説明

ダイヤフラム装置

【課題】従来のダイヤフラム装置では移動軸の傾斜による測定誤差を回避する為に、移動軸を摺動自在に保持する有穴部材を設けているが、有穴部材を配置する余裕がない場合には対応できず、また有穴部材を配置できた場合でも大型化するという問題があった。加えて用途先の構造により移動軸が必然的に傾斜する場合には対応できないという問題があった。
【解決手段】検出軸201の軸方向の移動変位を検出するリフトセンサー200とダイヤフラム3の変形に応じ移動可能な移動軸5とを有するダイヤフラム装置において、移動軸5の一方側の先端は球面状で、リフトセンサー200の検出軸の一端を押圧する。これにより移動軸5が傾斜してもリフトセンサー200による移動軸5の移動距離検出の測定誤差が生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム装置に関し、特にEGRバルブ等の制御に使用されるリニアセンサーを併用するダイヤフラム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンでは燃費改善策のひとつとして排気ガス再循環機構(Exhaust Gas Recirculation:以下EGRと記載)が使用される事が多い。
EGRでは排気ガスの一部を吸気側に再循環させるが、燃費改善効果を得るためにはエンジンの動作状況に応じて排気ガスの再循環量を制御する必要がある。このため排気ガスの再循環経路にバルブを設け、ダイヤフラム装置でバルブの開閉量を調整し、排気ガスの再循環量を制御するという機構となっている事が多い。
【0003】
ダイヤフラム装置は一方が開放した筐体の開放部にダイヤフラムを取り付けダイヤフラムにて密閉状態とし、さらに筐体に通気口を設け、通気口から空気等を注入、排出する事によりダイヤフラムを変形させ、このダイヤフラムの変形による移動によりダイヤフラムに取り付けられた移動軸を移動させる装置である。
【0004】
ダイヤフラムの移動量は空気等の注入量、排出量により決定されるが、使用状況により実際の移動量にはばらつきが生じる。このため精密な制御が必要となる場合にはリフトセンサーにて移動軸の移動量を測定しながら排気ガスの再循環量を制御する方式が取られる。
【0005】
移動軸の移動量の測定は、移動軸の一方端とリフトセンサーの検出軸の端面を当接させ、移動軸の位置をリフトセンサーで検出する。しかし、ダイヤフラムは通常ゴム等の弾性材で作られているため変形時の形状が安定せず、ダイヤフラムにより移動させられる移動軸が傾斜する場合がある。またダイヤフラム装置が組み込まれる用途先の構造によっては移動軸が必然的に傾斜する場合がある。これらの場合に移動軸が傾斜すると移動軸の一方端とリフトセンサーの検出軸の端面が傾斜して当接するため傾斜による隙間が生じ測定誤差が生じる。
【0006】
従来のダイヤフラム装置では、例えば特許文献1に開示される様に、移動軸の傾斜による測定誤差を回避する為に、移動軸を摺動自在に保持する有穴部材をダイヤフラム装置の外部に設け、移動軸の傾斜を回避することによりリフトセンサーの精度を維持する構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−310607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の構造ではダイヤフラム装置の外部に移動軸を摺動自在に保持する有穴部材を配置する余裕がない場合には対応できず、またダイヤフラム装置の外部に移動軸を摺動自在に保持する有穴部材を配置出来た場合でも大型化するという問題があった。
加えて用途先の構造により移動軸が必然的に傾斜する場合には対応できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は簡略化された構造にて移動軸が傾斜してもダイヤフラム変形量の測定誤差が生じないダイヤフラム装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、検出軸の軸方向の移動変位を検出するリフトセンサーと、外部の圧力変動に応じ変形するダイヤフラムと、ダイヤフラムの変形に応じダイヤフラムの移動する方向に移動可能な移動軸とを有するダイヤフラム装置において、移動軸の一方側は、ダイヤフラムの略中央部を貫通し中央部に結合され、さらに、移動軸の一方側の先端は球面状であるとともに、検出軸の一端を押圧することに特徴を有する。
【0011】
これにより、本発明は移動軸が傾斜しても、移動軸先端が球面であるため移動軸先端面の傾斜による誤差が小さくなるので、移動軸が傾斜してもリフトセンサーによる移動軸の移動距離検出の測定誤差が生じない。
【0012】
また本発明では、移動軸を移動する方向に摺動可能に保持する軸受け部を有し、ダイヤフラムが軸受け部に最も近い位置まで変形したときの軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの距離を最小距離L1とし、ダイヤフラムが軸受け部から最も遠い位置まで変形したときの軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの距離を最大距離L2としたとき、移動軸の一方側の先端の球面の半径RはL1以上で、かつ、L2以下であることに特徴を有する。
【0013】
移動軸の傾斜によるリフトセンサーの検出誤差を吸収するには、軸受け中心から移動軸の一方側の先端までの距離を移動軸の一方側の先端の球面の半径とすればよいが、ダイヤフラムの変形位置により軸受け中心から移動軸の一方側の先端までの距離は変化する。
【0014】
しかし、例えば、移動軸の移動範囲の全域にわたり移動軸の傾斜によるリフトセンサーの検出誤差を吸収するには、移動軸の一方側の先端の球面の半径Rを軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの距離の最小距離L1と最大距離L2の中間値とすれば、移動軸の移動範囲の全域にわたり移動軸の傾斜によるリフトセンサーの検出誤差を最小とできる。
【0015】
また、ダイヤフラム装置が接続される用途先の制御機構が移動軸の移動量が少ない場合に特に精度を必要とする場合には、移動軸の一方側の先端の球面の半径Rを軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの距離の最小距離L1とすれば検出誤差を最小とできる。逆に、用途先の制御機構が移動軸の移動量が多い場合に特に精度を必要とする場合には、移動軸の一方側の先端の球面の半径Rを軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの距離の最大距離L2とすれば検出誤差を最小とできる。
【0016】
本発明では、ダイヤフラムが変形する範囲での軸受け部の中央部から移動軸の一方側の先端までの最小距離L1と最大距離L2の範囲に、移動軸の一方側の先端の球面の半径を設定することとしたので、用途先の特性に応じて精度を必要とする移動範囲で移動軸の傾斜によるリフトセンサーの移動軸の移動距離検出誤差を最小とできる。
【0017】
また、本発明では移動軸の一方側の先端は、移動軸の一方側の先端に押圧される検出軸の一端より硬いことに特徴を有する。
【0018】
検出軸の一端側は平面で移動軸の一方側の先端は球面であるため、長期の使用において検出軸の一端側は、より硬い移動軸の一方側の先端形状に倣い球面状に摩耗する。
【0019】
これにより、本発明では長期の使用において摩耗した量だけの誤差は出るが、球面と球面状の窪み部の当接となるため、移動軸の傾斜による誤差は生じず長期使用時の安定性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
以上より本発明では、移動軸が傾斜しても、移動軸先端が球面であるため移動軸先端面の傾斜による誤差が小さくなるので、移動軸が傾斜してもリフトセンサーによる移動軸の移動距離検出の測定誤差が生じないダイヤフラム装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の外観図である。
【図2】上記実施形態のダイヤフラム装置の構成を示す分解斜視図である。
【図3】上記実施形態のダイヤフラム装置の構造を示す図1のA−A断面図である。
【図4】上記実施形態のダイヤフラム装置の変形状態を示す断面図である。
【図5】従来構造のダイヤフラム装置において移動軸が傾斜した場合のリフトセンサーの検出誤差発生状態を説明する断面図であり、(a)はダイヤフラム装置全体の断面図、(b)は移動軸と検出軸の当接部分の拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置において移動軸が傾斜した場合のリフトセンサーの検出誤差発生回避状態を説明する断面図であり、(a)はダイヤフラム装置全体の断面図、(b)は移動軸と検出軸の当接部分の拡大断面図である。
【図7】上記実施形態のダイヤフラム装置の長時間使用後の移動軸と検出軸の当接部の摩耗状態を示す模式断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の使用状態例を示す外観図である。
【図9】本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の他の使用状態例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図1から図4を参照して説明する。
なお、本実施の形態に係るダイヤフラム装置は、EGRのバルブ制御に用いられる減圧型のダイヤフラム装置であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、ターボチャージャーのバルブ制御等の各種制御機構に使用される任意のダイヤフラム装置に適用することが可能である。
<実施の形態>
【0023】
本発明の実施の形態に係るダイヤフラム装置100は、図1に示す様に、本体部の上端側にリフトセンサー200が取り付けられ、下端側の中央部には移動軸5が突出しており、移動軸5の周囲には複数の取り付けボルト10が突出している。
【0024】
ダイヤフラム装置100は取り付けボルト10により用途先に固定され、移動軸5は図示しないバルブ等の操作対象部品に連結される。
【0025】
またダイヤフラム装置100の上端側よりの中間部にフィッティング9が設けられている。フィッティング9は図示しない減圧源等の空気式制御装置にチューブ等で接続される。
【0026】
以下、図2および図3を参照に各構成部品の説明を記載する。
【0027】
図2はダイヤフラム装置100の構成を示す分解斜視図である。また、図3はダイヤフラム装置100の内部構造を示す、図1のA−A断面図である。
【0028】
下ケーシング2は成形材または金属材等で円筒状に形成され、一方にフランジ部2aを有し他方は底部となり、底部には取り付けボルト10が埋設されると共に、底部の中央には有底の円筒部が更に突出し、突出した円筒部の底部には移動軸5が通過する穴部を有する。また外周壁には下ケーシング2の内部を大気圧に保持するための貫通穴を有する。
【0029】
上ケーシング1は成形材または金属材等で円筒状に形成され、一方にはリフトセンサー200を取り付ける底部を有し、他方はフランジ部1aとなり、外周壁にはフィッティング9取り付け用の穴部を有する。
【0030】
ダイヤフラム3は弾性を有するゴム等で円筒状に形成され、円筒状の本体部の一方にフランジ部3aを有し他方は底部となり底部の中央には移動軸5が貫通する穴部を有する。フランジ部3aと本体部は断面が円弧形状の稜で接続されている。
【0031】
ピストン4は金属材等で円筒状に形成され、一方に底部を有し、底部の中央には移動軸5が貫通する穴部を有する。
【0032】
補強板11は金属材等で円盤状に形成され、中央には移動軸5が貫通する穴部を有する。
【0033】
図3に示すように、ピストン4の底部とダイヤフラム3の底部および補強板11は積層され、移動軸5がピストン4の底部の穴部とダイヤフラム3の底部の穴部および補強板11の穴部を貫通し固定される事により、ダイヤフラム3の底部が金属製のピストン4の底部と金属製の補強板11にはさまれるので、ダイヤフラム3が変形してもダイヤフラム3の底部は平面を保つことが出来る。
【0034】
移動軸5は金属材等で略円柱状に形成され、一方側に外形が小さい円柱状の突起部を有する。他方側は端面が平面の円柱形状であるが、用途先との結合の都合により種々の形状に変更可能である。
【0035】
軸受け7は潤滑性のある金属または成形材等で円筒状に形成され、内径部で移動軸5を摺動可能に保持する。外径部の中間部には環状の溝部が設けられ、溝部にはOリング8が組み込まれる。
【0036】
フィッティング9は金属材等で円筒状に形成され、一方の端部付近にフランジ部を有し、他方の端部付近は緩やかな膨らみを有し、エア配管のチューブが確実に装着できる。
【0037】
圧縮バネ6は両端を平面に研磨したバネで、一方端が上ケーシング1の内底部に当接し、他方端がピストン4の内底部に当接する。
【0038】
リフトセンサー200は略円柱形状の本体の一方にフランジ部を有し、その中央に円柱形状の検出軸201を有する。検出軸201は円柱形状の中心軸方向に摺動可能で、リフトセンサー200の内部で突出方向に付勢され検出軸201の先端が移動軸5の一方側の先端と当接する事により移動軸5の位置を検出する。
【0039】
以下、図3を参考にダイヤフラム装置100の構造を説明する。
【0040】
ダイヤフラム装置100の本体部は、下ケーシング2と上ケーシング1で構成され、下ケーシング2と上ケーシング1の間にはダイヤフラム3が取り付けられる。
【0041】
ダイヤフラム3の内側にはピストン4が配され、ダイヤフラム3の底部外側には補強板11が配され、積層されたピストン4の底部とダイヤフラム3および補強板11のそれぞれの穴部を貫通して移動軸5が挿入され、のち移動軸5の先端をつぶすと移動軸5は積層されたピストン4の底部とダイヤフラム3および補強板11に固定される。
【0042】
ピストン4の内側には圧縮バネ6が配され、ピストン4を下方に付勢する。
【0043】
ダイヤフラム3のフランジ部3aが下ケーシング2のフランジ部2aと上ケーシング1のフランジ部1aの間に挟み込まれ、上ケーシング1の上方側にリフトセンサー200が取り付けられることにより、リフトセンサー200とダイヤフラム3と上ケーシング1により減圧室101が構成される。
【0044】
上ケーシング1にはフィッティング9が埋設されており、フィッティング9の貫通穴が減圧室101と連続するので、図示しない減圧源をホース等でフィッティング9に接続することにより減圧室101の圧力が外部から制御可能となり、減圧室101を減圧することによりダイヤフラム3を変形させ、移動軸5を移動させることができる。
【0045】
減圧室101の気圧が大気圧の時にはピストン4は圧縮バネ6の付勢により最下方に移動させられ、積層されたピストン4の底部とダイヤフラム3および補強板11に固定された移動軸5は下ケーシング2から最も大きく突出する。
【0046】
フィッティング9が減圧源に接続され、減圧源により減圧室101の空気が吸引され減圧室101の内部が減圧されると、ダイヤフラム3の底部にかかる大気圧により、ダイヤフラム3のフランジ部3aと本体部を接続する、断面が円弧形状の稜の高さ方向の位置が、円弧形状が転がる様に上昇しながらダイヤフラム3の底部が圧縮バネ6の付勢に抗して上昇し、これにより積層されたピストン4の底部とダイヤフラム3および補強板11と、ピストン4の底部とダイヤフラム3および補強板11に固定された移動軸5も上昇し、下ケーシング2からの移動軸5の突出量は減少する。
【0047】
減圧室101の内部の圧力が最も減少すると、図4に示す様に、ピストン4の上端が上ケーシング1の内定部に当接し、移動軸5の下ケーシング2からの突出量は最小となる。
【0048】
下ケーシング2の底部の中央に突出した有底円筒部には、軸受け7がOリング8を介して保持され、移動軸5が軸受け7の内径部に摺動自在に保持される。軸受け7はOリング8を介して保持されているので、移動軸5が傾斜すると軸受け7は移動軸5と共に傾斜し、軸受け7の内径部と移動軸5は同じ傾きとなり安定した接触状態が維持される。
【0049】
次に、移動軸5が傾斜した場合に生じるリフトセンサー200の検出誤差に関して説明する。
【0050】
図5(a)は移動軸5が傾斜した場合の従来構造のダイヤフラム装置100の状態を示す断面図で、図5(b)は移動軸5とリフトセンサー200の検出軸201の係合部の拡大図である。
【0051】
従来構造のダイヤフラム装置では移動軸5の一方側の先端は平面につぶされている。このため移動軸5が傾斜角θだけ傾斜していると、検出軸201の先端の平面と移動軸5の先端の平面は傾斜角θだけ傾斜して1点で当接し、検出軸201および移動軸5の中心線を跨いだ当接点の反対側では隙間dが発生する。検出軸201および移動軸5の中心線位置での隙間はd/2であるので、移動軸5の一方側の先端は平面につぶされている従来構造のダイヤフラム装置では移動軸5が傾斜角θだけ傾斜するとリフトセンサー200にはd/2の測定誤差が発生する。
【0052】
図6(a)は移動軸5が傾斜した場合の本発明の実施の形態に係るダイヤフラム装置100の状態を示す断面図で、図6(b)は移動軸5とリフトセンサー200の検出軸201の係合部の拡大図である。
【0053】
本発明の実施の形態に係るダイヤフラム装置100では移動軸5の一方側の先端は、ダイヤフラム3の底部外側からわずかに離れた位置に保持されている軸受け7の中心を半径とする球面につぶされている。このため移動軸5が傾斜角θだけ傾斜しても、リフトセンサー200の検出軸201の接触位置は変化しない。また、移動軸5の先端は、移動軸5の先端から軸受け7の中心までの距離を半径Rとする球面であるため、移動軸5の接触位置に関わらず軸受け7の中心から移動軸5の接触位置までの距離は変化しない。このため、移動軸5が傾斜角θだけ傾斜しても、リフトセンサー200には測定誤差は発生しない。
【0054】
しかし、移動軸5の一方側の先端と軸受け7の中心の距離は、ダイヤフラム3の変形量に応じて変化する。このため、ダイヤフラム装置100の動作範囲の全域にわたり移動軸5の一方側の先端を軸受け7の中心を半径Rとする球面とすることはできず、ダイヤフラム装置100の動作範囲のどこか1カ所で移動軸5の一方側の先端を軸受け7の中心を半径Rとする球面とすると、他の位置では誤差が発生する。
【0055】
このような場合に於いては移動軸5の一方側の先端の形状は、ダイヤフラム装置100の動作範囲の中間位置における軸受け7の中心から移動軸5の一方側の先端までの距離を半径とする球面とすることによりダイヤフラム装置100の動作範囲の全域にわたりリフトセンサー200の検出誤差を最小とすることができる。
【0056】
また、ダイヤフラム装置100の用途が特定でき、最も精度が必要とされる位置が特定できる場合には、移動軸5の一方側の先端の形状を、特定された位置での軸受け7の中心から移動軸5の一方側の先端までの距離を半径Rとする球面とすることにより最も精度が必要とされる位置でのリフトセンサー200の検出誤差を最小とすることができる。
【0057】
すなわち、移動軸5が最も突出した位置で高い精度が必要な場合には、移動軸5の一方側の先端の形状を、図3に示す最小距離L1を半径Rとする球面とすることにより移動軸5が最も突出した位置でリフトセンサー200の検出誤差を最小とすることができる。
同様に移動軸5が最も少なく突出した位置で高い精度が必要な場合には、移動軸5の一方側の先端の形状を、図4に示す最大距離L2を半径Rとする球面とすることにより移動軸5が最も少なく突出した位置でリフトセンサー200の検出誤差を最小とすることができる。
【0058】
以上により、移動軸5の一方側の先端の球面の半径Rを、最小距離L1すなわちダイヤフラム3が軸受け7に最も近い位置まで変形したときの軸受け7の中央部から移動軸5の一方側の先端までの距離から、最大距離L2すなわちダイヤフラム3が軸受け7に最も遠い位置まで変形したときの軸受け7の中央部から移動軸5の一方側の先端までの距離の間で、用途先の特性に合わせて適切に選択することにより、最も精度が必要とされる移動軸5の移動位置でリフトセンサー200の検出誤差を最小とすることができる。
【0059】
次に長期使用時の移動軸5とリフトセンサー200の検出軸201の当接部の摩耗状態を説明する。
【0060】
図7は移動軸5と検出軸201の当接部の摩耗状態を説明する模式図であるが、本発明の実施の形態では検出軸201より移動軸5の先端のほうが硬い構成としている。このため本発明の実施の形態にかかるダイヤフラム装置を長期にわたり使用した場合、球面につぶされた移動軸5の先端は摩耗せず、検出軸201の先端が摩耗する。このとき検出軸201の先端は移動軸5の先端形状に倣い略球面状に摩耗するが、検出軸201の先端の略球面状の摩耗形状の半径Rwは移動軸5の先端の球面の半径Rより小さくなることはなく、必ずRw>Rとなる。
このため、図7に示す様に、移動軸5の先端の球面は、摩耗により略球面状に窪んだ検出軸201の摩耗部の中央部に当接し、移動軸5が傾斜しても移動軸5の先端の球面と略球面状の検出軸201の摩耗部の当接点は変化しない。このため摩耗が進行しても、摩耗によるリフトセンサー200の検出誤差は発生するが、移動軸5の傾斜によるリフトセンサー200の検出誤差は発生しない。
【0061】
以上により、移動軸5の先端形状が平面である従来構造では移動軸5が傾斜した場合にはリフトセンサー200の測定誤差が発生していたが、移動軸5の先端形状を球面とした本発明の実施の形態では、移動軸5が傾斜した場合でもリフトセンサー200の測定誤差は発生しない。また、移動軸5の先端を検出軸201の先端より硬くした本発明の実施の形態では、長期使用時に摩耗が発生しても、移動軸5の傾斜によるリフトセンサー200の検出誤差を回避できる。
【0062】
以上、本発明の実施の形態に係るダイヤフラム装置100において移動軸5が傾斜した場合のリフトセンサー200の検出誤差に関して説明したが、実施の形態で示した移動軸は、複数に分割して使用しても同等の効果を得ることが可能である。
【0063】
またダイヤフラムが減圧により変形する減圧型とし、ダイヤフラムはフランジ部と本体部を接続する断面が円弧形状の稜の高さ方向の位置が、円弧形状が転がる様に変形する転動タイプとしたが、ダイヤフラムが正圧により変形する正圧型でも、ダイヤフラムが平面的に変形する平面タイプでも同様の効果が得られる。
【0064】
<使用状態例>
次に、図8および図9に示す本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の使用状態例を参考に、ダイヤフラム装置100の用途先の構造による移動軸5の傾斜の発生に関し説明する。
【0065】
図8は移動軸5が非直線形状の連結軸91にて図示しない操作対象部品に連結されている場合で、例えば部品配置の都合でダイヤフラム装置100を操作対象部品の直上に配置できない様な場合には、移動軸5の他端側に非直線形状の、例えば図8の示すようにZ型に屈曲させた連結軸91を接続し、連結軸91の先端を図示しない操作対象物と連結する。
【0066】
このような連結状態で移動軸5が図8の動作力f1の方向に押し下げられると、移動軸5に連結されている連結軸91はダイヤフラム装置100の中心線CLから離れた場所で操作対象部品を押し下げるため、連結軸91の先端は側方力f2を受け、移動軸5は傾斜する。
【0067】
移動軸5が非直線形状の連結軸91にて操作対象部品に連結されている構造の場合、移動軸5に傾斜が生じることは不可避である。
【0068】
このような場合でも、移動軸5が傾斜してもリフトセンサー200が正しく移動軸5の移動量を検出できる本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置を使用することにより測定誤差を排除できる。
【0069】
また、図9は移動軸5の先端が回転腕94を有するリンク機構に接続されている状態を示す本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の他の使用状態例である。このような構造は、例えばダイヤフラム装置100の移動軸5の移動方向D1(図9では上下方向)を方向が異なる作用方向D2(図9では左右方向)に変換したい場合や移動軸5のストロークを拡大または縮小したい場合に使用される。
【0070】
本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置の他の使用状態例では、移動軸5の先端にリンク軸93を有する締結部品を取り付け、回転軸92を中心に回転する回転腕94の穴部にリンク軸93を回動可能に保持する。
【0071】
移動軸5が移動方向D1に移動すると、回転腕94は回転軸92を中心として回転し回転腕94の駆動うで部95も回転し、駆動うで部95に連結された図示しない操作対象部品が作用方向D2移動させられる。このときリンク軸93は回転軸92を中心として回転するため、リンク軸93はダイヤフラム装置100の中心線CL上からずれ、これにより移動軸5は傾斜する。
【0072】
このような構造の場合、移動軸5が傾斜できないとリンク機構が破損するため、移動軸5が傾斜可能であることが必須となり、移動軸5が傾斜してもリフトセンサー200が正しく移動軸5の移動量を検出できることが求められる。
【0073】
このような、移動軸5の先端が回転腕94を有するリンク機構に接続されている構造の場合にも、移動軸5が傾斜してもリフトセンサー200が正しく移動軸5の移動量を検出できる本発明の実施形態に係るダイヤフラム装置を使用することにより測定誤差を排除できる。
【符号の説明】
【0074】
1 上ケーシング
1a フランジ部
2 下ケーシング
2a フランジ部
3 ダイヤフラム
3a フランジ部
4 ピストン
5 移動軸
6 圧縮バネ
7 軸受け
8 Oリング
9 フィッティング
10 取り付けボルト
11 補強板
91 連結軸
92 回転軸
93 リンク軸
94 回転腕
95 駆動うで部
100 ダイヤフラム装置
101 減圧室
200 リフトセンサー
201 検出軸
CL 中心線(基準中心線)
d 隙間
D1 移動方向
D2 作用方向
f1 動作力
f2 側方力
L1 最小距離
L2 最大距離
R 球面の半径
Rw 摩耗形状の半径
θ 傾斜角


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能な検出軸を有し、該検出軸の移動変位を検出するリフトセンサーと、
外部の圧力変動に応じ変形するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの前記変形に応じ前記ダイヤフラムの移動する方向に移動可能な移動軸と、
を有するダイヤフラム装置において、
前記移動軸の一方側は、前記ダイヤフラムの略中央部を貫通し該中央部に結合され、さらに、前記移動軸の一方側の先端は球面状であるとともに、前記検出軸の一端を押圧することを特徴とするダイヤフラム装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラム装置は、前記移動軸を前記移動する方向に摺動可能に保持する軸受け部を有し、
前記ダイヤフラムが前記軸受け部に最も近い位置まで変形したときの前記軸受け部の中央部から前記移動軸の一方側の先端までの距離を最小距離L1とし、
前記ダイヤフラムが前記軸受け部から最も遠い位置まで変形したときの前記軸受け部の中央部から前記移動軸の一方側の先端までの距離を最大距離L2としたとき、
前記移動軸の一方側の先端の球面の半径RはL1以上で、かつ、L2以下であることを特徴とする、請求項1に記載のダイヤフラム装置。
【請求項3】
前記移動軸の一方側の先端は、前記移動軸の一方側の先端に押圧される前記検出軸の一端より硬いことを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤフラム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−102782(P2012−102782A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250507(P2010−250507)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】