説明

チェーン式無段変速装置及びその組立方法

【課題】予めチェーンにチェーンガイドを取り付けてから、二組の円錐型ディスク及びチェーンガイドをトランスミッションケースに組み付ける際に、容易に組み付けできるチェーン式無段変速装置を提供すること。
【解決手段】プライマリプーリ11,セカンダリプーリ12に巻き付けるチェーン13は、チェーン断面を全周囲む環状ガイド部21を有すると共に、チェーンガイド支持部30に支持されるチェーンガイド20Aを有し、チェーンガイド支持部30は、トランスミッションケース2に固定した潤滑油チューブ31と、潤滑油チューブ31に連結する潤滑側キャップガイド32と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二組の円錐型ディスクに巻き付けられたチェーンの巻き付き半径を変えることで無段変速するチェーン式無段変速装置及びその組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無端チェーンを断面V字状の溝を有する二組の円錐型ディスクの間に巻き掛け、両ディスクの溝幅を調整することでチェーンの巻き付き半径を変化させて、変速比を無段階に変更するチェーン式無段変速装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-191379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チェーン式無段変速装置にあっては、チェーンの蛇行や波うちによる騒音発生を防止するために、チェーンを案内するチェーンガイドをトランスミッションケース内に設置している。
しかしながら、従来のチェーン式無段変速装置にあっては、チェーンガイドがチェーン断面を全周囲む環状ガイド部を有しているため、二組の円錐型ディスクに巻き付けたチェーンにチェーンガイドを取り付けてから、二組の円錐型ディスク及びチェーンガイドをトランスミッションケースに組み付けていた。このため、チェーンガイドの軸合わせと二組の円錐型ディスクの軸合せを同時に行う必要があった。
すなわち、無端であるチェーンに環状ガイド部を有するチェーンガイドを取り付けるには、チェーンガイドを二分割しておき、この二分割したチェーンガイドでチェーンを挟み込んでから互いに固定する。このため、二組の円錐型ディスクをトランスミッションケースに組み付けてしまった後では、二分割したチェーンガイドでチェーンを挟み込むことができない。
一方、チェーンガイドを支持するチェーンガイド支持部は、トランスミッションケースとサイドカバーの間に挟持されるものであり、チェーンガイドの取付前にトランスミッションケースに固定されていた。
このため、チェーンガイドの軸合わせと二組の円錐型ディスクの軸合せを同時に行う必要があり、作業難易度が高く作業遅延に繋がっていた。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、予めチェーンにチェーンガイドを取り付けてから、二組の円錐型ディスク及びチェーンガイドをトランスミッションケースに組み付ける際に、容易に組み付けることができて、組付け作業性の向上を図ることができるチェーン式無段変速装置及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、二組の円錐型ディスクに巻き付けたチェーンの巻き付き半径を変えることで無段変速するチェーン式無段変速装置において、
前記円錐型ディスクの回転軸を回転可能に支持するディスク支持部は、トランスミッションケースとサイドカバーに設け、
前記チェーンは、該チェーンの動きを規制すると共にチェーン断面を全周囲む環状ガイド部を有するチェーンガイドを有し、
前記チェーンガイドは、前記トランスミッションケースと前記サイドカバーの間に支持されるチェーンガイド支持部により支持され、
前記チェーンガイド支持部は、前記トランスミッションケースに固定した固定側チェーンガイド支持部と、前記固定側チェーンガイド支持部に連結する連結側チェーンガイド支持部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明のチェーン式無段変速装置にあっては、チェーンガイド支持部が、トランスミッションケースに固定した固定側チェーンガイド支持部と、固定側チェーンガイド支持部に連結する連結側チェーンガイド支持部と、を有する。
これにより、チェーンガイド支持部が分割構造になり、サブアッシーした二組の円錐型ディスクと、チェーンと、チェーンガイドをトランスミッションケースに組み付け、その後、固定側チェーンガイド支持部に連結側チェーンガイド支持部を連結することで、トランスミッションケースに対してチェーンガイドを組み付けることができる。
この結果、チェーンガイドの軸合わせと二組の円錐型ディスクの軸合せを同時に行う必要がなくなる。そして、予めチェーンにチェーンガイドを取り付けてから、二組の円錐型ディスク及びチェーンガイドをトランスミッションケースに組み付ける際に、容易に組み付けることができて、組付け作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のチェーン式無段変速装置を示す要部概略図である。
【図2】実施例1のチェーン式無段変速装置においてサイドカバーを外した状態を概略的に示す側面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】チェーンの一部を拡大した斜視図である。
【図5】チェーンガイドの支持構造を示す斜視図である。
【図6】チェーンガイドを示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は図6(b)におけるB−B断面図である。
【図7】潤滑側チェーンガイド支持部を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は図7(a)におけるC−C断面図であり、(c)は分解斜視図である。
【図8】非潤滑側チェーンガイド支持部を示す図であり、(a)は断面図であり、(b)は分解斜視図である。
【図9A】実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(a)はチェーンガイド組付手順を示し、(b)はチェーン巻き付け手順を示す。
【図9B】実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(c)はケース組立工程を示し、(d)は変速機構組付工程を示す。
【図9C】実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(e)はガイド支持部組立工程を示し、(f)はカバー取付工程を示す。
【図10】実施例1のチェーン式無段変速装置における潤滑油噴射方向を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のチェーン式無段変速装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のチェーン式無段変速装置を示す要部概略図である。図2は、実施例1のチェーン式無段変速装置においてサイドカバーを外した状態を概略的に示す側面図である。図3は、図2におけるA−A断面図である。図4は、チェーンの一部を拡大した斜視図である。図5は、チェーンガイドの支持構造を示す斜視図である。
【0011】
実施例1のチェーン式無段変速装置1は、チェーン巻き付き半径の変化によりプライマリプーリ11への入力回転数とセカンダリプーリ12からの出力回転数との比である変速比を無段階に変化させる無段変速機能を有する。前記チェーン式無段変速装置1は、二組の円錐型ディスクであるプライマリプーリ11及びセカンダリプーリ12と、プライマリプーリ11とセカンダリプーリ12の間に巻き付けた無端状のチェーン13と、トランスミッションケース2とサイドカバー3からなる変速機ケース4と、を備えている。
【0012】
前記プライマリプーリ11は、断面V字形状をなすプライマリシーブ面11aと、トランスミッションケース2とサイドカバー3との間に立設した回転軸11bと、を有している。前記プライマリシーブ面11aは、前記チェーン13を挟み込むと共に、その間隔を油圧により調整可能となっている。前記回転軸11bは、トランスミッションケース2に設けたケース側プライマリ軸支持部(ディスク支持部)2aと、サイドカバー3に設けたカバー側プライマリ支持部(ディスク支持部)3aによって回転可能に支持されている。
【0013】
前記セカンダリプーリ12は、断面V字形状をなすセカンダリシーブ面12aと、トランスミッションケース2とサイドカバー3との間に立設した回転軸12bと、を有している。前記セカンダリシーブ面12aは、前記チェーン13を挟み込むと共に、その間隔を油圧により調整可能となっている。前記回転軸12bは、トランスミッションケース2に設けたケース側セカンダリ軸支持部(ディスク支持部)2bと、サイドカバー3に設けたカバー側セカンダリ支持部(ディスク支持部)3bによって回転可能に支持されている。
【0014】
前記チェーン13は、長さ方向両端部に貫通孔131,132を有する複数のリンク13aを、チェーン13の長さ方向(回送方向)Lにも幅方向Wにも配列し、第1ピン13bと第2ピン13cとにより、屈曲自在に連結したものである。このチェーン13には、一対のチェーンガイド20A,20Bを取り付け、両プーリ11,12間における撓みや振動等の動きを規制している。
【0015】
前記一対のチェーンガイド20A,20Bは、それぞれ両プーリ11,12のシーブ面11a,12aに干渉せず、両プーリ11,12の回転軸11b,12bを結んだ直線を挟んで対向する位置に設けられている(図2参照)。一方のチェーンガイド20Aは、トランスミッションケース2とサイドカバー3の間に立設する潤滑側チェーンガイド支持部(第1チェーンガイド支持部)30により回転可能に支持される。他方のチェーンガイド20Bは、トランスミッションケース2とサイドカバー3の間に立設する非潤滑側チェーンガイド支持部(第2チェーンガイド支持部)40により回転可能に支持される。
【0016】
図6は、チェーンガイドを示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は側面図を示し、(c)は図6(b)におけるB−B断面図である。
【0017】
前記チェーンガイド20Aは、両端が開放した筒状の環状ガイド部21と、この環状ガイド部21の開放した両端から突出してチェーン13の長さ方向に延在した一対の第1,第2ガイド部22a,22bと、潤滑側チェーンガイド支持部30を保持する軸保持部23と、を有している。
そして、このチェーンガイド20Aは、チェーン13の幅方向Wの中央から2分割可能となっており、複数のネジN,…により互いに固定することで一体化される。なお、チェーンガイド20Aとチェーンガイド20Bは同形であるので、ここではチェーンガイド20Bの説明を省略する。
【0018】
前記環状ガイド部21は、チェーン13のチェーン断面を全周囲む枠形状を呈している。
【0019】
前記一対の第1,第2ガイド部22a,22bは、チェーン13を挟み込むように互いに対向している。ここで、第1ガイド部22aはチェーン13の回転内側面13dに対向し、第2ガイド部22bはチェーン13の回転外側面13eにそれぞれ対向する。
【0020】
前記軸保持部23は、環状ガイド部21の周面から突出すると共に、開放端を有する断面U字状の保持爪23aと、この保持爪23aの開放端から内側に僅かに突出する一対の突起部23b,23bと、を有している。保持爪23aは、潤滑側チェーンガイド支持部30を回転可能に嵌合する内径を有している。一対の突起部23b,23bの間隔は、潤滑側チェーンガイド支持部30が保持爪23aから脱落不可能とする幅となっている。なお、ここでは軸保持部23が一対設けられている。
【0021】
図7は、潤滑側チェーンガイド支持部を示す図であり(a)は断面図であり、(b)は図7(a)におけるC−C断面図であり、(c)は分解斜視図である。
【0022】
前記潤滑側チェーンガイド支持部(第1チェーンガイド支持部)30は、プライマリプーリ11を支持する回転軸11bとセカンダリプーリ12を支持する回転軸12の間に位置し、トランスミッションケース2に固定された潤滑油チューブ(固定側チェーンガイド支持部)31と、この潤滑油チューブ31に、組立時に連結する円筒状の潤滑側キャップガイド(連結側チェーンガイド支持部)32と、を有している。
【0023】
前記潤滑油チューブ31は、両端が開放したパイプ部材により形成され、一端31aがトランスミッションケース2のオイル孔2cに挿入嵌合し、トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dに結合する。また、この潤滑油チューブ31の先端31b´にはフランジ31bが設けられ、中間部にはトランスミッションケース2に固定するための固定用板材31cが固定されている。さらに、フランジ31bには、直線状の内側面を有する凹部31dが形成されている。また、固定用板材31cには、固定ネジN1が貫通する貫通孔31eが形成されている。
そして、この潤滑油チューブ31は、固定用板材31cの上部位置でクランク状に屈曲し、一端31aに対し他端31b´の軸位置はチェーン13の回転内側にオフセットしている(図3参照)。
【0024】
前記潤滑側キャップガイド32は、一端32a´に潤滑油チューブ31が挿入する開口部32aが形成され、他端にサイドカバー3に形成した第1当接突起3cに当接する平板状の当接部32bが形成されている。一端32a´の外側面には、潤滑油チューブ31のフランジ31bに形成された凹部31dの内側面に当接する切欠面32cが設けられている。また、中間部には中間フランジ32dが設けられている。ここで、一端32a´から中間フランジ32dまでの間が、チェーンガイド20Aの保持爪23a内に入り込んでチェーンガイド20Aを支持するガイド支持部に相当し、中間フランジ32dから当接部32bまでの間が、ガイド支持部とサイドカバー3の間に位置するスペーサ部に相当する。
さらに、潤滑側キャップガイド32の内部には、開口部32aから延びると共に潤滑油チューブ31に連通する潤滑油路32eと、潤滑油路32eから延びて潤滑側キャップガイド32を貫通する一対の潤滑油噴出口32f,32fが形成されている。ここで、潤滑油路32eは潤滑側キャップガイド32の軸方向に延び、一対の潤滑油噴出口32f,32fは潤滑側キャップガイド32の径方向に延びている。この一対の潤滑油噴出口32f,32fは、潤滑側キャップガイド32を変速機ケース4に固定した際に、それぞれ回転軸11bと回転軸12bに対向する方向に開放している。
そして、潤滑油チューブ31及びこの潤滑油路32eが、トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dに結合すると共に、チェーン13又は両プーリ11,12に潤滑油を噴射する支持部側潤滑回路に相当する。
【0025】
図8は、非潤滑側チェーンガイド支持部を示す図であり(a)は断面図であり、(b)は分解斜視図である。
【0026】
前記非潤滑側チェーンガイド支持部(第2チェーンガイド支持部)40は、プライマリプーリ11を支持する回転軸11bとセカンダリプーリ12を支持する回転軸12の間であって、潤滑側チェーンガイド支持部30に対向する位置に設けられている。この非潤滑側チェーンガイド支持部40は、トランスミッションケース2に固定された仮決め用パイプ(固定側チェーンガイド支持部)41と、この仮決め用パイプ41に、組立時に連結する円筒状の非潤滑側キャップガイド(連結側チェーンガイド支持部)42と、を有している。
【0027】
前記仮決め用パイプ41は、パイプ部材により形成され、一端41aがトランスミッションケース2の固定用孔2eに挿入嵌合し、トランスミッションケース2から立設する。また、この仮決め用パイプ41の中間部にはフランジ41bが形成されると共に、トランスミッションケース2に固定するための固定用板材41cが固定されている。そして、フランジ41bには、直線状の内側面を有する凹部41dが形成されている。また、固定用板材41cには、固定ネジN2が貫通する貫通孔41eが形成されている。さらに、フランジ41bから軸方向に突出した先端部41fは、チェーンガイド20Bの保持爪23a内に入り込み、このチェーンガイド20Bの位置を仮決めする突起部に相当する。なお、先端部41fの外径は、保持爪23aの内径よりも十分に細くなっている。
そして、ここでは、仮決め用パイプ41は、固定用板材41cの上部位置でクランク状に屈曲し、一端41aに対し先端部41fの軸位置はチェーン13の回転内側にオフセットしている(図3参照)。
【0028】
前記非潤滑側キャップガイド42は、一端42a´に仮決め用パイプ41の先端部41fが挿入嵌合する嵌合部42aが形成され、他端にサイドカバー3に形成した第2当接突起3dに当接する平板状の当接部42bが形成されている。一端42a´の外側面には、仮決め用パイプ41のフランジ41bに形成された凹部41dの内側面に当接する切欠面42cが設けられている。また、中間部には中間フランジ42dが設けられている。ここで、一端42a´から中間フランジ42dまでの間が、チェーンガイド20Bの保持爪23a内に入り込んでチェーンガイド20Bを支持するガイド支持部に相当し、中間フランジ42dから当接部42bまでの間が、ガイド支持部とサイドカバー3の間に位置するスペーサ部に相当する。
【0029】
次に、実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法について説明する。
図9Aは、実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(a)はチェーンガイド組付手順を示し、(b)はチェーン巻き付け手順を示す。図9Bは、実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(c)はケース組立工程を示し、(d)は変速機構組付工程を示す。図9Cは、実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法を示す説明図であり、(e)はガイド支持部組立工程を示し、(f)はカバー取付工程を示す。
【0030】
実施例1のチェーン式無段変速装置の組立方法では、チェーンガイド組付手順とチェーン巻き付け手順を有するサブライン工程が、組立方法におけるサブライン作業となり、ケース組立工程と変速機構組付工程とガイド支持部組立工程とカバー取付工程が、組立方法におけるメインライン作業となる。
【0031】
チェーンガイド組付手順では、図9A(a)に示すように、まず、チェーンガイド20Aを2分割する。次に、チェーンガイド20Aの環状ガイド部21でチェーン13を挟み込む。そして、複数のネジN,…で2分割したチェーンガイド20Aを互いに固定する。これにより、チェーン13に、環状ガイド部21でチェーン断面を全周囲った状態にチェーンガイド20Aが組付けられる。なお、チェーンガイド20Bにおいても同様である。またこのとき、チェーンガイド20A,20Bの各軸保持部23はチェーン13の回転内側に位置する。
【0032】
チェーン巻き付け手順では、図9A(b)に示すように、まず、プライマリプーリ11とセカンダリプーリ12をそれぞれ組み立てる。次に、両プーリ11,12のそれぞれの回転軸11b,12bを図示しない治具によって立設状態に保持する。そして、両プーリ11,12のシーブ面11a,12aにチェーン13をそれぞれ挟み込み、両プーリ11,12の間にチェーン13を巻き付ける。このとき、回転軸11b,12bを近接させてチェーン13を掛け渡し、その後回転軸11b,12bを離間させてチェーン13の撓みを調整と共に、両プーリ11,12とチェーンガイド20A,20Bが干渉しないように調整する。
【0033】
そして、このチェーンガイド組付手順と、チェーン巻き付け手順がサブライン工程に相当する。
【0034】
一方、ケース組立工程は、図9B(c)に示すように、まず、トランスミッションケース2のオイル孔2cに潤滑油チューブ31の一端31aを挿入し、固定用板材31cの貫通孔31eに固定ネジN1を挿入してトランスミッションケース2に螺合する。これにより、トランスミッションケース2に、潤滑油チューブ31が固定されると同時に、ケース側潤滑回路2dと潤滑油チューブ31が連通する。
次に、トランスミッションケース2の固定用孔2eに仮決め用パイプ41の一端41aを挿入し、固定用板材41cの貫通孔41eに固定ネジN2を挿入してトランスミッションケース2に螺合する。これにより、トランスミッションケース2に、仮決め用パイプ41が固定される。
【0035】
変速機構組立工程では、図9B(d)に示すように、ケース組立工程に続き、まず、トランスミッションケース2に回転軸11b,12bをそれぞれ回転可能に支持するケース側プライマリ軸支持部2a及びケース側セカンダリ軸支持部2bを設ける。
次に、サブライン工程でチェーン13を巻き付けたプライマリプーリ11とセカンダリプーリ12の各回転軸11b,12bを、上記軸支持部2a,2bに対してそれぞれ位置決めしてから固定する。
このとき、チェーンガイド20Bの軸保持部23の保持爪23a内に、仮決め用パイプ41の先端部41fが入り込むように調整する。ここで、先端部41fの外径が保持爪23aの内径よりも十分に細くなっているため、厳密な位置決めは不要である。
【0036】
ガイド支持部組立工程では、図9C(e)に示すように、変速機構組立工程に続き、まず、サブライン工程でチェーン13に組み付けたチェーンガイド20Aの軸保持部23を、潤滑油チューブ31に対して位置決めする。なお、チェーンガイド20Bは、すでに仮決め用パイプ41に対して位置決めされた状態であるため、ここで位置決めする必要はない。
次に、潤滑側キャップガイド32をチェーンガイド20Aの保持爪23a内に挿入し、潤滑油チューブ31と潤滑側キャップガイド32を連結する。これにより、潤滑側キャップガイド32の一端32a´から中間フランジ部32dまでの間が、保持爪23aに入り込んでチェーンガイド20Aを保持する。なお、突起部23b,23bが潤滑側キャップガイド32に干渉するため、潤滑側キャップガイド32からチェーンガイド20Aが外れることはない。
また、このとき、開口部32aに潤滑油チューブ31が挿入され、ケース側潤滑回路2dと、潤滑油チューブ31、潤滑油路32e、潤滑油噴出口32f,32fが連通する。
さらに、このとき、潤滑油チューブ31の先端のフランジ31bに形成された凹部31dの内側面に、潤滑側キャップガイド32の切欠面32cが当接する。これにより、凹部31dと切欠面32cが干渉し、潤滑油チューブ31と潤滑側キャップガイド32は回転不動となる。
続いて、非潤滑側キャップガイド42をチェーンガイド20Bの保持爪23a内に挿入し、仮決め用パイプ41と非潤滑側キャプガイド42を連結する。これにより、非潤滑側キャップガイド42の一端42a´から中間フランジ部42dまでの間が、保持爪23aに入り込んでチェーンガイド20Bを保持する。なお、突起部23b,23bが非潤滑側キャップガイド42に干渉するため、非潤滑側キャップガイド32からチェーンガイド20Bが外れることはない。
また、このとき、仮決め用パイプ41のフランジ41bに形成された凹部41dの内側面に、非潤滑側キャップガイド42の切欠面42cが当接する。これにより、凹部41dに切欠面42cが干渉し、仮決め用パイプ41と非潤滑側キャップガイド42は回転不動となる。
【0037】
カバー取付工程では、図9C(f)に示すように、ガイド支持部組立工程に続き、まずサイドカバー3に回転軸11b,12bをそれぞれ回転可能に支持するカバー側プライマリ軸支持部3a及びカバー側セカンダリ軸支持部3bを設ける。
次に、サイドカバー3をトランスミッションケース2に固定して、チェーン式無段変速装置1の組み立てを終了する。このとき、サイドカバー3に形成された第1当接突起3cが潤滑側キャップガイド31の当接部31bに当接し、第2当接突起3dが非潤滑側キャップガイド41の当接部41bに当接する。これにより、潤滑側キャップガイド31は、潤滑油チューブ31とサイドカバー3により挟持される。また、非潤滑キャップガイド41は、仮決め用パイプ41とサイドカバー3により挟持される。
【0038】
次に、作用を説明する。
実施例1のチェーン式無段変速装置における作用を、「組み立て容易化作用」と、「潤滑油供給作用」とに分けて説明する。
【0039】
[組み立て容易化作用]
実施例1のチェーン式無段変速装置1では、チェーン13が、このチェーン13の動きを規制すると共に環状ガイド部21を有するチェーンガイド20A,20Bを有している。そして、一方のチェーンガイド20Aを支持する潤滑側チェーンガイド支持部30は、トランスミッションケース2に固定した潤滑油チューブ31と、この潤滑油チューブ31に連結する潤滑側キャップガイド32と、を有している。また、他方のチェーンガイド20Bを支持する非潤滑側チェーンガイド支持部30は、トランスミッションケース2に固定した仮決め用パイプ41と、組立時にこの仮決め用パイプ41に連結する非潤滑側キャップガイド42と、を有している。
【0040】
すなわち、チェーンガイド20A,20Bを支持する潤滑側チェーンガイド支持部30及び非潤滑側チェーンガイド支持部40は、それぞれトランスミッションケース2とサイドカバー3との間で分割可能な構造になっている。
【0041】
このため、環状ガイド部21を有するチェーンガイド20A,20Bを、チェーン13に予め取り付けてから、両プーリ11,12及びチェーンガイド20A,20Bをトランスミッションケース2に組み付ける際、両プーリ11,12の組み付けの前後に、分割した潤滑側チェーンガイド支持部30及び非潤滑側チェーンガイド支持部40をそれぞれ組み付けることができる。この結果、両プーリ11,12の軸合せとチェーンガイド20A,20Bの軸合せを同時に行う必要がなくなり、容易に組み付けることができて、組立作業性の向上を図ることができる。
【0042】
特に、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、潤滑油チューブ31のトランスミッション固定位置であるオイル孔2cが、チェーンガイド20Aの環状ガイド部21の下方に位置している(図3参照)。このため、オイル孔2cと環状ガイド部21が軸方向に干渉することになり、潤滑油チューブ31は、両プーリ11,12をトランスミッションケース2に固定する前に、トランスミッションケース2に固定する必要がある。
これに対し、潤滑油チューブ31は中間部が屈曲して一端31aと先端31b´の軸位置がオフセットしている。これにより、潤滑側キャップガイド32の組み付け位置は、環状ガイド部21と干渉することはない。そのため、両プーリ11,12をトランスミッションケース2に固定する前に、潤滑油チューブ31をトランスミッションケース2に固定した後に、潤滑側キャップガイド32の組み付けを行うことができる。
すなわち、潤滑油チューブ31の中間部を屈曲して、一端31aと先端31b´の軸位置をオフセットすることで、潤滑側チェーンガイド支持部30のトランスミッション固定位置がチェーンガイド20Aと干渉する位置関係であり、潤滑油チューブ31を両プーリ11,12の組み付け前に固定しなければならない場合であっても、両プーリ11,12の軸合せとチェーンガイド20Aの軸合せを同時に行なわずに組み立てることができる。
さらに、オイル孔2cが環状ガイド部21と軸方向に干渉する位置に形成されたVベルト式無段変速機用のトランスミッションケースとの共用も可能となる。
なお、他方のチェーンガイド20B及び非潤滑側チェーンガイド支持部40についても、同様の作用を奏することができる。
【0043】
さらに、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、他方のチェーンガイド20Bを支持する非潤滑側チェーンガイド支持部40において、仮決め用パイプ41の先端部41fが延在されている。このため、両プーリ11,12の組付時に、この先端部41fとチェーンガイド20Bの軸保持部23の位置を合わせておくことで、チェーンガイド20Bの位置を仮決めすることができる。
ここで、仮決め用パイプ41の先端部41fの外径が軸保持部23の保持爪23aの内径よりも十分に細いため、厳密な位置決めは不要であり、簡単に仮決めすることができる。
そして、これにより、非潤滑側キャップガイド42をチェーンガイド20Bの軸保持部23に簡単に差し込むことができ、組立作業性の更なる向上を図ることができる。
【0044】
そして、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、潤滑油チューブ31と仮決め用パイプ41を、それぞれパイプ部材により形成している。そのため、廉価な部品により形成することができて、コスト削減を図ることができる。
【0045】
さらに、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、潤滑側キャップガイド31及び非潤滑側キャップガイド41は、それぞれチェーンガイド20A,20Bを支持するガイド支持部に相当する部分(一端32a´から中間フランジ32dまでの間の部分, 一端42a´から中間フランジ42dまでの間の部分)と、このガイド支持部とサイドカバー3の間に位置するスペーサ部に相当する部分(中間フランジ32dから当接部32bまでの間の部分,中間フランジ42dから当接部42bまでの間の部分)を有している。
すなわち、潤滑側キャップガイド31及び非潤滑側キャップガイド41は、ガイド支持部とスペーサ部との間を区画する中間フランジ32d,42dをそれぞれ有している。
これにより、チェーンガイド20A,20Bは、各チェーンガイド支持部30,40の軸方向に移動しても、中間フランジ32d,42dに干渉して動きが規制される。この結果、チェーン13の動きを適切に規制することができる。
【0046】
[潤滑油供給作用]
実施例1のチェーン式無段変速装置1では、潤滑側チェーンガイド支持部30の潤滑油チューブ31及び潤滑側キャップガイド32に形成された潤滑油路32eが、トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dに結合すると共に、チェーン13又は両プーリ11,12に潤滑油を噴射する支持部側潤滑回路に相当する。
【0047】
そのため、ケース側潤滑回路2dを流れる潤滑油は、潤滑油チューブ31から潤滑油路32eを通って流れ、潤滑油噴出口32f,32fから噴出される。これにより、潤滑油供給用の構成を設けることなく両プーリ11,12やチェーン13に潤滑油の供給を行うことができる。つまり、潤滑側チェーンガイド支持部30と潤滑油供給用の構成を兼用することができる。
【0048】
特に、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、図10に示すように、潤滑油噴出口32f,32fが両プーリ11,12の回転軸11b,12bに対向する方向に開放している。このため、各シーブ面11a,12aとチェーン13との接触部分に積極的に潤滑油を噴射することができる。
【0049】
そして、実施例1のチェーン式無段変速装置1では、チェーン13の動作や変速による巻き付き径の変化によって潤滑側キャプガイド32に軸方向の負担が掛かっても、潤滑側キャップガイド32が潤滑油チューブ31とサイドカバー2の間に挟持されているため、潤滑側キャップガイド32の軸方向の移動を規制できる。また、この潤滑側キャップガイド32が潤滑油チューブ31に対して回転不動に固定されているので、回転方向の負担が掛かっても回転方向の移動を規制できる。そして、この潤滑側キャップガイド32に形成された潤滑油噴出口32f,32fの開放方向が一定になり、安定して潤滑油を供給することができる。
【0050】
また、非潤滑側キャップガイド42が仮決め用パイプ41とサイドカバー2の間に狭持されているので、この非潤滑側キャップガイド42に軸方向の負担が掛かっても、軸方向の移動を規制できる。そして、この非潤滑側キャップガイド42が仮決め用パイプ41に対して回転不動に固定されているので、回転方向の負担に対しても移動規制することができる。
【0051】
次に、効果を説明する。
実施例1のチェーン式無段変速装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0052】
(1) 二組の円錐型ディスク(プライマリプーリ11,セカンダリプーリ12)に巻き付けたチェーン13の巻き付き半径を変えることで無段変速するチェーン式無段変速装置1において、前記円錐型ディスク11,12の回転軸11b,12bを回転可能に支持するディスク支持部(ケース側プライマリ支持軸2a,ケース側セカンダリ支持軸3a,カバー側プライマリ支持軸3a,カバー側セカンダリ支持軸3b)は、トランスミッションケース2とサイドカバー3に設け、前記チェーン13は、該チェーン13の動きを規制すると共にチェーン断面を全周囲む環状ガイド部21を有するチェーンガイド20Aを有し、前記チェーンガイド20Aは、前記トランスミッションケース2と前記サイドカバー3の間に保持したチェーンガイド支持部(潤滑側チェーンガイド支持部30)により支持され、前記チェーンガイド支持部30は、前記トランスミッションケース2に固定した固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)と、前記固定側チェーンガイド支持部31に連結する連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)と、を有する構成とした。
このため、予めチェーン13にチェーンガイド20Aを取り付けてから、二組の円錐型ディスク11,12及びチェーンガイド20Aをトランスミッションケース2に組み付ける際に、容易に組み付けることができて、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0053】
(2) 前記チェーンガイド支持部20Aには、前記チェーン13又は前記円錐型ディスク11,12に向けて潤滑油を噴射する支持部側潤滑回路(潤滑油チューブ31,潤滑油路32e,潤滑油噴射口32f)を設け、該支持部側潤滑回路31,32e,32fは、前記トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dと結合する構成とした。
このため、上記(1)に記載の効果に加え、潤滑側チェーンガイド支持部30と潤滑油供給用の構成を兼用することができ、潤滑油供給用の構成を設けることなく円錐型ディスク11,12やチェーン13に潤滑油の供給を行うことができて、無段変速装置の小型を図ることができる。
【0054】
(3) 前記連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)は、一端が前記固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)に当接し、他端が前記サイドカバー3に当接し、前記固定側チェーンガイド支持部31と前記サイドカバー3により挟持すると共に、前記固定側チェーンガイド支持部31に対して回転不動に固定した構成とした。
このため、上記(1)又は(2)に記載の効果に加え、連結側チェーンガイド支持部32に軸方向の負担が掛かっても軸方向の移動を規制でき、安定した状態にチェーンガイド20Aを支持することができる。
【0055】
(4) 前記固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)は、パイプ部材により形成した構成とした。
このため、上記(1)〜(3)に記載の効果に加え、廉価な部品を使用することでコスト削減を図ることができる。
【0056】
(5) 前記連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)は、前記チェーンガイド20Aを支持するガイド支持部(一端32a´から中間フランジ32dまでの間の部分)と、該ガイド支持部と前記サイドカバーの間に位置するスペーサ部(中間フランジ32dから当接部32bまでの間の部分)と、を有する構成とした。
これにより、上記(1)〜(4)に記載の効果に加え、チェーンガイド20Aがチェーンガイド支持部30に対して軸方向に移動しても、その動きを適切に規制することができて、安定した状態に支持することができる。
【0057】
(6) 前記チェーンガイドを一対設け、一方のチェーンガイド20Aを支持する第1チェーンガイド支持部(潤滑側チェーンガイド支持部30)は、前記トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dに結合する支持部側潤滑回路を有する固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)と、潤滑油噴出口32fを有する連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)と、を有し、他方のチェーンガイド20Bを支持する第2チェーンガイド支持部(非潤滑側チェーンガイド支持部40)は、前記他方のチェーンガイド20Bの位置を仮決めする突起部(先端部41f)を有する固定側チェーンガイド支持部(仮決め用パイプ41)と、前記突起部41fに嵌合する嵌合部42aを有する連結側チェーンガイド支持部(非潤滑側キャップガイド32)と、を有する構成とした。
このため、上記(1)〜(5)に記載の効果に加え、組立作業性の向上と潤滑油の供給とを両立して行うことができる。
【0058】
(7) 二組の円錐型ディスク(プライマリプーリ11,セカンダリプーリ12)に巻き付けたチェーン13を、チェーン断面を全周囲う環状ガイド部23を有するチェーンガイド20Aで支持し、前記チェーンガイド20Aを支持するチェーンガイド支持部(潤滑側チェーンガイド支持部30)を、固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)と、連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)と、で構成したチェーン式無段変速装置の組立方法であって、前記チェーン13に、前記環状ガイド部23でチェーン断面を全周囲う状態に前記チェーンガイド20Aを組み付けるチェーンガイド組付手順(図9A(a))と、前記二組の円錐側ディスク11,12に前記チェーン13を巻き付けるチェーン巻き付け手順(図9A(b))と、を有するサブライン組立工程と、前記トランスミッションケース2に、前記固定側チェーンガイド支持部31を固定するケース組立工程(図9B(c))と、前記ケース組立工程(図9B(c))に続き、前記サブライン工程(図9A(a))で前記チェーン13を巻き付けた前記二組の円錐型ディスク11,12の回転軸11b,12bを、前記トランスミッションケース2に対して位置決めしてから、前記トランスミッションケース2に取り付けたディスク支持部11a,12aに前記円錐型ディスク11,12を固定する変速機構組付工程(図9B(d))と、前記変速機構組立工程(図9B(d))に続き、前記サブライン工程(図9A(b))で前記チェーン13に組み付けた前記チェーンガイド20Aを、前記固定側チェーンガイド支持部31に対して位置決めしてから、前記連結側チェーンガイド支持部32を前記固定側チェーンガイド支持部31に連結するガイド支持部組立工程(図9C(e))と、前記ガイド支持部組立工程(図9C(e))に続き、前記サイドカバー3を前記トランスミッションケース2に固定することで、前記固定側チェーンガイド支持部31と前記サイドカバー3により、前記連結側チェーンガイド支持部32を狭持するカバー取付工程(図9C(f))と、を備えた構成とした。
このため、予めチェーン13にチェーンガイド20Aを取り付けてから、二組の円錐型ディスク11,12及びチェーンガイド20Aをトランスミッションケース2に組み付ける際に、容易に組み付けることができて、組付け作業性の向上を図ることができる。
【0059】
(8) 前記チェーンガイドを一対設け、一方のチェーンガイド20Aを支持する第1チェーンガイド支持部(潤滑側チェーンガイド支持部30)は、前記トランスミッションケース2に形成したケース側潤滑回路2dに結合する支持部側潤滑回路を有する固定側チェーンガイド支持部(潤滑油チューブ31)と、潤滑油噴出口32fを有する連結側チェーンガイド支持部(潤滑側キャップガイド32)と、を有し、他方のチェーンガイド20Bを支持する第2チェーンガイド支持部(非潤滑側チェーンガイド支持部40)は、前記他方のチェーンガイド20Bの位置を仮決めする突起部(先端部41f)を有する固定側チェーンガイド支持部(仮決め用パイプ41)と、前記突起部41fに嵌合する嵌合部42aを有する連結側チェーンガイド支持部(非潤滑側キャップガイド32)と、を有する構成とした。
このため、上記(7)に記載の効果に加え、組立作業性の向上と潤滑油の供給とを両立して行うことができる。
【0060】
以上、本発明のチェーン式無段変速装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
例えば、一対のチェーンガイドをそれぞれ支持する一対のチェーンガイド支持部の両方に支持部側潤滑回路を設けても良いし、両方の固定部側チェーンガイド支持部にチェーンガイドを仮決めする突起部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 チェーン式無段変速装置
2 トランスミッションケース
2a ケース側プライマリ軸支持部(ディスク支持部)
2b ケース側セカンダリ軸支持部(ディスク支持部)
2c オイル孔
2d ケース側潤滑回路
2e 固定用孔
3 サイドカバー
3a カバー側プライマリ軸支持部(ディスク支持部)
3b カバー側セカンダリ軸支持部(ディスク支持部)
3c 第1当接突起
3d 第2当接突起
4 変速機ケース
11 プライマリプーリ(円錐型ディスク)
11b 回転軸
12 セカンダリプーリ(円錐型ディスク)
12b 回転軸
13 チェーン
20A,20B チェーンガイド
21 環状ガイド部
22a 第1ガイド部
22b 第2ガイド部
23 軸保持部
30 潤滑側チェーンガイド支持部(第1チェーンガイド支持部)
31 潤滑油チューブ(固定側チェーンガイド支持部)
31a 一端
31b フランジ
31d 凹部
32 潤滑側キャップガイド(連結側チェーンガイド支持部)
32a 開口部
32a´ 一端
32b 当接部
32c 切欠面
32b フランジ
32d 中間フランジ
32e 潤滑油路(支持部側潤滑回路)
32f 潤滑油噴出口
40 非潤滑側チェーンガイド支持部(第2チェーンガイド支持部)
41 仮決め用パイプ(固定側チェーンガイド支持部)
41a 一端
41b フランジ
41d 凹部
41f 先端部(突起部)
42 非潤滑側キャップガイド(連結側チェーンガイド支持部)
42a 嵌合部
42a´ 一端
42b 当接部
42c 切欠面
42d 中間フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二組の円錐型ディスクに巻き付けたチェーンの巻き付き半径を変えることで無段変速するチェーン式無段変速装置において、
前記円錐型ディスクの回転軸を回転可能に支持するディスク支持部は、トランスミッションケースとサイドカバーに設け、
前記チェーンは、該チェーンの動きを規制すると共にチェーン断面を全周囲む環状ガイド部を有するチェーンガイドを有し、
前記チェーンガイドは、前記トランスミッションケースと前記サイドカバーの間に保持したチェーンガイド支持部により支持され、
前記チェーンガイド支持部は、前記トランスミッションケースに固定した固定側チェーンガイド支持部と、前記固定側チェーンガイド支持部に連結する連結側チェーンガイド支持部と、を有することを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたチェーン式無段変速装置において、
前記チェーンガイド支持部には、前記チェーン又は前記円錐型ディスクに向けて潤滑油を噴射する支持部側潤滑回路を設け、
該支持部側潤滑回路は、前記トランスミッションケースに形成したケース側潤滑回路と結合することを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたチェーン式無段変速装置において、
前記連結側チェーンガイド支持部は、一端が前記固定側チェーンガイド支持部に当接し、他端が前記サイドカバーに当接し、前記固定側チェーンガイド支持部と前記サイドカバーにより挟持すると共に、前記固定側チェーンガイド支持部に対して回転不動に固定したことを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたチェーン式無段変速装置において、
前記固定側チェーンガイド支持部は、パイプ部材により形成したことを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたチェーン式無段変速装置において、
前記連結側チェーンガイド支持部は、前記チェーンガイドを支持するガイド支持部と、該ガイド支持部と前記サイドカバーの間に位置するスペーサ部と、を有することを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたチェーン式無段変速装置において、
前記チェーンガイドを、一対設け、
一方のチェーンガイドを支持する第1チェーンガイド支持部は、前記トランスミッションケースに形成したケース側潤滑回路に結合する支持部側潤滑回路を有する固定側チェーンガイド支持部と、潤滑油噴出口を有する連結側チェーンガイド支持部と、を有し、
他方のチェーンガイドを支持する第2チェーンガイド支持部は、前記他方のチェーンガイドの位置を仮決めする突起部を有する固定側チェーンガイド支持部と、前記突起部に嵌合する嵌合部を有する連結側チェーンガイド支持部と、を有することを特徴とするチェーン式無段変速装置。
【請求項7】
二組の円錐型ディスクに巻き付けたチェーンを、チェーン断面を全周囲う環状ガイド部を有するチェーンガイドで支持し、前記チェーンガイドを支持するチェーンガイド支持部を、固定側チェーンガイド支持部と、連結側チェーンガイド支持部と、で構成したチェーン式無段変速装置の組立方法であって、
前記チェーンに、前記環状ガイド部でチェーン断面を全周囲う状態に前記チェーンガイドを組み付けるチェーンガイド組付手順と、前記二組の円錐側ディスクに前記チェーンを巻き付けるチェーン巻き付け手順と、を有するサブライン組立工程と、
前記トランスミッションケースに、前記固定側チェーンガイド支持部を固定するケース組立工程と、
前記ケース組立工程に続き、前記サブライン工程で前記チェーンを巻き付けた前記二組の円錐型ディスクの回転軸を、前記トランスミッションケースに対して位置決めしてから、前記トランスミッションケースに取り付けたディスク支持部に前記円錐型ディスクを固定する変速機構組付工程と、
前記変速機構組立工程に続き、前記サブライン工程で前記チェーンに組み付けた前記チェーンガイドを、前記固定側チェーンガイド支持部に対して位置決めしてから、前記連結側チェーンガイド支持部を前記固定側チェーンガイド支持部に連結するガイド支持部組立工程と、
前記ガイド支持部組立工程に続き、前記サイドカバーを前記トランスミッションケースに固定することで、前記固定側チェーンガイド支持部と前記サイドカバーにより、前記連結側チェーンガイド支持部を狭持するカバー取付工程と、
を備えたことを特徴とするチェーン式無段変速装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載されたチェーン式無段変速装置の製造方法において、
前記チェーンガイドを、一対設け、
一方のチェーンガイドを支持する第1チェーンガイド支持部は、前記トランスミッションケースに形成したケース側潤滑回路に結合する支持部側潤滑回路を有する固定側チェーンガイド支持部と、潤滑油噴出口を有する連結側チェーンガイド支持部と、を有し、
他方のチェーンガイドを支持する第2チェーンガイド支持部は、前記他方のチェーンガイドの位置を仮決めする突起部を有する固定側チェーンガイド支持部と、前記突起部に嵌合する嵌合部を有する連結側チェーンガイド支持部と、を有することを特徴とするチェーン式無段変速装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208796(P2011−208796A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80051(P2010−80051)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】