説明

チップコンベアにおける濾過装置

【課題】シール室にチップが侵入するのを抑制して、濾過性能を向上でき、シール機構のシール性及び耐久性を向上できるチップコンベアにおける濾過装置を提供する。
【解決手段】ホルダ34の開口部34aから供給されたクーラントの廃液を濾過するための濾過用ディスクプレート49を所定位置において回転可能に支持する。濾過用ディスクプレート49の外周縁に対し、シール機構61を配設し、開口部34aから廃液が濾過用ディスクプレート49の下側を迂回して濾過液貯溜槽側に移動しないようにする。シール機構61のシール室68に濾過液を供給するためのノズル70を前記ホルダ34に取り付ける。ホルダ34と濾過用ディスクプレート49の間の濾過室Eからラビリンス通路69を介して、シール室68に侵入しようとするチップをノズル70からシール室68内に供給されるクーラントの濾過液によって抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械から排出される切削屑等のチップを搬送するためのチップコンベアにおいて、チップを含んだクーラント(切削液)の廃液を濾過する濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の濾過装置として特許文献1に開示されたものがある。この濾過装置は、設置スペースを低減することができるとともに、濾過膜に付着したチップを容易に除去して、その保守点検作業を少なくすることができるように構成されている。この濾過装置は、工作機械からクーラントの廃液とともに排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の回転濾過体と、前記回転濾過体を濾過位置と付着チップ分離位置との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、前記付着チップ分離位置に切り換えられた回転濾過体に付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップの分離・還元手段とを備えている。又、この濾過装置には、前記回転濾過体の外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記回転濾過体の外周縁を下方に迂回して濾過液貯溜槽側に排出されるのを阻止するシール室を備えたシール機構が設けられている。
【特許文献1】特開2001−252848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の濾過装置には、シール室にチップが侵入して堆積し、このチップがシール機構のシールリングのシール面に侵入してシール性を低下させたり、シールリングを損傷させたり、あるいはチップが濾過液貯溜槽に侵入して濾過性能を低下させたりするという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、シール室にチップが侵入するのを抑制して、濾過性能を向上することができるとともに、シール機構のシール性及び耐久性を向上することができるチップコンベアにおける濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、工作機械からクーラントの廃液とともに排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の回転濾過体と、前記回転濾過体を濾過位置と付着チップ分離位置との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、前記付着チップ分離位置に切り換えられた回転濾過体に付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップの分離・還元手段と、前記回転濾過体の外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記回転濾過体の外周縁を迂回してクーラントの濾過液貯溜槽に排出されるのを阻止するシール機構とを備えたチップコンベアにおいて、前記シール機構に対し、該シール機構を構成するシール室にクーラントの濾過液を供給するための濾過液供給手段を設けたチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記シール機構には、前記シール室に供給された濾過液を、該シール室から廃液に含まれるチップの濾過室へ徐々に漏出する濾過液漏出手段が設けられているチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記シール室を構成する固定部材の内側面と前記回転濾過体の外周縁寄り側面との間に設けられたラビリンス通路であるチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記シール室を構成する固定部材に取り付けたシールリングのリップを前記回転濾過体の外周縁寄り側面に接触させたものであるチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記回転濾過体に取り付けたシールリングのリップを前記シール室を構成する固定部材の内側面に接触させたものであるチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の外周縁寄り両側面のうち前記濾過液貯溜槽側の側面に接触するシールリップを備えたシールリングであって、前記シールリップは濾過液供給手段により供給された濾過液の圧力により前記回転濾過体の外周寄り側面に押圧されるように形成されているチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の外周縁に取り付けられたインナーレーサと、前記シール室を構成する固定部材に取り付けられたアウターレーサとの間に介在されたグランドパッキンであるチップコンベアにおけることを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7において、前記インナーレーサの外周面及び/又はアウターレーサの内周面にはテーパ周面が形成され、前記回転濾過体は、付勢機構によって前記両レーサの間のグランドパッキンを挟着する分力を生成する方向に付勢されるように構成されているチップコンベアにおけることを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明によれば、シール機構のシール室にクーラントの濾過液を供給するための濾過液供給手段を設けたので、シール室にチップが侵入するのを抑制することができ、濾過性能を向上することができるとともに、シール機構のシール性及び耐久性を向上することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、濾過液漏出手段によって前記シール室内に供給された濾過液が濾過室側に徐々に漏出するため、シール室内への濾過液の供給量を少なくすることができ、消費動力を低減することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、前記シール機構のシール部材がシールリップを備えたシールリングによって形成され、前記シールリップは濾過液供給手段により供給された濾過液の圧力により前記回転濾過体の側面に押圧されるように形成されている。このため、シール部材のシール性能を向上することができる。
【0016】
請求項7記載の発明は、シール機構のシール部材として、ブランドパッキンを用いたので、シール性能を向上することができる。
請求項8記載の発明は、付勢機構によって、グランドパッキンがインナーレーサとアウターレーサとの間に挟着され、シール性能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を工作機械に使用されるチップコンベアの濾過装置に具体化した一実施形態を図1〜図8に基づいて説明する。
最初に、図7及び図8に基づいてチップコンベアの概要を説明すると、工作機械11の付近には後述するクーラントの廃液の濾過装置によって濾過されたクーラントの濾過液を貯溜する濾過液貯溜槽12が設けられている。この濾過液貯溜槽12と工作機械11の間にはポンプ13と配管14が設けられ、クーラントの濾過液を工作機械11の切削機構部Kに供給するようになっている。工作機械11には配管15及び樋16が設けられ、切削機構部Kから廃棄されたチップをクーラントの廃液とともに、チップコンベア17に供給するようになっている。このチップコンベア17にはクーラントを濾過して前記濾過液貯溜槽12に還元するための濾過装置18が二箇所に設けられている。
【0018】
そこで、前記チップコンベア17及び濾過装置18の構成を順次説明する。
チップコンベア17を構成するトラフ21は、下部において水平に延びる受取部22と、その受取部22の下流端から上方へ傾斜するように延びる上昇部23と、その上昇部23の上端から下方へ延びる排出部24とにより構成されている。前記トラフ21の受取部22及び排出部24内にはスプロケット25,26が回転可能に支持され、それらのスプロケット25,26間には無端状の搬送体27が掛装されている。この搬送体27は、図1に示すように前記トラフ21の左右両側壁の内側に装着した上部案内レール28及び下部案内レール29に沿って案内移動される。前記搬送体27は多数のフラッパ30を連結軸31により屈曲可能に連結して構成されている。そして、前記各連結軸31の両端部に嵌合した案内ローラ32を前記上部案内レール28及び下部案内レール29に転動接触させている。さらに、図示しないモータの駆動により搬送体27は受取部22、上昇部23、排出部24に沿って図7に示す反時計回り方向へ周回するようになっている。
【0019】
前記受取部22の基端部、つまりチップ受取位置αと対応して前記樋16が配置されている。前記受取部22は樋16からチップとともに供給されたクーラントの廃液を貯溜する廃液貯溜槽22aを備えている。
【0020】
前記フラッパ30には搬送スクレーパ30aが設けられており、搬送体27の上面に堆積したチップをチップ受取位置αから、受取部22の下流端側のチップ回収位置βへ搬送するようになっている。このチップ回収位置βは浮遊チップ回収位置としての機能を有している。
【0021】
次に、前記受取部22の一側壁部に装着された一対の濾過装置18について説明する。なお、両濾過装置18は構成が同じであるため、図7の右側の濾過装置18について説明する。
【0022】
図1に示すように受取部22(廃液貯溜槽22a)の右側壁部には、前記チップ受取位置αに近接するようにクーラントの廃液の排出口33が形成されている。そして、前記搬送体27の上部案内レール28に支持される上側部、つまり搬送体27の往行部27aと、下側に位置する搬送体27の復行部27bとの間に形成される空間R内のクーラントの廃液を前記廃液の排出口33を通して前記濾過液貯溜槽12側に排出するようになっている。
【0023】
図1に示すように前記受取部22の右側壁の外面には、前記廃液の排出口33と対応するように円板状をなすホルダ34が溶接等により固定されている。このホルダ34には、前記廃液の排出口33と対応して開口部34a(図2,図6参照)が形成されている。前記ホルダ34の外周寄り右側面には横円筒状をなすケーシング35の左端縁に形成された外側フランジ35aがボルト36によって取り付けられている。前記ケーシング35の右端開口縁には、取付板37が溶接により固定されている。前記取付板37の中間部には後述する濾過用ディスクプレート49を回転するための回転軸38が前記ケーシング35の中心に位置するように支持されている。この回転軸38は図4に示すように、前記取付板37に対しボルト39により取り付けられた取付筒40と、該取付筒40に収容されたラジアルベアリング41とにより支持されている。
【0024】
前記回転軸38の先端部には、図4に示すようにキー42を介して軸方向の往復動可能に、かつ前記回転軸38と同期回転可能に取付筒43が装着され、該取付筒43の先端面には支軸44のフランジ部がボルト45によって連結されている。前記ホルダ34の側面にはボルト45´によって、軸受ホルダ46が所定位置に取り付けられ、この軸受ホルダ46に収容されたベアリング47に前記支軸44の先端部が回転可能に、かつ軸方向の往復動可能に挿入されている。
【0025】
前記取付筒43の外周面には、フラット状の濾過用ディスクプレート49が装着されている。この濾過用ディスクプレート49は図6に示すように三つの部材50、51、52を組み合わせて構成されている。第1の部材である取付枠50は内側リング部50a、外側リング部50b及び前記内側及び外側リング部50a,50b間に放射状に接続された複数のスポーク部50cにより構成され、例えば板材によりプレス成形される。そして、図4に示すように前記内側リング部50aの中心部に前記取付筒43の外周面を嵌合して例えば溶接により固定している。
【0026】
前記濾過用ディスクプレート49を構成する第2の部材である濾過膜51は、ステンレス製の篩い(100メッシュ:篩い目の開きが0.149mm)により構成されている。前記濾過用ディスクプレート49を構成する第3の部材である挟着枠52は、前記取付枠50とほぼ同外形状にプレス成形されている。前記挟着枠52は内側リング部52a、外側リング部52b、放射状の複数のスポーク部52c及び各スポーク部52cに取り付けた補強リブ52dにより構成されている。前記取付枠50と挟着枠52は濾過膜51を挟着した状態で複数のボルト(図示略)により締め付け固定されている。
【0027】
図4に示すように、前記取付板37の左側面と、前記濾過用ディスクプレート49の取付枠50の内側リング部50aの右側面との間には、前記濾過用ディスクプレート49をホルダ34側へ付勢するための付勢機構56が介装されている。この付勢機構56は、前記取付筒43の外周面に装着されたスラストワッシャー57と、前記回転軸38の外周面に装着されたスラストワッシャー58と、両スラストワッシャー57,58間に介在されたコイルばね59とによって構成されている。
【0028】
次に、前記濾過用ディスクプレート49の外周部に対応するように前記ホルダ34及びケーシング35に設けられたシール機構61について説明する。
前記濾過用ディスクプレート49の外周縁には、円環状をなす取付リング62が溶接によって連結され、この取付リング62の外周面にはリング状をなすインナーレーサ63が取り付けられている。一方、前記ケーシング35の内周面には、リング状をなすアウターレーサ64が取り付けられ、前記インナーレーサ63との間にクレモナロープよりなるグランドパッキン65が介在されている。前記インナーレーサ63の外周面はホルダ34側ほど緩やかに縮径されるテーパ周面63aとなっており、そのフランジ部63bによって前記グランドパッキン65の右端面が位置規制されている。前記アウターレーサ64の内周面64aは円筒面となっており、その左端部に形成されたフランジ部64bによってグランドパッキン65の左端面が位置規制されている。
【0029】
前記取付リング62、インナーレーサ63の内周面の近傍に位置するように固定部材としての前記ホルダ34の右側面には、円筒状をなすリング66が取り付けられ、前記濾過用ディスクプレート49の部材52の左側面には、前記リング66の内周面の近傍に位置するように円筒状をなすリング67が取り付けられている。前記ホルダ34、取付リング62、インナーレーサ63、アウターレーサ64、グランドパッキン65及びリング66によって、シール室68が形成されている。又、前記取付リング62、インナーレーサ63及びリング66,67によって、前記シール室68と、前記ホルダ34と濾過用ディスクプレート49の間に形成された濾過室Eを連通するラビリンス通路69が形成されている。前記ホルダ34には、前記シール室68と連通するようにノズル70が接続され、該ノズル70には、エルボ継手71及び前記ポンプ13に設けた分岐管14aが接続されている。そして、前記濾過液貯溜槽12に貯溜されたクーラントの濾過液を前記シール室68内に供給するようになっている。この実施形態では前記濾過液貯溜槽12、ポンプ13、配管14、分岐管14a及びノズル70等によって濾過液供給手段が構成されている。又、この実施形態では、前記取付リング62、インナーレーサ63、リング66,67及びラビリンス通路69等によって、前記シール室68内の濾過液を前記濾過室Eに徐々に漏出するための濾過液漏出手段が構成されている。
【0030】
前述したシール機構61によって、排出口33から濾過室Eに供給されたクーラントの廃液が濾過用ディスクプレート49の外周縁を迂回しないで、該濾過室Eから濾過膜51を通過して濾過液貯溜槽12へ流動するようにしている。
【0031】
次に、濾過用ディスクプレート49を回転駆動する回転駆動機構75について説明する。
図1に示すように、前記取付板37の左側面にはモータ76が横向きに固着され、そのモータ76の出力軸77には駆動スプロケットホイール78が取り付けられている。前記回転軸38の左端部には被動スプロケットホイール79が嵌合固定され、前記駆動スプロケットホイール78との間にチェーン80が掛装されている。従って、前記モータ76が作動されると駆動スプロケットホイール78、チェーン80、被動スプロケットホイール79及び回転軸38を介して濾過用ディスクプレート49が連続的に又は間欠的に回転される。このため濾過用ディスクプレート49の濾過膜51が前記排出口33と対応する濾過位置P1(濾過室Eでもある)と、それよりも上方の付着チップ分離位置P2との間で位置切り換えされる。
【0032】
次に、前記付着チップ分離位置P2に回転移動された濾過膜51に付着されているチップを濾過膜51から分離して前記受取部22側に還元するためのチップの分離・還元機構(手段)81について説明する。
【0033】
前記取付板37には、図3及び図5に示すように付着チップ分離位置P2と対応するように開口部37bが形成され、該開口部37bには給液筒82がボルトや溶接等により固定されている。この給液筒82は前記配管14から分岐された分岐管14bに接続されている。前記給液筒82の内部には、複数の噴射孔83aを有するノズルプレート83が傾斜状態で収容され、前記各噴射孔83aからクーラントの濾過液を濾過膜51に向かって噴射するようになっている。
【0034】
図3及び図5に示すように、前記ホルダ34には前記付着チップ分離位置P2と対応するように開口部34bが形成され、濾過膜51に付着されたチップが前記噴射孔83aから噴射された濾過液により分離されて前方(図1の左方)へ還元されるようになっている。前記ホルダ34の左側面には前記開口部34bと対応するようにチップ案内筒84が設けられ、分離されたチップを受取部22側に案内して還元するようになっている。
【0035】
次に、前記のように構成したチップコンベア17及び濾過装置18についてその動作を説明する。
図7,8において工作機械11から廃棄されるチップはクーラントの廃液とともに樋16によりチップコンベア17の受取部22のチップ受取位置αに供給される。チップ受取位置αにおいてクーラントの廃液から下方に沈むチップは搬送体27の往行部27a上に堆積されて周回する搬送体27によりチップ回収位置β側に搬送される。又、クーラントの廃液に浮遊するチップは、チップ回収位置βにおいて搬送スクレーパ30aにより上昇部23に沿って上昇され、排出部24から排出される。
【0036】
図1に示す受取部22において、搬送体27の往行部27aと復行部27bとにより形成された空間R内には往行部27aによって排出されなかった微細なチップの一部が複数のフラッパ30の隙間から進入し、前記廃液の排出口33を通して濾過装置18の濾過用ディスクプレート49に供給される。クーラントの廃液の排出口33を通ったクーラントの廃液は回転する濾過用ディスクプレート49の濾過膜51を通って濾過液貯溜槽12内に流れる。このとき、濾過膜51により微細なチップが捕捉されるので、濾過液貯溜槽12内にはクーラントの濾過液が貯溜される。前記濾過用ディスクプレート49はモータ76によって所定の速度で連続的に又は間欠的に回転されるので、濾過位置P1(濾過室E)において捕捉されたチップは付着チップ分離位置P2に移動される。そして、ポンプ13により汲み上げられたクーラントの濾過液が分岐管14bから給液筒82内に供給され、ノズルプレート83の噴射孔83aから濾過膜51に向かって噴射される。このため濾過膜51に付着しているチップが分離されてチップ案内筒84内を通って受取部22のチップ受取位置αに排出される。
【0037】
次に、前記のように構成した濾過装置18の効果を構成とともに列記する。
(1)前記実施形態では、前記濾過用ディスクプレート49の外周縁をシールするシール機構61を設け、このシール機構61を構成するシール室68の内部にノズル70によって、濾過液貯溜槽12からくみ上げたクーラントの濾過液を供給するとともに、シール室68の内部の濾過液が、リング66及びリング67によって形成されるラビリンス通路69から濾過室Eに徐々に漏出するようにした。このため、濾過室Eからシール室68に廃液と共にチップが侵入するのを抑制することができる。この結果、シール室68内にチップが堆積されて、シール機構61のグランドパッキン65が損傷されるのを抑制して、そのシール性及び耐久性を向上することができる。
【0038】
(2)前記実施形態では、ラビリンス通路69によってシール室68内の濾過液が徐々に漏出するようにしたので、濾過液の使用量を減少することができ、消費動力を低減することができる。
【0039】
(3)前記実施形態では、シール機構61のシール部材として、濾過用ディスクプレート49の取付リング62に取り付けたインナーレーサ63と、ケーシング35に取り付けたアウターレーサ64との間にグランドパッキン65を介在したので、シール性能及び耐久性を向上することができる。
【0040】
(4)前記実施形態では、前記インナーレーサ63の外周面を、前記ホルダ34側ほど小径寸法となるテーパ周面63aとし、前記濾過用ディスクプレート49を付勢機構56によって、回転軸38の軸方向に付勢するようにしたので、前記テーパ周面63aをグランドパッキン65に押圧する方向に分力を生成することができ、シール性能を向上することができる。
【0041】
(5)前記実施形態では、濾過液貯溜槽12から汲み上げたクーラントの濾過液をシール室68に供給するようにしたので、専用の流体供給手段を設ける必要がなく、構造を簡素化して部品点数を低減し、製造及び組み付け作業を容易に行うことができる。
【0042】
次に、この発明の別の実施形態を説明する。
○ 図9に示すように、前記ケーシング35の右端縁に側板35b及びリング35cを形成して、ゴム製のシールリップ91aを有するシールリング91を収容するようにしてもよい。この場合には、前記ノズル70からシール室68内に供給されたクーラントの濾過液が前記シールリップ91aに作用して、シールリップ91aが濾過用ディスクプレート49の右側面に押圧されるので、シール性を向上することができる。
【0043】
○ 図10に示すように、前記リング66,67、ラビリンス通路69に代えて、前記ホルダ34の右側面にリングホルダ92を取り付けると共に、このホルダ92にシールリング93を装着し、そのシールリップ93aを前記濾過用ディスクプレート49の左側面に接触するようにしてもよい。この場合には、シールリップ93aの先端と濾過用ディスクプレート49の左側面との隙間からシール室68内の濾過液が濾過室Eに徐々に漏出される。
【0044】
○ 図11に示すように、前記リング66,67、ラビリンス通路69に代えて、前記濾過用ディスクプレート49の左側面にリングホルダ94を取り付けると共に、このホルダ94に、シールリング95を装着し、そのシールリップ95aを前記ホルダ34の右側面に接触するようにしてもよい。この場合には、シールリップ95aの先端とホルダ34の右側面との隙間からシール室68内の濾過液が濾過室Eに徐々に漏出される。
【0045】
○ 図示しないが、前記濾過液漏出手段を省略してもよい。この場合には、前記ノズル70から供給される濾過液がシール室68に供給されるので、シール室68にチップが侵入して堆積するのを防止することができる。
【0046】
○ 図示しないが、前記インナーレーサ63の外周面及び/又はアウターレーサ64の内周面に前記グランドパッキン65を押圧するようにテーパ周面を形成してもよい。
○ 図示しないが、付着チップの分離・還元手段として、エアを濾過膜51に吹き付けるようにしても良い。この場合には、構造を簡素化することができる。
【0047】
○ コンベア本体を構成する搬送体27として、スクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベア或いはその他の搬送手段を用いてもよい。
○ 図示しないが、濾過用ディスクプレート49の配置個所は、排出口33以外に該排出口33に接続された排出通路であってもよい。
【0048】
○ 前記濾過膜51は例えば16〜200メッシュの範囲に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明を具体化したチップコンベア及び濾過装置の縦断面図。
【図2】濾過装置の正面図。
【図3】濾過装置の背面図。
【図4】濾過装置の要部を示す縦断面図。
【図5】濾過装置の付着チップの分離・還元手段を示す縦断面図。
【図6】濾過装置の関連部品を示す分解斜視図。
【図7】チップコンベア及び濾過装置の正断面図。
【図8】チップコンベア及び濾過装置の略体平面図。
【図9】この発明の別の実施形態を示すシール機構の縦断面図。
【図10】この発明の別の実施形態を示すシール機構の縦断面図。
【図11】この発明の別の実施形態を示すシール機構の縦断面図。
【符号の説明】
【0050】
E…濾過室、P1…濾過位置、P2…付着チップ分離位置、11…工作機械、12…濾過液貯溜槽、17…チップコンベア、22a…廃液貯溜槽、56…付勢機構、61…シール機構、63…インナーレーサ、63a…テーパ周面、64…アウターレーサ、64a…内周面、65…グランドパッキン、68…シール室、69…ラビリンス通路、75…回転駆動機構、91,93,95…シールリング、91a,93a,95a…シールリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械からクーラントの廃液とともに排出されるチップを受取位置から排出位置に搬送するコンベア本体と、
前記コンベア本体の廃液貯溜槽から外部に排出される廃液を濾過するフラット状の回転濾過体と、
前記回転濾過体を濾過位置と付着チップ分離位置との間で連続的に又は間欠的に回転して切り換えるための回転駆動機構と、
前記付着チップ分離位置に切り換えられた回転濾過体に付着しているチップを分離して前記廃液貯溜槽に還元するための付着チップの分離・還元手段と、
前記回転濾過体の外周縁に対して、前記廃液貯溜槽から廃液が前記回転濾過体の外周縁を迂回してクーラントの濾過液貯溜槽に排出されるのを阻止するシール機構と
を備えたチップコンベアにおいて、
前記シール機構に対し、該シール機構を構成するシール室にクーラントの濾過液を供給するための濾過液供給手段を設けたチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項2】
請求項1において、前記シール機構には、前記シール室に供給された濾過液を、該シール室から廃液に含まれるチップの濾過室へ徐々に漏出する濾過液漏出手段が設けられているチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項3】
請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記シール室を構成する固定部材の内側面と前記回転濾過体の外周縁寄り側面との間に設けられたラビリンス通路であるチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項4】
請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記シール室を構成する固定部材に取り付けたシールリングのリップを前記回転濾過体の外周縁寄り側面に接触させたものであるチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項5】
請求項2において、前記濾過液漏出手段は、前記回転濾過体に取り付けたシールリングのリップを前記シール室を構成する固定部材の内側面に接触させたものであるチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の外周縁寄り両側面のうち前記濾過液貯溜槽側の側面に接触するシールリップを備えたシールリングであって、前記シールリップは濾過液供給手段により供給された濾過液の圧力により前記回転濾過体の外周寄り側面に押圧されるように形成されているチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記シール機構のシール部材は、前記回転濾過体の外周縁に取り付けられたインナーレーサと、前記シール室を構成する固定部材に取り付けられたアウターレーサとの間に介在されたグランドパッキンであるチップコンベアにおける濾過装置。
【請求項8】
請求項7において、前記インナーレーサの外周面及び/又はアウターレーサの内周面にはテーパ周面が形成され、前記回転濾過体は、付勢機構によって前記両レーサの間のグランドパッキンを挟着する分力を生成する方向に付勢されるように構成されているチップコンベアにおける濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−7789(P2007−7789A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193132(P2005−193132)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(592213132)榎本ビーエー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】