説明

チタンを含有する潤滑油組成物

【課題】 モリブデンを含む摩擦調整剤を使用せずにすぐれた省燃費効果を示す潤滑剤組成物の提供。
【解決手段】 a)粘度指数が少なくとも約95である、潤滑粘度のオイル;b)少なくとも一つのカルシウム清浄剤;c)少なくとも一つの油溶性チタン化合物;d)少なくとも一つの摩擦調整剤;およびe)少なくとも一つの金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物を含んで成る潤滑油組成物。当組成物のNoack法で特定された揮発性は約15重量%以下であり、カルシウム清浄剤からの約0.05重量%から約0.6重量%のカルシウム、チタン化合物からの少なくとも約10ppmから約1500ppmまでのチタン金属、および金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物からの約0.1重量%以下のリンを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は潤滑油組成物に関する。より具体的には、本開示は、より優れた潤滑性能特性のためのチタン含有化合物を含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンの潤滑のために使用される潤滑油組成物には、潤滑粘度の基油、あるいはそのようなオイルの混合物、およびオイルの性能特性を向上させるために使用される添加剤が含有されている。例えば添加剤は、洗浄力を高める、エンジンの摩耗を低減する、熱や酸化に対する安定性を与える、オイルの消費を低減する、腐食を防ぐ、分散剤として作用する、また摩擦損失を低減するなどのために使用される。添加剤の中には、分散剤・粘度調整剤のように複数のメリットをもたらすものもある。他の添加剤は、潤滑油の一つの特性は改善するが、その他の特性に悪影響を与える。従って、最適な全体的性能を有する潤滑油を提供するためには、使用可能な様々な添加剤の特性を明らかにし、全ての効果を理解すること、また注意深く潤滑剤の添加剤成分の含量のバランスをとることが必要である。
【0003】
油溶性モリブデン化合物が潤滑油添加剤として有用であることが、数多くの特許や文献(例えば特許文献1乃特許文献8など)に提示されてきた。特に、モリブデン化合物、特にモリブデンジチオカーバメート化合物をオイルに加えることにより、オイルの境界摩擦特性が向上し、またこのようなモリブデン化合物を含有したオイルの摩擦係数が、有機摩擦調整剤を含有したオイルの摩擦係数よりも一般的に低いことがベンチテストにより実証されている。摩擦係数の低減により、ガソリンやディーゼルエンジンの耐摩耗性の向上や、短期的および長期的な省燃費特性(すなわち省燃費保持特性)を含む省燃費の向上がもたらされる。耐摩耗効果を提供するためには、通常、オイル中に約350ppmから2,000ppmまでのモリブデンをもたらすだけの量のモリブデン化合物が加えられる。モリブデン化合物は効果的な耐摩耗剤であり、さらに省燃費のメリットももたらすが、このようなモリブデン化合物は、従来型の金属を含んでいない(無灰)有機摩擦調整剤に比べ高価である。
【0004】
Noack法で特定された揮発性を有し、特定の粘度指数を有する基油、カルシウムベースの清浄剤、ジンクジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)耐摩耗剤、モリブデン化合物、および窒素含有摩擦調整剤などを含有する潤滑油組成物が、特許文献9に開示されている。調合された潤滑剤に350ppm未満のモリブデンをもたらすだけの量のモリブデン化合物が使用された。請求された物質は、モリブデン化合物のみを含有する組成物と比べ、省燃費の向上をもたらすものと記述されている。上記にもかかわらず、モリブデンベースの摩擦調整剤の存在なしに、潤滑剤組成物に同等のあるいはそれ以上の性能を提供する、より費用効果の高い潤滑剤組成物の必要性が残る。
【特許文献1】米国特許第4,164,473号
【特許文献2】米国特許第4,176,073号
【特許文献3】米国特許第4,176,074号
【特許文献4】米国特許第4,192,757号
【特許文献5】米国特許第4,248,720号
【特許文献6】米国特許第4,201,683号
【特許文献7】米国特許第4,289,635号
【特許文献8】米国特許第4,479,883号
【特許文献9】米国特許第6,300,291号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様に基づき、本開示の一つの例示的実施態様は、実質的にモリブデン化合物を含まない、同等あるいはそれ以上の潤滑特性を与える、より優れた潤滑油組成物を提供する。当該潤滑油組成物には、潤滑性粘度の、粘度指数(VI)が少なくとも約95のオイル;組成物中に約0.05重量%から約0.6重量%のカルシウムを提供する量のカルシウム清浄剤;組成物中に約0.1重量%(1000ppm)未満のリンを提供する量の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物;組成物中に少なくとも10ppmから約1500ppm未満のチタンを提供するために十分な量の少なくとも一つのチタン化合物が含まれる。当該組成物のNoack法によって特定された揮発性は約15%未満であり、また当該組成物は少なくとも一つの有効量の摩擦調整剤を含んでいる。
【0006】
第二の態様に基づき、本開示は内燃エンジンの省燃費および/または摩耗性を向上させる方法を示しており、この方法は、第一の態様の潤滑油組成物によって内燃エンジンを潤滑し、当該のエンジンを作動させる工程を含んで成る。
【0007】
第三の態様に基づき、本開示は、内燃エンジンの省燃費および/または摩耗性を向上させるための、第一の態様の潤滑油組成物の用途に向けられている。
【0008】
開示された実施態様のその他の、またさらなる目的、利点および特徴は、以下を参照することによって理解されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
基油あるいは基油ブレンドの粘度が少なくとも95であり、ASTM D5880の工程に基づいて250℃で1時間後のオイルの質量パーセントの蒸発損失を決定することによって測定された、潤滑油組成物の調合物のNoack法により特定された揮発性が15%未満である場合、潤滑粘度のオイルは、グループI、グループII、および/またはグループIIIのベースストック、あるいは前述のベースストックの基油ブレンドから成る群から選択された少なくとも一つのオイルであり得る。加えて、潤滑粘度のオイルは、一つ以上のグループIVまたはグループVのベースストック、あるいはそれらの組み合わせ、あるいは一つ以上のグループIVまたはグループVのベースストックと一つ以上のグループI、グループIIおよび/またはグループIIIのベースストックとの組み合わせを含有した基油の混合物である。その他の基油には、ガス・ツー・リキッドプロセスから得られた基油を含んで成る少なくとも一つの部分が含まれる。
【0010】
省燃費の保持に最も好適な基油は:
(a)粘度指数が少くとも110となるような、グループIIIのベースストックとグループIまたはグループIIのベースストックとの基油ブレンド;または
(b)グループIII、IVまたはVのベースストック、あるいは粘度指数が約120から約140の間となるような、グループIII、IVまたはVのベースストックの一つ以上の基油ブレンド、である。
【0011】
本開示のベースストックおよび基油の定義は、米国石油協会(API)出版物「エンジンオイルライセンス認証システム(Engine Oil Licensing and
Certification System)」、工業サービス部門(Industry Services Department)、1996年12月第14版、および1998年12月追加版1に見られるものと同様である。当該の出版物ではベースストックは以下のように分類されている:
a)表1に特定された試験方法によって得られた飽和度が90パーセント未満および/または硫黄含有量が0.03パーセント以上で、粘度指数が80以上120未満である、グ
ループIのベースストック
b)表1に特定された試験方法によって得られた飽和度が90パーセント以上、硫黄含有量が0.03パーセント以下で、粘度指数が80以上120未満である、グループIIのベースストック
c)表1に特定された試験方法によよって得られた飽和度が90パーセント以上、硫黄含有量が0.03パーセント以下で、粘度指数が120以上である、グループIIIのベースストック
d)ポリアルファオレフィン(PAO)である、グループIVのベースストック
e)グループI、II、III、またはIVのいずれにも含まれていないその他すべてのベースストックを含む、グループVのベースストック
【表1】

【0012】
本明細書に開示された潤滑油組成物に対し、潤滑油組成物中で摩擦調整および/または極圧、および/または抗酸化、および/または耐摩耗性を有する、炭化水素に可溶性の任意の好適なチタン化合物が使用される。「炭化水素に可溶性」、「油溶性」、または「分散性」などの用語は、これらの化合物が炭化水素化合物またはオイル中にあらゆる比率で可溶性である、溶ける、混和性がある、あるいは懸濁が可能であるという意味を表すものではない。しかしながらこれらは、例えばオイルが使用される環境下において、意図された効果を及ぼすために十分な程度オイル中に可溶または安定的に分散可能であることを意味する。さらに、他の添加剤を追加的に混入することにより、必要に応じてより高いレベルの特定の添加剤の混入が可能になる。
【0013】
「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に結合しており、また主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には、以下のものがある:1 炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)置換基;脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基;芳香族、脂肪族、および脂環式基で置換された芳香核など;また環が配位子の別の部分によって完成されている(即ち、任意の二つの置換基が一緒になって脂環基を形成している)環状置換基;
2 置換炭化水素置換基、すなわち本発明の記述に関わる状況で、置換基の主にヒドロカルビルの特性を変化させないような、非炭化水素基を含んだ置換基。好適な置換基は当技術分野に精通した技術者には周知のものである(例えばハロ、特にクロロおよびフルオロ、アミノ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシなど);
3 ヘテロ置換基、すなわち、主に炭化水素の特性を有しながら、本発明の記述に関わる状況で、そうでなければ炭素原子でできているはずの環や鎖中に炭素以外の原子を含んでいるような置換基。
【0014】
重要なことに、配位子の有機基は、オイルまたは炭化水素液中における可溶性または分散性を化合物にもたらすのに、十分な数の炭素原子を有している。例えば、各基に含まれる炭素原子の数は通常約1から約100、望ましくは約1から約30、またより望ましくは約4から約20の間である。
【0015】
本明細書の、例えば摩擦調整剤、極圧添加剤、あるいは抗酸化剤としての使用に適した炭化水素に可溶性のチタン化合物は、チタンアルコキシドと約Cから約C25のカルボン酸との反応生成物から得られる。当反応生成物は、以下の化学式によって表され:
【化1】

式中、nは2、3、および4の中から選択された整数であり、またRは約5つから約24の炭素原子を含んだヒドロカルビル基である、あるいは以下の化学式によって表され:
【化2】

式中、R、R、R、およびRはそれぞれ同一あるいは異なったもので、約5つから約25の炭素原子を含んだヒドロカルビル基の中から選択される。前述の化学式の化合物は、実質的にリンおよび硫黄を含んでいない。
【0016】
ある実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物を含んで成る潤滑剤あるいは調合潤滑剤パッケージの硫黄含有量が0.7重量%以下、またリンの含有量が約0.12重量%以下となるように、この炭化水素に可溶性のチタン化合物は、実質的にあるいは原則的に硫黄およびリン原子を欠いているか、またはこれらを含まない。
【0017】
別の実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物は実質的に活性硫黄を含んでいない。「活性」硫黄とは完全に酸化されていない硫黄のことである。活性硫黄はさらに酸化され、使用されるとオイル中でより酸性となる。
【0018】
また別の実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物は実質的にすべての硫黄を含んでいない。さらに別の実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物は実質的にすべてのリンを含んでいない。また別の実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物は実質的にすべての硫黄およびリンを含んでいない。例えば、その中にチタン化合物が溶解している基油には、ある実施態様における約0.5重量%、また別の実施例における約0.03重量%以下のように、比較的少量の硫黄が含まれる(例えばグループIIの基油)。またさらに別の実施態様では、硫黄および/またはリンの基油中の含有量は、モーターオイルの硫黄および/またはリンの、所定期間有効な適切な仕様を満たすだけの量に限られている。
【0019】
チタン/カルボン酸生成物の例には、本質的にカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、その他から成る群から選択された酸とのチタン反応生成物が含まれるが、これらに
限定はされない。このようなチタン/カルボン酸生成物を作る方法は、例えばその開示が本明細書に引用により組み込まれている、米国特許第5,260,466号に記されている。
【0020】
以下の例は、実施態様の例示を目的としたものであり、実施態様をいかようにも限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0021】
例1
ネオデカン酸チタンの合成
ネオデカン酸(約600グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素ガスを泡立てた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約245グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応によるオーバーヘッドと凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の約100℃での動粘度が約14.3cSt、またチタン含有量が約6.4重量パーセントであることが示された。
【0022】
例2
オレイン酸チタンの合成
オレイン酸(約489グラム)を、コンデンサー、ディーンスタークトラップ、温度計、熱電対、およびガスの注入口を備えた反応容器に入れた。酸の中に窒素バブルを入れた。激しくかくはんしながら、チタンイソプロポキシド(約122.7グラム)をゆっくりと反応容器に加えた。この反応物を約140℃まで加熱し、1時間かくはんした。反応によるオーバーヘッドと凝縮物をトラップに収集した。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまでかくはんした。生成物の分析により、当生成物の100℃での動粘度が約7.0cSt、またチタン含有量が約3.8重量パーセントであることが示された。
【0023】
本明細書に記載の実施態様の炭化水素に可溶性のチタン化合物は、潤滑剤組成物中に有利に組み込まれている。従ってこの炭化水素に可溶性のチタン化合物を、潤滑油組成物に直接加えることができる。しかしながら一つの実施態様では、炭化水素に可溶性のチタン化合物は、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化(例えばC10−C13のアルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような、実質的に不活性で通常は液体である有機希釈剤によって希釈され、金属添加剤濃縮物を形成する。チタン添加剤濃縮物には通常、約0重量%から約99重量%の希釈油が含有される。
【0024】
開示された実施態様の潤滑剤組成物には、少なくとも10ppmのチタンを組成物に提供するだけの量のチタン化合物が含有される。チタン化合物から得られる少なくとも10ppmのチタンは、窒素含有摩擦調整剤;有機ポリスルフィド摩擦調整剤;アミンを含まない摩擦調整剤;および有機・無灰かつ窒素を含まない摩擦調整剤の中から選択される第二の摩擦調整剤との組み合わせにより、省燃費を与える効果があることが見出された。
【0025】
チタン化合物からのチタンが、潤滑剤組成物の総重量に基づき、例えば10ppmから1000ppmなどのように、約10ppmから約1500ppm、さらに望ましくは約50ppmから約500ppm、またさらに望ましくは約75ppmから約250ppm存在することが望ましい。このようなチタン化合物はまた、潤滑油組成物に耐摩耗性を与えるため、これを使用することにより使用される金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート耐摩耗剤(例えばZDDP)の量を減少させることができる。業界の動向は、オイル中
のリンの含有量を250ppmから750ppm、あるいは250ppmから500ppmというように1000ppm以下とするため、潤滑油に加えるZDDPの量を減少させる方向に向かっている。このようなリン含有量の低い潤滑油組成物に十分な耐摩耗性を提供するためには、少なくとも50ppm質量のチタンを与える量のチタン化合物が存在しなくてはならない。チタンおよび/または亜鉛の量は、ASTM D5185に記載の方法により、誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトロスコピーを使用して決定される。
【0026】
同様に、潤滑剤組成物中チタン化合物の使用により、潤滑剤組成物中の抗酸化剤および極圧添加剤の量の減少が促進される。
【0027】
摩擦調整剤
本明細書に記載の潤滑油組成物中には、少なくとも一つの油溶性摩擦調整剤が第二の摩擦調整剤として含まれていなくてはならない。第二の摩擦調整剤は窒素を含有した摩擦調整剤、窒素を含まない摩擦調整剤、および/またはアミンを含まない摩擦調整剤の中から選択される。一般的に、潤滑油組成物の約0.02重量%から2.0重量%の量の第二の摩擦調整剤が使用される。望ましくは、約0.05重量%から1.0重量%、より望ましくは0.1重量%から0.5重量%の第二の摩擦調整剤が使用される。
【0028】
ここで使用し得る窒素を含有したこのような摩擦調整剤の例には、イミダゾリン、アミド、アミン、コハク酸イミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第4級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアナジン、アルカノールアミドなどが含まれるが、これらに限定はされない。
【0029】
このような摩擦調整剤には、直鎖、分岐鎖、または芳香族のヒドロカルビル基、あるいはそれらの混合物の中から選択されたヒドロカルビル基が含有されており、またこれらは飽和であることも不飽和であることもある。ヒドロカルビル基は主に炭素と水素から成るが、硫黄や酸素のような一つ以上のヘテロ原子が含有されることもある。好適なヒドロカルビル基は12から25の炭素原子を含み、飽和であることも不飽和であることもある。直鎖のヒドロカルビル基はさらに好適である。
【0030】
例示的な摩擦調整剤に、ポリアミンのアミドが含まれる。このような化合物には、直鎖の、飽和あるいは不飽和のヒドロカルビル基、またはそれらの混合物が含有され、約12から約25未満の炭素原子が含まれる。
【0031】
その他の例示的な摩擦調整剤にはアルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが含まれ、窒素1モルにつき約2モルのアルキレンオキシドを含有したアルコキシル化アミンが最も好適である。このような化合物には、直鎖の、飽和あるいは不飽和のヒドロカルビル基、またはそれらの混合物が含有される。これらの化合物には約12から約25未満の炭素原子が含まれ、ヒドロカルビル鎖中に一つ以上のヘテロ原子が含まれることもある。エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンは、特に好適な窒素含有摩擦調整剤である。アミンおよびアミドは、そのままで使用されることも、あるいは酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸、ホウ酸、またはホウ酸モノアルキル、ホウ酸ジアルキル、ホウ酸トリアルキルのようなホウ素化合物との付加化合物あるいは反応生成物の形態で使用されることもある。
【0032】
摩擦調整剤として使用される無灰有機ポリスルフィド化合物には、オイル、脂肪、またはポリオレフィンの硫化物のような、以下の化学式で表される有機化合物が含まれ、この分子構造内には隣接・結合した二つ以上の硫黄原子を有する硫黄原子団が存在する。
【化3】

【0033】
上記の式中、RおよびRは独立して、直鎖、分岐鎖、脂環式単位および芳香族単位があらゆる組み合わせで選択的に含まれている、直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表す。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基が望ましい。中でも、アルキル基、アリール基,アルキルアリール基、ベンジル基、およびアルキルベンジル基が特に望ましい。
【0034】
およびRは独立して、直鎖、分岐鎖、脂環式単位および芳香族単位があらゆる組み合わせで選択的に含まれており、二つの結合部位を有する直鎖、分岐鎖、脂環式、あるいは芳香族の炭化水素基を表す。不飽和結合が含まれることもあるが、飽和炭化水素基が望ましい。中でもアルキレン基が特に望ましい。
【0035】
およびRは独立して直鎖あるいは分岐鎖の炭化水素基を表す。記号「x」および「y」は独立して2以上の整数を表す。
【0036】
具体的には、例えば硫化マッコウクジラ油、硫化ピネン油、硫化大豆油、硫化ポリオレフィン、ジアルキルジスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ジ−t−ブチルジスルフィド、ポリオレフィンポリスルフィド、ビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールのようなチアジアゾール系の化合物、および硫化フェノールなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、ジアルキルポリスルフィド、ジベンジルジスルフィド、およびチアジアゾール系の化合物が望ましい。特に望ましいのは、ビス−アルキルポリスルファニルチアジアゾールである。
【0037】
潤滑油添加剤として、ポリスルフィド結合を有するカルシウムフェネートのような金属含有化合物が使用される。しかしながら、この化合物は摩擦係数が大きいため、このような化合物の使用は必ずしも好適ではない。反対に、上記の有機ポリスルフィド化合物は金属を含有しない無灰化合物であり、また他の摩擦調整剤と組合わせて使用された際に長時間低摩擦係数を維持する、優れた性能を示す。
【0038】
硫黄(S)として計算された場合、潤滑剤組成物の総量に対して0.01重量%から0.4重量%、一般的には0.1−0.3重量%、また望ましくは0.2−0.3重量%の上記の無灰有機ポリスルフィド化合物(以下簡単に「ポリスルフィド化合物」と呼ぶ)が添加される。添加量が0.01重量%未満の場合には意図した効果を得ることが困難であるが、0.4重量%以上になると腐食摩耗が増加する危険がある。
【0039】
本明細書に開示された潤滑油組成物内で使用される有機・無灰(金属を含んでいない)の、窒素を含有しない摩擦調整剤が一般的に知られている。これらの摩擦調整剤にはカルボン酸および無水物とアルカノールあるいはグリコールを反応させて形成されたエステルが含まれ、ここで特に好適なカルボン酸は脂肪酸である。その他の有用な摩擦調整剤には通常、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル基またはヒドロキシル基が含まれる。カルボン酸および無水物とアルカノールのエステルについては、米国特許第4,702,850号に記載されている。チタン化合物と組合わせて使用するのに特に望ましい摩擦調整剤は、モノオレイン酸グリセロール(GMO)のようなエステルである。
【0040】
上述の第二の摩擦調整剤は、チタン化合物と組み合わせて組成物をシーケンスVIB(Sequence VIB)省燃費試験に確実にパスさせる効果のある量で、本明細書に開示の潤滑油組成物に含まれる。例えば第二の摩擦調整剤は、ASTMシーケンスVIB(Sequence VIB)省燃費試験における96時間(第II相性能)において、SAE 5W−20潤滑剤では少なくとも1.7%、5W−30潤滑剤では1.1%、また10W−30潤滑剤では0.6%と測定される、保持された省燃費の改善を得るのに十分な量で、チタン含有潤滑油組成物に添加される。一般的に第二の摩擦調整剤は、希望の効果をもたらすため、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.25重量%から約2.0重量%(AI)の量で添加される。
【0041】
金属含有清浄剤
金属含有清浄剤あるいは灰生成清浄剤は、堆積物を減少させるあるいは除去する清浄剤、および酸の中和剤あるいは防錆剤の両方の機能を有し、それによって摩耗や腐食を低減してエンジンの寿命を伸ばす。清浄剤は通常極性の頭部と疎水性の長い尾部を含んで成り、この極性の頭部は有機酸化合物の金属塩を含んで成る。これらの塩は、実質的に化学量論的な量の金属を含有し、通例は正塩あるいは中性塩と称され、また一般的にASTM D−2896によって0から80と測定されるような全アルカリ価(TBN)を有する。超過量の酸化物あるいは水酸化物のような金属化合物と二酸化炭素のような酸性ガスとを反応させることにより、多量の金属塩基を含むことが可能である。結果として得られる過塩基性清浄剤は、金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和された清浄剤を含んで成る。このような過塩基性清浄剤のTBNは150以上、一般的には250から450以上である。
【0042】
既知の清浄剤には、油溶性、中性、また過塩基性のスルホン酸塩、フェネート、硫化フェネート、チオホスホン酸塩、サリチル酸塩、およびナフテン酸塩、また他に金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムなど、特にアルカリまたはアルカリ土類金属の油溶性カルボン酸塩が含まれる。最も一般的に使用される金属は、どちらも潤滑剤中で使用される清浄剤の中に存在しているカルシウムとマグネシウ
ム、またカルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムの混合物である。特に適切な金属清浄剤は、TBNが約20から約450である中性および過塩基性のスルホン酸カルシウム、そして中性および過塩基性カルシウムフェネートとTBNが約50から約450である硫化フェネートである。
【0043】
開示された実施態様において、約0.05重量%から約0.6重量%のカルシウム、ナトリウム、またはマグネシウムを組成物中にもたらす量の、一つ以上のカルシウムベースの清浄剤が使用される。カルシウム、ナトリウム、またはマグネシウムの量は、ASTM
D5185に記載の方法を用いて、誘導結合プラズマ(ICP)発光スペクトロスコピーによって決定される。一般に、金属ベースの清浄剤は過塩基性であり、過塩基性清浄剤の全アルカリ価は約150から約450である。より望ましくは、金属ベースの清浄剤は過塩基性スルホン酸カルシウム清浄剤である。開示された実施態様の組成物にはさらに、中性または過塩基性のいずれかのマグネシウムベースの清浄剤が含まれるが、一般に本明細書に開示の潤滑油組成物にはマグネシウムは含まれない。
【0044】
耐摩耗剤
本発明の潤滑油組成物に添加される金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート耐摩耗剤は、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含んで成り、ここで金属はアルカリまたはアルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マグネシウム、ニッケル、銅、チタン、あるいは亜鉛である。亜鉛塩が潤滑油中で最も一般的に使用されている。
【0045】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、既知の方法に基づいてジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を最初に形成することによって、また通常は一つ以上のアルコールまたはフェノールとPとを反応させ、次に形成されたDDPAを金属化合物で中和することによって生成される。例えばジチオリン酸は第1級アルコールと第2級アルコールの混合物を反応させることにより生成される。あるいは、複数のジチオリン酸が生成されるが、ここで一つの[ジチオリン酸の]ヒドロカルビル基の特性は完全に第2級のものであり、また別の[ジチオリン酸の]ヒドロカルビル基の特性は完全に第1級のものである。金属塩を生成するためには、任意の塩基性あるいは中性の金属化合物が使用されるが、酸化物、水酸化物、および炭酸塩が最も一般的に使用される。市販の添加剤には、中和反応における過剰量の塩基性金属化合物の使用のため、しばしば過剰量の金属が含まれる。
【0046】
一般的に使用されるジンクジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性の塩であり、これらは以下の化学式によって表される:
【化4】

式中RとRは、1つから18、一般的には2つから12の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール、および脂環式ラジカルのようなラジカルを含む、同一あるいは異なったヒドロカルビルラジカルである。RおよびR基として特に望ましいのは、2つから8つの炭素原子のアルキル基である。従ってラジカルは、例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、アミル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2−エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチ
ルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルなどである。油溶性を得るため、ジチオリン酸中の炭素原子の総数(すなわちRおよびR)は通常約5以上である。ジンクジヒドロカルビルジチオホスフェートは従って、ジンクジアルキルジチオホスフェートを含むことができる。
【0047】
ZDDPによって潤滑油組成物中に添加されるリンの量を0.1重量%(1000ppm)未満に制限するため、望ましくは、潤滑油組成物の総重量に基づいて約1.1重量%から1.3重量%未満のZDDPが潤滑油組成物に添加されるべきである。
【0048】
以下に挙げるその他の添加剤もまた本明細書に開示の潤滑油組成物中に存在することができる。
【0049】
無灰分散剤
無灰分散剤は、分散される粒子と結合することのできる官能基を有する、油溶性・ポリマー性の炭化水素骨格を含んで成る。一般的に分散剤は、しばしば架橋基によってポリマー骨格に結合している、アミン、アルコール、アミド、あるいはエステルの極性部分を含んで成る。無灰分散剤は例えば、長鎖炭化水素置換のモノカルボン酸およびジカルボン酸またはそれらの無水物の油溶性の塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド、およびオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシレート誘導体;そこに直接結合しているポリアミンを有した長鎖脂肪族炭化水素;および長鎖[炭化水素]置換のフェノールをホルムアルデヒドとポリアルキレンポリアミンで縮合することによって形成されたマンニッヒ縮合生成物の中から選択される。
【0050】
粘度調整剤
粘度調整剤(VM)は、潤滑油に高温および低温での操作性を与えるために機能する。使用されるVMは、単一の機能を有することもあるし、多機能性である場合もある。
【0051】
分散剤としても機能する多機能性の粘度調整剤もまた知られている。好適な粘度調整剤には、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンと高級アルファオレフィンのコポリマー、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレートコポリマー、不飽和ジカルボン酸とビニル化合物のコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルのインターポリマー、およびスチレン/イソプレン、スチレン/ブタジエン、およびイソプレン/ブタジエンの部分的に水素化されたコポリマー、そしてブタジエンとイソプレンおよびイソプレン/ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーなどがある。
【0052】
酸化防止剤
酸化防止剤あるいは抗酸化剤は、ベースストックが使用中に劣化する傾向を低減させる。劣化は金属表面状のスラッジやワニス様の堆積物のような酸化生成物、および粘度の上昇によって表面化する。このような酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化カルシウムノニルフェノール、無灰・油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン・硫化あるいは硫化炭化水素、リン[酸]エステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載の油溶性の銅化合物等が含まれる。
【0053】
防錆剤
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそれらのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、およびアニオン性スルホン酸アルキルなどから成る群から選択された防錆剤が使用される。
【0054】
腐食防止剤
銅や鉛を含んだ腐蝕防止剤が使用されることもあるが、一般的には本発明の調合物に必要なものではない。一般的にこのような化合物は、5つから50の炭素原子を含むチアジアゾールポリスルフィド、それらの誘導体、およびそれらのポリマーである。米国特許第2,719,125号、2,719,126号、および3,087,932号に記載の1,3,4 チアジアゾールの誘導体が典型的である。その他の同様の物質が米国特許第3,821,236号、3,904,537号、4,097,387号、4,107,059号、4,136,043号、4,188,299号、および4,193,882号に記載されている。他の添加剤に、英国特許明細書第1,560,830号に記載されているような、チアジアゾールのチオスルフェンアミドおよびポリチオスルフェンアミドなどがある。ベンゾトリアゾールの誘導体もまたこの種の添加剤の一つである。これらの化合物が潤滑剤組成物に含まれる場合、これらは一般的に活性成分が0.2重量%を上回らないような量で存在する。
【0055】
抗乳化剤
少量の抗乳化成分が使用される。好適な抗乳化成分はEP第330,522号に記載されている。抗乳化成分は、ビス−エポキシドと多価アルコールとの反応によって得られた付加化合物と、アルキレンオキシドとを反応させることによって作られる。抗乳化成分は、活性成分が0.1質量%を上回らないような量で使用される。活性成分が0.001質量%から0.05質量%となるような処理率が適切である。
【0056】
流動点降下剤
別名潤滑油の流動性向上剤として知られる流動点降下剤は、流体が流動するあるいは注ぐことができる最低温度を低下させる。このような添加剤は良く知られている。流体の低温流動性を改善するこれらの添加物の代表に、CからC18のフマル酸ジアルキル/酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキルメタクリレート等がある。
【0057】
消泡剤
例えばシリコーン油またはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサン系の消泡剤を含む多くの化合物により、発泡が制御される。
【0058】
上述の添加剤の中には複数の効果を提供するものもあり、従って例えば、単一の添加剤が分散剤・酸化防止剤として働くこともある。これは周知のことであり、さらなる詳述は必要とされない。
【0059】
それぞれの添加剤は、任意の適切な方法でベースストック中に組み込まれる。従って各々の成分を、ベースストックまたは基油ブレンドに希望の濃度レベルで分散あるいは溶解することによって、ベースストックまたは基油ブレンド中に直接添加することができる。これらは、大気温度、あるいは昇温下で混和される。
【0060】
望ましくは、粘度調整剤および流動点降下剤以外の全ての添加剤は、後にベースストック中に混和され最終的な潤滑剤を作る添加剤パッケージとして、本明細書に記載の濃縮物あるいは添加剤パッケージ中に混和される。この濃縮物は一般に、予め量の決まっているベースとなる潤滑剤と濃縮物が組み合わされた際に、最終的な調合物中での希望の濃度を提供するために適切な量の添加剤を含むように調合される。
【0061】
濃縮物は、望ましくは米国特許第4,938,880号に記載された方法に従って作られる。当該の特許には、最低約100℃の温度で予め混和された無灰分散剤と金属清浄剤のプレミックスの作り方が記載されている。その後当該プレミックスは少なくとも85℃まで冷却され、追加的な成分が添加される。
【0062】
最終的な潤滑油調合物は、約2質量%から約20質量%、一般的には約4質量%から約18質量%、また望ましくは約5質量%から約17質量%の濃縮物あるいは添加剤パッケージを使用し、残りの部分はベースストックである。
【0063】
例3
開示された実施態様に基づいて作られた潤滑剤組成物の摩耗低減効果を評価するために、シーケンスIVA(Sequence IVA)試験法が使用された。シーケンスIVA(Sequence IVA)試験は、モーターオイルの、カムシャフトの摩耗を防止する能力を測定する。日産の、1シリンダーあたり3つのバルブを有する、4シリンダー、2.3Lのエンジンを使用し、検討中のクランクケースオイルを、非常に厳密な運転状態の制御下で、800rpmのアイドリング期から1500rpmに短期間上げ、また戻すというサイクルを100回繰り返す、100時間のエンジンの連続運転を行った。試験の最期にカムシャフトを取り外し、摩耗の測定を行った。12のカムシャフトローブをそれぞれにつき7箇所測定し、この試験のローブの平均摩耗を計算した。シーケンスIVA(Sequence IVA)試験法の合格リミットには、API SLおよびILSAC GF−3の要件は最高120mm、API SMおよびILSAC GF−4の要件は最高90mmのカムの平均摩耗が含まれる。
【0064】
基油は、粘度5W−30の、グループIおよびグループIIのオイルの混合物である。シーケンスIVA(Sequence IVA)試験の対照運転(運転1)は、摩擦調整剤としてモノオレイン酸グリセロールを含有している、完全に調合された潤滑剤を用いて運転された。第2の運転(運転2)は、完全に調合された潤滑剤中での組み合わせの摩擦調節剤の効果を示すため、チタン化合物とモノオレイン酸グリセロールを含有した潤滑剤組成物を用いて行われた。
【表2】

【0065】
非チタン含有潤滑油組成物(運転1)から得られた結果との比較からも分かるように、運転2で得られたシーケンスIVA(Sequence IVA)試験の結果によって、Ti添加剤の摩耗制御の効能がはっきりと示された。耐摩耗剤としてのTi添加剤の適用性は、この例で示される組成物のみに限定されるものではない。従って、グループIのオイル中にチタン添加剤を含有している完全に調合された潤滑剤組成物には、グループII、グループII+、グループIII、およびグループIVの基油と、それらの混合物が含まれ得る。
【0066】
開示された実施態様は、モリブデン添加剤を使用せずに、エンジンの摩耗制御の著しい向上を可能にするものと考えられている。このようなモリブデンを含まない潤滑剤組成物は、ILSAC GF−4および/またはAPI SM仕様を満たす、あるいは超えるような、乗用車のモーターオイルを提供する。また、本明細書に記載の組成物は、シーケンスIVA(Sequence IVA)あるいはその他の磨耗試験に関する、いくつかのOEMの内部仕様に必要とされるより厳しい条件を満たす効果がある。
【0067】
本明細書の全体にわたる数々の箇所で多くの米国特許および公報が引用されている。こ
のような引用文献はすべて、当明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0068】
上述の実施態様は、その実施において、かなり変更される可能性がある。従って当実施態様は、上記に説明された特定の例証に限定されることを意図したものではない。むしろ上述の実施態様は、法律上利用可能な均等物も含んで、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0069】
当特許権所有者は、開示されたいかなる実施態様をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全に調合された潤滑油組成物であって:
a)粘度指数が少なくとも95である、潤滑粘度のオイル;
b)少なくとも一つのカルシウム清浄剤;
c)1モルのチタンアルコキシドと4モルのネオデカン酸を反応させた反応生成物を含んでなる、少なくとも一つの油溶性チタン化合物;
d)少なくとも一つの摩擦調整剤;および
e)少なくとも一つの亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物;を含んでなりここで当該組成物はモリブデンを含んでおらず、Noack法で特定された揮発性は15重量%以下であり、カルシウム清浄剤からのカルシウム0.05重量%から0.6重量%、チタン化合物からのチタン10ppmから1500ppm、および亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物からのリン0.1重量%以下を含有している、潤滑油組成物。
【請求項2】
上記チタン化合物からのチタンが50ppmから500ppmの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該チタン化合物がチタンイソプロポキシドとネオデカン酸との反応生成物を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
当該チタン化合物が硫黄およびリン原子を欠いた化合物を含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
当該少なくとも一つの摩擦調整剤がモノオレイン酸グリセロールを含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物が亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物からのリン0.025重量%から0.075重量%を含んでいる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
(1)請求項1に記載の潤滑油組成物を当該エンジンに添加すること;および(2)当該エンジンを作動させることを含んで成る、内燃エンジンの省燃費および省燃費保持特性を向上させる方法。
【請求項8】
(1)請求項1に記載の潤滑油組成物を添加すること;および(2)当該エンジンを作動させることの工程を含んで成る、内燃エンジンの耐摩耗保護性を向上させる方法。
【請求項9】
当該カルボン酸が、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、及びネオデカン酸から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−42801(P2011−42801A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233829(P2010−233829)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2006−332305(P2006−332305)の分割
【原出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】