説明

チアゾリジノン誘導体

本発明は、本明細書に記載される式で表される化合物、それらの許容される塩、溶媒和物、水和物および多形体に関する。本発明の化合物は、疾患、特に白血病の治療に有用である。また、本発明は、本発明の化合物を含む組成物、対象における疾患、障害、またはその症状を治療する方法におけるこのような組成物の使用を提供する。一つの実施形態において、本発明は、式Iで表される単離された化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物もしくは多形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、本明細書に記載される式で表される化合物、それらの許容される塩、溶媒和物、水和物および多形体に関する。本発明の化合物は、疾患、特に白血病の治療に有用である。また、本発明は、本発明の化合物を含む組成物、対象における疾患、障害、またはその症状を治療する方法におけるこのような組成物の使用を提供する。
【0002】
(連邦支援の研究または開発に関する陳述)
本出願を支持する研究は、助成NIH R01CA90446で保健福祉省(Department of Health and Human Services)長官によって代表されるアメリカ合衆国によって提供される資金によって部分的に行われた。政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ある種の2,4−二置換チアジアゾリジノン(TDZD)化合物は、グリコーゲン合成キナーゼ3β、即ち、GSK−3の酵素阻害剤として有用であることが報告されている。例えば、特許文献1、特許文献2を参照されたい。グリコーゲン合成キナーゼ−3(GSK−3)は、それぞれが別々の遺伝子によってコードされるα−およびβ−アイソフォームから構成されるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである(非特許文献1;非特許文献2)。スレオニン/セリンキナーゼグリコーゲン合成キナーゼ−3(GSK−3)は、種々の受容体に連結したシグナル経路において極めて重要な役割を果たしている(非特許文献3)。これらの経路内での調節異常は、いくつかの広まっているヒトの障害、例えばII型糖尿病(非特許文献4)、アルツハイマー病(非特許文献5)、CNS障害、例えば躁うつ病および神経変性疾患、ならびに慢性炎症性障害(非特許文献6)の発症における重要な事象であると考えられている。
【0004】
さらに、ある種のTDZD化合物は、AD薬物療法剤として将来性が実証されている非競合性GSK−3β阻害剤であることが報告されている。非特許文献7。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0195238号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0222220号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Coghlanら,Chemistry & Biology,7,793−803(2000)
【非特許文献2】KimおよびKimmel,Curr.Opinion Genetics Dev.,10,508−514(2000)
【非特許文献3】Doble,B W,Woodgett,J R J.Cell Sci.2003,116:1175−1186
【非特許文献4】Kaidanovich O,Eldar−Finkelman H,Expert Opin.Ther.Targets,2002,6:555−561
【非特許文献5】Grimes C A,Jope R S,Prog.Neurobiol.2001,65:391−426
【非特許文献6】Hoeflich K P,Luo J,Rubie E A,Tsao M S,Jin O,Woodgett J,Nature 2000,406:86−90
【非特許文献7】Martinez,A.ら,J.Med.Chem.,45,1292−1299(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今回、TDZD化合物は、従来報告されていた障害とは異なり、区別され得る障害の治療に有用であることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、式I:
【0009】
【化1】

[式中、
Aは、−−C(R−−、−−O−−または−−NR−−であり;Eは、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;Gは、−−S−−、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;−−−は、EおよびGの性質が許す場合には、EとGとの間の第2結合であってもよく、場合により、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成し;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、−−(Z)−アリール、ヘテロアリール、−−OR、−−C(O)R、−−C(O)OR、−−(Z)−−C(O)ORおよび−−S(O)−−から選択され、または指示されたとき、Rは、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成するようなものであり得;Zは、独立して、−−C(R)(R)−−、−−C(O)−−、−−O−−、−−C(=NR)−−、−−S(O)−−およびN(R)−−から選択され;nは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、アリールおよび複素環から選択され;XおよびYは、各々、独立して、=O、=S、=N(R)および=C(R)(R)である]
で表される化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物もしくは多形体に関連した新しい治療法に関する。
【0010】
本治療法は、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物、または本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0011】
また、本発明は、疾患または障害を有する対象の治療に使用される、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物、およびその組成物に関し、対象の治療に有用な本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物を含む組成物を製造するための本明細書に記載されるいずれかの式で表される化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】4−ベンジル−2−メチル−1,2,4−チアジアゾリジン−3,5−ジオン(TDZD−8)で処理されたヒト細胞培養物の結果を図示する。TDZD−8は、初代ヒト白血病細胞の死を誘導するが、正常な細胞では誘導しない。
【図2】TDZD−8で処理されたヒト細胞の結果を図示する。TDZD−8は、白血病細胞の増殖を阻害するが、正常な前駆細胞では阻害しない。
【図3】TDZD−8で処理されたNOD/SCIDマウスへのヒト細胞移植の結果を図示する。TDZD−8は、白血病幹細胞の移植および増殖を阻害するが、正常な造血幹細胞では阻害しない。
【図4】TDZD−8を用いてヒトAML細胞を処理した結果を図示する。ほんの30分程度の曝露は、初代ヒトCD34+CD38−AML細胞の不可逆的な死を誘導するには十分である。
【図5】TDZD−8を用いてヒトAML細胞を処理した結果を図示する。ほんの30分程度の曝露は、AML前駆細胞の不可逆的な死を誘導するには十分である。
【図6】TDZD−8を用いてヒトAML細胞を処理した結果を図示する。TDZD−8は、膜の完全性の急速な喪失を引き起こす。
【図7】TDZD−8を用いてヒトAML細胞を処理した結果を図示する。Z−VADではなくN−アセチル−システインは、初代AML細胞においてTDZD−8毒性をブロックすることができる。
【図8】TDZD−8を用いてヒトAML細胞を処理した結果を図示する。TDZD−8は、遊離チオール基の急速な枯渇によってヒト白血病細胞において酸化的ストレスを誘導する。
【図9】TDZD−8は初代白血病標本の細胞死を誘導する。初代AML(n=37)、CLL(n=12)、ALL(n=6)、bcCML(n=6)およびBM(n=3)、CB(n=7)またはMPB(n=3)標本から得られた正常な標本(n=13)は、20μMのTDZD−8の存在下で18〜24時間培養された。細胞生存性は、アネキシンV/7−AAD染色によって評価された。生存率は、未処理の対照と比較して表される。白血病標本は、正常な標本よりも有意(p<0.001)に高いTDZD−8に対する感受性であった。誤差バーは、SEMを表す。全てのアッセイは、3点測定で行った。
【図10】TDZD−8は白血病前駆および幹細胞を除去する。(A)原発性AML(n=10)、ALL(n=3)、bcCML(n=3)、およびBM、CBまたはMBP標本から得られた正常な標本(n=7)は、20μMのTDZD−8の有無により18〜24時間培養された。細胞生存性は、AMLおよびbcCML(CML)についてCD34+CD38−集団、ALLについてCD34+CD10−細胞において、アネキシンV/7−AAD染色を用いてフローサイトメトリーによって評価された。生存率は、未処理の対照と比較して表される。白血病標本に対する特異性は、有意(**p<0.01)であった。誤差バーは、SEMを表す。(B)AML(n=11)、bcCML(CML;n=3)および正常な標本(n=12)由来の初代細胞は、懸濁培養で18時間処理され、その後、メチルセルロースに播種された。誤差バーは、SEMを表す。コロニー形成単位(CFU)の割合は、未処理の対照に対して標準化される。全てのアッセイは、3点測定で行われた。白血病標本に対する特異性は、有意であった(**p<0.01、p<0.05)。(C)20μMのTDZD−8を用いてまたは用いないで18時間の培養後のAML(上段パネル)または正常なCB(下段パネル)細胞による移植を受けたNOD/SCIDマウスに対する移植率。各々の丸または三角は、移植後の6週間で分析された1匹の動物を表す。各プロットは、個別のAMLまたはCB標本を表す。平均の移植は、水平バーによって指示される。**p<0.01、***p<0.001。
【図11】TDZD−8は酸化的ストレスを誘導する。(A)未処理の対照(黒色の線/灰色の塗りつぶし)と比較した原発性AML、CLL、ALLまたは正常な単核細胞処理された細胞(20μMのTDZD;黒色の太線)のmBBr蛍光に対するフローサイトメトリーの重ね合わせ。(B)20μMのTDZD−8により処理前の1時間、NAC(灰色バー)によって前処理された原発性AML細胞の生存率。生存率は、各薬物の添加後、24時間で測定された。
【図12】TDZD−8は膜の完全性の喪失を示す非常に急速な細胞死動力学を伴う細胞死を誘導する。(A)TDZD−8(左パネル、黒色バー)またはPTL(右パネル、白色バー)で処理された原発性AML標本(n=8)のCD34+CD38−集団について指示された時間点で評価された生存率。生存率は、未処理の対照と比較して表される。(B)TDZD−8で処理された分画されていない原発性AML標本(n=17)について指定された時間点で評価された生存率。生存率は、未処理の対照と比較して表される。誤差バーは、SEMを表す。(C)細胞を指定された時間点で20μMのTDZD−8で処理し、次に、洗浄し、24時間で分析するまで培地に播種した。生存率は、未処理の対照と比較して表される。(D)未処理の対照と比較したCFUの割合。細胞を洗浄し、TDZD−8添加後の指定された時間点でメチルセルロース培地に播種された。(E)膜の完全性の喪失は、TDZD−8処理の15分後、YoPro−1取り込みによって評価された。マルチスペクトル画像フローサイトメトリーは、YoPro−1の内在化を示す。細胞をCD45で染色し、原形質膜を縁取り、細胞透過性DNA色素Draq5で核を特定した。(F)未処理の対照と比較した、TDZD−8処理(20μM、15分間)された正常な単核細胞または原発性AML細胞を重ね合わせている、YoPro−1およびPIについてのフローサイトメトリーヒストグラム。(G)TDZD−8 20μMによる処理前の1時間、Z−VAD(白色バー)で前処理された原発性AML細胞の生存率。生存性は、TDZD−8の添加後24時間で測定された。誤差バーは、SEMを表す。
【図13】TDZD−8は原発性AML標本におけるPKCおよびFLT3を阻害する。(A)PKCリン酸化を測定するためのCD34+ AMLおよび正常なBM標本についてのイムノブロット。アクチンは、充填対照として示される。(B)TDZD−8で1時間処理された原発性CD34+ AMLおよびALL標本を処理して、膜画分を得た。イムノブロットを行い、膜中のPKCαおよびPKCβを測定した。HSP70は対照として示される。(C)FLT3キナーゼアッセイについての滴定曲線およびIC50値。(D)原発性AML標本におけるホスホ−FLT3についてのフローサイトメトリー分析の重ね合わせ。薄灰色の実線のヒストグラムは未処理細胞を表す。点線のヒストグラムはTDZD−8処理細胞を表す。暗灰色の線のないヒストグラムは対照を表す。薬物添加の30分後に分析のために細胞を処理した。CD34+(31%阻害;左パネル)、およびCD34+CD38−(29.5%阻害;右パネル)集団。
【図14】正常な標本の生存率%を図示し、TDZD−8は正常な標本由来の初代単核細胞の細胞死を誘導しないことを指示する。
【図15】(A)CLL標本;(B)ALL(全体およびCD34+CD10−)標本の生存率%を図示し、TDZD−8は、急速な動力学を伴う原発性リンパ性悪性疾患における細胞死を誘導することを指示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式I:
【0014】
【化2】

[式中、
Aは、−−C(R−−、−−O−−または−−NR−−であり;Eは、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;Gは、−−S−−、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;−−−は、EおよびGの性質が許す場合にはEとGとの間の第2結合であってもよく、場合によりEがGと一緒になって縮合アリール基を形成し;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、−−(Z)−アリール、ヘテロアリール、−−OR、−−C(O)R、−−C(O)OR、−−(Z)−−C(O)ORおよび−−S(O)−−から選択され、または指示されたとき、Rは、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成するようなものであり得;Zは、独立して、−−C(R)(R)−−、−−C(O)−−、−−O−−、−−C(=NR)−−、−−S(O)−−および(NR)−−から選択され;nは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、アリールおよび複素環から選択され;XおよびYは、各々、独立して、=O、=S、=N(R)および=C(R)(R)である]
で表される単離された化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物もしくは多形体を提供する。
【0015】
本明細書に記載される式の一局面では、XおよびYは、=Oである。
【0016】
本明細書に記載される式の別の局面では、Aは、−−NR−−である。
【0017】
本明細書に記載される式の別の局面では、Gは、−−S−−である。
【0018】
本明細書に記載される式の別の局面では、Eは、−−NR−−である。
【0019】
本明細書に記載される式の別の局面では、Aは、−−NR−−であり、Eは、−−NR−−である。
【0020】
本明細書に記載される式の別の局面では、Gは、−−S−−であり、Aは、−−NR−−であり、Eは、−−NR−−である。
【0021】
本明細書に記載される式の別の局面では、Rは、各々、独立してアルキルである。
【0022】
本明細書に記載される式の別の局面では、Aは、−−NR−−であり、Eは、−−NR−−であり、ここで、1つのRは、独立してアルキルであり、他のRは、独立してアリールで置換されたアルキルである。
【0023】
別の局面は、式(II):
【0024】
【化3】

[式中、
およびRは、各々、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、−−(Z)−アリール、ヘテロアリール、−−OR、−−C(O)R、−−C(O)OR、−−(Z)−−C(O)ORおよび−−S(O)−−から選択され、または指示されるとき、Rは、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成するようなものであり得;Zは、独立して、−−C(R)(R)−−、−−C(O)−−、−−O−−、−−C(=NR)−−、−−S(O)−−およびN(R)−−から選択され;nは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、アリールおよび複素環から選択され;XおよびYは、各々、独立して、=O、=S、=N(R)および=C(R)(R)から選択される]
で表される化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物、もしくは多形体である。
【0025】
本明細書に記載される式の別の局面は、Rは、各々は、独立して、アルキルおよび置換されたアルキルから選択される。
【0026】
本明細書に記載される式の別の局面は、Rは、各々は、独立して、アルキルおよびアリール置換されたアルキルから選択される。
【0027】
本明細書に記載される式の別の局面は、Rは、各々は、独立して、アルキルおよびフェニル置換されたアルキルから選択される。
【0028】
本明細書に記載される式の別の局面は、1つのRは、独立してアルキルであり、他のRは、独立してアリールアルキルである。
【0029】
他の局面は、表Iに具体的に列挙された化合物である。
【0030】
(表I)
【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

用語「化合物」とは、本明細書中で使用するとき、安定な化合物を意味することが意図される。
【0034】
本発明の化合物の塩は、アミノ官能基などの化合物の酸性基と塩基性基との間に形成されるか、またはカルボキシル官能基などの化合物の塩基性基と酸性基との間に形成される。別の好ましい態様によれば、化合物は、医薬として許容される酸付加塩である。
【0035】
本明細書中で使用し、他に指示がなければ、用語「プロドラッグ」とは、生物条件下(インビトロまたはインビボで)加水分解し、酸化し、またはそうでなければ反応して本発明の化合物を提供することができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物条件下でこのような反応の際のみ活性となればよく、またはその非反応性形態で活性を有してもよい。本発明において意図されるプロドラッグの例には、限定されないが、生体加水分解性の部分、例えば生体加水分解性アミド類、生物加水分解性エステル類、生体加水分解性カルバメート類、生体加水分解性ウレイド類、および生体加水分解性ホスフェート類似体を含む、本明細書に開示されている式のいずれか1つで表される化合物の類似体または誘導体が含まれる。プロドラッグは、典型的には、周知の方法、例えばBurger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery(1995)172−178、949−982(Manfred E.Wolff ed.,第5版)によって記載されている方法を用いて調製することができる;また、GoodmanおよびGilman’s,The Pharmacological basis of Therapeutics,第8版,McGraw−Hill,Int.Ed.1992,“Biotransformation of Drugs”を参照されたい。
【0036】
本明細書中で使用し、他に指示がなければ、用語「生体加水分解性アミド」、「生体加水分解性エステル」、「生体加水分解性カルバメート」、「生体加水分解性カルボネート」、「生体加水分解性ウレイド」および「生体加水分解性ホスフェート類似体」とは、それぞれ、1)化合物の生物活性を破壊せず、インビボにおける有利な特性、例えば取り込み、作用の持続時間、または作用の開始をその化合物に付与するか、あるいは2)それ自体では生物活性はないが、インビボにおいて生物活性を有する化合物に変換されるアミド、エステル、カルバメート、カルボネート、ウレイドまたリン酸類似体を意味する。生体加水分解性アミドの例には、限定されないが、低級アルキルアミド類、α−アミノ酸アミド類、アルコキシアシルアミド類、およびアルキルアミノアルキルカルボニルアミド類が挙げられる。生体加水分解性エステル類の例には、限定されないが、低級アルキルエステル類、アルコキシアシルオキシエステル類、アルキルアシルアミノアルキルエステル類、およびコリンエステル類が挙げられる。生体加水分解性カルバメート類の例には、限定されないが、低級アルキルアミン類、置換されたエチレンジアミン類、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン類、複素環およびヘテロ芳香族アミン類、ならびにポリエーテルアミン類が挙げられる。
【0037】
プロドラッグ塩は、アミノ官能基などのプロドラッグの酸性基と塩基性基との間で形成される化合物、またはカルボキシル官能基などのプロドラッグの塩基性基と酸性基との間で形成される化合物である。好ましい態様では、このプロドラッグ塩は、医薬として許容される塩である。別の好ましい態様によれば、本明細書に記載される式で表される化合物の塩形成可能なプロドラッグに対する対イオンは、医薬として許容される。医薬として許容される対イオンには、例えば、医薬として許容される塩を形成するのに適切であるとして本明細書において留意されているそれらの酸および塩基が含まれる。
【0038】
特に好ましいプロドラッグおよびプロドラッグ塩は、このような化合物が哺乳類に(例えば、より迅速に血液に吸収されるように経口で投与されることによって)投与される場合、本発明の化合物の生物学的利用能を高めるか、あるいはその母型種に比べて、生体部分(例えば、脳または中枢神経系)への母型化合物の送達を高めるものである。好ましいプロドラッグには、水溶性または消化管膜を介した能動輸送を高める基が本明細書に記載されている式で表される構造に付加される誘導体が含まれる。例えば、Alexander,Jら,Journal of Medicinal Chemistry 1988,31,318−322;Bundgaard,H.Design of Prodrugs;Elsevier:Amsterdam,1985;pp 1−92;Bundgaard,H.;Nielsen,N.M.Journal of Medicinal Chemistry 1987,30,451−454;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;Harwood Academic Publ.:Switzerland,1991;pp 113−191;Digenis,G.Aら,Handbook of Experimental Pharmacology 1975,28,86−112;Friis,G.J.;Bundgaard,H.A Textbook of Drug Design and Development;第2版;Overseas Publ.:Amsterdam,1996;pp 351−385;Pitman,I.H.Medicinal Research Reviws 1981,1,189−214を参照されたい。
【0039】
用語「医薬として許容される」とは、本明細書中で使用するとき、信頼できる医学判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがなく、ヒトおよび哺乳動物の組織と接触させて用いるのに適切であり、合理的な利益/リスク比で釣り合っている成分を指す。「医薬として許容される塩」とは、受領者に投与されると、直接的または間接的に本発明の化合物または化合物のプロドラッグを提供することが可能である任意の非毒性の塩を意味する。「医薬として許容される対イオン」とは、受領者に投与されると、塩から放出される場合に非毒性である塩のイオン性部分である。
【0040】
医薬として許容される塩を形成するのに一般に用いられる酸には、二硫化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、並びにパラ−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラ−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸などの有機酸、並びに関連する無機酸および有機酸が挙げられる。したがって、このような医薬として許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシル−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩などが挙げられる。好ましい医薬として許容される酸付加塩には、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸と共に形成されるもの、特にマレイン酸などの有機酸と共に形成されるものが挙げられる。
【0041】
本発明のプロドラッグの酸性官能基と共に医薬として許容される塩を形成するために適切な塩基には、限定されないが、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属水酸化物;アンモニア、不飽和またはヒドロキシ置換モノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルアミン類などの有機アミン類;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル;N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのモノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン類)、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、もしくはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチルアミン)などのN,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ−低級アルキル)アミン類、もしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;並びにアルギニン、リジンなどのアミノ酸などの有機アミン類が挙げられる。
【0042】
本明細書中で使用するとき、用語「水和物」とは、非共有性の分子間力によって結合された化学量論的または非化学量論的な量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0043】
本明細書中で使用するとき、用語「溶媒和物」とは、非共有性の分子間力によって結合された化学量論的または非化学量論的な量の、例えば水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなどの溶媒をさらに含む化合物を意味する。
【0044】
本明細書中で使用するとき、用語「多形体」とは、化合物またはその複合体の固体結晶形態を意味し、例えばX線粉末回折パターンまたは赤外線分光計などの物理学的手段によって特徴付けすることができる。同じ化合物の異なった多形体は、異なった物性、化学特性および/または分光光度特性を呈することができる。異なった物性には、限定されないが、安定性(例えば、熱、光または水分に対する)、圧縮性および密度(製剤および製品の製造で重要である)、吸湿性、溶解性、および溶解速度、並びに溶解性(生体利用率に影響し得る)が挙げられる。安定性の差異は、化学的反応性(例えば、別の多形体から構成される場合よりも1つの多形体で構成された場合の方が投与形態が急速に変色するような差動的酸化)、または機械的特徴(例えば、動力学的に好ましい多形体が熱力学的にさらに安定な多形体に変換されるにつれて錠剤が崩壊する)における変化、またはその両方(例えば、1つの多形体が高い湿度での崩壊により感受性である)の結果生じうる。多形体の異なった物性はその処理に影響を及ぼし得る。例えば、その粒子の形状またはサイズ分布のために、1つの多形体は、他方よりも溶媒和物を形成する可能性が高く、不純物をろ過するまたは洗い流すのがより困難である場合がある。
【0045】
本発明の化合物は、1以上の不斉炭素原子を含むことができる。そのようなものとして、本発明の化合物は、立体異性体の混合物と同様に、個々の立体異性体(鏡像体またはジアステレオマー)として存在する。したがって、本発明の化合物は、立体異性体の混合物を含むだけでなく、他の立体異性体とは実質的に無関係な個々のそれぞれの立体異性体も含む。用語「実質的に無関係な」とは、本明細書中で使用するとき、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、さらに好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体が存在することを意味する。ジアステレオマーを得るかまたは合成する方法は当該技術分野において周知であり、実用的であるとして、最終化合物または出発材料もしくは中間体に適用されてもよい。他の態様では、化合物は単離された化合物である。
【0046】
本明細書に記載される化合物は、1以上の不斉炭素原子を含んでもよく、したがって、ラセミ体およびラセミ混合物、1つの鏡像体、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として生じてもよい。これらの化合物のこのような異性体の全てが、本発明に明示的に含まれる。また、本明細書に記載される化合物は、連結(例えば、炭素−炭素結合)を含むことができ、ここで、結合回転は、その特定の連結について制限され、例えば、制限は、環または二重結合の存在から生じる。したがって、全てのシス/トランスおよびE/Z異性体が、本発明に明示的に含まれる。また、本明細書に記載される化合物は、複数の互変異性体で表されてもよく、このような場合には、たとえたった1つの互変異性体が表されている場合でも、本発明は、本明細書に記載されている化合物の全ての互変異性体を明示的に含む。本明細書に記載されるこのような化合物の全てのこのような異性体が、本発明に明示的に含まれる。本明細書に記載されている化合物の全ての結晶形態および多形体が、本発明に明示的に含まれる。
【0047】
本発明の化合物は、周知の技術によって合成されてもよく、または市販されている。本発明の化合物の合成に用いられる出発材料およびある種の中間体は、商業的な供給源から利用することができ、または当該技術分野において知られている試薬および技術、例えば本明細書に概説されている合成スキームを用いて、それ自体合成され得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0195238号;同第US2005/0222220、および本明細書に引用されている参考文献を参照されたい。
【0048】
一局面では、化合物は、スキーム(I)またはスキーム(II)に従って合成される:
【0049】
【化7】

本明細書に記載されるスキーム中の構造における可変体の定義は、本明細書に概説されている式中の対応する可変体と相応している。
【0050】
合成された化合物は、反応混合物から分離され、さらに、カラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、または再結晶などの方法によって精製することができる。
【0051】
当業者に承認され得るように、本明細書に記載される式で表される化合物を合成するための更なる方法は、当業者に明らかである。さらに、種々の合成段階は、代替順序または順番で行われ、所望の化合物を得ることができる。加えて、本明細書に概説されている溶媒、温度、反応時間などは、例示だけの目的で記載され、当業者は、反応条件の変更が本発明の所望の大環状生成物を生じ得ることを認識する。本明細書に記載されている化合物の合成に有用である合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当業者に知られ、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版,John WileyおよびSons(1991);L.FieserおよびM.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John WileyおよびSons(1994);L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis.John WileyおよびSons(1995)に記載されているものが挙げられる。
【0052】
上記で示されている具体的なアプローチおよび化合物は、限定されることを意図していない。本明細書に記載されるスキームには明示的には示されていない経路内にあるものを含む、本明細書に記載される式で表される化合物およびそれらの合成前駆体を合成する更なる方法は、当業者である化学者による手段に含まれる。本明細書に引用されている合成の参考文献に加えて、反応スキームおよびプロトコールは、市販の構造−検索可能なデータベースソフトウエア、例えばSciFinder(登録商標)(全米化学学会(the American Chemical Society)のCAS部門)、およびSTN(登録商標)(全米化学学会のCAS部門)、CrossFire Beilstein(登録商標)(エルゼビア(Elsevier)MDL)の使用によって、当業者に決定されてもよい。
【0053】
反応条件を最適化し、必要に応じて副産物による競合を最小にする方法は、当該技術分野において知られている。反応の最適化およびスケールアップには、高速平行合成装置およびコンピュータ制御のマイクロリアクターが有利に利用されてもよい(例えば、Design And Optimizaion in Organic Synthesis,第2版,Carlson R、Ed,2005;Elsevier Science Ltd.;Jaehnisch,Kら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2004 43:406;その中の参考文献を参照されたい)。
【0054】
また、本明細書に記載されている合成法は、本明細書に記載されている式で表される化合物の合成を最終的に可能にするために、合成スキームに記載されているいずれかの工程の前または後のいずれかで、適切な保護基の付加または除去する工程をさらに含んでもよい。本明細書に概要されている方法は、1つの式で表される化合物を別の式で表される化合物に変換することを意図している。変換のプロセスは、1以上の化学的な変換を指し、そのままで(in situ)、または中間体化合物の単離とともに行うことができる。この転換には、当該技術分野において知られている技術およびプロトコール、例えば本明細書に引用されている参考文献に記載されている技術およびプロトコールを用いて、出発化合物または中間体と追加の試薬とを反応させることを含み得る。中間体は、精製(例えば、ろ過、蒸留、昇華、結晶化、粉砕、固相抽出、クロマトグラフィー)してまたは精製しないで用いることができる。
【0055】
本発明によって想定される置換基および可変体の組み合わせは、結果として安定な化合物の形成を生じるものだけである。用語「安定な」とは、本明細書中で使用するとき、製造できるように十分に安定性であり、本明細書において詳述される目的(例えば、疾患または状態を治療する、治療用製品、治療用化合物を製造するために用いられる中間体、単離可能なまたは保存可能な中間体化合物の製剤化)に有用であるように十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0056】
用語「アルキル」とは、炭素原子および水素原子からなり、飽和を含まず、1〜8個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残りに結合している直鎖状または分岐状の炭化水素鎖ラジカルを指し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルなどである。アルキルラジカルは、場合により、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0057】
「アルコキシ」とは、式−−ORaで表されるラジカルであって、ここで、Raは、上記で定義されるアルキルラジカルであるものを指し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどである。
【0058】
「アルコキシカルボニル」とは、式−−C(O)ORaで表されるラジカルであって、ここで、Raは、上記で定義されるアルキルラジカルであるものを指し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニルなどである。
【0059】
「アルキルチオ」とは、式−−SRaで表されるラジカルであって、ここで、Raは、上記で定義されるアルキルラジカルであるものを指し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオなどである。
【0060】
「アミノ」とは、式−NHで表されるラジカルを指す。
【0061】
「アリール」とは、フェニルまたはナフチルラジカルを指し、好ましくはフェニルラジカルである。アリールラジカルは、場合により、本明細書に定義されるヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシルおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択される1以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0062】
]「アラルキル」とは、アルキル基に連結されたアリール基を指す。好ましい例には、ベンジルおよびフェネチルが挙げられる。
【0063】
「アシル」とは、式−−C(O)−−Rcおよび−−C(O)−−Rdで表されるラジカルであって、ここで、Rcは、上記で定義されるアルキルラジカルであり、Rdは、上記で定義されるアリールラジカルであるものを指し、例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイルなどを指す。
【0064】
「アロイルアルキル」とは、−−C(O)−−Rdで置換されたアルキル基であって、ここで、Rdは、上記で定義されるものを指す。好ましい例には、ベンゾイルメチルが挙げられる。
【0065】
「カルボキシ」とは、式−−C(O)OHで表されるラジカルを指す。
【0066】
「シアノ」とは、式−CNで表されるラジカルを指す。
【0067】
「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和され、炭素および水素原子のみからなる、安定な3〜10員の単環式または二環式ラジカルを指す。本明細書において他に具体的に記載されていなければ、用語「シクロアルキル」とは、場合により、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルコキシ、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換されてもよいシクロアルキルラジカルを含むことを意味する。
【0068】
「縮合アリール」とは、5員環に縮合したアリール基、特にフェニルまたはヘテロアリール基を指す。
【0069】
「ハロ」とは、ブロモ、クロロ、ヨードまたはフルオロを指す。
【0070】
「ハロアルキル」とは、上記で定義される1以上のハロラジカルによって罹患される、上記で定義されるアルキルラジカルを指し、例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1−フルオロメチル−2−フルオロエチルなどである。
【0071】
「複素環」とは、複素環式基を指す。複素環とは、炭素原子、並びに窒素、酸素、および硫黄からなる群から選択される1〜5個のヘテロ原子からなる、安定な3〜15員環を指し、好ましくは1以上のヘテロ原子を有する4〜8員環、より好ましくは1以上のヘテロ原子を有する5または6員環である。本発明の目的では、複素環は、縮合環系を含んでいてもよい単環式、二環式または三環式系であってよく;複素環式ラジカルに含まれる窒素、炭素または硫黄原子は、場合により酸化されてもよく;窒素原子は、場合により、第4級であってもよく;複素環式ラジカルは、部分的またはは完全に飽和されたかまたは芳香族であってもよい。このような複素環の例には、限定されないが、アゼピン類、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフランが挙げられる。複素環は、場合により、本発明の概要において上記で定義されるRおよびRによって置換されてもよい。
【0072】
「ヘテロアリール」とは、芳香族複素環を指す。
【0073】
「メルカプト」とは、式−−SHで表されるラジカルを指す。
【0074】
「ニトロ」とは、式−−NOで表されるラジカルを指す。
【0075】
「立体異性体」とは、鏡像体およびジアステレオマーの両方を指す。
【0076】
「Boc」とは、tert−ブトキシカルボニルを指す。
【0077】
「アルキレン」とは、シス、トランス、または混在したシス、トランス−二重結合、または三重結合の形態で1個または複数個程度の不飽和を含んでいてもよい直鎖状、分岐状、または部分的もしくは全体的に環状なアルキル基を指す。
【0078】
「置換された」とは、1以上の原子が、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキカルボニル、アミノ、ニトロ、メルカプトおよびアルキルチオからなる群から独立して選択される1以上の置換基によって置換される、本明細書において参照される任意の化学的な構造または基(例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリールなど)を指す。
【0079】
また、本発明は、本明細書に記載される式のいずれか1つで表される化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;または、妥当である場合には、その溶媒和物、水和物、もしくは多形体の有効量;許容される担体を含む組成物を提供する。この担体(単数または複数)は、製剤の他の成分と適合可能であるという意味において「許容される」ものでなければならない。
【0080】
好ましい態様において、本発明は、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物、または医薬として許容される塩、そのプロドラッグもしくは医薬として許容されるそのプロドラッグの塩;前述のいずれかの溶媒和物、水和物もしくは多形体、および医薬として許容される担体を含む組成物を提供し、ここで、前記組成物は、医薬的使用(「医薬組成物」)のために製剤化される。「医薬として許容される担体」は、組成物の他の成分と適合可能であり、薬剤において典型的に用いられる量でその受領者に有害ではない担体である。
【0081】
本発明の医薬組成物に用いることができる医薬として許容される担体、アジュバントおよびビヒクルには、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0082】
本発明の医薬組成物には、経口、直腸、鼻内、局所(口腔および舌下を含む)、膣内または非経口(皮下、筋内、静脈および皮内を含む)投与に適したものが含まれる。ある種の態様では、本明細書に記載される式で表される化合物は、経皮に(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を用いて)投与される。他の処方は、好都合には、単位剤形、例えば錠剤および持続放出カプセル、並びにリポソームに含めて提供されてもよく、製薬の技術分野において周知な任意の方法によって調製されてもよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA(第17版.1985)を参照されたい。
【0083】
このような調製方法には、1以上の補助成分を構成する担体などの投与される成分であるべき分子と会合させる工程が含まれる。一般に、組成物は、有効成分を液体担体、リポソームまたは微細に分割した固形担体またはその両方と均一および密接に会合させ、次に、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。
【0084】
ある種の好ましい態様では、化合物は経口で投与される。経口投与に適した本発明の組成物は、個々の単位、例えば、各々が所定の量の有効成分を含むカプセル、サシェまたは錠剤として;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;あるいは、水中油液エマルジョンもしくは油中水液エマルジョン、またはリポソームに充填されたもの、およびボーラスなどとして提示されてもよい。軟質ゼラチンカプセルは、このような懸濁液を含めるために有用であることができ、化合物の吸収速度を有益に高めてもよい。
【0085】
錠剤は、場合により1以上の補助成分と共に圧縮または成形によって作製されてもよい。圧縮錠剤は、適切な機械において、場合により結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、表面活性剤または分散剤と混合された粉末または顆粒などの流動形態で有効成分を圧縮することによって調製されてもよい。成形錠剤は、適切な機械において、不活性な液体希釈剤によって水分が与えられた粉末化合物の混合物を成形することによって作製されてもよい。中に含まれる有効成分の持続または制御された放出を提供するように、錠剤は、場合により、被覆もしくは記録されてもよく、または製剤化されてもよい。医薬としての有効成分、例えば、本明細書に記載されるものおよび当該技術分野において知られている他の化合物のこのような持続または制御された放出組成物を製剤化する方法は、当該技術分野において知られ、いくつかの発行された米国特許に記載され、そのうちの一部には、限定されないが、米国特許第4,369,172号;同第4,842,866号;同第5,807,574号;それらに引用されている参考文献が挙げられる。化合物を腸に送達させるためにコーティングを用いることができ(例えば、米国特許第6,548,084号、同第6,638,534号、同第5,217,720号、および同第6,569,457号、同第6,461,631号、同第6,528,080号、同第6,800,663号、並びにそれらに引用されている参考文献を参照されたい)、またはそれらは、非浸食性であり、押出しによって活性剤の放出を可能にするように設計されてもよい(例えば、米国特許第6,706,283号を参照されたい)。
【0086】
経口使用のための錠剤の場合では、一般に用いられる担体には、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。また、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も典型的には添加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液を経口で投与する場合、有効成分は、乳化剤および懸濁剤と組み合わせられる。必要に応じて、ある種の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤を添加してもよい。ラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤は、溶解および吸収を高めるのに有用であり得る。
【0087】
局所投与に適した組成物には、香味基礎原料、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントに成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性な基礎原料、またはスクロースおよびアカシアに有効成分を含む芳香剤が含まれる。
【0088】
非経口投与に適した組成物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図された受領者の血液と等張にする溶質を含んでもよい水性および非水性の無菌注射溶液;懸濁剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量の容器または複数回用量の容器、例えばシールされたアンプルおよびバイアルで提供されてもよく、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水の添加だけを必要とする凍結乾燥された(freeze dried)(凍結乾燥された(lyophilized)条件で保存されてもよい。即時の注射溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
【0089】
このような注射用溶液は、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液の形態であってもよい。適切な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイーン(Tween)80)および懸濁剤を用いて、当該技術分野において知られている技術に従って、この懸濁液を製剤化してもよい。また、無菌の注射用調合物は、非毒性であり、非経口として許容される希釈剤または溶媒において、例えば、1,3−ブタノールの溶液として、無菌の注射用溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、マンニトール、水、リンガー溶液および等張の塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁用媒体として従来用いられている。この目的で、合成のモノ−またはジ−グリセリドを含む、刺激の少ない任意の不揮発性油を用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特にそのポリオキシエチル化バージョンなどの天然の医薬として許容される油であるため、注射用剤の調製に有用である。また、これらの油性溶液または懸濁液は、長鎖アルコールの希釈剤またはPh.Helvなどの分散剤または類似のアルコールを含んでもよい。
【0090】
本発明の医薬組成物は、直腸または膣内投与のために坐剤の形態で投与されてもよい。これらの組成物は、式Iで表される化合物と、室温では固形であるが、直腸の温度では液体となるので、直腸で融解して有効成分を放出する適切な非刺激性の賦形剤とを混合することによって調製することができる。このような材料には、限定されないが、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコール類が挙げられる。
【0091】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が、局所適用によって容易に接近可能な領域または臓器に関係する場合には特に有用である。皮膚への局所適用については、担体に懸濁または溶解された有効成分を含む適切な軟膏によって医薬組成物を製剤化する。本発明の化合物の局所適用のための担体には、限定されないが、鉱物油、鉱油、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられる。あるいは、担体に懸濁または溶解された有効成分を含む適切なローションまたはクリームによって医薬組成物を製剤化することができる。適切な担体には、限定されないが、鉱物油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。また、本発明の医薬組成物は、直腸の坐剤製剤によってまたは適切な浣腸製剤において下部腸管に局所的に適用されてもよい。また、局所の経皮パッチおよびイオン導入投与が本発明に含まれる。
【0092】
本発明の医薬組成物は、鼻内エアロゾルまたは吸入によって投与されてもよい。このような組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好ましい保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または当該技術分野において知られている可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。
【0093】
対象とする治療の適用は、対象とする部位で投与されるように局所的であってもよい。対象とする部位で対象の医薬組成物を提供するために、例えば、注射、カテーテルの使用、トロカール、発射体、プルロニックゲル、ステント、持続性薬物放出ポリマーまたは内部アクセスを提供する他のデバイスなどの種々の技術を用いることができる。
【0094】
このようにして、別の態様によれば、埋め込み可能な医療用デバイス、例えば、人工器官、人工弁、血管移植片、ステントまたはカテーテルを被覆するための医薬組成物に本発明の化合物を取り込んでもよい。適した被覆剤および被覆された埋め込み可能なデバイスの一般的な調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載されている。被覆剤は、典型的には、例えば、ハイドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物などの生体適合性ポリマー材料である。被覆剤は、場合により、さらに、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせの適切な上塗りによって被覆され、組成物に制御放出の特徴を付与する。侵襲性デバイスのための被覆剤は、それらの用語が本明細書で使用される場合、医薬として許容される担体、アジュバントまたはビヒクルの定義の範囲内に含まれるべきである。
【0095】
別の態様によれば、本発明は、埋め込み可能な医療用デバイスを被覆する方法を提供し、前記デバイスを上述した被覆組成物と接触させる工程を含む。デバイスの被覆は、哺乳動物に埋め込む前に行うことは当業者に明らかである。
【0096】
別の態様によれば、本発明は、埋め込み型の薬剤放出デバイスに浸漬させるまたは充填させる方法を提供し、前記薬剤放出デバイスを本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物または医薬組成物と接触させる工程を含む。埋め込み可能な薬剤放出デバイスには、限定されないが、生分解性ポリマーのカプセルまたはブレット、非分解性の拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーウエハーが挙げられる。
【0097】
別の態様によれば、本発明は、化合物が治療的に活性であるように、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物または本発明の医薬組成物で被覆された埋め込み可能な医療用デバイスを提供する。
【0098】
別の態様によれば、本発明は、化合物がデバイスから放出され、治療的に活性であるように、本明細書に記載される式で表される化合物または本発明の化合物を含む組成物で浸漬されるかまたは含む埋め込み型の薬剤放出デバイスを提供する。
【0099】
患者から取り出すため、臓器または組織が接触可能である場合、このような臓器または組織を本発明の医薬組成物を含む培地に漬けてもよいし、本発明の医薬組成物を臓器に塗ってもよいし、または本発明の医薬組成物を任意の他の好都合な方法で塗布してもよい。
【0100】
本発明は、さらに、本明細書に記載される式のいずれかで表される1以上の有効量の化合物を、本明細書に記載される疾患または障害を治療または予防するために有用な1以上の有効量の第2の治療薬と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0101】
また、本発明の範囲に、本明細書に記載される式のいずれかで表される有効量の化合物、もしくは医薬として許容されるその塩;またはプロドラッグもしくはそのプロドラッグの医薬として許容される塩;またはその溶媒和、水和物、または多形体を、その障害または症状を治療し、治療計画により副作用を減少させるために有用な有効量の第2の治療薬を組み合わせて、医薬として許容される担体を含む医薬組成物が含まれる。本発明の化合物と組み合わせて有用である追加の治療薬には、限定されないが、キナーゼ阻害剤(例えば、グリーベック(Gleevec)、CEP−701、PKC412など)、熱ショックタンパク質阻害剤(17−AAG)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(ザルネストラ(zarnestra))、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA、デプシペプチド(depsipeptide)、MS−275など)、CDK阻害剤(フラボピリドール(flavopiridol))、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ(bortezomib))、脱メチル化剤(デシタビン(decitabine)、ビダザ(vidaza))、Bcl−2阻害剤(ABT−737)、アントラサイクリン(アドリアマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン)、シタラビン、エトポシド、デキサメタゾン、メトトレキセート、チオグアニン、6−メルカプトプリン、ATRA、ゲムシタビン、シクロホスファミド、シスプラチン、ビンクリスチン、プレドニゾン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、およびリツキサン;前記追加の治療薬のいずれかの医薬として許容される塩;または前述の2以上の組み合わせが含まれる。
【0102】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物、および第2の治療薬の別々の剤形を提供し、ここで、前記化合物および第2の治療薬は、互いに関連している。用語「互いに関連している」とは、本明細書中で使用するとき、別々の剤形が同一の容器(container)に包装されること(例えば、互いに付着した別々のブリスターパック、区画化された容器での別々の区画、同一のボックスに含まれる別々の容器(vessel)など)、または、他には、別々の剤形が一緒に販売され、投与される(互いに24時間以内に連続してまたは同時に)ことを意図していると直ちに分かるように互いに付着させることを意味する。
【0103】
本発明の医薬組成物において、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物は有効量で存在する。本明細書中で使用するとき、用語「有効量」とは、適切な投薬計画で投与された場合、重症度、時間または進行を低下させるかまたは改善し、あるいは、障害によって危険に晒された機能を高め、障害の進行を妨げ、障害の退行を引き起し、または別の療法の予防効果もしくは治療効果を高めるかもしくは改善するのに有効な量を指す。
【0104】
一態様では、本発明は、治療の進捗を監視する方法を提供する。この方法は、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書に記載される化合物によって調節された、本明細書に概説されている任意の標的または細胞型)のレベル、または本明細書に概説されている障害もしくはその症状を患っているかまたは感受性のある対象における診断測定のレベルを測定する工程を含み、その場合、この対象は、疾患またはその症状を治療するのに十分な本明細書に記載される有効量の化合物を投与されている。本方法で測定されるマーカーのレベルは、対象の疾患状態を確認するために、健康な正常な対照または他の疾患の対象におけるマーカーの既知レベルと比較することができる。好ましい態様では、対象におけるマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの測定よりも遅い時間点で測定され、これらの2つのレベルは、疾患の経過または治療の効果をモニターするために比較される。ある種の好ましい態様では、対象におけるマーカーの前処理レベルは、本発明に係る処置の開始前に測定される;次に、このマーカーの前処理レベルは、治療の効果を測定するために、治療開始後に対象におけるマーカーのレベルと比較することができる。
【0105】
ある種の方法の態様では、対象におけるマーカーのレベルまたはマーカーの活性レベルは、少なくとも1回測定される。例えば、同じ患者、別の患者、または正常な対象から従前またはその後に得られたマーカーレベルの別の測定に対するマーカーレベルの比較は、本発明に係る治療が所望の効果を有しているかどうかを決定し、それによって、必要に応じて、投薬量レベルの調整を可能にするのに有用であり得る。マーカーレベルの測定は、当該技術分野において知られているかまたは本明細書に記載されている任意の適切なサンプリング/発現アッセイ法を用いて実行することができる。好ましくは、組織または流体試料は、はじめに対象から取り出される。適切な試料の例には、血液、口または頬の細胞、根元を含む毛髪試料が挙げられる。他の適した試料は、当業者に知られているものである。試料中のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)の測定は、当該技術分野において知られている任意の適切な技術、例えば、限定されないが、酵素免疫アッセイ、ELISA、放射性標識/アッセイ技術、ブロッティング/ケミルミネッセンス法、リアルタイムPCRなどを用いて行うことができる。
【0106】
動物およびヒトに関する投薬量の相互関係(体表面の平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireichら,(1966)Cancer Chemother Rep 50:219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重からおよそ決定されてもよい。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardley,N.Y.,1970,537を参照されたい。本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の有効量は、約0.001mg/kg〜約500mg/kg、より好ましくは約0.01mg/kg〜約100mg/kgの範囲であることができ、上述の範囲内の高い数および低い数を含めた範囲が含まれる。また、当業者に認識されるように、有効な投薬量は、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の性別、年齢および一般的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療の同時使用の可能性、並びに治療にあたる医師の判断によって変更される。
【0107】
第2の治療剤を含む医薬組成物については、その第2の治療剤の有効量は、その追加の薬剤だけを用いる単一治療計画で通常利用される投薬量の約20%〜100%の間にある。これらの第2の治療剤の通常の単一治療の投薬量は当該技術分野において周知である。例えば、Wellsら,編集,Pharmacotherapy Handbook,第2版,AppletonおよびLange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)を参照されたい。これらの参考文献の各々は、全体として、参照により本明細書に援用される。
【0108】
上記で列記された第2の治療剤のいくつは、本発明の化合物と相乗的に作用することが期待される。これが生じる場合、第2の治療剤および/または本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の有効な投薬量を単一治療で必要とされるものから下げることができる。これには、第2の治療剤または本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物のいずれかの副作用の最小化、有効性における相乗的な改善、投与もしくは使用の容易さの改善および/または化合物の調製もしくは製剤化の全体的な費用の削減という利点がある。
【0109】
治療法
一態様では、本発明は、対象(例えば、ヒト、動物)における障害またはその症状を治療または予防する方法を提供し、該方法には、本明細書に記載される式のいずれかで表される有効量の化合物を、好ましくは医薬として許容される担体をさらに含む組成物の一部として、該対象に投与することが含まれる。好ましくは、この方法は、白血病細胞、白血病幹細胞、または関連する血液障害に関わる1以上の疾患または障害を患っているかまたはそれに感受性のある対象を治療するために用いられる。
【0110】
また、本方法は、癌細胞増殖、リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病細胞増殖、増殖性疾患、血液癌、中枢神経系の癌、乳癌、前立腺癌、肝臓癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、結腸癌、睾丸癌、卵巣癌、甲状腺癌、頭部および頸部癌、子宮頸癌、骨癌、皮膚癌、および胃癌、並びに血液悪性腫瘍、または急性骨髄性白血病(AML)、急性転化白血病(CML、障害のリンパ性およびメロイド(meloid)形態)、急性リンパ性白血病(ALL)、および慢性リンパ性白血病(CLL)などの障害を患っているかまたはそれに感受性のある対象を治療するために用いることができる。他の態様は、指示された治療を必要とするものとして患者を認定する、本明細書に記載される方法のいずれかを含む。
【0111】
本明細書に記載されている方法は、白血病細胞(例えば、ヒト白血病細胞)を根絶させるために有用であり、一局面では、白血病細胞と、2つの同時の事象:(i)細胞膜の透過、(ii)酸化的ストレスの誘導を引き起こすことができる薬剤(例えば、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物および組成物)と接触させることを伴う。また、本明細書に記載されている方法は、(i)膜の完全性の急速激な喪失、(ii)遊離チオールの枯渇、または(iii)PKCとFLT3シグナル経路のいずれかまたはその両方の阻害の1以上を伴うものである。
【0112】
本発明の別の局面は、対象の白血病細胞(例えば、白血病芽細胞)集団(例えば、腫瘍)の阻害(細胞死の誘因を含む)において用いるための本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物である。好ましくは、その使用は、本明細書に記載されている疾患、障害または症状の対象における治療または予防においてである。
【0113】
本発明の別の局面は、対象における白血病幹細胞集団の阻害(細胞死の誘因を含む)において用いるための本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物である。好ましくは、その使用は、本明細書に記載されている疾患、障害または症状の対象における治療または予防においてである。
【0114】
(予防的治療を含む)本発明の好ましい治療法は、一般に、本明細書に記載される式で表される化合物などの治療的に有効な量の本明細書に記載される化合物を、それを必要とする対象、例えば哺乳動物、特にヒトに投与することを含む。このような治療は、癌または増殖性疾患、障害、もしくはその症状を患っているか、それに感受性であるか、またはその危険性にある対象、特にヒトに適切に投与される。「危険性にある」対象の決定は、対象もしくは医療提供者の診断検査または意見(例えば、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、マーカー(本明細書で定義されている)、家族歴など)によって、任意の客観的または主観的測定により行うことができる。
【0115】
本発明の別の局面は、対象において、疾患を治療し、白血病細胞において細胞死を引き起し、白血病細胞(例えば、正常細胞に悪影響を与えないで、正常細胞に対しては毒性が減少しているかまたはほとんどない、他の治療によっては通常破壊しない白血病細胞、標準的な白血病治療によっては通常破壊しない白血病細胞)の細胞死を選択的に引き起こす薬剤の製造における本明細書に記載される式のいずれかの使用である。好ましくは、この薬剤は、本明細書に記載されている疾患、障害または症状のある対象における治療または予防に用いられる。
【0116】
別の態様では、この治療法は、1以上の追加の治療薬を前記患者に投与することをさらに含み、この治療薬は、単独でまたは本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物と組み合わせて、本明細書に概説されている疾患、障害またはその症状を治療するのに効果的であり;本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の副作用を低下させ、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の活性を強めるかまたは高め、あるいは本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の薬理作用の持続期間を増すためのものである。
【0117】
追加の薬物には、例えば、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、酪酸ナトリウム、MS−275、SAHA、アファシジン(aphacidin)、デプシペプチド、FK228、トリクロスタチンA)、キナーゼ阻害剤(例えば、グリーベック(Gleevec)、CEP−701、PKC412など)、熱ショックタンパク質阻害剤(17−AAG)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(ザルネストラ)、CDK阻害剤(フラボピリドール)、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ)、脱メチル化剤(デシタビン、ビダザ)、Bcl−2阻害剤(ABT−737)などが含まれる。
【0118】
さらに別の態様では、この治療法は、1以上の治療薬を前記患者に投与する工程を含み、この治療薬は、単独でまたは本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物と組み合わせて、非GSKが介在した疾患、障害、またはその症状の1以上を治療するのに効果的である。
【0119】
上記態様の各々では、第2の治療薬または複数の治療薬は、単一剤形の一部または別々の剤形として、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物化合物と一緒に投与されてもよい。あるいは、第2の治療薬または複数の治療薬は、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物化合物の投与前に、その投与に連続して、またはその投与後に投与されてもよい。このような併用治療では、本発明の化合物と第2の治療薬(単数または複数)の両方は、従来法によって投与される。第2の治療薬(単数または複数)の投与は、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の化合物の投与前に、その投与と同時に、および/またはその投与後に行ってもよい。第2の治療薬の投与が本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物と同時に行われる場合、2つの(またはそれを超える)薬物は、単一剤形(例えば、本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物、上述される第2の治療薬または複数の治療薬、医薬として許容される担体を含む本発明の組成物)、または別々の剤形で投与されてもよい。本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物の化合物と第2の治療薬(単数または複数)の両方を含む本発明の組成物の対象への投与は、治療経過中の別の時間で、該患者への前記第2の治療薬(単数または複数)、任意の他の治療薬または本発明の任意の化合物の別々の投与を妨げない。
【0120】
本発明の方法に有用な第2の治療薬または複数の治療薬の有効量は、当業者に周知であり、投薬の指針は、本明細書に参照されている特許、並びにWellsら,編集,Pharmacotherapy Handbook,第2版,AppletonおよびLange,Stamford,Conn.(2000);PDR Pharmacopoeia,Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000,Deluxe Edition,Tarascon Publishing,Loma Linda,Calif.(2000)、および他の医学書に見出すことができる。しかしながら、追加の薬物(単数または複数)の最適な有効量の範囲の測定は、当業者が十分に対応できる範囲内である。
【0121】
前記治療法に有用な第2の治療薬は、組み合わせ組成物の一部として、上述されるものと同じである。本明細書に記載される化合物は、酵素のキナーゼファミリーのメンバーに対して阻害活性を有することが見出され、したがって、キナーゼが介在する代謝経路および疾患/障害プロセスの調節に有用である。別の局面は、対象に本明細書に記載される化合物を投与することを含む、対象におけるキナーゼが介在した疾患または障害を治療する方法である。他の側面では、このキナーゼは、例えば、AKT1(PKBアルファ)、CHEK1(CHK1)、DYRK3、FLT3、GSK3B、KDR(VEGFR2)、MAP4K4(HGK)、MAPK14(p38アルファ)、MAPKAPK2、MET(cMet)、PHKG2、PIM1、PRKCA(PKCアルファ)、PRKCB1(PKCベータ1)、PRKCB2(PKCベータ2)、PRKCD(PKCデルタ)、PRKCE(PKCイプシロン)、PRKG(PKCガンマ)、PRKCH(PKCエータ)、PRKCI(PKCイオタ)、PRKCN(PKD3)、PRKCQ(PKCシータ)、PRKCZ(PKCゼータ)、PRKCD1(PKCミュー)、ROCK1、RPS6KA3(RSK2)、STK6(オーロラ(Aurora)A)、またはSYKである。
【0122】
原発性AML、急性転化CML(bcCML)、ALL、およびCLL標本は、TDZD−8による処理に応じて、細胞死の急速な誘導を示した。さらに、骨髄性白血病については、細胞毒素が、異種移植アッセイによって明らかにされるように、表現型で示された幹/前駆細胞、インビトロのコロニー形成前駆細胞、およびLSCについて観察された。対照的に、正常な造血幹細胞および前駆細胞には有意な毒性は観察されなかった。顕著には、細胞死は、TDZD−8曝露の2時間以内で顕著になることが多かった。このようにして、本明細書に記載される化合物および方法の他の局面には、本明細書に記載される化合物/組成物との接触または曝露に応じて、白血病細胞が細胞死を受け、正常細胞は同じようには影響を受けないものが含まれる。また、本明細書に記載される化合物への曝露に応じた白血病細胞死が急速である(例えば、<6時間、<5時間、<4時間、<3時間、<2時間、<1時間、<30分、<15分、<5分)方法、投与される化合物が接触または曝露に応じた急速な細胞死を引き起こすことができる方法が意図される。
【0123】
別の局面によれば、本発明は、上述される疾患、障害または症状の対象における治療または予防に用いるための単一組成物でまたは別々の剤形として、本明細書に記載される式で表される化合物の化合物、上述された1以上の第2の治療薬を提供する。
【0124】
さらに別の局面では、本発明は、上述される疾患、障害または症状の対象における治療または予防のために、単一組成物としてまたは別々の剤形として、薬剤の製造における本明細書に記載される式のいずれかで表される化合物化合物、上述された1以上の第2の治療薬の使用を提供する。
【0125】
本発明の化合物は、知られている方法により生物活性を迅速にアッセイすることができる。例えば、細胞周期状態を測定するインビトロの方法(ヨウ化プロピジウムまたは同様の色素による標識を用いるフローサイトメトリー)、細胞毒性(アネキシンV、トリパンブルー、TUNEL、または同様の試薬による標識)、前駆細胞頻度(メチルセルロースまたは軟寒天コロニー形成ユニット−CFU−アッセイ)、コボレストーン領域(cobblestone−area)形成アッセイ(CAFC)、長期培養始原細胞(LTC−IC)アッセイなどである。
【0126】
本発明によって治療できる造血細胞の異常増殖に関わる前述の適応症のいくつかの動物モデルには、例えば、原発性ヒトAML、ALL、またはCML細胞を注射された非肥満性糖尿病−重傷複合型免疫不全(NOD/SCID)マウス;同系交配されたスプラギュー・ドーリー(Sprague−Dawley)/チャールズ・ユニバーシティー・バイオロジー(SD/Cub)ラット(自然発生T細胞リンパ腫/白血病モデル);エミュー−前初期応答遺伝子X−1(IEX−1)マウス(T細胞リンパ腫モデル);サイノモグルス−エプスタイン・バーウイルスで注入されたウサギ(T細胞リンパ腫モデル);p210bcr/ablを発現しているトランスジェニックマウス(創始マウス、ALLモデル;後代マウス、CMLモデル);TCL−1を発現しているトランスジェニックマウス(CLLモデル);OCI−Ly10または関連細胞株を注射されたNOD/SCIDマウス(非ホジキンリンパ腫モデル);U266細胞または初代ヒト骨髄腫細胞で注射されたNOD/SCID/ガンマック(gammac)ヌル(null)(NOG)マウス(多発性骨髄腫モデル);5T33細胞で注射されたC57B1/KaLwRijマウス(多発性骨髄腫モデル)が含まれる。本発明の化合物の各々は、上記または類似の動物モデルで試験されてもよい。
【0127】
本発明を十分に理解することができるために、下記の実施例を記載する。実施例は、本発明の範囲を制限することが意図されず、更なる実施例が当業者に明確となる。
【実施例】
【0128】
(実施例1:図1 プロトコール)
A.AML細胞、bcCML細胞、CLL、正常な骨髄(BM)、および臍帯血(CB)は、インフォームドコンセントを受けたボランティア提供者、または国立疾病研究互助組織(National Disease Research Interchange:NDRI)から得られた。これらの細胞を単離し、[1]に示されるように処理した。要約すると、試料をフィコール−パック(Ficoll−Paque)(ファルマシア バイオテク(Pharmacia Biotech、ニューヨーク州ピスカタウェイ(Piscataway,NY))密度勾配分離に供して、単核細胞を分離した。分析した試料中のCD34の割合は、20%〜80%の範囲であった。新鮮な細胞または解凍された細胞を血清不含培地(SFM)[2]中で薬物添加前の1時間培養された。全ての薬物処理は、3点測定で行われた。TDZD−8(カルビオケム(Calbiochem))をDMSO中で再構成し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で連続的に希釈した。生存細胞の総数は、[3]に記載されるように、フローサイトメトリーアポトーシスアッセイを用いて測定された。要約すると、処置の18時間後、標本を抗CD34−PE(ベクトン ディッキンソン(Becton Dickison)、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))を用いて20分間標識した。次に、細胞を冷PBS中で洗浄し、200μlのアネキシン−Vバッファー中に懸濁した。アネキシン−V−フルオレセインイソチオシアネート(FITC)および7−アミノアクチノマイシン(7−AAD;モレキュラー プローブス(Molecular Probes)、オレゴン州ユージン(Eugene,OR))を添加し、試料を室温で15分間インキュベートし、次に、ベクトン ディッキンソンLSRIIフロサイトメーターを用いて分析した。回収された事象の総数は100,000であった。生存細胞の割合は、(ゲート未制御の)全細胞上、およびCD34集団について設定されたゲート上のアネキシンVneg/7−AADneg細胞として規定された。
【0129】
【数1】

B.原発性ヒトAML、急性転化CML、ALLおよびCLL細胞、結集してきた末梢血(MPB)および正常な骨髄(BM)細胞は、インフォームドコンセントを受けたボランティア提供者から得られた。追加の試料は、ケベック州白血病細胞バンク(Quebec Leukemia Cell Bank)から得られ、ここでは、10軒の大学および地域病院から標本を回収している。それらは、異なる形態型のAMLおよびALLを有する患者からインフォームドコンセントを受けてPBまたはBM細胞を得ていた。臍帯血(CB)は、国立疾病研究互助組織(NDRI)から、またはロチェスター・ゼネラル・ホスピタル(Rochester General Hospital)でインフォームドコンセントを受けたボランティア提供者から得られた。単核細胞は、フィコール−パック(ファルマシア バイオテク、ニューヨーク州ピスカタウェイ)密度勾配分離を用いて該試料から単離された。ある場合には、細胞は、イスコブ(Iscove)変法ダルベッコ培地(IMDM)、40%ウシ胎児血清(FBS)、および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)の凍結培地、またはクリオストール(CryoStor)(商標)CS−10(VWR)に凍結保存された。薬物添加前の1時間、血清不含培地(SFM)34で細胞を培養した。TDZD−8およびパルテノライドは、それぞれ、EMDケミカルズ(chemicals)(カリフォルニア州サンディエゴ)、バイオモル(Biomol)(ペンシルベニア州プリマスミーティング)から得られた。
【0130】
C.フローサイトメトリー:アポトーシスアッセイは、19に記載されるように行った。要約すると、処理の18〜24時間後、抗CD38−アロフィコシアニン(APC)、CD34−PECy7、CD123−フィコエリチン(phycoerythin)(PE)またはCD10−フルレセイン(flurescein)イソチオシアネート(FITC)(ベクトン ディッキンソン、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて標本を標識した。細胞を冷PBS中で洗浄し、200μlのアネキシン−Vバッファー(0.01M HEPES/NaOH、0.14M NaCl、2.5mM CaCl)アネキシン−V−FITCまたはアネキシンV−PE(ベクトン ディッキンソン)および7−アミノアクチノマイシン(7−AAD;モレキュラー プローブス、オレゴン州ユージン)に懸濁させた。次に、試料を室温で15分間インキュベートし、BD LSRIIフローサイトメーターで分析した。表現型で示された幹細胞亜集団についての分析は、AML、ALLおよび正常な標本に対して、それぞれ、ゲート制御されているCD34+/CD38−/CD123+、CD34+/CD10−、およびCD34+/CD38−によって行われた。NOD/SCID異種移植モデルにおけるヒト細胞移植を評価するために、BM細胞は、抗Fc受容体抗体である2.4G2および25%ヒト血清でブロックされ、次に、抗ヒトCD45−PE抗体(ベクトン ディッキンソン、カリフォルニア州サンノゼ)を用いて評価された。遊離チオール分析は、モノブロモビナン(monobromobimane)(mBBr)(プローブス−インビトロゲン(Probes−Invitrogen)で細胞を標識することによって行われた。ホスホ−FLT3(Tyr591)アレキサフルオロ−488結合体(セル シグナリング(Cell Signaling),マサチューセッツ州ダンバーズ)は、活性FLT3の検出に用いられた。マルチスペクトル画像フローサイトメトリーに関しては、YoPro−1(プローブス−インビトロゲン)、7−AAD、Draq5およびCD45−PEで細胞を染色した。また、膜の完全性アッセイは、YoPro−1、ヘキスト(Hoescht)−33342、ヨウ化プロピジウム(PI)(プローブス−インビトロゲン)およびアネキシンV−APCによる染色によって標準的なフローサイトメトリーにより行った。アムニスイメージストリーム(Amnis Corporation)画像サイトメーター(アムニス コーポレーション(Amnis Corporation);ワシントン州シアトル(Seattle,WA))を用いて細胞を分析した。
【0131】
(実施例2:図2 プロトコール)
AML、正常細胞または他の標本は、20マイクロモーラーのTDZD−8の有無により18時間、上述されるSFM中で培養された。次に、3ユニット/mlのエリスロポエチンおよび50ng/mlのG−CSF(R&Dシステムズ、メネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))を補足したメトカルト(Methocult)(商標)GF H4534(IMDMに含まれる1%メチルセルロース、30%FBS、1%BSA、10−4M 2−メルカプトエタノール、2mM L−グルタミン、50ng/ml rh幹細胞因子、10ng/ml rhGM−CSF、10ng/ml rhIL−3−ステムセル テクノロジーズ(Stem Cell Technologies)、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー(Vancouver,B.C.))に細胞を50,000細胞/mlで播種した。培養10〜14日後にコロニーを記録した。
【0132】
(実施例3:図3 プロトコール)
NOD/SCID(NOD.CB17−prdkdc scid/J)マウス(ジャクソンラボラトリーズ(Jackson Laboratories),メイン州バーハーバー(Bar Harbor,ME))は、移植前の当日に、ラッドソース(RadSource)(商標)X線照射器を用いて270radで亜致死的に照射された。アッセイされる細胞(AMLまたは正常な臍帯血−CB)は、0.5%FBSを含む最終体積が0.2mlであるPBSに含ませて、尾静脈を介して(5百万〜1千万個の細胞)注入された。6〜8週後、動物を屠殺し、BMを単離した。ヒト細胞移植を分析するために、BM細胞を抗Fc受容体抗体である2.4G2および25%ヒト血清でブロックし、抗ヒトCD45、CD33またはCD19抗体(BD、カリフォルニア州サンノゼ)で標識し、ベクトン ディッキンソンLSRIIフロサイトメーターを用いて分析した。
【0133】
(実施例4:図4 プロトコール)
水平軸に示された時間点後、細胞をPBSで洗浄し、過剰のTDZD−8を取り除き、全体で24時間、予め温めたSFMに再度播種したことを除いて、実施例1に記載されるものと同じ手法を用いた。
【0134】
(実施例5:図5 プロトコール)
水平軸に示された時間点後、細胞をPBSで洗浄し、過剰のTDZD−8を取り除き、メトカルト(商標)GF H4534に50,000細胞/mlで播種したことを除いて、実施例2に記載されるのと同じ手法を用いた。
【0135】
(実施例6:図6 プロトコール)
AML細胞は、20マイクロモーラーのTDZD−8を用いて、所定の時間点について、実施例1に記載されるように培養された。次に、細胞をPBSで洗浄し、アネキシンV−アロフィコシアニン(APC)および生体染色色素:Yo−Pro−1(0.1uM)、ヘキスト33342(2.5ug/ml)、およびヨウ化プロピジウム(0.5ug/ml)(モレキュラー プローブス)を用いて染色し、膜透過性を評価した。
【0136】
(実施例7:図7 プロトコール)
実施例1に記載されるように、培養物を構築し、分析した;しかしながら、TDZD−8の添加前の1時間、n−アセチルシステイン(シグマ(Sigma))またはz−バッド(vad)(カルビオケム)のいずれかを用いて、細胞を予めインキュベートした。
【0137】
(実施例8:図8 プロトコール)
AMLおよび正常細胞は、20マイクロモーラーのTDZD−8の有無により所定時間(水平軸)、上述されるSFMで培養された。細胞内のチオールレベルは、50μMのモノブロモビナン(モレキュラー プローブス)を用いた標識後、フローサイトメトリーによって評価された。
【0138】
原発性AML、急性転化CML(bcCML)、ALL、およびCLL標本は、TDZD−8による処理に応じて、細胞死の急速な誘導を示した。さらに、骨髄性白血病については、細胞毒素が、異種移植アッセイによって明らかにされたように、表現型で示された原始的細胞、インビトロのコロニー形成前駆細胞、およびLSCについて観察された。対照的に、正常な造血幹細胞および前駆細胞には有意な毒性は観察されなかった。顕著には、細胞死は、TDZD−8曝露の2時間以内で顕著になることが多かった。細胞試験および分子試験は、TDZD−8が細胞死を誘導するメカニズムが、膜の完全性の急速な喪失、遊離チオールの枯渇、PKCおよびFLT3シグナル経路の両方の阻害を伴うことを指示している。本発明者らは、TDZD−8が、悪性幹および前駆細胞集団を含む白血病細胞を急速に標的化するという独特であり、しかも従来知られていないメカニズムを用いていると結論付ける。
【0139】
キナーゼアッセイ:1点および滴定アッセイは、当該技術分野において知られているプロトコールを用いて(またはプロトコールを本質的に用いて)、例えば、本明細書に具体的に概説されているものを含む、一連のキナーゼ標的物に対するキナーゼ活性プロファイリングについて行われる。このようなアッセイには、例えば、市販供給源、委託研究所などから利用可能なものが含まれる。一連のキナーゼ標的物に対するTDZD−8の代表的な結果を表3に概説している。
【0140】
イムノブロット:以前に記載されるように35、細胞を調製および分析した。mem−PER真核生物膜タンパク質抽出キットを用いて、製造業者の指示書(ピアス(Pierece;イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL))に従って、膜画分を調製した。ホスホ−PKC(汎)(ベータII;Ser660)、ホスホ−PKCアルファ/ベータII(Thr638/641)、全PKCα、PKCβおよびFLT3(サンタクルーズ バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology、カリフォルニア州)、カスパーゼ−3(セルシグナリング テクノロジーズ(Cell Signaling technologies);マサチューセッツ州ダンバーズ);カスパーゼ−8およびPARP(BDサイエンス)、開裂したPARP(アブカム(abcam))または抗アクチン(AC−15;シグマ)抗体を用いてブロットを探査した。
【0141】
統計的分析:統計的分析およびグラフは、グラフパッドプリズム(GraphPad Prism)ソフトウェア(グラフパッドソフトウェア(GraphPad Software),カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA))を用いて行った。統計的分析については、データは、対数変換され、一方向性のANOVA、次にターキー(Turkey)ポストホック(post−hoc)試験によって分析された。2群の比較については、対応のあるt−検定によって有意差を測定した。
【0142】
(参考文献)
【0143】
【数2】

【0144】
【数3】

【0145】
【数4】

【0146】
【数5】

【0147】
【数6】

結果
TDZD−8は、白血病特異的な細胞死を誘導する。初期の試験は、異なる種類の原発性ヒト白血病(AML、急性転化CML、CLLおよびALL)、並びに正常な造血細胞に対するTDZD−8の効果を試験するために行われた。図9は、20μMのTDZD−8で24時間処理された原発性ヒト標本に対する未処理の対照と比較した生存率の割合を示す。白血病の全ての形態は、TDZD−8によって強力に弱められ、AML(n=37)に対しては15%、CLL(n=12)に対しては7.2%、ALL(n=6)に対しては12.4%、bcCML(n=6)に対しては21.6%の平均生存率であった。対照的に、正常標本の細胞生存率は、79.5%(n=13)であった。さらに、正常標本に対する毒性の欠如は、各組織タイプを個別に分析すると、CB、BMおよびMPBによって有意に相違しなかった(図14)。このようにして、TDZD−8の細胞毒性は白血病標本に対して有意に(p<0.001)特異的であった。白血病細胞に対する幅広い有効性が与えられたので、本発明者らは、NCI−60パネルに対してスクリーニングするために、TDZD−8を甘受することによって、様々な種類の腫瘍細胞について活性の程度をさらに決定した36。興味深いことに、TDZD−8活性は、血液悪性腫瘍由来の細胞株に特異的であり、この場合、50%の増殖阻害(GI50)を達成するための平均濃度は、8.3μMであった(表1)。全ての他の腫瘍株は、最大100μMの濃度で増殖阻害を示さなかった。同時に、これらのデータは、TDZD−8が白血病および関連疾患に対して高い細胞毒性であるが、この化合物は、正常な造血細胞および他の非造血組織由来の腫瘍を実質的に害さないことを指示している。
【0148】
TDZD−8抗白血病作用が前駆細胞および幹細胞レベルで観察される。多数の薬物は、大半の腫瘍集団に有効性を示すが、より多くの原始幹細胞および前駆細胞の根絶は、重大な課題を示すことができる。白血病のいくつかの形態におけるLSCの確立された役割が与えられたので1,34,37、本発明者らは、AML、bcCMLおよびALL標本由来の表現型で記載された幹細胞に対するTDZD−8の効果を調べた。20μMのTDZD−8による24時間の処理によって、AML標本(n=10)のCD34+CD38−について7.6%;bcCML標本(n=3)のCD34+CD38−について2.8%;ALL標本(n=3)のCD34+CD10−について22.3%の平均生存率がもたらされた(図10A)。対照的に、健常な標本(n=7)のCD34+CD38−細胞の生存率は、TDZD−8処理後では80.2%であった(図10A、灰色バー)。このようにして、表現型で記載されたLSCに対する化合物の特異性は、非常に有意であった(p<0.001)。また、TDZD−8が機能的に定義された骨髄性前駆細胞を標的とし得るかどうかを決定するために、本発明者らは、メチルセルロースコロニーアッセイを行った。図10Bは、コロニーを形成する正常な標本の能力が、20μMのTDZD−8(84.14%の骨髄性コロニー、94.79%の赤血球コロニー;n=12)による処理によっては実質的に影響を受けなかったことを示している。対照的に、コロニー形成における有意な減少は、TDZD−8処理後にAMLおよび急性転化CMLの両方について観察され、AMLに対しては7.3%CFUに過ぎず(n=11、p<0.001)、bcCMLに対しては16.1%CFUであった(n=3、p<0.01)。アッセイされた11個のうち6個のAML試料について、いずれにせよ、TDZD−8による処理後にコローは認められなかったことに留意されたい。さらに、本発明者らは、NOD/SCID異種移植モデル38を用いて、AMLおよび正常な標本について幹細胞活性を分析した。これらの試験は、20μMのTDZD−8により18時間処理されたAML細胞が、NOD/SCIDマウスに移植するそれらの能力を有意に減少させることを示した(図10C)。3つの独立した標本の分析は、未処理の対照と比較して、白血病細胞の移植が、それぞれ、11%(p<0.001)、1%(p=0.001)、および8.5%(p<0.01)まで減少させることを示した。対照的に、TDZD−8による処理後、正常な標本(n=3)の移植に対する影響はほとんど観察されないかまたは全く観察されなかった。同時に、これらのデータは、TDZD−8が白血病の造血前駆細胞および幹細胞に対して高い細胞毒性であり、正常な造血細胞および幹細胞には細胞毒性がないことを示す。
【0149】
TDZD−8活性は酸化的ストレスを伴う。従来の試験では、白血病特異的な薬物は酸化的ストレスの誘導に関わるメカニズムを介して機能し得ることが示されている39,14。したがって、また、本発明者らは、TDZD−8が標的細胞の酸化的状態を調節し得るのかどうかを調べるために試験を行った。遊離チオール基を検出する色素mBBrを用いて標識することが図11Aに示されている。標識強度の減少は、遊離チオールの喪失、酸化的ストレスの増加の指標を表す。TDZD−8による処理に応じて、mBBr標識の減少は、曝露後の30分程度で原発性AML、ALLおよびCLL標本において顕著となり、これは、細胞内の急速なチオール枯渇を示唆している。さらに、mBBrのほんの僅かな変化が正常な標本で観察された。酸化的状態の役割をさらに調べるために、本発明者らは、抗酸化的N−アセチル−システイン(NAC)を用いて標的細胞を前処理し、これは、TDZD−8によって誘導された原発性AML細胞における細胞死応答を完全にブロックした(図11B)。総合すると、これらのデータは、TDZD−8が酸化的ストレスを誘導し、この活性は上記で示される抗白血病特性に重要であることを指示している。
【0150】
TDZD−8抗白血病活性は非常に急速な反応動力学で観察される。本発明者らは、酸化的状態の変化(図11A)が、相対的に急速な反応動力学で生じることに気付き、他の細胞変化も急速に起こり得ることを示唆している。TDZD−8が白血病細胞に影響を及ぼす可能性のある割合をさらに試験するために、本発明者らは、原発性AML標本を用いて、曝露後の種々の時間(0.5、1、2、4、6および24時間)での生存率を測定する追加の試験を行った。比較のために、並行試験は、パルテノライド(PTL)を用いて行い、本発明者らが以前に示したこの薬物も初代ヒトLSCを特異的に標的化することができる14。図12A(左パネル)に示されるように、TDZD−8で処理された原発性AML CD34+/CD38−細胞は、非常に急速な生存性の喪失を示し、≧50%細胞死を達成するための平均時間はほんの2時間であった。対照的に、PTLは、処理の6時間以内では、細胞生存性を有意に変化させず、この場合、平均の生存率は、なお70%を超えていた(図12A、右パネル)。また、TDZD−8処理によって誘導される急速な細胞死は、大半の白血病芽球集団について観察され、この場合、17個の初代標本の分析により、≧50%の細胞死を達成させるための平均時間が2時間であることを示した(図12B)。興味深いことに、17個全ての標本は、相対的に急速に応答し、3個の標本は、30分以内に30%を下回る生存率の特に劇的な減少を示した。また、本発明者らは、リンパ系標本を試験し、初代CLLおよびALL試料(全芽球集団および表現型で記載された幹細胞の両方)について、急速な細胞死動力学を観察した(図15)。次に、本発明者らは、細胞死に対するAML集団の関与に要求される曝露の最小時間を試験した。これらの試験について、20μMのTDZD−8により様々な時間で細胞を処理し、次に、即座に洗浄し、新鮮な培地に再度懸濁した。細胞生存率は、最初の処理後、24時間で評価された。著しくは、ほんの30分程度のTDZD−8への曝露は、初代ヒトAML細胞を死へと傾かせるには十分であった(図12C)。また、この30分の曝露時間は、メチルセルロース培養においてコロニーを形成させるAML前駆細胞の能力を阻害するには十分であった(図12D)。同時に、このデータは、初代AMLの大半および前駆細胞集団が、TDZD−8への曝露後30分以内に細胞死へと不可逆的に傾く。
【0151】
細胞死への傾倒のための短い曝露時間は、TDZD−8が細胞に急速に結合し、および/または細胞によって内在化され得ることを示唆している。TDZD−8の疎水性化学構造は、薬物が膜中にインターカレートする可能性があることを予期させるため、原形質膜の完全性を分析する実験を行った。この目的のため、種々のサイズのいくつかの核酸色素を用いた(YoPro−1、ヘキスト−33342、7−AADおよびヨウ化プロピジウム(PI))。より小さな色素であるYoPro−1およびヘキスト−33342の取り込みは、膜透過性の相対的に中程度な変化によって変更される場合があるが、より大きな色素、例えば7−ADDおよびPIは、膜の完全性の著しい喪失が生じる場合にだけ内在化される。図12Eは、TDZD−8で15分間処理され、核酸色素標識およびマルチスペクトル画像フローサイトメトリー(アムニスイメージストリーム)によって分析された初代AML標本の代表例を示す。左パネルは、対照またはTDZD−8処理細胞における色素取り込み分析を示し、ここでは、R1は、無傷の細胞(YoPro−1に非透過性である)を示し、R2は、損傷した膜の完全性を有する細胞(YoPro−1透過性)を示し、R3は、死細胞(YoPro−1および7−ADDに透過性である)を表す。YoPro−1ポジティブな細胞(R2)の割合は、TDZDによる15分間の処理に応じて7%から78%まで増加した。さらに、また、細胞は、抗CD45で細胞を標識されて原形質膜を縁取り、細胞透過性DNA色素であるDraq5で標識されて核を特定した。図12E(右パネル)は、R1、R2およびR3ゲートに存在する細胞の代表的な写真を表し、ここでは、YoPro−1の核局在化は、R2において明らかとなり、R1ではなかった。図12Fの追加試験は、初代AML細胞について観察されたYoPro−1の急速な取り込みが正常な標本(BMまたはCB)では明確でないことを示す。これらのデータは、TDZD−8が、正常な造血細胞ではなく、初代AML細胞において膜透過性の急速な変化を媒介することを指示している。
【0152】
死のメカニズムに関して、TDZD−8で処理された細胞は、アポトーシスのマーカーであるアネキシンV標識において急速な増加を示している(データを示さない)。膜の完全性の喪失およびアネキシンV結合は、アポトーシスと関連した初期の事象であるため、本発明者らは、カスパーゼに依存したアポトーシス事象(例えば、プロ−カスパーゼおよびPARP開裂)に関与した下流の事象を試験した。興味深いことに、プロ−カスパーゼ3、8またはPARPが開裂しないことが検出された(データを示さない)。さらに、死を止めないことは、汎カスパーゼ阻害剤であるZ−VADによる処理に応じて観察された(図12G、白色バー)。これらのデータは、カスパーゼに依存しない経路を介して死が起こることを示唆している。
【0153】
キナーゼ阻害剤としてのTDZD−8活性。TDZD−8は、GSK−3βキナーゼ阻害剤(IC50=2μM)であり、Cdk−1/サイクリンB、CK−II、PKA、およびPKC(IC50>100μM)の活性に有意に影響を及ぼさないことが報告されている24。したがって、TDZD−8を用いて観察された抗白血病活性がGSK3β阻害を伴うかどうかを決定するために、本発明者らは、他の市販されているGSK3β阻害剤を試験した。試験された8個の薬物のうち7個は、AML細胞死を誘導しなかった(表2)。また、AML細胞死を誘導することができた1つの他のGSK3β阻害剤(2−クロロ−1−(4,5−ジブロモ−チオフェン−2−イル−エタノン)は、正常細胞に毒性であった。さらに、本発明者らは、チアゾリジンジオン環構造を有する種々の化合物を試験し、TDZD−8を用いて観察されたAML特異性または細胞死動力学を観察した(表2)。白血病特異的な細胞死を誘導する濃度は、GSK3βの阻害について報告されているIC50よりも10倍高いため、TDZD−8抗白血病活性は、的外れの効果に起因している可能性がある。この仮説を試験するために、市販のキナーゼプロファイリングサービスを用いて、TDZD−8の他の潜在的な標的を同定した。幅広い範囲の44個の様々な膜貫通型および細胞内キナーゼを20μMの薬物濃度で試験した。90%を超える阻害が、14種のキナーゼについて観察された。それらのうち、血液悪性腫瘍に潜在的な関係を有する最も明確な酵素は、PKCおよびFLT3であった。著しくは、血液病に関わる他の関連したキナーゼ(c−kit、PDGF−R、Jak2、Src、およびTie2)は、阻害をほとんど示さないか、全く示さなかった。PKCおよびFLT3をさらに試験するために、予備試験を行い、初代標本および薬物処理への応答の各々の活性を試験した。
【0154】
第1に、PKCは、従来、TDZD−8(IC50>100μM)の標的とならないことが報告されていたので、本発明者らは、主要な3つのPKCクラス(従来のもの、新規なもの、および非定型のもの)の各々から1つのファミリーメンバーを分析した。PKCアイソフォームのインビトロでのIC50は下記の通りであった:PKCベータI=1.4μM、PKCデルタ=1.1μM、およびPKCイオタ=5.5μM。このようにして、少なくともインビトロでは、TDZD−8は、PKCファミリーの広い阻害剤であると考えられる。薬物活性についての対照として、GSK3βも試験し、従来の報告と一致して、IC50は1.4μMであった。次に、初代細胞におけるPKCの活性を調べるために、AMLおよび正常なBM標本から精製したCD34+集団のイムノブロットを行った。図13Aに示されるように、全体のPKCおよびリン酸化されたPKCの両方のレベルは、正常対照と比較して、初代CD34+AML標本において非常に高く、これは、初代白血病細胞におけるPKCファミリーに対する役割を示唆している。活性なPKCは、原形質膜に局在し40,41、PKCαおよびPKCβ原形質膜の局在が白血病細胞株において報告されていることから42、本発明者らは、TDZD−8処理に応じたそれらのレベルを試験した。図13Bは、原形質膜に局在したPKCαおよびβがTDZD−8曝露により減少することを示し、これは、TDZD−8が初代CD34+AMLおよびALL細胞においてPKC不活性化を誘導することを示唆している。本発明者らは、HSP70のレベルにおいて相違を観察しなかったが、これは、膜中のPKCの減少が膜タンパク質の一般的な喪失に起因しないことを示唆している。図13AおよびBにおけるデータは、PKCファミリーメンバーが初代AML細胞において活性化し、TDZD−8が潜在的にそれらの機能を阻害することを指示している。
【0155】
FLT3活性に対するTDZD−8の阻害効果を調べるために、FLT3キナーゼ活性に対する滴定アッセイを行い、インビトロでのTDZD−8のIC50を調べた。図13Cは滴定曲線を示し、これは、インビトロにおいてIC50が673nMであることを示している。次に、TDZD−8阻害性FLT3活性がインビボにおいて検出され得るかどうかを評価するために、FACS分析を行い、リン特異的(即ち、活性化された)FLT3形態を測定した。図13Dに示されるように、リン酸化されたFLTは、初代AML標本において容易に検出され(従来報告されている43−45)、TDZD−8による処理によって、CD34+およびCD34+、CD38−集団の両方についてリン酸化の約30%の減少が誘導された。また、これらのデータは、TDZD−8がFLT3活性化の細胞内阻害因子として機能する可能性があることを示唆している。
【0156】
本試験では、本発明者らは、本来、GSK3βの非ATP競合阻害因子として開発された化合物であるTDZD−8の独特な抗白血病特性を記載している。この化合物は、2型糖尿病、アルツハイマー病、脊髄損傷、およびいくつかの炎症形態の試験を含む、多数のモデルにおける細胞保護剤として臨床前分析を受けている。本発明者らの見解は、この化合物が、正常な造血組織を容認しながら、悪性骨髄性幹および前駆細胞集団を含む白血病細胞のいくつかの主要な形態の死を選択的に誘導することを示すことによって、TDZD−8の活性に全く新しい特徴を付与している。さらに、細胞死の速度は、非常に速く、最大の毒性は1〜6時間以内で顕著になる。これらのデータに基づいて、本発明者らは、TDZD−8が、悪性造血細胞の死を誘導する新規なメカニズムを介して機能する可能性があると考えている。
【0157】
TDZD−8の別の顕著な特徴は、標的細胞に対するその見掛け上の親和性である。実験は、ほんの30分の薬物への曝露が全ての細胞毒性活性を媒介するには十分であることを示した。追加の予備的データは、5分程度の短い処理も効果的であり得ることを指示している(データを示さない)。TDZD−8の疎水性の性質が与えられると、この分子は、細胞膜に急速に挿入されるようである。この前提は、次に、薬物のメカニズムの1つの成分が原形質膜に対する直接的な効果であり得ることを指示している。続く試験は、TDZD−8が膜の完全性における急速な変化を誘導し、その結果、小核酸色素が容易に内在化されることを裏付けた。これらの見解は、TDZD−8が、直接、膜の完全性を調節するというコンセプトを支持している。
【0158】
上述される新規な膜指向された生物学は別にして、TDZD−8もマルチキナーゼ阻害剤として機能する。それらの標的の中には、記載されるようにGSK3βがある24。顕著には、他に知られているいくつかのGSK3β阻害剤の分析は、白血病特異的な細胞死を誘導することができない(表2)。これは、TDZD−8の活性が、GSK3βまたは少なくとも他の活性剤との組み合わせとは独立していることを示唆している。インビトロおよびインビボの両方において、TDZD−8の他の標的は、PKCファミリーメンバーおよびFLT3である。PKCは、造血細胞の増殖および分化において役割を果たすことで知られている42。さらに、PKCαの過剰発現は、白血病細胞に化学療法剤耐性を与え、低い生存率と関連付けられ49,50、PKCβがHL−60およびU937細胞の分化に重要である51,52ということが報告されている。さらに、PKCιは、薬物誘導によるアポトーシスに対して、K562細胞の保護に関与している53。これらの見解は、悪性造血におけるPKCに対する役割を支持し、PKCファミリーが治療のための重要な標的を示す可能性があることを示唆している。同様に、FLT3の異常な活性は、AML細胞型の十分に記載された特徴であり、FLT3の阻害は、いくつかのシステムにおける抗白血病作用を明確に媒介する44,45。このようにして、FLT3およびPKCに対するTDZD−8の活性は、その全般的な作用機序の潜在的に重要な成分である。
【0159】
最後に、本発明者らは、従来の試験は、本発明者らが白血病細胞において確認した活性である(データを示さない)、中程度のNF−κB阻害剤としてTDZD−8を記載している27−29,32ことに気付いている。さらに、本発明者らのデータは、この化合物が強力な酸化剤であることを指示している(図11)。したがって、TDZD−8は、LSC(即ち、NF−κBの阻害、酸化的ストレスの誘導)を選択的に標的化する処方について従来報告がなされている47という上述された2つの基準を満たす。しかしながら、図12に示されるように、LSC死誘導の確かめられたメカニズムに加えて、TDZD−8も造血臓器の悪性細胞に対する膜透過性において急速な変化を与える。このようにして、膜の完全性の喪失は、細胞死の速度を実質的に加速し、TDZD−8について観察された全体の作用に不可欠であることが指示されている。
【0160】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、印刷、電子的、コンピュータで読める記憶媒体または他の形態を問わず、参照により全体として明示的に援用され、それらには限定されないが、要約、記事、ジャーナル、刊行物、テキスト、論文、技術的データシート、インターネットウェブサイト、データベース、特許、特許出願、および特許公開公報が挙げられる。
【0161】
本明細書に記載される可変体のいずれかの定義における化学基の列挙の再引用は、いずれかの1個の基または列挙された基の組み合わせとしてその可変体の定義を含む。本明細書に記載される可変体についての態様の再引用は、いずれか1個の態様またはいずれかの他の態様もしくはその一部との組み合わせとしてその態様を含む。本明細書に記載される態様の再引用は、いずれか1個の態様またはいずれかの他の態様もしくはその一部との組み合わせとしてその態様を含む。
【0162】
本発明の他の態様は、本明細書を考察し、本明細書に開示されている本発明を実施することにより当業者に明らかとなる。本明細書および実施例は、単に例示的なものとして考えられるべきであるものとして意図され、本発明の真の範囲および精神は、下記の特許請求の範囲によって示される。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【0165】
【表3−1】

【0166】
【表3−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における白血病を治療する方法であって、式(I):
【化8】

[式中、
Aは、−−C(R−−、−−O−−または−−NR−−であり;Eは、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;Gは、−−S−−、−−NR−−または−−CR−−であり、置換基Rは、−−−がEとGと間の第2結合である場合には存在せず;−−−は、EおよびGの性質が許す場合には、EとGとの間の第2結合であってもよく、EはGと一緒になって必要に応じて縮合アリール基を形成し;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、−−(Z)−アリール、ヘテロアリール、−−OR、−−C(O)R、−−C(O)OR、−−(Z)−−C(O)ORおよび−−S(O)−−から選択され、または指示されたとき、Rは、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成するようなものであり得;Zは、独立して、−−C(R)(R)−−、−−C(O)−−、−−O−−、−−C(=NR)−−、−−S(O)−−およびN(R)−−から選択され;nは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、アリールおよび複素環から選択され;XおよびYは、各々、独立して、=O、=S、=N(R)および=C(R)(R)である]
で表される化合物もしくはその塩;またはそのプロドラッグもしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物もしくは多形体を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
白血病腫瘍細胞の細胞死を引き起こすことができる請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項3】
稀な白血病幹細胞亜集団の細胞死を引き起こすことができる請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することによって、対象において白血病幹細胞の細胞死を引き起こすことを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項5】
細胞膜を透過し、酸化ストレスを誘導することができる請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項6】
白血病細胞および白血病幹細胞の両方の細胞死を引き起こすことができる請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、対象における血液疾患を治療する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物および追加の治療薬を対象に投与することを含む、対象における白血病を治療する方法。
【請求項9】
急性骨髄性白血病(AML)、急性転化白血病(CML、リンパ性型障害および骨髄性型障害の両方)、急性リンパ性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象における障害を治療する方法であって、該障害が、癌細胞増殖;リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病細胞増殖;増殖性疾患;血液癌;血液悪性腫瘍、または急性骨髄性白血病(AML)、急性転化白血病(CML、リンパ性型障害および骨髄性型障害の両方)、急性リンパ性白血病(ALL)、もしくは慢性リンパ性白血病(CLL)のような障害であり、該方法は、請求項1に記載の式(I)で表される化合物を投与することを含む、方法。
【請求項11】
Aが−−NR−−であり、Eが−−NR−−である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
Gが−−S−−であり、Aが−−NR−−であり、Eが−−NR−−である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
XおよびYがOである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が、4−ベンジル−2−メチル−1,2,4−チアジアゾリジン−3,5−ジオン(TDZD−8)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
白血病の治療または予防に使用するための薬剤を製造するための請求項1に記載の式(I)で表される化合物の使用。
【請求項16】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物および医薬として許容される担体を含む、対象における白血病の治療または予防に使用するための組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の式Iで表される化合物、もしくは医薬として許容されるその塩;またはそのプロドラッグ、もしくは医薬として許容されるそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物、もしくは多形体;および許容される担体;および第2の治療薬を含む組成物の別々の剤形を含む製品であって、該剤形の両方が一つの容器内にある、製品。
【請求項18】
対象における白血病を治療する方法であって、式(II):
【化9】

[式中、
各RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、アリール、−−(Z)−アリール、ヘテロアリール、−−OR、−−C(O)R、−−C(O)OR、−−(Z)−−C(O)ORおよび−−S(O)−−から選択され、または指示されたとき、Rは、EがGと一緒になって縮合アリール基を形成するようなものであり得;Zは、独立して、−−C(R)(R)−−、−−C(O)−−、−−O−−、−−C(=NR)−−、−−S(O)−−およびN(R)−−から選択され;nは、0、1または2であり;tは、0、1または2であり;RおよびRは、各々、独立して、水素、アルキル、アリールおよび複素環から選択され;XおよびYは、各々、独立して、=O、=S、=N(R)および=C(R)(R)から選択される]
で表される化合物、もしくはその塩;またはそのプロドラッグ、もしくはそのプロドラッグの塩;またはその水和物、溶媒和物、もしくは多形体を該対象に投与することを含む、方法。
【請求項19】
各Rが、独立して、アルキルまたはアリールアルキルである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つのRが、独立して、アルキルであり、他のRが、独立して、アリールアルキルである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物を対象に投与することを含む、キナーゼを介した疾患または障害を治療する方法。
【請求項22】
前記キナーゼが、AKT1(PKBアルファ)、CHEK1(CHK1)、DYRK3、FLT3、GSK3B、KDR(VEGFR2)、MAP4K4(HGK)、MAPK14(p38アルファ)、MAPKAPK2、MET(cMet)、PHKG2、PIM1、PRKCA(PKCアルファ)、PRKCB1(PKCベータ1)、PRKCB2(PKCベータ2)、PRKCD(PKCデルタ)、PRKCE(PKCイプシロン)、PRKG(PKCガンマ)、PRKCH(PKCエータ)、PRKCI(PKCイオタ)、PRKCN(PKD3)、PRKCQ(PKCシータ)、PRKCZ(PKCゼータ)、PRKCD1(PKCミュー)、ROCK1、RPS6KA3(RSK2)、STK6(オーロラA)、またはSYKである、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−543874(P2009−543874A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520840(P2009−520840)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/016391
【国際公開番号】WO2008/011113
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(507245021)ユニバーシティー オブ ロチェスター (9)
【Fターム(参考)】