフィルタ17bと凝縮機17cとから構成されている。そして、真空ポンプ17aにより、真空加熱手段10内を低酸素状態にして、当該真空加熱手段10内で発生する汚染ガスの全てを、電子線処理手段20へ送気するように構成されている。
【0029】
電子線処理手段20は、各真空送気手段17及び予熱乾燥手段30のブロワ32から送気された汚染ガスを流入させて、その内部で汚染ガスを混合させることにより、均質化する混合チャンバ21と、混合チャンバ21により均質化された汚染ガスに電子線を照射する照射チャンバ22と、照射チャンバ22に接続されており電子線を発生する電子線照射装置23とを主要部として構成されている。
【0030】
混合チャンバ21には、ブロワ32と、真空ポンプ17aとから延設されるパイプが接続されており、また、内部には温度センサ24と濃度センサ26が配設されている。また、混合チャンバ21には、温度センサ24が検知した混合チャンバ21内の汚染ガスの温度に基づいて、冷却ガスの流量を調節して、照射チャンバ22に流入する汚染ガスの温度を0℃〜200℃の範囲内に調節する冷却ガス送風手段25が接続されている。また、混合チャンバ21はその内部に、流入してきた汚染ガスを混合するための図示しないスクリューを有している。
【0031】
混合チャンバ21と照射チャンバ22とは、パイプ等を介して接続されており、混合チャンバ21で温度調節された汚染ガスが照射チャンバ22へ流出する構成となっている。
照射チャンバ22は、混合チャンバ21から流入してきた汚染ガスをサイクロン状に流下させるための図示しないスクリューが内部に配置されており、また、汚染ガスが外部に漏れ出すことがないようにシールした状態で電子線照射装置23と接続されている。また、本実施の形態では、この混合チャンバ21と照射チャンバ22との間のパイプには逆止弁29が配設されており、照射チャンバ22から混合チャンバ21への汚染ガスの逆流を防止する。
【0032】
電子線照射装置23は、当該電子線照射装置23が停止した際にこれに連動して真空ポンプ17a、冷却ガス送風手段25及び後記するブロワ32を停止させる装置インターロック(送風手段制御機構)27が設けられている。また、濃度センサ26の検知結果に基づき、照射チャンバ22に流入する汚染ガス流入量に対するダイオキシン類の濃度に応じて電子線照射装置23から照射する電子線の照射線量を0.01kGy〜100kGyの範囲内で自動的に調節する図示しない照射量制御機構を備えている。
【0033】
また、電子線処理手段20の照射チャンバ22において、照射処理によりダイオキシン類が分解された汚染ガス(以下「処理ガス」という場合がある)を排出する、図示しない排出口にはフィルタ28が配設されている。
ここで、混合チャンバ21と照射チャンバ22との接続部は、汚染ガスが外部に漏れ出すことがないように密閉されている。
【0034】
[無害化処理の流れ]
次に、本実施の形態にかかるダイオキシン類無害化処理装置1による、無害化処理の流れを説明する。
まず、破砕装置2により略同一形状となるように破砕された焼却施設の解体工事に伴うダイオキシン類を含有する汚染廃棄物Wを、予熱乾燥手段30に投入し、キルン31により汚染廃棄物Wに予め加熱温度120℃程度で予熱乾燥処理を施す。この際、汚染廃棄物Wの予熱乾燥処理に伴い、発生する水蒸気(汚染ガス)は、ブロワ32を介して電子線処理手段20の混合チャンバ21に送気される。
【0035】
予熱乾燥手段30により、予熱乾燥処理が施された汚染廃棄物Wは、投入口11より、真空加熱手段10に投入される。真空加熱手段10に投入された汚染廃棄物Wは、パージ室12において汚染廃棄物Wを中真空(5Pa程度)まで減圧処理し、真空加熱炉13において真空状態で50℃〜380℃程度まで加熱する。そして、汚染廃棄物Wは通過室14と冷却室15において、2段階で冷却処理を施し、排出口16より真空加熱手段10から排出される。この際、汚染廃棄物Wの各室間の輸送は、図示しないベルトコンベヤにより機械的に行う。
また、各室において発生する、汚染廃棄物Wから分離されたダイオキシン類を含有する汚染ガスは、フィルタ17bと凝縮器17cとを介して微小な固形物を除去しながら、真空ポンプ17aにより混合チャンバ21に送気される。
【0036】
真空加熱手段10及び予熱乾燥手段30から電子線処理手段20に送気された汚染ガスは、混合チャンバ21において、混合されて均質化される。そして、均質化された汚染ガスは、温度センサ24の検知結果に基づいて、その温度が照射チャンバ22において効率的な照射処理を行うことが可能な予め設定された範囲内(0℃〜200℃)に収まるように、冷却ガス送風手段25から送気される冷却ガスとともに照射チャンバ22に送気される。
照射チャンバ22内に流入した汚染ガスは、サイクロン状に旋回しながら、電子線照射装置23から照射される電子線により、ダイオキシン類の分解処理が施される。そして、ダイオキシン類の分解処理が終了した処理ガスは、フィルタ28を介してダイオキシン無害化処理装置1の外部へと送気される。ここで、照射チャンバ22内の汚染ガスのサイクロン状の旋回を、冷却ガス送風手段25から送気される冷却ガスの流入作用により行う構成としても良い。
【0037】
照射チャンバ22内の汚染ガスは、電子線照射装置23から照射された電子線により無害化処理が施される。ここで、電子線照射装置23から照射される電子線の照射線量は、照射量制御機構により調節されながら、照射チャンバ22内に流入してきた汚染ガスの流入量に対するダイオキシン類の濃度に応じて、0.01kGy〜100kGyの範囲内で照射される。
【0038】
[作用効果]
本実施の形態では、真空加熱処理前に予熱乾燥処理を汚染廃棄物Wに施すため、真空加熱処理時の熱効率を向上させることが可能となる。この際、汚染廃棄物Wに含まれる水分が蒸発した水蒸気(汚染ガス)は、ブロワ32により電子線処理手段20に送気されるため、当該水蒸気がダイオキシン類を含有していても、外部に漏れ出すことなく、電子線処理手段20により分解される構成となっている。また、水蒸気は、電子線の照射処理によるダイオキシン類の分解において、酸化力の強い活性種(ラジカル)の生成に寄与するため、汚染ガスに混合することで、ダイオキシン類の分解効率向上に有効利用することができる。
【0039】
予熱乾燥処理が施された汚染廃棄物Wは先ずパージ室12において中真空まで減圧処理されるため、真空加熱炉13における減圧処理効率を向上させることが可能となる。また、真空加熱炉13では、汚染廃棄物Wを高真空状態で加熱処理することにより、固体中に含まれるダイオキシン類を、容易に気相に移動、ガス化して分離することが可能となる。
【0040】
そして、真空加熱処理を終えた高温の処理廃棄物W’を、通過室14及び冷却室15において、真空状態から大気圧にまで戻しながら冷却する際に、真空ポンプ17aにより、低酸素状態で冷却することで、処理廃棄物W’とダイオキシン類との再合成を抑止することが可能となる。
真空送気手段17には、真空ポンプ17aの吸入側に設けられたフィルタ17bと凝縮器17cが微小な固形物を除去するため、真空ポンプ17aが固形物を巻き込むことによる破損の防止が可能となる。
【0041】
ここで、真空加熱手段10内における汚染廃棄物Wの輸送を、密閉された容器内において、ベルトコンベヤ等により機械的に行うため、ダイオキシン類によるばく露や高温に加熱された装置や汚染廃棄物Wによるやけど等の被害を回避し、安全にダイオキシン類の無害化処理作業を行うことが可能となる。
【0042】
真空送気手段17及び予熱乾燥手段30から送気された汚染ガスは、混合チャンバ21において混合されて均質化され、さらに、濃度センサ26によりダイオキシン類の含有濃度を検知して電子線照射装置23の照射線量を制御するため、照射チャンバ22内における電子線照射処理を最小限のエネルギーにより効率的に行うことが可能となる。
【0043】
また、照射チャンバ22内の汚染ガスは、電子線照射処理によりダイオキシン類の脱塩素化が進行し、水、炭酸ガス、塩素等の無害な物質に分解される。ここで、照射チャンバ22内において、汚染ガスをサイクロン状に旋回させながら電子線照射装置23から電子線を照射するため、旋回させずに直流で汚染ガスに照射処理を施す場合に比べて、照射時間が長くなり、照射効率が向上する。
【0044】
また、電子線照射装置23には、装置インターロック27が連動しているため、何らかの原因により電子線照射装置23が停止した際に、真空ポンプ17a、冷却ガス送風手段25及びブロワ32が停止するため、未処理の汚染ガスがダイオキシン類無害化処理装置1の外部に流出することを防止することが可能となる。また、当該装置インターロック27を、真空加熱手段10の図示しないベルトコンベヤ等の輸送装置と連動する構成とすれば、汚染廃棄物Wが未処理のままダイオキシン類無害化処理装置1の外部に搬送されることを防止することが可能となる。
【0045】
また、真空加熱手段10により、汚染廃棄物Wからダイオキシン類を分離した後、電子線処理手段20によりダイオキシン類の分解を行う構成としたことで、真空加熱手段10の加熱温度を、真空加熱手段10単独でダイオキシン類の分解を行う場合に比べて20℃〜350℃程度下げることができ、全体としてエネルギー効率の高い処理が可能となる。
【0046】
以上、本発明について、好適な実施の形態の例を説明したが、本発明は前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、本実施の形態では、冷却室の前に通過室を設けて、2段階にて汚染廃棄物Wを冷却して冷却効率を向上する構成としたが、これに限定されるものではなく、通過室を設けることなく、冷却室のみで冷却する構成として、ダイオキシン無害化処理装置の小型化を図るものとしてもよい。
【0047】
また、混合チャンバにより汚染ガスを均質化した後、照射チャンバにて電子線の照射処理を行う構成としたが、これに限定されるものではなく、混合チャンバを配置することなく、照射チャンバにて汚染ガスの均質化及び電子線の照射処理を行う構成としてもよい。
【0048】
また、温度センサにより汚染ガスの温度を検知して冷却ガスを混合することで、照射チャンバに流入する汚染ガスの温度を調節する構成としたが、例えば、真空加熱手段の加熱温度と、電子線処理装置の照射線量とを、予め調節しておくことで、照射チャンバに流入する汚染ガスの温度を調節することなく、効率的に無害化処理を行う構成としてもよい。
【0049】
また、濃度センサにより汚染ガスのダイオキシン類の濃度を検知して電子線照射装置の照射線量の調節を行う構成としたが、汚染ガスの含有するダイオキシン類の分解を確実に行うことが可能な照射線量に電子線照射装置を調節することで、濃度センサを配設しない、簡易な構成としてもよい。
【0050】
また、予熱乾燥手段を配置せずに、真空加熱炉のみで汚染廃棄物の加熱処理を行うことで、ダイオキシン類無害化処理装置の小型化を図る構成としてもよい。
【0051】
したがって、図2のダイオキシン類無害化処理装置1のように、前記の実施の形態に示されたダイオキシン類無害化処理装置から通過室14、混合チャンバ21、冷却ガス送風手段25、予熱乾燥手段30等を省略し、汚染廃棄物の無害化処理に最小限必要となる基本的な構成としてもよい。
この構成により、ダイオキシン類無害化処理装置1の小型化が可能となり、トレーラなどへの車載が可能となるため、ダイオキシン類無害化処理装置1の移動が可能となる。
また、ダイオキシン類無害化処理装置1を小型化することで、設置に要するスペースが確保しやすくなり、解体工事現場内や現場近傍に設置することも可能となる。当該ダイオキシン類無害化処理装置1を解体工事現場内に設置することで、特別管理廃棄物である汚染廃棄物Wを現場外に持ち出すことなく、内部で無害化処理を行うことが可能となり、中間処理施設への輸送コストの削減、積替え、輸送中の飛散などの事故防止、輸送に伴う管理及び追跡コストの削減が可能となり、全体として大幅なコスト縮減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のダイオキシン類無害化処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明のダイオキシン類無害化処理装置の他の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ダイオキシン無害化処理装置
10 真空加熱手段
12 パージ室
13 真空加熱炉
15 冷却室
17 真空送気手段
20 電子線処理手段
22 照射チャンバ
23 電子線照射装置
24 温度センサ
25 冷却ガス送風手段
26 濃度センサ
27 装置インターロック(送風機制御機構)
29 逆止弁
30 予熱乾燥手段
W 汚染廃棄物(固体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン類を含有する固体を真空状態で加熱することにより前記ダイオキシン類を前記固体から分離する真空加熱手段と、前記真空加熱手段により前記固体から分離された前記ダイオキシン類を分解して無害化する電子線処理手段と、を備えることを特徴とするダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項2】
前記真空加熱手段は、前記固体の流入口から排出口に向かって順に、当該固体を中真空まで減圧処理するパージ室と、前記パージ室において中真空まで減圧処理された前記固体を高真空で加熱処理する真空加熱炉と、前記真空加熱炉において高真空で加熱処理された前記固体を大気圧まで戻しながら冷却する冷却室との3室と、
前記3室の各処理過程において前記固体から分離された前記ダイオキシン類を含有する気体を前記電子線処理手段へ送気する真空送気手段と、を備え、
前記電子線処理手段は、前記真空送気手段により送気された前記気体が内部に流入する照射チャンバと、
前記照射チャンバと接続されており当該照射チャンバ内の前記気体に電子線の照射処理を行う電子線照射装置と、
を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項3】
前記照射チャンバが、当該照射チャンバ内において流入してきた前記気体を旋回させる気体旋回機構を有することを特徴とする、請求項2に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項4】
前記ダイオキシン類を含有する前記固体に予め予熱乾燥処理を施す予熱乾燥手段を備えていることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項5】
前記予熱乾燥手段が、前記ダイオキシン類を含有する前記固体の予熱乾燥処理により発生する気体を前記電子線処理手段に送気する送気手段を備えていることを特徴とする、請求項4に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項6】
前記電子線処理手段が、前記真空加熱手段及び前記予熱乾燥手段から吸引したダイオキシン類を含有する気体を混合する混合チャンバを備えており、前記混合チャンバにより混合された前記気体が照射チャンバへ送気されることを特徴とする、請求項5に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項7】
前記電子線照射装置が、前記照射チャンバ内へ流入する前記気体が含有するダイオキシン類の濃度を検知する濃度センサと、前記濃度センサと連動して前記電子線照射装置の照射電流量の制御を行う照射量制御機構を備えていることを特徴とする、請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載のダイオキシン類無害化処理装置。
【請求項8】
前記電子線処理手段が、前記照射チャンバ内へ流入する前記気体の温度を検知する温度センサと、前記気体の温度に応じて冷却ガスを送風する冷却ガス送風手段とを備えていることを特徴とする、請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載のダイオキシン類無害化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−167500(P2006−167500A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359382(P2004−359382)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(591203152)株式会社豊栄商会 (15)
【Fターム(参考)】