説明

チアゾリジンを介する化学結合により製造したヒドロキシアルキルデンプンと活性物質のコンジュゲート

本発明は、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートの製造方法、および活性物質とヒドロキシアルキルデンプン好ましくはヒドロキシエチルデンプンのコンジュゲートに関する(ここで、該コンジュゲートは、該ヒドロキシアルキルデンプンと該活性物質の、式(I)、(I’)(I”)で示される構造を有する化学残基による共有結合により製造され、R1、R2、R2’、R3、R3’、およびR4は、独立して、水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基からからなる群から選ばれ、好ましくは水素である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートの製造方法、および活性物質とヒドロキシアルキルデンプン(好ましくはヒドロキシエチルデンプン)のコンジュゲートに関する。ここで、該コンジュゲートは、式(I):
【化1】

または式(I’):
【化2】

または式(I”):
【化3】

[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は、独立して水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基、好ましくは水素からなる群から選ばれる。]
で示される構造を有する化学残基により該ヒドロキシアルキルデンプンと該活性物質を共有結合することにより製造される。
【背景技術】
【0002】
WO 03/031581 A2は、N末端にシステインまたはヒスチジン残基を有するポリペプチドにポリマー誘導体を結合する方法であって、N末端にシステインまたはヒスチジン残基を有するポリペプチドを提供し、チオエステル終端ポリマー(該ポリマーは水溶性および非ペプチドポリマー骨格を含む、好ましくポリエチレングリコールポリマーである)を提供し、該ポリマー誘導体およびポリペプチドを反応させることを含む方法を開示する。ポリマーとして、ポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(αヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリサッカライド、およびコポリマー、ターポリマー、およびその混合物を使用する。すべての例示的に開示したポリマーはポリエチレングリコールポリマーである。
【0003】
カップリング法の進歩および単機能性PEG分子の使用にも関わらず、PEG化(PEGylated)薬の一般的欠点は、非天然ポリマーとしてのPEGの代謝経路が詳細には知られていないことである。
【0004】
さらに、オキシム、ヒドラゾン、およびチアゾリジン結合を有するペプチドデンドリマーを形成するための一般的方法はJ. Am Chem Soc. 1995、117、3893-3899に記載されている。ビルディングブロックとしての非保護ペプチドおよびアルデヒドと弱塩基環の選択的結合が底に記載されている。
【0005】
WO 99/07719 A1は、チオール-およびセレオノール含有化合物およびその使用方法を開示している。種々の他の化合物のうち、L-システインエチルエステルおよびD-リボース、モノサッカライド(単糖)の反応により製造されるプロドラッグが開示されている(該プロドラッグはチアゾリジン環を含む)。該モノサッカライドの一般式:(CHOH)nCH2OH(n = 1〜5)が開示されている。分子ポリマー化合物(例えばデンプン、具体的にはヒドロキシアルキルデンプン)はもちろんジサッカライド(二糖)もチアゾリジン環の形成と一緒に開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は共有結合により形成される活性物質とポリマーの新規コンジュゲートを提供することであった(ここで、ポリアルキレングリコール、具体的にはポリエチレングリコールはポリマーとして使用しない)。
【0007】
したがって、本発明の別の目的はこれらコンジュゲートの製造方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これら課題の解決は、活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートの製造方法であって、該活性物質および該ヒドロキシアルキルデンプンが、式(I):
【化4】

または式(I’):
【化5】

または式(I”):
【化6】

[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は、独立して水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基、好ましくは水素からなる群から選ばれる。]で示される構造を有する化学残基により共有結合しており、
(A) アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を含むヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体のアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を、
α-SH-βアミノ基:
【化7】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化8】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I’)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化9】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I”)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は前記と同意義である。]、または
(B) 該アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を含む活性物質またはその誘導体のアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を、
α-SH-βアミノ基:
【化10】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I)で示される構造を有する化学残基により共有結合した該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化11】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体のα-SH-βアミノ基と反応させて、式(I’)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化12】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体のα-SH-βアミノ基と反応させて、式(I”)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲート
[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は前記と同意義である。]
を製造することを含む方法である。
【0009】
したがって、本発明の文脈において使用する用語「α-SH-β-アミノ基」は、所望により保護されたSH基が炭素原子と結合しており、所望により保護された第1級および第2級アミノ基が隣り合った炭素原子と結合しているエチレン基を表す。その一末端に残基がない上記式の結合は、ヒドロキシアルキルデンプンまたは該活性物質が結合した結合である。
【0010】
本発明の文脈において使用する用語「アルキル」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、炭素数1〜20、より好ましくは1〜10、具体的には1〜4のアルキル基である。
【0011】
本発明の文脈において使用する用語「アリール」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは6〜14、具体的には6のアリール基である。
【0012】
本発明の文脈において使用する用語「ヘテロアリール」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、少なくとも1個、好ましくは1〜3個、具体的には1個の炭素原子がS、N、および/またはOのようなヘテロ原子で置換されている。炭素数6〜20、より好ましくは6〜14、具体的には6のヘテロアリール基である。
【0013】
本発明の文脈において使用する用語「アラルキル」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、化合物の残りの部分とアルキル基を介して結合しているアリール基である。
【0014】
本発明の文脈において使用する用語「アルキルアリール」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、化合物の残りの部分とアリール基を介して結合しているアルキル基である。
【0015】
本発明の文脈において使用する用語「ヘテロアラルキル」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、化合物の残りの部分とアルキル基を介して結合しているヘテロアリール基である。
【0016】
本発明の文脈において使用する用語「所望により適切に置換された」は、本明細書中で特記しない限り、好ましくは、1〜10個、より好ましくは1〜4個、具体的には1個の置換基が存在することを意味する。
【0017】
本発明の文脈において使用する用語「活性物質」は、限定されるものではないが、ウイルス、細菌、真菌、植物、動物、およびヒトを含む生物学的有機体のあらゆる物理的または生化学的特性に影響を及ぼすことができる物質を表す。特に、本発明の文脈において使用する用語「活性物質」は、ヒトまたは動物の疾患を診断、治癒、緩和、治療、または予防するか、またはヒトまたは動物の身体的または精神的健康を増強するための物質を表す。活性物質の例には、限定されるものではないが、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬、染料、脂質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子、およびミセルが含まれる。
【0018】
タンパク質の例には、限定されるものではないが、エリスロポイエチン(EPO)、例えば組換えヒトEPO(rhEPO)、コロニー刺激因子(CSF)、例えばG-CSF(例えば組換えヒトG-CSF(rhG-CSF))、α-インターフェロン(IFNα)、β-インターフェロン(IFNβ)、またはγ-インターフェロン(IFNγ)(例えば、組換えヒトIFNαまたはIFNβ(rhIFNαまたはrhIFNβ))、インターロイキン、例えばIL-1〜IL-18、例えばIL-2またはIL-3(例えば組換えヒトIL-2またはIL-3(rhIL-2またはrhIL-3)、血清タンパク質、例えば凝固因子II〜XIII(例えば第VIII因子、α1-抗トリプシン(A1AT)、活性化タンパク質C(APC)、プラスミノーゲン活性化因子、例えば組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、例えばヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(hTPA)、AT III、例えば組換えヒトAT III(rhAT III)、ミオグロビン、アルブミン、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、成長因子、例えば、表皮成長因子(EGF)、血小板成長因子(PDGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、脳由来成長因子(BDGF)、神経成長因子(NGF)、B細胞成長因子(BCGF)、脳由来神経栄養成長因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、形質転換成長因子、例えばTGFαまたはTGFβ、BMP(骨形態形成タンパク質)、成長因子、ヒト成長因子、腫瘍壊死因子、例えばTNFαまたはTNFβ、ソマトスタチン(ペプチド)、ソマトトロピン、ソマトメジン、ヘモグロビン、ホルモン、またはプロホルモン、例えばインスリン、ゴナドトロピン、メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、トリプトレリン、視床下部ホルモン、例えば抗利尿ホルモン(ADH)、およびオキシトシン、ならびに放出ホルモンおよび放出阻害ホルモン、上皮小体ホルモン、甲状腺ホルモン、例えばチロキシン、チロトロピン、チロリベリン、プロラクチン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP-1、GLP-2など)、エキセンジン、例えばエキセンジン-4、レプチン、バゾプレッシン、ガストリン、セクレチン、インテグリン、糖タンパク質ホルモン(例えばLH、FSHなど)、メラノシド刺激ホルモン、リポタンパク質、およびアポリポタンパク質(例えばアポ-B、アポ-E、アポ-La)、免疫グロブリン(例えばIgG、IgE、IgM、IgA、IgD、およびその断片)、ヒルジン、組織経路阻害剤、植物タンパク質(例えばレクチンまたはリシン、ハチ毒、ヘビ毒、イムノトキシン、抗原E、α-プロテアーゼ阻害剤、ブタクサアレルゲン、メラニン、オリゴリジンタンパク質、RGDタンパク質、または所望によりこれらタンパク質の1つに対応するレセプター;またはこれらタンパク質またはタンパク質のあらゆる機能的誘導体または断片が含まれる。特に好ましい態様において、該活性物質は、EPO、具体的には以下に記載の酸化EPOである。
【0019】
酵素の例には、限定されるものではないが、炭化水素特異的酵素、タンパク質分解酵素、オキシダーゼ、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、およびリガーゼが含まれる。具体的な非限定的例は、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、アルギニンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ、グルタミナーゼ、グルタミナーゼ-アスパラギナーゼ、フェニルアラニン、トリプトファナーゼ、チロシナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、エンドトキシナーゼ、カタラーゼ、パーオキシダーゼ、カリクレイン、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、サーモリシン、リパーゼ、ウリカーゼ、アデノシンジホスファターゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、ビリルビンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコダーゼ、グルコナーゼオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコセレブロシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヒアルロニダーゼ、組織因子、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、MAPキナーゼ、DNアーゼ、RNアーゼ、ラクトフェリン、およびその機能的誘導体または断片がある。
【0020】
本発明のある別の方法によれば、該活性物質は、小分子薬、ペプチド、および/または タンパク質である。
【0021】
とりわけ、以下のタンパク質を明記すべきである:エリスロポイエチン(EPO)(例えば組換えヒトEPO(rhEPO))、コロニー刺激因子(CSF)(例えばG-CSF、例えば組換えヒトG-CSF(rhG-CSF))、α-インターフェロン(IFNα)、β-インターフェロン(IFNβ)、またはγ-インターフェロン(IFNγ)、例えば組換えヒトIFNαまたはIFNβ(rhIFNαまたはrhIFNβ)血清タンパク質、例えば凝固因子II-XIII、例えば第VII因子、第VIII因子、または第IX因子,α1-抗トリプシン(A1AT)、活性化タンパク質C(APC)、プラスミノーゲン活性化因子、例えば組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、例えばヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(hTPA)、AT III、例えば組換えヒトAT III(rhAT III)。
【0022】
ペプチドの例には、ACTH、アデノメジュシン、アミロイドβ-タンパク質、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、抗体断片、ブラジキニン、B型脳ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、カルシトニン、コルチコトロピン放出因子(CRF)、エンドルフィン、エンドセリン、エンケファリン、ガストリン、ガストリン関連ペプチド、胃阻害ポリペプチド(GIP)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、成長因子放出因子(GRF)、肝細胞成長因子、インスリン、ゴナドトロピン放出ホルモン(LH-RH、GnRH)、ニューロキニン、オキシトシン、上皮小体ホルモン、ソマトスタチン、サブスタンスP、サイロトロピン放出ホルモン(TRH)、血管作用性腸ペプチド(VIP)、およびバゾプレッシンが含まれる。
【0023】
該活性物質は、好ましくは、抗体、抗鬱薬、抗糖尿病薬、抗利尿薬、抗コリン作用薬、抗不整脈薬、制吐薬、鎮咳薬、抗てんかん薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬、抗交感神経緊張薬(antisympathotonics)、抗血栓薬、アンドロゲン、抗アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、抗骨粗鬆症薬、抗腫瘍薬、血管拡張薬、他の降圧薬、解熱薬、鎮痛薬、抗炎症薬、β遮断薬、細胞増殖抑制薬、免疫抑制薬、およびビタミンからなる群から選ばれる。
【0024】
活性物質のさらなる非制限的例には、アルブテロール、アレンドロネート、アミカジン、アンピシリン、アモキシシリン、アンホテシリンB、アテノロール、アザチオプリン、セファクロール、セファドロキシル、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、シラスタチン、シメチジン、シプロフラキサシン、クロニジン、クリスチン、コシントロピン、シクロセリン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、デスモプレッシン、ジヒドロエルゴタミン、ドブタミン、ドーパミン、エフェドリン、エピネフリン、εアミノカプロン酸、エルゴメトリン、エスモロール、ファモチジン、フレカイニド、葉酸、フルシトシン、フロセミド、ガンシクロビル、ゲンタマイシン、グルカゴン、ヒドラザリン、イミペネム、イソプロテレノール、ケタミン、リオチロニン、LHRH、メルパトリシン、メタリアミノール、メチルドーパ、メトクロプラミド、メトプロロール、メキシレチン、マイトマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ニドジピン、ナイスタチン、オクトレオチド、オキシトシン、パミドロネート、ペンタミジン、フェントラミン、フェニルエフリン、プロカインアミド、プロカイン、プロプラノロール、リトドリン、ソタロール、テイコプラニン、テルブタリン、チアニン、チルドロネート、トラゾリン、トリメトプリム、トロメタミン、チロシン、バンコマイシン、バゾプレッシン、およびビンブラスチンがある。
【0025】
代替法によれば、活性物質としてリファマイシン、テトラサイクリン、スペクトマイシン、ストレプトマイシン、またはエリスロマイシンの使用を試みてもよい。
【0026】
オリゴヌクレオチドの例にはアプタマー、DNA、RNA、PNA、またはその誘導体がある。
【0027】
本発明の文脈において、用語「ヒドロキシアルキルデンプン」(HAS)は、少なくとも1のヒドロキシアルキル基で置換されたデンプン誘導体を表す。本発明の好ましいヒドロキシアルキルデンプンは、式(II):
【化13】

[式中、R’、R”およびR'''は、独立して水素、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、または基:
−[(CR1R2)mO]n[CR3R4o−OH
[式中、R1、R2、R3、およびR4は、独立して水素、およびアルキル基、好ましくは水素、およびメチル基からなる群から選ばれる;
mは2〜4である(ここで、該残基R1およびR2は、m基CR1R2中で同じまたは異なっていてよい);
nは0〜20、好ましくは0〜4である;
oは0〜20、好ましくは2〜4である;
ここで、n=0の場合は、oは0ではない;
該残基R3およびR4は、o基CR3R4中で同じまたは異なっていてよい。]である。
ここで、残基HAS”は末端グルコース部分と一緒になってHAS分子を構成する。すなわち、式(II)は末端炭化水素部分が明示され、該デンプン分子の残りの部分がHAS”であるHAS分子を示す。]
で示される置換基を有する。
【0028】
式(II)において、該デンプン分子の還元末端は、非酸化形で示され、HASの末端糖単位はヘミアセタール形で示され、例えば溶媒に応じて、アルデヒド形と平衡状態であってよい。本発明の文脈で用いる略語HAS”は、HAS分子の還元末端に末端糖単位を持たないHAS分子を表す。
【0029】
本明細書で用いている用語「ヒドロキシアルキルデンプン」は、限定されるものではないが、式(II)中、末端炭化水素部分が簡潔さのためR’、R”、および/またはR'''で示されたヒドロキシアルキル基を含む化合物であり、末端炭化水素部分、および/または該デンプン分子の残りの部分、HAS”中のどこかに存在する少なくとも1のヒドロキシアルキル基がヒドロキシアルキル基R’、R”、またはR'''で置換されている化合物も表す。
2またはそれ以上の異なるヒドロキシアルキル基を含むヒドロキシアルキルデンプンも可能である。
【0030】
HAS中に含まれる少なくとも1のヒドロキシアルキル基は、1またはそれ以上の、具体的には2またはそれ以上のヒドロキシ基を含んでよい。好ましい態様によれば、HAS中に含まれる少なくとも1のヒドロキシアルキル基は1個のヒドロキシ基を含む。
【0031】
用語「ヒドロキシアルキルデンプン」は、アルキル基がモノまたはポリ置換されている誘導体も含む。この文脈において、アルキル基がハロゲン、特にフッ素、またはアリール基で置換されているものが好ましい。さらにヒドロキシアルキル基のヒドロキシ基がエステル化またはエーテル化されていてよい。
【0032】
さらに、アルキルの代わりに、直鎖または分岐鎖の置換または非置換のアルケン基を用いてよい。
【0033】
ヒドロキシアルキルデンプンは、デンプンのエーテル誘導体である。該エーテル誘導体に加えて、他のデンプン誘導体も本発明の文脈において用いることができる。例えば、エステル化ヒドロキシ基を含む誘導体が有用である。これら誘導体は、例えば炭素数2〜12の非置換のモノまたはジカルボン酸またはその置換誘導体であってよい。炭素数2〜6の非置換のモノカルボン酸の誘導体、特に酢酸の誘導体が特に有用である。この文脈において、アセチルデンプン、ブチリルデンプン、およびプロピオニルデンプンが好ましい。
【0034】
さらに、炭素数2〜6の非置換のジカルボン酸の誘導体が好ましい。
【0035】
ジカルボン酸の誘導体の場合は、ジカルボン酸の第2カルボキシ基もエステル化されていることも有用である、さらに、ジカルボン酸のモノアルキルエステルの誘導体も本発明の文脈において適している。
【0036】
置換モノまたはジカルボン酸について、置換基は好ましくは置換アルキル残基について上記したのと同じである。
【0037】
デンプンのエステル化技術は当該分野で知られている(例えば、Klemm D. et al、Comprehensive Cellulose Chemistry Vol. 2、1998、Whiley-VCH、Weinheim、New York、特に4.4章、Esterification of Cellulose(ISBN 3-527-29489-9)参照)。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、上記式(II)のヒドロキシアルキルデンプンを用いる。HAS”に含まれる他の糖環構造は、明示した糖環と同じまたは異なって(還元末端を欠くことが異なる)いてよい。
【0039】
式(II)の該残基R’、R”、およびR'''に関する限り、特定の限定はない。好ましい態様によれば、R’、R”、およびR'''は、独立して水素、または各アルキル残基中に炭素数2〜10を有するヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアラルキル基、またはヒドロキシアルカリール基である。水素、または炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基が好ましい。より好ましくは、ヒドロキシアルキル基は炭素数2〜6、より好ましくは炭素数2〜4、さらにより好ましくは炭素数2〜3である。好ましい態様において、ヒドロキシアルキルデンプンは、R’、R”、およびR'''が独立して水素または基(CH2CH2O)n-H(ここで、nは整数、好ましくは0、1、2、3、4、5、または6である。)であるヒドロキシエチルデンプンである。
【0040】
したがって、「ヒドロキシアルキルデンプン」は、好ましくはヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、およびヒドロキシブチルデンプンを含む。ここで、ヒドロキシエチルデンプンおよびヒドロキシプロピルデンプンが特に好ましく、ヒドロキシエチルデンプンが最も好ましい。
【0041】
該アルキル、アラルキル、および/またはアルカリール基は直鎖または分岐鎖であってよく、適切に置換されていてよい。
【0042】
したがって、本発明は、R’、R”、およびR'''が独立して水素、または炭素数2〜6の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基である上記方法およびコンジュゲートにも関する。
【0043】
すなわち、R’、R”、およびR'''は、好ましくはH、ヒドロキシヘキシル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシプロピル、例えば、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシエチル、例えば2-ヒドロキシエチル、水素であり、2-ヒドロキシエチル基が特に好ましい。
【0044】
したがって、本発明は、R’、R”、およびR'''が、独立して水素または2-ヒドロキシエチル基である上記方法およびコンジュゲートにも関する。少なくとも1の残基R’、R”、およびR'''が2-ヒドロキシエチルである態様が特に好ましい。
【0045】
ヒドロキシエチルデンプン(HES)が本発明のすべての態様において最も好ましい。
【0046】
したがって、本発明は、該ポリマーがヒドロキシエチルデンプンであり該ポリマー誘導体がヒドロキシエチルデンプン誘導体である上記方法およびコンジュゲートに関する。
【0047】
ヒドロキシエチルデンプン(HES)は、天然の網路ペクチンの誘導体であり、身体のα-アミラーゼにより分解される。HESは、トウモロコシデンプン中に95重量%までの濃度で存在する炭水化物ポリマーアミロペクチンの置換誘導体である。HESは、有利な生物学的特性を有し、臨床において血液希釈療法に血液量置換剤として用いられる。(Sommermeyer et al.、1987、Krankenhauspharmazie、8(8)、271-278; およびWeidler et al.、1991、Arzneim.-Forschung/Drug Res.、41、494-498))。
【0048】
アミロペクチンは、主鎖中のα-1,4-グリコシド結合が存在し、分枝部位にα-1,6-グリコシド結合がみられるグルコース部分からなる。この分子の物理化学特性は、グリコシド結合のタイプによりおもに決定される。ニックド(nicked)α-1,4-グリコシド結合により、ターンあたり約6個のグルコースモノマーを有するらせん構造を生成する。該ポリマーの物理化学特性および生化学特性は置換により修飾することができる。ヒドロキシエチル基の導入は、アルカリヒドロキシエチル化により達成することができる。反応条件を適合させることにより、ヒドロキシエチル化について非置換グルコースモノマー中の各ヒドロキシ基の異なる反応性を利用することができる。このため、当業者は限定的に置換パターンに影響を与えることができる。
【0049】
HESは、主として分子量分布および置換度により特徴づけられる。置換度を説明する2つの可能性がある:
1. 置換度は、すべてのグルコース部分について置換グルコースモノマーの部分に比較的説明することができる。
2. 置換度は、グルコース部分あたりのヒドロキシエチル基数が説明されるモル置換として説明することができる。
【0050】
本発明の文脈において、DSで示される置換度は上記モル置換に関する(Sommermeyer et al.、1987、Krankenhauspharmazie、8(8)、271-278、上記、具体的にはp.273も参照)。
【0051】
HES溶液は、ポリ分散組成物として存在する。
各分子は、重合度、分枝部位の数とパターン、および置換パターンに関して他と異なる。したがって、HESは、異なる分子量の化合物の混合物である。したがって、特定のHES溶液は、統計学的平均を用いる平均分子量により決定される。この文脈において、Mnは分枝数に応じた算術平均として計算される。あるいはまた、Mw(またはMW)重量平均分子量は、HESの質量に依存する単位を表す。
【0052】
好ましくは、本発明に用いる該ヒドロキシアルキルデンプンは平均分子量(重量平均)1〜300kDである。ヒドロキシエチルデンプンは、さらに0.1〜3、好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.1〜0.9、または0.4〜2、好ましくは0.4〜1.3の好ましいモル置換を示し、ヒドロキシエチル基に関して2〜20の範囲のC2:C6置換比が好ましい。
【0053】
本発明の文脈において用いる用語「平均分子量」は、Sommermeyer et al.、1987、Krankenhauspharmazie、8(8)、271-278;およびWeidler et al.、1991、Arzneim.-Forschung/Drug Res.、41、494-498に記載の LALLS-(底角度レーザー光散乱)-GPC法に従って決定する重量に関する。平均分子量10kDおよびそれ以下について、さらに、較正はLALLS-GPCにより先に定性された標準を用いて実施した。
【0054】
本発明の好ましい態様によれば、用いるヒドロキシエチルデンプンの平均分子量は1〜300kD、より好ましくは2〜200kD、より好ましくは10〜150、または4〜130kD、より好ましくは10〜100kDである。
【0055】
平均分子量約1〜300kD、好ましくは10〜100kDのHESの例は、0.1〜3、好ましくは0.4〜1.3、例えば0.4、0.5、0.6、0.7 0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、または1.3、好ましくは0.7〜1.3、例えば0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、または1.3のモル置換を有するHESである。
【0056】
平均分子量約130kDのHESであるHESの例は、Voluven(登録商標)(Fresenius)である。Voluven(登録商標)は、例えば、血液量減少の治療および予防の治療的適用に用いる容量置換に用いる人工的コロイドである。Voluven(登録商標)の特性は、平均分子量130,000±20,000 D、モル置換0.4、およびC2:C6比約9:1である。
【0057】
また、本発明は、該ヒドロキシアルキルデンプンが平均分子量10〜150kD、好ましくは10〜100kDのヒドロキシエチルデンプンである上記方法およびコンジュゲートに関する。
【0058】
平均分子量の好ましい範囲は、例えば10〜150kD、または10〜130kD、または30〜130kD、または50〜130kD、または70〜130kD、または100〜130kD、または10〜100kD、または4〜100kD、または10〜100kD、または12〜100kD、または18〜100kD、または50〜100kD、または4〜70kD、または10〜70kD、または12〜70kD、または18〜70kD、または50〜70kD、または4〜50kD、または10〜50kD、または12〜50kD、または18〜50kD、または4〜18kD、または10〜18kD、または12〜18kD、または4〜12kD、または10〜12kD、または4〜10kDである。
【0059】
本発明の特に好ましい態様によれば、用いるヒドロキシエチルデンプンの平均分子量は、4kD以上および150kD以下の範囲、例えば約10kD、または9〜10kD、または10〜11kD、または9〜11kDの範囲、または約12kD、または11〜12kD、または12〜13kD、または11〜13kDの範囲、または約15kD、または14〜15、または15〜16kDの範囲、または約18kD、または17〜18kD、または18〜19kD、または17〜19kDの範囲、または約50kD、または49〜50kD、または50〜51kD、または49〜51kDの範囲、または約56kD、または55〜56kD、または56〜57kDの範囲である。
【0060】
本発明の別の特に好ましい態様によれば、用いるヒドロキシエチルデンプンの平均分子量は、60kD以上および130kD以下の範囲、例えば約70kDまたは65〜75kDの範囲、または約80kDまたは75〜85kDの範囲、または約90kDまたは85〜95kDの範囲または約100kD、または95〜105kDの範囲、または約110kDまたは105〜115kDの範囲、または約120kDまたは115〜125kDの範囲または約130kDまたは125〜135kDの範囲である。
【0061】
モル置換(DS)の上限に関して、3.0以下、例えば0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0の値も可能であり、2.0以下の値が好ましく、1.5以下の値がより好ましく、1.3以下、例えば0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、または1.3の値がさらにより好ましい。
【0062】
従って、モル置換の好ましい範囲は、0.1〜2、または0.1〜1.5、または0.1〜1.3、または0.1〜1.0、または0.1〜0.9、または0.1〜0.8である。モル置換のより好ましい範囲は、0.2〜2、または0.2〜1.5、または0.2〜1.0、または0.2〜0.9、または0.2〜0.8である。サモル置換のさらにより好ましい範囲は、0.3〜2、または0.3〜1.5、または0.3〜1.0、または0.3〜0.9、または0.3〜0.8である。モル置換のさらにより好ましい範囲は、0.4〜2、または0.4〜1.5、または0.4〜1.3、または0.4〜1.0、または0.4〜0.9、または0.4〜0.8である。
【0063】
モル置換(DS)に関する限り、DSは、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも0.2、より好ましくは少なくとも0.4、およびより好ましくは少なくとも0.7である。DSの好ましい範囲は、0.1〜3、好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.1〜1.3、より好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.1〜0.8、より好ましくは0.2〜0.8、より好ましくは0.3〜0.8、およびさらにより好ましくは0.4〜0.8、さらにより好ましくは0.1〜0.7、より好ましくは0.2〜0.7、より好ましくは0.3〜0.7、およびより好ましくは0.4〜0.7である。DSの特に好ましい値は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2または1.3であり、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がより好ましく、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がさらにより好ましく、0.4、0.5、0.6、0.7または0.8がさらにより好ましく、例えば0.4または0.5および0.7または0.8が特に好ましい。
【0064】
本発明の文脈において、モル置換の特定の値、例えば1.3は、厳密値1.3であってよいか、または1.25〜1.34の範囲であると理解してよいか、または1.0は厳密値1.0であってよいか、または0.95〜1.04の範囲であると理解してよいか、または0.9は厳密値0.9であってよいか、または0.85〜0.94の範囲であると理解してよいか、または0.8は厳密値0.8であってよいか、0.75〜0.84の範囲であると理解してよい。したがって、例えば特定の値0.1は、厳密数0.1であるか、または特定値0.1は厳密値0.1であるか、または0.05〜0.14の範囲であってよく、特定値0.4は厳密値0.4であるか、または0.35〜0.44の範囲であってよく、または特定値0.7は厳密値0.7であるか、または0.65〜0.74の範囲であってよい。
【0065】
該ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンの分子量、およびそのモル置換DSの特に好ましい組み合わせは、例えば、10kDおよび0.4、または10kDおよび0.7、または12kDおよび0.4、または12kDおよび0.7、または15kDおよび0.4、または15kDおよび0.7、または18kDおよび0.4、または18kDおよび0.7、または50kDおよび0.4、または50kDおよび0.7、または56kDおよび0.4、および56kDおよび0.7、または70KDおよび0.4、または70kDおよび0.7、または100kDおよび0.4、または100kDおよび0.7、または130kDおよび0.4、または130kDおよび0.7である。
【0066】
C2:C6置換の比に関する限り、該置換は、好ましくは2〜20の範囲、より好ましくは2〜15の範囲およびさらにより好ましくは3〜12の範囲である。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、異なる平均分子量および/または異なるモル置換、および/または異なる比のC2:C6を有するヒドロキシエチルデンプンの混合物も用いてよい。したがって、異なる平均分子量および異なるモル置換およびC2:C6置換の異なる比を有するか、または異なる平均分子量および異なるモル置換および同じまたはほぼ同じC2:C6置換比を有するか、または異なる平均分子量および同じまたはほぼ同じモル置換および異なるC2:C6置換比を有するか、または同じまたはほぼ同じ平均分子量および異なるモル置換および異なるC2:C6置換比を有するか、または異なる平均分子量および同じまたはほぼ同じモル置換および同じまたはほぼ同じC2:C6置換比を有するか、または同じまたはほぼ同じ平均分子量および異なるモル置換および同じまたはほぼ同じC2:C6置換比を有するか、または同じまたはほぼ同じ平均分子量および同じまたはほぼ同じモル置換および異なるC2:C6置換比を有するか、またはほぼ同じ平均分子量およびほぼ同じモル置換およびほぼ同じC2:C6置換比を有する、ヒドロキシエチルデンプンの混合物を用いることができる。
【0068】
本発明の異なるコンジュゲートおよび異なる方法において、異なるヒドロキシアルキルデンプン、好ましくは異なるヒドロキシエチルデンプン、および/または異なるヒドロキシアルキルデンプン混合物、好ましくは異なるヒドロキシエチルデンプン混合物を用いることができる。
【0069】
好ましい態様において、該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体は、1〜100、好ましくは1〜15、具体的には1個のアルデヒド基、ケト基、および/またはヘミアセタール基を含むか、または該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体は、1〜100、好ましくは1〜15、具体的には1個のα-SH-βアミノ基を含む。
【0070】
別の好ましい態様において、該活性物質は、1〜15、好ましくは1〜8、具体的には1個のアルデヒド基、ケト基、および/またはヘミアセタール基を含むか、または該活性物質は、1〜15、好ましくは1〜8、具体的には1個のα-SH-βアミノ基を含む。
【0071】
少なくとも1のアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンをあらゆる適切な方法により提供することができる。
【0072】
好ましい態様において、該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または該α-SH-βアミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプン誘導体は、以下を含む方法により得ることができる:
(a)(1)開環酸化反応により該ヒドロキシアルキルデンプンに少なくとも1のアルデヒド基を導入するか、または
(a)(2)該ヒドロキシアルキルデンプンを、少なくとも1の少なくとも二官能性化合物と反応させる(ここで、該化合物は、2個の官能基M1およびQを含み、1個の官能基M1を該ヒドロキシアルキルデンプンと反応させ、
1個の官能基Qは、
(i)アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基;または
(ii)アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基をもたらすように化学修飾されている官能基である。
【0073】
(a)(1)によれば、ヒドロキシアルキルデンプンをペリオデートを用いる開環酸化反応に付し、少なくとも1のアルデヒド基を有するヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることが好ましい。
【0074】
(a)(1)の開環酸化反応は、水性媒質中で行ってよい。開環酸化反応は、0〜37℃、好ましくは0〜5℃の温度で行われる。
【0075】
(a)(2)のある好ましい態様において、該官能基M1は、カルボキシ基、反応性カルボキシ基、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲニド、イソシアネート、イソチオシアネート、クロロホルメート、およびエポキシド基からなる群から選ばれ、該官能基Qは、アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、α-SH-βアミノ基であるか、またはアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基をもたらすように化学修飾されている官能基である。
【0076】
本発明のある態様によれば、(a)(2)の方法は、該ヒドロキシアルキルデンプンを、該ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端を介して少なくとも2個の官能基M1およびQを含む少なくとも1の二官能性化合物と反応させることを含みうる。
【0077】
本発明の文脈において用いる用語、該ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンを「所望により酸化された還元末端を介して」反応させるは、該ヒドロキシアルキルデンプンを主にその所望により酸化された還元末端を介して反応させる工程に関し得る。
【0078】
この用語「主にその所望により酸化された還元末端を介して」は、該反応に用いる該ヒドロキシアルキルデンプン分子の実質的に50%以上、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも 85%、より好ましくは少なくとも90%、およびさらにより好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、または99%がヒドロキシアルキルデンプン分子あたり少なくとも1の所望により酸化された還元末端を介して反応する工程に関する(ここで、少なくとも1の還元末端を介して反応する該ヒドロキシアルキルデンプン分子は、該ヒドロキシアルキルデンプン分子に含まれる、還元末端でない少なくとも1のさらなる適切な官能基を介して同じ該反応において反応することができる)。1またはそれ以上のヒドロキシアルキルデンプン分子が、この(これらの)ヒドロキシアルキルデンプン分子に含まれる、還元末端でない少なくとも1の還元を介して、同時に、少なくとも1のさらなる適切な官能基を介して反応する場合は、これらヒドロキシアルキルデンプン分子のすべての反応官能基の統計的に好ましくは50%以上、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびさらにより好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、または99%が(該官能基は還元末端を含む)還元末端である。
【0079】
本発明の文脈において用いる用語「還元末端」は、アルデヒド基、および/または対応するヘミアセタール型として存在しうるヒドロキシアルキルデンプン分子の末端アルデヒド基に関する。還元末端が酸化されている場合は、該アルデヒドまたはヘミアセタール基は、カルボキシ基、および/または対応するラクトンの形である。
【0080】
本発明のある態様によれば、したがって(a)(2)の反応は、ヒドロキシアルキルデンプンのその還元末端を酸化して、式(IIIa):
【化14】

および/または式(IIIb):
【化15】

[式中、R’、R”、およびR'''は、式IIについて定義したのと同意義である。]
で示されるヒドロキシアルキルデンプンを得、還元末端が酸化したヒドロキシアルキルデンプンを少なくとも1の適切な化合物と反応させてアルデヒド、ケト、ヘミアセタール、またはα-SH-βアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンを得ることを含む。
【0081】
該ヒドロキシアルキルデンプン、好ましくはヒドロキシエチルデンプンの酸化は、上記構造(IIIa)および/または(IIIb)を有する化合物を生じる各方法または方法の組み合わせに従って行うことができる。該酸化は、ヒドロキシアルキルデンプンの酸化還元末端を生じるすべての適切な方法または複数の方法に従って行うことができるが、例えば、DE 196 28 705 A1に記載のアルカリ性ヨウ素溶液を用いて行うのが好ましい(その内容(実施例A、カラム9、6〜24行)は本明細書の一部を構成する)。
【0082】
別の好ましい態様において、該ヒドロキシアルキルデンプンのヘミアセタール基は、非酸化型の該ヒドロキシアルキルデンプンの還元末端のヘミアセタール基である。
【0083】
(a)(2)によれば、所望によりその還元末端酸化された該ヒドロキシアルキルデンプンを、好ましくは所望により酸化された還元末端で該ヒドロキシアルキルデンプンと反応する官能基M1、およびアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基、または修飾してこれらの基のいずれかを得ることができる官能基である官能基Qを含む少なくとも二官能性化合物と反応させることが好ましい。
【0084】
該ヒドロキシアルキルデンプンと反応する少なくとも二官能性化合物の官能基M1として、特に、R*-NH-[式中、R*は、水素またはアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリールまたはシクロアルキルアリール残基であり、該シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリールまたはシクロアルキルアリール残基は、NH基と直接結合するか、または別の態様によればNH基と酸素架橋により結合してよい。]を有する基が挙げられる。該アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アリールシクロアルキル、アルカリール、またはシクロアルキルアリール残基は、適切に置換され得る。好ましい置換基として、ハロゲン、例えばF、ClまたはBrが挙げられる。特に好ましい残基R*は、水素、アルキルおよびアルコキシ基であり、水素および非置換アルキルおよびアルコキシ基が特に好ましい。
【0085】
アルキルおよびアルコキシ基のうち、炭素数1、2、3、4、5、または6の基が好ましい。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびイソプロポキシ基がより好ましい。メチル、エチル、メトキシ、エトキシが特に好ましく、メチルまたはメトキシが特に好ましい。
【0086】
本発明の別の好ましい態様によれば、該官能基M1は構造R*-NH-R**-[式中、R**は、好ましくは構造単位-NH-、および/または構造単位-(C=G)-(ここで、GはOまたはSである)、および/または構造単位-SO2-を含む。官能基R**の具体例には、
【化16】

[式中、Gが2個存在する場合は、Gは独立してOまたはSである。]
がある。
【0087】
したがって、本発明は、
該官能基M1
【化17】

[式中、Gは、OまたはSであり、2個存在する場合はGは独立してOまたはSであり、R'はメチルである。]
である上記方法およびコンジュゲートにも関する。
【0088】
本発明の特に好ましい態様によれば、該官能基M1はアミノ基-NH2である。
【0089】
基Qは、アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基または化学修飾によりこれらの基のいずれかを得る官能基である場合に関して、とりわけ以下の官能基が挙げられる。
- C-C二重結合またはC-C三重結合、または芳香族C-C結合;
- チオ基またはドロキシ基;
- アルキルスルホン酸ヒドラジド、アリールスルホン酸ヒドラジド;
- 1,2-ジオール;
- 1,2 アミノ-チオアルコール;
- アジド;
- 1,2-アミノアルコール;
- アミノ基-NH2、または構造単位-NH-を含むアミノ基の誘導体、例えばアミノアルキル基、アミノアリール基、アミノアラルキル基、またはアルカリールアミノ基;
- ヒドロキシルアミノ基-O-NH2、または構造単位-O-NH-を含むヒドロキシルアミノ基の誘導体、例えばヒドロキシルアルキルアミノ基、ヒドロキシルアリールアミノ基、ヒドロキシルアラルキルアミノ基、またはヒドロキシアルアルカリールアミノ基;
- それぞれ構造単位-NH-O-を含むアルコキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、アラルキルオキシアミノ基、またはアルカリールオキシアミノ基;
- カルボニル基、-Q-C(=G)-Mを有する残基である;
ここで、GはOまたはSであり、Mは、例えば
-- -OHまたは-SH;
-- アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、またはアルカリールオキシ基;
-- アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、またはアルカリールチオ基;
-- アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルカリールカルボニルオキシ基;
-- 活性化エステル、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドのようなイミド構造を有するか、または構造単位O-N(ここで、Nはヘテロアリール化合物の部分であるか、またはG = Oであり、Qは存在しない)を有するヒドロキシルアミンのエステル、例えば置換アリール残基を有するアリールオキシ化合物、例えばペンタフルオロフェニル、パラニトロフェニル、またはトリクロロフェニル;
[式中、Qは存在しないかまたはNH、またはヘテロ原子、例えばSまたはOである];
- -NH-NH2、または-NH-NH-;
- -NO2
- ニトリル基;
- カルボニル基、例えばアルデヒド基またはケト基;
- カルボキシ基;
- -N=C=O基または-N=C=S基;
- ビニルハリド基、例えばビニルヨウ化またはビニル臭素基またはトリフラート;
- -C≡C-H;
- -(C=NH2Cl)-Oアルキル
- 基-(C=O)-CH2-Hal [式中、HalはCl、Br、またはIである];
- -CH=CH-SO2-;
- 構造-S-S-を含むジスルフィド基;
- 基:
【0090】
【化18】

- 基:
【0091】
【化19】

が挙げられる。
【0092】
本発明の方法の好ましい態様において、該官能基M1は該ヒドロキシアルキルデンプン上のOH基(または所望によりヒドロキシアルキルデンプンの酸化または非酸化還元末端)と反応する。この態様において、該官能基M1は好ましくはカルボキシ基または反応性カルボキシ基であり、官能基Qは、アルデヒド基、ケト基またはヘミアセタール基であり、具体的にはM1およびQを含む二官能性化合物は、ホルミル安息香酸、4-ホルミル安息香酸 ペンタフルオロフェニルエステル、4-ホルミル安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシ)酪酸、および4-ホルミル安息香酸無水物、またはα-ケトカルボン酸、ノイラミン酸またはその誘導体、およびピリドキサルリン酸からなる群から選ばれる生体適合性化合物からなる群から選ばれる。
【0093】
α-ケトカルボン酸については、それらは好ましくはアミノ酸由来のα-ケトカルボン酸であり、ほとんどの場合ヒト身体中にもみられる。アミノ酸由来の好ましいα-ケトカルボン酸は、ケト-バリン、ケト-ロイシン、ケト-イソロイシン、およびケト-アラニンからなる群から選ばれる。本発明の方法の好ましい態様において、α-ケトカルボン酸のカルボキシ基は、該ヒドロキシアルキルデンプンのOH基(または、所望によりヒドロキシアルキルデンプンの酸化または非酸化還元末端)と反応するか、またはアミノ基である該ヒドロキシアルキルデンプンの基Qと反応する。次に、α-ケトカルボン酸の残る遊離ケト基を反応させチアゾリジンを形成させることができる。
【0094】
したがって、本発明は、該ヒドロキシアルキルデンプンがα-ケトカルボン酸と反応する(a)(2)(i)または(a)(2)(ii)の方法に関する。
【0095】
ノイラミン酸またはシアル酸、またはその誘導体に関して、それらは好ましくは生体適合性であり、具体的にはそれらはヒト身体中にみられるN-および/またはO-アセチル化された糖である。好ましい態様において、ノイラミン酸またはシアル酸は、N-アセチルノイラミン酸である。これら化合物は、ピラノース構造のため望ましい剛性を示し、スペーサーとしての機能を満たす。他方、選択的酸化によりこれら化合物にアルデヒド基を導入することも可能なことがある。シアル酸は、ヒト身体中に、例えばグリコシル化タンパク質のグリカン鎖中の末端単糖として見出される。
【0096】
好ましい態様において、該シアル酸を選択的に酸化し、アルデヒド基を得ることができる。
【0097】
シアル酸またはノイラミン酸の選択的酸化方法は、当該分野(例えばL.W. Jaques、B.F. Riesco、W. Weltner、Carbohydrate Research、83(1980)、21-32およびT. Masuda、S. Shibuya、M. Arai、S. Yoshida、T. Tomozawa、A. Ohno、M. Yamashita、T. Honda、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、13(2003)、669-673)で知られている。好ましくは、該シアル酸の酸化を行い、次いでヒドロキシアルキルデンプンと反応させてよい。
【0098】
次に、所望により酸化されたシアル酸を、そのカルボン酸基を介してヒドロキシアルキルデンプンと反応させることができる。本発明の方法の好ましい態様において、酸化アシル基のカルボキシ基を、該ヒドロキシアルキルデンプン上のOH基、または所望によりヒドロキシアルキルデンプンの酸化または非酸化還元末端と反応させるか、またはアミノ基である該ヒドロキシアルキルデンプンの基Qと反応させる。次に、酸化アシル酸の残りのカルボニル基を反応させてチアゾリジンを形成させることができる。
【0099】
したがって、本発明は、該ヒドロキシアルキルデンプンを酸化シアル酸と反応させる(a)(2)(i)または(a)(2)(ii)の方法に関する。
【0100】
ピリドキサルリン酸(PyP)に関して、これは、高生体適合性二官能性化合物であり、ビタミンB6とも呼ばれる。PyPは、アミノ基転移、脱炭酸、ラセミ化、およびアミノ酸側鎖の多くの修飾に関与する補酵素である。すべてのPyPを必要とする酵素は、アミノ酸と該補酵素の間のシッフ塩基の形成を介して作用する。
【0101】
本発明の方法の好ましい態様において、該PyPのリン酸基を、該ヒドロキシアルキルデンプン上のOH基または所望によりヒドロキシアルキルデンプンの酸化または非酸化還元末端と反応させてリン酸基を形成するか、またはアミノ基である該ヒドロキシアルキルデンプンの基Qと反応させてホスホラミドを形成する。次に、PyPの残りのカルボニル基を反応させてチアゾリジンを形成させることができる。
【0102】
PyPの場合、該ヒドロキシアルキルデンプンの官能基は、好ましくは上記のごとくジアミノ化合物を用いることにより該ヒドロキシアルキルデンプンに導入される。
【0103】
したがって、本発明は、該ヒドロキシアルキルデンプンをピリドキサルリン酸と反応させる(a)(2)(i)または(a)(2)(ii)の方法に関する。
【0104】
(a)(2)(i)の好ましい態様において、該官能基M1は、カルボキシ基、反応性カルボキシ基、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲニド、イソシアネート、イソチオシアネート、クロロギ酸エステル、およびエポキシド基からなる群から選ばれ、該官能基Qは、アルデヒド基、ケト基またはヘミアセタール基である(ここで、官能基M1は、該ヒドロキシアルキルデンプン上のOH基と反応させる。)。
【0105】
(a)(2)(i)の好ましい態様において、該官能基M1は、アミノ基およびα-SH-β-アミノ基からなる群から選ばれ、該官能基Qはα-SH-βアミノ基である(具体的には、官能基M1は、該ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端と反応させる。)。
【0106】
(a)(2)(i)の好ましい態様において、該α-SH-β-アミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプンは、ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端を、官能基M1およびα-SH-β-アミノ基である官能基Qを含む化合物(具体的には、M1およびα-SH-β-アミノ基を含む該化合物は1,3-ジアミノ-2-チオプロパン、または2,3-ジアミノ-1-チオプロパンである)と反応させることを含む方法により得る。
【0107】
(a)(2)(ii)の好ましい態様において、少なくとも二官能性化合物は、カルボキシ基または反応性カルボキシ基であるM1、および保護されたα-SH-βアミノ基であるQを含み、具体的には、該少なくとも二官能性化合物は、D-,L-PG1-Cys(PG2)-OHまたはそのラセミ混合物、およびその活性エステルからなる群から選ばれる(ここで、PG1は、好ましくはtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)または9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選ばれるアミノ基のあらゆる適切な保護基であってよく、PG2は、好ましくはトリチル(Trt)、p-メトキシトリチル(Mmt)S-tert-ブチルチオ(S-t-Bu)、およびアセトアミドメチル(Acm)からなる群から選ばれるチオール基のあらゆる適切な保護基であってよい。)。
【0108】
(a)(2)(ii)によれば、該官能基Qは、さらに修飾されてアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基を得る基である。この態様において、ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端と少なくとも二官能性化合物との反応により生じた該ヒドロキシアルキルデンプン誘導体は、該ヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基Qと反応する官能基を含むさらなる少なくとも二官能性化合物と反応する。
【0109】
(a)(2)(ii)の好ましい態様において、両M1およびQはアミノ基-NH2であり、M1およびQは、あらゆる適切なスペーサーにより分離することができる。とりわけ、該スペーサーは、所望により置換された、直鎖、分岐鎖、および/または環状炭化水素残基であってよい。一般的に、該炭化水素残基は、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、および特に好ましくは2〜4である。ヘテロ原子が存在する場合は、該分離(separating)基は、一般に1〜20、好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜4個のヘテロ原子を含む。該炭化水素残基は、例えば炭素数5〜7の所望により分岐鎖アルキル鎖またはアリール基またはシクロアルキル基を含むか、またはアラルキル基、アルカリール基であってよい(ここで、アルキル部分は直鎖および/または環状アルキル基であってよい)。さらにより好ましい態様によれば、該眼窩水素残基は、炭素数1〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6、および特に好ましくは2〜4のアルキル鎖である。
【0110】
(a)(2)(ii)によれば本発明の方法のある態様において、M1およびQを含む少なくとも二官能性化合物は、炭素数1〜20の所望により置換されたジアミノアルカンであることが好ましく、好ましくは化合物は、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサン、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
【0111】
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜10である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物からなる群から選ばれる。
【0112】
本発明の好ましい態様は、該ヒドロキシアルキルデンプンを、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサン、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜4である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物からなる群から選ばれる二官能性化合物(具体的には1,4-ジアミノブタン)と反応させてアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、次いで、このアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を、さらにアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンのアミノ基と反応性の1個の官能基および少なくとも1のアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基である1個の官能基を含む少なくとも二官能性化合物と反応させる、上記方法にも関する。このさらなる二官能性化合物は、好ましくは、ホルミル安息香酸、4-ホルミル安息香酸、ペンタフルオロフェニルエステル、4-ホルミル安息香酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシ)酪酸、および4-ホルミル安息香酸無水物からなる群から選ばれるか、またはα-ケトカルボン酸、ノイラミン酸またはその誘導体、およびピリドキサルリン酸からなる群から選ばれる生体適合性化合物である。
【0113】
(a)(2)(ii)の方法の別の態様において、該α-SH-β-アミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプンは所望によりヒドロキシアルキルデンプンの還元末端を酸化し、酸化または非酸化還元末端をM1に加えてさらに官能基Qを含む化合物の官能基M1と反応させて第1ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、次いで、第1ヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基Qを、Vに加えて所望により保護されたα-SH-β-アミノ基を含む化合物の官能基Vと反応させて所望により保護されたα-SH-β-アミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることを含む方法により得られる。該官能基M1およびQは好ましくは上記と同意義である。
【0114】
好ましい態様において、Vおよび所望により保護されたα-SH-β-アミノ基を含む該化合物はシステインまたはその誘導体である(ここで、Vはカルボキシ基または反応性カルボキシ基、好ましくは反応性エステルまたはカルボン酸無水物である)。
【0115】
好ましくは、(a)(2)(ii)において、その非酸化型のヒドロキシアルキルデンプンを、アミノ基M1およびアミノ基Qを有する二官能性化合物と還元的アミノ化により反応させる。特に、該二官能性化合物は、第1級アミン、アンモニア、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサン、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜4である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物からなる群から選ばれてよく、具体的には1,4-ジアミノブタンであってよい。
【0116】
好ましくは、(a)(2)(ii)において、その還元末端が酸化された該ヒドロキシアルキルデンプンを、アミノ基M1およびアミノ基Qを有する二官能性化合物とラクトン開環反応により反応させる。特に、該二官能性化合物は、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサン、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜4である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物からなる群から選ばれてよく、具体的には1,4-ジアミノブタンであってよい。
【0117】
好ましくは、(a)(2)(ii)において、ヒドロキシアルキルデンプンを、好ましくは上記のごとく製造したアミノ基Qを有する二官能性化合物と最初に反応させ、次いで、得られたアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンをさらに活性化カルボン酸およびアルデヒド基、ケト基またはヘミアセタール基を有する二官能性化合物と反応させる。
【0118】
特に好ましい態様において、(a)(2)(ii)の本発明の方法は、好ましくは酸化ヒドロキシアルキルデンプンを、アミノ基M1およびアミノ基Qを有する化合物、具体的にはジアミノアルキル化合物、特に1,4-ジアミノブタンと反応させ、次いでアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンを、所望により保護されたシステインおよび4-ホルミル安息香酸からなる群から選ばれる化合物と反応させることを含む。
【0119】
少なくとも1のアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基またはα-SH-βアミノ基を含む該活性物質は全ての適切な方法により提供することができる。
【0120】
好ましい態様において、該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または該α-SH-β-アミノ基を含む、該活性物質、好ましくは所望により修飾されたタンパク質、ペプチド、合成ペプチドまたはオリゴヌクレオチドは、
(b)(1)該活性物質にその製造中にまたは化学修飾により少なくとも1のアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または少なくとも1のα-SH-β-アミノ基を導入するか、または
(b)(2)該活性物質を少なくとも二官能性化合物と反応させる(ここで、該化合物は、2個の官能基M2およびQを含み、1個の官能基M2は該活性物質と反応し、1個の官能基Qは、
(i) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基であるか、または
(ii) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基を得るための化学修飾されている官能基である)
ことを含む方法により得られる。
【0121】
好ましくは、(b)(1)において、該活性物質は、有機合成により製造された、好ましくは合成樹脂を用いて製造された、アルデヒド官能化、ケト官能化、ヘミアセタール官能化、またはα-SH-β-アミノ官能化タンパク質またはペプチドをもたらすタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、アルデヒド官能化、ケト官能化、ヘミアセタール官能化、またはα-SH-β-アミノ官能化タンパク質またはペプチドをもたらす発現ベクターを用いて製造されたタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、タンパク質またはペプチドの骨格が、アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-β-アミノ基で置換されているタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または該α-SH-β-アミノ基がタンパク質またはペプチドの骨格と直接結合するか、該骨格の側鎖の部分であるタンパク質またはペプチドである。
(b)(1)の好ましい態様において、該活性物質は、該活性物質、具体的にはタンパク質またはペプチドの、アルデヒド基を導入するための酸化による修飾により得られる。
【0122】
好ましい態様において、該活性物質がタンパク質またはペプチドであり、該アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基が該ポリペプチドの炭化水素部分に含まれ、具体的には該炭化水素部分が、ヒドロキシアルデヒド、ヒドロキシケトン、およびその化学修飾物からなる群から選ばれる。該炭化水素部分は、天然の炭化水素部分の誘導体であり、所望により化学的または酵素的に酸化されたグルコース、ガラクトース、マンノース、およびシアル酸からなる群から選ばれ、好ましくは炭化水素側鎖の酸化ガラクトースまたは酸化シアル酸残基、より好ましくは炭化水素側鎖の末端ガラクトース、またはシアル酸残基であってよい(ここで、末端炭化水素部分の酸化は好ましくは酵素的または化学的に行われ、化学的酸化は、好ましくはペリオデートを用いて行われる)。
【0123】
好ましい態様において、該炭化水素部分は天然の炭化水素部分の誘導体であり、化学的または酵素的に酸化された末端ガラクトースである(ここで、該末端ガラクトース残基は所望により末端アシル酸の開裂後に得られる)。
【0124】
好ましい態様において、該α-SH-β-アミノ基は該活性物質、タンパク質またはペプチドのシステイン残基中に含まれ、該システイン残基が好ましくは該活性物質のN末端システイン残基である。
【0125】
好ましい態様において、該活性物質はジスルフィド架橋の部分でないN末端システイン残基を有する修飾タンパク質またはペプチドであり、具体的には、N末端システイン残基を有する修飾タンパク質またはペプチドが、(1)システイン残基をN末端アミノ酸に付加し、(2)該N末端アミノ酸をシステインで置換するか、または(3)末端システインが得られるまでN末端アミノ酸を欠失させることにより得られる天然タンパク質またはペプチドの突然変異体である。
【0126】
ペプチドにおいて、示したシステインは合成時に導入することができる。ペプチド合成は当該分野で知られている。(W. Chang、P. D. White;Fmoc solid phase peptide synthesis、a practical approach; Oxford University Press、Oxford、2000、ISBN 0199637245)。
【0127】
組換えポリペプチドは、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Sambrookら編(CSHL Press 2001)に記載の標準的分子生物学的技術により得ることができる。簡単には、ポリペプチドを、目的のポリペプチドをコードする核酸を含む組換え発現ベクターから発現させることができる(ここで、該核酸は、目的のポリペプチドの発現を可能にする少なくとも1のレギュラー配列と機能的に連結している。)。例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸配列を単離して発現ベクターにクローンし、次いで該ベクターで適切な宿主細胞を形質転換して目的のポリペプチドを発現させることができる。そのようなベクターはプラスミド、ファージミッド、またはコスミッドでありうる。例えば、核酸分子は、適切な方法で原核または真核発現ベクターにクローンすることができる(Molecular Cloning、上記参照)。そのような発現ベクターは、少なくとも1のプロモーターを含み、翻訳開始のシグナル、および原核発現ベクターの場合は翻訳終止のシグナルを含むが、真核発現ベクターの場合は、好ましくは翻訳終止およびポリアデニル化の発現シグナルを含む。原核発現ベクターの例には、Escherichia coli中で発現するための、例えばUS 4,952,496に記載のT7 RNAポリメラーゼにより認識されるプロモーターに基づく発現ベクター、Saccharomyces cerevisiae中で発現するための原核発現ベクターには、例えば,ベクターG426/Met25またはP526/Gal1(Mumberg et al.、(1994) Nucl. Acids Res.、22、5767-5768)、昆虫細胞中で発現させるための、例えばBaculovirusベクター(例えば、EP-B1-0127839またはEP-B1-0549721、Ciccarone et al.(“Generation of Recombinant Baculovirus DNA in E.coli using baculovirus shuttle vector”(1997) Volume 13、U. Reischt編(Totowa、NJ: Humana Press Inc.)に記載)、および哺乳動物細胞で発現させるための、例えばベクターRc/CMWおよびRc/ASWおよびSW40-ベクター(一般に知られており、市販されている)、または実施例4に記載のEBNA系、SindbisレプリコンベースのpCytTS(Boorsma et al.(2002) Biotechnol. Bioeng. 79(6): 602-609)、Sindbisウイルス発現系(Schlesinger(1993) Trends Biotechnol. 11(1):18-22)、またはアデノウイルス発現系(He et al.(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2509-2514)がある。これら発現ベクターを製造するための分子生物学的方法、および宿主細胞のトランスフェクション法、およびそのようなトランスフェクトされた宿主細胞の培養方法、ならびに該トランスフェクトされた宿主細胞から本発明のポリペプチドを製造および得る条件は当業者によく知られている。
【0128】
目的のN末端システイン残基を有するポリペプチドは、目的のN末端システイン残基を有するポリペプチドを得るために除去することができるN末端リーダー配列後方に目的のポリペプチドをクローンすることにより上記のごとく発現および精製されるポリペプチドから生成することができる。
【0129】
これは、例えば、上記のごとく発現し、精製したポリペプチドの蛋白分解的開裂により達成することができる。そのような場合は、システイン残基が高選択性プロテアーゼ開裂部位に直接続く(例えば、Xa因子開裂部位:Ile(Glu/Asp) Gly Arg|(Cys/His)の直後のCys残基、またはエンテロキナーゼ開裂部位:Asp Asp Asp Asp Lys|(Cys/His)(ここで、|はプロテアーゼによる開裂部位を表す)の直後のHisまたはCys残基)融合ポリペプチドを、クローンし、発現させ、次いで精製した。
【0130】
これは、さらに、例えば発現時の該ポリペプチドの開裂、例えばシグナルペプチダーゼによるER転位の段階での開裂により達成することができる。そのような場合は、融合ポリペプチドをクローンし発現させた(ここで、Cys残基は、該組換えポリペプチドを分泌経路に誘導するシグナルペプチドに直接続く)(総説は、Rapoport et al.、Annu Rev Biochem. 1996;65:271-303を参照)。目的の位置の目的とするCys残基を有するペプチドのコーディング配列を作製するための組換えポリペプチドのコーディング配列の分子生物学的操作方法は当該分野でよく知られている(Sambrook、上記)。
(b)(2)の好ましい態様は上記(a)(2)について記載されている通りであり、具体的には官能基M2およびQは、該活性物質が上記の基M1と反応性の官能基を含む限り、好ましくは官能基M1およびQについて上記した通りである。
【0131】
特に好ましい態様において、該活性物質はタンパク質およびペプチドから選ばれ、好ましくは上記のごとく上記(b)(1)に従って得られる。
(A)の特に好ましい態様において、アルデヒド基を含むヒドロキシアルキルデンプンは、(a)(2)(ii)により、好ましくは酸化ヒドロキシアルキルデンプンをアミノ基M1およびアミノ基Qを有する化合物、具体的にはジアミノアルキル化合物、特に1,4-ジアミノブタンと反応させ、次いでアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンをアルデヒド基を含む二官能性化合物、具体的には4-ホルミル安息香酸と反応させ、次いで、該ヒドロキシアルキルデンプンのアルデヒド基を(b)(2)(i)により得られる所望により保護されたα-SH-β-アミノ基と反応させることにより、好ましくは所望により保護されたシステインを該活性物質、具体的にはタンパク質またはペプチドに導入することにより得られる。
(B)の特に好ましい態様において、アルデヒド基を含む該活性物質は、(b)(1)により、具体的には、化学修飾、好ましくはタンパク質またはペプチドを酸化することによりアルデヒド基を導入し、次いで該活性物質のアルデヒド基を(a)(2)(ii)により得られるα-SH-β-アミノ基を含むヒドロキシアルキルデンプンと反応させ、好ましくは、好ましくは酸化ヒドロキシアルキルデンプンをアミノ基M1およびアミノ基Qを有する化合物、具体的にはジアミノアルキル化合物、特に1,4-ジアミノブタンと反応させ、次いでアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプンをα-SH-β-アミノ基、具体的にはシステインを含む二官能性化合物と反応させることによりアルデヒド基を導入することにより得られる。
【0132】
該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンとの(A)および(B)に従った本発明の反応は、あらゆる適切な溶媒または少なくとも2の溶媒の混合物中、適切なpHおよび適切な反応温度で行ってよい。
【0133】
好ましい態様において、反応(A)または(B)は、温度0〜40℃、好ましくは0〜25℃、具体的には20〜25℃で溶媒存在下、pH3.5〜10、好ましくは4〜8、具体的には4.8〜8.0で、好ましくは0.1〜24h、具体的には約21hの反応時間で行われる。
【0134】
溶媒は、好ましくは水、水性緩衝剤、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、およびその混合物からなる群から選ばれる。
【0135】
ヒドロキシアルキルデンプンの活性物質に対する分子比は、約1:1〜200:1、好ましくは10:1〜100:1、具体的には40:1〜70:1である。
【0136】
さらに、本発明は、上記方法により得られる活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートに関する。
【0137】
別の態様において、本発明は、
活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが、式(I):
【化20】

または式(I’):
【化21】

または式(I”):
【化22】

[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は、独立して水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基、好ましくは水素でからなる群から選ばれる。]
で示される構造、
式(IV)、(IV’)、または(IV”):
【化23】

または
【化24】

[式中、HAS’は、アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基と結合した該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’はα-SH-β-アミノ基と結合した該活性物質またはその誘導体の残基である。]
で示される構造、または
式(V)、(V’)、または(V”):
【化25】

【化26】

[式中、HAS’は、α-SH-β-アミノ基と結合した該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’は、アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基と結合した該活性物質またはその誘導体の残基である。]
で示される構造を有する化学残基により共有結合している活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートに関する。
【0138】
別の態様において、該コンジュゲートは、
【化27】

[式中、R5は、前記R1〜R4に関するものと同意義である。]、
【化28】

[式中、R5は、前記R1〜R4に関するものと同意義である。]、
【化29】

[式中、式IV’a、IV’b、V’b、またはV’cにおいて、nは整数、好ましくはnは0〜20であり、式Va、Vb、V’d、またはV’eにおいて、nは整数、好ましくはnは1〜20である。]
からなる群から選ばれる。式IV’bおよびV’cの好ましい態様において、nは2〜4、具体的には2である。
【0139】
好ましい態様において、該コンジュゲートは、
【化30】

[式中、R’、R”および/またはR'''は、式IIに関する定義と同意義である。HESの少なくとも1のグルコース単位において、R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、独立して
【化31】

からなる群から選ばれ(ここで、nは整数、好ましくは1〜20である)、および/または
R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、-(CH2CH2O)m-Rであり(ここで、mは整数、好ましくは1〜3である)、Rは、式(VIa)、(VIb)、(VIc)、および(VId)からなる群から選ばれる。]である。
【0140】
さらなる態様において、本発明は、
【化32】

[式中、R5は上記R1〜R4に関する定義と同意義である。]および
【化33】

[式中、nは整数、好ましくは0〜20である。]
からなる群、または
【化34】

[式中、R’、R”および/またはR'''は、式IIに関する定義と同意義である。HESの少なくとも1のグルコース単位において、R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、独立して
【化35】

からなる群から選ばれ(ここで、nは整数、好ましくは1〜20である)、および/または
R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、-(CH2CH2O)m-R##であり(ここで、mは整数、好ましくは1〜3である)、R##は、式(VI’a)、(VI’b)、および(VI’c)からなる群から選ばれる。]
からなる群から選ばれるα-SH-βアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体に関する。
【0141】
式(VI)および(VI')と関連して特に用いられる略号HES”およびHES’は、(VI)および(VI')に示すHES”およびHES’結合炭化水素部分とともに、同様に(VI)および(VI')に記載のコンジュゲートの部分であるHES分子を構成するHES分子の残基を表す。
【0142】
さらなる態様において、本発明は、ヒトまたは動物身体の治療方法または治療薬として用いるための上記コンジュゲートに関する。
【0143】
本発明のコンジュゲートは、純度が少なくとも50%、さらにより好ましくは純度が少なくとも70%、さらにより好ましくは純度が少なくとも90%、具体的には少なくとも95%または少なくとも99%である。最も好ましい態様において、該コンジュゲートは、純度100%(すなわち、他の副産物が存在しない)であってよい。
【0144】
したがって、別の態様によれば、本発明は、本発明のコンジュゲートを含む組成物にも関する(ここで、該コンジュゲートの量は、少なくとも50wt%、さらにより好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、具体的には少なくとも95wt%、または少なくとも99wt%であってよい)。最も好ましい態様において、該組成物は該コンジュゲートからなってよい(すなわちコンジュゲートの量が100wt%である)。
【0145】
したがって、本発明は、上記コンジュゲート、または上記方法により得ることができるコンジュゲートにも関する。
【0146】
さらに、本発明は、さらに少なくとも1の医薬的に許容される希釈剤、アジュバント、または担体を含む、上記コンジュゲートまたは上記方法により得ることができる医薬組成物にも関する。
(図面の簡単な説明)
【0147】
図1は、H-Cys(H)-HES10/0.4および酸化EPOからのチアゾリジン形成により得られる粗タンパク質-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。
レーンX: Roti(登録商標)-Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)。分子量マーカー、上から下へ:200kDa、119kDa、66kDa、43kDa、29kDa、20kDa、14.3kDa
レーンA:H-Cys(H)-HES10/0.4の酸化EPOとのコンジュゲーション。
【0148】
図2は、H-Cys-ペプチド-NH2およびアルデヒドHESからのチアゾリジン形成の粗タンパク質-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。
レーンX: Roti(登録商標)-Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)。分子量マーカー、上から下へ:200kDa、119kDa、66kDa、43kDa、29kDa、20kDa、14.3kDa。
レーンA:pH4.6におけるアルデヒドHES10/0.7のコンジュゲーション
レーンB:pH4.6におけるアルデヒドHES50/0.7のコンジュゲーション
レーンC:反応コントロール:pH4.6におけるペプチド
レーンD:pH8.0におけるアルデヒドHES10/0.7のコンジュゲーション
レーンE:pH8.0におけるアルデヒドHES50/0.7のコンジュゲーション
レーンF:pH8.0におけるペプチド。
【0149】
図3は、下記実験の項8.4〜8.5に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびアルデヒド修飾DNAからのチアゾリジン形成により得られる粗DNA-HESコンジュゲートのアガロースゲル電気泳動による分析を示す。
レーンX: pUC19/Msp Iマーカー(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)。分子量マーカー、上から下に:501/489 bp、404 bp、331 bp、242 bp、190 bp、147 bp、111/110 bp、67 bp。
レーンA、上列:実験の項8.5に記載のpH4.6におけるH-Cys(H)-HES50/0.7のFBA修飾DNAに対するコンジュゲーション
レーンB、上列:反応コントロール;実験の項8.5に記載のpH4.6におけるOxo-HES50/0.7のFBA修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンC、上列:実験の項8.5に記載のpH8.0におけるH-Cys(H)-HES50/0.7のFBA修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンD、上列:反応コントロール;実験の項8.5に記載のpH8.0におけるOxo-HES50/0.7のFBA修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンE、上列:反応コントロール;HES誘導体を含まない水中のFBA修飾DNA;
レーンA、下列:実験の項8.5に記載のpH4.6におけるH-Cys(H)-HES50/0.7のホルミルインドール修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンB、下列:反応コントロール;実験の項8.5に記載のpH4.6におけるOxo-HES50/0.7のホルミルインドール修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンC、下列:実験の項8.5に記載のpH8.0におけるH-Cys(H)-HES50/0.7のホルミルインドール修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンD、下列:反応コントロール;実験の項8.5に記載のpH8.0におけるOxo-HES50/0.7のホルミルインドール修飾DNAに対するコンジュゲーション;
レーンE、下列:反応コントロール;HES誘導体を含まない水中のホルミルインドール修飾DNA。
【0150】
図4〜6は、下記実験の項9に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびダウノルビシンからのチアゾリジン形成により得られる粗ダウノルビシン-HESコンジュゲートのHPLC逆相クロマトグラフィ(290nmでUV検出)分析を示す。
図4:粗コンジュゲートのPHLC分析;
図5:ダウノルビシンのHPLC分析;
図6:H-Cys(H)-HES50/0.7のPHLC分析。
【0151】
図7〜9は、下記実験の項9に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびタイロシンからのチアゾリジン形成により得られる粗タイロシン-HESコンジュゲートのHPLC逆相クロマトグラフィ(220nmでUV検出)分析を示す。
図7:粗コンジュゲートのPHLC分析;
図8:タイロシンのHPLC分析;
図9:H-Cys(H)-HES50/0.7のHPLC分析。
【0152】
図10:下記実験の項10に記載の粗ペプチド-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。
レーンX:Roti(登録商標)-Mark STANDARD(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)。分子量マーカー、受けから下へ:200kDa、119kDa、66kDa、43kDa、29kDa、20kDa、14.3kDa。
レーンA:DMFにおける21℃のHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
レーンB:DMFにおける37℃のHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
レーンC:反応コントロール:DMFにおける50℃のペプチド。
レーンD:pH4.6、50℃におけるHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
レーンE:DMFにおける50℃のHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
レーンF:pH4.6、50℃、1%トリトンにおけるHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
レーンG:DMFにおける21℃、1%トリトンにおけるHES10/0.7のペプチドに対するコンジュゲーション。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0153】
1. H-Cys(StBu)-HES10/0.4の合成
1.1 酸化HESからのアミノHES10/0.4の合成
【0154】
オキソ-HES10/0.4(4g、MW = 10.9kDa、DS = 0.4、Supramol Parenteral Colloids GmbH、Rosbach-Rodheim、D)を減圧下、80℃で一夜加熱し、アルゴン下、乾燥ジメチルスルホキシド(25 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)に溶解し、次いで1,4-ジアミノブタン(4.0 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。45℃で24時間撹拌した後、反応混合物を2-プロパノール(125 mL、Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)に加え、-20℃で1時間インキュベートした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、2-プロパノール(100 mL)で洗浄し、次いで遠心して回収した。粗生成物を水(20 mL、Milli-Q)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin dialysis tubing、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で43時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は65%であった。
1.2 Fmoc-Cys(StBu)-HES10/0.4のアミノHESの合成
【0155】
Fmoc-Cys(S-tBu)-OH(150 mg、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)および1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(61.4 mg、Aldrich、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)をN,N-ジメチルホルムアミド(3.5 mL ペプチド合成グレード、Biosolve、Valkenswaard、NL)に溶解し、次いで、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(54.3μL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。21℃で30分間インキュベーションした後、1.1で得たアミノHES10/0.4(0.35 g)を加えた。室温で一夜撹拌した後、反応混合物を、アセトン(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)およびエタノール(DAB、Sonnenberg、Braunschweig、D)の氷冷1:1混合物(35 mL、v/v)に加え、次いで-20℃で1時間インキュベートした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、水(20 mL、Milli-Q)に溶解し、次いでジクロロメタン(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)を加えた(20 mL)。混合物を完全に混合し、次いで遠心した。水性上層をMilli-Q水(SnakeSkin dialysis tubing、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で41時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は78%であった。
1.3 H-Cys(StBu)-HES10/0.4のFmoc-Cys(StBu)-HES10/0.4からの合成
【0156】
1.2で得たFmoc-Cys(S-tBu)HES10/0.4(0.35 g)をピペリジン溶液(4mL、20%(DMF中)、v/v、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)に溶解した。室温で15分間撹拌した後、反応混合物をアセトンおよびエタノール(35 mL、v/v)の1:1混合物に加え、次いで-20℃で1時間インキュベーションした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、tert-ブチルメチルエーテル(25 mL、Acros Organics、Geel、B)で洗浄し、次いで-20℃で1時間インキュベーションした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、次いで窒素流中で乾燥した。単離生成物の収率は68%であった。
2. アルデヒドHES10/0.7の合成
2.1 アミノHES10/0.7の酸化HESからの合成
【0157】
オキソ-HES10/0.7(6.02 g、MW = 14.7kDa、DS = 0.76、Supramol Parenteral Colloids GmbH、Rosbach-Rodheim、D)を減圧下80℃で16.5時間加熱し、アルゴン下、乾燥ジメチルスルホキシド(25 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)に溶解し、次いで1,4-ジアミノブタン(5.1 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。40℃で17時間撹拌した後、反応混合物をアセトンおよびエタノール(150 mL、v/v)の氷冷1:1混合物に加えた。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、アセトンおよびエタノール(40 mL、v/v)の氷冷1:1混合物で洗浄し、次いで遠心して回収した。粗生成物を水(80 mL)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin dialysis tubing、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で42時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は67%であった。
2.2. アルデヒドHES10/0.7のアミノHESからの合成
【0158】
4-ホルミル安息香酸(75 mg、Lancaster Synthesis、Frankfurt/ Main、D)および1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(115 mg、Aldrich、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、5 mL、ペプチド合成グレード、Biosolve、Valkenswaard、NL)に溶解し、次いでN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(102μL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。室温で30分間インキュベーションした後、アミノHES10/0.7(0.5 g、MW = 14.7kDa、DS = 0.76)を加えた。室温で一夜振盪した後、反応混合物を2-プロパノール(30 mL、Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)に加え、-20℃で1時間インキュベーションした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、2-プロパノール(30 mL)で洗浄し、次いで遠心して回収した。粗生成物を水(10 mL、Milli-Q)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin dialysis tubing、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で44時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は86%であった。
3. アルデヒドHES50/0.7の合成
3.1. アミノHES50/0.7の酸化HESからの合成
【0159】
オキソ-HES50/0.7(6.09 g、MW = 56.7kDa、DS = 0.76、Supramol Parenteral Colloids GmbH、Rosbach-Rodheim、D)を減圧下80℃で16.5時間加熱し、アルゴン下、乾燥ジメチルスルホキシド(32 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)に溶解し、次いで1,4-ジアミノブタン(1.2 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。40℃で17時間撹拌した後、反応混合物をアセトンおよびエタノール(150 mL、v/v)の氷冷1:1混合物に加えた。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、アセトンおよびエタノール(40 mL、v/v)の氷冷1:1混合物で洗浄し、次いで遠心して回収した。粗生成物を水(80 mL)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin透析チュービング、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で42時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は82%であった。
3.2. アミノHESからのアルデヒドHES50/0.7の合成
【0160】
4-ホルミル安息香酸(124 mg、Lancaster Synthesis、Frankfurt/ Main、D)および1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(174 mg、Aldrich、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、38 mL、ペプチド合成グレード、Biosolve、Valkenswaard、NL)に溶解し、次いでN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(155μL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。室温で30分間インキュベーションした後、アミノHES10/0.7(3.80 g、MW = 56.7kDa、DS = 0.76)を加えた。室温で一夜振盪した後、反応混合物を2-プロパノール(160 mL、Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)に加え、-20℃で1時間インキュベーションした。沈殿生成物を4℃で遠心して回収し、DMF(20 mL)に溶解し、上記のごとく2-プロパノールで沈殿させ、次いで遠心して回収した。粗生成物を水に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin透析チュービング、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で24時間透析し、次いで凍結乾燥した。生成物をアセトンおよびエタノール(150 mL、v/v)の氷冷1:1混合物で沈殿させ、次いで遠心して回収した。粗生成物を水(29 mL)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin 透析チュービング、3.5kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で24時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は77%であった。
4. H-Cys(H)-HES10/0.4および酸化EPOからのチアゾリジン形成
4.1. H-Cys(StBu)-HES10/0.4の脱保護
【0161】
実施例1で得たH-Cys(StBu)-HES10/0.4(10 mg)を酢酸ナトリウム緩衝液(1 mL、0.1 M、pH4.6、10 mM EDTA)に溶解し、次いでトリス-(2-カルボキシエチル)-ホスフィン・塩酸(2.8 mg、TCEP、Acros Organics、Geel、B)を加えた。反応混合物を室温で30分間インキュベーションし、過剰のTCEPを透析して除去した。
【0162】
反応混合物を緩衝液(リン酸ナトリウム緩衝液 0.1 M、pH8.0、1 mM EDTA)で0.5mLに希釈し、Vivaspin 500濃縮装置(Viva Science、5kDa MWCO、Hannover、Germany)で20℃、13000 x gで10分間遠心した。洗浄工程を残った溶液を緩衝液で0.5mLに希釈して3回反復し、次いで記載のごとく35分間遠心した。H-Cys(H)-HES10/0.4溶液を同じ反応緩衝液で150μL(最終計算濃度66.6μg/mL)に希釈した。
4.2. 酸化EPOとのコンジュゲーション
【0163】
酸化EPOを製造するため、0℃に保った総量20mLのEPO(ヒトEPOのアミノ酸配列および市販のEpoietinα: Erypo、ORTHO BIOTECH、Jansen-CilagまたはEpoietinβ:NeoRecormon、Rocheと同様または実質的に同じ特性を有する組換え精製EPO、EP 0 148 605、EP 0 205 564、EP 0 411 678参照)の2.0 mg/mL溶液を、10mMナトリウムメタぺリオデートの氷冷溶液2.2mLに加え、最終濃度1mMのナトリウムメタペリオデートを得た。混合物を暗所で氷浴中0℃で1時間インキュベーションし、次いで40μLのグリセロールを加えて反応を止め、次いでさらに5分間インキュベーションした。混合物の緩衝液を酢酸ナトリウム緩衝液pH5.5に変えた。
【0164】
得られた酸化EPO(14.9μL、1.34 mg/mL、酢酸ナトリウム緩衝液、pH5.5)に4.1で得たH-Cys(H)-HES10/0.4溶液(5μL)を得た。室温で21時間インキュベーションした後、反応混合物をSDSゲル電気泳動により分析した。XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH、Karlsruhe、D)およびConsort E143パワーサプライ(CONSORTnv、Turnhout、B)をSDSゲル電気泳動に用いた。還元条件でMOPS操作緩衝液および10% ビス/トリスゲル(共にInvitrogen GmbH、Karlsruhe、D)を使用説明書に従って用いた。
5. H-Cys(H)-ペプチド-NH2およびアルデヒドHESからのチアゾリジン形成
【0165】
N末端に遊離システイン残基を有するペプチドの溶液(2μL、15μg、3147 g/mol、DMF中7.5 mg/mL、H-CLPSLEGNMQQPSEFHCMMNWSSHIAAC-NH2。標準Fmoc固相合成により得、HPLC分析にて精製した)を反応緩衝液(表1参照、超音波浴中で15分間脱気)中のアルデヒドHES(表1参照)の20μL溶液に加え、次いで混合物を室温で一夜インキュベーションした。SDSゲル電気泳動により分析するため、XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH、Karlsruhe、D)およびConsort E143 power supply(CONSORTnv、Turnhout、B)を用いた。還元条件で12% ビス/トリスゲルおよびMES操作緩衝液(both Invitrogen GmbH、Karlsruhe、D)を使用説明書に従って用いた。

6. 結果
【0166】
実験結果を図に示す。
【0167】
上記実施例に記載の2つの異なる戦略を行った。ある場合(4.参照)には、カルボニル基ペリオデート酸化によりEPOのグリカン中に導入し、HESコンジュゲーションを含むα-SH-βアミノ基にコンジュゲートした。このHES10/0.4誘導体をHESから2工程で合成し、還元末端を酸化した。酸化HESを知られた方法によりアミノHES(1.1.参照)に変換し、次いで保護システイン(Fmoc-Cys(StBu)-OH)でアシル化し(1.2.参照)、次いで脱保護(1.3.参照)した。他の経路(5.参照)はアルデヒドHES10/0.7およびアルデヒドHES50/0.7を利用し(2.2.および3.2.参照)、既知のアミノHES(2.1.および3.1.参照)を、N末端に非保護システインを有する4-ホルミル安息香酸およびペプチドでアシル化して合成した。完全〜ほぼ完全な変換が両戦略により得られた(図1および2参照)。アルデヒドHESのCys-ペプチドに対するコンジュゲーションは、pH4.6およびpH8.0で同等に良好に進行した(図2、レーンAおよびDまたはレーンBおよびE)。これら反応条件で該ペプチドとHES10/0.7またはHES50/0.7との反応は失敗した。修飾反応条件下で成功が期待されるかもしれない。
【0168】
本発明の方法はN末端システイン残基を有する突然変異体を発現を通して得ることができるタンパク質に利点があるが、化学選択的コンジュゲーションも可能なタンパク質の他の修飾はこの経路を経て利用できないかもしれない。これによりヒドロキシアルキルデンプン、具体的にはヒドロキシエチルデンプンとの該タンパク質のN末端を介した選択的反応が可能になると予期される。本発明方法のさらなる利点は、アルデヒド、ケト、またはヘミアセタール基とα-SH-βアミノ基との反応の化学選択性である。したがって、例えば、タンパク質またはペプチドの側鎖の官能基とは反応しないと予期される。
7. H-Cys(H)-HES50/0.7の合成
7.1 アミノHES50/0.7の酸化HESからの合成
【0169】
オキソ-HES50/0.7(10.1 g、MW = 44.2kDa、DS = 0.7、Lot 502、Supramol Parenteral Colloids GmbH、Rosbach-Rodheim、D)を減圧下80℃で72時間加熱し、アルゴン下乾燥ジメチルスルホキシド(52 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)に溶解し、次いで1,4-ジアミノブタン(2.3 mL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。45℃で19.5時間撹拌した後、反応混合物をアセトン(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)およびエタノール(DAB、Sonnenberg、Braunschweig、D)の1:1混合物(400 mL、v/v)に滴加した。沈殿生成物を遠心して回収した。粗生成物を水(100 mL、Milli-Q)に溶解し、次いで20 mM酢酸で24時間および水で3.5時間透析した(SnakeSkin透析チュービング、10kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)。凍結乾燥後の単離生成物の収率は84%であった。
7.2 Fmoc-Cys(StBu)-HES50/0.7のアミノHES50/0.7からの合成
【0170】
Fmoc-Cys(S-tBu)-OH(293.1 mg、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)および1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(155.9 mg、Iris Biotech GmbH、Marktredwitz、D)をN,N-ジメチルホルムアミド(30 mL ペプチド合成グレード、Biosolve、Valkenswaard、NL)に溶解し、次いでN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(138μL、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を加えた。21℃で30分間インキュベーションした後、7.1に記載のごとく得たアミノHES50/0.7(3.00 g)を加えた。室温で一夜撹拌した後、反応混合物をアセトン(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)およびエタノール(DAB、Sonnenberg、Braunschweig、D)の1:1混合物(230 mL、v/v)に加えた。沈殿生成物を遠心して回収し、DMF(30 mL)に溶解し、再度上記のごとく沈殿させた。遠心した後、粗生成物を水(30 mL、Milli-Q)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin透析チュービング、10kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)で28時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は98%であった。
7.3 H-Cys(StBu)-HES50/0.7のFmoc-Cys(StBu)-HES50/0.7からの合成
【0171】
7.2に記載のごとく得たFmoc-Cys(StBu)HES50/0.7(2.62 g)をDMF(20 mL)に溶解し、次いでピペリジン(5 mL 、Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D)を得た。室温で15分間撹拌した後、反応混合物をアセトンおよびエタノール(190 mL、v/v)の1:1混合物に加えた。沈殿生成物を遠心して回収し、DMF(25 mL)に溶解し、次いで再度上記のごとく沈殿させた。遠心した後、粗生成物を水(25 mL、Milli-Q)に溶解し、Milli-Q水(SnakeSkin透析チュービング、10kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)に45時間透析し、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は83%であった。
7.4 H-Cys(H)-HES50/0.7のH-Cys(StBu)-HES50/0.7からの合成
【0172】
7.3に記載のごとく得たH-Cys(S-tBu)HES50/0.7(0.50 g)を50mMトリス-(2-カルボキシエチル)-ホスフィン・塩酸溶液(5mL、TCEP、Acros Organics、Geel、B、0.1 M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中)に溶解した。室温で1時間撹拌した後、反応混合物を5mM水性EDTA(Fluka、Sigma-Aldrich Chemie GmbH、Taufkirchen、D in Milli-Q water)で22時間および水(Milli-Q)で1時間透析し(SnakeSkin透析チュービング、10kDa MWCO、Perbio Sciences Deutschland GmbH、Bonn、D)、次いで凍結乾燥した。単離生成物の収率は97%であった。
8. DNAに対するコンジュゲーション
8.1 ホルミルインドール修飾DNAのハイブリダイゼーション
【0173】
5’-ホルミルインドール修飾DNA(ホルミルインドール修飾、すなわち、3-ホルミルインドール-修飾はA. Okamoto et al.、Tetrahedron Lett. 2002、43、4581-4583に従って導入した;200μL、atdbio、Southampton、UK、lot A0795、M = 9361 g/mol、c = 37.8μM(水中)、配列:XTACTCACCCTGCGAATTCAACTGCTGCCTC)および非修飾相補鎖(199μL、atdbio、Southampton、UK、lot A0794、M = 9376 g/mol、c = 38.2μM(水中)、配列:GAGGCAGCATTGAATTCGCAGGGTGAGTA)を製造業者により与えられた濃度に基づき1:1のモル比でハイブリダイズした。溶液を混合し、95℃で5分間インキュベーションし、最終濃度0.356 mg/mLの二本鎖DNAを得た。157μL(55.9μg)を一夜凍結乾燥し、水(27.9、Milli-Q)に溶解して2mg/mLの計算最終濃度を得た。濃度を計算するが実験的にはチェックしなかった。
8.2 5’-アミノ-C6修飾DNAのハイブリダイゼーション
【0174】
5’-アミノ-C6修飾DNA(59.1 nmol、biomers.net GmbH、Ulm、D、lot 00033426_1 DNA、M = 9218 g/mol、59.1 nmol、配列:TACTCACCCTGCGAATTCAACTGCTGCCTC)を水(100μl; Milli-Q)に溶解した。それ(38.78μL、595μM)を非修飾相補鎖(600μL、atdbio、Southampton、UK、lot A0794、M = 9376 g/mol、c = 38.2μM(水中)、配列:GAGGCAGCATTGAATTCGCAGGGTGAGTA)と製造業者により与えられた濃度に基づいて1:1のモル比でハイブリダイズした。溶液を混合し、95℃で5分間インキュベーションし、最終計算濃度0.667 mg/mLの二本鎖DNAを得た。濃度を計算したが実験的にはチェックしなかった。
8.3 FBA修飾DNAの5’-アミノ-C6修飾DNAからの形成
【0175】
スクシニミジル4-ホルミルベンゾエート(50μL、4 mg/mL(DMF中)、Novabiochem、Merck KGaA、Darmstadt、D)を8.2に記載のごとく得た二本鎖5’-アミノ-C6修飾DNA(500μL、0.667 mg/mL(水中)に加え、透明溶液を21℃で5時間インキュベーションした。反応混合物をVivaspin 500濃縮装置(Viva Science、5kDa MWCO、Hannover、Germany)で21℃、13000 x gで15分間遠心した。洗浄工程を残った溶液を水(Milli-Q)で0.5 mLに希釈して3回反復し、次いで記載のごとく12分間遠心した。DNA溶液を水で167μLに希釈し、最終計算濃度2 mg/mLを得た。濃度を計算したが実験的にはチェックしなかった。
8.4 H-Cys(H)-HES50/0.7およびホルミルインドール修飾DNAからのチアゾリジン形成
【0176】
反応緩衝液中(下記表2参照)のHES50/0.7-誘導体溶液(4μL、147.5 mg/mL、表1参照)を8.1に記載のごとく得たホルミルインドール修飾DNA(1.4μL、2 mg/mL)の水性溶液に加えた。21℃で14時間インキュベーションした後、反応混合物をアガロースゲル電気泳動により分析した。Agagel StandardシステムおよびMinicell Power Pack P20パワーサプライ(共にBiometra GmbH、Goettingen、D)を用いた。2%アガロースNEEO Ultra-Qualitaet(Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)および0.5 x TBE操作緩衝液を55Vで1時間用いた。Gel Doc 2000ゲルドキュメンテーションシステムおよびソフトウエアQuality One V4.0.3(共にBIO-RAD Laboratories、Munchen、D)を用いた。実験結果を図2に示す。

8.5 H-Cys(H)-HES50/0.7およびFBA修飾DNAからのチアゾリジン形成
【0177】
反応緩衝液(下記表3参照)中のHES50/0.7-誘導体溶液(4μL、147.5 mg/mL、下記表3参照)を8.3に記載のごとく得たFBA修飾DNA(1.5μL、2 mg/mL)の水性溶液に加えた。21℃で14時間インキュベーションした後、反応混合物を8.4に記載のごとくアガロースゲル電気泳動により分析した。実験結果を図3に示す。

9. 小有機分子とのコンジュゲーション
(ここでは:抗生物質(ダウノルビシン)および細胞増殖抑制剤(タイロシン))
チアゾリジン形成により小有機分子とのコンジュゲーション
【0178】
7.4に記載のごとく得たH-Cys(H)-HES50/0.7(11.0 mg)をDMF(下記表4参照)中の小有機分子溶液(44μL(濃度[A]mg/mL、13.4等量を有する)、下記表4参照)に溶解し、次いで40μLの反応混合物をHPLCにより分析した。実験結果を図4〜9に示す。
【0179】
ダウノルビシン(Fluka、Sigma-Aldrich、Taufkirchen、D)およびタイロシン酒石酸塩(共に生化学グレード、Fluka、Sigma-Aldrich、Taufkirchen、D)を小有機分子として用いた。
【0180】
HPLC分析には、ReproSil-PUR Basic C18カラム150 x 4.6 mm i.d.(Order # R15.B9.S1546、Dr. Maisch GmbH、Ammerbuch、D)およびAEkta Basicクロマトグラフィシステム(Pump P900 Ser. # 01118816、UV検出器UV900 Ser. # 01120613、pH/伝導度検出器pH/C900 Ser.# 01120665、フラクションコレクターFrac900 Ser. # 01120011およびソフトウエアUnicorn 5.0 Ser. # 01119821(すべてAmersham Biosciences、Freiburg、D)を用いた。
【0181】
以下の方法をすべての分析に適用した:
- 緩衝液A:0.1 TFA含有水(Rotisolv LC-MS Garde、Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)
- 緩衝液B:0.1 TFA含有水15%および0.1% TFA含有アセトニトリル85%(共にRotisolv LC-MS grade、Carl Roth GmbH + Co. KG、Karlsruhe、D)の混合物。
- 勾配:2カラム容量(CV)中0%緩衝液B;15CV中直線勾配0〜50%緩衝液B、5CVにつき100%緩衝液B、5CVにつき0%緩衝液B。
- 220および290 nmでUV検出。
- 流速:2 mL/min。

10. H-Cys-ペプチドおよび天然HESからのチアゾリジン形成
【0182】
N末端に遊離システイン残基を有するペプチド(1μL、20μg、2528 g/mol、20 mg/mL(DMF中)、配列:H-Cys-Asn-Thr-Arg-Lys-Arg-Ile-Arg-Ile-Gln-Arg-Gly-Pro-Gly-Arg-Ala-Phe-Val-Thr-Ile-Gly-Lys-OH、SC623、NeoMPS S.A.、Strasbourg、F)の溶液を9μLのHES10/0.7(408 mg/mL(反応緩衝液中)(下記表5参照)、MW = 9.2kDa、DS = 0.7、Lot 437、Supramol Parenteral Colloids GmbH、Rosbach-Rodheim、D)の溶液に加え、次いでTriton-X100溶液(1μL、10%(水中))を選択した反応物(下記表6参照)に加え、混合物を[B]℃(下記表5参照)で一夜インキュベーションした。SDSゲル電気泳動による分析には、XCell Sure Lock Mini Cell(Invitrogen GmbH、Karlsruhe、D)およびConsort E143 パワーサプライ(CONSORTnv、Turnhout、B)を用いた。還元条件下、12% ビス/トリスゲルおよびMOPS操作緩衝液(共にInvitrogen GmbH、Karlsruhe、D)を使用説明書にしたがって用いた。実験結果を図10に示す。

11. 上記8〜10項の実験結果
11.1 チアゾリジン形成によるDNAに対するコンジュゲーション(上記8項)
【0183】
チアゾリジン形成によるDNAに対するコンジュゲーションを、2つの異なるアルデヒド修飾DNAを用いて達成した(上記8項参照)。必要なDNA-アルデヒドは、ホルミルインドール修飾DNA(上記8.1項参照)の場合は市販されているか、または市販の5’-アミノ-DNAおよびスクシニミジル4-ホルミルベンゾエート(上記8.3項参照)から製造した。α-SH-βアミノ基含有HES(H-Cys(H)-HES50/0.7)はTCEPによる還元によりH-Cys(StBu)-HES50/0.7から製造し、沈殿および透析により精製した(上記7.4参照)。H-Cys(StBu)-HES50/0.7をH-Cys(StBu)-HES10/0.4と同様に製造した(上記4.1参照)。両アルデヒド修飾DNAに対するコンジュゲーションの結果を図3に示す。コンジュゲーションの成功は、高分子量の新たなバンドの出現により示された。その増加したバンドの幅は該コンジュゲートのHES部分の分子量分布によった。コンジュゲーションはpH4.6(レーンA)またはpH8.0(レーンC)で達成された。オキソHES50/0.7、H-Cys(H)-HES50/0.7の出発物質ではコンジュゲーションは観察されなかった(レーンBおよびD)。
11.2 小有機分子に対するコンジュゲーション(上記9項)
【0184】
チアゾリジン形成による小有機化合物に対するコンジュゲーションは、細胞増殖抑制剤(ダウノルビシン、下記図4参照)および抗生物質(タイロシン、下記図7参照)について達成された。α-SH-βアミノ基含有HES出発物質(コンジュゲーション反応と同じ濃度)は、保持時間約10分間で広いバンドとして出現した(下記図6、9参照)。その増加したピーク幅はHESの分子量分布によった。小有機化合物(コンジュゲーション反応と同じ濃度)のHPLC分析を図5および8に示す。該HES出発物質と小有機化合物の間の保持時間での新たな広いピークの出現により示される(図4および7)。また、広いピーク形は該コンジュゲートのHES部分の分子量分布を反映した。
11.3 天然HESを用いるコンジュゲーション(上記10項)
【0185】
チアゾリジン形成による天然HESに対するコンジュゲーションは、温度範囲21℃〜50℃の溶媒としてのDMF中(図10レーンA、B、およびE)または50℃のpH4.6の水性緩衝液(図10、レーンD)中、N末端に遊離システイン残基を有するペプチドについて達成された(上記10項参照)。コンジュゲーションは、50℃で界面活性剤Triton X-100の存在下でも観察された(図10、レーンFおよびG)。コンジュゲーションの成功は高分子量の新たなバンドの出現により示された。その増加したバンド幅は、該コンジュゲートのHES部分の分子量分布によった。
【0186】
すなわち、天然HESとCys-ペプチドとのコンジュゲーションは、一般的に上記6項にも示す通り種々の異なる条件下でも可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】H-Cys(H)-HES10/0.4および酸化EPOからのチアゾリジン形成により得られる粗タンパク質-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。
【図2】H-Cys-ペプチド-NH2およびアルデヒドHESからのチアゾリジン形成の粗タンパク質-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。
【図3】下記実験の項8.4〜8.5に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびアルデヒド修飾DNAからのチアゾリジン形成により得られる粗DNA-HESコンジュゲートのアガロースゲル電気泳動による分析を示す。
【図4】実験の項9に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびダウノルビシンからのチアゾリジン形成により得られる粗ダウノルビシン-HESコンジュゲートのHPLC逆相クロマトグラフィ(290nmでUV検出)分析を示す。
【図5】ダウノルビシンのHPLC分析。
【図6】H-Cys(H)-HES50/0.7のPHLC分析。
【図7】実験の項9に記載のH-Cys(H)-HES50/0.7およびタイロシンからのチアゾリジン形成により得られる粗タイロシン-HESコンジュゲートのHPLC逆相クロマトグラフィ(220nmでUV検出)分析を示す。
【図8】タイロシンのHPLC分析。
【図9】H-Cys(H)-HES50/0.7のHPLC分析。
【図10】実験の項10に記載の粗ペプチド-HESコンジュゲートのSDSゲル電気泳動による分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートの製造方法であって、該活性物質および該ヒドロキシアルキルデンプンが、式(I):
【化1】

または式(I’):
【化2】

または式(I”):
【化3】

[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は、独立して水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基、好ましくは水素からなる群から選ばれる。]で示される構造を有する化学残基により共有結合しており、
(A) アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を含むヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体のアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を、
α-SH-βアミノ基:
【化4】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化5】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I’)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化6】

を含む活性物質またはその誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I”)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか
[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は前記と同意義である。]、または
(B) アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を含む活性物質またはその誘導体の該アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を、
α-SH-βアミノ基:
【化7】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I)で示される構造を有する化学残基により共有結合した該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化8】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I’)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを製造するか、または
α-SH-βアミノ基:
【化9】

を含むヒドロキシアルキルデンプン誘導体の該α-SH-βアミノ基と反応させて、式(I”)で示される構造を有する化学残基により共有結合している該活性物質と該ヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲート
[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は前記と同意義である。]
を製造することを含む方法。
【請求項2】
該ヒドロキシアルキルデンプンが下記構造(II):
【化10】

[式中、R’、R”およびR'''は、独立して水素、直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル基、または基:
−[(CR1R2)mO]n[CR3R4o−OH
[式中、R1、R2、R3、およびR4は、独立して水素、およびアルキル基、好ましくは水素、およびメチル基からなる群から選ばれる;
mは2〜4である(ここで、該残基R1およびR2は、m基CR1R2中で同じまたは異なっていてよい);
nは0〜20、好ましくは0〜4である;
oは0〜20、好ましくは2〜4である;
ここで、n=0の場合は、oは0ではない;
該残基R3およびR4は、o基CR3R4中で同じまたは異なっていてよい。]である。]
を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
該R’、R”およびR'''が独立して水素または2-ヒドロキシエチル基である請求項2記載の方法。
【請求項4】
該ヒドロキシアルキルデンプンがヒドロキシエチルデンプンである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
該ヒドロキシエチルデンプンが分子量1〜300kD、より好ましくは2〜200kD、より好ましくは10〜150KD、または4〜130kD、より好ましくは10〜100kDである請求項4記載の方法。
【請求項6】
該ヒドロキシエチルデンプンが0.1〜3、好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.1〜0.9、または0.4〜2、好ましくは0.4〜1.3のモル置換を有する請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
該ヒドロキシエチルデンプンが、ヒドロキシエチル基に関して2〜20の範囲のC2:C6置換の好ましい比を有する請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該活性物質が、タンパク質、ペプチド、小分子薬、活性物質、糖タンパク質、およびオリゴヌクレオチド(例えばDNA、RNA、PNA、またはその誘導体)からなる群から選ばれる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該活性物質が、α-SH-βアミノ基、好ましくはシステイン基、具体的にはN末端システインを含むタンパク質、ペプチド、およびPNAからなる群から選ばれる請求項8記載の方法。
【請求項10】
該タンパク質が、EPO、G-CSF、IFNα、IFNβ、AT III、IL-2、IL-3、ミオグロビン、SOD、BSA、rhEPO、rhG-CSF、rhIFNα、rhIFNβ、rhAT III、rhIL-2、rhIL-3、A1AT、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、tPA、およびAPCからなる群から選ばれる請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
該活性物質が、アルデヒド、ケト基、またはヘミアセタール基を含むタンパク質、糖タンパク質、またはペプチド、好ましくはグリカン側鎖中にアルデヒドを含む糖タンパク質または合成ペプチドからなる群から選ばれる請求項8記載の方法。
【請求項12】
該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体が、1〜100、好ましくは1〜15、具体的には1個のアルデヒド基、ケト基、および/またはヘミアセタール基を含むか、または
該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体が1〜100、好ましくは1〜15、具体的には1個のα-SH-βアミノ基を含む先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該活性物質が、1〜15、好ましくは1〜8、具体的には1個のアルデヒド基、ケト基、および/またはヘミアセタール基を含むか、または該活性物質が1〜15、好ましくは1〜8、具体的には1個のα-SH-βアミノ基を含む先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(A)の、該ヒドロキシアルキルデンプンのヘミアセタール基が、非酸化形の該ヒドロキシアルキルデンプンの還元末端のヘミアセタール基である先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基または該α-SH-βアミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプン誘導体が、
(a)(1)開環酸化反応により該ヒドロキシアルキルデンプン中に少なくとも1のアルデヒド基を導入するか、または
(a)(2)該ヒドロキシアルキルデンプンを少なくとも1の少なくとも二官能性化合物と反応させる(ここで、該化合物は、2個の官能基M1およびQを含み、1個の官能基M1が該ヒドロキシアルキルデンプンと反応し、1個の官能基Qが、
(i) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基、または
(ii) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基を得るための化学修飾されている官能基である)ことを含む方法により得られる請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
(a)(1)において、該ヒドロキシアルキルデンプンをペリオデートを用いる開環酸化反応に付し、少なくとも1のアルデヒド基を有するヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得る請求項15記載の方法。
【請求項17】
(a)(2)において、該官能基M1を、該ヒドロキシアルキルデンプンのOH基またはヒドロキシアルキルデンプンの酸化または非酸化還元末端と反応させる請求項15記載の方法。
【請求項18】
(a)(2)において、該官能基M1がカルボキシ基または反応性カルボキシ基であり、官能基Qがアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基である請求項15記載の方法。
【請求項19】
M1およびQを含む二官能性化合物が、ホルミル安息香酸、4-ホルミル安息香酸 ペンタフルオロフェニルエステル、4-ホルミル安息香酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、および4-(4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシ)酪酸からなる群から選ばれるか、またはα-ケトカルボン酸、ノイラミン酸、またはその誘導体、およびピリドキサルリン酸からなる群から選ばれる生体適合性化合物、である請求項18記載の方法。
【請求項20】
(a)(2)(ii)において、該少なくとも二官能性化合物がアミノ基M1およびアミノ基Qを含む請求項15記載の方法。
【請求項21】
該少なくとも二官能性化合物が炭素数1〜20の所望により置換されたジアミノアルカン、好ましくは1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサンからなる群から選ばれる化合物、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜10である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物である請求項20記載の方法。
【請求項22】
該ヒドロキシアルキルデンプンを、2個のアミノ基M1およびQを含む少なくとも二官能性化合物のアミノ基Qと反応させて生じる該ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を、アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を含むさらなる二官能性化合物と反応させてアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基を有するヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることをさらに含む請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
さらなる二官能性化合物が、ホルミル安息香酸、4-ホルミル安息香酸ペンタフルオロフェニルエステル、4-ホルミル安息香酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、4-(4-ホルミル-3,5-ジメトキシフェノキシ)酪酸、および4-ホルミル安息香酸無水物からなる群から選ばれる請求項22記載の方法。
【請求項24】
該ヒドロキシアルキルデンプンがその所望により酸化された還元末端を介して官能基M1と反応する請求項20〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
該反応に用いる該ヒドロキシアルキルデンプン分子の実質的に50%以上、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびさらにより好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、または99%を、ヒドロキシアルキルデンプン分子あたり少なくとも1の所望により酸化された還元末端を介して反応させる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a)(2)(i)において、官能基M1が、カルボキシ基、反応性カルボキシ基、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲニド、イソシアネート、イソチオシアネート、クロロギ酸エステル、およびエポキシド基からなる群から選ばれ、官能基Qがアルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基である請求項15記載の方法。
【請求項27】
官能基M1が該ヒドロキシアルキルデンプン上のOH基と反応する請求項26記載の方法。
【請求項28】
(a)(2)(i)において、官能基M1がアミノ基およびα-SH-βアミノ基からなる群から選ばれ、官能基Qがα-SH-βアミノ基である請求項15記載の方法。
【請求項29】
官能基M1が該ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端と反応する請求項28記載の方法。
【請求項30】
該反応に使用する該ヒドロキシアルキルデンプン分子の実質的に50%以上、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、およびさらにより好ましくは少なくとも95%、例えば95%、96%、97%、98%、または99%が、ヒドロキシアルキルデンプン分子あたり少なくとも1の所望により酸化された還元末端を介して反応する請求項29記載の方法。
【請求項31】
(a)(2)(i)において、α-SH-β-アミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプンが、ヒドロキシアルキルデンプンの所望により酸化された還元末端を、α-SH-β-アミノ基である官能基M1および官能基Qを含む化合物と反応させることを含む方法により得られる請求項15記載の方法。
【請求項32】
M1およびα-SH-β-アミノ基を含む化合物が1,3-ジアミノ-2-チオプロパンまたは2,3-ジアミノ-1-チオプロパンである請求項31記載の方法。
【請求項33】
(a)(2)(ii)において、少なくとも二官能性化合物が、カルボキシ基または反応性カルボキシ基であるM1、および保護α-SH-βアミノ基であるQを含む請求項15記載の方法。
【請求項34】
少なくとも二官能性化合物が、D-、L-PG1-Cys(PG2)-OHまたはそのラセミ混合物、およびその活性エステルからなる群から選ばれる請求項15記載の方法(ここで、PG1は、好ましくはtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)または9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選ばれるアミノ基のあらゆる適切な保護基であってよく、PG2は、好ましくはトリチル(Trt)、p-メトキシトリチル(Mmt) S-tert-ブチルチオ(S-t-Bu)、およびアセトアミドメチル(Acm)からなる群から選ばれるチオール基のあらゆる適切な保護基であってよい。)。
【請求項35】
(a)(2)(ii)において、該α-SH-β-アミノ基を含む該ヒドロキシアルキルデンプンが、所望によりヒドロキシアルキルデンプンの還元末端を酸化し、酸化または非酸化還元末端を、M1に加えてさらに官能基Qを含む化合物の官能基M1と反応させて第1ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得、次いで第1ヒドロキシアルキルデンプン誘導体の官能基Qを、Vに加えて所望により保護されたα-SH-β-アミノ基を含む化合物の官能基Vと反応させて所望により保護されたα-SH-β-アミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体を得ることを含む方法により得られる請求項15記載の方法。
【請求項36】
M1およびQを含む該化合物が、ジアミノ化合物またはカルボジイミダゾールまたはN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートである請求項35記載の方法。
【請求項37】
該少なくとも二官能性化合物が、所望により置換された炭素数1〜20のジアミノアルカン、好ましくは1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、および1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、および1,20-ジアミノエイコサンからなる群から選ばれる化合物、または式:
N−[(CR1’R2’O]「CR3’R4’−NH2
[式中、R1’、R2’、R3’、およびR4’は、独立して水素およびアルキル基、好ましくは水素およびメチル基からなる群から選ばれる;
pは、2〜4である(ここで、該残基R1’およびR2’はp基CR1’R2’において同じかまたは異なっていてよい。);
qは0〜20、好ましくは0〜10である;
rは0〜20、好ましくは2〜4である(ここで、q = 0の場合は、rは0ではなく、該残基R3’およびR4’はr基CR3’R4’において同じかまたは異なっていてよい)]
を有する化合物である請求項36記載の方法。
【請求項38】
Vおよび所望により保護されたα-SH-β-アミノ基を含む化合物が、システインまたはその誘導体(ここで、Vは、カルボキシ基または反応性カルボキシ基、好ましくは反応性エステルまたはカルボン酸無水物である)であるか、またはVを含む該化合物が1,3-ジアミノ-2-チオプロパンまたは2,3-ジアミノ-1-チオプロパンである請求項35〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
該活性物質、好ましくは該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または該α-SH-β-アミノ基を含む所望により修飾されたタンパク質、ペプチド、合成ペプチド、またはオリゴヌクレオチドが、
(b)(1)該活性物質にその製造中にまたは化学修飾により少なくとも1のアルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または少なくとも1のα-SH-β-アミノ基を導入するか、または
(b)(2)該活性物質を少なくとも二官能性化合物と反応させる(ここで、該化合物は、2個の官能基M2およびQを含み、1個の官能基M2は該活性物質と反応し、1個の官能基Qは、
(i) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基であるか、または
(ii) アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-βアミノ基を得るための化学修飾されている官能基である)、
ことを含む方法により得られる前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
(b)(1)において、該活性物質が、有機合成により製造された、好ましくは合成樹脂を用いて製造された、アルデヒド官能化、ケト官能化、ヘミアセタール官能化、またはα-SH-β-アミノ官能化タンパク質またはペプチドをもたらすタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、アルデヒド官能化、ケト官能化、ヘミアセタール官能化、またはα-SH-β-アミノ官能化タンパク質またはペプチドをもたらす発現ベクターを用いて製造されたタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、タンパク質またはペプチドの骨格が、アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、またはα-SH-β-アミノ基で置換されているタンパク質またはペプチドであるか、または
(b)(1)において、該活性物質が、該アルデヒド基、ケト基、ヘミアセタール基、または該α-SH-β-アミノ基がタンパク質またはペプチドの骨格と直接結合するか、該骨格の側鎖の部分であるタンパク質またはペプチドである請求項39記載の方法。
【請求項41】
(b)(1)において、該活性物質がタンパク質またはペプチドであり、該アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基が該ポリペプチドの炭化水素部分に含まれる請求項39記載の方法。
【請求項42】
該炭化水素部分が、ヒドロキシアルデヒド、ヒドロキシケトン、およびその化学修飾物からなる群から選ばれる請求項41記載の方法。
【請求項43】
該炭化水素部分が、天然の炭化水素部分の誘導体であり、所望により化学的または酵素的に酸化されたグルコース、ガラクトース、マンノース、およびシアル酸からなる群から選ばれ、好ましくは炭化水素側鎖の酸化ガラクトースまたは酸化シアル酸残基、より好ましくは炭化水素側鎖の末端ガラクトース、またはシアル酸残基である(ここで、末端炭化水素部分の酸化は好ましくは酵素的または化学的に行われ、化学的酸化は、好ましくはペリオデートを用いて行われる)請求項41記載の方法。
【請求項44】
該炭化水素部分が天然の炭化水素部分の誘導体であり、化学的または酵素的に酸化された末端ガラクトースである(ここで、該末端ガラクトース残基は所望により末端アシル酸の開裂後に得られる)請求項41記載の方法。
【請求項45】
(b)(2)(i)において、該α-SH-β-アミノ基が該活性物質、好ましくはタンパク質またはペプチドのシステイン残基中に含まれ、該システイン残基が好ましくは該活性物質のN末端システイン残基である請求項39記載の方法。
【請求項46】
該活性物質が、ジスルフィド架橋の部分でないN末端システイン残基を有する修飾タンパク質またはペプチドである先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
N末端システイン残基を有する修飾タンパク質またはペプチドが、(1)システイン残基をN末端アミノ酸に付加し、(2)該N末端アミノ酸をシステインで置換するか、または(3)末端システインが得られるまでN末端アミノ酸を欠失させることにより得られる天然タンパク質またはペプチドの突然変異体である請求項46記載の方法。
【請求項48】
反応(A)または(B)が、温度0〜40℃、好ましくは0〜25℃、具体的には20〜25℃で溶媒存在下、pH3.5〜10、好ましくは4〜8、具体的には4.8〜8.0で、好ましくは0.1〜24h、具体的には約21hの反応時間で行われる先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
溶媒が、水、水性緩衝剤、DMF、DMSO、DMA、およびその混合物からなる群から選ばれる請求項48記載の方法。
【請求項50】
ヒドロキシアルキルデンプンの活性物質との分子比が約1:1〜200:1、好ましくは10:1〜100:1、具体的には40:1〜70:1である請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
請求項1〜50のいずれかに記載の方法により得られる活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲート。
【請求項52】
活性物質およびヒドロキシアルキルデンプンが、式(I):
【化11】

または式(I’):
【化12】

または式(I”):
【化13】

[式中、R1、R2、R2’、R3、R3’およびR4は、独立して水素、所望により適切に置換された、直鎖、環状、および/または分岐鎖アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、およびヘテロアラルキル基、好ましくは水素でからなる群から選ばれる。]
で示される構造、
式(IV)、(IV’)、または(IV”):
【化14】

【化15】

[式中、HAS’は、アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基と結合した該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’はα-SH-β-アミノ基と結合した該活性物質またはその誘導体の残基である。]
で示される構造、または
式(V)、(V’)、または(V”):
【化16】

または
【化17】

[式中、HAS’は、α-SH-β-アミノ基と結合した該ヒドロキシアルキルデンプンまたはその誘導体の残基であり、AS’は、アルデヒド基、ケト基、またはヘミアセタール基と結合した該活性物質またはその誘導体の残基である。]
で示される構造を有する化学残基により共有結合している活性物質とヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲート。
【請求項53】
【化18】

[式中、R5は、前記R1〜R4に関するものと同意義である。]、
【化19】

[式中、R5は、前記R1〜R4に関するものと同意義である。]、
【化20】

【化21】

[式中、式IV’a、IV’b、V’b、またはV’cにおいて、nは整数、好ましくはnは0〜20であり、式Va、Vb、V’d、またはV’eにおいて、nは整数、好ましくはnは1〜20である。]
からなる群から選ばれる請求項52記載のコンジュゲート。
【請求項54】
【化22】

である請求項52記載のコンジュゲート
[式中、R’、R”および/またはR'''は、式IIに関する定義と同意義である。HESの少なくとも1のグルコース単位において、R’、R’’および/またはR'''の少なくとも1つは、独立して
【化23】

【化24】

からなる群から選ばれ(ここで、nは整数、好ましくは1〜20である)、および/または
R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、-(CH2CH2O)m-Rであり(ここで、mは整数、好ましくは1〜3である)、Rは、式(VIa)、(VIb)、(VIc)、および(VId)からなる群から選ばれる。]。
【請求項55】
【化25】

[式中、R5は上記R1〜R4に関する定義と同意義である。]および
【化26】

[式中、nは整数、好ましくは0〜20である。]
からなる群、または
【化27】

[式中、R’、R”および/またはR'''は、式IIに関する定義と同意義である。HESの少なくとも1のグルコース単位において、R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、独立して
【化28】

からなる群から選ばれ(ここで、nは整数、好ましくは1〜20である)、および/または
R’、R”および/またはR'''の少なくとも1つは、-(CH2CH2O)m-R##であり(ここで、mは整数、好ましくは1〜3である)、R##は、式(VI’a)、(VI’b)、および(VI’c)からなる群から選ばれる。]
からなる群から選ばれるα-SH-βアミノ官能化ヒドロキシアルキルデンプン誘導体。
【請求項56】
ヒトまたは動物体の治療方法に用いる請求項51〜54のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項57】
治療薬としての請求項51〜54のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項58】
請求項51〜54のいずれかに記載のコンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項59】
さらに少なくとも1の医薬的に許容される希釈剤、アジュバント、または担体を含む請求項58記載の医薬組成物。
【請求項60】
活性物質と請求項51〜54のいずれかに記載のヒドロキシアルキルデンプンのコンジュゲートを含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−507973(P2009−507973A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530402(P2008−530402)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008858
【国際公開番号】WO2007/031266
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(505344029)フレゼニウス・カビ・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】FRESENIUS KABI DEUTSCHLAND GmbH
【Fターム(参考)】