説明

チオトロピウム塩の製法、チオトロピウム塩及びそれを含有する医薬組成物

本発明は、式(I)(式中、X- はアニオンである。)の新規なチオトロピウム塩の製法、前記新規なチオトロピウム塩それ自体、その塩を含有する医薬製剤、及び呼吸器系疾患の治療用、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び喘息の治療用の薬剤を製造するためのその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオトロピウム塩を調製するための方法、その新規なチオトロピウム塩それ自体、それを含有する医薬製剤、及び呼吸器系疾患の治療用、特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)及び喘息の治療用の薬剤を調製するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化チオトロピウムは、欧州特許出願第 418 716 A1号から既知であり、次の化学構造を有する。
【0003】
【化1】

【0004】
臭化チオトロピウムは、持続性効果を有する非常に有効な抗コリン作用剤であり、呼吸器系疾患、特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)及び喘息を治療するために用いることができる。チオトロピウムとは、遊離アンモニウムカチオンを意味する。
これまで、臭化チオトロピウム以外のチオトロピウム塩の従来技術における明確な説明はなかった。チオトロピウムのハロゲン化物、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩は、欧州特許第418 716号(図式1を参照のこと)に記載される方法を用いて同様に得ることができるにちがいない。しかしながら、チオトロピウムの他の塩は、この方法を用いて製造することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、他のチオトロピウム塩が普遍的に適用できる簡単な積極的ではない方法によって合成されることを可能にするチオトロピウム塩を調製するための代替合成法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上で述べた問題は、後述される本発明の方法によって解決される。
本発明は、下記式1







【0007】
【化2】

【0008】
(式中、X- はアニオンである。)
の新規なチオトロピウム塩を調製するための方法であって、
下記式2
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Y- は、ハライドアニオン、C1-C10アルキルスルホン酸アニオン、C1-C10アルキル硫酸アニオン、C6-C10アリールスルホン酸アニオンからなる群より選ばれるX- と異なるアニオンである。)
のチオトロピウム塩を適切な溶媒中でイオン源Kat-X (式中、Katはカチオンであり、Xは上で示した意味を有するものである。)と反応させることを特徴とする前記方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による方法においては、化合物Kat-XはアニオンX- 源として用いられる。これらはアニオンX- に加えてカチオン(Kat)を含有する塩である。理論的には、塩Kat-X (ここで、Xは上で示した意味を有するものである。)は全て本発明の反応に用いることができる。しかしながら、塩Kat-X (ここで、Katは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の系列より選ばれるカチオンである。)が好ましい。更に、本発明によれば、塩(ここで、Katは、アンモニウム基(NH4+)又はテトラアルキルアンモニウム基(N(C1-C8アルキル)4+、好ましくはN(C1-C4アルキル)4+)である。)を用いることが好ましい。本発明の方法においては、化合物Kat-X (ここで、Katは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム基又はN(C1-C4アルキル)4+によって形成されるカチオンである。)が特に好ましい。多価カチオンの場合、それら(例えば、MgI2)によって形成される塩は、本発明によれば指定“Kat-X”によって包含され、それ故、化学量論的組成の塩に限定されるとみなしてはならない。
本発明によれば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウム、好ましくはナトリウム、テトラブチルアンモニウム又はアンモニウム、好ましくはナトリウム又はアンモニウムによって形成される塩が顕著に重要である。
本発明による方法は、極性溶媒中で行われる。用いられる試薬Kat-Xも得られた副生成物Kat-Yも可溶である溶媒を用いることが特に好ましい。
適切な溶媒は、ある種の通常の実験によって当業者が簡単に認めるものである。式1の生成物が成分Kat-X及びKat-Yより、例えば、周囲温度(約20-25℃)で可溶でない溶媒が、特に反応の処理を援助するので本発明によれば特に好ましい。好ましい溶媒は、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、水、好ましくはpH2-6の水のようなプロトン性溶媒、また、アルコール、例えば、エチレングリコールやジエチルエングリコール、アミド、例えば、ジメチルホルムアミドやN-メチルピロリジノン、エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ニトリル、例えば、アセトニトリルからなる群より選ばれる極性有機溶媒である。溶媒として水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチルエングリコール、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル又はアセトニトリルを用いることが特に好ましく、水、特にpH約2-6を有する水溶液が本発明によれば特に好ましい。
【0012】
本発明の方法を行うために、用いられる出発化合物2に基づいて、少なくとも理論量の試薬Kat-Xが必要である。しかしながら、本発明によれば試薬Kat-Xを過剰量で用いることが好ましい。用いられる化合物2に基づいて、好ましくは少なくとも2当量、好ましくは少なくとも5当量、特に好ましくは少なくとも10当量、更に好ましくは少なくとも50当量のKat-Xが用いられる。基本的には、本発明によればKat-Xの過剰量ができる限り多量である反応が好ましい。用いられる溶媒の選択によっては、試薬Kat-Xの溶解度を考慮しなければならない。本発明によれば試薬Kat-Xの飽和溶液を用いることが特に好ましい。
本発明による反応は、好ましくは、式2の化合物をKat-Xで飽和した溶液に溶解し、少なくとも0℃から最高でも用いられる溶媒の沸騰温度までの温度で反応させることにより、行われる。しかしながら、好ましくは、反応は、60℃未満で、特に好ましくは80℃未満で、より好ましくは100℃未満で行われる。特に好ましくは、本発明の反応は、10-40℃の範囲の温度で、好ましくは約20-30℃で行われる。より高温の反応と比べると、約10-40℃の範囲の温度は反応時間が長くなる。しかしながら、本発明の反応条件が積極的ではないことから約10-40℃の範囲の反応温度が好ましい。反応を処理するために、式1の化合物をろ別し、必要ならば再結晶させる。
本発明による反応は、また、当該技術において既知であるイオン交換体を用いて行うこともできる。これらのイオン交換体は、当該技術において既知である材料である。例えば、スチレン、スチレン-ジビニルベンゼン(スチレン-DVB)又はポリアクリルからなる群より選ばれる材料をこれに用いることができる。特に好ましくは、カチオン官能基を有する樹脂が用いられ、それ故、上述のアニオンX- を荷電させることができる。例としては、-NMe3+、NMe2(CH2CH2OH)+ 又は-NH3+ より選ばれる官能基を有するスチレン-DVBが挙げられる。これらの樹脂は、当該技術において既知であり、市販で入手できる。Kat-Xを含有する溶液の作用によって、これらのイオン交換樹脂に対応するイオンX- を荷電させることができる。上述の溶媒の1つにおける式2の出発化合物の溶液は、X- を荷電したイオン交換樹脂と本発明に従って接触させることができる。イオン交換体の除去の後又は対応して荷電したイオン交換カラムを通過した後に得られた溶液は、式1の化合物を含有する。それらから非常に純粋な形で得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい方法においては、用いられる出発生成物は、式2[式中、Y- は、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、C1-C4アルキル硫酸アニオン、又は
C1-C4アルキルスルホン酸アニオン(アルキル基にフッ素が任意にモノ又はポリ置換されていてもよい)、又は
フェニルスルホン酸アニオン(フェニルスルホン酸アニオンはフェニル環にC1-C4アルキル、好ましくはメチルが任意にモノ又はポリ置換されていてもよい。)からなる群より選ばれるX- 以外のアニオンである。]
の化合物である。
また、本発明によれば、用いられる出発生成物が式2 (式中、Y- は、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、フルオロメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フェニルスルホン酸アニオン及びトルエンスルホン酸アニオンからなる群より選ばれるX- 以外のアニオンである。)
の化合物である上記の方法が好ましい。
用いられる出発生成物が式2 (式中、Y- は、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン及びトルエンスルホン酸アニオンからなる群より選ばれるX- 以外のアニオンである。)
の化合物である上記の方法が好ましい。
用いられる出発生成物が式2 (式中、Y- は、臭素アニオン、メチル硫酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン及びトルエンスルホン酸アニオン、好ましくは臭素アニオン、メチル硫酸アニオン又はメタンスルホン酸である。)
の化合物である上記の方法が特に好ましい。
【0014】
特に好ましくは、上記の方法を用いて塩1[式中、X- は、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、C1-C4アルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、酒石酸アニオン、シュウ酸アニオン、スクシン酸アニオン及び安息香酸アニオン、又は
C1-C4アルキルスルホン酸アニオン(アルキル基にフッ素が任意にモノ、ジ又はトリ置換基されていてもよい)、又は
フェニルスルホン酸アニオン(フェニルスルホン酸アニオンは、フェニル環にC1-C4アルキルが任意にモノ又はポリ置換されてもよい。)からなる群より選ばれるアニオンである。]
が得られる。
特に好ましくは、上述の方法を用いて塩1 (式中、X- は、フッ素アニオン、塩素アニオン、ヨウ素アニオン、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、酒石酸アニオン、シュウ酸アニオン、コハク酸アニオン、安息香酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、フルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフルオロメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、フェニルスルホン酸アニオン及びトルエンスルホン酸アニオンからなる群より選ばれるアニオンである。)
が得られる。
【0015】
好ましくは、本発明によれば上述の方法を用いて塩1 (式中、X- はフッ素アニオン、塩素アニオン、ヨウ素アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、安息香酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン及びトルエンスルホン酸アニオンより選ばれる。)
も得られ、好ましくは塩1 (式中、X- は、塩素アニオン、ヨウ素アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン及び安息香酸アニオン、好ましくは塩素アニオン及びヨウ素アニオンより選ばれる。)
が本発明の方法によって得られる。
本発明は、また、式1の化合物を調製するための出発化合物として式2 (式中、Y- は、上で示した意味を有するものである。)の化合物の使用に関する。
C1-C10アルキルは、特に明記されない限り、炭素原子1〜10個、好ましくは炭素原子1〜4個を有する分枝鎖及び直鎖アルキル基を意味する。以下のもの: メチル、エチル、プロピル又はブチルが一例として挙げられる。場合によっては略号Me、Et、Prop又はBuは、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を示すために用いられる。特に明記しない限り、プロピル及びブチルの定義には、問題の基の可能な異性体の形全てが含まれる。従って、例えば、プロピルにはn-プロピル及びイソプロピルが含まれ、ブチルにはiso-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等が含まれる。
特に明記されない限りアルキル基は、他の基(例えば、アルキルスルホン酸基)の一部である場合には、例えば、フッ素、塩素、臭素、CF3、ヒドロキシ又はメトキシからなる群より選ばれる1以上の基で任意に置換されてもよい。
本発明の範囲内のハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
C6-C10アリールとは、炭素原子6〜10個を有する芳香族環系である。好ましいアリール基は、フェニル又はナフチルである。これらは、例えば、メチル、フッ素、塩素、臭素、ヒドロキシ、CF3又はメトキシを含む基より選ばれる1以上の基で任意に置換されてもよい。
2の出発化合物は、例えば、欧州特許第418716号に開示される方法と同様に調製される。これを以下の図式1において概要を述べる。
【0016】
【化4】

【0017】
スコピンジチエニルグリコール酸エステル3から出発して試薬Me-Yと反応させることによって出発化合物2を得ることができる。
従来技術には、これまで臭化チオトロピウム(図式1による)の合成だけが記載されてきた。式2 (式中、Y- は、臭素以外の意味を有する。)の化合物は新規であり、式1の化合物を調製するための本発明の合成において出発化合物として臭化チオトロピウムのように用いることができるので、本発明は、また、任意にその溶媒和物又は水和物の形で、Y- が臭素を除く上で示される全ての意味を有するものである、式2の出発化合物それ自体に関する。
例えば、この方法を用いて当該技術においてまだ記載されてなく、本発明によって好ましい以下の式2の出発化合物が得られる。
- スコピンジ(2-チエニル)グリコレートメトメタンスルホネート(メタンスルホン酸チオトロピウム);
- スコピンジ(2-チェニル)グリコレートメトメチルスルフェート(メチル硫酸チオトロピウム)。
本発明の方法における出発化合物としてこれらの新化合物を用いることができる場合、本発明は、特に好ましくは、任意にその溶媒和物又は水和物の形で、2つの上述した化合物それ自体に関する。
以下の実施例は、一例として記載される実施態様に本発明の範囲を限定せずに本発明を更に詳細に示すものである。
【実施例】
【0018】
A. I. 出発物質
A. I.1. 臭化チオトロピウム:
臭化チオトロピウムは、例えば、欧州特許出願第 418 716号に記載される手順を用いて得ることができる。
A. I.2. メタンスルホン酸チオトロピウム:
75.5gのスコピンジ(2-チェニル)グリコール酸を750mlアセトニトリルに弱く加熱しながら溶解する。22mlのメタンスルホン酸メチルを添加した後、その混合物を55℃で撹拌する。反応が終了した後、減圧下で約350mlの溶媒を留去した。生成物が晶出し、ろ別する。メタノール/アセトンから再結晶によって精製する。
収量: 83.35gの白色の結晶(74.3%); 融点: 229-231℃(分解による)。
A. I.3. メチル硫酸チオトロピウム:
段落I.2に記載される方法と同様に、75.5gのスコピンジ-(2-チェニル)グリコレートを、750mlのアセトニトリル20.9mlのジメチル硫酸塩と反応させる。晶出する粗生成物を分離し、精製用のメタノールから再結晶させる。
収量: 83.89gの白色結晶(77.5%); 融点: 83-184℃(分解による)。
【0019】
A. II. 本発明の合成の実施例
実施例1: 塩化チオトロピウム
1.00gの臭化チオトロピウムを100mlのNaCl飽和溶液(35.8g NaCl/100g E-水)に懸濁し、周囲温度で14時間撹拌する。次に、ろ過し、このように得られた生成物を更にまた100mlのNaCl飽和溶液(35.8g/100g)に4時間懸濁させる。生成物をろ過によって分離し、乾燥し、次に、沸騰温度で15mlのメタノールに溶解させる。熱時ろ過して、不溶物を除去し、ろ液を周囲温度に冷却し、その時、生成物が晶出する。
収量: 486.2mg(53.7%); 無色の結晶粉末; 融点: 234℃(分解);
HPLCによって検出したアニオン: 塩素アニオン7.99%(計算値: 8.28%); 臭素アニオンは、もはや検出することができない。
実施例2: ヨウ化チオトロピウム
5.00gの臭化チオトロピウムを50mlのヨウ化アンモニウム飽和溶液(85g NH4I/50g水)に懸濁し、周囲温度で2日間撹拌する。次に、ろ過し、このように得られた生成物を乾燥し、次に、沸騰温度で85mlのメタノールに溶解させる。熱時ろ過して不溶物を除去し、ろ液を周囲温度に冷却し、その時、生成物が晶出する。
収量: 4.41g (80%);無色の結晶粉末; 融点205℃;
HPLCによって検出したアニオン: ヨウ素アニオン24.28%(計算値: 24.43%); 臭素イオンは、もはや検出することができない。
得られた生成物1は、同様にメチル硫酸チオトロピウム又はメタンスルホン酸チオトロピウムから出発しても得られる。
A. III. 本発明の合成の実施例の評価
上記の方法によって得られた化合物を粉末X線回折を用いて更に詳細に確認した。下で示される粉末X線図を記録するために以下の手順を用いた。
OEDを有するBruker D8 Advancedを用いて本発明の範囲内で粉末X線図を記録した(=位置感受性検出器)(CuKα線、λ=1.5418オングストローム、30kV、40mA)。
実施例1: 塩化チオトロピウム
上記の方法によって得られた塩化チオトロピウムは非常に結晶性であり、無水の形で得られる。更に粉末X線回折による試験に供した。
無水塩化チオトロピウムについて得られた粉末X線図を図1に示す。
下記の表1は、特徴的なピークと標準化強度を示す表である。
【0020】
表1:

【0021】
上記の表において“2θ[o]”値は回折角oであり、“dhkl [オングストローム]”値は指定された格子面間隔オングストロームである。
本発明の合成法によって得られる塩化チオトロピウムは、非常に結晶性であり、それ故、例えば、吸入用粉末のような吸入による投与のための医薬製剤又は、例えば、噴射剤含有エアゾール製剤の調製に特に良く適している。
従って、本発明は、また、任意にその水和物又は溶媒和物の形で、塩化チオトロピウムそれ自体、特に結晶性塩化チオトロピウムに関する。粉末X線図において、特に、固有値d= 6.15オングストローム; 5.58オングストローム; 4.45オングストローム; 3.93オングストロームを有することを特徴とする結晶性塩化チオトロピウムが特に好ましい。
上記の方法によって得ることができる塩化チオトロピウムは、水分の制御された作用によって対応する水和物に直接変換することができる(即ち、水蒸気等)。従って、本発明は、また、その水和物の形で上述の塩化チオトロピウムに関する。
実施例2: ヨウ化チオトロピウム
上記の方法によって得られたヨウ化チオトロピウムは、非常に結晶性であり、無水形で得られる。それをX線粉末回折によって更に調べた。
無水ヨウ化チオトロピウムについて得られた粉末X線図を図2に示す。
下記の表2は、特徴的なピークと標準化強度を示す表である。
【0022】
表2:

【0023】
上記の表において“2θ[o]”値は回折角oであり、“dhkl [オングストローム]”値は指定された格子面間隔オングストロームである。
本発明の合成法によって得られる塩化チオトロピウムは、非常に結晶性であり、それ故、例えば、吸入用粉末のような吸入による投与のための医薬製剤又は、例えば、噴射剤含有エアゾール製剤の調製に特に良く適している。
従って、本発明は、また、任意にその水和物又は溶媒和物の形で、ヨウ化チオトロピウムそれ自体、特に結晶性ヨウ化チオトロピウムに関する。粉末X線図において、特に、固有値d= 6.30オングストローム; 5.19オングストローム; 4.47オングストローム; 4.11オングストローム; 3.55オングストロームを有することを特徴とする無水結晶性ヨウ化チオトロピウムが特に好ましい。
【0024】
B. 医薬製剤
本発明、また、上述の新規なチオトロピウム塩の塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムを含有する新規な医薬製剤に関する。塩化チオトロピウム及びヨウ化チオトロピウムは、好ましくは吸入によって投与される。このことは、吸入用粉末製剤、噴射剤含有エアゾール製剤又は噴射剤を含有しない吸入用溶液を用いて行うことができる。
B.1. 吸入用粉末
本発明は、また、本発明の塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの形で0.001〜3%のチオトロピウムを生理的に許容しうる賦形剤と合わせて含有する吸入用粉末に関する。チオトロピウムとは、アンモニウムカチオンを意味する。
本発明によれば0.01〜2%のチオトロピウムを含有する吸入用粉末が好ましい。特に好ましい吸入用粉末は、約0.03〜1%、好ましくは0.05〜0.6%、特に好ましくは0.06〜0.3%の量でチオトロピウムを含有する。本発明によれば、最終的に、約0.08〜0.22%のチオトロピウムを含有する吸入用粉末が特に重要である。上で指定したチオトロピウムの量は、含有するチオトロピウムカチオンの量に基づくものである。本発明の吸入用粉末は、本発明の塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの形でチオトロピウムを含有する。
本発明のために用いられる賦形剤は、当該技術において既知の現在の方法を用いて適切なグラインディング及び/又はスクリーニングによって調製される。本発明に従って用いられる賦形剤は、また、異なる平均粒度の賦形剤部分を混合することによって得られる賦形剤の混合物であってもよい。
本発明のインハレットに有効な吸入用粉末を製造するために用いられる吸入用粉末を調製するために用いることができる生理的に許容しうる賦形剤の例としては、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース又はアラビノース、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース)、オリゴ糖類又は多糖類(例えば、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、セルロール、多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、アミノ酸(例えば、塩酸アルギニン)又は塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はその混合物が挙げられる。好ましくは、単糖類又は二糖類が用いられ、ラクトース又はグルコースの使用、特に、それらの水和物の形での使用が好ましいがこれに限らない。本発明のために、ラクトースが特に好ましい賦形剤であり、ラクトース1水和物が特に最も好ましい。
【0025】
本発明の吸入用粉末の範囲内で、賦形剤の最大平均粒度は、250μmまで、好ましくは10〜150μm、最も好ましくは15〜80μmである。平均粒度が1〜9μmのより微細な賦形剤部分を前述の賦形剤に添加することはしばしば適切であると思われる。これらのより微細な賦形剤は、また、上文に示された可能な賦形剤の群より選ばれる。平均粒度は当該技術において既知の方法を用いて求めることができる(例えば、国際出願第02/30389号、段落A及びCを参照のこと)。最後に、本発明の吸入用粉末を調製するために、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmの平均粒度を特徴とする微粉化塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムが賦形剤混合物に添加される。平均粒度は、当該技術において既知の方法を用いて求めることができる(例えば、国際出願第02/30389号、段落Bを参照のこと )。活性物質の摩砕及び微粉化方法は、従来技術から知られている。
賦形剤として特に調製された賦形剤混合物が用いられない場合には、特に10〜50μmの平均粒度及び10%微粉含量を有する賦形剤を用いることが特に好ましい。
平均粒度とは、ここでは乾燥分散法を用いてレーザ回折計によって測定された容積分布の50%値を意味する。平均粒度は、当該技術において既知の方法を用いて求めることができる(例えば、国際出願第02/30389号、段落A及びCを参照のこと)。同様に、この場合における10%微粉含量は、レーザ回折計を用いて測定された容積分布の10%値を意味する。言い換えれば、本発明のための10%微粉含量は、10%の量の粒子が見られる(容積分布に基づく)粒度を示すものである。
本発明の範囲内で示される割合は、特に逆に明示されない限り、常に質量パーセントである。
特に好ましい吸入用粉末においては、賦形剤は、12〜35μm、特に好ましくは13〜30μmの平均粒度を特徴とする。また、10%微粉含量が約1〜4μm、好ましくは約1.5〜3μmである吸入用粉末が特に好ましい。
本発明の吸入用粉末は、本発明が根拠としている問題によれば、一回量の精度という意味において高度な均一性を特徴とする。これは、ほぼ<8%、好ましくは<6%、最も好ましくは<4%である。
【0026】
出発材料の質量を計った後、吸入用粉末は、当該技術において既知の方法を用いて賦形剤と活性物質から調製される。例えば、国際出願第02/30390号の開示を参照することができる。従って、本発明の吸入用粉末は、例えば、以下に記載する方法によって得ることができる。以下に記載される調製方法における成分は、吸入用粉末の上述の組成物に記載される質量による割合で用いられる。
まず、賦形剤と活性物質を適切な混合容器に入れる。用いられる活性物質の平均粒度は、0.5〜10μm、好ましくは1〜6μm、最も好ましくは2〜5μmである。賦形剤と活性物質は、好ましくは、メッシュサイズが0.1〜2mm、好ましくは0.3〜1mm、最も好ましくは0.3〜0.6mmの篩又は造粒篩を用いて添加される。好ましくは、混合容器に最初に賦形剤を入れ、次に活性物質を添加する。この混合プロセスの間に2つの成分は好ましくはバッチで添加される。2つの成分が交互層で篩にかけることが特に好ましい。賦形剤と活性物質との混合は、2つの成分がなお添加されつつ行われてもよい。しかしながら、好ましくは、2つの成分が層状で篩にかけられるとすぐに混合だけが行われる。
本発明は、また、呼吸器系疾患の治療用、特にCOPD及び/又は喘息の治療用の医薬組成物を調製するための本発明の吸入用粉末の使用に関する。
本発明による吸入用粉末は、例えば、計量チャンバによって(例えば、米国特許出願第4570630号に従って)又は他の手段によって(例えば、ドイツ特許出願第36 25 685号に従って)レザバーから一回量を計る吸入器を用いて投与することができる。しかしながら、好ましくは、本発明による吸入用粉末は、例えば、国際出願第94/28958号に記載されるような吸入器に用いられる、カプセルに充填される(いわゆるインハレットを製造するために)。
最も好ましくは、本発明の吸入用粉末を含有するカプセルは、図3に示される吸入器を用いて投与される。この吸入器は、2つの窓2を有するハウジング1、空気注入口がありスクリーンハウジング4によって固定されたスクリーン5を備えているデッキ3、2つの鋭いピン7とスプリング8に対して可動なカウンタを備えた押しボタン9があるデッキ3に接続された吸入チャンバ6、及びハウジング1、デッキ3、ぱっと開いたり閉じたりすることを可能にするスピンドル10によってカバー11に接続される口金12、並びに流動抵抗を調整するための通気孔13を特徴とする。
【0027】
本発明は、更に、呼吸器系疾患の治療用、特にCOPD及び/又は喘息の治療用の医薬組成物を調製するための本発明の吸入用粉末の使用であって、上記及び図3に示される吸入器を用いることを特徴とする前記使用に関する。
粉末充填カプセルを用いて本発明の吸入用粉末を投与するために、その材料が合成プラスチックより選ばれ、最も好ましくはポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートより選ばれるカプセルを用いることが特に好ましい。特に好ましい合成プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリカーボネート又はポリエチレンテレフタレートである。本発明に従って特に好ましいカプセル材料の1つとしてポリエチレンが用いられる場合には、密度が900〜1000kg/m3、好ましくは940-980kg/m3、より好ましくは約960-970kg/m3(高密度ポリエチレン)のポリエチレンを用いることが好ましい。
本発明の合成プラスチックは、当該技術において既知の製造法を用いて種々の方法で処理することができる。本発明によればプラスチックの射出成形が好ましい。離型剤を用いない射出成形が特に好ましい。この製造法は明確に定義されており、特に再現性を特徴とする。
他の態様においては、本発明は本発明に従って上記吸入用粉末を含有する上記カプセルに関する。これらのカプセルは、約1〜20mg、好ましくは約3〜15mg、最も好ましくは約4〜12mgの吸入用粉末を含有することができる。本発明の好ましい製剤は、4〜6mgの吸入用粉末を含有する。本発明の製剤を8〜12mgの量で含有する吸入のためのカプセルは本発明によれば等価な重要性を有する。
本発明は、また、図3の吸入器と共に本発明による吸入用粉末の含量を特徴とする上記カプセルの1以上からなる吸入キットに関する。
本発明は、また、呼吸系疾患の治療用、特にCOPD及び/又は喘息の治療用の医薬組成物を調製するための、本発明による吸入用粉末の含量を特徴とする上記カプセルの使用に関する。
本発明による吸入用粉末を含有する充填カプセルは、空のカプセルに本発明による吸入用粉末を充填することによる当該技術において既知の方法によって製造される。
【0028】
B.1.1. 本発明による吸入用粉末の実施例
以下の実施例は、以下の例示する実施態様に本発明の範囲を限定することなく本発明を更に詳細に示すためのものである。
B.1.1.1. 出発物質
活性物質
本発明による吸入用粉末を調製するために本発明による塩化チオトロピウム又はチオトロピウムヨウ化物を用いる。これらの活性物質を、当該技術において既知の方法と同様に微粉化する(例えば、国際出願第03/078429 A1号を参照のこと)。
賦形剤:
以下の実施例においては、賦形剤としてラクトース1水和物が用いられる。例えば、製品名Lactochem Extra Fine PowderとしてBorculo Domo Ingredients, Borculo/NLから入手することができる。粒度と比表面積の本発明による規格は、ラクトースのこのグレードが適合している。
B.1.1.2. 本発明による粉末製剤の調製:
I) 装置
吸入用粉末を調製するために、例えば、下記の機械及び装置を用いることができる。
容器又は粉末ミキサー: Turbulamischer 2リットル, Type 2C; Willy A. Bachofen AG, CH-4500 Basel製
携帯型スクリーン: 0.135mmメッシュサイズ
空の吸入カプセルにチオトロピウムを含有する吸入用粉末を手で又は機械的に充填することができる。以下の装置を用いることができる。
カプセル充填機:
MG2, Type G100、製造業者: MG2 S.r.l, I-40065 Pian di Macina di Pianoro (BO)、イタリア
【0029】
製剤実施例1:
粉末混合物:
粉末混合物を調製するために、299.39gの賦形剤と0.61gの微粉化した塩化チオトロピウム(又はヨウ化チオトロピウム)を用いる。得られた300gの吸入用粉末のにおいては、チオトロピウムに基づく活性物質の含量は、塩化チオトロピウムの場合に0.19%、ヨウ化チオトロピウムの場合に0.15%である。
約40-45gの賦形剤を、メッシュサイズが0.315mmの携帯型スクリーンによって適切な混合容器に入れる。約90-110mgのバッチの塩化チオトロピウム(又はヨウ化チオトロピウム)と約40-45gのバッチの賦形剤を交互層でスクリーニングする。賦形剤と活性物質をそれぞれ7層と6層で添加する。
スクリーニングしてから、次に、成分を混合する(混合速度900rpm)。最終混合物を2回以上携帯型スクリーンに通過させ、次に、900rpmで更にまた混合する。
実施例1に記載した方法を用いて、適切なプラスチックに充填した場合、カプセルを、例えば、以下の吸入用カプセルを製造するために用いることができる吸入用粉末を得ることが可能である。
製剤実施例2:
塩化チオトロピウム: 0.0113 mg
ラクトース1水和物: 5.4887 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
製剤実施例3:
塩化チオトロピウム: 0.0113 mg
ラクトース1水和物*): 5.4887 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
*) ラクトースは、平均粒度が約4μmの5%の特に添加された微粉含量の微粉化したラクトース1水和物を含有する。
製剤実施例4:
ヨウ化チオトロピウム: 0.0113 mg
ラクトース1水和物: 5.4887 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
【0030】
製剤実施例5:
ヨウ化チオトロピウム: 0.0225 mg
ラクトース1水和物: 5.4775 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
製剤実施例6:
塩化チオトロピウム: 0.0056 mg
ラクトース1水和物: 5.4944 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
製剤実施例7:
塩化チオトロピウム: 0.0056 mg
ラクトース1水和物*): 5.4944 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 105.5 mg
*) ラクトースは、平均粒度が約4μmの5%の特に添加された微粉含量の微粉化したラクトース1水和物を含有する。
製剤実施例8:
ヨウ化チオトロピウム: 0.0113 mg
ラクトース1水和物*): 9.9887 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 110.0 mg
*) ラクトースは、平均粒度が約4μmの5%の特に添加された微粉含量の微粉化したラクトース1水和物を含有する。
製剤実施例9:
ヨウ化チオトロピウム: 0.0225 mg
ラクトース1水和物*): 9.9775 mg
ポリエチレンカプセル: 100.0 mg
全量: 110.0 mg
*) ラクトースは、平均粒度が約4μmの5%の特に添加された微粉含量の微粉化したラクトース1水和物を含有する。
【0031】
B.2. 噴射剤含有吸入用エアゾール
新規なチオトロピウム塩の塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムは、また、噴射剤含有吸入用エアゾールの形で任意に投与されてもよい。このために溶液又は懸濁液の形のエアゾール製剤を用いることができる。
B.2.1. 溶液の形のエアゾール製剤
エアゾール溶液という用語は、用いられる塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムとあらゆる賦形剤が完全に溶解している医薬製剤を意味する。本発明は、塩化チオトロピウムとヨウ化チオトロピウムを含有するエアゾール製剤であって、上述のチオトロピウム塩の1つに加えてHFA噴射剤、共溶媒及び無機酸又は有機酸を含有し、更に酸の濃度が水溶液において2.5-4.5の範囲のpHに対応するようなものであることを特徴とする、前記エアゾール製剤を提供する。
上述のエアゾール溶液は、特に高安定性を特徴とする。
好ましいエアゾール溶液は、酸の濃度が水溶液において3.0-4.3、特に好ましくは3.5-4.0の範囲のpHに対応するようなものであることを特徴とする。
本発明によるエアゾール溶液は、また、少量の水を含有することができる(好ましくは5%まで、特に好ましくは3%まで、より好ましくは、2%まで)。
本発明によるエアゾール溶液は、好ましくは、それらが有するチオトロピウムカチオンの割合が0.00008〜0.4%、好ましくは0.0004〜0.16%、特に好ましくは0.0008〜0.08%であるような塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの量を含有する。
エアゾール溶液の範囲内の適切なHFA噴射剤は、塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの治療的有効量を溶解することができる、用いられる共溶媒と均一な噴射剤製剤を形成するものである。本発明による好ましいHFA噴射剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134(a))、1,1,1,2,3,3,3,-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227)、HFA-32(ジフルオロメタン)、HFA-143(a) (1.1.1-トリフルオロエタン)、HFA-134 (1,1,2,2-テトラフルオロエタン)及びHFA-152a (1,1-ジフルオロエタンからなる群より選ばれる噴射剤である。本発明によればHFA-134(a)とHFA-227が特に好ましく、本発明によればHFA-134(a)が特に重要である。前述のHFA噴射剤に加えて、非ハロゲン化噴射剤も単独で用いることができ、又は上述のHFA噴射剤の1つ以上と混合することもできる。そのような非ハロゲン化噴射剤の例は、飽和炭化水素、例えば、n-プロパン、n-ブタン又はイソブタン、又はエーテル、例えば、ジエチルエーテルである。
【0032】
本発明によれば酸として有機酸又は無機酸を用いることができる。本発明の範囲内の無機酸は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸又はリン酸からなる群より選ばれ、本発明によれば塩酸又は硫酸、特に塩酸を用いることが好ましい。本発明の範囲内の有機酸は、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、乳酸、マレイン酸、安息香酸又は酒石酸からなる群より選ばれ、本発明によればアスコルビン酸やクエン酸が好ましい。
本発明によるエアゾール溶液は、当該技術において既知の方法と同様に得ることができる。
本発明によるエアゾール溶液に薬学的に許容しうる賦形剤が任意に含有されてもよい。例えば、可溶性界面活性剤や潤滑剤を用いることができる。そのような可溶性界面活性剤や潤滑剤の例としては、ソルビタントリオレエート、レシチン又はイソプロピルミリステートが挙げられる。存在することができる他の賦形剤は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又はトコフェロール)、香味マスキング剤(例えば、メントール、甘味剤、合成香味料又は天然香味料)であってもよい。
本発明に従って用いることができる共溶媒の例は、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコエーテル、オキシエチレンとオキシプロピレンのブロックコポリマー)又は他の物質、例えば、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリコフロール(例えば、グリコフロール75)である。本発明による好ましい共溶媒は、エタノールである。
本発明による製剤に用いることができる共溶媒の量は、好ましくは、全製剤に基づき5-50%、好ましくは10-40%、特に好ましくは15-30%の範囲にある。
逆に明示されない限り、本発明の範囲内で指定される割合は質量パーセントとして読み取られるべきである。
本発明による製剤は、すでに述べたように、少量の水を含有することができる。好ましい態様においては、本発明は、水の含量が5%まで、特に好ましくは3%まで、より好ましくは2%までである製剤に関する。
他の態様においては、本発明は、水を含有しないエアゾール溶液に関する。これらの製剤においては、共溶媒の量は、好ましくは、20-50%の範囲に、好ましくは30-40%の範囲にある。
本発明による製剤は、当該技術において既知のる吸入器を用いて投与することができる(pMDI=加圧定量吸入器)。
本発明は、また、呼吸器系の治療用、特にCOPD及び/又は喘息の治療用の医薬組成物を調製するための本発明による塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの含量を特徴とする上述のエアゾール溶液の使用に関する。
以下の実施例は、本発明の範囲を以下の例示している実施態様に限定することなく本発明を更に詳細に示すためのものである。
【0033】
B.2.1.1 エアゾール溶液の実施例
製剤実施例10:

製剤実施例11:





製剤実施例12:

製剤実施例13:

製剤実施例14:

【0034】
製剤実施例15:

製剤実施例16:

製剤実施例17:




製剤実施例18:

製剤実施例19:

【0035】
B.2.2. エアゾール懸濁液
本発明は、また、任意に、1以上の他の噴射剤ガス、好ましくはプロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、CHClF2、CH2F2、CF3CH3、イソブタン、イソペンタン及びネオペンタンからなる群より選ばれるガスと組合わせた、噴射剤ガスHFA 227及び/又はHFA 134a中の本発明によるチオトロピウム塩塩化チオトロピウムとヨウ化チオトロピウムの懸濁液に関する。
本発明によれば噴射剤ガスとしてHFA 227のみ、HFA 227とHFA 134aの混合物又はHFA 134aのみを含有する懸濁液が好ましい。噴射剤ガスHFA 227とHFA 134aの混合物が本発明による懸濁製剤に用いられる場合には、これらの2つの噴射剤ガス成分が用いられる質量比は自由に可変的である。本発明による懸濁製剤において噴射剤ガスHFA 227及び/又はHFA 134aに加えて、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル、CHClF2、CH2F2、CF3CH3、イソブタン、イソペンタン及びネオペンタンからなる群より選ばれる1以上の他の噴射剤ガスが用いられる場合には、この追加された噴射剤ガス成分の量は、好ましくは50%未満、好ましくは40%未満、特に好ましくは30%未満である。
本発明による懸濁液は、好ましくは、本発明によるチオトロピウムカチオンの量が0.001〜0.8%、好ましくは0.08〜0.5%、特に好ましくは0.2〜0.4%であるような塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの量を含有する。逆に明示されない限り、本発明の範囲内で示される割合は常に質量パーセントである。
場合によっては、懸濁製剤という用語は、懸濁液という用語の代わりに本発明の範囲内で用いられる。2つの用語は、本発明の範囲内で等価物とみなされるべきである。
本発明による噴射剤含有吸入用エアゾール又は懸濁製剤もまた、他の成分、例えば、表面活性剤(界面活性剤)、補助剤、抗酸化剤又は香味料を含有することができる。
本発明による懸濁液に任意に存在する表面活性剤(界面活性剤)は、好ましくはポリソルベート20、ポリソルベート80、Myvacet 9-45、Myvacet 9-08、イソプロピルミリステート、オレイン酸、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、Brij、エチルオレエート、グリセリルトリオレエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリシノレート、セチルアルコール、ステリルアルコール、セチルピリジニウムクロリド、ブロックポリマー、天然油、エタノール及びイソプロパノールからなる群より選ばれる。上述の懸濁液補助剤の中でポリソルベート20、ポリソルベート 80、Myvacet 9-45、Myvacet 9-08又はイソプロピルミリステートが好ましくは用いられる。Myvacet 9-45又はイソプロピルミリステートが最も好ましく用いられる。
【0036】
本発明による懸濁液が界面活性剤を含有する場合には、好ましくは0.0005-1%、特に好ましくは0.005-0.5%の量で用いられる。
本発明による懸濁液に任意に含有される補助剤は、好ましくはアラニン、アルブミン、アスコルビン酸、アスパルテーム、ベタイン、システイン、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸及びクエン酸からなる群より選ばれる。アスコルビン酸、リン酸、塩酸又はクエン酸が好ましく用いられ、塩酸又はクエン酸が最も好ましく用いられる。
補助剤が本発明による懸濁液に存在する場合には、これらは、0.0001-1.0%、好ましくは0.0005-0.1%、特に好ましくは0.001-0.01%の量で好ましく用いられ、本発明によれば0.001-0.005%の量が特に重要である。
本発明による懸濁液に任意に含有される抗酸化剤は、好ましくはアスコルビン酸、クエン酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール及びアスコルビルパルミテートからなる群より選ばれ、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール又はアスコルビルパルミテートが好ましく用いられる。
本発明による懸濁液に任意に含有される香味剤は、好ましくはハッカ、サッカリン、Dentomint、アスパルテーム及び精油(例えば、シナモン、アニスシード、メントール、カンファ)からなる群より選ばれ、ペパーミント又はDentomint(登録商標)が特に好ましい。
吸入による投与のために活性物質を微細に粉砕した形で供給することは不可欠である。このために、本発明による塩の塩化チオトロピウムとヨウ化チオトロピウムは、摩砕(微粉化)されるか又は従来技術から原則として知られる他の技術的な方法(例えば、沈殿、噴霧乾燥)によって微細に粉砕した形で得られる。活性物質を微粉化する方法は、当該技術において既知である。好ましくは微粉化後の活性物質の平均粒度は、0.5〜10μm、好ましく1〜6μm、特に好ましくは1.5〜5μm である。活性物質の粒子の好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%は、前述のサイズ範囲の粒度を有する。活性物質の粒子の特に好ましくは少なくとも80%、最も多くの好ましくは少なくとも90%の前述のサイズ範囲の粒度を有する。
【0037】
他の態様においては、本発明は、他のいかなる添加剤も含まず本発明による2つの活性物質の1つのみを含有する懸濁液に関する。
本発明による懸濁液は、当該技術において既知の方法を用いて調製することができる。このために、製剤の成分を1つ又は複数の噴射剤ガスと混合し(任意に低温で)、適切な容器に充填する。
本発明による上述の噴射剤含有懸濁液は、当該技術において既知の吸入器を用いて投与することができる(pMDI = 加圧定量吸入器)。従って、他の態様においては、本発明は、これらの懸濁液を投与するのに適する1以上の吸入器と組み合わせて上文に記載された懸濁液の形での医薬組成物に関する。更に、本発明は、上文に記載された本発明による噴射剤含有懸濁液を含有することを特徴とする吸入器に関する。
本発明は、また、適切なバルブを備えた場合に適切な吸入器に用いることができ且つ本発明による上述の噴射剤含有懸濁液の1つを含有する容器(カートリッジ)に関する。これらのカートリッジに本発明による噴射剤含有懸濁液を充填するのに適切な容器(カートリッジ)及び方法は、当該技術において既知である。
チオトロピウムの医薬活性からみて本発明はまた、吸入又は経鼻投与用の医薬組成物を調製するため、好ましくは、抗コリン作用剤が治療の利点を生じることができる疾患の吸入又は経鼻治療用の医薬組成物を調製するための本発明による懸濁液の使用に関する。
特に好ましくは、本発明はまた、呼吸器系疾患、好ましくは喘息又はCOPDの吸入治療用の医薬組成物を調製するための本発明による懸濁液の使用に関する。
以下の実施例は、それらの内容に限定せずに一例として更に詳細に本発明を示すためのものである。
【0038】
B.2.1.2 エアゾール懸濁製剤の実施例
活性物質と噴射剤ガスに加えて他の成分を含有する懸濁液:
製剤実施例20:

製剤実施例21:

製剤実施例22:

製剤実施例23:

【0039】
製剤実施例24:

製剤実施例25:

製剤実施例26:





製剤実施例27:

製剤実施例28:

【0040】
活性物質と噴射剤のみを含有する懸濁液:
製剤実施例29:

製剤実施例30:

製剤実施例31:

製剤実施例32:

製剤実施例33:

製剤実施例34:





製剤実施例35:

製剤実施例36:

【0041】
B.3. 噴射剤ガスを含有しない吸入用エアゾール
新規なチオトロピウム塩の塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムは、また任意に、噴射剤を含有しない吸入用エアゾールの形で投与されてもよい。これらの噴射剤を含有しない吸入用エアゾールを投与するために、新規なチオトロピウム塩塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムは、医薬溶液の形で調製される。
溶媒は、水それ自体又は水とエタノールの混合物であってもよい。水と比較して相対的な割合のエタノールは制限されないが、最大は、70容積パーセントまで、更に特に60容積パーセントまで、最も好ましくは30容積パーセントまでである。残りの容積は、水から構成される。好ましい溶媒は、エタノールを添加しない水である。
完成した製剤におけるチオトロピウムの量に基づいて本発明による新規なチオトロピウム塩塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの濃度は、所望される治療効果に左右される。チオトロピウムに応答する大多数の疾患に対してチオトロピウムの濃度は、0.0005〜5質量%であり、好ましくは0.001〜3質量%である。
本発明による製剤のpHは、2.0〜4.5、好ましくは2.5〜3.5、より好ましくは2.7〜3.3、特に好ましくは2.7〜3.2である。上限が3.1のpH値が最も好ましい。
pHは、薬理的に許容しうる酸の添加によって調整される。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及び/又はリン酸が含まれる。特に適切な有機酸の例としては、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、ギ酸及び/又はプロピオン酸等が挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸や硫酸である。活性物質と酸付加塩をすでに形成した酸を用いることも可能である。有機酸の中で、アスコルビン酸、フマル酸、クエン酸が好ましい。所望により、それらが酸性にする特性に加えて特に他の特性を有する酸、例えば、香味剤又は抗酸化剤として、例えば、クエン酸又はアスコルビン酸の場合、上記の酸の混合物を用いることができる。塩酸は無機酸として明白に述べられる。
【0042】
所望により、薬理的に許容しうる塩基もまた、pHを正確に滴定するために用いることができる。適切な塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。好ましいアルカリ金属イオンは、ナトリウムである。そのような塩基が用いられる場合、次に完成した医薬製剤に含有されるそれらから得られた塩が上述の酸と薬理的に適合できることを確実にするために注意しなければならない。
本発明によれば、安定剤又は錯化剤としてエデト酸(EDTA)又はその既知の塩の1つ、エデト酸ナトリウムの添加は、本製剤に不必要である。
他の実施態様は、エデト酸及び/又はその上述の塩を含有する。
好ましい実施態様においては、エデト酸ナトリウムに基づく含量は、10mg/100ml未満である。この場合、一好適範囲は5mg/100mlから10mg/100ml未満まで、他の好適範囲は0より大きく5mg/100mlまでである。
他の一実施態様においては、エデト酸ナトリウムの含量は、10〜30mg/100mlまでであり、好ましくは25mg/100mlを超えない。
好ましい実施態様においては、この添加剤は全く除外される。
エデト酸ナトリウムのために上でなされた所見は、錯化特性を有する他の匹敵する添加剤、例えば、ニトリロ三酢酸、その塩にも同様にあてはまり、それの代わりに用いることができる。
錯化剤とは、好ましくは、本発明の範囲内で錯体結合に入ることができる分子を意味する。好ましくは、これらの化合物は、カチオン、最も好ましくは金属カチオンを錯化する効果を有しなければならない。
エタノールに加えて、他の共溶媒及び/又は他の賦形剤もまた、本発明による製剤に添加することができる。
好ましい共溶媒は、ヒドロキシル基又は他の極性基を有するもの、例えば、アルコール、特にイソプロピルアルコール、グリコール、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルである。但し、溶媒又は沈殿防止剤ではない。
【0043】
これに関連して賦形剤及び添加剤という用語は、活性物質でないあらゆる薬理的に許容しうる且つ治療的に有益な物質を示すが、活性物質製剤の質的な特性を改善するために薬理的に適切な溶媒において1つ又は複数の活性物質と処方することができる。好ましくは、これらの物質は、薬理効果がなく、所望の治療と関連して、認知できる薬理効果もなく望ましくない薬理効果もない。賦形剤及び添加剤としては、例えば、界面活性剤、例えば、大豆レシチン、オレイン酸、ソルビタンエステル、例えばソルビタントリオレエート、ポリビニルピロリドン、他の安定剤、錯化剤、抗酸化剤及び/又は完成した医薬製剤の貯蔵寿命を延長する防腐剤、香味剤、ビタミン及び/又は当該技術において既知の添加剤が挙げられる。添加剤には、薬理的に許容しうる塩、例えば、塩化ナトリウムも含まれる。
好ましい賦形剤としては、pHを調整するためにすでに用いられていなければ、例えば、アスコルビン酸のような抗酸化剤、ビタミンA、ビタミンE、トコフェロール及びヒトの体内に存在する類似したビタミン又はプロビタミンが挙げられる。
防腐剤は、製剤を病原体による汚染から保護するために用いることができる。適切な防腐剤は、当該技術において既知のもの、特に、従来技術から知られている濃度での塩化ベンザルコニウム又は安息香酸又は安息香酸塩、例えば、安息香酸ナトリウムである。
好ましい製剤は、溶媒の水及び新規なチオトロピウム塩、塩化チオトロピウム又はヨウ化チオトロピウムの1つに加えて、塩化ベンザルコニウム及びエデト酸ナトリウムだけを含有する。他の好ましい実施態様においては、エデト酸ナトリウムは存在しない。
本発明による溶液は、好ましくはRespimat(登録商標)吸入器を用いて投与される。この吸入器の先行実施態様は、国際出願第97/12687号及びその中の図6に開示されている。
【0044】
B.3.1. 噴射剤を含有しない吸入用エアゾールの実施例
以下の実施例は、それらの内容に限定せずに一例として更に詳細に本発明を示すためのものである。
製剤実施例37:



製剤実施例38:

製剤実施例39:

【0045】
製剤実施例40:

製剤実施例41:

製剤実施例42:

【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】無水塩化チオトロピウムについて得られた粉末X線図である。
【図2】無水ヨウ化チオトロピウムについて得られた粉末X線図である。
【図3】本発明の吸入用粉末を含有するカプセルにおいて投与するために用いられる吸入器である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1
【化1】

(式中、X- はアニオンである。)
の新規なチオトロピウム塩を調製するための方法であって、
下記式2
【化2】

(式中、Y- は、ハライドアニオン、C1-C10アルキルスルホン酸アニオン、C1-C10アルキル硫酸アニオン、C6-C10アリールスルホン酸アニオンからなる群より選ばれるX- と異なるアニオンである。)
のチオトロピウム塩を適切な溶媒中でイオン源Kat-X (式中、Katはカチオンであり、Xは上で示した意味を有するものである。)と反応させることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
イオン源Kat-Xとして、カチオンKatがアルカリ金属又はアルカリ土類金属の系列より選ばれるか又はKatがアンモニウム基(NH4+)又はテトラアルキルアンモニウム基(N(C1-C8アルキル)4+、好ましくはN(C1-C4アルキル)4+)である化合物が用いられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶媒が、水、アルコール類、アミド類、エーテル類及びニトリル類からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
用いられる式2の出発化合物に基づく試薬Kat-Xが過剰量で用いられることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の方法。
【請求項5】
出発物質として用いられる式2の化合物が、Y- がフッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、C1-C4アルキル硫酸アニオン、又はC1-C4アルキルスルホン酸アニオン(アルキル基がフッ素により任意にモノ又はポリ置換されていてもよい)、又はフェニルスルホン酸アニオン(フェニルスルホン酸アニオンは、フェニル環がC1-C4アルキル、好ましくはメチルにより任意にモノ又はポリ置換されていてもよい。)からなる群より選ばれるX- 以外のアニオンである、化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式中、X- が、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、C1-C4アルキル硫酸アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸二水素アニオン、硝酸アニオン、マレイン酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、クエン酸アニオン、フマル酸アニオン、酒石酸アニオン、シュウ酸アニオン、スクシン酸アニオン及び安息香酸アニオン、又はC1-C4アルキルスルホン酸アニオン(アルキル基がフッ素により任意にモノ、ジ又はトリ置換基されていてもよい)、又はフェニルスルホン酸アニオン(フェニルスルホン酸アニオンは、フェニル環がC1-C4アルキルにより任意にモノ又はポリ置換されていてもよい。)からなる群より選ばれるアニオンである式1の化合物を調製するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1の化合物を調製するための出発化合物としての式2 (式中、Y- は請求項1〜6に示された意味を有するものである。)の化合物の使用。
【請求項8】
任意にその溶媒和物又は水和物の形であってもよい、式2 (式中、Y- は、請求項1〜6に示された意味を有するものである(但し、臭素アニオンを除く)。)の出発化合物。
【請求項9】
任意にその溶媒和物又は水和物の形であってもよい、Y- がメタンスルホン酸アニオン又はメチル硫酸アニオンである、請求項8記載の式2の出発化合物。
【請求項10】
任意にその溶媒和物又は水和物の形であってもよい、式1 (式中、X- は、請求項1〜6に示された意味を有するものである(但し、臭素アニオンを除く)。)の化合物。
【請求項11】
任意にその溶媒和物又は水和物の形であってもよい、X- が塩素アニオン又はヨウ素アニオンである、請求項10記載の式1の化合物。
【請求項12】
任意にその溶媒和物又は水和物の形であってもよい、結晶性塩化チオトロピウム。
【請求項13】
粉末X線図において、特に、固有値d= 6.15オングストローム; 5.58オングストローム; 4.45オングストローム; 3.93オングストロームを有することを特徴とする、請求項12記載の結晶性塩化チオトロピウム。
【請求項14】
任意にその溶媒和物又は水和物の形での、結晶性ヨウ化チオトロピウム。
【請求項15】
粉末X線図において、特に、固有値d= 6.30オングストローム; 5.19オングストローム; 4.47オングストローム; 4.11オングストローム; 3.55オングストロームを有することを特徴とする、請求項14記載の結晶性ヨウ化チオトロピウム。
【請求項16】
呼吸系疾患の治療用、特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)又は喘息の治療用の医薬組成物を調製するための請求項10〜15のいずれか1項に記載のチオトロピウム塩の使用。
【請求項17】
請求項10〜15のいずれか1項に記載のチオトロピウム塩を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
吸入に適した製剤の形であることを特徴とする、請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
吸入用粉末、噴射剤駆動定量エアゾール及び噴射剤を含有しない吸入用溶液又は懸濁液より選ばれる製剤であることを特徴とする、請求項18記載の医薬組成物。
【請求項20】
チオトロピウム塩に加えて単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、多価アルコール、シクロデキストリン類、アミノ酸類又はその塩類又はこれらの賦形剤の混合物より選ばれる1つ以上の適切な生理的に許容しうる賦形剤を含有する吸入用粉末であることを特徴とする、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項21】
賦形剤が、グルコース、フルクトース、アラビノース、ラクトース、サッカロース、マルトース、トレハロース、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、セルロール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、χ-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、塩酸アルギニン、塩化ナトリウム又は炭酸カルシウム及びそれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項20記載の医薬組成物。
【請求項22】
チオトロピウムを0.01〜2%含有することを特徴とする、請求項20又は21記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載の吸入用粉末を含有することを特徴とするカプセル。
【請求項24】
溶解又は分散された形でチオトロピウム塩を含有する噴射剤含有吸入用エアゾールであることを特徴とする、請求項19記載の医薬組成物。
【請求項25】
溶媒として水、エタノール又は水とエタノールの混合物を含有する噴射剤を含有しない吸入用溶液又は懸濁液であることを特徴とする、請求項19記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−509893(P2007−509893A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537207(P2006−537207)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012268
【国際公開番号】WO2005/042526
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】