説明

ダブルスキン外壁を備えた建物

【課題】建物の方角壁面の経年劣化が少なく、省エネルギー効率が高く、リフォーム時に廃棄物が少ない建物を提供する。
【解決手段】通気層5を有する建物であって、建物の方角壁面10が、室内から室外に向かい躯体1と、断熱材2と、下地材と、外装材4とからなり、前記断熱材2が、厚み40〜60mmで、圧縮強さ20N/cm2以上、曲げ強さ25N/cm2以上の多孔質フォームから形成され、前記下地材が前記断熱材2上に一定の間隔に配置され、且つ上下方向に延存し、前記通気層5が前記断熱材2と前記下地材と前記外装材4とで区画される領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギーを図りつつ、外観デザインの多様化も図ることができる外断熱壁式RC構造におけるダブルスキン外壁を備えた建物に関し、特に個別住宅、集合住宅に好適な建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外断熱工法としては後貼り工法が広く普及している。後貼り工法とは、型枠工法により建物方角壁面となる躯体を築造した後に、躯体の室外面側にウレタン等の断熱材を塗布、張付けし、さらに、断熱材の室外面側にメッシュ材と外装材となる樹脂製モルタルを塗りつけていく工法である。
【0003】
しかし、後貼り工法にあっては、特に、夏場において日照により外装材の温度が上昇し、外装材にひび割れ、剥離が発生し、経年劣化が早期に発生する問題があった。
躯体を形成するコンクリート内部に残留している余剰水分が室内側に放出され、室内に結露を生じ、カビなどの発生を招く恐れもあった。
従来の建物の方角壁面に使用されていた断熱材は、厚みが薄く、圧縮強さ等が小さいことから、断熱材に下地材を取付ける場合にあっては、断熱材の全面に均等に圧縮強さを作用させる必要があるため、断熱材の室外側面に約12mmの木材板を取付け、木材板の室外面側に下地材を取付けるため、建物のリフォーム時にあっては、多量の木材板を廃棄物として処理する必要があった。
断熱材の室外側面に外装材を塗布するため、建物のリフォーム時にあっても、色彩、材質等が異なる外装材への交換は困難であった。
【0004】
また、近年、省エネルギーの意識の高まりに伴って、住宅などの建物において、エアサイクル住宅や、地熱の利用が多く採用されている。
その例として、下記の特許文献1などがある。この例においては、夏場において、外気を軒下から外壁と内壁との間の通気部内に取り込み、通気部を通して屋根部に流通させ、屋根部の空気を排気ファンにより、内壁、通気部及び外壁を貫通した排気通路を通して大気に放出するものである。
【0005】
しかし、上記例においては、外気を通気内部に取り込む際に、種差選択した場所から低温な外気を取り込むことはできず、日照により高温になった外気を外壁と内壁との間の通気部内に取り込む恐れがあり、省エネルギー効率が低い建物であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−13219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、外装材の温度上昇を抑制することにより外装材の経年劣化を防止し、躯体を形成するコンクリート内部に残留している余剰水分の室内側への放出を防止し、外装材の選択自由度を高めデザイン性に優れる建物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする従たる課題は、省エネルギー効率が高い建物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[請求項1記載の発明]
通気層を有する建物であって、
建物の方角壁面が、室内から室外に向かい躯体と、断熱材と、下地材と、外装材とからなり、
前記断熱材が、厚み40〜60mmで、圧縮強さ20N/cm2以上、曲げ強さ25N/cm2以上の多孔質フォームから形成され、
前記下地材が、前記断熱材上に一定の間隔に配置され、且つ、上下方向に延存し、
前記通気層が、前記断熱材と、前記下地材と、前記外装材とで区画される領域に形成されている
ことを特徴とする建物。
【0009】
請求項1記載の発明は、建物の方角壁面が、室内から室外に向かい躯体と、断熱材と、下地材と、外装材とからなり、断熱材が、厚み40〜60mmで、圧縮強さ20N/cm2以上、曲げ強さ25N/cm2以上の多孔質フォームから形成されていることから、断熱材を、建物の方角壁面を形成する型材として用いることができる。
すなわち、従来の建物の方角壁面に使用されていた木材板を用いる必要がないことから建物のリフォーム時等の廃棄物を大幅に削減することが可能になる。
【0010】
また、下地材が、断熱材上に一定の間隔に配置され、且つ、上下方向に延存し、通気層が、断熱材と、下地材と、外装材とで区画される領域に形成されていることから、日照により外装材の温度が上昇した場合にあっても、断熱材と外装材との間にある通気層により外装材が冷却され、外装材の熱が断熱材に直接的に伝播されることが抑制される。
よって、外装材にひび割れ、剥離が発生することがなく、外装材の経年劣化を抑制することができ、コンクリート内部の余剰水分が室内側に放出されることもなく、室内の結露、カビの発生を防止することができる。
さらに、下地材から外装材を容易に取り外すことか可能であり、建物のリフォームの際に、色彩、材質が異なる外装材に容易に交換でき、また、換気ガラリ、縦樋等を通気層の内部に配置することができ建物のデザイン性を飛躍的に向上させることが可能になる。
【0011】
[請求項2記載の発明]
前記通気層の下部には、外気を前記通気層に取り込む取入口を有し、
前記通気層の上部には、外気を前記通気層から排出する排気口を有している請求項1記載の建物。
【0012】
請求項2記載の発明は、通気層の下部には、外気を通気層に取り込む取入口を有し、通気層の上部には、外気を通気層から排出する排気口を有している。
特に、夏場においては、日照が建物により遮られ建物の陰から低温の外気を取入口から通気層に取り込み、通気層を通過させ、通気層の排気口から排気することができる。
よって、夏場においては、通気層に低温の外気を通過させることにより、断熱材、下地材、外装材を冷却することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0013】
一方、冬場においては、日照により暖められた高温の外気を取入口から通気層に取り込み、通気層を通過させ、通気層の排気口から排気することができる。
よって、冬場においては、通気層に高温の外気を通過させることにより、断熱材、下地材、外装材を暖房することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0014】
[請求項3記載の発明]
前記通気層には、建物の室内に連通する連通口を有し、前記連通口には吸排気弁が設けられている請求項1又は2記載の建物。
【0015】
請求項3記載の発明は、通気層には、建物の室内に連通する連通口を有し、連通口には吸排気弁が設けられていることから、通気層と建物の室内とを連通/不連通に任意に設定することができる。すなわち、通気層の内部の低温の外気を室内に吸気する/室内の低温の内気を通気層に排気することができる。
特に、夏場の朝方、夕方においては、建物の陰の低温の外気を取入口から通気層に取り込み、連通口の吸排気弁を開き、建物の室内と通気層を連通させ、建物の室内に低温の外気を吸気することができ、建物の室内の温度を低温に保つことができる。
また、夏場の日中においては、冷房装置により低温に保たれた室内の内気を、連通口の吸排気弁を開き、建物の室内と通気層を連通させ、通気層に低温の内気を排気し、通気層を通過させることにより、断熱材、下地材、外装材を冷却することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0016】
一方、冬場の日中においては、日照により暖められた高温の外気を取入口から通気層に取り込み、取り込んだ外気をさらに日照により暖め、連通口の吸排気弁を開き、建物の室内と通気層を連通させ、建物の室内に高温の外気を供給することができ、建物の室内の温度を高温に保つことができる。
また、冬場の朝方、夕方においては、暖房により高温となった室内の内気を、連通口の吸排気弁を開き、建物の室内と通気層を連通させ、通気層に高温の内気を排気し、通気層を通過させることにより、断熱材、下地材、外装材を暖房することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0017】
さらに、連通口は、外装材の室内側にある通気層に設けられていることから、建物の外部から視認されるものでなく、また、外装材に突出部分を設けることがなく建物のデザイン性に優れる。
【0018】
[請求項4記載の発明]
前記通気層が、それぞれの前記方角壁面においてそれぞれ独立している請求項1乃至3記載の建物。
【0019】
請求項4記載の発明は、通気層が、それぞれの方角壁面においてそれぞれ独立していることから、季節、日照との関係で効果的に外気を取り込む通気層、内気を排気する通気層を選択でき、省エネルギー効率が高い建物の提供により好適である。
【0020】
[請求項5記載の発明]
前記独立した通気層には、それぞれ隣接する通気層と連結する連結口が設けられている請求項1乃至4の何れか1項記載の建物。
【0021】
請求項5記載の発明は、独立した通気層には、それぞれ隣接する通気層と連結する連結口が設けられていることから、独立した通気層に取り込まれた外気を、隣接する通気層に拡散することができる。
すなわち、夏場においては、広範囲の範囲の断熱材、下地材、外装材を冷却することができ、冬場においては、広範囲の範囲の断熱材、下地材、外装材を暖房することができ、
省エネルギー効率がより一層高い建物の提供ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、建物の壁面の経年劣化が少なく、居住空間の衛生面及びデザイン性に優れ、省エネルギー効率が高く、リフォーム時の廃棄物が少ない建物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の建物の1階伏図である。
【図2】本実施形態の方角壁の部分断面図である。
【図3】夏場の朝方、夕方の通気層の状態説明図である。
【図4】夏場の日中の通気層の状態説明図である。
【図5】冬場の日中の通気層の状態説明図である。
【図6】冬場の朝方、夕方の通気層の状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態に係る建物を図1及び図2に示す。
図1は、2階建て建物全体の概要を図示したものであり、図1に1階部分が図示され、キッチンを含むリビング、和室、風呂、洗面・脱衣室、トイレが設けられ、2階は図示されていない。
各部屋や領域は、室外と断熱化された、すなわち断熱材またはRC壁や二重サッシなどにより可能な限り熱の放散や侵入を防止した外断熱建物とされている。
各対象室内領域は、適宜な位置に設けられた換気扇(本図には図示せず)によって、建築基準法上、ホルムアルデヒドなどの化学物質の排出のために、排気可能となっている。
さらに、本実施形態に係る建物内の人が居住する空間とされる居室の周囲の四辺をそれぞれ外壁10により区画されている。
【0025】
図2は、本実施形態に係る建物の外壁の部分拡大図である。
外壁10は、室内から室外に向かいコンクリートからなる躯体1と、断熱材2と、下地材3と、外装材4とから構成されている。
また、通気層5は、断熱材2と、断熱材2の室側面に一定間隔で配置された下地材3と、外装材4とで区画されてなり、外壁10の下部から上部まで延在して形成されている。
【0026】
断熱材2としては、無機系のグラスウール、ロックウール、有機系の硬質ウレタンフォーム、インシアヌレートフォーム、無機・有機混合の炭酸カルシウム混入硬質塩化ビニル発砲体、石綿カルシウム混入硬質塩化ビニル発砲体等を使用することができる。
また、断熱材2の厚みは40〜60mmが好適であり、45〜55mmがより好適である。断熱材2の厚みが40mm未満の場合にあっては、寒冷地に建設される建物の防寒性が十分に発揮されない恐れがあり、60mm超の場合にあっては過剰品質である。
さらに、断熱材2の圧縮強さは20N/cm2以上が好適であり、断熱材2の圧縮強さは20N/cm2未満の場合にあっては、直接、下地材3を断熱材2に取付けた場合、断熱材2に大きな変形が生じる恐れがある。断熱材2の曲げ強さは25N/cm2以上が好適である。断熱材2の曲げ強さは25N/cm2未満の場合にあっては、直接、下地材3を断熱材2に取付けた場合、断熱材2に大きな変形が生じる恐れがある。また、断熱材2の圧縮強さ、曲げ強さの上限については特段の制限はなく、断熱材2の耐久性、コスト性を考慮して決定する。
本実施形態にあっては、断熱材2としては、ポリスチレンフォーム保温板(3種b、厚み50mm、圧縮強さ20N/cm2、曲げ強さは25N/cm2)を使用している。ポリスチレンフォーム保温板は、一定形状に加工された保温板であることから、躯体1への取り付けが精度良く行え、取り付けも容易であることから、新築、リフォーム時間を短縮することができる観点から好適である。
【0027】
下地材3としては、L形鋼材、角形鋼管等を使用することができる。
本実施形態にあっては、下地材3としては、亜鉛メッキを施した角形鋼管(60×60×t2.3mm)を外壁10の幅方向に450mm間隔で使用している。なお、下地材3としては、亜鉛メッキを施した角形鋼管(60×60×t2.3mm)を外壁10の幅方向に450mm間隔で使用した場合にあっては、下地材3を外装材4の下地材として利用できることから費用的に好適である。
また、下地材3として角形鋼管(60×60×t2.3mm)を使用し、断熱材2と外装材4の間に約60mmの通気層5を設けることにより、省エネルギー効率が高い建物を実現でき、同通気層5内部に換気ガラリ、縦樋等を設置でき極めてデザイン性に優れる建物を提供することができる。
さらに、下地材3には、隣接する通気層に連通する切欠部からなる連結孔14を設けることができる。
【0028】
本実施形態にあっては、外装材4としては、窯業サイディング(t1.5mm)及びフロートガラス(t6.0mm)を使用しているがこれに限定されないことは言うまでもなく、金属パネル、塗り壁等を使用しても良い。
【0029】
次に、コンクリートからなる躯体1に、断熱材2、下地材3及び外装材4の固定方法についてであるが、本実施形態にあっては、密着型乾式工法で行っている。すなわち、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4にホームタイセット(図示省略)を貫通した後、固定具を閉め込むことによりコンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4が相互に挟持し合うことにより各部材の固定平面が隙間なく位置決めされる。
よって、建物のリフォーム時にあっては、ホームタイセットの固定具を緩めることにより容易に下地材3と外装材4を外壁10から取り外し、色彩、材質等が異なる新たな外装材と交換できデザイン性に優れる建物となる。
また、その他の工法で建築された建物に、本発明を適用する場合にあっても、躯体は再利用することは可能であり、躯体材料の削減し環境保護にも優れている。
【0030】
本実施形態にあっては、各通気層5の下部には、屋外の外気を通気層5に取り込むために下面に取入口11を有する下部カバー6が取り付けられ、各通気層5の上部には、通気層5の内部の空気を屋外に排出するための、下面に排気口12を有する上部カバー7が取り付けられている。
なお、降雨が通気層5内への侵入を防止するため、上部カバー7は、外壁10上部に設けられた上部ブラケット13により支持され外装材4から外側に突出した形とされている。
また、下部カバー6の取入口11、上部カバー7の排気口12に強制吸排気弁(図示省略)を取り付けた場合、屋外の大量の外気を素早く通気層5に取入れることができることができより一層好適である。
【0031】
本実施形態にあっては、居室の周囲の四辺を形成する同一外壁(10A、10B、10C、10D)に設けられた通気層5は隣接する通気層5と連結口14により互いに連通している。
一方、同一外壁に設けられていない通気層5は、互いに独立して形成されており不連通であり、連結させるには、連結口14に設けられた開閉弁(図示省略)を開口することにより行う。
これにより、例えば、夏場においては、日照が建物により遮られ建物の陰から低温の外気を選択して取入口11から通気層5に取り込み、通気層5を通過させ、通気層5の排気口12から排気することにより断熱材2、下地材3、外装材4を冷却することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0032】
一方、冬場においては、日照により暖められた高温の外気を選択して取入口11から通気層5に取り込み、通気層5を通過させ、通気層5の排気口12から排気することにより、断熱材2、下地材3、外装材4を暖房することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0033】
さらに、前述した連結口14に設けられた開閉弁を開口した場合にあっては、居室の周囲の四辺を形成する外壁(10A、10B、10C、10D)に設けられた断熱材2、下地材3、外装材4を広範囲に冷却又は暖房することができ、一層省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0034】
本実施形態にあっては、各通気層5には室内と連通する連通口9が形成されており、連通口9の室内側は端部には吸排気弁8が設けられている。
これにより、夏場の日中においては、冷房装置により低温に保たれた室内の内気を、連通口9の吸排気弁8を開き、建物の室内と通気層5を連通させ、通気層5に低温の内気を排気し、通気層5を通過させることにより、断熱材2、下地材3、外装材4を冷却することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0035】
一方、冬場の朝方、夕方においては、暖房により高温となった室内の内気を、連通口9の吸排気弁8を開き、建物の室内と通気層5を連通させ、通気層5に高温の内気を排気し、通気層5を通過させることにより、断熱材2、下地材3、外装材4を暖房することができ、省エネルギー効率が高い建物の提供ができる。
【0036】
以下、図3〜図6に基づいて、前述の説明を整理する。
[夏場の朝方、夕方]
図3は、夏場の朝方、夕方における通気層への外気の取入れ状態を説明した図である。
例えば、夏場の朝方にあっては、屋外の外気は、日照によりまだ温暖されておらず比較的低温である。そこで、図3に示すように、通気層5の下部に設けられた下部カバー6の取入口11を開口して、軒下から低温の外気A1を通気層5の内部に取入れる。
そして、通気層5に取入れた外気A1の一部は、通気層5と連通する連通口9に設けられた吸排気弁8を作動させ居住空間である室内側に吸気する。これにより、冷房機器を使用することなく、室内側の温度を低温にすることができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
一方、通気層5に取入れた外気A1の残部は、通気層5の上部に設けられた上部カバー7の排気口12から再び外部に排気される。これにより、日照により暖めたれた、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4から熱を奪い、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4の温度を低温化することができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
また、特に、コンクリート1及び断熱材2の温度を低温化することにより、断熱材2の表面に発生するひび割れ、剥離の発生を抑制し、コンクリート1の内部に残留する残留水分の室内側への発散を抑制することから防カビ性に優れ、建物の経年劣化を防止し、安全、特に居住者の健康維持、衛生面に優れる建物を実現させることができる。
なお、図3には図示されていないが、他の外壁上に設けられた通気層5との連結口14を開口することにより、広範囲のコンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4から熱を奪うことが可能になり、さらに効率的に省エネルギー効果に優れる建物を実現させることが可能となる。
【0037】
[夏場の日中]
図4は、夏場の日中における通気層への外気の取入れ状態を説明した図である。
夏場の日中にあっては、屋外の外気は、日照により暖められ高温化されている。一方、居住空間にあっては、冷房装置により居住空間の温度は一般に25〜28℃にされ、屋外の外気温度より低温である。
図4に示すように、法律により室内空気は24時間換気することが必要であることから連通口9に設けられた吸排気弁8を作動させ居住空間の低温の内気A2を通気層5の内部に排気し、通気層5の上部に設けられた上部カバー7の排気口12から低温の内気A2を屋外に排気する。これにより、日照により暖めたれた、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4から熱を奪い、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4の温度を低温にすることができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
なお、図4には図示されていないが、他の外壁上に設けられた通気層5との連結口14を開口することにより、広範囲のコンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4から熱を奪うことが可能になり、さらに効率的に省エネルギー効果に優れる建物を実現させることが可能となる。
【0038】
[冬場の日中]
図5は、冬場の日中における通気層への外気の取入れ状態を説明した図である。
冬場の日中にあっては、日照が当たる屋外の外気は、比較的高温である。そこで、図5に示すように、通気層5の下部に設けられた下部カバー6の取入口11を開口して、壁下部から高温の外気B1を通気層5の内部に取入れる。
そして、通気層5に取入れた外気B1の一部は、通気層5と連通する連通口9に設けられた吸排気弁8を作動させ居住空間である室内側に吸気する。これにより、暖房機器を使用することなく、室内側の温度を高温にすることができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
さらに、屋外の湿気を乾燥した室内に同時に取り込めることから、居住者の健康維持、に優れる建物を実現させることができる。
一方、通気層5に取入れた外気B1の残部は、通気層5の上部に設けられた上部カバー7の排気口12から再び外部に排気される。これにより、寒気により冷やされた、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4に熱を伝え、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4を暖房することができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
なお、図5には図示されていないが、他の外壁上に設けられた通気層5との連結口14を開口することにより、広範囲のコンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4に熱を伝えることが可能になり、さらに効率的に省エネルギー効果に優れる建物を実現させることが可能となる。
【0039】
[冬場の朝方、夕方]
図6は、冬場の朝方、夕方における通気層への外気の取入れ状態を説明した図である。
特に、冬場の夕方にあっては、屋外の外気は、寒気により低温下されている。一方、居住空間にあっては、暖房装置により居住空間の温度は一般に15〜20℃にされ、屋外の外気温度より高温である。
図6に示すように、連通口9に設けられた吸排気弁8を作動させ居住空間の高温の内気B2を通気層5の内部に排気し、通気層5の上部に設けられた上部カバー7の排気口12から高温の内気B2を屋外に排気する。これにより、日照により暖めたれた、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4に熱を伝え、コンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4の温度を高温にすることができ、省エネルギー効果に優れる建物を実現させている。
なお、図6には図示されていないが、他の外壁上に設けられた通気層5との連結口14を開口することにより、広範囲のコンクリート1、断熱材2、下地材3及び外装材4に熱を伝えることが可能になり、さらに効率的に省エネルギー効果に優れる建物を実現させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、省エネルギー効率が高く、デザイン性に優れる個人住宅、集合住宅の新築及びリフォームに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…コンクリート、2…断熱材、3…下地材、4…外装材、5…通気層、6…下部カバー、7…上部カバー、8…吸排気弁、9…連通口、10…外壁(外壁躯体)、11…取入口、12…排気口、13…上部ブラケット、14…連結孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気層を有する建物であって、
建物の方角壁面が、室内から室外に向かい躯体と、断熱材と、下地材と、外装材とからなり、
前記断熱材が、厚み40〜60mmで、圧縮強さ20N/cm2以上、曲げ強さ25N/cm2以上の多孔質フォームから形成され、
前記下地材が、前記断熱材上に一定の間隔に配置され、且つ、上下方向に延存し、
前記通気層が、前記断熱材と、前記下地材と、前記外装材とで区画される領域に形成されている
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記通気層の下部には、外気を前記通気層に取り込む取入口を有し、
前記通気層の上部には、外気を前記通気層から排出する排気口を有している請求項1記載の建物。
【請求項3】
前記通気層には、建物の室内に連通する連通口を有し、前記連通口には吸排気弁が設けられている請求項1又は2記載の建物。
【請求項4】
前記通気層が、それぞれの前記方角壁面においてそれぞれ独立している請求項1及至3記載の建物。
【請求項5】
前記独立した通気層には、それぞれ隣接する通気層と連結する連結口が設けられている請求項1乃至4の何れか1項記載の建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−26919(P2011−26919A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176400(P2009−176400)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ホームタイ
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】