説明

チップ抵抗器

【課題】本発明は、大きな過電圧が印加されても抵抗体を保護することができるチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明のチップ抵抗器は、絶縁基板11と、前記絶縁基板11の上面の両端部に設けられた一対の上面電極12と、前記絶縁基板11の上面において前記一対の上面電極12と電気的に接続されるように設けられた抵抗体13と、前記抵抗体13を覆うように設けられたプリコートガラス層14と、前記抵抗体13およびプリコートガラス層14に設けられた抵抗値調整用のトリミング溝15とを備え、前記プリコートガラス層14の上面に一対のギャップ電極16を形成し、かつ前記一対のギャップ電極16のそれぞれの一端部16aを互いに離間するように配置するとともに、前記一対のギャップ電極16の他端部16bと前記上面電極12とを電気的に接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用されるチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のチップ抵抗器は、図3に示すように、アルミナ等からなる絶縁基板1の上面両端部に形成され銀または銅で構成された一対の上面電極2と、絶縁基板1の上面において一対の上面電極2間に形成された厚膜抵抗体3と、抵抗体3を覆うように形成されたプリコートガラス層(図示せず)とを備えていた。そして、抵抗体3を蛇行状に形成することによって抵抗体3の長さを長くし、抵抗値を高くして、静電気、サージ等の過電圧が印加されても抵抗体3を保護できるようにしていた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−205004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のチップ抵抗器においては、より大きな過電圧が印加されると、抵抗体3の長さを長くしただけでは抵抗体3を十分に保護するという効果は得られないという課題を有していた。そして、この結果、抵抗体3が過電圧によって劣化して、その抵抗値が大きく変化したり、場合によっては断線したりするケースがあった。なお、抵抗体3が過電圧によって劣化するのは、ガラス成分の劣化によるものと考えられる。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、大きな過電圧が印加されても抵抗体を保護することができるチップ抵抗器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0008】
本発明の請求項1に記載の発明は、絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の上面電極と、前記絶縁基板の上面において前記一対の上面電極と電気的に接続されるように設けられた抵抗体と、前記抵抗体を覆うように設けられたプリコートガラス層と、前記抵抗体およびプリコートガラス層に設けられた抵抗値調整用のトリミング溝とを備え、前記プリコートガラス層の上面に一対のギャップ電極を形成し、かつ前記一対のギャップ電極のそれぞれの一端部を互いに離間するように配置するとともに、前記一対のギャップ電極の他端部と前記上面電極とを電気的に接続したもので、この構成によれば、大きな過電圧が印加された場合、抵抗体より一対のギャップ電極間の方がインピーダンスが低くなるため、抵抗体と並列となっている一対のギャップ電極間で放電が発生し、これにより、抵抗体に過電流が流れないため、大きな過電圧が印加されても抵抗体を保護することができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明のチップ抵抗器は、プリコートガラス層の上面に一対のギャップ電極を形成し、かつ前記一対のギャップ電極のそれぞれの一端部を互いに離間するように配置するとともに、前記一対のギャップ電極の他端部と上面電極とを電気的に接続しているため、大きな過電圧が印加された場合、抵抗体より一対のギャップ電極間の方がインピーダンスが低くなり、これにより、抵抗体と並列となっている一対のギャップ電極間で放電が発生するため、抵抗体に過電流が流れるのを防ぐことができ、この結果、大きな過電圧が印加されても抵抗体を保護することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の一部透過上面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】従来のチップ抵抗器の一部切欠上面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器の一部透過上面図、図2は図1のA−A線断面図である。
【0013】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器は、絶縁基板11と、前記絶縁基板11の上面の両端部に設けられた一対の上面電極12と、前記絶縁基板11の上面において前記一対の上面電極12と電気的に接続されるように設けられた抵抗体13と、前記抵抗体13を覆うように設けられたプリコートガラス層14と、前記抵抗体13およびプリコートガラス層14に設けられた抵抗値調整用のトリミング溝15とを備えていた。そして、前記プリコートガラス層14の上面に一対のギャップ電極16を形成し、かつ前記一対のギャップ電極16のそれぞれの一端部16aを互いに離間するように配置するとともに、前記一対のギャップ電極16の他端部16bと前記上面電極12とを電気的に接続していた。
【0014】
上記構成において、前記絶縁基板11は、矩形状で、純度約96%のアルミナで構成されている。
【0015】
また、前記一対の上面電極12は、絶縁基板11の上面の両端部に設けられ、銀または銅を主成分とする金属により構成されている。
【0016】
そして、前記抵抗体13は、絶縁基板11の上面において一対の上面電極12間に設けられ、酸化ルテニウムとガラスとからなる厚膜抵抗ペーストを印刷することにより構成されている。なお、図1では、一対の上面電極12の上面の一部に抵抗体13の端部が形成されているが、逆に抵抗体13の上面の一部に一対の上面電極12を形成してもよい。
【0017】
さらに、前記プリコートガラス層14は、抵抗体13の全体を覆い、かつ一対の上面電極12の少なくとも一部を露出するように設けられている。また、プリコートガラス層14は、トリミング溝15形成時のレーザの吸収がよい材料で構成され、トリミング溝15形成後の抵抗体13の劣化を防止するために形成される。
【0018】
そしてまた、前記トリミング溝15は、所望の抵抗値に調整するために設けられ、プリコートガラス層14の上方からレーザを照射し、抵抗体13およびプリコートガラス層14をL字状に切削することにより形成される。このとき、抵抗体13の一方の側面13a近傍を始点とし、そこから抵抗体13の他の側面13bに向かってレーザを照射する。なお、トリミング溝15の形状はL字状に限定されるものではなく、直線状、J字状等であってもよく、また、1つだけではなく複数形成してもよい。
【0019】
さらに、前記一対のギャップ電極16は、プリコートガラス層14の上面に設けられ、銀または銀を主成分とする合金を印刷等することにより形成されている。なお、一対のギャップ電極16を構成する材料は、プリコートガラス層14の焼成温度より低い焼成温度の材料を用いる必要があり、また、プリコートガラス層14と同時焼成できるものであってもよい。そして、一対のギャップ電極16それぞれの一端部16a同士が互いに対向し離間するように位置し、かつ一対のギャップ電極16の他端部16bは、露出した一対の上面電極12上面とそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
また、抵抗体13、プリコートガラス層14、および上面電極12の一部を覆うように、樹脂からなる保護層17を形成する。
【0021】
なお、一対のギャップ電極16の一端部16a間の最短距離は600μm以下に設定するのが好ましい。また、トリミング溝15においては抵抗体13が露出し、抵抗体13と一対のギャップ電極16とが短絡する恐れがないようにするため、一対のギャップ電極16は、最も抵抗体13の他側面13b側に位置するトリミング溝15の形成位置t1よりも、抵抗体13の他側面13b側に位置させる必要があり、さらに、一対のギャップ電極16が保護層17の外に露出すると、露出した一対のギャップ電極16を核としてめっきが成長して抵抗値不良、実装不良が生じる可能性があることから、保護層17の端部t2より内側に形成する必要がある(すなわち、図1において、一対のギャップ電極16をt1とt2との間に形成する。)。
【0022】
また、一対のギャップ電極16の一端部16a間を、Ni、Al、Ag、Pd、Cuの少なくとも1種の金属の粉末とシリコーン系樹脂からなる過電圧保護材料で覆うようにし、一対のギャップ電極16間に過電圧をより放電し易くしてもよい。このとき、絶縁体粉とシリコーン系樹脂からなる絶縁物を過電圧保護材料と保護層17との間に形成して、保護層17の絶縁劣化を防止する。
【0023】
そして、絶縁基板11の両端部に上面電極12と接続する銀からなる端面電極(以下、図示せず)を形成し、さらにその後、端面電極の表面にめっき層(以下、図示せず)を形成する。なお、上面電極12と一対のギャップ電極16とを、端面電極やめっき層を介して電気的に接続してもよい。
【0024】
上記したように本発明の一実施の形態におけるチップ抵抗器においては、プリコートガラス層14の上面に一対のギャップ電極16を形成し、かつ一対のギャップ電極16のそれぞれの一端部16aを互いに離間するように配置するとともに、一対のギャップ電極16の他端部16bと上面電極12とを電気的に接続しているため、大きな過電圧が印加された場合、抵抗体13より一対のギャップ電極16間の方がインピーダンスが低くなり、これにより、過電圧は抵抗体13と並列となっている一対のギャップ電極16間で放電されるため、抵抗体13に過電流が流れるのを防ぐことができ、この結果、抵抗体13を保護することができるという効果を有するものである。
【0025】
このとき、抵抗体13が、例えば1kΩ以上の高い抵抗値を有している場合は、過電圧が印加されると、抵抗体13のインピーダンスが一対のギャップ電極16間のインピーダンスを超えるため、過電圧は一対のギャップ電極16の一端部16a間で放電し、これにより、抵抗体13にはほとんど流れることはないため、抵抗体13が過電圧では劣化せず、その抵抗値が大きく変化したり、断線したりする可能性を低減できる。一方、比較的抵抗値が低い場合は、過電流が流れる可能性があるが、抵抗体13中のガラス成分が少ないため、過電圧による抵抗体13の劣化は小さい。
【0026】
さらに、一対のギャップ電極16は上面電極12を介して抵抗体13と接続されているため、抵抗体13で発生した熱が一対のギャップ電極16に伝わり、これにより、抵抗体13の温度を下げることができるため、抵抗体13の長期信頼性を高めることができる。また、抵抗体13で最も高温となるトリミング溝15と抵抗体13の他側面13bとの間の箇所を上面視で覆うように一対のギャップ電極16を構成すれば、上面電極12だけでなくプリコートガラス層14も、抵抗体13で発生した熱を一対のギャップ電極16へ伝えるのに貢献できるため、抵抗体13の発熱温度をより下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るチップ抵抗器は、大きな過電圧が印加されても抵抗体を保護することができるという効果が得られるものであり、特に各種電子機器に使用されるチップ抵抗器等に適用することにより有用となるものである。
【符号の説明】
【0028】
11 絶縁基板
12 上面電極
13 抵抗体
14 プリコートガラス層
15 トリミング溝
16 ギャップ電極
16a ギャップ電極の一端部
16b ギャップ電極の他端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板の上面の両端部に設けられた一対の上面電極と、前記絶縁基板の上面において前記一対の上面電極と電気的に接続されるように設けられた抵抗体と、前記抵抗体を覆うように設けられたプリコートガラス層と、前記抵抗体およびプリコートガラス層に設けられた抵抗値調整用のトリミング溝とを備え、前記プリコートガラス層の上面に一対のギャップ電極を形成し、かつ前記一対のギャップ電極のそれぞれの一端部を互いに離間するように配置するとともに、前記一対のギャップ電極の他端部と前記上面電極とを電気的に接続したチップ抵抗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115106(P2013−115106A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257531(P2011−257531)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】