説明

ダンパ装置およびダンパ装置の制御方法

【課題】排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができるダンパ装置およびダンパ装置の制御方法を提供する。
【解決手段】ダンパ装置1は、排ガスが流通するガス流路6を内側に形成する枠体8と、枠体内に設けられ、ガス流路の開口形状に略一致するように列設する複数の回転羽根10と、回転羽根を軸支して枠体間に架設され、複数の回転羽根を夫々揺動させる複数の回転軸12と、枠体の外壁に設けられ、複数の回転軸12の各端部を連結する連結部材14と、連結部材の一端と接続し且つ複数の回転軸と隣接して枠体間に架設され、連結部材および回転軸を介して複数の回転羽根を同時に揺動させるドライブシャフト16と、ドライブシャフトを駆動するアクチュエータ18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置およびダンパ装置の制御方法に係り、特に、ボイラプラントを構成する電気集塵機のガス流れ下流側に設けられ、電気集塵機を経た排ガスの流量を調節して誘引ファンに導くダンパ装置およびダンパ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なボイラプラントでは、ボイラからの排ガス中の煤塵を除去する電気集塵機と、電気集塵機を経た排ガスを引き出し、煙突より大気に放出させる誘引通風機(誘引ファン)とが設置されている。誘引通風機によって排ガスをボイラから誘引することにより、ボイラ内部や電気集塵機内部は負圧に保ちながら運転される。
また、誘引通風機の入口には、排ガスの流量を調節するベーン式ダンパが設置されている。ボイラ内部の排ガス圧力は、誘引通風機の入口に設けられるベーン式ダンパの開度を制御することによって調節される。ダンパの開度を制御して排ガス圧力を負圧にすることで、排ガスが外部へ流出することを防止している。
【0003】
ところで、ボイラからの排ガス中には煤塵等が含まれているため、ベーン式ダンパを構成するベーン(回転羽根)とケーシング間に煤塵等の物質が付着し、ベーンを固着させ、入口ダンパの操作を不可とする恐れがある。
重質油焚きのボイラプラントでは、排ガス中に含まれる硫黄酸化物を除去するために、電気集塵機前段の煙道にて排ガス中にアンモニアを注入し、硫黄酸化物を硫安物質に変化させ、硫安物質として電気集塵機で捕集している。特に、硫安物質は、付着性が非常に高いため、電気集塵機で捕集しきれない微量の硫安物質は、電子集塵機のガス流れ下流側に設けられるベーン式ダンパへ流出し、ベーンとケーシング間に付着してベーンを固着させる。
【0004】
また、通常、ボイラプラントでは、ボイラの負荷変動がほとんどないため、ボイラからの排ガス量も一定になりやすい。そのため、排ガスの流量を調節するベーン式ダンパの開度の変動も少なくなり、ベーンの固着が促進されやすくなる。
このことから、ベーン式ダンパの操作を妨げないようにするために、ベーン式ダンパのベーンが完全に固着する前に解除してベーンの固着を防止することが求められている。
【0005】
例えば、特許文献1には、燃焼ダストが固化するような環境にあっても動作を円滑に行うことができるダンパが提案させている。特許文献1では、ベーンの回転軸方向の端部に円板を取り付け、この円板とケーシングの側壁とのあいだに形成される間隙中にエアを供給する。このように、エアを供給することによって、燃焼ダストの侵入を抑制してベーンとケーシングの側壁とのあいだで燃焼ダストの固化を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−214620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のダンパ装置は、ベーンとケーシングの側壁とのあいだで燃焼ダストの固化を抑制するものであり、付着物によるベーンの固着をベーンが完全に固着する前に解除するものではない。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができるダンパ装置およびダンパ装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダンパ装置は、電気集塵機のガス流れ下流側に設けられ、前記電気集塵機を経た排ガスの流量を調節して誘引ファンに導くダンパ装置において、前記排ガスが流通するガス流路を内側に形成する枠体と、前記枠体内に設けられ、前記ガス流路の開口形状に略一致するように列設する複数の回転羽根と、前記回転羽根を軸支して前記枠体間に架設され、前記複数の回転羽根を夫々揺動させる複数の回転軸と、前記枠体の外壁に設けられ、前記複数の回転軸の各端部を連結する連結部材と、前記連結部材の一端と接続し且つ前記複数の回転軸と隣接して前記枠体間に架設され、前記連結部材および前記回転軸を介して前記複数の回転羽根を同時に揺動させるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトを駆動するアクチュエータと、前記電気集塵機の入口での排ガス圧力を検出する排ガス圧力検出手段と、前記電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、前記排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する自動圧力制御手段と、前記自動圧力制御手段を介さずに、前記排ガス圧力の前記設定値に関わらず一時的に前記回転羽根を強制的に揺動させる固着防止制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
このダンパ装置には、電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御する自動圧力制御手段が備えられているので、誘引ファンに導く排ガスの適切な流量を調節して、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。そのため、ボイラプラントが運転中の場合であっても、硫安物質や煤塵等を捕集する電気集塵機の内部点検等のメンテナンスを行うことができる。
また、ダンパ装置は、自動圧力制御手段を介さずに、電気集塵機の入口での排ガス圧力の設定値に関わらず一時的に回転羽根を強制的に揺動させる固着防止制御手段を備えているので、回転羽根を強制的に揺動させることにより、硫安物質や煤塵等の付着物によって完全に固着する前に回転羽根を動かすことができる。そのため、付着物が回転羽根から取れやすくなるとともに、新たに付着物が回転羽根に固着することを防止することができる。固着防止制御手段を用いて一時的に揺動させた回転羽根は、上述の自動圧力制御手段によって動作が制御されるため、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
よって、電気集塵機の負圧状態を保持しつつ、排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができる。
【0011】
また、上記ダンパ装置において、固着防止制御手段は、前記誘引ファンの回転数を増減する可変速手段を更に備え、前記設定値に関わらず、前記可変速手段により前記誘引ファンの回転数を一時的に変化させ、前記回転羽根を強制的に揺動させてもよい。
これにより、誘引ファンの回転数を一時的に変化させることで、ボイラの負荷変動が生じるので、電気集塵機の入口の排ガス圧力を設定値に近づけるようにして回転羽根が揺動し、回転羽根の固着を防止する。よって、ボイラプラントの運転中であっても、回転羽根の固着を防止することができる。
【0012】
あるいは、上記ダンパ装置において、前記連結部材を2分割し、2分割した前記連結部材ごとに前記複数の回転羽根をブロック化して各連結部材の夫々に前記ドライブシャフトを設け、前記固着防止制御手段は、ブロックごとに前記回転羽根を揺動させてもよい。
これにより、ブロックごとに回転羽根を揺動させることができるので、例えば、一方のブロックの回転羽根が固着した場合に、他方のブロックの回転羽根を動作させつつ、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
【0013】
この場合、前記固着防止制御手段は、前記回転羽根の開度を保持しつつ前記複数の回転羽根を有する各ブロックの揺動角度を180°位相異ならせて前記回転羽根を揺動させてもよい。
これにより、回転羽根の開度を保持しつつ、回転羽根を揺動させることができるので、電気集塵機の負圧状態を保持して回転羽根の固着を防止することができる。
【0014】
上記ダンパ装置において、前記回転羽根の軸方向に直交する前記枠体の内壁と、前記回転羽根とのあいだに間隙を設けてもよい。
これにより、枠体の内壁と回転羽根とのあいだに付着物が入り込みにくくなるので、回転羽根の固着を抑制することができる。
【0015】
本発明に係るダンパ装置の制御方法は、電気集塵機のガス流れ下流側に設けられ、前記電気集塵機を経た排ガスの流量を調節して誘引ファンに導くダンパ装置の制御方法において、前記ダンパ装置は、前記排ガスが流通するガス流路を内側に形成する枠体と、前記枠体内に設けられ、前記ガス流路の開口形状に略一致するように列設する複数の回転羽根と、前記回転羽根を軸支して前記枠体間に架設され、前記複数の回転羽根を夫々揺動させる複数の回転軸と、前記枠体の外壁に設けられ、前記複数の回転軸の各端部を連結する連結部材と、前記連結部材の一端と接続し且つ前記複数の回転軸と隣接して前記枠体間に架設され、前記連結部材および前記回転軸を介して前記複数の回転羽根を同時に揺動させるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトを駆動するアクチュエータと、前記電気集塵機の入口での排ガス圧力を検出する排ガス圧力検出手段とを備え、前記電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、前記排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する自動圧力制御ステップと、前記自動圧力制御ステップを経ることなく、前記排ガス圧力の前記設定値に関わらず一時的に前記回転羽根を強制的に揺動させる固着防止制御ステップとを有することを特徴とする。
【0016】
このダンパ装置の制御方法では、電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御しているので、誘引ファンに導く排ガスの適切な流量を調節して、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。そのため、ボイラプラントが運転中の場合であっても、硫安物質や煤塵等を捕集する電気集塵機の内部点検等のメンテナンスを行うことができる。
また、電気集塵機の入口での排ガス圧力の設定値に関わらず一時的に回転羽根を強制的に揺動させることにより、硫安物質や煤塵等の付着物によって完全に固着する前に回転羽根を動かすことができる。そのため、付着物が回転羽根から取れやすくなるとともに、新たに付着物が回転羽根に固着することを防止することができる。さらに、電気集塵機の入口の排ガス圧力が設定値になるように自動圧力制御されているために、回転羽根は、強制的に揺動させた後にその動作が制御されるので、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
よって、電気集塵機の負圧状態を保持しつつ、排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御しているので、誘引ファンに導く排ガスの適切な流量を調節して、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。そのため、ボイラプラントが運転中の場合であっても、硫安物質や煤塵等を捕集する電気集塵機のメンテナンスを行うことができる。
また、電気集塵機の入口での排ガス圧力の設定値に関わらず一時的に回転羽根を強制的に揺動させることにより、硫安物質や煤塵等の付着物によって完全に固着する前に回転羽根を動かすことができる。そのため、付着物が回転羽根から取れやすくなるとともに、新たに付着物が回転羽根に固着することを防止することができる。さらに、電気集塵機の入口の排ガス圧力が設定値になるように自動圧力制御されているために、回転羽根は、強制的に揺動させた後にその動作が制御されるので、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
よって、電気集塵機の負圧状態を保持しつつ、排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係るダンパ装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】実施形態1に係るダンパ装置の構造を示す正面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】実施形態1における誘引ファン回転数増加時のダンパ装置制御の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施形態1における誘引ファン回転数減少時のダンパ装置制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施形態2に係るダンパ装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】実施形態2に係るダンパ装置の構造を示す正面図である。
【図8】図7のB−B矢視図である。
【図9】実施形態2における回転羽根の制御手順を示す概略図である。
【図10】実施形態2におけるダンパ装置のダンパ開度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るダンパ装置の一例を示す概略構成図である。図2は、ダンパ装置の構造を示す正面図であり、排ガスは紙面に対して垂直方向下向きに流れる。図3は、図2のA−A矢視図である。図4は、実施形態1における誘引ファン回転数増加時のダンパ装置制御の一例を示すフローチャートである。図5は、実施形態1における誘引ファン回転数減少時のダンパ装置制御の一例を示すフローチャートである。
【0021】
本発明のダンパ装置1が適用されるボイラプラントには、図1に示すように、ボイラ3からの排ガス中の煤塵等を除去する電気集塵機(EP)2と、電気集塵機2を経た排ガスを引き出し、煙突より大気に放出させる誘引ファン(誘引通風機)4と、電気集塵機2で捕集できない排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置5とが設置されている。誘引ファン4によって排ガスをボイラ3から誘引することにより、ボイラ3内部は負圧に保ちながら運転される。
また、誘引ファン4の入口には、排ガスの流量を調節するダンパ装置1が設置されている。ボイラ3内部の排ガス圧力は、誘引ファン4の入口に設けられるダンパ装置1を制御することによって調節される。ダンパ装置1の開度を制御して排ガス圧力を負圧にすることで、排ガスが外部へ流出することを防止している。
【0022】
ダンパ装置1は、図1に示すように、電気集塵機2のガス流れ下流側に設けられ、電気集塵機2を経た排ガスの流量を調節して誘引ファン4に導くものであり、主として、枠体8と、回転羽根10と、複数の回転軸12と、連結部材14と、ドライブシャフト16と、アクチュエータ18と、排ガス圧力検出手段20と、自動圧力制御手段22と、固着防止制御手段24とにより構成される。
【0023】
枠体8は、排ガスが流通するガス流路6を内側に形成する。図1では、ガス流路6が二又に分岐する枠体8を示しているが、これに限定されず、例えば、ガス流路6を分岐させなくてもよい。
【0024】
回転羽根10は、図1および図2に示すように、枠体8内に複数設けられ、ガス流路6の開口形状に略一致するように列設する。
なお、図2に示すように、回転羽根10の軸方向に直交する枠体8の内壁と、回転羽根10とのあいだに間隙11を設けてもよい。
これにより、枠体8の内壁と回転羽根10とのあいだに付着物が入り込みにくくなるので、回転羽根10の固着を抑制することができる。
【0025】
回転軸12は、図1および図2に示すように、回転羽根10を軸支して枠体8間に架設され、複数の回転羽根10を夫々揺動させるために複数設けられる。
連結部材14は、図2および図3に示すように、枠体8の外壁に設けられ、複数の回転軸10の各端部を連結する。
ドライブシャフト16は、連結部材14の一端と接続し且つ複数の回転軸12と隣接して枠体8間に架設され、連結部材14および回転軸12を介して複数の回転羽根10を同時に揺動させる。ドライブシャフト16の回転角度は、図3に示すように、90°であり、連結部材14および回転軸12を介して複数の回転羽根を90°の範囲で揺動させる。
【0026】
アクチュエータ18は、図1に示すように、ドライブシャフトを駆動する。アクチュエータ18としては、例えば、角度調整器を用いてもよい。
排ガス圧力検出手段20は、電気集塵機2の入口での排ガス圧力を検出する。
【0027】
自動圧力制御手段22は、図1に示すように、電気集塵機2の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、排ガス圧力検出手段20の検出結果に基づいてアクチュエータ18の動作を制御する。電気集塵機2の入口の排ガス圧力の設定値とは、電気集塵機内部の排ガス圧力が負圧状態となる値である。
固着防止制御手段24は、自動圧力制御手段22を介さずに、排ガス圧力の設定値に関わらず一時的に回転羽根10を強制的に揺動させる。
自動圧力制御手段22および固着防止制御手段24は、制御システム26に設けられており、それぞれ回転羽根10を揺動させるために制御指令値を出力する。
【0028】
固着防止制御手段24は、誘引ファン4の回転数を増減する可変速機構30を更に備え、電気集塵機2の入口の排ガス圧力の設定値に関わらず、可変速機構30により誘引ファン4の回転数を一時的に変化させ、回転羽根10を強制的に揺動させてもよい。
可変速機構30は、特に限定されないが、例えば、インバータ装置のような可変電圧可変周波数制御(VVVF)であってもよいし、流体継手や多段クラッチ変速機等を用いてもよい。
【0029】
本実施形態において、自動圧力制御手段22によって、回転羽根10は電気集塵機2の入口の排ガス圧力を設定値に近づけるように揺動する。これを応用し、可変速機構30を誘引ファン4に設置し、誘引ファン4の回転数を強制的に変化させることで電気集塵機2の入口の排ガス圧力を変動させ、その変動を自動圧力制御手段22によって制御することで、回転羽根10を強制的に揺動させる。
【0030】
具体的には、図4に示すように、まず、可変速機構30(例えば、流体継手)の回転数を増加させる(ステップ1)。可変速機構30は、図1に示すように、固着防止制御手段24からの制御指令値により作動するモータ32によって駆動する。
可変速機構30の回転数を増加させると、誘引ファン4の回転数も増加するので、誘引される排ガス流量が増加する(ステップ2)。誘引される排ガス流量が増加すると、電気集塵機2の入口の排ガス圧力が低下し(ステップ3)、誘引ファン4の上流に設けられた回転羽根10がガス流路6を塞ぐ方向(ダンパ開度閉方向)に作動する(ステップ4)。ダンパ開度閉方向に作動すると、誘引される排ガス流量が減少し(ステップ5)、電気集塵機2の入口の排ガス圧力が上昇して設定値に戻る(ステップ6)。
【0031】
なお、可変速機構30を用いたこれらの動作は、例えば、ある時間に定期的に行ってもよいし、付着物の付着状況をダクトに設置した窓からカメラや超音波センサ等で観察し、ある閾値を超えたときに行ってもよい。
【0032】
また、可変速機構30の回転数を減少させる場合について、図5を用いて説明する。まず、可変速機構30の回転数を減少させる(ステップ11)と、誘引ファン4の回転数も減少するので、誘引される排ガス流量が減少する(ステップ12)。誘引される排ガス流量が減少すると、電気集塵機2の入口の排ガス圧力が上昇し(ステップ13)し、誘引ファン4の上流に設けられた回転羽根10がガス流路6を開放する方向(ダンパ開度開方向)に作動する(ステップ14)。ダンパ開度開方向に作動すると、誘引される排ガス流量が増加し(ステップ5)、電気集塵機2の入口の排ガス圧力が低下して設定値に戻る(ステップ6)。
【0033】
このように、誘引ファン4の回転数を一時的に変化させることで、ボイラ3の負荷変動が生じるので、電気集塵機2の入口の排ガス圧力を設定値に近づけるようにして回転羽根10が揺動し、回転羽根10の固着を防止する。よって、ボイラプラントの運転中であっても、回転羽根10の固着を防止することができる。
【0034】
上記構成のダンパ装置の制御方法では、電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいてアクチュエータの動作を制御しているので、誘引ファンに導く排ガスの適切な流量を調節して、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。そのため、ボイラプラントが運転中の場合であっても、硫安物質や煤塵等を捕集する電気集塵機のメンテナンスを行うことができる。
また、電気集塵機の入口での排ガス圧力の設定値に関わらず一時的に回転羽根を強制的に揺動させることにより、硫安物質や煤塵等の付着物によって完全に固着する前に回転羽根を動かすことができる。そのため、付着物が回転羽根から取れやすくなるとともに、新たに付着物が回転羽根に固着することを防止することができる。さらに、電気集塵機の入口の排ガス圧力が設定値になるように自動圧力制御されているために、回転羽根は、強制的に揺動させた後にその動作が制御されるので、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
よって、電気集塵機の負圧状態を保持しつつ、排ガスに含まれる付着物による回転羽根の固着を容易に防止することができる。
【0035】
[実施形態2]
次に、実施形態2のダンパ装置の制御について説明する。
実施形態2では、連結部材14の構成と固着防止制御手段24が異なる点を除けば、実施形態1で説明したダンパ装置1と同一の構成であるので、その詳細な説明を省略する。
【0036】
図6は、実施形態2に係るダンパ装置の一例を示す概略構成図である。図7は、ダンパ装置の構造を示す正面図であり、排ガスは紙面に対して垂直方向下向きに流れる。図8は、図7のB−B矢視図である。図9は、実施形態2における回転羽根の制御手順を示す概略図である。図10は、実施形態2におけるダンパ装置のダンパ開度を示すグラフである。
【0037】
本実施形態のダンパ装置1では、図6に示すように、連結部材14を2分割した連結部材14A、14Bを備える。また、図7および図8に示すように、2分割した連結部材14A、14Bごとに、複数の回転羽根10(10A、10B)および回転軸12(12A、12B)をブロック化して、各連結部材14A、14Bの夫々にドライブシャフト16A、16Bを設けている。
これにより、ブロックごとに回転羽根10(10A、10B)を揺動させることができるので、例えば、一方のブロックの回転羽根10Aが固着した場合に、他方のブロックの回転羽根10Bを動作させつつ、電気集塵機の負圧状態を保持することができる。
【0038】
固着防止制御手段24は、図9および図10に示すように、回転羽根10の開度を保持しつつ複数の回転羽根10A、10Bを有する各ブロックの揺動角度を180°位相異ならせて回転羽根10A、10Bを揺動させてもよい。
例えば、ダンパ開度50%とした場合、図9(a)に示すように、角度45°の状態から回転羽根10Aを反時計回り、回転羽根10Bを時計回りに揺動させる。その後、図9(b)に示すように、回転羽根10Aを全開状態、回転羽根10Bを全閉状態にしてダンパ開度50%を保持する。
次に、図9(b)の状態から、図9(c)に示すように、ダンパ開度50%を保持しながら回転羽根10Aを時計回り、回転羽根10Bを反時計回りに揺動させる。その後、図9(d)に示すように、回転羽根10Aを全閉状態、回転羽根10Bを全開状態にして、図9(a)の状態へ戻る。
【0039】
回転羽根10Aおよび回転羽根10Bのダンパ開度は、図10に示すように、固着防止制御手段24によって、180°位相の異なる正弦波を適用している。例えば、回転羽根10Aのダンパ開度が100%の場合(曲線(I))、回転羽根10Bのダンパ開度は0%(曲線(II))となる。また、回転羽根10Aのダンパ開度が0%の場合、回転羽根10Bのダンパ開度は100%となる。このように、回転羽根10全体のダンパ開度(曲線(III))が常に50%になるように保持することが好ましい。
【0040】
なお、図9(a)〜(d)の動作は、例えば、ある時間に定期的に行ってもよいし、付着物の付着状況をダクトに設置した窓からカメラや超音波センサ等で観察し、ある閾値を超えたときに行ってもよい。
【0041】
このようにして回転羽根10A、10Bを揺動させることにより、回転羽根10の開度を保持しつつ、回転羽根10を揺動させることができるので、電気集塵機2の負圧状態を一定に保持して回転羽根10の固着を防止することができる。また、回転羽根10を揺動させている間も電気集塵機2の負圧状態を保持し続けることができるので、ボイラプラントに負荷をかけることなく運転することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ダンパ装置
2 電気集塵機(EP)
3 ボイラ
4 誘引ファン(誘引通風機)
5 脱硫装置
6 ガス流路
8 枠体
10 回転羽根
11 間隙
12 回転軸
14 連結部材
16 ドライブシャフト
18 アクチュエータ
20 排ガス圧力検出手段
22 自動圧力制御手段
24 固着防止制御手段
26 制御システム
30 可変速機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気集塵機のガス流れ下流側に設けられ、前記電気集塵機を経た排ガスの流量を調節して誘引ファンに導くダンパ装置において、
前記排ガスが流通するガス流路を内側に形成する枠体と、
前記枠体内に設けられ、前記ガス流路の開口形状に略一致するように列設する複数の回転羽根と、
前記回転羽根を軸支して前記枠体間に架設され、前記複数の回転羽根を夫々揺動させる複数の回転軸と、
前記枠体の外壁に設けられ、前記複数の回転軸の各端部を連結する連結部材と、
前記連結部材の一端と接続し且つ前記複数の回転軸と隣接して前記枠体間に架設され、前記連結部材および前記回転軸を介して前記複数の回転羽根を同時に揺動させるドライブシャフトと、
前記ドライブシャフトを駆動するアクチュエータと、
前記電気集塵機の入口での排ガス圧力を検出する排ガス圧力検出手段と、
前記電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、前記排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する自動圧力制御手段と、
前記自動圧力制御手段を介さずに、前記排ガス圧力の前記設定値に関わらず一時的に前記回転羽根を強制的に揺動させる固着防止制御手段とを備えることを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
固着防止制御手段は、前記誘引ファンの回転数を増減する可変速手段を更に備え、前記設定値に関わらず、前記可変速手段により前記誘引ファンの回転数を一時的に変化させ、前記回転羽根を強制的に揺動させることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記連結部材を2分割し、2分割した前記連結部材ごとに前記複数の回転羽根をブロック化して各連結部材の夫々に前記ドライブシャフトを設け、前記固着防止制御手段は、ブロックごとに前記回転羽根を揺動させることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記固着防止制御手段は、前記回転羽根の開度を保持しつつ前記複数の回転羽根を有する各ブロックの揺動角度を180°位相異ならせて前記回転羽根を揺動させることを特徴とする請求項3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記回転羽根の軸方向に直交する前記枠体の内壁と、前記回転羽根とのあいだに間隙を設けることを特徴とする請求項1乃至4に記載のダンパ装置。
【請求項6】
電気集塵機のガス流れ下流側に設けられ、前記電気集塵機を経た排ガスの流量を調節して誘引ファンに導くダンパ装置の制御方法において、
前記ダンパ装置は、前記排ガスが流通するガス流路を内側に形成する枠体と、前記枠体内に設けられ、前記ガス流路の開口形状に略一致するように列設する複数の回転羽根と、前記回転羽根を軸支して前記枠体間に架設され、前記複数の回転羽根を夫々揺動させる複数の回転軸と、前記枠体の外壁に設けられ、前記複数の回転軸の各端部を連結する連結部材と、前記連結部材の一端と接続し且つ前記複数の回転軸と隣接して前記枠体間に架設され、前記連結部材および前記回転軸を介して前記複数の回転羽根を同時に揺動させるドライブシャフトと、前記ドライブシャフトを駆動するアクチュエータと、前記電気集塵機の入口での排ガス圧力を検出する排ガス圧力検出手段とを備え、
前記電気集塵機の入口の排ガス圧力が予め定めた設定値になるように、前記排ガス圧力検出手段の検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する自動圧力制御ステップと、
前記自動圧力制御ステップを経ることなく、前記排ガス圧力の前記設定値に関わらず一時的に前記回転羽根を強制的に揺動させる固着防止制御ステップとを有することを特徴とするダンパ装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−242064(P2011−242064A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114843(P2010−114843)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】