説明

ダストの処理方法

【課題】固液分離した後の液中の重金属濃度を効率的に低減することができるダスト処理方法を提供する。
【解決手段】重金属を含むダスト10と水11とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程12と、調製したスラリーを第1ろ液13と残渣14とに固液分離する第1固液分離工程16と、第1固液分離により得られた第1ろ液のpHを10〜12に調整するとともに、第1ろ液に炭酸根17を添加して重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程18と、pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程19と、静置工程の静置物を第2ろ液21と残渣22とに固液分離する第2固液分離工程23とを含むダスト処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンから塩素、アルカリ等をバイパスさせて得られたキルンダスト、或いは焼却炉、溶融炉、ガス化溶融炉等から得られた飛灰、溶融飛灰、ダスト等の処理方法に関する。更に詳しくは重金属、塩素、アルカリ等を含有する飛灰、ダストからの有価金属、含有塩化物、肥料原料、化学原料、製錬原料、セメント原料等の再資源化のためのダスト処理方法に関するものである。更に本発明は、ダスト等からの肥料原料又は化学原料の製造方法並びに製錬原料又はセメント原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のダスト処理方法として、キルン燃焼ガスのダストに水に代表されるpH調整剤を添加することにより、このダスト中の第1障害物質の沈殿に最適なpHの1次スラリーに調製する工程と、この1次スラリー中で沈殿した第1障害物質を除去する工程と、この1次スラリーにキルン排ガスに代表されるpH調整剤を添加し、第2障害物質の沈殿に最適なpHの2次スラリーにする工程とを備えたキルンダストの処理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また別のダスト処理方法として、可溶性重金属塩とNaCl、KCl、Na2SO4、K2SO4等のアルカリ金属塩を含む微粉状廃棄物又は微粉状にした廃棄物を水に浸漬し、この廃棄物中に含まれる可溶性重金属塩及びアルカリ金属塩を水に溶解するとともに、NaOH、Ca(OH)2等のアルカリを添加し、このアルカリによって可溶性重金属塩を不溶性の重金属水酸化物とし、次いでこれをろ過し、ろ液中に上記アルカリ金属塩を移行せしめることにより、このアルカリ金属塩を分離したろ過残渣を作製し、このろ過残渣を高温焼結又は高温溶融処理する微粉状廃棄物の処理方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特許第2764508号公報(請求項1、[0011]、図1)
【特許文献2】特公昭63−58638号公報(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の処理方法では、pH調整を二段階で行う必要があり、工程が煩雑になるとともに、水酸化物の最小溶解度までしか重金属を除去できず、結果としてろ液中の重金属濃度を低減することが困難である。またスラリーの状態でpH調整を行う場合、使用する薬剤消費量が多量となるとともに、pH制御も非常に難しく、固体中の成分種との反応のため平衡状態に達するには時間がかかる問題もあった。
一方、特許文献2の処理方法では、ダストを水に浸漬して得られたスラリーにNaOH、Ca(OH)2等のアルカリを添加することによって可溶性重金属塩を不溶性の重金属水酸化物としているけれども、重金属水酸化物はその種類毎に溶解度が異なるため、上記アルカリによって水酸化物を生成させる処理では、複数の重金属を低濃度まで除去し難く、結果としてろ液中の重金属濃度を低減することができない。また、スラリーの状態でpH調整を行う場合、使用する薬剤消費量が多量となるとともに、pH制御も非常に難しく、固体中の成分種との反応のため平衡状態に達するには時間がかかる問題もあった。
更に、上記特許文献1及び特許文献2にそれぞれ示される処理方法では、pH調整による重金属除去として重金属水酸化物による沈殿を利用しているため、複数種類の重金属を除去するには、一度のpH調整では困難である。また水酸化物の溶解度は金属の種類によってはそれほど小さくないものも存在するため、低濃度にまで重金属を除去することは難しかった。
【0005】
本発明の目的は、固液分離した後の液中の重金属濃度を効率的に低減することができるダスト処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1の実線に示すように、重金属を含むダスト10と水11とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程12と、調製したスラリーを第1ろ液13と残渣14とに固液分離する第1固液分離工程16と、第1固液分離により得られた第1ろ液13のpHを10〜12に調整するとともに、第1ろ液に炭酸根17を添加して重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程18と、pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液13を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程19と、静置工程19の静置物を第2ろ液21と残渣22とに固液分離する第2固液分離工程23とを含むダスト処理方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、炭酸根が水溶性炭酸塩又は炭酸ガスのいずれか一方又はその双方である処理方法である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第2固液分離により得られた第2ろ液21を蒸発・晶析する工程24と、蒸発・晶析により得られた固形物26から肥料原料又は化学原料を生成する工程とを更に含む処理方法である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明であって、第1固液分離又は第2固液分離のいずれか又は双方により得られた残渣14,22から製錬原料又はセメント原料を生成する工程を更に含む処理方法である。
【0007】
請求項5に係る発明は、図1の実線に示すように、重金属を含むダスト10と水11とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程12と、調製したスラリーを第1ろ液13と残渣14とに固液分離する第1固液分離工程16と、第1固液分離により得られた第1ろ液13のpHを10〜12に調整するとともに、第1ろ液に炭酸根17を添加して重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程18と、pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液13を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程19と、静置工程19の静置物を第2ろ液21と残渣22とに固液分離する第2固液分離工程23と、第2固液分離により得られた第2ろ液21を蒸発・晶析する工程24と、蒸発・晶析により得られた固形物26から肥料原料又は化学原料を生成する工程とを含む肥料原料又は化学原料の製造方法である。
請求項6に係る発明は、図1の実線に示すように、重金属を含むダスト10と水11とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程12と、調製したスラリーを第1ろ液13と残渣14とに固液分離する第1固液分離工程16と、第1固液分離により得られた第1ろ液13のpHを10〜12に調整するとともに、第1ろ液に炭酸根17を添加して重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程18と、pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液13を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程19と、静置工程19の静置物を第2ろ液21と残渣22とに固液分離する第2固液分離工程23と、第1固液分離又は第2固液分離のいずれか又は双方により得られた残渣14,22から製錬原料又はセメント原料を生成する工程とを含む製錬原料又はセメント原料の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダスト処理方法は、先ず重金属を含むダストと水とを所定の割合となるように混合して塩素等のハロゲン類、アルカリ金属類をスラリー中に溶解させ、このスラリーを固液分離して得られる残渣中の含有塩素及びアルカリ金属類を低減する。次いで、固液分離して得られる第1ろ液のpHを調整し、炭酸根を添加して重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させ、続いてこの第1ろ液を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる。次に、この静置物を固液分離して第2ろ液と残渣とを得る。残渣は精錬原料やセメント原料として利用する。第2ろ液はこのろ液を蒸発晶析することで得られた固形物を肥料の原料や化学原料として利用する。このように上記各工程を経ることにより、固液分離した後の液中の重金属濃度を効率的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を実線で示された図1に基づいて説明する。
本発明処理方法の対象となるダストは、例示すれば、セメントキルンから塩素、アルカリ等をバイパスさせて得られたキルンダスト、或いは焼却炉、溶融炉、ガス化溶融炉等から得られた飛灰、溶融飛灰、ダストである。ダストに含まれる重金属には、Cd、Pb、Zn、Cu等が例示される。
【0010】
先ず、ダスト10と水11とを所定の割合で混合してスラリーを調製する(工程12)。具体的にはダストと水との比が1:2〜1:20の割合、好ましくは1:3〜1:10の割合となるように混合する。スラリーを調製することで、ダスト中に含まれる塩素等のハロゲン類、カリウムやナトリウム等のアルカリ金属類を溶解させる。
【0011】
ダストと水との混合比率は、ダスト中に含まれる塩素濃度、後に続く第1固液分離工程16で得られる残渣14において目標とする脱塩素率、及びこの残渣14中の水分量から決定する。ダスト10中に含まれる塩素濃度は、ダスト成分を分析することにより求める。また後に続く第1固液分離工程16で得られる残渣14中の水分量は、残渣量と残渣水分含有量から算出する。後に続く第1固液分離工程16で得られる残渣14において目標とする脱塩素率は、次の式(1)から算出する。
【0012】
【数1】

【0013】
また残渣水分中の塩素濃度は次の式(2)の通りとなる。なお、式(2)中のダスト/水比はダスト重量に対する水重量の比率を示す。
【0014】
【数2】

【0015】
上記式(1)に上記式(2)を組込むことで、次の式(3)に示すように展開される。
【0016】
【数3】

【0017】
この式(3)から次の式(4)に示すダスト/水比が求められる。
【0018】
【数4】

【0019】
本発明では、上記式(4)に示すダスト/水比と、ダスト処理時間、ダスト処理量及び処理装置の規模等の操業条件を勘案することにより、この工程12におけるダストと水との比を求めた。ダストと水との混合比は、1:2〜1:20の割合、好ましくは1:3〜1:10の割合である。ダストと水の混合比が下限値未満、即ち1:2未満であると、ダスト中に含まれるハロゲン類、アルカリ金属類が十分に溶解できないため、後に続く第1固液分離工程で発生する残渣にハロゲン類、アルカリ金属類が残留してしまい、また水の割合が少ないためスラリーを十分に攪拌できず、固液分離効率も低下する不具合を生じる。ダストと水の混合比が上限値を越える、即ち1:20を越えたとしても、その効果は代わらないが、装置が大規模となるため、実用的ではない。この工程12で調製されたスラリー中では、ダストに含まれる重金属はスラリーのpHによりその溶解度が異なるが、Cuはほとんどが水酸化物として沈殿する。ダストに含まれる重金属のうち、Pb、Zn、Cdについては、スラリーのpHがアルカリ域から酸性域まで変動するため、その溶解度は変化しており、特殊な場合を除きPb、Zn、Cdの3元素は液中に溶解する。
【0020】
続いて、調製したスラリーを遠心分離、フィルタプレス等により第1ろ液13と残渣14とに第1固液分離する(工程16)。前述した式(4)に示される脱塩素率の目標値の設定によっては多少変化するが、この第1固液分離工程16により、ダスト10に含まれる塩素を含むハロゲン成分の少なくとも70%、好ましくは80%以上は第1ろ液13に移行して、残渣14に含まれるハロゲン成分は低減される。この工程12及び工程16を経ることで、前述した特許文献1に示される1次スラリーを対象としてpH調整工程を行う場合と比較して、消費する薬剤量の節減、反応時間の短縮が可能となり、後に続く工程におけるpHの制御も容易となる。更に後に続く工程において、重金属の除去を効率的に行うことが可能となる。
【0021】
次に、第1固液分離工程16で分離された第1ろ液13のpHを10〜12、好ましくは10〜11の範囲に調整するとともに、第1ろ液13に炭酸根17を添加する(工程18)。第1ろ液13に添加する炭酸根17としては水溶性炭酸塩、炭酸ガスが挙げられる。水溶性炭酸塩としてはK2CO3、Na2CO3、(NH4)2CO3が挙げられる。炭酸ガスは、キルン、焼却炉、溶融炉等の炭酸ガスを含む排ガスでもよい。また第1ろ液13のpHを調整するpH調整剤としては、Ca(OH)2やKOH、HCl等が挙げられる。なお、第1ろ液13のpHが強アルカリ性を呈し、炭酸根17の添加により、上記範囲内に調整される場合は、pH調整剤を添加する必要はない。この第1ろ液13のpH調整と炭酸根17の添加により、溶解していたPb、Zn、Cdは、水に対する溶解度が低下するため、水酸化物になるとともに、炭酸塩を生成する。この水に不溶性の重金属の水酸化物、炭酸塩は時間の経過とともに沈殿する。
【0022】
続いてpHを調整し、炭酸根を添加した上記第1ろ液13を静置する(工程19)。静置は1時間以上、好ましくは1〜12時間行う。除去効率を考慮すれば1時間以上静置すれば十分であるが、装置、操業上の観点から上記範囲内から静置時間が決められる。上記上限値を越えて静置しても除去効率はそれ程向上しない。この静置により、水に溶解して残留していた重金属がカルシウム塩の沈殿に伴われて一緒に沈殿する。この共沈効果により水に溶解している重金属の濃度がより一層低減する。
【0023】
更に続いて液と沈殿物を含む静置物を遠心分離、フィルタプレス等により第2ろ液21と残渣22とに第2固液分離する(工程23)。第2ろ液21を加熱することによりその水分を蒸発させ、液に溶解していた物を晶析させる(工程24)。得られた固形物26にはカリウム、ナトリウム等のアルカリ金属と、塩素、臭素等のハロゲン類が多量に含まれるので、この固形物により肥料の原料や化学原料が製造される。
一方、第1固液分離及び第2固液分離により得られた残渣14,22には若干重金属を含むものの大部分がカルシウム化合物、シリカから構成されているので、この残渣により製錬原料又はセメント原料が製造される。
このように本発明の処理方法における各工程を経ることにより、pH調整を1段階行うだけで複数種類の重金属を同時に低濃度まで除去することが可能である。
【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、セメントキルンダストA、B及びCをそれぞれ用意し、このダスト組成を分析した。各組成を表1にそれぞれ示す。
【0025】
【表1】

【0026】
次いで、ダストA〜Cを用い、これらダストと水との比が次の表2に示す割合となるように混合して6種類のスラリーA1〜F1をそれぞれ調製した。次に、調製した各スラリーを第1固液分離して第1ろ液A1〜F1と残渣A1〜F1とに分離した。図1の破線に示すように、これら第1ろ液A1〜F1の一部を抜き取りろ過した後、ろ液1を得た。第1ろ液A1〜F1から抜き出したろ液1について各ろ液の重金属成分についてICP発光分光分析法により化学分析を行った。また、残渣A1〜F1中に含まれる塩素、アルカリ金属類についても同様に化学分析を行い、脱塩素率、脱アルカリ金属率を求めた。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
表2より明らかなように、ダスト:水比が1:10の第1ろ液A1〜C1では、どの種類のダストに対しても、脱塩素、脱アルカリ金属効率が高い結果が得られた。また、ダスト:水比が1:2の第1ろ液F1の場合は脱塩素、脱アルカリ金属効率が70%を下回る結果となった。また、ダスト:水比が1:3以上の第1ろ液A1〜E1では脱塩素、脱アルカリ金属効率がおよそ80%を越え、水の割合が高くなるほど脱塩素、脱アルカリ金属効率が高い結果が得られた。なお、残渣A1〜F1はカルシウムが主成分で、その他にシリカ、酸化鉄を含むものであり、セメント原料あるいは精錬のフラックスとして有効利用が可能であった。
【0029】
次に、上記表2の第1ろ液A1、D1及びE1を使用し、次の表3に示すpH調整剤を用いて第1ろ液のpHを調整するとともに、第1ろ液に炭酸根を添加したものを6種類作製した。また、次の表3に示すpH調整剤を用いて第1ろ液のpHを調整したものを4種類作製した。続いて、各第1ろ液を次の表3に示す静置時間だけ静置した後、この静置物をフィルタプレスにより第2固液分離して第2ろ液A1〜J1と残渣A2〜J2を得た。図1の破線に示すように、これら第2ろ液A1〜J1の一部を抜き取りろ液2を得た。第2ろ液A1〜J1から抜き出したろ液2について各ろ液の重金属成分についてICP発光分光分析法により化学分析を行った。その結果を表3に示す。なお、表3中において、添加した炭酸根のCO2ガスは15容量濃度であり、このCO2ガスを2時間吹き込んだことを示す。
【0030】
【表3】

【0031】
表3より明らかなように、pH調整しただけの第2ろ液G1〜J1は十分に重金属を除去しきれていない結果が得られた。これに対してpH調整し、炭酸根を添加した第2ろ液A1〜F1では複数種類の重金属を同時に低濃度まで除去していた。また、残渣A2〜J2はカルシウムが主成分で、その他にシリカ、酸化鉄を含むものであり、セメント原料あるいは精錬のフラックスとして有効利用が可能であった。
また、第2ろ液A1〜F1の重金属除去後のろ液を加熱し、水分を揮発除去させた。得られた結晶中のK純分はK2O換算にて55%ほどの値であり、塩化カリウム肥料規格を十分満足するものであった。
【0032】
<実施例2>
先ず、上記表1に示すダストA〜Cを用い、これらダストと水との比が次の表4に示す割合となるように混合して5種類のスラリー1〜5をそれぞれ調製した。次いで、調製したスラリーのうち、スラリー1〜3について第1固液分離して第1ろ液1〜3と残渣1〜3とに分離した。次に、第1ろ液1〜3とスラリー4及び5について、液中のpHが11.0となるようにpH調整剤を用いてpH調整を行った。使用したpH調整剤の種類及びその使用量と、pH調整にかかった時間を次の表4にそれぞれ示す。
【0033】
【表4】

【0034】
表4より明らかなように、同一種類のダストを処理しようとする場合、第1固液分離工程を施した第1ろ液1〜3の方がスラリー4やスラリー5に比べてpH調整に必要とされるpH調整剤の使用量が少なくて済み、かつpH調整に必要とされる時間も短時間で済むことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、キルンダスト、或いは焼却炉、溶融炉、ガス化溶融炉等から得られた飛灰、溶融飛灰、ダスト等の処理に利用できる。また上記キルンダスト等から、肥料原料、化学原料、製錬原料、セメント原料等を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のダスト処理工程を示す図。
【符号の説明】
【0037】
10 ダスト
11 水
12 スラリーの調製工程
13 第1ろ液
14 残渣
16 第1固液分離工程
17 炭酸根
18 重金属の沈殿工程
19 静置による残留重金属塩との共沈工程
21 第2ろ液
22 残渣
23 第2固液分離工程
24 蒸発・晶析工程
26 固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を含むダスト(10)と水(11)とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程(12)と、
前記調製したスラリーを第1ろ液(13)と残渣(14)とに固液分離する第1固液分離工程(16)と、
前記第1固液分離により得られた第1ろ液(13)のpHを10〜12に調整するとともに、前記第1ろ液に炭酸根(17)を添加して前記重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程(18)と、
前記pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液(13)を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程(19)と、
前記静置工程の静置物を第2ろ液(21)と残渣(22)とに固液分離する第2固液分離工程(23)と
を含むダスト処理方法。
【請求項2】
炭酸根が水溶性炭酸塩又は炭酸ガスのいずれか一方又はその双方である請求項1記載の処理方法。
【請求項3】
第2固液分離により得られた第2ろ液(21)を蒸発・晶析する工程(24)と、前記蒸発・晶析により得られた固形物(26)から肥料原料又は化学原料を生成する工程とを更に含む請求項1記載の処理方法。
【請求項4】
第1固液分離又は第2固液分離のいずれか又は双方により得られた残渣(14,22)から製錬原料又はセメント原料を生成する工程を更に含む請求項1記載の処理方法。
【請求項5】
重金属を含むダスト(10)と水(11)とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程(12)と、
前記調製したスラリーを第1ろ液(13)と残渣(14)とに固液分離する第1固液分離工程(16)と、
前記第1固液分離により得られた第1ろ液(13)のpHを10〜12に調整するとともに、前記第1ろ液に炭酸根(17)を添加して前記重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程(18)と、
前記pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液(13)を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程(19)と、
前記静置工程の静置物を第2ろ液(21)と残渣(22)とに固液分離する第2固液分離工程(23)と
第2固液分離により得られた第2ろ液(21)を蒸発・晶析する工程(24)と、前記蒸発・晶析により得られた固形物(26)から肥料原料又は化学原料を生成する工程と
を含む肥料原料又は化学原料の製造方法。
【請求項6】
重金属を含むダスト(10)と水(11)とをダストと水との比が1:2〜1:20の割合となるように混合してスラリーを調製する工程(12)と、
前記調製したスラリーを第1ろ液(13)と残渣(14)とに固液分離する第1固液分離工程(16)と、
前記第1固液分離により得られた第1ろ液(13)のpHを10〜12に調整するとともに、前記第1ろ液に炭酸根(17)を添加して前記重金属を水酸化物又は炭酸塩の形態で沈殿させる工程(18)と、
前記pHを調整し炭酸根を添加した第1ろ液(13)を静置して炭酸塩との共沈効果により水に溶解して残留している重金属を更に沈殿させる静置工程(19)と、
前記静置工程の静置物を第2ろ液(21)と残渣(22)とに固液分離する第2固液分離工程(23)と、
第1固液分離又は第2固液分離のいずれか又は双方により得られた残渣(14,22)から製錬原料又はセメント原料を生成する工程と
を含む製錬原料又はセメント原料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−150332(P2006−150332A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25882(P2005−25882)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】