説明

ダイプレクサ・モジュール

【課題】ダイプレクサ内で信号を分岐した場合でも信号の減衰を補償することができるとともに、サージ保護回路も付加され、これらの機能が基板に一体に形成されるとともに、端末に使用される装置の小型化を可能にする
【解決手段】 高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、および高周波出力端子を備え、高周波入力端子と送信入力端子との間にローパスフィルタが接続され、高周波入力端子とチューナ出力・高周波出力を分岐させる分岐器との間にハイパスフィルタが接続されたダイプレクサモジュールにおいて、分岐器と高周波出力端子間にローノイズアンプ回路とサージ保護回路が接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルテレビ端末のセットトップボックスやケーブルモデムなどに使用されるコネクタ付きダイプレクサに係るもので、さらに高機能化されたダイプレクサモジュールの回路構成と構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケーブルテレビの端末として使用されているセットトップボックスには、従来、パッケージとして回路素子を搭載した基板を収容した缶タイプのチューナが使用されていた。最近、セットの小型化とコストダウンを目的としてシリコンチューナが開発され、このシリコンチューナと高機能ダイプレクサを組み合わせた装置が実用化されている。この高機能ダイプレクサとして分岐器やローノイズアンプ(LNA)を搭載することなどが要求されており、従来は付加する機能を別個の基板に搭載してケースに組み込む構造が採用されていた。
【0003】
ダイプレクサには、従来の高周波(RF)入力端子、雷サージ保護回路、アップストリーム用ローパスフィルタ(LPF)ダウンストリーム用ハイパスフィルタ(HPF)などを備えている。高機能化するために、さらに、高周波(RF)出力信号を出力するための分岐器、分岐側信号増幅用のLNA回路、高周波(RF)出力端子を追加し、かつ、これらの機能素子が全て要求特性を満足する状態でシールドケース内に収容されることが要求されている。
【特許文献1】特開2004−186864号公報
【特許文献2】特開2004−248011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ダイプレクサ内で信号を分岐した場合でも信号の減衰を補償することができるとともに、サージ保護回路も付加され、これらの機能が基板に一体に形成されて、シールドケースに収容されるダイプレクサモジュールを提供するものである。また、それによって端末に使用される装置の小型化を可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、分岐器に加えてLNA回路とサージ保護回路を一体化し、またそれらの接続を最適化することによって、上記の課題を解決するものである。すなわち、高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、および高周波出力端子を備え、高周波入力端子と送信入力端子との間にローパスフィルタが接続され、高周波入力端子とチューナ出力・高周波出力を分岐させる分岐器との間にハイパスフィルタが接続されたダイプレクサモジュールにおいて、分岐器と高周波出力端子間にローノイズアンプ回路とサージ保護回路が接続されたことに特徴を有するものである。
【0006】
具体的には、高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、および高周波出力端子を備え、高周波入力端子と送信入力端子との間にローパスフィルタが接続され、高周波入力端子とチューナ出力・高周波出力を分岐させる分岐器との間にハイパスフィルタが接続されたダイプレクサモジュールにおいて、分岐器と高周波出力端子間に、分岐器に接続されたローノイズアンプ回路、ローノイズアンプ回路と高周波出力端子間にサージ保護回路が接続されるとともに、ローノイズアンプ回路の高周波出力端子側に静電保護素子に一端が接続されて他端が接地されたことに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ダイプレクサ内で信号を分岐した場合でも信号の減衰を補償すること下できるとともに、サージ保護回路も付加され、これらの機能が基板に一体に形成されて、シールドケースに収容でき、それによって端末に使用される装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によるダイプレクサモジュールは、高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、高周波入力端子と、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、分岐器、ローノイズアンプ(LNA)回路、サージ保護回路を備える。そして、分岐器の高周波出力端子側に、ローノイズアンプ(LNA)回路、サージ保護回路が接続されろ。サージ保護回路は、静電保護素子とフィルタ回路で構成される。
【実施例】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の基本構成を示すブロック図である。高周波入力端子(RFin)にサージ保護回路が接続され、サージ保護回路はアップストリーム用ローパスフィルタ(LPF)とダウンストリーム用ハイパスフィルタ(HPF)に接続される。ローパスフィルタ(LPF)は送信入力端子(TXin)に接続される。ハイパスフィルタ(HPF)は分岐器に接続され、分岐された一端はチューナ出力端子(Tuner out)に接続される。分岐器の他端はローノイズアンプ回路(LNA)に接続され、そのローノイズアンプ(LNA)の出力はサージ保護回路を経て高周波出力端子(RFout)に接続される。ローノイズアンプ回路(LNA)は電源端子にも接続されて、信号の増幅に必要な電力が供給されている。
【0010】
図2は、本発明によるダイプレクサモジュールの具体的な構成例を示す回路図である。ローパスフィルタとハイパスフィルタはチップコンデンサと空心コイルで構成でき、ローパスフィルタは直列接続したコイルL5〜L8と並列接続したコンデンサL9、C11、C13、L15で構成され、ハイパスフィルタは直列接続されたコンデンサC2、C4,C6、C8、と並列接続されたコイルL1〜L3で構成される。分岐器は2つの貫通孔を備えたメガネ形のコアに巻回したコイルで構成される。
【0011】
ローノイズアンプの回路構成の一例を図3に示す。この例では1個のトランジスタで済ませて、歪などの特性面では不利となるが、コストや回路の小型化の面では有利な回路構成を採用する場合のものである。サージ保護回路としては、高周波入力端子(RFin)側にコンデンサC1とコイルL9で構成されたハイパスフィルタ、高周波出力端子(RFout)
側にコンデンサC22とコイルL10、L12で構成されるハイパスフィルタがそれぞれ用いられている。ローノイズアンプ回路とサージ保護回路間に静電保護素子(SU1)が接続されて他端が接地されている。
【0012】
ダウンストリーム信号の出力端子として高周波出力端子(RFout)が必要となるので、本発明による回路では分岐器とLNA回路を組み込んだもので、この構成においては5〜860MHzといった広い周波数範囲で要求特性を満足する設計が必要となる。そのため、LNAのゲインと周辺回路による減衰と分岐器の分岐比を調整し、LNA部分でのゲインと電気特性とのバランスを最適となるように設計する。
【0013】
LNA回路の歪みに関する電気特性を保証するために、異なる周波数の2つの信号を同時にLNAに入力し、出力側の2次高調波および2次高調波を測定することで規格化することができる。汎用の2つの信号発生器と測定用のスペクトラムアナライザで、LNAの歪み特性を検査することが可能となり、量産が可能になる。
【0014】
従来のダイプレクサでは、シールドケースとフィルタ回路部のGNDをできるだけ強化して広域での減衰特性を改善し、ケース内部に仕切板を設けて空心コイル間の結合を調整することで基本的な伝送特性を実現していた。しかし、このフィルタ特性優先の設計では、雷サージ試験および静電破壊(EDS)試験でLNA回路が破壊されてしまう問題が生じていた。
【0015】
そこで、本発明によるダイプレクサモジュールにおいては、高周波出力端子RFoutからLNA回路までの保護部品の配置を、RFout側から雷サージ保護回路(図2の例ではπ型ハイパスフィルタ)、ESD保護素子の順に配置するとともに、これらの素子や他の素子の配線パターンの配置を工夫することによって、フィルタ特性、LNA回路の電気的特性、サージ、ESD保護規格を満足させることができる。
【0016】
本発明によるダイプレクサモジュールにおいては、分岐器、LNA回路、サージ保護回路、ESD保護素子等の回路素子を同じプリント配線基板上に一体に構成することが望ましい。フィルタ回路を構成する空心コイル等とはシールド板で区切って同じプリント配線基板上にすることができ、それによって従来9.42cm2必要であった占有面積を3.9cm2と大幅に減少させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によるダイプレクサモジュールは、ケーブルテレビのセットトップボックスやケーブルモデムなどの端末機器に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図
【図2】本発明の実施例を示す回路図
【図3】ローノイズアンプ回路の例を示す回路図
【図4】シールドケース内でのプリント配線基板へのハ一例を示す平面図
【符号の説明】
【0019】
RFin:高周波入力端子
RFout:高周波出力端子
TXin:送信入力端子
LNA:ローノイズアンプ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、および高周波出力端子を備え、高周波入力端子と送信入力端子との間にローパスフィルタが接続され、高周波入力端子とチューナ出力・高周波出力を分岐させる分岐器との間にハイパスフィルタが接続されたダイプレクサモジュールにおいて、
分岐器と高周波出力端子間にローノイズアンプ回路とサージ保護回路が接続されたことを特徴とするダイプレクサモジュール。
【請求項2】
高周波入力端子、送信入力端子、チューナ出力端子、および高周波出力端子を備え、高周波入力端子と送信入力端子との間にローパスフィルタが接続され、高周波入力端子とチューナ出力・高周波出力を分岐させる分岐器との間にハイパスフィルタが接続されたダイプレクサモジュールにおいて、
分岐器と高周波出力端子間に、分岐器に接続されたローノイズアンプ回路、ローノイズアンプ回路と高周波出力端子間にサージ保護回路が接続されるとともに、ローノイズアンプ回路の高周波出力端子側に静電保護素子に一端が接続されて他端が接地されたことを特徴とするダイプレクサモジュール。
【請求項3】
前記ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、分岐器、ローノイズアンンプ回路およびサージ保護回路が同一のプリント配線基板に搭載された請求項1または請求項2記載のダイプレクサモジュール。
【請求項4】
前記ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、分岐器、ローノイズアンンプ回路およびサージ保護回路が同一のプリント配線基板に搭載され、分岐器、ローノイズアンンプ回路およびサージ保護回路がローパスフィルタ、ハイパスフィルタがシールド壁で隔てられた請求項1または請求項2記載のダイプレクサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−136122(P2010−136122A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310386(P2008−310386)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】