説明

チップタービンファン

【課題】 タービン部から排出される高温ガスが周囲に及ぼす影響を軽減することが可能なチップタービンファンを提供する。
【解決手段】 ファン動翼11とファン静翼12とを備えるファン部の外周にタービン動翼15とタービン静翼14とを備えるタービン部が環状に配置されているチップタービンファンにおいて、ファン部とタービン部とを連通してタービン部から排出される高温の排気ガス(矢印B)をファン部の排気流(矢印C)へと導く混合通路16を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン部をファン部の外周に配置したチップタービンファンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンにおいて、ファン部の外周にタービン部を配置したチップタービンファンと呼ばれるタイプのエンジンが知られている(例えば、特許文献1参照)。図3、図4は、このチップタービンファン100の構成を示す背面図(排気口側から見た図)と縦断面図(主軸の軸方向に沿って切断した断面図)である。
【0003】
このチップタービンファン100は、主軸110を中心として、その外周にファン部が設けられ、ファン部の周囲に環状のチップタービン部が設けられている。ファン部は、前段に主軸110を中心として回転するファン動翼111が配置され、その後段に固定されたファン静翼112が配置される。チップタービン部は、前段に固定されたタービン静翼114が配置され、後段にファン動翼111とともに主軸110を中心に回転するタービン動翼115が配置されている。ファン動翼111とタービン動翼115との境界部分は、主軸110を中心として環状に形成されるシュラウドであり、ファン部とタービン部を隔てている。
【0004】
ケーシング113内のタービン静翼114の前段に、図示していない供給口から高温高圧ガスが供給される。この高温ガスが、タービン静翼114、タービン動翼115を通過する際に膨張して、タービン動翼115に揚力を付与することで、これを駆動することで、主軸110を中心にファン動翼111を回転させる。この回転エネルギーによって矢印A’に示されるようにファン部へ吸入される空気を後段のファン静翼112へと送り、さらにファン静翼112の後方へと排出する(矢印C'参照)。
【0005】
この種のチップタービンファンは、タービン部を流れる空気の流量に対してファン部を流れる空気の流量の比率であるバイパス比を大きくすることができるので、効率の向上を図れる。また、エンジン全体の厚み(主軸の長さ方向、いいかえると、ファン部の空気流方向の長さ)が薄くなるので、特許文献1に記載されるような垂直離着陸機用のエンジンとして好適である。
【特許文献1】特開2006−56364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タービン部の効率向上のためには、タービン入口温度、圧力を高める必要があり、その場合、排気温度も高くなる。特許文献1に示される垂直離着陸機においては、この高温ガスがチップタービンファンの外周側である出口116’から排出される(矢印B'参照)ため、この外周に近い位置に配置される機体部分は高い耐熱性を有する必要があるとともに、乗員や整備員等がこの高温ガスに触れることのないよう対策を講じる必要がある。
【0007】
そこで本発明は、タービン部から排出される高温ガスが周囲に及ぼす影響を軽減することが可能なチップタービンファンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るチップタービンファンは、主軸の周囲に配置されるファン部の外周に、このファン部を高温ガスによって駆動するタービン部を配置したチップタービンファンにおいて、タービン部から排出される高温ガスをファン部の排気流へと導く混合通路を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ファン部の周囲に配置されるタービン部から排出される高温ガスは、混合通路によりファン部の排気流へと導かれ、両者は混合されて排出される。これにより、燃焼ガスはファン部の排気流によって希釈され、高温ガスが直接排出されることがなくなるので、周囲に及ぼす影響を軽減することができ、例えば、特許文献1に示される垂直離着陸機のエンジンとして採用した場合、エンジン周辺の機体に高い耐熱性を有する部材を用いる必要がなく、また、乗員や整備員が排気ガスに接触した場合の安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0011】
本発明に係るチップタービンファンを図1、図2に示す。図1は、その背面図であり、図2は、縦断面図である。このチップタービンファン1の基本構成は、図3、図4に示されるチップタービンファン100と共通している。具体的には、主軸10を中心として、その外周にファン部が設けられ、ファン部の周囲に環状のチップタービン部が設けられている。ファン部は、前段にファン動翼11が、その後段にファン静翼12が配置される。チップタービン部は、前段にタービン静翼14が、後段にタービン動翼15が配置されている。ファン動翼11とタービン動翼15とは、環状のシュラウドを挟んで接続されている。タービン部は、ケーシング13によって覆われており、ファン静翼12の外周端部分にファン部とタービン部とを連通する環状の混合通路16が設けられている。
【0012】
次に、このチップタービンファン1の動作を説明する。ケーシング13内のタービン静翼14の前段に供給される高温高圧ガスにより、タービン動翼15を駆動することで、主軸10を中心にファン動翼11を回転させる。この回転エネルギーによって矢印Aに示されるようにファン部へ吸入される空気を後段のファン静翼12へと送り、さらにファン静翼12の後方へと排出する。この排出ガス(後述するタービン部からの排出ガスを含む。)の運動量がチップタービンファン1の発生する推力となる。
【0013】
タービン動翼15を通過したガスは、タービン部を通過する際に断熱膨張することにより、タービン部入口温度よりその出口温度は低下するが、依然、高温である。本実施形態では、タービン部下流のファン静翼12の外周端部分に混合通路16を設け、タービン部出口とすることで、タービン部からの排気を矢印Bで示すように混合通路16を通じて排出することにより、ファン静翼12を通過する気流と混合している(矢印C参照)。これにより、タービン部から排出された高温ガスは、ファン静翼12を通過する気流と混合され希釈されるので、排出されるガス全体の温度を低くすることができる。このため、高温の排気ガスが排出される場合のように、排気流に近接・接触する部分に耐熱性の高い高価で加工の難易度の高い部材を用いる必要がなくなるほか、排気流に乗員・整備員等が近づいた場合の安全性を確保することができるなど、周囲に及ぼす排気ガスの温度による影響を軽減することができる。
【0014】
以上、説明した実施形態では、タービン部、ファン部とも単段構成の場合を例に説明したが、いずれかまたは双方を多段構成としてもよい。ファン部を多段構成とする場合、混合通路は、ファン部の最終段付近に設ける構成のほか、中間段において混合を行ってもよい。また、タービン部に高温高圧ガスを導く例を説明したが、タービン部前段に燃焼器を配置するチップタービンファンにおいても本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明に係るチップタービンファンは、例えば、特許文献1に記載された垂直離着陸機用のエンジンとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るチップタービンファンの背面図である。
【図2】図1のチップタービンファンの縦断面図である。
【図3】従来のチップタービンファンの背面図である。
【図4】図3のチップタービンファンの縦断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1、100…チップタービンファン、10、110…主軸、11、111…ファン動翼、12、112…ファン静翼、13、113…ケーシング、14、114…タービン静翼、15、115…タービン動翼、16、…混合通路、116…タービン部出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の周囲に配置されるファン部の外周に、前記ファン部を高温ガスによって駆動するタービン部を配置したチップタービンファンにおいて、
前記タービン部から排出される高温ガスを前記ファン部の排気流へと導く混合通路を備えていることを特徴とするチップタービンファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−7554(P2010−7554A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167532(P2008−167532)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】