説明

チップコンベヤ装置

【課題】 旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑を切削液と切り屑とに分離するとともに、切削液の回収度合いを高めながら切り屑を排出する。
【解決手段】 サイクロン式分離機2と、サイクロン式分離機2の下方に配されてサイクロン式分離機2から排出された切削液の残りが付着した切り屑xを回転しながら受けて搬送する搬送手段4と、この搬送手段4を有する所定形状の搬送路5とを備え、搬送手段4にて切削液の残りが付着した切り屑xを搬送しながら所定形状の搬送路5を搬送することで切り屑xを圧縮した切り屑x1として切り屑排出口5zから排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑を搬送しながら排出するチップコンベヤ装置に関し、特にサイクロン式分離機が一体的に取り付けられたチップコンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤やフライス盤等の金属加工用工作機械においては、バイト、カッタ等の切削工具と被加工物(ワーク)とが接触する加工部位に切削液(クーラント)を供給して当該加工部位の発熱を抑えながら加工を行う湿式タイプが主流になっている。この湿式タイプの工作機械にはチップコンベヤ装置が常設されている。チップコンベヤ装置は、工作機械から排出された切削液の付着した切り屑(粉状、ヒゲ状、カール状、小塊状等の切り屑全般を指す)を切削液と切り屑とに分離して搬送し、不要物である切り屑を排出するとともに、装置内の濾過手段によって切り屑を取り除いたクリーンな切削液を再生して工作機械に供給することで、切削液を工作機械とチップコンベヤ装置の間で循環させて使用する。
【0003】
切削液の付着した切り屑を切削液と切り屑とに分離するチップコンベヤ装置内の濾過手段としては、回転ドラム式フィルタ、サイクロン式分離機、マグネット式フィルタ等が挙げられる。回転ドラム式フィルタは、金網(メッシュ)を張った回転ドラムの内側に不要物である切り屑を留めながら回転力(遠心力)によってクリーンな切削液を回転ドラムの外に排出するものである。サイクロン式分離機は、その筐体の内側下方に不要物である切り屑を留めながら遠心力によってクリーンな切削液をサイクロン式分離機の外に排出するものである。また、マグネット式フィルタは、筐体に備わった磁力体に不要物である鉄の切り屑を留めながらクリーンな切削液をマグネット式フィルタの外に排出するものである。つまり、これらの濾過手段はいずれも、不要物である切り屑をフィルタ内に留めた状態でクリーンな切削液をフィルタ外に排出するものである。
【0004】
また、切削液の付着した切り屑をチップコンベヤ装置内で切削液と切り屑とに分離しながら切り屑を搬送する濾過手段と搬送手段を兼用した濾過及び搬送手段としては、チェーンコンベヤ、スクリュー式コンベヤ、コイル式コンベヤ等が挙げられる。チェーンコンベヤは、切削液の付着した切り屑を搬送する搬送ベルトや複数のプレート板が連続的に配されて駆動軸と従動軸の間に掛け渡され、切り屑を搬送ベルト上やプレート板上で搬送しながらコンベヤ上方の排出口から排出しつつ、切削液をプレート板の下方に通過させるものであり、搬送ベルトに切り屑を掻き上げる掻き揚げ部材が取り付けられたスクレーパ式コンベヤや、マグネットが取り付けられたマグネット式コンベヤもある。スクリュー式コンベヤは螺旋プロペラ状に形成された回転軸により切削液の付着した切り屑を搬送しながら圧縮してコンベヤ上方の排出口から排出しつつ、切削液をコンベヤの下方に移動させるものである。コイル式コンベヤは、螺旋コイル状に形成された回転軸により切削液の付着した切り屑を搬送しながら圧縮してコンベヤ上方の排出口から排出しつつ、切削液をコンベヤの下方に移動させるものである。つまり、これらの濾過及び搬送手段は、不要物である切り屑をコンベヤ上方の排出口から排出しつつ、切削液をコンベヤの下方に移動させるものである。
【0005】
従来のチップコンベヤ装置としては、例えば特許文献1に示すチェーンコンベヤや、特許文献2に示すスクリュー式コンベヤ(又はコイル式コンベヤ)を単体で使用する装置構成があるが、これらコンベヤの単体使用では、粉状の切り屑が切削液に混入することがある。そこで、例えば特許文献3に示すようにチェーンコンベヤに回転ドラム式フィルタを取り付けて使用するか、サイクロン式分離機やマグネット式フィルタを取り付けて使用することで、再生使用する切削液のクリーン度合いを高める工夫がなされている。また、特許文献4に示すように上記粉状の切り屑が切削液に混入した液をサイクロン式分離機によってスラッジとクリーンな切削液とに分離して、クリーンな切削液を再生使用しつつ、スラッジを排出コンベヤにて機外に排出する液処理装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−253523号公報
【特許文献2】特開2004−224566号公報
【特許文献3】特開2003−145390号公報
【特許文献4】特開2006−75725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1から4記載の従来のチップコンベヤ装置は、切削液をクリーンにすることに主眼がおかれているため、排出される切り屑の表面には依然として切削液が付着したままの状態で切り屑が排出されてしまい、切り屑の排出に伴って切り屑の表面に付着した切削液までも排出しているのが現状である。特に、金属チップ等の切り屑が微細化したものであればあるほど(1mm以下のアルミ粉等)、その切り屑の表面に付着した切削液を除去することは難しい。このため、切削液を無駄に消費してしまい、切削液が付着している切り屑を廃棄するため切り屑の処分が煩雑となってしまう。
【0008】
そこで本発明の目的は、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑を切削液と切り屑とに分離するとともに、切削液の回収度合いを高めながら切り屑を排出するチップコンベヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチップコンベヤ装置は、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑から切削液を分離するサイクロン式分離機と、サイクロン式分離機の下方に配されてサイクロン式分離機から排出された切削液の残りが付着した切り屑を受けて搬送する搬送手段と、サイクロン式分離機の下方の排出口を囲むように配される筒型連結具とを備え、搬送手段にて切削液の残りが付着した切り屑を搬送しながら所定形状の搬送路を搬送することで圧縮して切り屑排出口から排出することを特徴とする。ここで、使用される搬送手段としては、コイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤのほかに、スクレーパ式コンベヤも含まれる。
【0010】
本発明によれば、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑を前記サイクロン式分離機に導入すると、サイクロン式分離機の遠心力により切削液が切り屑から取り除かれる。クリーンな切削液は、例えば、サイクロン式分離機の上方側から排出される。切削液の残り(切り屑の表面に付着した切削液)が付着した切り屑がサイクロン式分離機の下方に筒型連結具の内壁に沿うなどして落下し、この落下した切り屑を搬送手段が受け取り、所定形状の搬送路を搬送させると、搬送路で切り屑が圧縮されて、順次搬送路の先端の切り屑排出口から排出される。
【0011】
本発明としては、前記搬送路が内部中空の円筒状搬送路であり、この円筒状搬送路に前記搬送手段であるコイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤが配され、これらのコイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤが回転しながらサイクロン式分離機から排出された切削液の残りが付着した切り屑を受けて、切り屑を搬送することが好ましい。
本発明によれば、コイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤが前記搬送手段及び圧縮する手段を兼用していることで、前記切削液の残りが付着した切り屑を前方に搬送しながら圧縮する場合に好適である。
【0012】
本発明としては、前記搬送路が内部中空の円筒状搬送路であって、前記円筒状搬送路の内径に摺接するように移動する圧縮用の円筒体が前記スクリュー式コンベヤの軸に連結されていることが好ましい。
本発明によれば、前記円筒状搬送路の内径よりも若干小さい外径の円筒体が前記コイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤの軸に連結されていることで、搬送路の内部において後戻りさせずに押しやり、切り屑を強く圧縮する。
【0013】
本発明としては、前記円筒状搬送路が水平搬送路とその前方に所定角度に傾斜して立ち上がる傾斜搬送路からなり、傾斜搬送路の先端に蓋体を備えた切り屑排出口が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、前記円筒状搬送路が水平搬送路とその前方に所定角度に傾斜して立ち上がる傾斜搬送路からなることで、搬送手段により切り屑を搬送すると、傾斜搬送路での傾斜によって切り屑が圧縮されて、前記切削液の残りを回収することができる。また、蓋体によっても圧縮力が働く。一方、前記切削液は装置内に戻され、切り屑排出口では滞留しない状態になる。
【0014】
本発明としては、前記筒型連結具の内壁が搬送路との連結側に行くに従って広くなっていることが好ましい。サイクロン式分離機の下方から排出される切り屑が筒型連結具の内壁に付着し難くなるとともに、装置内に溜まる切削液の液面上昇も抑え易くなる。
【0015】
本発明としては、前記筒型連結具の内壁が下方端付近でその上方側よりも小さく絞られたくびれ部が形成された後、筒型連結具の連結側に行くに従って再度内壁が広くなっていることが好ましい。
本発明によれば、くびれ部の上方側の内圧よりも大きい圧力差ができることで、サイクロン式分離機から排出される切り屑をくびれ部の中央に集めて強く下方の搬送手段に排出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、サイクロン式分離機の遠心力により切削液が切り屑から取り除かれ、切削液の残り(切り屑の表面に付着した切削液)が付着した切り屑がサイクロン式分離機の下方に落下し、この落下した切り屑を搬送手段が受け取って搬送しながら搬送路を搬送しながら圧縮して搬送路の切り屑排出口から排出される。したがって、切削液の回収度合いを高めながら切り屑を排出することが可能になる。特に微細化した切削液(クーラント液)が付着した金属チップ(粉状のスラッジ)の分離に有効である。
また、本発明によれば、筒型連結具を備えることから、サイクロン式分離機の下方の排出口(開口)に、当該排出口から排出され貯まった切削液が嵩高になり、当該排出口に入り込むような事態も防止でき、サイクロン式分離機の安定した連続運転が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す側面図である。
【図2】上記第1の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す断面図である。
【図4(a)】本発明の第3の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す断面図である。
【図4(b)】本発明の第3の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す断面図である。
【図5(a)】本発明の第4の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す図であり、その側面図である。
【図5(b)】本発明の第4の実施の形態のチップコンベヤ装置を示す図であり、その水平搬送路の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のチップコンベヤ装置の側面図であり、図2は断面図である。第1の実施形態のチップコンベヤ装置1は、サイクロン式分離機2と、サイクロン式分離機2を装着する筒型連結具3と、筒型連結具3の下方と連結される搬送路5とを備える。搬送路5には、搬送手段4であるスクリュー式コンベヤが配されている。このようなチップコンベヤ装置1は、旋盤やフライス盤等の工作機械の近傍位置に配されて使用される。
【0020】
サイクロン式分離機2は、円筒状の外筒と、外筒の下端に一体に設けられ下端に開口を有する下方が細い円錐部とからなっているもので、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑(濁液、ダーティー液)を上方の導入口2bから導入して、遠心分離した切削液をその上方側の排出口2aから排出し、切り屑xを下方の排出口から排出する。円筒形状のほぼ中央には、円筒形状の筒型連結具3に掛止する掛止板2kが設けられている。すなわち、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される切り屑の材質や形状に応じてサイクロン式分離機2の型式を適宜選定し、筒型連結具3の上方側に形成された上方開口部3aで掛止部材3kを介して着脱自在に取り付けられる構造である。サイクロン式分離機2としては、サイクロン式分離機2が使用され、その円形状の筐体の内側下方に不要物である切り屑を留めながら遠心力によってクリーンな切削液とされて、切削液の付着した切り屑xを下方端の排出口から排出する。このようなサイクロン式分離機2は、円筒形状の筒型連結具3により装着されて、この筒型連結具3を介して搬送路5と連結されている。
【0021】
筒型連結具3は、内部中空の円錐台形状を呈する金属製のもので、その上方開口部側に円形フランジ3kが取り付けられ、円筒形のサイクロン式分離機2の掛止板2kと掛止してサイクロン式分離機2を装着し、その下方側開口部3aが水平な円筒状搬送路5の上方に形成された上部開孔5eと連結されている。本実施の形態の筒型連結具3は、サイクロン式分離機2の下方側から排出される切り屑(サイクロンにより切削液を分離排出させるので、切削液の残りが付着した切り屑)xを円筒状搬送路5に排出させ易いように、その下方側の連結箇所3kに向かうに従ってその内壁の円筒状の径が大きくなっている。なお、この筒型連結具13の上方に縦型配置のサイクロン式分離機2が取り付けられるが、筒型連結具13が一体のサイクロン式分離機2としても良い。
【0022】
搬送路5には、搬送手段4であるスクリュー式コンベヤが配されている。搬送路5は水平であり、スクリュー式コンベヤ4も水平に配されて、搬送路5の後方に配されるモータM2により回転駆動する。なお、符号M1は、スクリュー式コンベヤ4全体を前後動させるモータである。スクリュー式コンベヤ4は、軸4jの外周に羽4pが取り付けられ、軸4jがモータM2により回転すると(右回転すると)、その回転駆動(周回転速度)は上記モータM1による前後動よりも早く、このため羽4pに付着した切り屑xは羽4pにより前方の切り屑排出口5zの方向に搬送され、逆に戻されるようなことはない。ここで、スクリュー式コンベヤ4が切り屑xを前方に搬送しながら圧縮するものであり、このような搬送手段4と圧縮手段を兼用するものとしては、鋼線をコイル状に加工しこれを回転させて切り屑xも巻き込んで排出させるためのコイル式コンベヤ(軸のない螺旋状コンベヤ)を使用することも可能である。これらの搬送手段4によりサイクロン式分離機2から落下する切り屑xを回転しながら直接受けて、回転しながら搬送することで、上記切り屑xに付着した切削液が分離するか、分離しようとする状態におかれる。
【0023】
前記水平な円筒状搬送路5の前方に所定角度に傾斜して立ち上がる傾斜搬送路5Aが形成され、傾斜搬送路5Aの先端が切り屑排出口5zとして形成されている。したがって、スクリュー式コンベヤ4により搬送される切り屑xは、特に傾斜搬送路5Aで強く圧縮されて切り屑x1を傾斜搬送路5Aの上方に押し上げて行く。円筒状搬送路5の後方側下方には、切削液排出口5dがバルブで設けられ、この切削液排出口5dからサイクロン式分離機2から排出された切り屑xに付着した切削液と、上記傾斜搬送路5Aで強く圧縮された切り屑x1から滲み出る切削液を排出する。本実施の形態の上記傾斜搬送路5Aとしては、切り屑排出口5zに向かって若干径が大きくなっているが、同じか、序々に径を小さくすることで、切り屑xの圧縮率を高めることも可能である。
【0024】
上記切り屑排出口5zには、蓋体6とこれを開閉動作させるエアーシリンダ6sが取り付けられ、エアーシリンダ6sを駆動させると、蓋体6がヒンジ6cを介して開閉する構造になっている。このような開閉構造としては、所定時間ごとに蓋体6がエアーシリンダ6sのロッド6aを駆動させて開閉するものでも良く、切り屑xが所定量押し上げられ排出するときに、エアーシリンダ6sの蓋体6の閉動作に抗して開放させるものでも良い。なお、蓋体6を設けずに、開放させた状態でも使用可能である。
【0025】
本実施の形態のチップコンベヤ装置1の使用例としては、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑をサイクロン式分離機2に導入口2bから導入する(ダーティ液を噴射する)。サイクロン式分離機2では、その遠心力により切削液の付着した切り屑から切削液を分離して(切り屑は遠心力によりノズル壁面に集積し)、クリーンな切削液が気接触しながら上昇し、サイクロン式分離機2の上方側の排出口2aから排出される。切削液の残り(切り屑の表面に付着した切削液)が付着した切り屑xがサイクロン式分離機2の下方から筒型連結具3を介して下方排出口2zから落下し(少量の切削液とともに落下し)、この落下した切り屑xを搬送手段4が直接受け取って円筒状搬送路5を搬送させる。
搬送手段4であるクリュー式コンベヤにより搬送すると、搬送しながら上記切り屑xを圧縮して、順次傾斜搬送路5Aの先端の切り屑排出口5zから排出される。すなわち、スクリュー式コンベヤ4により切り屑xを搬送すると、搬送路5が水平な搬送路であっても切り屑xは圧縮されるが、本実施の形態の搬送路5は水平方向に延設され、その後所定角度の斜め上方に立ち上がり形成された傾斜搬送路5Aに送られるために、水平なままの状態よりも強く圧縮され、先端の切り屑排出口5zから排出されるとともに、切り屑xからの切削液の回収度合いを高められる。一方、前記切削液の残りは、圧縮された切り屑xから重力により搬送路5の下方側に落下して、順次、搬送路の下方側に設けられた切削液排出口5dから排出される。
ここで、サイクロン式分離機2は、筒型連結具2に固定されているために、サイクロン式分離機2は、安定して駆動するとともに、筒型連結具2の内部はサイクロン式分離機2の下方の円錐部における圧力よりも低い圧力となっているために(図1の符号参照:P1>P2)、下方の円錐部から排出された切り屑xは落下し易くなるとともに、液面Leが上昇し難くなっている。換言すると、機外に切削液が排出し易い構造になっている。このため、サイクロン式分離機2の下方の円錐部の排出口(開口)2zに貯まる切削液が入り込むような事態も防止でき、サイクロン式分離機2の安定した連続運転が可能になる。また、上記切削液排出口5dを設けない構造にしても良く、この場合は内筒型連結具3に切削液が貯まるが、上記切り屑排出口5zの高さ位置を切削液(クーラント液)の液面の高さLeよりも高くすると、切り屑排出口5zに蓋体6を設けずに、開放させた状態でも使用可能である。
【0026】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施形態のチップコンベヤ装置11の断面図である。本実施の形態のチップコンベヤ装置11は、縦型配置のサイクロン式分離機2を装着する筒型連結具13は、その下方内壁にくびれ部7が設けられている。すなわち、筒型連結具13は、上方端から下方に向けてその内径が略同一であって、内壁が下方端付近でその内径が上方端よりも小さく絞られた下方端突出部7aが形成された後、円筒状搬送路5の開孔5eの連結側に行くに従って再度内壁が広くなる開拡部7bとからくびれ部7が形成されている。このように、筒型連結具13の下方側にくびれ部7が形成され、当該くびれ部7の下方の内圧P3がくびれ部7の上方の内圧P2よりも大きい圧力差ができることで(P2<P3であり、P1>P3である。)、この圧力差によって、比重の重い切り屑xが中央に集められて搬送手段4に落下させ易くなる。すなわち、下方の円錐部12における圧力P1が上記くびれ部7の最も径の小さいところ7cに作用するからである。なお、この筒型連結具13の上方に縦型配置のサイクロン式分離機2が取り付けられるが、筒型連結具13が一体のサイクロン式分離機2としても良い。
【0027】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第2の実施形態のチップコンベヤ装置21の側面図である。本実施の形態のチップコンベヤ装置11は、搬送手段4であるスクリュー式コンベヤ4の軸4jの先端に圧縮用の円筒体8が連結されている。圧縮用の円筒体8は、円筒状搬送路5の内径よりも若干小さい外径のもので、つまり円筒状搬送路5の内壁に接するものであり、金属製である。そして、エアーシリンダErや電動シリンダ等により搬送手段4全体を往復動させ、これにより圧縮用の円筒体8も同時に往復動作する。なお、符号Mは、スクリュー式コンベヤ4を駆動させるモータである。その他の構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0028】
したがって、上記エアーシリンダErにより搬送手段4全体を往復動させると、これにより圧縮用の円筒体8も同時に往復動作することにより、上記第1の実施の形態の場合よりも切り屑xを強く圧縮することとなる。すなわち、第1の実施の形態の往復動作では移動距離が少ないような場合には、上記エアーシリンダErを設けると良い。
また、切削液排出口としては、上記第1の実施の形態の切削液排出口5dでも良いが、水平搬送路5Bと傾斜搬送路5Aのつなぎ目5c付近の下方側に切削液排出口5dが形成されているか、又は、この位置5cから排出ホースを引き出して排出させても良い。このつなぎ目5c付近等からの排出により、前記切削液の残りを機内に滞留させずに、すみやかに機外に排出することができる。なお、更に上記切削液排出口5dが設けられているものでも良い。
【0029】
(第4の実施の形態)
図5(a)は、本発明の第4の実施形態のチップコンベヤ装置31の側面図であり、図5(b)は、一部拡大断面図である。本実施の形態のチップコンベヤ装置31は、搬送手段4がスクレーパ式コンベヤSkであり、上記実施の形態と同様に、水平搬送路5Bと傾斜搬送路5Aとを有する。そして、コンベヤベルトScに所定間隔をおいてスクレーパ(カキ板)S9が取り付けられており、このスクレーパS9により切り屑xを掻き上げて排出する。すなわち、各スクレーパS9が傾斜搬送路5Aの位置で斜め上方に向かって搬送されると、このときに切り屑xに圧縮力が働くこととなる。なお、切削液は、搬送ベルトとスクレーパS9との間から下方に落下する。本実施の形態においても、切り屑xが斜め上方端まで搬送された後、、半回転して切り屑排出口6から排出される。なお、傾斜搬送路5Aの上方端近傍位置で蓋体6が設けられているが、筒型連結具3に貯まる切削液の液面の高さLeが切り屑排出口5zの高さ位置よりも低いと、切り屑排出口5zに蓋体6を設けずに、開放させた状態でも使用可能である。
【0030】
以上、上記実施の形態では、サイクロン式分離機2としてサイクロン式分離機を例に説明したが、本発明としては縦型配置で下方側から切り屑を排出する構造のものであれば、サイクロン式分離機に限らず、各種のサイクロン式分離機が使用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤やフライス盤等の工作機械から排出された切削液の付着した切り屑から切削液を分離するサイクロン式分離機と、サイクロン式分離機の下方に配されてサイクロン式分離機から排出された切削液の残りが付着した切り屑を受けて搬送する搬送手段と、サイクロン式分離機と搬送手段とを連結する筒型連結具とを備え、搬送手段にて切削液の残りが付着した切り屑を搬送しながら所定形状の搬送路を搬送することで切り屑を圧縮した切り屑として切り屑排出口から排出することを特徴とするチップコンベヤ装置。
【請求項2】
前記搬送路が内部中空の円筒状搬送路であり、この円筒状搬送路に前記搬送手段であるコイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤが配され、これらのコイル式コンベヤ又はスクリュー式コンベヤが回転しながらサイクロン式分離機から排出された切削液の残りが付着した切り屑を受けて、この切り屑を圧縮しながら搬送することを特徴とする請求項1記載のチップコンベヤ装置。
【請求項3】
前記搬送路が内部中空の円筒状搬送路であって、前記円筒状搬送路の内径に摺接するように移動する圧縮用の円筒体が前記スクリュー式コンベヤの軸に連結されていることを特徴とする請求項2記載のチップコンベヤ装置。
【請求項4】
前記円筒状搬送路が水平搬送路とその前方に所定角度に傾斜して立ち上がる傾斜搬送路からなり、傾斜搬送路の先端に蓋体を備えた切り屑排出口が形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載のチップコンベヤ装置。
【請求項5】
前記筒型連結具の内壁が搬送路との連結側に行くに従って広くなっていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のチップコンベヤ装置。
【請求項6】
前記筒型連結具の内壁が下方端付近でその上方側よりも小さく絞られたくびれ部が形成された後、筒型連結具の連結側に行くに従って再度内壁が広くなっていることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載のチップコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【公開番号】特開2010−167548(P2010−167548A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14736(P2009−14736)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(591234488)株式会社ヨシダ鉄工 (13)
【Fターム(参考)】