説明

チップ部品のパターニング処理方法及びチップ製品の製造方法

【課題】 個々に分離されたチップ部品に対してもパターニング処理を容易に行うことの
できるチップ部品のパターニング処理方法及びこれを用いたチップ製品の製造方法を提供
する。
【解決手段】 本発明のチップ部品12Aのパターニング処理方法は、露光装置を用いて
チップ部品に対するパターニング処理を行う方法であって、前記露光装置に対応し、表面
に凹部11a〜11dを備えた支持基板10が用意され、前記凹部に前記チップ部品が収
容され位置決めされた状態で、前記露光装置により前記支持基板のアライメントが行われ
るアライメント工程と、前記露光装置により前記チップ部品の表面に塗布された感光性材
料15に露光処理が施される露光工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチップ部品のパターニング処理方法及びチップ製品の製造方法に係り、特に、
チップ製品の製造プロセス後半に特殊な製造工程を有する場合、或いは、開発段階の試作
プロセスに用いる場合に好適な製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置は、例えば単結晶シリコンなどのウエハに対して種々の処理を施し
てウエハの表層部に縦横に配列された多数の集積回路構造を形成し、その後、ダイシング
などによって個々の集積回路構造毎にウエハを分割して半導体チップを形成し、その後、
半導体チップと外部端子とを導電接続し、この半導体チップを樹脂材料等によってパーケ
ージ化するといった方法で製造されている。
【0003】
上記の製造方法を前提として、従来、ウエハの外周部にアライメントマークを形成した
ダミー領域を設け、当該ダミー領域を保護膜にて被覆した状態で他の正規のチップ領域に
金属膜を成膜し、その後、ダミー領域のアライメントマークを再び使用して金属膜をパタ
ーニングする技術が知られている(例えば、以下の特許文献1参照)。
【0004】
また、ウエハに形成した複数の領域に設けられた半導体素子を完全に分離せずに、一部
を接続した状態とし、この状態で粘着テープに貼り付けた後に、粘着テープを引き伸ばす
ことによって複数の半導体素子を個々に分割する方法が知られている(例えば、以下の特
許文献2参照)。
【0005】
さらに、ワークを分離した後でも所定の姿勢で配列した状態で取り扱うために、スノコ
状ワーク若しくは複数の棒状ワークを樹脂中に埋め込んだ構造とし、これを切断すること
により、複数の微小部品が樹脂中に配列されてなる微小部品列を構成する方法が知られて
いる(例えば、以下の特許文献3参照)。この方法では、切断面が露出した複数の微小部
品を所定姿勢で配列した状態に保持できるので、その後の取り扱いが容易になる。
【特許文献1】特開平6−196547号公報
【特許文献2】特開平11−26403号公報
【特許文献3】特開2003−305698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年、製造コストの低減や製造効率の向上を図るために、各種製品を製造す
る複数の工程を相互に異なる場所で実施するということが一般的になりつつある。例えば
、一般的な半導体製造プロセスを通常の半導体製造工場の製造ラインで実施し、その後、
特殊な後製造工程を他の場所で行う場合がある。この場合、特殊な後製造工程に対して大
規模な製造ラインを構成することは経済的ではなく、また、製品の設計変更や仕様変更に
対する柔軟性に欠けるという問題点がある。
【0007】
また、上記と同様の状況が、チップ製品の開発段階においても生ずる場合がある。例え
ば、CMOS集積回路を形成してなる半導体チップの内部に、マイクロ振動子やマイクロ
アクチュエータ等を構成するMEMS(微小電気機械システム)構造体を備えたチップ製
品を試作する場合において、ウエハ単位で上記チップ製品を試作することは、多数の同様
の構造を備えたチップ製品を無駄に製作することになるとともに、MEMS構造体を形成
するための特殊な後工程のための特別の設備投資が必要になるため、開発コストを増大さ
せる原因になる。例えば、通常の半導体製造プロセスにて酸化シリコンなどの誘電体はM
EMSプロセスでは構造体と基板とを離間させるための犠牲層となる。この犠牲層が付随
するMEMS構造体が構成されてなるチップ部品を形成し、その後、MEMS構造体を動
作可能とするために当該部分において犠牲層を除去する特殊な後工程を実施することが考
えられる。
【0008】
しかしながら、前述の半導体装置の製造方法は、いずれも、ウエハ分割前に特定の処理
を施すことによって複数の半導体チップを特定の状態に保持するものであり、個々に分離
された半導体チップを処理するものではないため、一般的な製造プロセスと、その後の特
殊な製造工程とを完全に分離することができず、特殊な後工程を含めた製造ラインを構築
しなければならないことから、設備投資が大きくなるとともに、設計変更や仕様変更に対
する柔軟性に欠けるという問題点がある。また、開発段階においても、ウエハ単位、或い
は、樹脂で一体化された微小部品列単位での試作を行うことになるため、無駄な試作品を
大量に製造することになるという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その目的は、個々に分離されたチ
ップ部品に対してもパターニング処理を容易に行うことのできるチップ部品のパターニン
グ処理方法及びこれを用いたチップ製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる実情に鑑み、本発明のチップ部品のパターニング処理方法は、露光装置を用いて
チップ部品に対するパターニング処理を行う方法であって、前記露光装置に対応し、表面
に凹部を備えた支持基板が用意され、前記凹部に前記チップ部品が収容され位置決めされ
た状態で、前記露光装置により前記支持基板のアライメントが行われるアライメント工程
と、前記露光装置により前記チップ部品の表面に塗布された感光性材料に露光処理が施さ
れる露光工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、露光装置に対応した支持基板に凹部が設けられ、この凹部にチップ
部品が収容され位置決めされた状態でアライメントが行われるので、支持基板に対するチ
ップ部品の位置決めが容易に実施できるとともに、チップ部品が支持基板に一体化される
ことから、ウエハ単位での処理とほぼ同様の状況にて個々のチップ部品に対しても既存の
或いは一般的な露光装置を用いることが可能になるため、高精度なパターニング処理を安
価かつ確実に行うことが可能になる。また、上記のようにチップ部品を凹部に収容するこ
とで、チップ部品の表面を支持基板の表面に近づけることができるため、アライメントや
露光処理をさらに容易に行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、前記アライメント工程の前に、前記凹部に前記チップ部品を導入する
チップ導入工程と、前記凹部に導入された前記チップ部品とともに前記支持基板に前記感
光性材料を塗布する樹脂塗布工程とを有することが好ましい。これによれば、チップ部品
を凹部に導入してから感光性材料を塗布するため、チップ部品を搭載した支持基板に対し
て塗布作業を行なえばよいことから、感光性材料の塗布作業を容易に行うことができる。
ここで、この樹脂塗布工程では、スピンコーティング法によって感光性材料を支持基板の
表面に塗布することが好ましい。
【0013】
本発明において、前記支持基板には前記表面上において均等に分散された位置に複数の
凹部が設けられ、前記アライメント工程では、前記複数の凹部の少なくとも一つの前記凹
部に前記チップ部品が収容され、他の前記凹部には前記チップ部品若しくは前記チップ部
品に対応するダミー部品が収容された状態でアライメントが行われることが好ましい。こ
れによれば、支持基板に複数の凹部が均等に分散された位置に形成され、これらの凹部に
チップ部品若しくはダミー部品が収容されることで、支持基板の重量分布や応力分布の偏
りを分散させることができるため、支持基板によるチップ部品の支持精度を高めることが
でき、さらに高精度なパターニング処理を行うことが可能になる。
【0014】
本発明において、前記凹部の深さが実質的に前記チップ部品の厚さに等しいことが好ま
しい。これによれば、チップ部品を凹部に収容したときにチップ部品の表面が支持基板の
表面と実質的に一致するため、露光装置の露光面の基準を支持基板の表面に設定した場合
でも、露光時の焦点位置のずれを防止することができる。また、露光装置としてコンタク
ト露光装置やプロキシミティ露光装置を用いた場合でも、マスクとチップ部品との衝突に
よるマスクやチップ部品の損傷を回避することができる。一般に、コンタクト露光装置や
プロキシミティ露光装置では、マスクを支持基板に接触させたり、近接させたりする必要
があるのでマスク寿命は通常短いが、導入コストや維持コストが安価であるので、多品種
・少量生産や開発段階での使用に適している。
【0015】
次に、本発明のチップ製品の製造方法は、露光装置を用いたパターニング処理によりチ
ップ部品からチップ製品を製造する製造方法であって、前記露光装置に対応し、表面に凹
部を備えた支持基板が用意され、前記凹部に前記チップ部品が収容され位置決めされた状
態で、前記露光装置により前記支持基板のアライメントが行われるアライメント工程と、
前記露光装置により前記チップ部品の表面に塗布された感光性材料に露光処理が施される
露光工程と、前記感光性材料が現像されてパターニングマスクが形成されるパターニング
マスク形成工程と、前記パターニングマスクを用いてパターニング処理が行われるパター
ニング処理工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記アライメント工程では、前記支持基板には前記表面上において均
等に分散された位置に複数の凹部が設けられ、前記複数の凹部の少なくとも一つの前記凹
部に前記チップ部品が収容され、他の前記凹部には前記チップ部品若しくは前記チップ部
品に対応するダミー部品が収容された状態でアライメントが行われることが好ましい。
【0017】
本発明において、前記凹部の深さが実質的に前記チップ部品の厚さに等しいことが好ま
しい。
【0018】
本発明において、前記チップ部品は、犠牲層が付随したMEMS構造体を有するもので
あり、前記パターニングマスク形成工程では、前記MEMS構造体の上方位置に前記パタ
ーニングマスクの開口部が形成され、前記パターニング処理工程では、ウエットエッチン
グにより前記開口部を通して前記犠牲層が除去されることが好ましい。これによれば、通
常の半導体製造プロセス等を用いて犠牲層が付随したMEMS構造体を含むチップ部品を
形成した後に、MEMS構造体を動作可能にするための犠牲層の除去工程を別途実施する
ことで、全体としての製造コストの削減、生産設備の有効利用、設計変更や仕様変更への
対応性の向上、開発段階のコスト削減などを図ることができる。
【0019】
本発明において、前記チップ部品は半導体回路を含む半導体部品であることが好ましい
。これによって、一部に特殊な構造(例えば、MEMS構造体)を有するチップ製品であ
っても、半導体回路を構成する一般的な半導体製造プロセスによって構成されたチップ部
品に対して特殊な後工程(例えば、MEMS構造体を完成させるための工程)を実施する
ことができるので、製造ライン全体を新たに構築しなくても対応でき、全体として製造コ
ストの低減を図ることができる。また、チップ製品の設計変更や仕様変更にも柔軟に対応
できるようになる。さらに、開発段階においては開発コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1(a)〜(
c)は、本実施形態のチップ部品のパターニング処理方法及びチップ製品の製造方法に用
いる支持基板10をこの支持基板10に対して露光処理を行う図示しない露光装置の露光
マスク(フォトマスク)20とともに模式的に示す概略説明図である。
【0021】
本実施形態で用いる支持基板10は、その表面11に複数の凹部11a、11b、11
c及び11dを備えたものである。支持基板10は図示例では円盤状に構成され、上記凹
部11a〜11dは中心から等距離離れた位置に等角度間隔で配置されている。支持基板
10は、例えば、単結晶シリコン基板などの半導体、アルミニウムなどの金属、テトラフ
ルオロエチレンなどの合成樹脂等で形成される。支持基板10が半導体や金属で構成され
る場合、凹部11a〜11dはフォトリソグラフィ等によって構成されたエッチングマス
クを用いたドライエッチングやウエットエッチングなどで形成することができる。また、
支持基板10が金属や合成樹脂で構成される場合、凹部11a〜11dは切削加工、鍛造
等の塑性加工、ダイキャストや射出成形等の型成形で形成することができる。
【0022】
凹部11aにはチップ部品12Aが収容され、これにより位置決めされた状態となって
いる。また、凹部11b〜11dには上記チップ部品12Aに対応するダミー部品12B
、12C、12Dがそれぞれ収容され、それぞれが位置決めされた状態となっている。凹
部11a〜11dは予めチップ部品12Aの立体形状(平面形状及び厚さ)に適合した立
体形状(平面形状及び深さ)を有するように形成される。
【0023】
特に、凹部11a〜11dの平面形状は、チップ部品12Aやダミー部品12B〜12
Dを平面方向に位置決めすることができるように設計されることが好ましい。チップ部品
12Aやダミー部品12B〜12Dを凹部に嵌合させたときに完全に位置決め保持される
ように、凹部11a〜11dとチップ部品12A又はダミー部品12B〜12Dとの間に
粘性流動材(例えば、所定の粘性を備えたグリース、ピッチ、ワックス等のペースト)を
用いても構わない。また、凹部11a〜11dの深さは、チップ部品12Aの表面が支持
基板10の表面11と同じ高さ(すなわち、面一)になるように設定されることが好まし
い。
【0024】
また、凹部11a〜11dは相互に実質的に同一の立体形状(平面形状及び深さ)を有
するように構成され、これに対応して、ダミー部品12B〜12Dは、チップ部品12A
と実質的に同一の立体形状(平面形状及び厚さ)を有するように形成される。さらに、ダ
ミー部品12B〜12Dは、チップ部品12Aと実質的に同一の密度(質量)を有するこ
とが好ましく、しかも、実質的に同一の機械的特性(ヤング率、ポアソン比など)を備え
ていることがさらに望ましい。例えば、チップ部品12Aが半導体チップであれば、ダミ
ー部品12B〜12Dもまた同種の半導体を材料とするチップで構成されることが望まし
い。
【0025】
本実施形態では、支持基板10の一つの凹部11aのみに製造対象となるチップ部品1
2Aが収容され、他の凹部11b〜11dには全てダミー部品12B〜12Dが収容され
るが、全ての凹部11a〜11dにチップ部品12Aが収容されてもよく、一部の凹部に
はチップ部品が、他の凹部にはダミー部品がというように、適宜の組み合わせで収容され
てもよい。
【0026】
本実施形態では、支持基板10に複数の凹部11a〜11dが均等に分散した位置に設
けられ、これらの凹部にそれぞれチップ部品やダミー部品を収容されている。このように
構成する理由は、チップ部品12Aを搭載したときの支持基板10の重量分布の偏りや応
力分布の偏りを低減し、支持基板10の変形を抑制することにより、アライメント精度や
露光精度を高めることにある。
【0027】
本実施形態では、図1(b)及び(c)に模式的に示す露光マスク20を備えた露光装
置を用いる。本発明の露光装置は基本的に何ら限定されるものではないが、本実施形態の
場合、コンタクト露光装置或いはプロキシミティ露光装置が用いられる。これらの露光装
置の利点は、導入コストが低く(すなわち安価で)、維持コストも低いことにある。特に
、コンタクト露光装置には露光解像度が1〜2μm程度と高いという利点もある。その代
わり、これらの露光装置には露光マスク20の耐久性が低いという短所があるが、この短
所は多品種少量生産や開発段階における使用には大きな影響を与えない。
【0028】
なお、図1(a)に示すアライメントウインドウW1,W2は、露光装置において支持
基板10をアライメントする際に用いる撮像手段(CCDカメラ等)の画像取得範囲であ
り、図示例の場合、アライメントウインドウW1,W2内にて撮影された凹部11b及び
11dに導入されたダミー部品12B及び12Dの画像位置によって支持基板10の位置
(X軸座標、Y軸座標及びθ角度)を検出し、これに基づいて図示しないXYθテーブル
を動作させるなどの方法でアライメントを実施する。このアライメントを行う際のアライ
メントマークとしては、上記凹部11b、11dの縁形状やダミー部品12B〜12Dの
外形線を用いてもよく、また、凹部11b、11dとは別に支持基板10の表面11上に
形成されたマークを用いてもよい。ダミー部品12B、12Dにマークを形成してもよい
が、ダミー部品12B,12Dの支持基板10に対する位置決め精度がアライメント精度
に影響するので、アライメント精度を高めるには上記のように支持基板10に直接アライ
メントマークを設けることが望ましい。
【0029】
図1(b)はコンタクト露光装置におけるアライメント時の支持基板10と露光マスク
20との位置関係を示す。このように支持基板10と露光マスク20とが離間された状態
で、上記のアライメント動作によって露光マスク20に対して支持基板10の位置及び姿
勢が整合する。ここで、予め、支持基板10の表面11上には感光性材料である感光性樹
脂(レジスト)15がスピンコーティング法などを用いて塗布される。この感光性樹脂1
5は、上記チップ部品12A及びダミー部品12B〜12Dの表面上にも塗布される。必
要であれば、感光性樹脂15は露光前に仮焼成処理(プリベーク)が実施される。そして
、このように感光性樹脂15が支持基板10上に塗布された後に露光装置の試料台に設置
され、上記のアライメントが実施される。
【0030】
図1(c)は同露光装置における露光時の支持基板10と露光マスク20との位置関係
を示している。露光マスク20は支持基板10の表面に接触し(コンタクト露光装置の場
合)、或いは、きわめて近接した位置に配置され(プロキシミティ露光装置の場合)、こ
こに図示しない光学系によって形成された平行光が露光マスクを介して支持基板10に照
射される。これによって、上記の感光性樹脂15は露光マスク20の露光パターンに応じ
て感光する。その後、現像処理及び必要に応じて焼成処理(ポストベーク)を行うことに
よって、チップ部品12Aの表面に所定パターンの樹脂層(例えば、後述するパターニン
グマスク)が形成される。
【0031】
なお、本発明のパターニング処理は、後述するパターニングマスクの形成する工程を含
む処理に限らず、チップ部品の表面上に所定パターンの感光性材料自体で構成される表面
構造を形成するための処理であってもよい。例えば、チップ部品の表面上に感光性材料で
構成された所定パターンの絶縁膜を形成するためのパターニング処理であってもよい。
【0032】
コンタクト露光装置を用いる場合、上記凹部11a〜11dの深さが上記チップ部品1
2Aの厚さと実質的に一致していることが有利である。これは、露光マスク20が支持基
板10の表面11に接触するか、或いは、きわめて近接するため、チップ部品12Aが支
持基板10の表面11から突出していると、露光マスク20がチップ部品12Aに衝突し
ていずれか一方或いは双方が損傷する危険があるからである。また、チップ部品12Aの
厚さが実質的に凹部11a〜11dの深さよりも小さいと、露光焦点のずれが生じ、露光
精度が低下することも考えられる。
【0033】
なお、上記の深さが厚さと実質的に一致するとは、凹部にチップ部品12Aが収容され
たときにチップ部品12Aの表面が支持基板10の表面11に一致するような関係にある
ことを言う。したがって、例えば、凹部の底にチップ部品が導入不可能な狭小部分が存在
しても、当該狭小部分は凹部の深さを規定するに際して考慮されない。
【0034】
図2(a)は、支持基板10上に重ねられた状態の露光マスク20の平面形状を示す平
面図である。露光マスク20は、基材21で構成され、チップ部品12Aが収容された凹
部11aと平面的に重なる範囲に遮光パターン22が設けられている。この遮光パターン
22の形成範囲内には開口22aが設けられている。この開口22aは、チップ部品12
Aの表面の一部を選択的に露光するためのものである。
【0035】
本実施形態の場合、露光マスク20の基材21は露光波長に対して透過性を有する材料
で構成される。例えば、紫外線で露光する場合には、その紫外線の波長に対して透過率の
高い材料が使用される。また、適宜の撮像手段によって撮影された画像に基づいてアライ
メントを行う場合には、その撮像手段によって支持基板10が透視可能な材料でもあるこ
とが好ましい。当該材料としては、石英、ソーダガラス等の各種のガラス、ポリエステル
などの樹脂材料等を用いることができる。
【0036】
露光マスク20は、上記の基材21の表面(好ましくは支持基板10とは反対側の面)
上に、露光波長に対して実質的に不透過性を有する材料、例えば、クロムなどの金属膜や
銀塩乳剤などで構成された遮光膜が被着され、これによって上記遮光パターン22が形成
される。この場合、上記の開口22aは遮光膜の形成されていない領域となっている。
【0037】
本実施形態の場合、遮光パターン22は、アライメントウインドウW1,W2が設定さ
れる領域において撮像を妨害しないように構成されなければならない。図示例では、遮光
パターン22は、支持基板10のアライメントが完了した状態で、支持基板10の凹部1
1aを中心とし、凹部11aを覆う範囲を越えた広がりを有するように形成されるが、同
時に、凹部11bや11cを中心とし、これらを覆う範囲を越えた十分に広い範囲を覆わ
ないように形成される。
【0038】
開口22aは図示例の場合、遮光パターン22(遮光膜)の内部に形成された矩形の開
口として表現されているが、実際には、開口22aは、チップ部品12Aに必要な所定の
露光パターンが実現されるように任意の平面パターンで形成される。例えば、露光パター
ンが円形であれば円形の開口22aが形成され、露光パターンが複数の場所で必要であれ
ば複数の開口22aが形成される。
【0039】
アライメント工程では、アライメントウインドウW1,W2によって所定のアライメン
トマークが撮像され、このアライメントマークを基準として支持基板10と露光マスク2
0との間のアライメント(X方向、Y方向、θ方向の整合)が行われる。このアライメン
トによって、遮光パターン22(の開口22a)が支持基板10上のチップ部品12A(
の所定の表面領域)に対して正確に位置決めされる。
【0040】
図2(b)に示す露光マスク20′は、チップ部品12Aに対応する上記と同様の遮光
パターン22に加えて、別の遮光パターン23を備えている。遮光パターン23は、上記
のアライメントウインドウW1,W2と対応する領域に開口23a,23bを備え、アラ
イメントウインドウW1,W2によるアライメントマークの撮像に遮光パターン23が障
害とならないように構成されている。
【0041】
このように、遮光パターンはチップ部品12Aに対する所定のパターニング処理を可能
とするパターン形状(上記遮光パターン22の開口22a)を備えているとともに、アラ
イメントウインドウW1,W2を用いたアライメント作業に支障を与えないように構成さ
れていればよい。したがって、これらの条件を満たすものであれば、任意のパターン形状
を採用することができる。
【0042】
ただし、露光マスク20,20′としては、目視や支持基板10の全体撮影等による大
まかな調整を可能にするために、露光マスクを通して下方に配置された支持基板10の表
面11の透視可能な範囲をできる限り大きく確保したものであることが好ましい。すなわ
ち、目視や全体撮影等により露光マスクを通して支持基板10の概略姿勢を検出して大ま
かな調整を実施した後に、露光装置の上記アライメントウインドウW1,W2を用いた精
密なアライメントを行うことによって、効率的にアライメント作業を実施できる。したが
って、一般的には、露光マスクはできるだけ広い範囲で透明であることが好ましい。上記
図示例の場合、図2(a)に示すように、チップ部品12Aの収容される凹部11a及び
その周辺に重なる範囲にのみ遮光パターン22が形成されることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、チップ部品12Aを支持基板10上において位置決め保持された状態
で搭載することによって上記露光装置への取り付けが可能になるだけでなく、チップ部品
12Aの取り扱いが全体的に容易になる。特に、チップ部品12Aは支持基板10の凹部
11aに収容された状態で位置決めされているので、支持基板10に対するチップ部品1
2Aの装着がきわめて容易になるとともに、装着状態の維持も確実になる。
【0044】
次に、図3乃至図5を参照して、上記のチップ部品のパターニング処理方法及びチップ
製品の製造方法の実施形態の対象となるチップ部品及びチップ製品の例、並びに、チップ
部品を対象として行われる後製造工程について説明する。
【0045】
図3は、上記実施形態に用いるチップ部品12Aの構造を示す拡大部分縦断面図である
。本実施形態のチップ部品12Aは、単結晶シリコンなどで構成される半導体基板121
を有し、この半導体基板121の表層部に、例えば、半導体基板121がp型基板であれ
ば、n型不純物領域121a,121c、p型不純物領域121b,121d、熱酸化膜
121e、ゲート絶縁膜121f、導電性を有するポリシリコン等で構成されるゲート電
極121gなどで構成されるCMOS構造などの(モノリシックな)回路構造122が形
成されている。
【0046】
上記の回路構造122上には酸化シリコン等で構成される絶縁層123が形成され、こ
の絶縁層123上には導電性を有するポリシリコン等で構成される可動電極(振動体)1
24及び固定電極125が設けられ、さらにその上には酸化シリコン等で構成される絶縁
層126が形成される。
【0047】
絶縁層126上には、配線層127A,127Bと層間絶縁膜128A,128Bとを
含む積層構造が形成され、これらを合成樹脂等で構成される保護膜(永久レジスト)12
9が被覆している。
【0048】
なお、上記の可動電極124及び固定電極125はMEMS構造体を構成する。MEM
S構造体としては、MEMS振動子、MEMSアクチュエータ等の種々の電気機械的素子
を挙げることができる。チップ部品12Aでは、このMEMS構造体は犠牲層となる絶縁
層123,126を付随した状態で形成されている。
【0049】
上記の構成は周知の半導体製造プロセスによってウエハ単位で製造され、その後、ウエ
ハをダイシング等により分割することで、個々のチップ部品12Aとして形成される。チ
ップ部品12Aは上述のように支持基板10に装着され、その後、スピンコーティング法
などによって表面に感光性樹脂(感光性レジスト)15が塗布される。
【0050】
次に、感光性樹脂15には、上述の実施形態のパターニング処理方法によって露光処理
及び現像処理が施され、これによって、図4に示すように、開口部16aを備えたパター
ニングマスク16が形成される。この開口部16aは、上記のMEMS構造体に付随する
犠牲層123,126を除去するために必要な位置に、必要な面積及び形状となるように
構成される。開口部16aの位置、面積及び形状は、上記の露光マスク20,20′の露
光パターンによって決定される。
【0051】
次に、上記パターニングマスク16を用いて、図5に示すように、例えばドライエッチ
ング法によって開口部16a下の層間絶縁膜128A,128B及び保護膜129を除去
する。その後、フッ化水素酸系のエッチング液を用いてウエットエッチングを施すことに
より、上記の絶縁層(犠牲層)123,126を部分的に除去することによって、図6に
示すように、MEMS構造体である可動電極124及び固定電極125が動作可能な態様
に形成される。具体的には、図示例の場合には可動電極124の周囲の絶縁層123,1
26が除去されることにより、可動電極124が半導体基板121や絶縁層123,12
6に対して離間し、縦振動可能な状態になる。
【0052】
上記の後工程によって、MEMS構造体を含むチップ製品が完成される。ここで、図3
に示すチップ部品12Aの構造は通常の半導体製造プロセスで形成することのできる構造
であるのに対して、図3乃至図6に示す後工程は、通常の半導体製造プロセスとは異なる
プロセスであり、MEMS構造体を動作可能な態様とするための特殊なプロセスである。
したがって、図3に示す断面構造をウエハ単位で通常の半導体製造プロセスにて製造し、
これを通常の半導体製造プロセスで行われるダイシング等でチップ部品12Aに分割した
後に、上記のような後工程を実施する方法は、MEMS構造体を含むチップ製品を最初か
ら製造するための新たな製造ラインを新規に導入する場合に比べて、製造コスト上でも大
きな利点があり、また、チップ製品の開発コストの低減、開発期間の短縮、設計変更や仕
様変更のコストや期間の削減などにおいてもきわめて有利な状況をもたらす。
【0053】
尚、本発明のチップ部品のパターニング処理方法及びチップ製品の製造方法は、上述の
図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変
更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、半導体装置を構成するチッ
プ部品(半導体チップ)に対して所定の後工程を施す場合を前提に説明したが、本発明は
半導体装置に限らず、例えば、セラミックコンデンサやセラミックインダクタ等のような
チップ状のセラミック部品などのように半導体装置以外の回路装置であってもよく、さら
に、回路構造を含まない他のチップ部品であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に用いる支持基板の平面図(a)、支持基板及び露光マスクのアライメント時の断面図(b)、並びに、支持基板及び露光マスクの露光時の断面図(c)。
【図2】本実施形態に用いる支持基板及び露光マスクのアライメント時における平面図(a)、並びに、他の露光マスクを用いた場合の平面図(b)。
【図3】本実施形態で用いるチップ部品の構造例を示す縦断面図。
【図4】チップ部品の表面上にパターニングマスクを形成した様子を示す縦断面図。
【図5】パターニングマスクを通してドライエッチングを施した様子を示す縦断面図。
【図6】パターニングマスクを通してウエットエッチングを施した様子を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0055】
10…支持基板、11…表面、11a〜11d…凹部、12A…チップ部品、12B〜1
2D…ダミー部品、W1,W2…アライメントウインドウ、15…感光性樹脂、16…パ
ターニングマスク、16a…開口部、20,20′…露光マスク、21…基材、22,2
3…遮光パターン、22a,23a,23b…開口、121…半導体基板、122…回路
構造、123,126…絶縁層、127A,127B…配線層、128A,128B…層
間絶縁膜、129…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置を用いてチップ部品に対するパターニング処理を行う方法であって、
前記露光装置に対応し、表面に凹部を備えた支持基板が用意され、
前記凹部に前記チップ部品が収容され位置決めされた状態で、前記露光装置により前記
支持基板のアライメントが行われるアライメント工程と、
前記露光装置により前記チップ部品の表面に塗布された感光性材料に露光処理が施され
る露光工程と、
を有することを特徴とするチップ部品のパターニング処理方法。
【請求項2】
前記アライメント工程の前に、前記凹部に前記チップ部品を導入するチップ導入工程と
、前記凹部に導入された前記チップ部品とともに前記支持基板に前記感光性材料を塗布す
る樹脂塗布工程とを有することを特徴とするチップ部品のパターニング処理方法。
【請求項3】
前記支持基板には前記表面上において均等に分散された位置に複数の凹部が設けられ、
前記アライメント工程では、前記複数の凹部の少なくとも一つの前記凹部に前記チップ
部品が収容され、他の前記凹部には前記チップ部品若しくは前記チップ部品に対応するダ
ミー部品が収容された状態でアライメントが行われる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ部品のパターニング処理方法。
【請求項4】
前記凹部の深さが実質的に前記チップ部品の厚さに等しいことを特徴とする請求項1乃
至3のいずれか一項に記載のチップ部品のパターニング処理方法。
【請求項5】
前記露光装置はコンタクト露光装置若しくはプロキシミティ露光装置であることを特徴
とする請求項5に記載のパターニング処理方法。
【請求項6】
露光装置を用いたパターニング処理を行うことによりチップ部品からチップ製品を製造
する製造方法であって、
前記露光装置に対応し、表面に凹部を備えた支持基板が用意され、
前記凹部に前記チップ部品が収容され位置決めされた状態で、前記露光装置により前記
支持基板のアライメントが行われるアライメント工程と、
前記露光装置により前記チップ部品の表面に塗布された感光性材料に露光処理が施され
る露光工程と、
前記感光性材料が現像されてパターニングマスクが形成されるパターニングマスク形成
工程と、
前記パターニングマスクを用いてパターニング処理が行われるパターニング処理工程と

を有することを特徴とするチップ製品の製造方法。
【請求項7】
前記アライメント工程では、前記支持基板には前記表面上において均等に分散された位
置に複数の凹部が設けられ、前記複数の凹部の少なくとも一つの前記凹部に前記チップ部
品が収容され、他の前記凹部には前記チップ部品若しくは前記チップ部品に対応するダミ
ー部品が収容された状態でアライメントが行われることを特徴とする請求項6に記載のチ
ップ製品の製造方法。
【請求項8】
前記凹部の深さが実質的に前記チップ部品の厚さに等しいことを特徴とする請求項6又
は7に記載のチップ製品の製造方法。
【請求項9】
前記チップ部品は、犠牲層が付随したMEMS構造体を有するものであり、
前記パターニングマスク形成工程では、前記MEMS構造体の上方位置に前記パターニ
ングマスクの開口部が形成され、
前記パターニング処理工程では、ウエットエッチングにより前記開口部を通して前記犠
牲層が除去される
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載のチップ製品の製造方法。
【請求項10】
前記チップ部品は半導体回路を含む半導体部品であることを特徴とする請求項6乃至9
のいずれか一項に記載のチップ製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−261531(P2006−261531A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79309(P2005−79309)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】