説明

ダイヤル機構

【課題】 部品点数を削減して組立作業を容易化することが可能なダイヤル機構を提供すること。
【解決手段】 回転可能に取り付けられたダイヤルと、上記ダイヤルに設けられ係合用凹部と係合用凸部が所定のピッチで交互に形成された係合部と、上記ダイヤルに対して離間・配置され基部を固定された状態で弾性変形可能に延長された板ばね部材と該板ばね部材の先端に設けられ上記係合部の任意の係合用凹部又は係合用凸部に係合して上記ダイヤルの回転位置を保持する位置保持部とから構成された板ばね機構と、を具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の空調装置におけるダイヤルスイッチとして使用されているダイヤル機構に係り、特に、少ない部品点数から構成され比較的簡単な構成で所望のクリック感を出すことができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種車両の空調装置においてはダイヤル機構が使用されている。その一例が温度を調整するためのダイヤル機構である。その種のダイヤル機構の裏側の構造を図4に示す。まず、ダイヤル操作部材101があり、このダイヤル操作部材101の外周には係合部103が設けられている。この係合部103は係合用凹部105と係合用凸部107を交互に且つ所定のピッチで形成した構成になっている。
【0003】
一方、ダイヤル操作部材101の外周側にはばね機構109が設置されている。上記ばね機構109は、ケース111と、該ケース111内に出没可能に収容・配置された係合ピン113と、上記ケース111内に内装され上記係合ピン113を常時外部に付勢するコイルスプリング115とから構成されている。
【0004】
そして、上記ダイヤル操作部材101を矢印aで示す適宜の方向に回転させると、係合ピン113はコイルスプリング115のスプリング力に抗して係合用凸部107によってケース111内に押し込められる。又、係合ピン113が上記係合用凸部107を過ぎるとコイルスプリング115のスプリング力によって押し出される。そして、ダイヤル操作部材101を適宜の位置まで回転させることにより、上記係合ピン113が任意の係合用凹部105に係合する。それによって、その位置が保持される。又、上記一連の動作時には上記ばね機構109によって所望のクリック感が提供されることになる。
【0005】
尚、同種のダイヤル機構の構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。又、車両の空調装置の構成を開示するものとして、例えば、特許文献2がある。
【特許文献1】特開2000−156129号公報
【特許文献2】特開2000−163148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、ばね機構の構成において部品点数が多いために組立作業が面倒であるという問題があった。すなわち、ケース111、係合ピン113、コイルスプリング115の少なくとも3個の部品を必要とし、又、それらを組み立てる必要があり、煩雑な作業を余儀なくされてしまうものである。
又、部品点数が多いことに起因して部品管理も面倒であった。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、部品点数を削減して組立作業を容易化することが可能なダイヤル機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1によるダイヤル機構は、回転可能に取り付けられたダイヤルと、上記ダイヤルに設けられ係合用凹部と係合用凸部が所定のピッチで交互に形成された係合部と、上記ダイヤルに対して離間・配置され基部を固定された状態で弾性変形可能に延長された板ばね部材と該板ばね部材の先端に設けられ上記係合部の任意の係合用凹部又は係合用凸部に係合して上記ダイヤルの回転位置を保持する位置保持部とから構成された板ばね機構と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2によるダイヤル機構は、請求項1記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部は上記係合部の任意の係合用凹部に係合する係合用凸部を備えた構成になっていることを特徴とするものである。
又、請求項3によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部の上記係合用凸部は上記係合部の係合用凹部の大きさに対して大きく構成されていて、上記位置保持部の係合用凸部が上記係合部の係合用凹部に係合したときその先端が係合用凹部内に深く入り込まないように構成し、それによって、位置保持部のストロークひいては板ばね部材の弾性変形量を小さくするようしたことを特徴とするものである。
又、請求項4によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部は中空形状に形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項5によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記板ばね機構は樹脂製であることを特徴とするものである。
又、請求項6によるダイヤル機構は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のダイヤル機構において、車両の空調装置のダイヤルスイッチとして構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本願発明の請求項1によるダイヤル機構によると、回転可能に取り付けられたダイヤルと、上記ダイヤルに設けられ係合用凹部と係合用凸部が所定のピッチで交互に形成された係合部と、上記ダイヤルに対して離間・配置され基部を固定された状態で弾性変形可能に延長された板ばね部材と該板ばね部材の先端に設けられ上記係合部の任意の係合用凹部又は係合用凸部に係合して上記ダイヤルの回転位置を保持する位置保持部とから構成された板ばね機構と、を具備した構成になっているので、まず、部品点数を減少させて構成の簡略化を図ることができる。すなわち、従来の構成ではケースとコイルスプリングと係合ピンを必要としていたのに対して、本実施の形態の場合には一体化された板ばね機構のみとなっているからである。又、部品点数が減少したことにより部品管理も容易化されるものである。又、組立作業も簡単なものとなる。
又、請求項2によるダイヤル機構は、請求項1記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部は上記係合部の任意の係合用凹部に係合する係合用凸部として構成されているので、位置保持部の形状が単純化されることになる。
又、請求項3によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部の上記係合用凸部は上記係合部の係合用凹部の大きさに対して大きく構成されていて、上記位置保持部の係合用凸部が上記係合部の係合用凹部に係合したときその先端が係合用凹部内に深く入り込まないように構成し、それによって、位置保持部のストロークひいては板ばね部材の弾性変形量を小さくするようした構成になっているので、板ばね部材の繰り返しの弾性変形に起因した疲労を軽減させることができる。
又、請求項4によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記位置保持部は中空形状に形成されているので、軽量であるとともに熱変形等の懸念も軽減されるものである。
又、請求項5によるダイヤル機構は、請求項2記載のダイヤル機構において、 上記板ばね機構は樹脂製であるので、それによっても、軽量化と熱に対する懸念を軽減させることができる。
又、請求項6によるダイヤル機構は、請求項1〜請求項5の何れかに記載のダイヤル機構において、車両の空調装置用のダイヤルスイッチとして構成されており、車両の空調装置用のダイヤルスイッチとしての構成の簡略化、組立作業の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の一実施の形態を説明する。この実施の形態は本発明を車両の空調装置の温度調節用ダイヤルスイッチに適用した例を示すものである。
図1は空調スイッチの操作パネルの構成を示す正面図である。まず、エアコンON/OFFスイッチ1があり、このエアコンON/OFFスイッチ1によってエアコンをON/OFFするものである。又、上記エアコンON/OFFスイッチ1の図中右側には液晶表示部3があり、この液晶表示部3を挟んで反対側にはファン調節用スイッチ5がある。
【0011】
上記液晶表示部3の図中下方には温度調節用ダイヤルスイッチ7が設置されていて、この温度調節用ダイヤスイッチル7を左右適宜の方向に適当量回転させることにより温度の調節を行うものである。上記温度調節用ダイヤルスイッチ7の内側にはオート/マニュアルエアコン切替スイッチ9とON/OFFスイッチ11が夫々設置されている。
【0012】
上記温度調節用ダイヤルスイッチ7の図中左側にはモード切替スイッチ13、デフスイッチ15、リヤデフスイッチ17が夫々設置されている。又、上記温度調節用ダイヤルスイッチ7の図中右側には内外気切替スイッチ19、外気温度表示スイッチ21が夫々設置されている。
【0013】
図1に示す操作パネルを裏側からみると図2に示すような構成になっている。樹脂製の筐体23があり、この筐体23の内側に既に説明した各種スイッチが内装されているとともにその表面が筐体23の表面側の開口から露出・配置されているものである。
【0014】
上記各種スイッチの内温度調節用ダイヤルスイッチ7の構成について詳細に説明する。まず、図2及び図3に示すように、温度調節用ダイヤルスイッチ7の外周には係合部31が設けられている。この係合部31は係合用凹部33と係合用凸部35を交互に且つ所定のピッチで形成した構成になっている。
【0015】
一方、上記温度調節用ダイヤルスイッチ7の外周側には板ばね機構41が設置されている。上記板ばね機構41は、板ばね部材43と、この板ばね部材43の先端に設けられた位置保持部45とから構成されている。上記板ばね部材43の基部は支持部47を介して固定されている。すなわち、板ばね部材43の基部には中空状の短柱部49が設けられていて、この短柱部49が上記支持部47に係合した状態で固定されているものである。
【0016】
上記位置保持部45であるが、中空形状に形成されているとともに先端部が円弧状に形成されていて、それが係合用凸部51となっている。この係合用凸部51が温度調節用ダイヤルスイッチ7の係合部31の任意の係合用凹部33に係合し、それによって、温度調節用ダイヤルスイッチ7の任意の回転位置を保持するものである。すなわち、上記温度調節用ダイヤルスイッチ7を適宜の方向に回転させると、位置保持部45は板ばね部材43のスプリング力に抗して係合用凹部33の反対側に押し戻される。そして、係合用凸部35を過ぎると板ばね部材43のスプリング力によって押し出される。そして、温度調節用ダイヤルスイッチ7を図中矢印Aで示す方向に適宜の位置まで回転させることにより、上記係合用凸部51が任意の係合用凹部33に係合する。それによって、温度調節用ダイヤルスイッチ7の任意の位置が保持される。又、上記一連の動作時においては上記板ばね部材43によって所望のクリック感が提供されることになる。
【0017】
上記係合用凸部51の構成について詳しく説明する。係合用凸部51の幅(b1)は係合用凹部33の幅(b2)に対して大きく形成されているとともに係合用凹部33方向への出っ張り(d1)を小さくしている。これによって、係合用凸部51の係合用凹部33方向へのストロークひいては板ばね部材43の弾性変形量を小さくしている。それによって、板ばね部材43の繰り返し弾性変形に起因した疲労を軽減させるようにしているものである。
【0018】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、部品点数を減少させて構成の簡略化を図ることができる。すなわち、従来の構成ではケースとコイルスプリングと係合ピンを必要としていたのに対して、本実施の形態の場合には一体化された板ばね機構41のみとなっているからである。
又、部品点数が減少したことにより部品管理も容易化されるものである。
又、組立作業も簡単なものとなる。
又、この実施の形態の場合には、位置保持部51が係合用凹部33に対して幅方向に大きく形成されているとともに係合用凹部33方向への出っ張り量を 小さく設定しているので、位置保持部51のストロークひいては板ばね部材43の弾性変形量を小さなものとすることができる。それによって、板ばね部材43の繰り返しの弾性変形に起因した疲労を軽減させることができる。
又、位置保持部51は中空形状になっているので、軽量であるとともに熱変形等の懸念も軽減されるものである。
又、本実施の形態の場合には各部品を樹脂製としているので、それによっても、軽量化と熱に対する懸念を軽減させることができる。
【0019】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記一実施の形態の場合には、位置保持部45側に係合用凸部51を形成したが、係合用凹部を形成して、係合部31側の係合用凸部35に係合させるような構成も考えられる。
例えば、前記一実施の形態の場合には温度調節用ダイヤルスイッチを例に挙げて説明したが、それ以外の各種ダイヤルスイッチに対しても同様に適用可能である。
又、前記一実施の形態の場合には、車両の空調装置を例に挙げて説明したが、それ以外の各種装置におけるダイヤルスイッチに対して同様に適用可能である。
又、前記一実施の形態の場合には、位置保持部51を係合用凹部33に対して幅方向に大きく形成することにより係合用凹部33方向への出っ張り量を 小さく設定し、それによって、位置保持部51のストロークひいては板ばね部材43の弾性変形量を小さなものとしているが、例えば、係合用凹部33の凹み量を小さくすることによっても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、例えば、車両の空調装置における操作スイッチとして使用されているダイヤル機構に係り、特に、比較的簡単な構成で所望のクリック感を出すことができるように工夫したものに関し、例えば、車両の空調装置の温度調節用ダイヤルスイッチ等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、車両の空調装置の操作パネルの構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、車両の空調装置の操作パネルの裏側の構成を示す背面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、温度調節用ダイヤルスイッチと板ばね機構との関係を示す背面図である。
【図4】従来例を示す図で、温度調節用ダイヤルスイッチと板ばね機構との関係を示す背面図である。
【符号の説明】
【0022】
7 温度調節用ダイヤルスイッチ
31 係合部
33 係合用凹部
35 係合用凸部
41 板ばね機構
43 板ばね部材
45 位置保持部
47 支持部
49 短柱部
51 係合用凸部








【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に取り付けられたダイヤルと、
上記ダイヤルに設けられ係合用凹部と係合用凸部が所定のピッチで交互に形成された係合部と、
上記ダイヤルに対して離間・配置され基部を固定された状態で弾性変形可能に延長された板ばね部材と、該板ばね部材の先端に設けられ上記係合部の任意の係合用凹部又は係合用凸部に係合して上記ダイヤルの回転位置を保持する位置保持部と、から構成された板ばね機構と、
を具備したことを特徴とするダイヤル機構。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤル機構において、
上記位置保持部は上記係合部の任意の係合用凹部に係合する係合用凸部を備えた構成になっていることを特徴とするダイヤル機構。
【請求項3】
請求項2記載のダイヤル機構において、
上記位置保持部の上記係合用凸部は上記係合部の係合用凹部の大きさに対して大きく構成されていて、上記位置保持部の係合用凸部が上記係合部の係合用凹部に係合したときその先端が係合用凹部内に深く入り込まないように構成し、それによって、位置保持部のストロークひいては板ばね部材の弾性変形量を小さくするようにしたことを特徴とするダイヤル機構。
【請求項4】
請求項2記載のダイヤル機構において、
上記位置保持部は中空形状に形成されていることを特徴とするダイヤル機構。
【請求項5】
請求項2記載のダイヤル機構において、
上記板ばね機構は樹脂製であることを特徴とするダイヤル機構。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載のダイヤル機構において、
車両の空調装置のダイヤルスイッチとして構成されていることを特徴とするダイヤル機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−130440(P2008−130440A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315851(P2006−315851)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】