説明

チアゾリジノンアミド、チアゾリジンカルボン酸アミド、その製造方法、およびその使用方法

化学式(I)および(II)の置換チアゾリジノンカルボン酸アミドならびに置換チアゾリジンカルボン酸アミド(各種置換基は本明細書で規定した通りである)を開示する。また、これらの化合物を製造する方法、これらの化合物を含む薬学的組成物、およびそれらの使用、特に癌を治療または予防するための使用も開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規チアゾリジノン、新規チアゾリジンカルボン酸アミド、これらの化合物の製造方法、ならびにそれらの使用、特に、前立腺癌、乳癌、および卵巣癌を含むがそれらに限定されない様々な癌を治療するためのものに関する。なお、本発明は、2003年11月18日に出願された米国特許仮出願第60/523,079号の優先権の恩典を主張する。この仮出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。この出願は、少なくとも一部は、米国国防総省からDAMD 17-01-1-0830の助成金の下、受理した資金を用いて行ったものである。米国政府は本発明について一定の権利を保持しうる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
前立腺癌は、合衆国における男性の中で新たに悪性腫瘍と診断されるものの33%を占める(米国癌学会(American Cancer Society): Cancer Facts and Figures (2003))。米国癌学会によれば、推定230,110人の男性が2004年に前立腺癌と診断され、29,900人の男性が前立腺癌で死亡すると考えられる(米国癌学会: Cancer Facts and Figures (2004))。前立腺癌の罹患率は世界中で様々であり、合衆国、カナダ、およびスカンジアナビアで最も高く、中国およびアジアの他の箇所では最も低い(Quinn and Babb, “Patterns and Trends in Prostate Cancer Incidence, Survival, Prevalence and Mortality. Part: International Comparisons,”BJU Int. 90:162-173(2002); Gronberg, “Prostate Cancer Epidemiology,”Lancet 361:859-864(2003))。これらの差は、遺伝的感受性、未知の外部危険因子への曝露、医療および癌登録の差、またはこれらの因子の組み合わせによるものである。
【0003】
前立腺癌は多発性であり、癌性の腺は複数の独立した病巣を含むことが一般に観察されており、疾患の不均一性が示唆される(Foster et al.,“Cellular and Molecular Pathology of Prostate Cancer Precursors,”Scand. J. Urol. Nephrol. 205:19-43(2000))。前立腺の病的増殖の一因である決定因子はよくわかっていないが、ステロイドアンドロゲンおよびペプチド成長因子が関連している(Agus et al.,“Prostate Cancer Cell Cycle Regulators: Response to Androgen Withdrawal and Development of Androgen Independence,”J. Natl. Cancer. Inst. 91:1869-1876(1999); Djakiew, “Dysregulated Expression of Growth Factors and Their Receptors in the Development of Prostate Cancer,”Prostate 42: 150-160(2000))。癌が前立腺に限定されている限り、外科的処置または放射線療法によりうまく制御することができるが、転移性疾患では、リンパ節転移または播種性部位の場合の主力治療法であるアンドロゲン除去を超える選択肢はほとんどない。(Frydenberg et al., “Prostate Cancer Diagnosis and Management,”Lancet 349: 1681-1687(1997)。いったん、腫瘍細胞がホルモン抵抗性になると、標準の細胞毒性薬はかろうじて疾患の進行を遅くするのに有効であるにすぎないが、ある程度の緩和的な救済を提供する。現在の化学療法レジメンは、典型的には2またはそれ以上の薬剤であるが、ほんの20〜30%の範囲の奏功率しか可能ではない(Beedassy et al.,“Chemotherapy in Advanced Prostate Cancer,”Sem. Oncol. 26:428-438(1999); Raghavan et al., “Evolving Strategies of Cytotoxic Chemotherapy for Advanced Prostate Cancer,”Eur. J. Cancer 33:566-574(1997))。
【0004】
前立腺癌に対する1つの有望な薬物開発戦略は、成長因子および癌細胞のシグナル伝達経路に関与する他の分子を阻害する薬剤を識別し、試験することを含む。Gタンパク質結合受容体(GPCR)は、リゾリン脂質(LPL)の結合により開始される前立腺癌の増殖および生存に関与する膜結合タンパク質のファミリーである(Raj et al., “Guanosine Phosphate Binding Protein Coupled Receptors in Prostate Cancer: A Review,”J. Urol. 167:1458-1463(2002); Kue et al., “Essential Role for G Proteins in Prostate Cancer Cell Growth and Signaling,” J. Urol. 164:2162-2167(2000); Guo et al., “Mitogenic Signaling in Androgen Sensitive and Insensitive Prostate Cancer Cell Lines,” J. Urol. 163:1027-1032(2000); Barki-Harrington et al., “Bradykinin Induced Mitogenesis of Androgen Independent Prostate Cancer Cells,” J. Urol. 165:2121-2125(2001))。インビボでの増殖および転移の調節におけるGタンパク質依存経路の重要性は、マウスのアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞の増殖がGi/oタンパク質の阻害剤である百日咳毒素を用いた治療により弱められるという観察により確認される(Bex et al., “Influence of Pertussis Toxin on Local Progression and Metastasis After Orthotopic Implantation of the Human Prostate Cancer Cell Line PC3 in Nude Mice,”Prostate Cancer Prostatic Dis. 2:36-40(1999))。リゾホスファチジン酸(LPA)およびスフィンゴシン一リン酸(S1P)はGPCRシグナル伝達を刺激することが知られている膜リン脂質の調節された分解を介して生成される脂質メディエータである。
【0005】
LPLは、LPL受容体と総称されるEdg遺伝子ファミリーによりコードされるGPCRに結合し、様々な生物学的効果を与える。LPAはホスホリパーゼD活性およびPC-3前立腺細胞増殖を刺激する(Qi et al., “Lysophosphatidic Acid Stimulates Phospholipase D Activity and Cell Proliferation in PC-3 Human Prostate Cancer Cells,”J. Cell. Physiol. 174:261-272(1998))。さらに、以前の研究で、LPAが前立腺癌細胞において分裂促進的であること、PC-3およびDU-145がLPA1、LPA2、およびLPA3受容体を発現することが示されている(Daaka、“Mitogenic Action of LPA in Prostate,”Biochim. Biophys. Acta. 1582:265-269(2002))。進行前立腺癌はLPL受容体を発現し、増殖およびアンドロゲン非依存性への進行のためのホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達に依存する(Kue and Daaka, “Essential Role for G Proteins in Prostate Cancer Cell Growth and Signaling,”J. Urol. 164:2162-2167(2000))。このように、これらの経路は、癌治療に対する最も有望な新規アプローチの1つとして広く見なされており(Vivanco et al., “The Phosphatidylinositol 3-Kinase AKT Pathway in Human Cancer,”Nat. Rev. Cancer 2:489-501(2002))、進行性のアンドロゲン抵抗性前立腺癌の治療に対するとりわけ新規なアプローチを提供する。このアプローチの展望にかかわらず、LPAまたはPI3Kシグナル伝達を選択的に利用または阻害する臨床的に有効な治療は存在しない。
【0006】
本発明は、従来技術におけるこれらのおよび他の欠陥を克服することを対象とする。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明の第1の局面は、化学式(I)および(II)の化合物に関する:

式中、
X1およびX2はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素とすることができ;
X3およびX4はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素または硫黄とすることができ;
lは1〜12の整数であり;
R1は、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、あるいは

または-(CH2)m-Y1の群より選択され、ここで、mは0〜10の整数であり、Y1は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R2は、水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-であり、ここで、炭化水素基は脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、あるいは

または-(CH2)n-Y2であり、ここで、nは0〜10の整数であり、Y2は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R3は、水素、または脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素であり;
R4は任意であり、あるいは、水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アシル、アセチル、またはメシルとすることができ;
R5、R6、R7、R8、R9、R11、R12、R13、R14、およびR15は、水素、ヒドロキシル、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、アリールアミド、アリール、C5〜C7シクロアルキル、アリールアルキルの群より独立して選択され;
R10は、H(Z)N-、H(Z)N-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-カルボニル-炭化水素-、炭化水素-カルボニル-炭化水素-、H(Z)N-フェニル-、H(Z)N-フェニルアルキル-、H(Z)N-フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-、またはフェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-であり、ここで、各炭化水素は、独立して、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10基であり、ここで、各アルキルはC1〜C10アルキルであり;
Zは独立して水素またはt-ブトキシカルボニルである。
【0008】
本発明の第2の局面は、薬学的に許容される担体と本発明の第1の局面による化合物とを含む薬学的組成物に関する。
【0009】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面による化合物を提供する段階と、接触した癌細胞を破壊するのに有効な条件下で癌細胞を化合物と接触させる段階とを含む、癌細胞を破壊する方法に関する。
【0010】
本発明の第4の局面は、本発明の第1の局面による化合物を提供する段階と、癌状態を治療または予防するのに有効な様式で一定量の化合物を患者に投与する段階を含む、癌状態を治療または予防する方法に関する。
【0011】
本発明の第5の局面は、化学式(I)の化合物を形成させるのに有効な条件下で、化学式(III)の中間体

(式中、l、R1、X3、およびX4は上記で規定した通りである)を、(i)化学式(HNR2R3)の適した一級または二級アミン(式中、R2およびR3は上記で規定した通りである)、または(ii)R2-H含有化合物の存在下のアンモニアのいずれかと反応させる段階を含む、化学式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0012】
本発明の第6の局面は、化学式(II)の化合物を形成させるのに有効な条件下で、化学式(IV)の中間体

(式中、R1およびX3は上記で規定した通りである)を、化学式(HNR2R3)の一級または二級アミン(式中、R2およびR3は上記で規定した通りである)と反応させる段階を含む、化学式(II)の化合物の製造方法に関する。
【0013】
本発明の第7の局面は、化学式(III)および化学式(IV)の中間化合物に関する。
【0014】
本発明により、前立腺癌細胞増殖の阻害に有益であることが公知の、以前に識別された癌治療法に比べ著しい改善が得られる。以前の報告では、細胞毒性化合物は、5つの前立腺癌細胞系において、LPAにおけるグリセロールバックボーンをセリンアミドで置換することにより得られることが示されている(Gududuru et al.,“Synthesis and Biological Evaluation of Novel Cytotoxic Phospholipids for Prostate Cancer,”Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:4919-4923(2004)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。Gududuruら(上記に引用)において報告された最も強力な化合物は、非選択性であり、前立腺癌細胞系および対照細胞系の両方を強力に殺した。本発明は、同様の、さらに改善された効力を有するが、より重要なことに、特に前立腺癌細胞に対し選択性が改善された化合物を提供する。本発明の化合物は、前立腺癌細胞および卵巣癌細胞に対し効果的であることがわかっている。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の1つの局面は、下記化学式(I)および(II)の化合物に関する:

式中、
X1およびX2はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素とすることができ;
X3およびX4はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素または硫黄とすることができ;
lは1〜12の整数であり;
R1は、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、あるいは

または-(CH2)m-Y1の群より選択され、ここで、mは0〜10の整数であり、Y1は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R2は、水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-であり、ここで、炭化水素基は脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、あるいは

または-(CH2)n-Y2であり、ここで、nは0〜10の整数であり、Y2は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R3は、水素、または脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素であり;
R4は任意であり、または水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アシル、アセチル、またはメシルとすることができ;
R5、R6、R7、R8、R9、R11、R12、R13、R14、およびR15は、水素、ヒドロキシル、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、アリールアミド、アリール、C5〜C7シクロアルキル、アリールアルキルの群より独立して選択され;
R10は、H(Z)N-、H(Z)N-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-カルボニル-炭化水素-、炭化水素-カルボニル-炭化水素-、H(Z)N-フェニル-、H(Z)N-フェニルアルキル-、H(Z)N-フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-、またはフェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-であり、ここで、各炭化水素は、独立して、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10基であり、ここで、各アルキルはC1〜C10アルキルであり;
Zは独立して水素またはt-ブトキシカルボニルである。
【0016】
本明細書で使用されるように、「脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素」は、炭素が一本鎖または分枝鎖で存在するかどうかに関係なく、1つの炭素および規定した上限までの炭素を含むアルキレン基と、2〜上限までの炭素を含むアルケニル基およびアルキニル基の両方を指す。特に記載がなければ、炭化水素は、約30までの炭素、または約20までの炭素、または約10までの炭素を含むことができる。
【0017】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、特に記載がなければ、約30までの炭素を含む任意の直鎖または分枝鎖アルキル基でありうる。アルキル基は単独の構成要素であってもよく、または、例えば、アルコキシ、アリールアルキル、アルキルアミノなどの、より大きな構成要素の成分であってもよい。
【0018】
本明細書で使用されるように、「飽和または不飽和環状炭化水素」は任意のそのような環状炭化水素とすることができ、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフチル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロジエニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。「飽和または不飽和N-複素環」は任意のそのようなN-含有複素環とすることができ、アザ-およびジアザ-シクロアルキル、例えばアジリジニル、アゼチジニル、ジアザチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、およびアゾカニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、ピロリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、キノリジニル、シンノリニル、キナロリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。「飽和または不飽和O-複素環」は任意のそのようなO-含有複素環とすることができ、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキサニル、フラニル、ピリリウム、ベンゾフラニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。「飽和または不飽和S-複素環」は任意のそのようなS-含有複素環とすることができ、チラニル、チエタニル、テトラヒドロチオフェニル、ジチオラニル、テトラヒドロチオピラニル、チオフェニル、チエピニル、チアナフテニルなどが挙げられるが、それらに限定されない。「飽和または不飽和混合複素環」は2またはそれ以上のS-、N-、またはO-ヘテロ原子を含む任意の複素環とすることができ、オキサチオラニル、モルホリニル、チオキサニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアジオリルなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0019】
好ましいR1基としては、ベンジル、フラニル、インドリル、ピリジニル、フェニル、または置換フェニル(上記で規定したようなR5〜R9を有する)が挙げられる。
【0020】
好ましいR2基としては、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、フェニル、フェニルアルキル、上記で規定したようなR11〜R15を有する置換フェニルおよび置換フェニルアルキルが挙げられる。好ましい脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖炭化水素はC8〜C24炭化水素であり、C10〜C20アルキル、より好ましくはC14〜C18アルキルが挙げられる。
【0021】
好ましいR3基としては、水素およびC1〜C10アルキルが挙げられる。
【0022】
好ましいR4基としては、水素、アシル、アセチル、およびメシルが挙げられる。
【0023】
好ましいR10基はポリアミンである。
【0024】
整数lは好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、1〜6、または1〜4である。整数mは好ましくは0〜8、0〜6、0〜4、または0〜2である。整数nは好ましくは0〜8、0〜6、0〜4、または0〜2である。
【0025】
化学式(I)の例示的な化合物としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物65)、N-デシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物66)、N-テトラデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物67)、N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物68)、N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-ビフェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物69)、2-(2-(1-(ジメチルアミノ)ナフタレン-4-イル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド(化合物70)、2-(2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド(化合物71)、2-(2-(2,6-ジクロロフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド(化合物72)、N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホキシド-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物80)、N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホニル-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物81)、N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物73)、N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)エタンチオアミド、N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物74)、N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物75)、N-(2,4-ジメトキシフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物76)、N-(ナフタレン-1-イル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物77)、3-(2-(オクタデシルアミノ)エチル)-2-フェニルチアゾリジン-4-オン(化合物79)、N-(2-(2-フェニルチアゾリジン-3-イル)エチル)オクタデカン-1-アミン、およびそれらの塩。
【0026】
化学式(I)の好ましい化合物としては、化合物68、71、80、および81が挙げられる。
【0027】
化学式(II)の例示的な化合物としては、下記が挙げられるが、それらに限定されない:(4R)-2-(4-メトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物15);(4R)-2-(4-エトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド;N-オクタデシル-2-フェニルチアゾール-4-カルボキサミド(化合物34);(4R)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物23);(4R)-2-(4-シアノフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物22);(4R)-N-オクタデシル-N-メシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物29);(4R)-N-オクタデシル-N-アセチル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物28);(4R)-N-ヘプチル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物3);(4R)-N-オクタデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物5、R-異性体);(4S)-N-オクタデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物5、S-異性体);(4R)-N-テトラデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド塩酸塩(化合物4);(4R)-N-オクタデシル-2-ビフェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物27);(4R)-2-ドデシル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物7);(4R)-N-オクタデシル-2-(ピリジン-3-イル)チアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物11);2-(フラン-3-イル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物12);(4R)-N-ノナデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物6);(4R)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド;2-(3-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物14);(4R)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド;2-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物16);2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物17);2-(4-アセトアミドフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物18);(4R)-2-(4-フルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物19);(4R)-2-(2,6-ジクロロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物24);(4R)-2-(4-ブロモフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物20);(4R)-N-オクタデシル-2-p-トリルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物26);(4R)-2-シクロヘキシル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物8);2-(4-ニトロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物21);(4R)-2-(4-(ジメチルアミノ)フェニル))-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物13);(4R)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物10);(4R)-2-ベンジル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物9);(4R)-2-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド(化合物25);(4R)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N,N-ジオクチルチアゾリジン-4-カルボキサミド;およびそれらの塩。
【0028】
化学式(II)の好ましい化合物としては、化合物5(R-異性体)、13、14、16、17、18、19、25、および26が挙げられる。
【0029】
本発明の化合物とそれらの中間体は、市販の反応物質または容易に合成される反応物質を用いて合成することができる。
【0030】
例として、化学式(I)の化合物は、図6で示したスキーム4に従い合成することができる。1つのアプローチによれば、下記化学式(III)の中間酸

(式中、l、R1、X3、およびX4は上記で規定した通りである)を、EDC/HOBtの存在下、標準条件下で、適当なアミンと反応させる。中間酸は、最初に、メルカプト酢酸、グリシンメチルエステル、および芳香族アルデヒドを1ポット反応で縮合させ、その後エステルを塩基性加水分解することにより調製することができる(Holmes et al., “Strategies for Combinatorial Organic Synthesis: Solution and Polymer-Supported Synthesis of 4-Thiazolidinones and 4-Metathiazanones Derived from Amino Acids,”J. Org. Chem. 60:7328-7333(1995)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。グリシンメチルエステルをより長い炭素バックボーンを含む類似体で置換することにより、lが1より大きい(すなわち、メチレンより長いアルキレン基を含む)、化学式(III)、最終的には化学式(I)の化合物の調製が可能となる。第2のアプローチによれば、化学式(I)のチアゾリジノンアミドは単純な直接法により調製することもでき(Schuemacher et al., “Condensation Between Isocyanates and Carboxylic Acids in the Presence of 4-Dimethylaminopyridine(DMAP), a Mild and Efficient Synthesis of Amides,”Synthesis 22:243-246(2001)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、この方法には、中間酸と所望のイソシアナートとの、触媒量のDMAPの存在下での反応が含まれる(図7)(スキーム5)。
【0031】
チアゾリジノン化合物は、例えば、還流条件下、BH3・THFを用いた完全還元により、カルボニルまたはスルホキシド基X3およびX4を除去することにより(図8)(スキーム6c)、ならびにスキーム6aおよび6bに示されるように、H2O2およびKMnO4を使用して化合物を酸化し、それぞれ、スルホキシドまたはスルホンを得ることにより、さらに修飾することができる。
【0032】
また、例として、化学式(II)の化合物は、化学式(IV)の中間酸

(式中、化合物(IV)はR-またはS-立体異性体のいずれかとすることができ、R1およびX3は上記で規定した通りである)を、EDC/HOBtの存在下、標準の条件下で、適当なアミンと反応させることにより調製することができる。中間酸は、L-システインと所望のアルデヒドとの、報告された条件下での反応を介して調製することができる(Seki et al., “A Novel Synthesis of (+)-Biotin from L-Cysteine,”J. Org. Chem. 67:5527-5536(2002)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0033】
本発明の化合物はまた、ポリマー複合体を含むように修飾することができる。適したポリマー複合体としては、ポリ(アルキル)アミン、ポリ(アルコキシ)アミン、ポリアミンなどが挙げられるが、それらに限定されない。ポリアミン含有化合物は多くの生物学的活性を示すことも周知であり、化学療法薬として使用されている。例示的な複合体としては、プトレシン、スペルミジン、およびスペルミンのような天然のポリアミン、ならびに合成ポリアミンを含むものが挙げられる。
【0034】
1つのアプローチによれば、本発明の化合物は、中間酸またはそのニトロフェニル誘導体をポリアミンNH2-R2と反応させることによりポリアミンに結合させることができ、ここで、R2はR10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-であり、R10およびZは上記で規定した通りである。例示的な合成スキームを図9に示す。
【0035】
化合物はまた、塩、好ましくは薬学的に許容される塩の形態とすることができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、遊離塩基または遊離酸の生物学的有効性および特性を保持するそれらの塩を示し、生物学的、非生物学的は別にして、望ましいものである。塩は例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、オキシル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステインなどの有機酸と共に形成される。別の塩も当業者には公知であり、本発明に従う使用のために容易に適合させることができる。
【0036】
本発明の化合物は、実質的に等量の立体異性体を含む、ラセミ混合物の形態で存在することができる。別の態様では、本発明の化合物は、公知の手順を用いて、調製またはそうでなければ単離することができ、実質的に対応する立体異性体を含まない(すなわち、実質的に純粋)立体異性体を得ることができる。実質的に純粋とは、異性体が少なくとも約95%純粋、より好ましくは少なくとも約98%純粋、最も好ましくは少なくとも約99%純粋であることを意図する。
【0037】
本発明の別の局面は、1または複数の上記本発明の化合物を含む薬学的組成物に関する。典型的には、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、任意の適したアジュバント、担体、賦形剤、または安定化剤を指し、固体または液体形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、またはエマルジョンとすることができる。
【0038】
典型的には、組成物は約0.01〜99%、好ましくは約20〜75%の活性化合物を、アジュバント、担体および/または賦形剤と共に含む。例えば、噴霧または乾燥粉末形態の本発明の化合物の小粒子を含むエアロゾル噴霧により、粘膜への塗布が達成される。
【0039】
固体単位剤形は従来の型とすることができる。固体形態は、カプセルなど、例えば本発明の化合物と、担体、例えば潤滑剤および不活性フィラー、例えば乳糖、ショ糖、またはトウモロコシデンプンとを含む普通のゼラチン型とすることができる。別の態様では、これらの化合物を従来の錠剤基剤、例えば、乳糖、ショ糖またはトウモロコシデンプンと共に、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、またはゼラチンのような結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはアルギン酸などの崩壊剤、およびステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤と組み合わせて錠剤化させる。
【0040】
錠剤、カプセルなどはまた、下記を含むことができる:トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびショ糖、乳糖、またはサッカリンなどの甘味剤。単位剤形がカプセルである場合、上記型の材料の他に、脂肪油などの液体担体を含むことができる。
【0041】
様々な他の材料がコーティングとして、または用量単位の物理形態を修飾するために存在ししてもよい。例えば、錠剤はシェラック、糖、またはその両方でコートすることができる。シロップは、活性成分の他に、甘味剤としてショ糖、保存薬としてメチルおよびプロピルパラベン、着色料、ならびにチェリーまたはオレンジ風味などの香味剤を含むことができる。
【0042】
経口治療投与のために、これらの活性化合物を賦形剤と共に組み入れることができ、錠剤、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップなどの形態で使用することができる。そのような組成物および調製物は少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。これらの組成物中の化合物の割合は、もちろん、変動させることができ、単位重量の約2%〜約60%の間とすることができると好都合である。そのような治療的に有益な組成物中の活性化合物の量は、適した用量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物は、経口用量単位が約1mg〜800mgの間の活性化合物を含むように調製される。
【0043】
本発明の活性化合物は、不活性希釈剤と共に、または吸収可能な可食担体と共に、経口投与してもよく、またはハードシェルカプセルもしくはソフトシェルカプセルに封入することができ、または圧縮して錠剤にすることができ、または直接食事の食物と一緒にすることができる。
【0044】
注射用に適した薬学的形態としては、滅菌水溶液または懸濁液、滅菌注射溶液または懸濁液の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は滅菌されてなければならず、容易に注入できる程度まで流動性がなければならない。製造および貯蔵条件下で安定であるべきであり、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に抵抗するように保存されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、適したそれらの混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒質とすることができる。
【0045】
本発明の化合物または薬学的組成物はまた、薬学的アジュバント、担体または賦形剤と共に生理学的に許容される希釈剤中にこれらの材料を溶解させた溶液または懸濁液により、注射用投与形態で投与してもよい。そのようなアジュバント、担体および/または賦形剤としては、界面活性剤および他の薬学的および生理学的に許容される成分が添加された、または添加されていない水および油などの滅菌液が挙げられるが、それらに限定されない。例示的な油は、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ピーナツ油、大豆油、または鉱物油である。一般的に、水、生理食塩水、デキストロースおよび関連糖の水溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射溶液に対しては好ましい液体担体である。
【0046】
これらの活性化合物はまた、非経口で投与してもよい。これらの活性化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合された水中で調製することができる。懸濁液はまた、油中、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で調製することができる。例示的な油は、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ピーナツ油、大豆油、または鉱物油である。一般的に、水、生理食塩水、デキストロースおよび関連糖の水溶液、ならびにグリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが、特に注射溶液に対しては好ましい液体担体である。普通の貯蔵および使用条件下では、これらの調製物は保存薬を含み、微生物の増殖が阻止される。
【0047】
エアロゾルとして使用するために、溶液または懸濁液形態の本発明の化合物を加圧エアロゾル容器内に、適した噴射剤、例えば、プロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素噴射剤と共に、従来のアジュバントと共にパッケージしてもよい。本発明の材料はまた、噴霧器またはアトマイザなどで非加圧形態で投与してもよい。
【0048】
本発明の化合物は、様々な形態の癌、特に前立腺癌、乳癌、および卵巣癌の治療または予防において特に有益である。本発明の化合物または組成物を患者に投与すると、他の型の癌も同様に治療または予防可能であると考えられる。本発明の好ましい化合物は癌細胞に対し選択的に破壊的な影響を与え、癌細胞の消失を引き起こすが、正常細胞の消失は引き起こさない。著しく、正常な細胞への危害が最小に抑えられる。癌細胞は、本発明の化合物のずっと低い濃度で破壊的影響を受けやすいからである。
【0049】
このように、本発明の別の局面は、本発明の化合物を提供する段階、および、その後、癌細胞を化合物と、接触した癌細胞を破壊するのに有効な条件下で接触させる段階を含む、癌細胞を破壊する方法に関する。癌細胞を破壊する様々な態様によれば、破壊すべき細胞は、インビボまたはエクスビボ(すなわち、培養物中)のいずれかに位置することができる。
【0050】
本発明のさらに別の局面は、本発明の化合物を提供する段階、および、その後、有効量の化合物を患者に、癌状態を治療または予防するのに有効な様式で投与する段階を含む、癌状態を治療または予防する方法に関する。
【0051】
1つの態様によれば、治療を受ける患者は、前癌状態の存在により特徴づけられ、化合物の投与は、前癌状態が癌状態に進行するのを阻止するのに有効である。これは、前癌細胞が癌状態にさらに進行する前に、またはその進行と同時に前癌細胞を破壊することにより達成できる。
【0052】
別の態様によれば、治療を受ける患者は、癌状態の存在により特徴づけられ、化合物の投与は、癌状態の退行を引き起こす、または癌状態の成長を阻害するのに有効である。これは好ましくは、癌細胞の患者体内の位置に関係なく、癌細胞を破壊することにより達成される。すなわち、癌細胞が原発腫瘍部位に位置しようと、癌細胞が患者の体内で転移し、二次性腫瘍を形成しようと、関係ない。
【0053】
本明細書で使用されるように、患者とは、任意の哺乳類の患者を指し、例えば、ヒトおよび他の霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ラット、マウス、および他の齧歯類が挙げられるが、それらに限定されない。
【0054】
本発明の化合物を投与する場合、全身的に投与することができ、または、癌細胞もしくは前癌細胞が存在する特異的な部位に直接、投与することができる。このように、投与は、化合物または薬学的組成物を癌細胞または前癌細胞に送達させるのに有効な任意の様式で実施することができる。例示的な投与様式としては、化合物または組成物の経口、局所外用、経皮、非経口、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、鼻内滴下、腔内または膀胱内滴下、眼内、動脈内、病巣内投与、または粘膜、例えば、鼻、喉、および気管支の粘膜への塗布が挙げられるが、それらに限定されない。
【0055】
本発明の化合物または薬学的組成物を投与して癌状態を治療または予防する場合、薬学的組成物はまた、現在公知のまたは様々な型の癌の治療のために今後開発される他の治療薬または治療レジメンを含むことができ、またはそれらと共に投与することができる。他の治療薬または治療レジメンの例としては、放射線療法、化学療法、外科的処置、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0056】
本発明の範囲内にある組成物は、本発明の化合物が有効量含まれ、その所期の目的が達成される全ての組成物を含む。個人の要求は変動する場合があるが、各成分の有効量の最適範囲の決定は当分野の技術範囲内である。典型的な用量は約0.01〜約100mg/kg体重を含む。好ましい用量は約0.1〜約100mg/kg体重を含む。最も好ましい用量は約1〜約100mg/kg体重を含む。本発明の化合物を投与するための治療レジメンはまた、当業者により容易に決定することができる。すなわち、投与回数および用量サイズは、ルーチン最適化により、好ましくは全ての副作用を最小に抑えるように、確立することができる。
【0057】
実施例
下記で記述する実施例は説明目的にすぎず、いかなる意味においても、本発明の範囲を制限するものではない。
【0058】
実施例1-チアゾリジンカルボン酸アミドの合成
使用した試薬および溶媒は全て試薬グレードであり、または使用前に標準法により精製した。湿度に感応する反応はアルゴン雰囲気下で実施した。反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)分析により追跡した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Fisherにより供給されたシリカゲル(200〜425メッシュ)を用いて実施した。融点はThomas-Hoover融点装置のオープンキャピラリーチューブ内で測定し、較正しない。全ての化合物についてNMRおよびMS(ESI)によりキャラクタリゼーションを行った。1H NMRスペクトルをVarian 300機器上で記録した。化学シフトを内標準としてのMe4Siに対するδ値として報告する。Esquire-LC(Bruker)分光計を用い、エレクトロスプレー(ES)モードで質量スペクトルを得た。Atlantic Microlab Inc.(Norcross、GA)により元素分析を実施した。
【0059】
本研究で説明した化合物はすべて、直接的な化学に従い調製した。L-システインの様々なアルデヒドとの報告されている条件下での反応により(Seki et al., “A Novel Synthesis of (+)-Biotin from L-Cysteine,”J. Org. Chem. 67:5527-5536(2002)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、対応する酸が得られ(図1、2a〜v)、これらをジアステレオマー混合物として単離した。これらの混合物を、スキーム1で示されるように、EDC/HOBtを用いて適当なアルキルアミンと反応させることにより、対応するアミドの形成のために直接使用した。このように調製した化合物は全て、ジアステレオマー混合物として特徴付けられた(表1)。
【0060】
適当なカルボン酸(図1、2a〜2v、0.3〜0.5g)、EDC(1.25当量)およびHOBt(1当量)のCH2Cl2(25〜50mL)中の混合物を10分間、撹拌した。この溶液に、適当なアルキルアミン(1当量)を添加し、室温で6〜8時間、撹拌し続けた。反応混合物をCH2Cl2(100〜150mL)で希釈し、連続して水、飽和NaHCO3、塩類溶液で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去すると、粗固体が得られ、これをカラムクロマトグラフィーで精製した。精製化合物(3〜6、12、15〜18、および27)を2M HCl/Et2Oを用いて対応する塩酸塩に変換した。
【0061】
(2RS,4R)-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸ヘプチルアミド塩酸塩(化合物3・HCl):

【0062】
(2RS,4R)-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸テトラデシルアミド塩酸塩(化合物4・HCl):

【0063】
(2RS,4R)-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物5・HCl):

【0064】
(2RS,4R)-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸ノナデシルアミド塩酸塩(化合物6・HCl):

【0065】
(2RS,4R)-2-ドデシルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物7):

【0066】
(2RS,4R)-2-シクロヘキシルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物8):

【0067】
(2RS,4R)-2-ベンジルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物9):

【0068】
(2RS,4R)-2-(1H-インドール-3-イル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物10):

【0069】
(2RS,4R)-2-ピリジン-3-イル-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物11):

【0070】
(2RS,4R)-2-フラン-3-イル-チアゾリジン-4-カルボン酸塩酸塩(化合物12・HCl):

【0071】
(2RS,4R)-2-(4-ジメチルアミノ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物13):

【0072】
(2RS,4R)-2-(3-ヒドロキシ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物14):

【0073】
(2RS,4R)-2-(4-メトキシ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物15・HCl):

【0074】
(2RS,4R)-2-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物16・HCl):

【0075】
(2RS,4R)-2-(3,4,5-トリメトキシ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物17・HCl):

【0076】
(2RS,4R)-2-(4-アセチルアミノ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物18・HCl):

【0077】
(2RS,4R)-2-(4-フルオロ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物19):

【0078】
(2RS,4R)-2-(4-ブロモ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物20):

【0079】
(2RS,4R)-2-(4-ニトロ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物21):

【0080】
(2RS,4R)-2-(4-シアノ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物22):

【0081】
(2RS,4R)-2-(3,5-ジフルオロ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物23):

【0082】
(2RS,4R)-2-(2,6-ジクロロ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物24):

【0083】
(2RS,4R)-2-(3-ブロモ-4-フルオロ-フェニル)-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物25):

【0084】
(2RS,4R)-2-p-トリル-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物26):

【0085】
(2RS,4R)-2-ビフェニル-4-イル-チアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド塩酸塩(化合物27・HCl):

【0086】
実施例2-N-アシルおよびN-スルホニル誘導体チアゾリジンカルボン酸アミドの合成
N-アシルおよびN-スルホニル誘導体(化合物28および29)を化合物5から標準手順(スキーム2)により合成した。簡単に述べると、(2RS,4R)-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物5)を無水酢酸または塩化メチルスルホニルのいずれかとピリジン中で反応させ、所望の誘導体を得た。
【0087】
(2RS,4R)-3-アセチル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物28):

【0088】
(2RS,4R)-3-メタンスルホニル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物29):

【0089】
前記合成に基づき、別のアシル無水物(例えば、より大きなアルキル基を含む)および別の塩化スルホニル(例えば、より大きなアルキル基を含む)もまた、この同じ合成手順に従い調製することができることが予測される(Badr et al., “Synthesis of Oxazolidines, Thiazolidines, and 5,6,7,8-Tetrahydro-1H,3H-pyrrolo[1,2-c]oxazole (or thiazole)-1,3-diones from β-Hydroxy- or β-Mercapto-α-amino Acid Esters,”Bull. Chem. Soc. Jpn. 54:1844-1847(1981)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。
【0090】
実施例3-チアゾールカルボン酸アミドの合成
チアゾール誘導体(化合物34)の合成を、スキーム3に示されるように、システインから開始して実施した。
【0091】
0℃の、MeOH(50mL)に溶解したDL-システイン(3g、24.76mmol)の溶液に、SOCl2(2.76mL、37.14mmol)を徐々に添加し、室温まで温め、3時間還流させた。反応混合物を真空で濃縮すると、残渣が得られた。この残渣をEtOH水溶液(1:1、30mL)に入れ、NaHCO3(2.28g、27.23mmol)を添加し、10分後、ベンズアルデヒド(2.5mL、24.76mmol)を添加し、3時間撹拌し続けた。CHCl3(200mL)を反応混合物に添加し、水、塩類溶液で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空で除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると、2-フェニルチアゾリジン-4-カルボン酸メチルエステル(化合物31)が得られた:収率4.7g、85%;

【0092】
化合物31を用いて開始し、報告されている手順(Kue et al., “Essential Role for G Proteins in Prostate Cancer Cell Growth and Signaling,”J. Urol. 164:2162-2167(2000)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)に従い、2-フェニルチアゾール-4-カルボン酸メチルエステル(化合物32)を合成した。収率0.33g、68%;

【0093】
0℃の、MeOH(10mL)に溶解した化合物32(0.5g、2.28mmol)の溶液に、1N NaOH(5mL)を添加し、2時間撹拌した。反応混合物にEtOAc(30mL)を添加し、1N HClで酸性化した。EtOAc(3×50mL)で抽出し、抽出物を合わせ、水、塩類溶液で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空で除去すると、粗酸(化合物33)が得られ、これを上記実施例1で記述した一般手順に従い、2-フェニルチアゾール-4-カルボン酸オクタデシルアミド(化合物34)に変換させた。収率0.30g、68%;

【0094】
(表1)合成した化合物の構造および物理データ

【0095】
実施例4-LPA受容体発現に対するRT-PCRによる選択した前立腺癌細胞系の分析
DU-145、PC-3、およびLNCaPヒト前立腺癌、およびRH7777ラット肝癌細胞を、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から入手した。University of Tennessee Health Science CenterのMitchell Steiner博士から、PPC-1およびTSU-Pr1細胞を提供していただいた。前立腺癌およびRH7777細胞を、それぞれ、10%ウシ胎児血清(Gibco, Grand Island, NY)を補充したRPMI1640培地およびDMEM(Mediatech, Inc., Herndon, VA)中、37℃で5%CO2/95%空気の加湿雰囲気において維持した。
【0096】
全RNAを、TRIzol(登録商標)試薬(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を用い、製造者の指示に従って抽出した。0.5μg(LPA1)または1μg(LPA2およびLPA3)の全RNAを使用し、Platinum(登録商標)Taq(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)および0.2μMのプライマーを用い、SuperScript(商標)One-Step RT-PCRによりRT-PCRを実施した。下記のプライマー対を使用した:

【0097】
PCR条件は下記の通りとした:サンプルを、94℃での2分間の変性段階後、94℃で30秒、60℃(LPA1)または58℃(LPA2およびLPA3)で30秒、および72℃で1分の34〜40サイクル、続いて72℃で7分間のさらなる伸長段階に供した。プライマーは、ゲノムDNA混入を検出するため、ゲノム配列の少なくとも1つのイントロンに及ぶように選択した。PCR産物は、1.5%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウムで染色し、バンド強度をQuantity One Software(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercules, CA)を用いて定量した。異なる細胞系における各受容体サブタイプの発現レベルをβ-アクチンmRNAレベルと比較した割合として表した。
【0098】
これらの細胞系におけるLPL受容体発現を決定し、インビトロモデルでの使用を確認した(下記表2を参照のこと)。1μgの全RNAをRT-PCRに供し、PCR産物をアガロースゲル上で分離し、β-アクチンと比較した各受容体サブタイプの相対発現レベルをQuantity One Software(Bio-Rad)により定量した。LPA1が、これらの細胞系において発現した主なLPL受容体であった。しかしながら、LNCaP細胞はこの受容体サブタイプを発現しなかった。LPA3受容体は、前立腺癌細胞系に独自に発現された。RH7777細胞は公知のLPL受容体のいずれも発現しない。
【0099】
(表2)LPL受容体mRNA発現

aUD=検出下限未満
【0100】
実施例5-前立腺癌細胞における細胞毒性アッセイ法
インビトロ細胞毒性スクリーニングでは、増殖速度により、96ウェルプレートの各ウェルに1000〜5000個の細胞を播種し、異なる濃度の試験化合物に96時間曝露し、3〜5個の複製を作成した。化合物は全て、ジメチルスルホキシドに5〜20mMで溶解し、完全培地で所望の濃度となるまで希釈した。薬物処理の終わりの細胞数をSRBアッセイ法により測定した(Gududuru et al., “Synthesis and Biological Evaluation of Novel Cytotoxic Phospholipids for Prostate Cancer,”Bioorg. Med. Chem. Lett. 14:4919-4923(2004); Rubinstein et al., “Comparison of in vitro Anticancer-Drug-Screening Data Generated with a Tetrazolium Assay Versus a Protein Assay Against a Diverse Panel of Human Tumor Cell Lines,”J. Natl. Cancer Inst. 82:1113-1118(1990)、それぞれ参照により全体が本明細書に組み入れられる)。簡単に説明すると、細胞を10%のトリクロロ酢酸で固定し、0.4% SRBで染色し、540nmでの吸光度をプレートリーダー(DYNEX Technologies, Chantilly, VA)を用いて測定した。細胞生存率対薬物濃度をプロットし、WinNonlin(Pharsight Corporation, Mountain View, CA)を用いた非線形回帰解析によりIC50(未処理対照の50%の細胞の増殖を阻害する濃度)値を得た。5-フルオロウラシルを陽性対照として使用し、新規化合物の効力を比較した。
【0101】
DNAおよびヒストンに対し特異的なモノクローナル抗体を用いるサンドイッチELISA(Roche, Mannheim Germany)を使用して、72時間曝露後の、類似体により誘導されたアポトーシスの程度を定量した。このアッセイ法により、アポトーシス中に核から細胞質中に放出されたDNA-ヒストン複合体(モノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソーム)が測定される。受容体陰性細胞ならびに受容体陽性前立腺癌細胞における化合物4の非特異的細胞毒性のため、RH7777細胞を使用した。
【0102】
2-アリール-チアゾリジン誘導体(ATCAA)の、5つのヒト前立腺癌細胞系(DU-145、PC-3、LNCaP、PPC-1、およびTSU-Pr1)の増殖を阻害する能力は、スルホローダミンB(SRB)アッセイ法(上記)を用いて評価した。LPL受容体を発現していない対照細胞系(RH7777)も使用し(Svetlov et al., “EDG Receptors and Hepatic Pathophysiology of LPA and S1P: EDG-ology of Liver Injury,”Biochimica et Biophysica ACT 1582:251-256(2002)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、これらの誘導体の抗増殖活性がLPL受容体の阻害を介して媒介されるかどうかを理解した。
【0103】
標的化合物3〜29のジアステレオマー混合物をそのようなものとして使用して、前立腺癌細胞系に対するインビトロ阻害活性を評価し、結果を下記表3および4にまとめて示す。5-フルオロウラシルを基準薬として使用した。妥当な構造-活性関係を推定するために、IC50は主義に基づいて、純粋な異性体に対して決定すべきである。この場合、避けることができない立体異性体の混合物を試験する1つの欠点は、生物学的活性に対する各立体異性体の効果が評価できないことであった。他方、計算したIC50値をスクリーニング法として使用し、有望な選択的細胞毒性薬を選択し、前立腺癌細胞の増殖を阻害する最もよいアベイラビリティを有するジアステレオマー混合物を識別することができる。これらのチアゾリジン類似体の多くは前立腺癌細胞系を殺すのに非常に効果的であり、IC50値は低/サブμM範囲である(表3)。化合物3〜5の細胞毒性効果の試験により、鎖長がC7からC18に増加するにつれ、効力も増加することが示される。しかしながら、1炭素単位だけアルキル鎖長がさらに増加すると(すなわち、C18からC19)、細胞毒性が著しく喪失した。興味深いことに、C14誘導体(化合物4)は、化合物5よりも高い効力を示したが、RH7777細胞系に対する選択性は8分の1であった。このように、C18単位を有するアルキル鎖は、このシリーズの化合物で見られる効力および選択性を維持するのに最適である。N-アシルおよびN-スルホニル誘導体(化合物28および29)は、親化合物5よりも細胞毒性が低かった。フェニル環をアルキルまたはシクロヘキシル基で置換すると、チアゾリジン(化合物5)誘導体に比べ効力が減少した(化合物7および8)。フェニル環とチアゾリジン環を分離するメチレンスペーサを導入すると、化合物9が得られ、これは親化合物5よりも活性が低かった。
【0104】
(表3)前立腺癌細胞系に対する化合物3〜17の抗増殖効果

a対照細胞系 b前立腺癌細胞系 ND=検出不可 NA=活性無し
【0105】
(表4)前立腺癌細胞系に対する化合物18〜29および34の抗増殖効果

a対照細胞系 b前立腺癌細胞系
【0106】
不飽和の効力および選択性に対する効果を理解するために、および立体異性体に関連する問題を克服するために、化合物5中の中心チアゾリジンコアをチアゾール環で置換した。しかしながら、チアゾール誘導体(化合物34)は前立腺およびRH7777細胞の両方において、20μM未満では活性を示さず、2つの不斉中心を有するチアゾリジン環が効力および選択性を提供するのに重要な役割を果たすことが示される。フェニル環の複素環、例えば、インドール、ピリジンまたはフラン環による置換を、類似体(化合物10〜12)を合成することにより調べた。フラニル誘導体(化合物12)は、化合物5と同等の細胞毒性を示したが、RH7777細胞に対する選択性が3分の1と低くなった。
【0107】
化合物13〜27の細胞毒性データから、フェニル環置換類似体の広範な観察の概要が得られる。これらの類似体のIC50値の試験から、フェニル環における様々な置換基に対するより大きな許容範囲が証明される。一般に、化合物5に対して、化合物13、および化合物16〜18を比較することにより実証されるように、最も強力な類似体は電子供与置換基を有した。IC50が0.55μMである最も活性な化合物の1つ(化合物18)は、RH7777細胞に比べPPC-1細胞において38倍選択的であった。他方、電子吸引置換基を有するチアゾリジン類似体(化合物19〜25)はより低い細胞毒性を示した。化合物26および化合物27の効力を比較すると、フェニル環を嵩高い基で置換すると活性が減少することが示唆される。
【0108】
LPL受容体mRNA発現研究(表2)から、これらの細胞系がLPL受容体の効果を調査する優れたモデル系として機能することが明らかになった。SAPのセラミドとの構造的な類似性(およびアポトーシスを誘導するセラミドの公知の能力)を考え、チアゾリジン類似体の抗増殖効果がアポトーシス事象を介して媒介されるかどうかが決定された。類似体の、LNCaP、PC-3、およびRH7777細胞におけるアポトーシスを誘導する能力を、アポトーシス中に放出されるDNA-ヒストン複合体を測定する定量的サンドイッチELISAを用いて調査した。計算した濃縮係数(処理および未処理細胞におけるOD405の割合)により、誘導されたアポトーシスの程度が定量的に評価される。最初、2つの化合物のみ(4および5)をこの研究に使用した。類似体(化合物4)のアポトーシス活性は、RH7777陰性対照細胞においては非選択的細胞毒性であるにも関わらず、前立腺癌細胞では選択的であった(下記表5を参照のこと)。類似体化合物5はPC-3およびLNCaP細胞においてアポトーシスを誘導したが、PC-3細胞ではより程度が低く、おそらくこの細胞系での効力がより低いためである。このデータから、チアゾリジン類似体は、アポトーシスの強力な誘導物質として作用し、様々な前立腺癌細胞系を選択的に殺す可能性があることが示唆される。
【0109】
(表5)チアゾリジンアミド誘導アポトーシス

【0110】
これらの結果は、アガロースゲル電気泳動によるDNAフラグメンテーションに対しLNCaP細胞を試験するアッセイ法と一致する。LNCaP細胞をチアゾリジン誘導体(化合物4または5)で24〜108時間処理し、その後、全DNAを2×106細胞から簡単な遠心分離法により抽出し、RNaseおよびプロテイナーゼKで処理した。エタノール中で沈澱させた後、DNAをTris-EDTA緩衝液中で再構築させ、アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウム染色により可視化した(Herrmann et al., “A Rapid and Simple Method for the Isolation of Apoptotic DNA Fragments,”Nucl. Acids. Res. 22:5506-5507(1994)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。図4A〜Bに示される結果から、これらの化合物の両方がLNCaP前立腺癌細胞系において細胞アポトーシスを誘導することが証明される。
【0111】
細胞毒性の別の評価として、AKT阻害を測定した。未処理対照細胞および化合物処理細胞から30μgの総細胞タンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜に転写し、総AKTおよびホスホ-AKTを、それぞれ、抗-AKT、およびSer473でリン酸化されたAKTに対して特異的な抗ホスホAKT抗体でプローブした(Cell Signaling Technology, Beverly, MA)。免疫ブロットを増強化学ルミネセンスにより可視化し、類似体処理による総AKTと比較したホスホ-AKTの相対レベルの変化を濃度測定分析により定量した。図5Bは、図5Aで示される、抗-AKTおよび抗-ホスホ-AKTを用いたAKTの免疫学的検出を示したグラフである。
【0112】
上述の記載から、フェニル環上での環活性化基の導入により、前立腺癌細胞系に対する効力が増大することが認識されるであろう。上記結果から、低い/サブμMの細胞毒性および高い選択性を有するいくつかの新規抗癌剤(化合物16、17、および18で表される)が証明される。この研究から、化合物18が、PPC-1細胞においてIC50が0.55μMで38倍の選択性を有する最も強力で選択的な細胞毒性薬の1つとして浮上した。さらに、これらの類似体の、LNCaP、PC-3およびRH7777細胞においてアポトーシスを誘導する能力により、作用機序を理解する重要な鍵が提供される。
【0113】
実施例6-チアゾリジノンアミドの合成
チアゾリジン誘導体(65〜72)の合成は、スキーム4で示されるように(図6)、直接的な化学を使用し、ここでlは1である。様々な4-チアゾリジノンを、メルカプト酢酸、グリシンメチルエステル、および芳香族アルデヒドをワンポット反応で縮合させ、その後エステルを塩基性加水分解する、報告されている手順に従い合成した(Holmes et al., “Strategies for Combinatorial Organic Synthesis: Solution and Polymer-supported Synthesis of 4-thiazolidinones and 4-metathiazanones Derived from Amino Acids,” J. Org. Chem. 60: 7328-7333(1995)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。EDC/HOBtを存在させ、標準条件下で、適当なアミンで処理するとチアゾリジノンアミドが得られた。側鎖を有さない化合物65は図6に示すように(スキーム4)、対応する酸から合成した。チアゾリジノンアミド(化合物73〜77)を簡単で直接的な方法により合成し(Schuemacher et al., “Condensation Between Isocyanates and Carboxylic Acids in the Presence of 4-dimethylaminopyridin(DMAP), a Mild and Efficient Synthesis of Amides,”Synthesis 22:243-246(2001)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、この方法は、酸化合物64aを異なるイソシアナートと、触媒量のDMAPの存在下で反応させる段階を含む(図7)(スキーム5)。BH3・THFを使用し、還流条件下で化合物68を完全還元すると、化合物79が得られた(図8)(スキーム6)。H2O2およびKMnO4を用いた68の酸化により、スキーム6に示されるように、それぞれスルホキシド(化合物80)およびスルホン(化合物81)が得られた。全ての化合物のキャラクタリゼーションを1Hおよび13C NMR、質量分析、ならびに一部の場合には元素分析により実施した。
【0114】
化合物はジアステレオマーの混合物として得られ、そのようなものとして生物学的研究に使用した。例示的な化合物68、71、72、および81に対する特性データを下記に示す。
【0115】
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物68):

【0116】
2-(2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド(化合物71):

【0117】
2-(2-(2,6-ジクロロフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド(化合物72):

【0118】
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホニル-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド(化合物81):

【0119】
実施例7-細胞毒性アッセイ法
合成した化合物全ての抗増殖活性を5つのヒト前立腺癌細胞系に対し、およびRH7777細胞において(陰性対照)、スルホローダミンB(SRB)アッセイ法(上記実施例5の記述を参照のこと)を用いて評価した。5-フルオロウラシル(5-FU)を基準薬として使用した。表6に示されるように、4-チアゾリジノンカルボン酸(化合物64aおよび64b)は50μM未満では、5つの前立腺癌細胞のいずれの増殖も阻害できなかった。しかしながら、対応するアミド(化合物66〜68)はより高い活性を示した。アルキル鎖長を増加させると[化合物66(C10)、67(C14)、および68(C18)]、前立腺癌細胞におけるこれらの類似体の抗増殖活性が増強することが観察された。興味深いことに、長いアルキル鎖のない単純なアミド65は100μM未満では細胞毒性を有さず、これにより、アルキル側鎖がないと抗増殖効果がかなり減少することが示される。他方、アルキル鎖を様々なアリール鎖で置換すると(化合物73〜78)生物学的活性が減少した。このシリーズの中で、化合物73は中程度の細胞毒性を有し、類似体(化合物76〜78)はいくつかの前立腺癌細胞系において低い細胞毒性を示した。しかしながら、アリール環上に電子吸引置換基を有するチアゾリジノンアミド(化合物74および75)は、5つの前立腺癌細胞系すべてに対し13〜29μMの範囲の細胞毒性を示したことは言及に値する。
【0120】
(表6)化合物64a-64bおよび65-78の抗増殖効果

a対照細胞系;b前立腺癌細胞系
【0121】
(表7)化合物79-81の抗増殖効果

a対照細胞系;b前立腺癌細胞系
【0122】
嵩高いビフェニルまたはナフタレン基を有するチアゾリジノン誘導体(化合物69および70)は、化合物68に比べ低い細胞毒性を示した(表6)。化合物71および72を、化合物68における芳香族環置換の効果を理解するために合成した。電子供与置換基は良好な活性を維持するが、オルト電子吸引置換基はこれらの誘導体の抗増殖活性を実質的に減少させることが観察された(表6)。アミド基を有さない化合物79は、5つの前立腺癌細胞系全てにおいて著しく良好な効力を示した。特に、スルホキシドまたはスルホン部分を有する化合物80および81は、PC-3およびPPC-1細胞系の両方に対し、基準薬5-FUの効力に匹敵するより高い細胞毒性効力を示した(表7)。
【0123】
要約すると、一連の新規および細胞毒性4-チアゾリジノンアミドを調製し、識別した。このシリーズの中で、I型化合物(図6)の詳細な構造活性関係研究を実施し、5つの前立腺癌細胞系およびRH7777細胞(陰性対照)に対する抗増殖活性を評価した。細胞毒性研究から、抗増殖活性は2-アリール環置換、アルキル側鎖の長さ、および親油性アルキル側鎖の除去または置換に敏感であることが示される。硫黄酸化は、化合物80および81が5-FUに比べ著しく細胞毒性を示したので、よく許容される。この研究により、RH7777細胞系に比べ2〜5倍低い選択性で、5つのヒト前立腺癌細胞系(DU-145、PC-3、LNCaP、PPC-1、およびTSU)の増殖を阻害する、強力な細胞毒性4-チアゾリジノン(化合物68、80、および81)が発見された。これらの4-チアゾリジノン誘導体は、毒性が低くなるが、非腫瘍細胞での選択性が改善されるという点で、SAP部分に対し著しい改良となる。
【0124】
実施例8-乳癌および卵巣癌細胞における細胞毒性アッセイ法
各構造式から最も強力な化合物を選択し、1つのヒト乳癌細胞系(MCF-7)および3つのヒト卵巣癌細胞系(CHO-1、CaOv-3、SKOv-3、およびOVCAR-3)において増殖阻害活性の試験を実施した。同じスルホローダミンB(SRB)アッセイ法(上記)によりインビトロ細胞毒性アッセイ法を実施した。下記表8で示した化合物について、乳癌および卵巣癌細胞系に対する活性を試験した。
【0125】
(表8)乳癌および卵巣癌細胞系に対する化合物の抗増殖効果

a乳癌細胞系;b卵巣癌細胞系;NT=試験せず
【0126】
化合物5の立体選択性をCaOV-3およびSKOv-3細胞で観察した((R)および(S)異性体を比較)。2-フェニル環上での置換により一般に、化合物の細胞毒性が増加した。
【0127】
実施例9-スペルミン結合チアゾリジンアミドの合成および試験
図9に示されるように、CH2Cl2に溶解した4-チアゾリジノン酸(ここでR1はフェニルでありlは1である)(1.5g、6.32mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.51g、7.9mmol)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.85g、6.32mmol)の混合物を氷浴中で冷却し、10分間撹拌した。この溶液に、4-ニトロフェノール(0.78g、5.61mmol)を添加し2時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、冷5%HCl、飽和NaHCO3、水、塩類溶液で順次洗浄し、乾燥させ(無水Na2SO4)、溶媒を真空除去した。ニトロフェニルエステル生成物(化合物100)をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)により、EtOAc/ヘキサンを用いて精製すると、1.76g(78%)が得られた。

【0128】
室温のCH3OH(35mL)に溶解したニトロフェニルエステル(化合物100)(0.5g、1.39mmol)の溶液に、スペルミンの溶液(0.33g、1.63mmol、CH3OHに溶解)を徐々に添加し、1時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、濃縮反応混合物に、1:1(CHCl3:CH3OH)を添加し、セライトを通して濾過した。溶媒を真空除去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)によりCHCl3/CH3OH/i-PrNH2を用い精製すると、0.2g(50%)のスペルミン複合体(化合物101)が得られ、これを2M HCl/Et2Oを用いて対応する塩酸塩に変換した。

【0129】
化合物101は、卵巣癌細胞およびMCF-7乳癌細胞に比べ、前立腺癌細胞に対しより強力な活性を示し、IC50(μM)値は下記の通りであった:RH7777(>100)、DU145(12.4)、PC-3(11.1)、LNCaP(26.2)、PPC-1(11.7)、TSU-Pr1(5.0)、MCF-7(>100)、CaOv-3(39.3)、OVCAR-3(39.7)およびSKOv-3(>100)。
【0130】
好ましい態様について図示し、本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の精神から逸脱せずに様々な改変、追加、置換などが可能であり、これらは請求の範囲で規定される本発明の範囲内にあると考えられることは、当業者には明かであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】チアゾリンカルボン酸アミドの合成のための1つのアプローチ(スキーム1)を示した図である。チアゾリジンカルボン酸中間体(2a〜v)は、L-システインを様々なアルデヒドと、報告された条件下で反応させると形成される(Seki et al., “A Novel Synthesis of (+)-Biotin from L-Cysteine,” J. Org. Chem. 67:5527-5536(2002)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。中間体カルボン酸をアミンと反応させると、対応するアミド(3〜27)が形成される。
【図2】チアゾリジンカルボン酸アミドのN-アシルおよびN-スルホニル誘導体の合成に対する1つのアプローチ(スキーム2)を示した図である。N-アシルおよびN-スルホニル誘導体(化合物28および29)は、化合物5から標準手順により合成した。
【図3】チアゾールカルボン酸アミドの合成のための1つのアプローチ(スキーム3)を示した図である。チアゾリジンカルボン酸メチルエステルを、報告された手順に従いチアゾールカルボン酸メチルエステルに変換し(Badr et al.,“Synthesis of Oxazolidines, Thiazolidines, and 5,6,7,8-Tetrahydro-1H,3H-pyrrolo[1,2-c]Oxazole (or Thiazole)-1,3-diones from β-Hydroxy- or β-Mercapto-α-amino Acid Esters,”Bull. Chem. Soc. Jpn. 54:1844-1847(1981)、参照により全体が本明細書に組み入れられる)、その後、アルキルアミドに変換させた。
【図4】図4A〜Bは、チアゾリジン化合物4(図4A)および5(図4B)で24〜108時間処理した後、2×106 LNCaP細胞から抽出した全DNAのアガロースゲル電気泳動を示す図である。結果から、DNAフラグメンテーションへの治療の効果が示され、細胞死の進行が示される。図4Aでは、用量および曝露時間は化合物4に対し以下の通りである:レーン1、100bp DNAマーカー;レーン2、5μM、36時間;レーン3、3μM、24時間;レーン4、3μM、24時間;レーン5、3μM、48時間;レーン6、3μM、72時間;レーン7、3μM、108時間;およびレーン8、50μM、36時間。図4Bでは、用量および曝露時間は化合物5に対し以下の通りである:レーン1、100bp DNAマーカー;レーン2、5μM、24時間;レーン3、5μM、48時間;レーン4、5μM、72時間;レーン5、5μM、96時間;レーン6、3μM、96時間;レーン7、8μM、48時間;およびレーン8、8μM、72時間。
【図5】図5A〜Bは、AKTリン酸化の阻害により測定した、チアゾリジン化合物のAKT阻害効果を示す図である。図5Aは、抗ホスホAKT(S473)または抗AKT抗体を用いた免疫ブロットの結果を示す。免疫ブロットは、増強化学ルミネセンスにより可視化し、類似体処理による総AKTと比較したホスホ-AKTの相対レベルの変化を、濃度測定分析により定量した。図5Bは、図5Aで示した、抗AKTおよび抗ホスホAKTを用いたAKTの免疫学的検出をグラフにより示した図である。
【図6】4-チアゾリジノンカルボン酸の合成、および一級または二級アミン(HNR2R3)との反応による対応するアミドへの変換に対する1つのアプローチ(スキーム4)を示した図である。この反応スキームに示されるように、異なる開始材料(ここで、lは異なる)を使用して、本発明の様々な化合物を調製することができる。
【図7】4-チアゾリジノンカルボン酸の合成、およびR2-CNOとの反応による対応するアミドへの変換に対する第2のアプローチ(スキーム5)を示す図である。
【図8】本発明のチアゾリジノン化合物のコア構造を修飾し、環結合スルホンまたはスルホキシド基(それぞれ、段階aおよびb)、ならびにカルボニル基の完全な還元(段階c)を得るための3つのアプローチ(スキーム6)を示した図である。
【図9】チアゾリジノンアミドのポリアミン複合体の合成のための方法を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)または(II)の化合物:

式中、
X1およびX2はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素とすることができ;
X3およびX4はそれぞれ任意であり、それぞれ酸素または硫黄とすることができ;
lは1〜12の整数であり;
R1は、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、あるいは

または-(CH2)m-Y1の群より選択され、ここで、mは0〜10の整数であり、Y1は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R2は、水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-であり、ここで、炭化水素基は脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C30炭化水素、飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、飽和もしくは不飽和混合複素環、あるいは

または-(CH2)n-Y2であり、ここで、nは0〜10の整数であり、Y2は飽和もしくは不飽和環状炭化水素、飽和もしくは不飽和N-複素環、飽和もしくは不飽和O-複素環、飽和もしくは不飽和S-複素環、または飽和もしくは不飽和混合複素環であり;
R3は、水素、または脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素であり;
R4は任意であり、または水素、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アシル、アセチル、またはメシルとすることができ;
R5、R6、R7、R8、R9、R11、R12、R13、R14、およびR15は、水素、ヒドロキシル、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10炭化水素、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、アリールアミド、アリール、C5〜C7シクロアルキル、アリールアルキルの群より独立して選択され;
R10は、H(Z)N-、H(Z)N-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-O-炭化水素-、炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-カルボニル-炭化水素-、炭化水素-カルボニル-炭化水素-、H(Z)N-フェニル-、H(Z)N-フェニルアルキル-、H(Z)N-フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-O-炭化水素-、フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-フェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-、またはフェニルアルキル-カルボニル-炭化水素-であり、ここで、各炭化水素は、独立して、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C1〜C10基であり、ここで、各アルキルはC1〜C10アルキルであり;
Zは独立して水素またはt-ブトキシカルボニルである。
【請求項2】
化学式(I)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
X1およびX2の1つまたは両方が酸素である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
X1もX2も酸素でない、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
X3もX4も酸素でない、請求項2記載の化合物。
【請求項6】
X3が酸素である、請求項2記載の化合物。
【請求項7】
X4が酸素である、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
R3が水素である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
R2が、C8〜C24の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
R2が、C10〜C20の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項8記載の化合物。
【請求項11】
R2が、C14〜C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項8記載の化合物。
【請求項12】
R1が、フェニル、ピリジニル、インドリル、フラニル、シクロアルキル、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C10〜C20炭化水素、または

であり、ここでmが0〜10の整数である、請求項8記載の化合物。
【請求項13】
下記の群より選択される、請求項1記載の化合物:
2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-デシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-テトラデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-ビフェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
2-(2-(1-(ジメチルアミノ)ナフタレン-4-イル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド、
2-(2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド、
2-(2-(2,6-ジクロロフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホキシド-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホニル-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-(3,5-ジフルオロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)エタンチオアミド、
N-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-(2,4-ジメトキシフェニル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-(ナフタレン-1-イル)-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
3-(2-(オクタデシルアミノ)エチル)-2-フェニルチアゾリジン-4-オン、
N-(2-(2-フェニルチアゾリジン-3-イル)エチル)オクタデカン-1-アミン、およびそれらの塩。
【請求項14】
下記の群より選択される、請求項1記載の化合物:
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニルチアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
2-(2-(4-メトキシフェニル)-4-オキソチアゾリジン-3-イル)-N-オクタデシルアセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホキシド-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド、
N-オクタデシル-2-(4-オキソ-2-フェニル-1-スルホニル-チアゾリジン-3-イル)アセトアミド、およびそれらの塩。
【請求項15】
R2が、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-であり、
R10が、H(Z)N-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-N(Z)-炭化水素-、H(Z)N-炭化水素-カルボニル-炭化水素-、H(Z)N-フェニル-、H(Z)N-フェニルアルキル-、およびH(Z)N-フェニルアルキル-N(Z)-炭化水素-の群より選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
lが1〜8の整数である、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
化学式(II)の構造を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
X1およびX2の1つまたは両方が酸素である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
X1もX2も酸素でない、請求項17記載の化合物。
【請求項20】
X3が酸素でない、請求項17記載の化合物。
【請求項21】
X3が酸素である、請求項17記載の化合物。
【請求項22】
R3が水素である、請求項17記載の化合物。
【請求項23】
R2が、C8〜C24の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
R2が、C10〜C20の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
R2が、C14〜C18の直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族もしくは非脂肪族炭化水素である、請求項22記載の化合物。
【請求項26】
R1が、フェニル、ピリジニル、インドリル、フラニル、シクロアルキル、脂肪族もしくは非脂肪族の直鎖もしくは分枝鎖C10〜C20炭化水素、または

であり、ここでmが0〜10の整数である、請求項22記載の化合物。
【請求項27】
下記の群より選択される、請求項17記載の化合物:
(4R)-2-(4-メトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-エトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
N-オクタデシル-2-フェニルチアゾール-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(3,5-ジフルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-シアノフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-N-メシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-N-アセチル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-ヘプチル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4S)-N-オクタデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-テトラデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-2-ビフェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-ドデシル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-2-(ピリジン-3-イル)チアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(フラン-3-イル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-ノナデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(4-アセトアミドフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-フルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(2,6-ジクロロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-ブロモフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-N-オクタデシル-2-p-トリルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-シクロヘキシル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(4-ニトロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-(ジメチルアミノ)フェニル))-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(1H-インドール-3-イル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-ベンジル-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N,N-ジオクチルチアゾリジン-4-カルボキサミド、およびそれらの塩。
【請求項28】
下記の群より選択される、請求項17記載の化合物:
(4R)-N-オクタデシル-2-フェニルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-(ジメチルアミノ)フェニル))-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3-ヒドロキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3,4-ジメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
2-(4-アセトアミドフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、
(4R)-2-(4-フルオロフェニル)-N-オクタデシルチアゾリジン-4-カルボキサミド、およびそれらの塩。
【請求項29】
ラセミ混合物として存在する、請求項1記載の化合物。
【請求項30】
実質的に純粋な立体異性体として存在する、請求項1記載の化合物。
【請求項31】
薬学的に許容される塩の形態で存在する、請求項1記載の化合物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体と請求項1記載の化合物とを含む薬学的組成物。
【請求項33】
化合物が化学式(I)の構造を有する、請求項32記載の薬学的組成物。
【請求項34】
化合物が化学式(II)の構造を有する、請求項32記載の薬学的組成物。
【請求項35】
化学式(I)の構造を有する化合物をさらに含む、請求項34記載の薬学的組成物。
【請求項36】
請求項1記載の化合物を提供する段階と、接触した癌細胞を破壊するのに有効な条件下で癌細胞を化合物と接触させる段階とを含む、癌細胞を破壊する方法。
【請求項37】
接触がエクスビボで起きる、請求項36記載の方法。
【請求項38】
接触がインビボで起きる、請求項36記載の方法。
【請求項39】
提供が、化学式(I)の化合物を提供することにより実施される、請求項36記載の方法。
【請求項40】
提供が、化学式(II)の化合物を提供することにより実施される、請求項36記載の方法。
【請求項41】
癌細胞が、前立腺癌細胞、乳癌細胞、または卵巣癌細胞である、請求項36記載の方法。
【請求項42】
請求項1記載の化合物を提供する段階と、癌状態を治療または予防するのに有効な様式で一定量の化合物を患者に投与する段階とを含む、癌状態を治療または予防する方法。
【請求項43】
提供が、化学式(I)の化合物を提供することにより実施される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
提供が、化学式(II)の化合物を提供することにより実施される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
癌状態が、前立腺癌、乳癌、または卵巣癌である、請求項42記載の方法。
【請求項46】
患者が前癌状態の存在により特徴づけられ、投与が、前癌状態の癌状態への進行を阻止するのに有効である、請求項42記載の方法。
【請求項47】
患者が癌状態の存在により特徴づけられ、投与が、癌状態の退行を引き起こす、または癌状態の成長を阻止するのに有効である、請求項42記載の方法。
【請求項48】
投与が全身的に実施される、請求項42記載の方法。
【請求項49】
投与が、癌細胞または前癌細胞が存在する部位に直接実施される、請求項42記載の方法。
【請求項50】
投与が、経口、局所外用、経皮、非経口、皮下、静脈内、筋内、腹腔内、鼻内滴下、腔内もしくは膀胱内滴下、眼内、動脈内、病巣内投与により、または鼻、喉、および気管支の粘膜などの粘膜への適用により実施される、請求項42記載の方法。
【請求項51】
有効量が、約0.01〜約100mg/kg体重の投与率を含む、請求項42記載の方法。
【請求項52】
投与が周期的に繰り返される、請求項42記載の方法。
【請求項53】
投与が別の癌治療法と組み合わせて実施される、請求項42記載の方法。
【請求項54】
化学式(I)の化合物を形成させるのに有効な条件下で、化学式(III)の中間体

を、(i)化学式(HNR2R3)の一級もしくは二級アミン、または(ii)R2-H含有化合物の存在下のアンモニアのいずれかと反応させる段階を含む、化学式(I)の請求項1記載の化合物を製造する方法。
【請求項55】
R2が、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
X3およびX4を完全に還元するために化合物を十分に還元する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項57】
X1が酸素である環スルホキシド、またはX1およびX2が酸素であるスルホン基を得るために、H2O2および/またはKMnO4で化合物を酸化する段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項58】
アシル、アセチル、またはメシルの群より選択されるR4基を形成させるために、化合物をアシル無水物または塩化メチルスルホニルと反応させる段階をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項59】
化学式(II)の化合物を形成させるのに有効な条件下で、化学式(IV)の中間体

を、化学式(HNR2R3)の一級または二級アミンと反応させる段階を含む、化学式(II)の請求項1記載の化合物を製造する方法。
【請求項60】
R2が、R10-N(Z)-炭化水素-またはR10-炭化水素-である、請求項59記載の方法。
【請求項61】
X3およびX4を完全に還元するために化合物を十分に還元する段階をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項62】
X1が酸素である環スルホキシド、またはX1およびX2が酸素であるスルホン基を得るために、H2O2および/またはKMnO4で化合物を酸化する段階をさらに含む、請求項59記載の方法。
【請求項63】
アシル、アセチル、またはメシルの群より選択されるR4基を形成させるために、化合物をアシル無水物または塩化メチルスルホニルと反応させる段階をさらに含む、請求項59記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−513090(P2007−513090A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541361(P2006−541361)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/038662
【国際公開番号】WO2005/049591
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(504163771)ユニバーシティ オブ テネシー リサーチ ファウンデーション (2)
【出願人】(500426054)オハイオ ステイト ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】