説明

チモール、オイゲノール、ゲラニオール、シトラール、及びL−カルボンから選択されたテルペン又はテルペン混合物を含む組成物及び方法

本発明は、植物感染の処置に特に適したテルペンを含む組成物と、そのような組成物を作製する方法と、それらを使用する方法とに関する。また本発明は、テルペン及び中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む組成物と、そのような組成物を調製するための方法にも関し;そのような組成物は、テルペンの安定性及び活性を増大させ、テルペンに適した担体を提供する。また本発明は、そのような組成物を、医学、獣医学、及び農業の分野で使用する方法にも関する。詳細には、開示されたテルペンは、チモール、オイゲノール、ゲラニオール、シトラール、及びL−カルボンである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、植物感染の処置に特に適したテルペンを含む組成物と、そのような組成物を作製する方法と、それらを使用する方法とに関する。また本発明は、テルペン及び中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む組成物と、そのような組成物を調製するための方法にも関し;そのような組成物は、テルペンの安定性及び活性を増大させ、テルペンに適した担体を提供する。本発明はさらに、医学、獣医学、及び農業の分野において、そのような組成物を使用する方法に関する。
【0002】
テルペンは、自然界に、主として精油の成分として植物に広く存在する化合物である。テルペンのビルディングブロックは、炭化水素イソプレン(Cである。テルペンの例には、シトラール、ピネン、ネロール、β−イオノン、ゲラニオール、カルバクロール、オイゲノール、カルボン、テルペニオール(terpeniol)、アネトール、カンファー、メントール、リモネン、ネロリドール、ファルネソール、フィトール、カロテン(ビタミンA)、スクアレン、チモール、トコトリエノール、ペリリルアルコール、ボルネオール、ミルセン、シメン(simene)、カレン、テルペネン、及びリナロールが含まれる。
【0003】
テルペンは、一般的に安全と認められる物質(Generally Recognized as Safe)(GRAS)として分類されており、香料及びアロマ業界で長年にわたって用いられている。ラットでのシトラールのLD50は、約5g/kgであり、これらの化合物が比較的安全であることをさらに示している。さらに、テルペンは酸素(例えば、空気)に暴露後、約28日という比較的短い寿命を有する。テルペンはCOと水に分解する。このテルペンの分解又は破壊は、本発明の組成物及び方法の安全性及び環境保全性を実証している。
【0004】
テルペンは、癌細胞の増殖を阻害し、腫瘍の大きさを縮小し、コレステロールレベルを低下し、in vitroで微生物に対する殺菌作用を有することが見出されている。Owawunmi(Letters in Applied Microbiology、1993、9(3):105〜108)は、0.01%超のシトラールを含む増殖培地が大腸菌(E.coli)の濃度を低減し、0.08%では殺菌作用のあることを示した。米国特許第5673468号は、消毒又は防腐性洗浄剤として用いられる、パイン油をベースとするテルペン製剤を記載している。米国特許第5849956号は、コメから発見されたテルペンが抗真菌活性を有することを教示している。米国特許第5939050号は、2又は3テルペンの組合せを含む口腔衛生抗微生物製品が相乗効果を示したことを記載している。いくつかの米国特許(米国特許第5547677号、第5549901号、第5618840号、第5629021号、第5662957号、第5700679号、第5730989号)は、ある種の水中油型エマルションが抗微生物、アジュバント、及び送達特性を有することを教示している。
【0005】
テルペンは、様々な作用機序を介して作用する、有効かつ非毒性の食事性抗腫瘍剤であることがわかっている(Crowell等、Crit.Rev.Oncog.1994、5(1):1〜22;Crowell等、Adv.Exp.Med.Biol.1996、401:131〜136)。テルペン類のゲラニオール、トコトリエノール、ペリリルアルコール、β−イオノン、及びd−リモネンは、肝臓のHMG−CoA還元酵素活性、コレステロール合成の律速段階を抑制し、動物のコレステロールレベルを緩やかに低下する(Elson等、J.Nutr.1994、124:607〜614)。d−リモネン及びゲラニオールは、乳腫瘍を低減し(Elegbede等、Carcinogenesis、1984、5(5):661〜664;Elegbede等、J.Natl.Cancer Inst.1986、76(2):323〜325;Karlson等、Anticancer Drugs、1996、7(4):422〜429)、移植腫瘍の増殖を抑制した(Yu等、J.Agri.Food Chem.1995、43:2144〜2147)。
【0006】
テルペンはさらに、in vitroで細菌及び真菌(Chaumont等、Ann.Pharm.Fr.1992、50(3):156〜166;Moleyar等、Int.J.Food Microbiol、1992、16(4):337〜342;及びPattnaik等、Microbios、1997、89(358):39〜46)、並びにいくつかの内部及び外部寄生生物(Hooser等、J.Am.Vet.Med.Assoc.1986、189(8):905〜908)の増殖を阻害することがわかっている。ゲラニオールは、カリウム漏出速度を増大し、膜流動性を妨げることによって、カンジダアルビカンス(Candida albicans)及びサッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の増殖を阻害することがわかっている(Bard等、Lipids、1998、23(6):534〜538)。β−イオノンは、胞子発芽の阻害、及び寒天での増殖阻害によって判別された抗真菌活性を有する(Mikhlin等、A.Prikl.Biokhim.Mikrobiol、1983、19:795〜803;Salt等、Adam.Physiol.Molec.Plant Path、1986、28:287〜297)。テプレノンゲラニルゲラニルアセトンは、ヘリコバクターピロリ(H.pylori)に抗菌作用を有する(Ishii、Int.J.Med.Microbiol.Virol.Parasitol.Infect.Dis.1993、280(1−2):239〜243)。1%のローズ油を含む市販製品Rosanolは、いくつかの細菌(シュードモナス(Pseudomonas)、ブドウ球菌(Staphylococus)、大腸菌、及びヘリコバクターピロリ)の増殖を阻害することが示されている。ゲラニオールは、ローズ油の活性成分(75%)である。ローズ油とゲラニオールは2mg/lの濃度で、in vitroにおいてヘリコバクターピロリの増殖を阻害した。いくつかの薬草剤の抽出物は、ヘリコバクターピロリに阻害作用を有することが示されており、もっとも有効なものはデカーシノールアンゲレート(decursinol angelate)、デカーシン、マグノロール、ベルベリン、桂皮酸、デカーシノール、及び没食子酸である(Bae等、Biol.Pharm.Bull.1998、21(9)990〜992)。カシューアップル、アナカルド酸、及び(E)−2−ヘキセナールは、ヘリコバクターピロリに対して殺菌作用を示した。
【0007】
ジテルペン、即ちトリコラブダルA(trichorabdal A)(R.トリコカルパ由来)は、ヘリコバクターピロリに対して非常に強い抗菌作用を示した(Kadota等、Zentralbl.Bakteriol、1997、287(1):63〜67)。
【0008】
11種の異なるテルペンの溶液が、in vitro試験で病原性細菌の増殖の阻害に有効であり、100ppmから1000ppmの範囲のレベルが有効であった。テルペンは1%ポリソルベート20を含む水に希釈された(Kim等、J.Agric.Food Chem.1995、43:2839〜2845)。
【0009】
微生物に対するテルペンの様々な作用様式が存在する可能性があり、それらは(1)細胞膜のリン脂質二重層を妨げ、(2)種々の酵素系(HMG還元酵素)を阻害し、(3)遺伝物質を破壊又は不活化することができる。テルペンの作用様式が非常に基本的であるため、例えばコレステロールを遮断するため、感染因子はテルペンに対する耐性を作ることができないと考えられている。
【0010】
しかしながら、テルペンの使用にはいくつかの欠点がある。それらには以下のものが含まれる。
−テルペンは液体であるため、取り扱いが困難となり、ある種の目的には不適切となり得る。
−テルペンはあまり水と混和性でなく、水性エマルションを調製するために、一般に洗剤、界面活性剤、又は他の乳化剤の使用を必要とする。しかしながら、高剪断下でテルペンを混合することによって、安定な溶液を得ることができる。
−乾燥粉末テルペン製剤は、一般に低重量パーセントのテルペンを含むのみである。
−テルペンは、水性エマルション系で酸化する傾向があり、長期貯蔵が問題となる。
【0011】
成分送達系を提供するための現在の噴霧被覆、押し出し、コアセルベーション、分子封入、及び噴霧乾燥/冷却の技法には限界がある。
【0012】
パン酵母細胞壁はパン酵母細胞に由来し、不溶性バイオポリマー、β−1,3−グルカン、β−1,6−グルカン、マンナン、及びキチンからなる。それらは典型的に、空洞を囲む厚さわずか0.2〜0.3ミクロンの外皮膜を有する直径2〜4ミクロンのミクロスフェアである。この物質は相当な液体保持能力を有し、典型的にその重量の5〜25倍の液体を吸収する。外皮は充分に多孔性であり、150000ダルトンまでの大きさのペイロードが外皮を通過し、球形粒子の中空の空洞に吸収されることができる。パン酵母細胞壁は、いくつかの独特な特性を有し、それらの特性には熱安定性(例えば、121℃まで)、剪断安定性、pH安定性(例えば、pH2〜12)、及び高濃度で著しい粘性を形成しないことが含まれる。その物理的特性に加えて、この組成物は心血管及び免疫増強的な健康上の利益をもたらす天然の健康的な食物繊維を含有する。
【0013】
酵母細胞壁は、酵母細胞の可溶性成分から不溶性粒子画分を抽出及び精製することによって、酵母細胞から調製される。真菌細胞壁は、酵母抽出物製造の不溶性副生成物から生成することができる。さらに、酵母細胞は、酵母細胞壁を破壊することなく、水酸化物水溶液で処理することができ、それにより細胞のタンパク質及び細胞内タンパク質が消化され、酵母細胞壁成分は著しくタンパク質に汚染されないまま残され、実質的に変化していないβ(1−6)及びβ(1−3)結合グルカンの細胞壁を有することになる。全グルカン粒子及びそれらを調製する方法のより詳しい説明は、Jamas等によって、米国特許第4810646号、並びに同時係属米国特許出願第166929号、第297752号、及び第297982号に記載されている。Novogen Research Pty Ltd.に譲渡された米国特許第6242594号は、アルカリ抽出、酸抽出、次いで有機溶媒で抽出し、最後に乾燥することによって、酵母グルカン粒子を調製する方法を記載している。AS Biotech−Mackzymalに譲渡された米国特許第5401727号は、酵母グルカン粒子を得る方法、並びに水生動物において抵抗力を高めるために、及びワクチン接種のアジュバントとしてそれらを用いる方法を開示している。Alpha−Beta Technology Inc.に譲渡された米国特許第5607677号は、種々の薬剤を送達するためのアジュバント及び送達パッケージとしての中空全グルカン粒子の使用を開示している。上述の特許及び出願の教示は、参照により本明細書の一部とする。
【0014】
他の種類の酵母及び真菌細胞は、グルカンを含有しない細胞壁を有する。そのような酵母及び真菌の細胞壁は、細胞壁粒子を得るために上述したものと類似の技法によって単離できる。
【0015】
さらに、多くの植物、藻類、細菌、及び他の微生物の細胞も細胞壁を含む。細胞壁の構造及び構成は微生物間で異なるが、一般に強固であり、比較的不活性な構造である。酵母に関して上に述べたような通常の技法によって、そのような細胞由来の細胞壁粒子を得ることができる。
【0016】
テルペンは、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子内に吸収させ、安定に封入することができる。そのような粒子へのテルペンの封入は、粒子をテルペンと共にインキュベートすることによって実現することができる。
【0017】
複数のテルペンの、ある混合物は、他よりも高い効力を示すことがわかっている。具体的には、微生物、特に植物病原体を制御する際に高い効力を有する製剤が、確認されている。
【0018】
本発明によれば、チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含む、テルペン成分を含んだ組成物が提供される。そのような製剤は、微生物を死滅させるのに特に強力であることが示されている。特にこれらの製剤は、一般に、植物感染の処置及び予防に有効であることが示されている。
【0019】
本発明の実施形態では、組成物は、チモールと、オイゲノール、ゲラニオール、シトラールの1種又は複数との組合せを含んだテルペン成分を含む。そのような組成物は、植物感染の処置及び予防に特に有効であることがわかっている。そのような組成物中にチモールが存在することにより、典型的には高レベルの効力が得られる。しかし、チモールそれ自体は、典型的には、ゲラノール、オイゲノール、及びシトラールの1種又は複数と組み合わせた場合ほど有効ではない。これは、本発明の組合せにおける様々なテルペンの間で生ずる相乗効果があることを、示唆している。
【0020】
医療又は農業で使用される新しい製品の規制認可を得る場合、一般に、活性成分がより少ない組成物ほど登録が簡単である。したがって本発明の組成物は、4種又はそれよりも少ないテルペン、好ましくは3種又はそれよりも少ないテルペンを含んだテルペン成分を含むことが、一般に好ましい。
【0021】
一実施形態において、組成物は、チモール及びゲラニオールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、及び約10%から90%の間のゲラニオールを含み;適切にはテルペン成分は、約40%から60%の間のチモール、及び約40%から60%の間のゲラニオールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール及びゲラニオールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって、特に真菌/卵菌に対して非常に有効であることが示されている。
【0022】
別の実施形態において、組成物は、チモール及びシトラールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、及び約10%から90%の間のシトラールを含み;適切にはテルペン成分は、約40%から60%の間のチモール、及び約40%から60%の間のシトラールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール及びシトラールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって、特に細菌に対して非常に有効であることが示されている。
【0023】
別の実施形態において、組成物は、チモール及びオイゲノールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、及び約10%から90%の間のオイゲノールを含み;適切にはテルペン成分は、約40%から60%の間のチモール、及び約40%から60%の間のオイゲノールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール及びオイゲノールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0024】
別の実施形態において、組成物は、チモール、ゲラニオール、及びシトラールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、約10%から90%の間のゲラニオール、及び約10%から90%の間のシトラールを含み;適切にはテルペン成分は、約25%から50%の間のチモール、約25%から50%のゲラニオール、及び約25%から50%の間のシトラールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール、ゲラニオール、及びシトラールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0025】
別の実施形態において、組成物は、チモール、オイゲノール、及びシトラールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、約10%から90%の間のオイゲノール、及び約10%から90%の間のシトラールを含み;適切にはテルペン成分は、約25%から50%の間のチモール、約25%から50%の間のオイゲノール、及び約25%から50%の間のシトラールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール、オイゲノール、及びシトラールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0026】
別の実施形態において、組成物は、チモール、ゲラニオール、及びオイゲノールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、約10%から90%の間のゲラニオール、及び約10%から90%の間のオイゲノールを含み;適切にはテルペン成分は、約25%から50%の間のチモール、約25%から50%の間のゲラニオール、及び約25%から50%の間のオイゲノールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール、ゲラニオール、及びオイゲノールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0027】
別の実施形態において、組成物は、チモール、オイゲノール、及びゲラニオールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、約10%から90%の間のオイゲノール、及び約10%から90%の間のゲラニオールを含み;適切には、約25%から50%の間のチモール、約25%から50%の間のオイゲノール、及び約25%から60%の間のゲラニオールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態において、テルペン成分は、チモール、オイゲノール、及びゲラニオールのみからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0028】
別の実施形態において、組成物は、チモール、ゲラニオール、オイゲノール、及びシトラールを含んだテルペン成分を含む。場合によって、テルペン成分は、約10%から90%の間のチモール、約10%から90%の間のゲラニオール、約10%から90%の間のオイゲノール、及び約10から90%の間のシトラールを含み;適切にはテルペン成分は、約15%から50%の間のチモール、約15%から50%の間のゲラニオール、約15%から50%の間のオイゲノール、及び約15%から50%の間のシトラールを含む。テルペン成分は、場合によって、任意のその他のテルペンを10%未満、適切には5%未満含むことができる。一実施形態では、テルペン成分は、本質的に、チモール、ゲラニオール、オイゲノール、及びシトラールからなる。そのような組成物は、広範な植物病原体全体にわたって非常に有効であることが示されている。
【0029】
L−カルボンを含むテルペン組成物は、典型的には、細菌及び真菌/卵菌の植物感染を処置する際、それほど有効ではないことがわかっている。したがって、上述の組成物がそのような感染の処置を目的とする場合、一般に、組成物はL−カルボンを含有しないことが好ましい。
【0030】
上述の製剤は、植物の細菌及び真菌/卵菌を死滅させるのに、特に有効であることが実証されている。しかし、これらの高レベルの効力は、他の生物で感染を引き起こす病原体に関して観察されると想定することが、理にかなっている。例えば、ヒトを含めた動物を冒す細菌及び真菌である。したがって本発明の組成物は、一般に、動物及びヒトの病原体を死滅させるのに適している。
【0031】
さらにテルペンは、昆虫及びクモ類を死滅させるのに有効であることが示されており、本発明による組成物が、そのような生物を死滅させるのに高い効力を有するであろうことを、無理なく予測することができる。
【0032】
テルペンは、これらを含有する抽出物又は精油の名称、例えばレモングラス油(シトラールを含有する)の名称でも知られることに、留意すべきである。
【0033】
本発明の一態様において、組成物は、溶媒に加えた懸濁液又は溶液中に、上記にて定義されたテルペン成分を含む。溶媒は、水であることが適切である。
【0034】
テルペンの水溶液は、テルペン及び水を高剪断力で混合することによって、実現することができる(例えば、国際公開第03/020024号パンフレット参照)。
【0035】
界面活性剤と一緒にテルペンを水に加えた懸濁液(又はエマルション)が、当技術分野で周知である(例えば、国際公開第03/020024号パンフレット及び国際公開第2005/070213号パンフレット参照)。界面活性剤は、非イオン性、陽イオン性、又は陰イオン性でよい。適切な界面活性剤の例には、硫酸ラウリル、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリグリセリルエステル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノステアリン酸トリグリセロール、ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレエート、Tween(登録商標)、Span(登録商標)20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60、Span(登録商標)80、Brig 30、又はこれらの混合物が含まれる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、上述のテルペン成分をする中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む組成物が提供される。
【0037】
本明細書では、「中空グルカン粒子」という用語には、構造成分としてグルカンを含む任意の中空粒子が含まれる。したがって、特にこの用語には、酵母細胞壁(精製又は未精製形態)、又は中空全グルカン粒子が含まれる。「細胞壁粒子」という用語は、グルカンが構造成分ではない、細胞の壁(精製又は未精製形態)を含む粒子を指す。適切な粒子には、植物、藻類、真菌、又は細菌細胞の細胞壁が含まれる。細胞壁粒子は一般に、それらが由来する細胞の形状を保持しており、したがって中空グルカン粒子のように、テルペン成分の封入に適した中空の中心腔を提供する。
【0038】
本発明の中空グルカン粒子又は細胞壁粒子は安定にテルペン成分を封入できる必要がある。一般にこれは、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子が、テルペン成分(一般に、テルペン成分は比較的高濃度である)と共にインキュベートされる間、その構造を維持できなければならず、テルペン成分が、粒子内に移動できなければならないことを意味する。中空グルカン粒子及び細胞壁粒子は一般に、比較的不活性な材料から形成され、多孔性であり、したがって一般に、中空グルカン粒子及び細胞壁粒子はテルペン成分を封入できると想定され得る。
【0039】
本発明による組成物は、細菌、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、及び/又は線虫を含む種々の感染因子に対して有効である。
【0040】
中空グルカン粒子又は細胞壁粒子内へのテルペン成分の封入により、下記の利点をもたらすことができる。
−テルペンのペイロードを最大にする。
−封入されていないペイロードを最小にする。
−ペイロード安定性を制御する。
−ペイロード放出動態を制御する。
−質量及び均一性を増大するために、液体テルペンの固体形態を作る。
−テルペンの取り扱い及び適用を簡易にする。
−テルペンのにおい及び味をマスキングする。
【0041】
特に適切な中空グルカン粒子又は細胞壁粒子は、真菌細胞壁、好ましくは酵母細胞壁である。酵母細胞壁は、それらが由来する酵母細胞の三次元構造を保持する酵母細胞の調剤である。したがって酵母細胞壁は、テルペン成分が酵母細胞壁内部に封入されることを可能にする中空構造を有する。酵母壁は、適切にはパン酵母細胞に由来することができる(Sigma Chemical Corp.、St.Louis、MOから入手可能)。所望の特性を有する酵母細胞壁粒子は、Nutricell MOS 55の商品名で、Biorigin(Sao Paolo、Brazil)から得ることもできる。これらの粒子は、サッカロマイセスセレビシエの噴霧乾燥抽出物である。
【0042】
代替となる粒子は、SAF−Mannan(SAF Agri、Minneapolis、MN)、及びNutrex(Sensient Technologies、Milwaukee、WI)の商品名で知られているものである。これらは、酵母抽出物製造工程からの不溶性廃棄流である、中空グルカン粒子である。酵母抽出物の生成中、部分的に自己消化された酵母細胞の可溶性成分は除去されるが、不溶性残留物はテルペンの取り込みに適した材料である。これらの中空グルカン粒子は、約25〜35重量%のβ−1,3−グルカンを含む。これらの材料の重要な特性は、それらが10重量%超の脂質を含有し、テルペンの吸収に非常に有効なことである。さらに、廃棄流産物であるため、それらは中空グルカン粒子の比較的安価な供給源である。
【0043】
より高い純度を有する代替となる中空グルカン粒子は、Nutricepts(Nutricepts Inc.、Burnsville、MN)及びASA Biotechによって製造されるものである。これらの粒子は、追加の細胞内成分を除去し、細胞壁のマンノプロテイン外層を除去して、グルカン50〜65重量%の粒子を生じるように、アルカリ抽出されている。
【0044】
より高い純度の中空グルカン粒子は、Biopolymer EngineeringのWGP粒子である。これらの粒子は、追加の酵母成分を除去して、グルカン75〜85重量%の生成物を生じるように、酸抽出されている。
【0045】
非常に純度の高い中空グルカン粒子は、Alpha−beta Technology Inc.(Worcester、MA)のAdjuvax(商標)、及びNovogen(Stamford、CT)の微粒子グルカンである。これらの粒子は、残留脂質を除去し、それにより粒子が90重量%超のグルカンを含むように、有機溶媒抽出されている。
【0046】
いくつかの実施形態において、例えば予想される汚染物質を厳密に制御する必要がある場合、高純度のグルカン粒子又は細胞壁粒子が必要とされる可能性がある。このような場合、他の純度の低い生成物より、さらに純度の高い粒子が好ましい。他の実施形態では、経済的理由から、純度の低い粒子が好ましく、それらの粒子も、テルペンの吸収においてより有効であることがわかっている。
【0047】
好ましくは、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子は、脂質1又は2重量%のような、わずかな脂質含量を有する。わずかな含量の脂質が、テルペン成分を封入する粒子の能力を高めることができる。好ましくは、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子の脂質含量は、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。
【0048】
場合によって、封入されるテルペン成分は、界面活性剤と結合させることができる。界面活性剤は、非イオン性、陽イオン性、又は陰イオン性でよい。適切な界面活性剤の例は、上記に列挙される。界面活性剤は、エマルションにおいてテルペン成分を保持するように作用し、さらに中空グルカン粒子又は細胞壁粒子へのテルペン成分の封入を助ける。界面活性剤は、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子からのテルペンの放出特性を、修正又は制御するように働くこともできる。
【0049】
本明細書では、「テルペン」という用語は、式(Cのテルペンだけでなく、テルペンアルデヒド、又はテルペンポリマーなどのテルペン誘導体も包含する。天然及び合成テルペンが含まれ、例えば、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、及びテトラテルペンである。さらに、化合物の単一名への言及は、その化合物の種々の異性体を包含するものとする。例えば、シトラールという用語には、cis異性体シトラール−a(又は、ゲラニアール)、及びtrans異性体シトラール−b(又は、ネラール)が含まれる。
【0050】
一実施形態において、テルペン成分は、酸素を含有する1種又は複数のテルペンを含む。シトラール、例えばシトラール95は、酸素添加C1016テルペン、C1016O CAS No.5392−40−5(3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−アール)である。シトラールの安定な懸濁液は、約2500ppmまで形成することができる。シトラールは、約500ppmまで溶液として製造することができる。25pptシトラールのシトラールを取り込んでいる中空グルカン粒子の安定な懸濁液を製造することができる。
【0051】
本発明の一実施形態による組成物は、1から99体積%のテルペン、0から99体積%の界面活性剤、及び1から99%の中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含むことができる。より詳細には、組成物は、約10重量%から約67重量%のテルペン、約0.1〜10%の界面活性剤、及び約40〜90%の中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含むことができる。
【0052】
適切には、本発明の組成物は、約500から約10000ppmの中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含み、これらの粒子は、約1から約67%のテルペン成分を含有する。好ましくは、組成物は、約1000から約2000ppmの中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含み、これらの粒子は、約10から約50%のテルペン成分を含有する。
【0053】
1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、125、130、140、150、160、175、190、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1100、1250、1375、1425、1500、1600、1750、又は2000ppmのテルペン封入中空グルカン粒子又は細胞壁粒子の濃度を、本発明の組成物及び方法において、有効濃度として用いることができる。さらに高い濃度(25ppt(即ち1000分の1)まで)を製造することができ、本発明において有用である可能性がある。
【0054】
本発明の組成物は、約1ppmから約25ppt(25000ppm)のテルペン成分、好ましくは100から2000ppmのテルペン成分、例えば250、500、1000、2000ppmのテルペン成分を含むことができる。
【0055】
本発明のテルペン、界面活性剤、及び他の成分は、容易に購入できるか、又は合成化学者に一般に知られている技法を用いて合成することができる。
【0056】
本発明に用いられるテルペンは、安全及び規制上の理由から、少なくとも食品グレードのテルペン(米国FDA又は米国外の同等の国内規制機関によって規定されたもの)であることが非常に好ましい。
【0057】
場合によって、組成物は、テルペン成分に加えて、他の食品グレードの活性成分、例えば他の抗微生物剤、酵素などを含むことができる。
【0058】
場合によって、組成物は、テルペン成分に加えて、さらなる活性剤、例えば抗微生物剤、抗真菌剤、殺虫剤、抗炎症剤、麻酔剤などを含むことができる。適切な薬剤には、以下のものが含まれる。
−抗真菌剤:細胞壁ヒドロリアーゼ(中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を分解しないと想定される)、細胞壁合成阻害剤、標準的な抗真菌剤、
−抗菌剤:防腐剤、細胞壁加水分解酵素、合成阻害剤、抗生物質、
−殺虫剤:天然殺虫剤、キチナーゼ。
【0059】
本発明の一態様による封入された組成物は、テルペンの酸化を低減するために、抗酸化剤を含むことができる。そのような抗酸化剤の例は、ローズマリー油、ビタミンC、又はビタミンEであることができる。
【0060】
本発明の組成物は、乾燥粉末の形態であることができる。組成物は、液体、固体、又はゲル様形態で、農業的に、或いは食品又は医薬品として許容される担体又は賦形剤と組み合わせて提供することができる。
【0061】
固体組成物の場合、適切な担体には、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。適切には、製剤は、錠剤又はペレット剤の形態である。適切であれば、担体はヒト又は動物の食品材料であることもできる。さらに、通常の農業用担体も用いることができる。
【0062】
組成物のペレット剤、錠剤、又は他の固体形態は、好ましくは、例えば水などの液体に混入されたときに、組成物の分散を促進する分散剤も含有することができる。適切な分散剤には、キサンタンガム、マルトデキストリン、アルギン酸塩などが含まれる。
【0063】
液体組成物は、例えば、組成物を水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどに分散して、溶液又は懸濁液を形成することによって調製することができる。所望であれば、これらの組成物は、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、又はオレイン酸トリエタノールアミン)などの少量の非毒性補助物質を含有することができる。そのような液体組成物を調製する方法は、当業者に知られているか又は明らかであり、例えば、参照により本明細書の一部とするRemington:The Science and Practice of Pharmacy;Lippincott、Williams、Wilkins(2000年12月15日)を参照されたい。液体組成物も、ヒト又は動物の食品又は飲料液体材料に組成物を分散することによって調製することができる。さらに、適切な農業用液体賦形剤を用いることができる。
【0064】
経口投与用錠剤及び顆粒剤は、一般に好ましい。錠剤は、結合剤及び潤滑剤を含有することができる。微粉又は顆粒剤は、希釈剤、分散剤、及び/又は界面活性剤を含有することができ、水又はシロップ中に存在させることができる。カプセル剤又は小袋剤は、好都合には、乾燥状態の組成物を含有できる。組成物の非水性溶液又は懸濁液も適しており、懸濁化剤を含有することができる。所望であるか、又は必要である場合、香料、保存剤、懸濁化剤、増粘剤、又は乳化剤を含有させることができる。当然ながら、経口送達方法として、食品又は飲料材料の使用も適している。
【0065】
非経口投与は一般に、注射を特徴とする。注射剤の場合、一般に、組成物に用いられるすべての材料、及び用いられる任意の賦形剤は、医薬品グレードでなければならないことが理解されるであろう。注射剤は、液体溶液、エマルション、又は懸濁液、注射前に液体に溶解、懸濁するのに適した固体形態、或いはエマルションとして、通常の形態で調製することができる。非経口投与の別のアプローチには、一定レベルの投与量が維持されるように、徐放又は持続放出系を使用することが含まれる。例えば、参照により本明細書の一部とする、米国特許第3710795号を参照されたい。非経口投与用の調剤はさらに、緩衝剤、希釈剤、及び他の適切な添加剤を含有することができる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、及び注射可能有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルション、又は懸濁液が含まれ、食塩水、及び緩衝媒質が含まれる。他の非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、又は固定油が含まれる。静脈に用いるビヒクルには、流体栄養補給剤、電解質補給剤(リンゲル液デキストロースをベースとするものなど)などが含まれる。保存剤、又は他の添加剤、例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在できる。
【0066】
局所投与の場合、液剤、懸濁剤、ローション剤、クリーム、ゲル、軟膏、ドロップ、坐剤、噴霧剤、及び粉剤を用いることができる。必要であるか、又は所望であれば、通常の薬剤担体、水性、粉末、又は油性基剤、増粘剤などを用いることができる。
【0067】
本発明はさらに、テルペン成分を封入している中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を調製する方法を提供し、前記方法は、
a)テルペン成分を提供するステップ、
b)中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を提供するステップ、
c)テルペン封入に適した条件下で、テルペン成分をグルカン粒子又は細胞壁粒子と共にインキュベートするステップ、及び
d)テルペン成分を封入している中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を回収するステップを含む。
【0068】
場合によって、上述の方法はさらに、テルペン成分を封入している粒子を乾燥するステップを含むことができる。乾燥はいくつかの方法で達成することができ、凍結乾燥、流動層乾燥、ドラム乾燥、又は噴霧乾燥を挙げることができるが、いずれもよく知られた方法である。
【0069】
上述のステップa)において、テルペン成分は、適切には、場合によって界面活性剤の存在下、水性溶媒の懸濁液として提供される。適切には、溶媒は水である。適切な界面活性剤は、Tween80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)であり、好ましくは、界面活性剤は全反応混合物の約0.1から10体積%、より好ましくは約1%の濃度で存在する。或いは、テルペン成分は、溶媒、例えば水の真溶液として提供することもできる。水のテルペン真溶液は、真溶液が得られるまで、高剪断下、水中でテルペンを混合することによって得ることができる。国際公開第03/020024号パンフレットは、水のテルペン真溶液の形成に関するさらなる詳細を提供している。
【0070】
上述のステップb)において、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子は、適切には、水又は他の適切な液体の懸濁液として提供される。適切には、懸濁液は、1ml当たり約1から1000mgの粒子、好ましくは200から400mg/mlの粒子を含む。或いは、粒子は乾燥粉末として提供し、テルペン−界面活性剤懸濁液に添加することができる。
【0071】
或いは、粒子は、最小限度に粒子を水和するのに充分であるが、著しく過剰ではない液体に提供される。「流体力学的体積」(HV)という用語は、最小限度に粒子を水和するのに必要とされる液体の体積を説明するために用いられる。したがって適切には、粒子は、HVからHVの1.5倍(1.5HV)の範囲となる体積で提供される。これによって、それに続く乾燥ステップがより効率的になる。また、低量の液体が用いられる場合(即ち、およそHVから1.5HV)、最終生成物をペレット又はヌードル形態に押し出すことも可能であり、流動層乾燥に好都合である。
【0072】
テルペン成分は、室温で中空グルカン粒子又は細胞壁粒子に封入され得ることが見出された。しかしながら、封入速度は37℃以上で増大するが、温度は組成物の任意の成分の沸点又は変性温度より低く維持されるべきである。したがって、上述の方法のステップc)の適切な条件は、20から37℃の温度で大気圧である。(しかし、より高い温度を使用してもよい)。特定の封入反応に関する条件の最適化は、通常の実験の問題であろう。
【0073】
本発明はさらに、
a)微生物と、チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分を含む組成物とを接触させるステップ
を含む、微生物を死滅させる方法を提供する。
【0074】
この方法で使用される適切な組成物は、上述のとおりである。
【0075】
一態様において、本発明は、
a)チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分を含む組成物を、治療上有効な用量で、植物又はこの植物付近の土壌に投与するステップ
を含む、植物の感染を処置又は予防する方法を提供する。
【0076】
一実施形態において、本発明は、細菌植物感染を処置又は予防する方法を提供する。細菌植物感染には、エルウィニアアミロボーラ(Erwinia amylovora)(リンゴの火傷病)、シュードモナスシリンゲpv.ファセオリコラ(Pseudomonas syringae pv.phaseolicola)(豆のかさ枯病)、及びキサントモナスカンペストリスpv.ファセオリ(Xanthomonas campestris pv.phaseoli)(豆の一般的な胴枯病)が含まれる。したがって本発明は、現時点においてそのような細菌植物感染を申し分なく処置又は予防することのできる組成物又は方法を得ることができないので、著しい進歩をもたらすことになる。
【0077】
別の実施形態において、本発明は、真菌/卵菌植物感染、特に植物の表面を冒す感染を処置又は予防する方法を提供する。そのような感染には、ベト病(プラスモパラビチコラ(Plasmopara viticola))、ウドンコ病(ウニシヌラネカター(Unicinula necator))、又はボトリチスかび病(ボトリチスシネラ(Botrytis cinerea))が含まれ;これらの感染は、特にブドウを冒す。
【0078】
チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分は、植物感染の処置に有効であることが示されている。特に、チモールと、オイゲノール、ゲラニオール、シトラールの1種又は複数との組合せを含んだテルペン成分を含む組成物は、広範な種類の植物感染の処置に、特に有効であることが示されている。
【0079】
下記のテルペン成分を含む組成物は、細菌植物感染の処置又は予防に特に有効であることが示されている:
−チモール及びシトラール;
−チモール及びゲラニオール;又は
−チモール及びオイゲノール。
【0080】
下記のテルペン成分を含む組成物は、真菌/卵菌植物感染の処置又は予防に特に有効であることが示されている:
−チモール及びゲラニオール;
−チモール及びオイゲノール;又は
−チモール、オイゲノール、及びシトラール。
【0081】
一般に植物感染の処置及び予防に非常に有効であることが示されているその他の組成物には、下記のテルペン成分が含まれる;
−チモール、ゲラニオール、及びシトラール;
−チモール、ゲラニオール、及びオイゲノール;又は
−ゲラニオール、チモール、オイゲノール、及びシトラール。
【0082】
広範な植物の疾病を予防又は処置することができる組成物が、植物の疾病の抑制において特に興味深い。この点について、下記の組成物が特に有効であることが示されている:
−チモール及びシトラール;
−チモール及びゲラニオール;又は
−チモール及びオイゲノール。
【0083】
本発明はさらに、植物感染の処置又は予防における、上述の組成物のいずれかの使用を提供する。
【0084】
本発明によって処置又は予防することができるその他の植物感染は、下記の1つ又は複数によって引き起こされる可能性がある:アスペルギルスフミガーツス(Aspergillius fumigatus)、スクレロチニアホメオカルパ(Sclerotinia homeocarpa)、リゾクトニアソラニ(Rhizoctonia solani)、コレトトリクムグラミニコラ(Colletotrichum graminicola)、フィトフトラインフェスタンス(Phytophtora infestans)、又はペニシリウム種(Penicillium sp.)。
【0085】
しかし、懸濁液又は溶液中のテルペンは、単独で、いくらか不安定であり、土壌環境で素早く分解する可能性があり、したがって効力が失われる。中空グルカン粒子又は細胞壁粒子へのテルペン成分の組込みによって、テルペンの放出及び分解速度を遅くすることができ、したがって、土壌又は植物におけるテルペンの作用の持続時間が長くなる。したがって、テルペン成分を上述のように封入することが好ましい。
【0086】
テルペンをベースとする植物処置の利点は、収穫の直前に適用できることである。
【0087】
通常の多くの処置は、処置区域に再入するまでに長期間を要する(一般に3週)。これは、所望の時点に作物を収穫することができないため、収穫直前の植物病害の発生は通常の処置では、処置を行えないことを意味している。本発明の組成物は、適切には、収穫までの任意の時点、例えば、収穫前21日、収穫前14日、収穫前7日、或いは収穫前3日又はそれ以降であっても適用できる。
【0088】
植物感染の予防は、予防対策として定期的に、本発明の組成物で植物を処置することにより、実現することができる。
【0089】
適切には、本発明の組成物は、噴霧によって適用される。これは、植物の表面に影響を及ぼす植物病害の処置に特に適している。噴霧の場合、水に2g/lの組成物を含む調剤を用いることができる。2から4g/lの濃度が特に有効であり、必要に応じて、4g/lを超える濃度を用いることができる。明らかに、用いられる組成物の濃度は、病原因子を殺すか又は阻害するのに充分であるが、処置される植物を害するほど高濃度でないことが重要である。
【0090】
植物に噴霧する場合、植物を覆うには、100L/Ha以上の速度が一般に適していると考えられる。典型的には、多数の葉を持たない小植物の作物の場合、100から500L/Haの速度が充分と考えられ;しかし、より速い速度も当然ながら、必要に応じて使用することができる。多数の葉を持つより大きい植物の場合(例えば、蔓植物やその他の果樹などの多年生作物)、これらの植物を覆うのに500L/Ha以上の速度が一般に適している。好ましくは900L/Ha以上、より好ましくは1200L/Ha以上の速度を使用して、良好な被覆を確実にする。ブドウの処置がなされる場合、1200L/Haの速度が適切に有効であることが証明されている。
【0091】
或いは、本発明の組成物は、灌漑を介して利用することができる。これは、線虫又はその他の土壌伝播性病原体若しくは寄生虫の処置に、特に適している。
【0092】
本発明はさらに、
a)植物又はこの植物付近の土壌に対し、チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分を含む組成物を、治療上有効な用量で患者に投与するステップ
を含む、患者の感染を予防又は処置する方法を提供する。
【0093】
適切な組成物は、上記にてより詳細に定義されたものである。
【0094】
患者の感染は、任意の感染因子によって引き起こされる可能性がある。これらの感染因子の例には、限定するものではないが、スタフィロコッカスアウレウス(Staphylococcus aureus)、アスペルギルスフミガーツス(Aspergillius fumigatus)、マイコプラズマアイコワエ(Mycoplasma iowae)、ペニシリウム種(Penicillium sp.)、及びマイコプラズマニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)が含まれる。
【0095】
内部投与の場合、組成物は、経口的に、経膣的に、経直腸的に、吸入によって、又は非経口経路によって、例えば皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、直腸内、動脈内、リンパ内、静脈内、髄腔内及び気管内経路によって投与することができる。これらの経路に適した組成物の製剤は、上記にて論じたとおりである。
【0096】
外部処置の場合、組成物は、局所的に、例えばクリーム又は軟膏として、或いは創傷治療用の乾燥粉末として施用することができる。
【0097】
上述の方法で投与されたテルペンの量は、所望の結果、即ち感染の予防及び/又は治療を実現するのに明らかに充分であるべきであるが、患者に深刻な毒作用を誘発させるレベルであるべきではない。
【0098】
投与された組成物の量は、当然ながら、投与の手法、処置がなされる患者、即ち患者の体重、患者の年齢、状態、性別、及び対象の疾患の程度、及び処方医の判断に左右されることになる。用量、投与計画、及び投与経路は、様々に変えることができる。当業者なら、当技術分野における一般的な知識及び以下に示される実施例の手順に基づいて、所与の施用に関する抗感染量を容易に決定することができるであろう。本明細書で使用される「患者」という用語は、処置が施される任意の個人、ヒト又は動物を指すことに留意すべきである。このように、患者は、飼い慣らされた動物(例えばネコ、イヌなど)、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモットなど)、鳥、及び魚でもよい。適切には、対象は哺乳類であり、特に霊長類であり、例えばヒトである。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、
a)チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分を含む組成物を、有効な用量で昆虫又はクモ類に投与するステップ
を含む、昆虫又はクモ類を死滅させる方法を提供する。
【0100】
本発明により死滅させることのできる昆虫には、例えば、アリ、シロアリ、シラミ、アブラムシ、ノミ、バッタ、キリギリス、及びアザミウマが含まれる。本発明により死滅させることのできるクモ類には、例えば、ダニ、クモ、及びマダニが含まれる。
【0101】
さらなる実施形態において、本発明はさらに、患者又は植物の感染の予防又は処置における、上記のテルペン成分を含む組成物を提供する。適切な組成物は、上により詳細に定義したものである。
【0102】
さらなる実施形態において、本発明は、微生物に起因する感染を処置する薬剤の製造における、上記のテルペン成分を含む組成物の使用を提供する。適切な組成物は、上により詳細に定義したものである。
【実施例1】
【0103】
本発明を以下の非限定的な実施例及び図を参照してさらに説明する。
【0104】
以下の実施例は、当業者が本発明を製造又は実行することをさらに可能にするために提供されるものである。実施例は単に例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。他に別段の指示のないかぎり、部は体積部又は重量部であり、指示されるとおり、温度はセ氏温度(℃)であるか、又は周囲温度であり、圧力は大気圧であるか、又は大気圧に近い圧力である。組成物、及び組成物を製造又は使用する条件、例えば、成分の濃度、望ましい溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、並びに記載の組成物及び方法から得られる結果を最適化するために用いることのできる他の範囲及び条件には、多数の変形及び組合せがある。それらの最適化には、合理的かつ通常の実験のみを必要とする。
【0105】
実施例1−パン酵母粒子及び精製酵母グルカン粒子へのテルペン取り込みの実証
【0106】
以下のプロトコルを実施して、テルペンが酵母細胞壁及び他の中空グルカン粒子に取り込まれることを実証した。
【0107】
150μlのテルペンを100μlの10%Tween80水溶液及び250mlの水と混合することによって、シトラールとL−カルボンとのエマルションを調製した。
【0108】
パン酵母粒子(YP)、又はLevacan(商標)酵母グルカン粒子(YGP)、Savory Systems International Inc.、Branchburg、NJから入手可能、を水と混合して、250mg/mlの懸濁液を形成した。
【0109】
500μlのYP又はYGP懸濁液、及び250μlのテルペンエマルションを混合し、継続的に撹拌しながら、一晩インキュベートした。500μlのYP又はYGP懸濁液、及び500μlの水をコントロールとして用いた。次いで、外部のエマルションがなくなるまで、粒子を水で洗浄した。その後、乾燥するまで、粒子調剤を凍結及び凍結乾燥した。
【0110】
その後、粒子を再水和し、光学顕微鏡で検査した。結果を図1から4に示す。
【0111】
図1は、その中心に暗色領域を有する球形構造を示し、これらは空の中空グルカン粒子である。図2及び3は、明色の内部を有する膨張した外観の球形構造を示し、これらは中心腔に封入されたテルペンを含む粒子であり、図2はシトラール、図3はL−カルボンである。図2及び3では、例えば図2の上部、中央のわずか左に、遊離テルペンの小さな塊も認められる。図4は、水に懸濁されたテルペンの小さな泡としてテルペンエマルションを示している。
【0112】
実施例2−パン酵母細胞壁粒子(YP)でのシトラール及びL−カルボンの最大取り込みレベルの決定
【0113】
以下のプロトコルを実施して、YPに取り込まれるテルペンの最大量を求めた。
−4.5gのテルペンを0.3mlの水と超音波処理することによって、L−カルボンとシトラールとのエマルションを調製した。
−4.5gのTween80を40.5mlの水で超音波処理することによって、10%Tween80溶液を調製した。
−YPを水と混合して、20mg/mlの懸濁液を形成することによって、YP懸濁液を調製した。
−表1に記載したとおり、封入反応を設定した。
【0114】
シトラール又はL−カルボン−水エマルションを、室温で一晩、YP及びTween80界面活性剤と混合した。試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現を記録した。結果を、表1の遊離テルペンと表示した右側の列に示す。
【0115】
「遊離テルペン」という表現は、遠心分離した反応混合物において可視であるテルペンの存在を指す。遊離テルペンの不在は、テルペンが粒子に完全に吸収されていることを示す。遊離テルペンの不在から明らかとなる、粒子に吸収されるテルペンの最大容量を、吸収テルペンエマルションの最大容量として記録した。
【0116】
【表1】

【0117】
結果からわかるように、YP10mg当たり、少なくとも16.5μlのL−カルボンテルペンエマルション、又は少なくとも5μlのシトラールエマルションを、YPは吸収及び封入することができる。
【0118】
実施例3−界面活性剤によるテルペン取り込み改善の実証、及びTween80:テルペンの最適比の決定
【0119】
以下のプロトコルを実施して、界面活性剤の存在がテルペンの取り込みを改善することを実証し、YPのテルペン取り込み反応に必要とされるTween80界面活性剤の最小量を求めた。
−4.5gのテルペンを0.3mlの水と超音波処理することによって、L−カルボンとシトラールとのエマルションを調製した。
−4.5gのTween80を40.5mlの水で超音波処理することによって、10%Tween80溶液を調製した。
−YPを水と混合して、250mg/mlの懸濁液を形成することによって、パンYP懸濁液を調製した。
【0120】
取り込み反応を、下記の表2に示したとおり設定した。
【0121】
シトラール又はL−カルボン−水エマルションを、室温で一晩、0〜10体積%のTween80界面活性剤を含むYPと混合した。試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現を記録した。結果を、表2の遊離テルペンと表示した右側の列に示す。
【0122】
「遊離テルペン」という表現は、遠心分離した反応混合物において可視であるテルペンの存在を指す。遊離テルペンの不在は、テルペンがYPに完全に吸収され、封入されていることを示す。遊離テルペンの不在から明らかとなる、YPに吸収されるテルペンの最大容量を、吸収テルペンエマルションの最大容量として記録した。
【0123】
【表2】

【0124】
結果からわかるように、1%のTween80の濃度(即ち、1000μlの反応混合物中、100μlの10%Tween80)は、上述の反応において、テルペンの完全な取り込みを可能にするのに充分である。2%のTween80は結果を改善しないが、濃度0.33%では遊離テルペンが観察された。これは以下のことを示唆する。
界面活性剤の不在下、テルペンはYP粒子に吸収されるが、界面活性剤の存在は、テルペンの吸収を著しく増大する。
約1%のTween80の濃度は、適切な取り込みを確保し、同時にYP粒子のテルペンペイロードを最大にするので、YPの取り込みに最適である。
【0125】
実施例4−高濃度のパン酵母細胞壁粒子(YP)の最大テルペン取り込み及び封入の決定
【0126】
以下のプロトコルを実施して、YPが高濃度であるときに、YPに取り込まれるテルペンの最大量を決定した。
−4.5gのテルペンを3mlの1%Tweenと超音波処理することによって、L−カルボンとシトラールとのエマルションを調製した。
−0.5gのTween80を9.5mlの水で超音波処理することによって、5%Tween80溶液を調製した。
−YPを水と混合して、250mg/mlの懸濁液を形成することによって、YP懸濁液を調製した。
−表3に示したとおり、封入反応を設定した。
【0127】
シトラール又はL−カルボン−水エマルションを、室温で一晩、YP及びTween80界面活性剤と混合した。試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現を記録した。結果を、表3の遊離テルペンと表示した右側の列に示す。
【0128】
「遊離テルペン」という表現は、遠心分離した反応混合物において可視であるテルペンの存在を指す。遊離テルペンの不在は、テルペンがYPに完全に吸収されていることを示す。遊離テルペンの不在から明らかとなる、YPに吸収されるテルペンの最大容量を、吸収テルペンエマルションの最大容量として記録した。
【0129】
【表3】

【0130】
表3の結果からわかるように、YPが高濃度であるとき、YPはテルペンを吸収及び封入することができる。YP125mg当たり、少なくとも112.5μlのL−カルボンテルペンエマルション、又は少なくとも75μlのシトラールテルペンエマルションを、YPは吸収及び封入した。これは、テルペン封入反応が、試験範囲内のYP濃度に依存していないことを実証している。
【0131】
実施例5−テルペン吸収に関する市販粒子のスクリーニング
【0132】
以下のプロトコルを実施して、様々な種類の粒子の取り込み特性を分析した。研究した粒子は、パン酵母細胞壁粒子(Baker’s Yeast Cell Wall Particles)(Sigma Chmical Corp.、St.Louis、MO)、Nutrex(商標)Walls(Sensient Technologies、Milwaukee、WI)、SAF Mannan(商標)(SAF Agri、Minneapolis、MN)、Nutricept Walls(商標)(Nutricepts Inc.、Burnsville、MN)、Levacan(商標)(Savory Systems International Inc.、Branchburg、NJ)、及びWGP(商標)(Alpha−beta Technology Inc.、Worcester、MA)であった。
【0133】
7gのテルペンを3mlの3.3%Tween80と超音波処理することによって、L−カルボンとシトラールとのエマルションを調製した。
【0134】
下記の表4は、純度と、1mg当たりの酵母粒子数及び充填固体の重量/体積比とを比較するものである。
【0135】
【表4】

【0136】
表4から、1mg当たりの粒子数は純度に反比例することが結論づけられる。したがって、WGPの1mg当たりの粒子数は、パンYPよりほぼ10倍多い。
【0137】
YP懸濁液を以下のように調製した。
−YP 250mg/ml 1%Tween80を混合することによって、パン酵母細胞壁粒子懸濁液(YP)を調製した。
−Nutrex YGP 163mg/ml 1%Tween80を混合することによって、Nutrex懸濁液を調製した。
−Biospringer YGP 234mg/ml 1%Tween80を混合することによって、SAF Mannan懸濁液を調製した。
−Nutricepts YGP 99mg/ml 1%Tween80を混合することによって、Nutricepts懸濁液を調製した。
−Lev YGP 217mg/ml 1%Tween80を混合することによって、Levacan懸濁液を調製した。
−WGP YGP 121mg/ml 1%Tween80を混合することによって、WGP懸濁液を調製した。
【0138】
上述の粒子の充填体積は同一であり、等しい数の粒子が分析されたことを意味する。
【0139】
表5に示したとおり、取り込み反応を設定し、一晩インキュベートした。試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現、及びペレットの封入テルペンの色を記録した。結果を、表5の右側2列に示す。遊離テルペンの不在から明らかとなる、粒子に吸収されるテルペンの最大容量を、吸収テルペンエマルションの容量として記録した。
【0140】
【表5】

【0141】
結果から、以下の結論に達した。
1.低脂質含量の精製粒子は、テルペン吸収において、有効性が低かった。
2.純度の低い粒子は、テルペン吸収において、より有効であった。
3.SAF−Mannan(商標)に封入されたとき、シトラールの黄色分解生成物は形成しなかった。
4.試験した単一テルペンレベルでの質的取り込みに基づいて、SAF Mannan(商標)が最良であり、Nutrex(商標)が2番、パン酵母細胞壁粒子が3番であると考えられる。
【0142】
実施例6−種々の粒子及び種々のインキュベーション温度でのテルペン取り込み速度
【0143】
以下のプロトコルを適用して、種々の酵母粒子の取り込み速度を比較した。
【0144】
7gのテルペンを3mlの3.3%Tween80と超音波処理することによって、L−カルボンとシトラールとのエマルションを調製した。
【0145】
1mlの10%Tween80を10mlの水で超音波処理することによって、1%Tween80溶液を調製した。
−5gのパンYPを20mlの1%Tween80に混合することによって、パンYPを調製した。
−2gのNutrex(商標)YGPを20mlの1%Tween80に混合することによって、Nutrex(商標)YGP懸濁液を調製した。
−2gのSAF Mannan(商標)を20mlの1%Tween80に混合することによって、SAF Mannan(商標)懸濁液を調製した。
【0146】
表6に示したとおり、取り込み反応を設定した。
【0147】
反応物を、室温又は37℃で、1、3、6、9、及び24時間インキュベートした。インキュベートした後、試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現を記録した。結果を、表6の右側2列に示す。遊離テルペンの不在から明らかとなる、粒子に吸収されるテルペンの最大容量を、吸収テルペンエマルションの容量として記録した。封入ペレットの色を24時間の時点で記録した。
【0148】
【表6】

【0149】
表6に示した結果及び他の観察から、以下の結論を得ることができる。
−テルペンの取り込みは、室温より37℃で速く起こる。
−SAF Mannan(商標)テルペンの取り込み反応には1から3時間を要する。
−2つの理由から好ましい粒子であると考えられる。
−両方のテルペンを、より速く、より完全に取り込む。
−37℃で24時間後、シトラール分解の特徴である黄色の不在から明らかなように、シトラールは取り込まれたときに安定なままである。
【0150】
実施例7−粒子取り込みに関する一連の単一テルペン及びテルペン組合せのスクリーニング
【0151】
以下のプロトコルを適用して、パンYPとSAF Mannan(商標)の取り込み効率を比較した。
【0152】
テルペンエマルションを以下のとおり調製した。
−L−カルボン 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのL−カルボン。
−シトラール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのシトラール。
−チモール/L−カルボン混合物(T/L) 1.5mlの3.3%Tween80に2.25gのチモール及び2.25gのL−カルボン。
−オイゲノール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのオイゲノール。
−ゲラニオール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのゲラニオール。
−シトラール/L−カルボン/オイゲノール混合物(C/L/E) 1.5mlの3.3%Tween80に1.5gのシトラール、1.5gのL−カルボン、及び1.5gのオイゲノール。
【0153】
これらの実験には、0.75:0.3:0.05の比率のテルペン:水:界面活性剤を含むエマルションを用いた。
【0154】
表7及び8に示したとおり、増加容量のテルペンエマルションを、室温で一晩、250mg/mlのパンYP又は250mg/mlのSAF Mannan(商標)と混合した。試料を14000×gで10分間遠心分離し、水層に浮遊する遊離テルペンの出現を記録した。遊離テルペンの不在から明らかとなる、パンYP又はSAF Mannan(商標)に吸収されるテルペンエマルションの最大容量を、吸収テルペンエマルションの容量として記録した。ペレットの封入テルペンの色を記録した。表7及び8の結果は、すべての単一テルペン及びテルペン組合せが、パンYP又はSAF Mannan粒子の両方に効率よく取り込まれたことを示している。
【0155】
【表7】

【0156】
【表8】

【0157】
結果から、以下の観察を行った。
−すべてのテルペンが、パンYP及びSAF Mannanに取り込まれると考えられた。
−SAF Mannanは、パンYPに比べて高いテルペン取り込み能力を有する。
−テルペンの2種及び3種混合物も効率よく取り込まれると考えられる。
−テルペンオイゲノールはペレットとの会合が認められているため、粒子及び水より高い密度を有すると考えられる。
−SAF Mannanでは、シトラール及びゲラニオールの場合、取り込みレベルが高く、粒子が軽いと、水層の表面に取り込み粒子が浮遊した。
−シトラールは、SAF Mannanによって酸化から保護されたが、パンYPでは保護されなかった。
【0158】
各種粒子のおよその最大取り込み量を求め、以下の表9及び10に示す。取り込みパーセントは、存在する粒子の量に対する取り込まれたテルペンの量の比を表す(重量)。
【0159】
【表9】

【0160】
【表10】

【0161】
実施例8−水性エマルション及び封入テルペン製剤におけるテルペン安定性の評価
【0162】
黄色酸化生成物の形成に関してシトラール製剤を観察することによって、テルペン安定性を評価した。表5〜8の右側の列に示したように、シトラールエマルション及びシトラール封入パンYPは、経時的に徐々に黄色が増した。しかしながら、経時的な黄色の低減又は不在から明らかなように、シトラールのSAF Mannan(商標)への封入によって、シトラール安定性が増大した。
【0163】
実施例9−最小量の水でのテルペンの取り込み
【0164】
以下のプロトコルを行って、取り込み製剤を流動層乾燥器に直接押し出すことを可能にするために、非常に高い酵母粒子(YP)固体濃度で、YPにテルペンの取り込み及び封入を行うことのできる可能性を評価した。SAF Mannan(商標)粒子を完全に水和する最小量の水は、固体1g当たり水3.53gであると求められた。これは粒子の流体力学的体積(HV)又は水吸収能力を定義する。この量の水では、水和粒子は、チキソトロピー性、即ちマヨネーズのようなずれ揺変性である固い生地の粘稠度を有する。HVを超える40%までの水を添加することによって、粘度の高い流動性のペーストを生じる。上の実施例で用いた標準的な反応は、3×HVの水で行った。
【0165】
一連のテルペン(L−カルボン)取り込み反応は、粒子:テルペン:Tweenの比率(1:0.44:0.04)を一定に保ち、系の水の量をHV(3.53g)からHV+40%の水(4.92g)に変化させて行った。コントロールは、3×HVの水、粒子のみ、及びテルペンのみの反応を用いる標準的な取り込み系であった。一晩インキュベートした後、混合物の試料を、遊離テルペン及び粒子へのテルペン取り込みの証拠に関して顕微鏡によって評価し、15分間にわたって反転した管で流れを評価することによって物流特性を評価した。さらに、反応混合物を5×HVで水和し、ボルテックスして粒子の完全な分散液を得て、テルペンを封入した粒子の沈殿物を遠心分離することによって、遊離油の存在を評価した。結果を、表11、及び図7から12に示す。図7から12は、以下の管の取り込み結果を示す。
図7−管3
図8−管5
図9−管6
図10−管8
図11−管10
図12−管11
【0166】
【表11】

【0167】
表11、及び図7から12に示した結果は、評価を行ったすべての水の比率で、粒子へのテルペン取り込み及び封入が起こったことを実証している。驚いたことに、粒子を水和する最小量の水を用いる、固い生地の粘稠度を有する反応において取り込み反応が行われたときにも、同等の取り込みが起こった。遊離テルペンの不在は、顕微鏡によって観察され(図7から12)、さらにテルペンのみのコントロールと比較して上澄みの混濁が著しく低減していることから明らかなように、上澄みの低量のテルペンにおいて観察された。
【0168】
これらの結果は、テルペンを中空グルカン粒子に取り込む条件に関する理解を広げる。取り込み工程中に粒子を水和する最小量の水を用いる柔軟性によって、反応混合物が標準的な食品グレードの表面一掃生地ミキサーを用いる展性生地様の粘稠度である条件でテルペンを取り込むことが可能になるであろう。最終的な高固体テルペン取り込み混合物の粘稠度は、流動層乾燥のためにヌードル及びペレットを形成する直接押し出しに適している。
【0169】
この様式でスケールアップ生産するための適切な設備には以下が必要とされる。
−ゴーリンホモジナイザ、又は安定なテルペンエマルションを製造する同等物
−表面一掃生地混合槽
−押し出し機
−流動層乾燥器
【0170】
実施例10−再水和時、テルペン成分を封入する乾燥中空グルカン粒子分散液において分散を促進する間隙親水コロイド剤の評価
【0171】
以下のプロトコルを適用して、水和時に、テルペン封入乾燥中空グルカン粒子製剤の分散を増大する間隙親水コロイドの効果を評価した。
−SAF Mannan(商標)粒子
−0.1%Tween80
−L−カルボン
−キサンタンガム 0.1%Tween80中1w/v%
【0172】
表12に示したとおり、1.1gのL−カルボンエマルション(0.75:0.3:0.05の比率のL−カルボン:水:界面活性剤)を、1gのSAF Mannan、及び0〜1%のキサンタンガムを含有する4.4gの0.1%Tween80とインキュベートして、SAF MannanにL−カルボンを取り込むことによって、L−カルボン封入乾燥中空グルカン粒子の水分散液に対するキサンタンガム増量の効果を評価した。
【0173】
【表12】

【0174】
表12、及び図13から20の結果は、テルペン封入粒子の乾燥中に高分子量親水コロイドを用いることによって、均一懸濁液への微粒子の水和及び分散が促進されることを実証している。そのような親水コロイド剤の他の例は、マルトデキストリン、アルギン酸塩などである。
【0175】
取り込まれたテルペンの安定性を高め、テルペンの持続放出を提供するために、ペレットコーティングを用いることも有益である可能性がある。
【0176】
実施例11−黄色ブドウ球菌に対するテルペンエマルション、新鮮パンYP及びSAF Mannan封入テルペン、並びに凍結乾燥パンYP及びSAF Mannan封入テルペンの最小阻止濃度(MIC)の評価
【0177】
新鮮中空グルカン粒子封入テルペン製剤と凍結乾燥中空グルカン粒子封入テルペン製剤のMICを比較するために行ったプロトコルの結果を下記の表13に示す。単純テルペンエマルションも試験し、比較のために結果を示す。
【0178】
【表13】

【0179】
上記の結果から得た結論は以下のとおりである。
1.中空グルカン粒子に取り込まれるテルペンは、テルペンMICを高めると考えられる。一般に、新鮮テルペンエマルションは、封入製剤より〜4〜375倍効力が低い。
2.SAF Mannan(商標)に取り込まれたテルペンは、パンYPよりわずかに良好に機能する。
3.新しく取り込まれたテルペン組成物は、凍結乾燥組成物よりわずかに良好に機能する(凍結乾燥中に乾燥組成物からテルペンがいくらか揮発する可能性がある)。
4.水性エマルションのテルペンは少なくとも3週間安定である。
【0180】
実施例12−黄色ブドウ球菌に対するパイロットプラントスケールでの封入テルペンの有効性
【0181】
黄色ブドウ球菌に対して、パイロットプラントスケールで製造された封入テルペン及び混合物を用いて抗微生物アッセイを行った。材料を含有する新鮮及び凍結乾燥封入テルペン試料は共に、強い抗微生物活性を実証した。結果を下記の表14に要約する。
【0182】
テルペンを2.5kgスケールでSAF Mannan(商標)に封入した。3種のテルペン(ゲラニオール275g、オイゲノール385g、及びチモール440g)の混合物を100gのTween80及び8Lの水に溶解し、均質化した。SAF Mannan(商標)(2.5kg)を添加して、均質懸濁液を形成した。その懸濁液をゴーリンホモジナイザに通して粒径を小さくし、ホモジネートを室温で一晩インキュベートした。封入テルペンの試料を除去し、室温で貯蔵した。次いで、残留する封入テルペンをトレイで凍結し、凍結乾燥した。凍結乾燥封入テルペン粉末を粉砕し、室温で貯蔵した。
【0183】
【表14】

【0184】
パイロットプラントスケールでは、新鮮試料及び凍結乾燥試料は共に、w/wテルペンベースで等しく有効であった。
【0185】
大量調製の結果に基づいて、黄色ブドウ球菌に対する凍結乾燥製剤の予測有効用量は、200ppm(〜50重量%のテルペンを含有する製剤)又は0.2g/水Lである。
【0186】
実施例13−マイコバクテリウム(Mycobacterium)に対する封入テルペンの有効性
【0187】
テルペンエマルションを以下のように調製した。
1.シトラール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのシトラール。
2.L−カルボン/オイゲノール 1.5mlの3.3%Tween80に2.25gのL−カルボン及び2.25gのオイゲノール。
3.オイゲノール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのオイゲノール。
4.ゲラニオール 1.5mlの3.3%Tween80に4.5gのゲラニオール。
5.ゲラニオール/チモール混合物 1.5mlの3.3%Tween80に2.25gのゲラニオール及び2.25gのチモール。
6.コントロールエマルション 6mlの1%Tween80。
【0188】
SAF−Mannan(商標)(2.5g)を、3mlの各エマルション及び7mlの1%Tween80と混合し、一晩インキュベートして、テルペン及びテルペン混合物を封入した。封入テルペン製剤を凍結及び凍結乾燥し、粉末を微粉に粉砕した。封入テルペンの懸濁液(25mg/ml)及び非封入テルペンエマルションを、マイコバクテリウムに対する抗菌活性に関してアッセイした。結果を表15に示す。
【0189】
【表15】

【0190】
実施例14−封入テルペンの殺線虫活性
【0191】
シトラールを封入する酵母細胞壁の調製は、上述の手順に従って調製した。中空グルカン粒子は17.5%のシトラールを含有し、粒子は1000ppmの濃度で試験調剤に存在した。これはテルペンが175ppmの濃度で実際上存在したことを意味する。
【0192】
1.0mlの試験調剤を、根こぶ線虫を含む0.1から0.15mlの水に添加した。コントロールとして、水1.0を線虫に添加した。
【0193】
前述のとおり観察を行い、24及び48時間後の殺虫率を評価した(即ち死亡率)。下記の表16に示した結果は、2組の結果の平均である。
【0194】
【表16】

【0195】
これらの結果は、テルペンを封入している中空グルカン粒子が、わずか175ppmのシトラール濃度に相当する粒子濃度1000ppmで、根こぶ線虫の殺虫に有効であることを実証している。
【0196】
したがって、テルペンを封入している中空グルカン粒子は、殺線虫剤として、溶液中のテルペン、又は界面活性剤を含むテルペンと同程度に有効であると考えられる。テルペンが粒子内部に封入されているにもかかわらず、殺線虫活性は保持される。溶液中のテルペン又は界面活性剤を含むテルペンの場合と同様に、より高濃度の中空グルカン粒子内テルペン、又はより高濃度の粒子によって、さらに高い殺虫率がもたらされることが予期され得る。
【0197】
実施例15−封入テルペン及び非封入テルペンの殺真菌性
【0198】
以下のプロトコルを実施して、種々のテルペン組合せの殺真菌性を評価し、封入組成物と非封入組成物との有効性を比較した。
【0199】
様々なテルペン製剤の抗真菌性の評価
【0200】
マイクロタイタープレートアッセイを用いて、種々の病原体に対する、一連のテルペン化合物の最小阻止濃度(MIC)を評価した。各有機体に用いたアッセイは後に詳しく記載するが、重要な一般的特徴は次のとおりである。
【0201】
このアッセイは、静止(増殖阻害)活性と殺菌(殺傷)活性とを識別するために、2つのインキュベーション期間を用いる。第1のインキュベーション期間は、増殖阻害を評価できるが、単なる増殖の阻止と細胞の殺傷とを識別できない。第2のインキュベーション期間の目的は、テルペン暴露を生存する任意の休眠細胞又は阻害細胞が増殖する充分な時間及び栄養分を与えることである。テルペンへの暴露によって殺傷された細胞は新鮮培地で増殖しないが、静真菌作用によって阻害された任意の細胞は、第2のインキュベーション期間に反応し、増殖するはずである。
【0202】
合計で31種の異なるテルペン製剤を用いて(表17)、初期スクリーニング実験を行った。活性の強いテルペン製剤のサブセットを用いて(表18)、これらの実験を繰り返した。
【0203】
グルカン粒子に封入された2:1:2の比率のテルペンゲラニオール、オイゲノール、及びチモールの組合せも試験した。この試料はYP−GETと称される。封入形態と比較するために、同じ比率の非封入ゲラニオール、オイゲノール、及びチモールの組合せも試験した。
【0204】
サッカロマイセスセレビシエを用いるMICアッセイ
【0205】
96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに、100μLのアリコートでサッカロマイセスセレビシエ(5×10細胞/mL、YPD増殖培地)を添加した。プレート毎に少なくとも1列を細胞のみのコントロールと指定し、それらのウェルにはテルペンを加えなかった。種々のテルペン製剤のアリコート(100μL)を残りの列の第1行に加え、1つの行から次の行に合計で7回、100μLを移すことによって、連続的に2倍希釈を行った。最後に、すべてのウェルが確実に同じ容量を含有するように、最終行から100μLを捨てた。マイクロタイタープレートを30℃で一晩、静的にインキュベートした。
【0206】
インキュベートした後、増殖の阻害を記録した(混濁がないことによって明らかとなる)。増殖阻害(≧75%)は顕微鏡によって視覚的に確認した。
【0207】
各製剤のMICを求めた後、マイクロタイタープレートを遠心分離し、非混濁ウェルから使用済み培地を除去した。細胞を新鮮培地(100μL)に再懸濁し、プレートを再び30℃で一晩インキュベートした。前と同様に増殖阻害の評価を行った。
【0208】
混合接種物を用いるMICアッセイ
【0209】
サッカロマイセスセレビシエに関して記載したとおり、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、種々のテルペン製剤を連続的に希釈した。次いで、5μLの混合接種物(カビの生じたブドウの葉から濃度5×10細胞/mLに調製)と共に、融解YPD寒天をウェルに添加した。プレートを室温で24時間、静的にインキュベートし、胞子の増殖を顕微鏡によって視覚的に評価した。
【0210】
固体培地を使用したため、新鮮培地での第2のインキュベーション期間は実施できなかった。
【0211】
コレトトリカムグラミニコーラを用いるMICアッセイ
【0212】
サッカロマイセスセレビシエに関して記載したとおり、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、種々のテルペン製剤を連続的に希釈した。コレトトリカムグラミニコーラ(300胞子/ウェル)を希釈テルペンに添加し、プレートを室温で48時間、静的にインキュベートした。胞子の発芽と増殖とを顕微鏡によって視覚的に評価した。
【0213】
各製剤のMICを求めた後、マイクロタイタープレートを遠心分離し、増殖阻害ウェルから使用済み培地を除去した。胞子を新鮮培地(100μL)に再懸濁し、プレートを再び室温で一晩インキュベートした。前と同様に増殖阻害の評価を行った。
【0214】
【表17】

【0215】
【表18】

【0216】
混合接種物
【0217】
混合接種物の使用はいくつかの問題を提起する。調剤間の胞子含量の変動によってアッセイ間の再現性が不良となり、汚染生物の増殖が胞子発芽の評価を妨げる。単細胞酵母種は、特に胞子増殖のマスキングに問題がある。このアッセイから正確なデータは得られなかったが、テルペンの阻害効果は観察された。
【0218】
より多数の胞子が用いられたため(約50/ウェル対約10/ウェル)、初期スクリーニングアッセイに比べて、繰り返しアッセイの記録において胞子の同定が容易であった。したがって、繰り返しアッセイで得られたデータは、より信頼できるMICの推定値を提供する可能性がある。
【0219】
コレトトリカムグラミニコーラ
【0220】
初期スクリーニングアッセイと比較して、繰り返しアッセイで得られるMICが一般的に高いのは、以下の理由による可能性がある。
−1週間前のテルペン溶液の使用。
−初期スクリーニングアッセイで用いられたものと比べて高い生存能力を有し、したがって殺菌がより困難である可能性のある新しく調製された胞子の使用。
【0221】
中空グルカン粒子に封入されたときの同じテルペン製剤と遊離エマルションとしてのテルペン製剤との比較:サッカロマイセスセレビシエMICアッセイ
【0222】
96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルにYPD増殖培地(100μl)を添加し、第1行に種々のテルペン製剤のアリコートを加え、この行では総量を200μlとした。1列を細胞のみのコントロールと指定し、それらのウェルにはテルペンを加えなかった。1つの行から次の行に合計で7回、100μlを移すことによって、連続的な2倍希釈を行った。最後に、すべてのウェルが確実に同じ容量を含有するように、最終行から100μlを捨てた。次いで、各ウェルに100μlのアリコートでサッカロマイセスセレビシエ(5×10細胞/ml、YPD増殖培地)を添加し、マイクロタイタープレートリーダーを用いて、各ウェルの620nmでの吸光度(A620)を測定した。マイクロタイタープレートを30℃で一晩、静的にインキュベートした。
【0223】
インキュベートした後、再びA620を測定し、増殖の阻害(≧75%)に関してプレートを評価した。増殖阻害は顕微鏡検査によって視覚的に確認した。
遊離テルペンエマルションは、各製剤のMICを求めた後、マイクロタイタープレートを遠心分離し、増殖阻害ウェルから使用済み培地を除去した。細胞を新鮮培地(100μl)に再懸濁し、プレートを再び30℃で一晩インキュベートした。前と同様に増殖阻害の評価を行った。
【0224】
MICと殺真菌MICの結果を表19に要約する。
【0225】
結果
【0226】
【表19】

【0227】
テルペンエマルション及び酵母封入テルペンの両方で、MICは典型的に≦125ppmであり、もっとも活性な製剤は〜60ppmで増殖を阻害した。テルペンエマルションで得られたMIC値は、それぞれの酵母封入製剤で得られた値と類似していた。異なる値が得られた場合、およそ1回の2倍希釈分のみ相違していた。
遊離テルペンエマルションの多くは増殖阻害MICで殺真菌性であり、大多数が2倍高い濃度で殺真菌活性を示した。
【0228】
これらの結果は、グルカン粒子に封入されたテルペンが、少なくとも非封入形態と同程度に真菌の殺菌に有効であることを実証している。さらに、用いられた封入組成物は、45日間4℃で貯蔵されており、最適以下の〜4重量%のテルペン含量を有するため、能力が低減された可能性がある。
【0229】
殺真菌活性を求めるアッセイは遠心分離ステップを含み、これはウェルの底部に細胞のペレットを生成することによって、増殖培地において残留するテルペンから微生物細胞を分離しようとする試みである。次いで、このペレットを新鮮培地に再懸濁し、テルペン不在下で2回目のインキュベートを行う。しかしながら、遠心分離ステップは、微生物細胞と酵母粒子を区別することができず、したがって、酵母封入テルペンを用いるとき、細胞ペレットはテルペンを取り込んだ酵母粒子も含有する。結果として、その後、酵母粒子と微生物細胞の両方が新鮮培地に再懸濁される。
【0230】
この方法論上の問題は、以下の理由から、上述の実験で得られた結果に影響を及ぼすとは考えられない。
1.これまでの実験で、テルペンエマルションは、テルペンを取り込んだ酵母粒子の代わりに用いられ、殺真菌活性が明らかに示されている。
2.封入テルペンは拡散によって放出され、封入テルペンの濃度と周囲の培地に放出されたテルペンの濃度は急速に平衡に達する。したがって、遠心分離及び新鮮培地への再懸濁後、増殖培地の放出テルペンの濃度は、増殖阻害活性に必要とされる濃度をはるかに下回る可能性が高い。
3.殺真菌MICウェルの内容物を固体寒天増殖培地に平板培養したとき、増殖は見られなかった。固体増殖培地に平板培養されたとき、大量の寒天プレート全体にわたって残留テルペンが拡散することにより、増殖阻害を引き起こすことができないほど低い局所テルペン濃度となる。したがって、殺真菌MICウェルの内容物で増殖が起こらないのは、初期の殺真菌活性によるものに相違ない。対照的に、殺真菌MICより低いMICが得られ、MICウェルの内容物が固体寒天増殖培地に平板培養されたとき、増殖が観察され、静真菌効果が示唆された。
【0231】
実施例16−野外試験用封入テルペン組成物の調製
【0232】
以下のプロトコルの目的は、その後の野外試験のために、中空グルカン粒子にテルペン組成物を封入することであった。
【0233】
材料:
チモール(Alpha−Gamma Corporation)
オイゲノール(Alpha−Gamma Corporation)
ゲラニオール(Alpha−Gamma Corporation)
1%Tween80(Alpha−Gamma Corporation)
酵母細胞壁粒子
キサンタンガム
【0234】
酵母細胞壁粒子は、Nutricell MOS55の商品名でBiorigin(Sao Paolo、Brazil)から入手したものであり、Acucareira Quata S.A.、Usina Quata、Quata−Sao Paolo−Brazil−Zip Code 19780 000製であった。これらの粒子は、サッカロマイセスセレビシエの噴霧乾燥細胞壁抽出物であり、薄いベージュから黄褐色の流動性粉末である。
【0235】
プロトコル:以下のプロトコルは1kgの粒子に適していたが、大量生産のために簡単にスケールアップできる。
1.テルペン混合物の調製−ガラスのフラスコでゲラニオール375g+オイゲノール525g+チモール600gを混合し、撹拌する。
2.2ガロンの白色バケツで62gのTween80を6.2lの水に混合することによって、6.2lの1%Tween80を調製する。混合して、溶液を形成する。
3.6.2gのキサンタンガムをTween溶液に添加し、撹拌して溶解する。
4.ポリトロンミキサーを用い、白色バケツで1.5kgのテルペン混合物+6.2lの1%Tween80/0.1%キサンタンガムを混合することによって、テルペンエマルションを調製する。
5.1000gの酵母細胞壁粒子を添加し、ペイントミキサーを用いて混合して、均一な懸濁液を形成する。
6.ステップ4のテルペンエマルションを酵母細胞壁粒子に混合しながら添加し、薄いマヨネーズ様粘稠度とする。
7.テルペン混合物を缶に注ぎ、一晩インキュベートする。
【0236】
結果:中空グルカン粒子に封入されたゲラニオール、オイゲノール、及びチモールをペーストとして得た。このペーストは、通常の噴霧乾燥技法によって、容易に乾燥粉末に変換された。このペーストは、以下のプロトコルの「液体」組成物であり、「粉末」は噴霧乾燥形態である。
【0237】
実施例17−ベト病に対する封入テルペン組成物の野外試験
【0238】
ブドウのベト病はプラスモパラビチコラ(Plasmopara viticola)に起因し、これは世界的にブドウ畑に感染し、収穫量及びワインの品質の点から、ブドウ栽培者にとって破壊的な損失となり得る。この真菌は果実と木のすべての緑色部分を攻撃し、葉を枯らし、花と果実を腐らせる。この疾病は、葉の上面の不規則な淡黄色又は黄緑色の斑点、葉の病変部の下面を覆う密集した灰白色の綿様の真菌生育物として発現する。果実も綿毛の生育物で覆われる可能性があり、感染の時期に応じて、茶色になり柔らかくなるか、又はまったく柔らかくならない可能性がある。ベト病は、風や雨による胞子の分散によって広がり、感染には湿潤な条件を必要とする。これは高湿な環境で特に問題となる。この疾病の管理には、殺真菌剤を初期に適用し、その後、適切な間隔で反復適用することによる、予防措置が推奨されている。一部の処置には耐性が生じており、異なる殺真菌剤を交代で用いることによって耐性の発現を最小限度にすることはできるが、依然として問題である。
【0239】
この試験の目的は、ブドウのベト病の予防に関して、液体又は粉末(噴霧乾燥)製剤として供給される実施例16の封入テルペン製剤(YGP−GET)の有効性を調べることであった。
【0240】
Kir−Yianniブドウ畑のサイト20に、それぞれ0.1haに及ぶ4つの隣接するブロックを特定した。
【0241】
Kir−Yianniは海抜300mにある35haのブドウ畑である。北と西はカシ混合林に接し、南と東には果樹園とブドウ畑を見渡す。
【0242】
4つのブロックはすべて、テルペン製剤を適用する前に、複数の製品で処置されていた。2004年6月26日、用量0.5g/l又は2g/lで、テルペン粉末製剤を4つのブロックの2つに噴霧した(図21の概略図を参照のこと)。3つ目のブロックを、通常のボルドー液(Bordeaux mix)及び水和硫黄剤で処置し、残りのブロックは、未処置のままとした。翌週にわたって、各ブロックのブドウをベト病の徴候に関してモニターした。
【0243】
Kir−Yianniブドウ畑のサイト18に、それぞれ0.1haに及ぶ4つの隣接するさらなるブロックを特定した。4つのブロックはすべて、テルペン製剤を適用する前に、複数の製品で処置されていた。2004年6月26日、用量1g/l又は4g/lで、テルペン液体製剤を4つのブロックの2つに噴霧した(図21)(注記:テルペン液体製剤1gは、1mlの体積を有する)。残りの2ブロックのうち、1つは未処置のままとし、1つは2004年6月28日に、ベト病の通常の処置剤であるMikal(登録商標)を噴霧した。翌週にわたって、各ブロックのブドウをベト病の徴候に関してモニターした。
【0244】
両方のサイトにおいて、テルペン製品は、1200L/Haの割合で適用した。
【0245】
ブドウの以下の生長段階を記録した。
−発芽、2004年3月26日
−開花、2004年6月1日
−ヴェレゾン、2004年8月6日
【0246】
本試験の適用は、ヴェレゾン前に行った。
【0247】
2004年の生育期は例外的に遅く、全期間を通じて湿潤であった。ベト病の疾病圧力は極めて高く、ボトリチスのレベルは高く、ウドンコ病の圧力は中程度であった。粉末及び液体YGP−GET製剤はいずれも室温で貯蔵した。特別な貯蔵条件は用いなかった。
【0248】
比較製品の詳細
【0249】
粉末製剤試験:ボルドー液、Manica Spa、Italy製造、Moscholios Chemicals SAによってGreeceで包装;水和硫黄剤
【0250】
液体製剤試験:Mikal(登録商標)(ホセチルAl50%、ホルペット25%)、Bayer CropScience製造、Bayer Hellas SAによってGreeceで流通。これらの比較製品は以下のように適用した。用量15g/lで発芽前に1回適用、その後、用量6.5g/lで1年毎にさらに2回適用。3回の適用はすべて1000L/Haの噴霧割合を用いた。
【0251】
粉末製剤試験:ボルドー液(2g/l)及び水和硫黄剤(2.2g/l)を2004年6月26日に適用した。
液体製剤試験:Mikal(3.2g/l)を2004年6月28日に適用した。
【0252】
ベト病の症状に関してブドウの木を視覚的に検査した。疾病の発症は、葉に平均2つの油性斑点があることを特徴とした。さらなる斑点の出現を予防する処置は、ベト病に対して有効な防御を提供するとみなした。
【0253】
結果
YGP−GET粉末製剤(噴霧乾燥)
ボルドー液による通常の処置は、ベト病に対して良好な防御を提供した。コントロールのブドウの木では、ベト病の軽度の症状が観察された。0.5g/lのテルペン製品濃度は防御せず、2g/lのテルペン製品濃度は、コントロールよりわずかに良好な防御を提供した。注記:直前に殺虫剤処置を行ったため、このサイトの疾病圧力は非常に低かった。
【0254】
粉末製剤は非常に細かく、空中に分散するため、溶解が困難であった。このことが製品の有効性に悪影響を及ぼした可能性がある。
【0255】
YGP−GET液体製剤
用量4g/lで投与したとき、このテルペン製剤は露出樹冠でベト病に対して優れた防御を提供した。1g/lの用量では防御されなかった。コントロールのブロックでは、ベト病の重篤な症状が認められた。
【0256】
液体製剤は使用が容易であり、心地よいにおいを有した。
【0257】
考察
ベト病は収穫量及びワインの品質に影響を及ぼすため、ブドウ栽培者にとって破壊的な損失となり得る。ひとたび定着すると、感染は急速に広がることができるため、この疾病の管理は予防が中心となる。粉末製剤を噴霧したサイトにおいて、YGP−GETは、低用量(0.5g/l)では有効性を示さず、2g/lの用量では通常の処置剤より有効性が低かった。このサイトでは、直前の殺虫剤適用により疾病圧力が低く、それがテルペン処置の外見上の有効性を限定した可能性がある。しかしながら、2g/l未満のテルペン製品の用量は不充分であるとみなされた。
【0258】
液体製剤を噴霧したサイトでは、4g/lの高い用量レベルで、露出樹冠に優れた防御が提供された。このサイトでは過度の植物生長によって、樹冠内部の古い生育物に比べて、外部の若い枝の処置がより有効であった。この処置は浸透性でないため、テルペン製品による完全な葉面被覆が有用である。通常の浸透性処置剤に用いられるより約30%増の量で、テルペン処置剤を用いて良好な被覆が達成されると推定される。
【0259】
結論:
YGP−GET液体製剤の葉面適用は、4g/lの濃度でベト病の制御に非常に有効であった。より低い濃度である0.5g/lの粉末、及び1g/lの液体は有効でなかった。
【0260】
実施例18−ウドンコ病に対する封入テルペン組成物の野外試験
【0261】
ブドウのウドンコ病は、真菌のウンキヌラネカトル(Uncinula necator)に起因し、ブドウの木の生長、果実の品質、及び木の耐冬性を低下させる。ワイン用のブドウでは、果実のわずか3%の感染レベルであってもワインの品質に影響を及ぼし得る。この疾病は、粉末状で白色の葉の被覆物に拡大する真菌生育物の小さな灰白色の斑点を特徴とする。この真菌生育物は果実にも生じることがあり、果実が割れる可能性がある。暖かく湿潤な条件を必要とするベト病とは対照的に、ウドンコ病は、雨天条件ではなく、湿気のある日陰を好むため、より乾燥した生育期に問題となり得る。ウドンコ病の管理には、殺真菌剤を初期に適用し、その後、適切な間隔で反復適用することによる、予防措置が推奨されている。
【0262】
この研究は、ブドウのウドンコ病の予防に関して、YGP−GET組成物適用の有効性を調べることを目的とした。
【0263】
Kir−Yianniブドウ畑のサイト18に、それぞれ0.1haに及ぶ3つの隣接するブロックを特定した。2004年7月19日、用量2ml/lでYGP−GET液体製剤を3つのブロックの1つに噴霧し、1つは未処置のままとした。残りのブロックは、通常の処置剤であるEquesion(2.5g/l)、Alliete(0.9g/l)、及びPunch(0.075ml/l)を噴霧した(図22を参照のこと)。翌週にわたって、各ブロックのブドウの木をウドンコ病の徴候に関してモニターした。
【0264】
Kir−Yianniブドウ畑のサイト20に、それぞれ0.1haに及ぶ3つの隣接するさらなるブロックを特定した。2004年7月20日、用量2ml/lでYGP−GET液体製剤を3つのブロックの1つに噴霧し、残りの2つのブロックは未処置のままとした(図22を参照のこと)。翌週にわたって、各ブロックのブドウの木をウドンコ病の徴候に関してモニターした。
【0265】
いずれのサイトも、それらのブロックは複数の製品で事前に処置されており、テルペン製品の事前適用が含まれる。
【0266】
すべてのテルペン処置剤は、完全な被覆を確実にするために、1200L/Haの割合で適用した。
【0267】
ブドウの以下の生長段階を記録した。
−発芽、2004年3月26日
−開花、2004年6月1日
−ヴェレゾン、2004年8月6日
【0268】
本試験の適用は、ヴェレゾン前に行った。
【0269】
2004年の生育期は例外的に遅く、全期間を通じて湿潤であった。ベト病の疾病圧力は極めて高く、ボトリチスのレベルは高く、ウドンコ病の圧力は中程度であった。
比較製品の詳細
【0270】
サイト20では比較製品を用いなかった。サイト18に用いた比較処置を以下に詳しく述べる。
【0271】
Punch(登録商標)(フルシラゾール40%)、Dupont
2004年7月19日、製造業者の使用説明書に従って、ウドンコ病の予防処置剤として、用量0.075ml/lでPunchを適用した。
【0272】
追加製品の詳細
サイト20では追加の製品を用いなかった。サイト18に用いた追加製品を以下に詳しく述べる。
【0273】
Equesion系(ファモキサドン22.5%、及びシモキサニル30%)
Alliete(ホセチルAl80%)
【0274】
2004年7月19日、ベト病の予防処置剤として、Equesion(2.5g/l)及びAlliete(0.9g/l)を適用した。用量は製造業者の使用説明書に従って決定した。
【0275】
これらの比較製品及び追加製品は、総合的害虫管理スケジュールの通常の処置剤である。
【0276】
ブドウの木をウドンコ病の症状に関して視覚的に検査した。
【0277】
結果:
サイト18
コントロールブロックでは、花硬及び茎の約20%が黒色であったが、これはウドンコ病の中程度の感染を示している。通常の処置を行ったブロック、及びテルペン処置を行ったブロックでは、すべての茎と房が緑色であったが、これは適切な防御が提供されたことを示している。
【0278】
サイト20
いずれのブロックでも、ウドンコ病感染の証拠は認められなかった。
【0279】
追加的観察
生育期の終わりに、サイト18及び20のブロックは、ブドウ畑の残りの部分と比べて、概して疾病による低いストレスを示した。
【0280】
ウドンコ病感染は、ブドウの木の生長、果実の品質、及び木の耐冬性を低下させることによって、栽培者に相当な損失をもたらす。さらに、果実のわずか3%の感染レベルであってもワインの品質に影響を及ぼし得る。ひとたび定着すると、感染は急速に広がることができるため、この疾病の管理は予防が中心となる。この研究では、サイト18において、テルペン製品YGP−GETの適用はウドンコ病感染を有効に予防し、テルペン製品が示した制御レベルは、通常の処置剤によって提供されるものと同等であった。しかしながら、ウドンコ病感染が不足していたため、サイト20の結果は確定的でない。感染の不足は、この研究に先立って、殺虫剤が広範に適用され、疾病圧力の低下をもたらしたためであると思われる。
【0281】
サイト18及び20において、疾病によるストレスが低レベルであることは、これらのサイトに適用された初期のテルペン処置が長期的な感染の制御に有益である可能性のあることを示唆している。
【0282】
結論:
YGP−GETは、通常の処置剤によって提供されるものと同等の制御レベルで、ウドンコ病感染を有効に予防した。
【0283】
実施例18−ウドンコ病に対する封入テルペン組成物のさらなる野外試験
【0284】
この研究は、Grimson Seedless食用ブドウのウドンコ病の処置に関して、YGP−GETの有効性を調べることを目的とした。
Tsigarasブドウ畑(Kir−Yianniブドウ畑の約80km南)の0.1haのプロットは、2004年7月1日のCisteine適用中、不注意で未処置のまま残された。このプロットのブドウの木は、その後、葉、茎、及び果実にウドンコ病の重い症状を示した。2004年7月12日、この未処置プロットに1200L/Haの割合で、3ml/lの液体YGP−GET製剤を噴霧し、ブドウ畑の残りの部分に、比較製品Roganaを噴霧した。24時間後、ウドンコ病の症状に関して、ブドウの木を評価した。
【0285】
ブドウの木は、高リラ型トレリス(high lyre trellis)システムに仕立てられた。
【0286】
比較製品の詳細
Rogana(フェンブコナゾール5%、ビノカップ(binocap)16%)、BASF(BASF Agro Hellas S.A.、Athens、Greece)製造
2004年7月12日、ウドンコ病の処置剤として、Tsigarasブドウ畑にRoganaを適用した。用量は製造業者の使用説明書に従って決定した。
【0287】
ブドウの木をウドンコ病の症状に関して視覚的に検査した。
【0288】
結果:
YGP−GETの適用前、ウドンコ病の重い症状が明らかであった。YGP−GETのわずか24時間後、ウドンコ病の白色の粉が黒色に変わったが、これは有効な抗真菌活性を示している。この時点で疾病が有効に阻止されたため、さらなる処置剤は適用しなかった。YGP−GETは通常の処置剤と同等の有効性を示した。
【0289】
考察:
この研究では、YGP−GETを用いて、定着したウドンコ病感染が迅速かつ有効に処置された。適用のわずか24時間後、それ以前には重症であったウドンコ病感染が、テルペン製品を適用することにより、通常の処置剤と同等の有効性で阻止された。
【0290】
この研究から得られた予備データは、YGP−GETが予防的能力を示すことに加えて、定着した真菌感染の処置にも有効である可能性を示唆している。
【0291】
実施例19−ウドンコ病に対する封入テルペン組成物のさらなる野外試験
【0292】
背景及び原理
本試験では、有機製品を用いてウドンコ病を制御するタスマニアのブドウ畑(Frogmore Creek Vineyard、Hathaway Trading Pty Ltd、Box 187、Richmond TAS 7025、Australia)のプログラムの一部として、YGP−GETの使用を調べた。この研究の目的は、シャルドネ種のブドウの木において、ウドンコ病の有機的制御におけるYGP−GET適用の短期有効性を調べることであった。
【0293】
この試験では、ブドウの木(シャルドネ種)を2005年2月7日にテルペン製品で処置するか、又は未処置のまま(コントロール)とした。事前の有機処置によって抑制されていたが、試験前のウドンコ病の重症度は商業的に許容できないレベルであるとみなされ、6つの積極的処置プロットと6つのコントロールプロットは同等であった。作物段階はおよそE−L33−34(ヴェレゾン前)であった。
【0294】
YGP−GET(4ml/l)(液体製剤)を、事前にミルクで処置されていた6つのシャルドネプロットに噴霧した。6つのシャルドネプロットを未処置のコントロールとしたが、それらのプロットは事前に油/ホエーで処置されていた。プロット当たりの木の数は、典型的に7本であった。
【0295】
このプロトコルに用いたYGP−GETの組成の詳細を表20に示す。
【0296】
【表20】

【0297】
ウドンコ病の重症度を、テルペン処置3日前に評価し、処置3日後に再び評価した。各プロットにおいて、無作為に20房のブドウを選択し(各パネルサイドで10房)、活性なウドンコ病菌のコロニーが被覆している房の面積パーセントとして、疾病の重症度を評価した。その後、栽培者が試験領域全体に硫黄及び植物油ベースの噴霧補助剤(Synertrol Horti油)を噴霧したため、さらなる評価は不可能であった。
【0298】
処置される植物の数/領域
試験製品:事前にミルクで処置されている、6つのシャルドネプロット(合計でブドウの木約42本)に、YGP−GET(4ml/l)を適用する。
【0299】
コントロール:コントロールとして用いる6つのシャルドネプロット(合計でブドウの木約42本)には処置剤を適用しなかったが、それらのプロットは事前に油/ホエーで処置されていた。
【0300】
栽培方法
ブロックB2にヴィティスヴィニフェラ(Vitis vinifera)(シャルドネ種)のブドウ:アーチ型の茎を持つバーチカルシュートポジショニング。
【0301】
栽培配置
間隔:列間の距離2.5m、木の間(列内)の距離1.25m、ヘクタール当たりのブドウ3200本。列の方位は北から南であった。
【0302】
樹冠密度
ポイントコドラート法を用いて、シャルドネの木の試験前における樹冠密度の特徴を明らかにした(表21)。事前に硫黄で処置したか、又は未処置であるシャルドネプロット内において、樹冠の代表的な部分を選択することによって、2005年1月13日に測定を行った。各処置前のそれぞれのプロットで10個の測定を行った(即ち、硫黄処置プロットで合計60個の測定、未処置コントロールプロットで60個の測定)。さらに、3つの直立した枝(プロット当たり)の節の長さと数を測定した。
【0303】
【表21】

【0304】
一般的条件
実験材料によるこれらのプロットの前処置は、未処置コントロールと比較して、ウドンコ病を抑制した。しかしながら、ミルク処置プロット、及び油/ホエー処置プロットの両方で同等であったが、ウドンコ病のレベルは商業的に許容されないレベルであるとみなされた。
【0305】
適用方法、用量、及び投与計画
2005年2月7日、多用途車の平板トレイに搭載したポンプとホースリールに接続したハンドガンを用いて、YGP−GET処置剤(4ml/l)を適用した。噴霧はポンプ圧1500〜1600kPa(200〜230psi)で駆動し、約63ml/秒で送達した。通常の処置剤の標準的噴霧量(約900L/Ha)を用いた。
【0306】
活性なウドンコ病菌コロニーが被覆しているブドウの房の面積(%)として評価されるウドンコ病の重症度を、各プロットで無作為に選択した20房(各パネルサイドで10房)に関して評価した。疾病の重症度を、YGP−GET処置剤の適用3日前、2005年2月4日に評価し、テルペン適用の3日後、2005年2月10日に再び評価した。
【0307】
逆正弦変換を用いてデータを変換して、平均分離度を求めた。
【0308】
結果
処置前、テルペンで処置する6プロットのシャルドネ種ブドウの房におけるウドンコ病の平均重症度(20.4%)は、6つのコントロールプロットの平均重症度(23.2%、表22)と類似していた。これらのデータの逆正弦変換に基づく統計的分析によって、処置前の疾病重症度に有意差のないことが見出された(表23)。
【0309】
しかしながら、処置3日後、ウドンコ病の平均重症度は、コントロールで37.8%であったのに対し、YGP−GET処置した房では23.8%であった(表22)。これらのデータの逆正弦変換は、より狭い面積が活性ウドンコ病菌コロニーで被覆されていたテルペン処置したブドウの房に統計的な有意差を示した(p=0.058、表23)。
【0310】
【表22】

【0311】
【表23】

【0312】
考察:
ウドンコ病によるブドウの木の感染は、木の生長、及び耐性、並びに果実やワインの品質に有害な影響を及ぼすことによって、栽培者に相当な損失をもたらし得る。有機的に管理されたブドウ畑では、栽培者は、元素硫黄などの処置剤の代替物を探している。
【0313】
この研究は、オーストラリア、タスマニアの有機ブドウ畑において、液体製剤としての封入テルペン製剤(4ml/l)のウドンコ病制御における有効性を調べた。テルペン適用のわずか3週間前に他の実験処置剤を用いたが、ウドンコ病感染レベルは依然として商業的に許容されないレベルとみなされた。シャルドネの木をYGP−GETで処置して3日後、処置したブドウのウドンコ病の重症度は、未処置コントロールの重症度より有意に低かった。未処置コントロールでは、処置前評価と処置後評価との間の6日間に、感染の重症度が悪化したが、処置した木では不変であった。したがって、処置前に胞子形成ウドンコ病菌のコロニーが定着していたブドウの房において、YGP−GETは疾病増大を減速させたと考えられる。推定されるところでは、存在するコロニーはある程度胞子形成を続けたが、コロニーの拡大は阻害された。その後、栽培者が試験領域全体に硫黄を噴霧したため、さらに長期間の有効性評価は不可能であった。
【0314】
これらの有望なデータは、ブドウの木のウドンコ病制御におけるYGP−GETの有効性を実証している。
【0315】
実施例20−ボトリチスに対する封入テルペン組成物の野外試験
【0316】
ブドウのボトリチス房腐敗病は、果実の収穫に重大な損失をもたらし得る一般的な真菌であるボトリチスシネレア(Botrytis cinerea)に起因する。果実が感染の主たる部位であるが、この疾病は花と葉にも影響を及ぼし得る。初期には、感染した果実は軟らかく、水気が多く見え、高湿度で水分の多い条件下では、灰色の真菌生育物に覆われることもある。時間が経過すると、感染した果実はしなびて、落下する。ボトリチスは、空気循環の悪い高湿度条件を好み、割れているか、又は損傷した果実が、特に感染の拡大を受けやすい。ボトリチスの管理方策には、良好な空気循環を促進すること、損傷を防ぐこと、生育期の適切な時期に殺真菌剤を適用することが含まれる。
【0317】
この研究の目的は、ブドウのボトリチス感染の処置における、YGP−GETの有効性を調べることであった。
【0318】
2004年10月中旬(Teldor(登録商標)適用3週間後)、Kir−Yianniでのボトリチスの出現は、付随する立ち入り禁止期間によって計画された収穫が妨げられるため、通常の農薬で処置することができなかった。したがって、2つの隣接する0.1haのプロットをブドウ畑のサイト7に特定し、2004年10月12日、それらのプロットの1つを4ml/lのYGP−GET液体製剤で処置し、他方は未処置のままとした(図23を参照のこと)。3日後に作物を収穫し、各プロットの感染果実の比率を求めた(総収穫量の重量%)。その後、処置プロット及び非処置プロット両方の非感染果実を、発酵槽で混合した。
【0319】
サイト7は、テルペン製剤の適用前に複数の製品で処置されていたが、依然としてボトリチス感染を示した。
【0320】
ブドウの木には、1200L/Haの割合で、4ml/lのYGP−GET液体製剤を単回適用した。
【0321】
ブドウの以下の生長段階を記録した。
−発芽、2004年3月26日
−開花、2004年6月1日
−ヴェレゾン、2004年8月6日
−収穫、2004年10月15日
【0322】
本研究の適用は、収穫3日前に行った。
【0323】
2004年の生育期は例外的に遅く、全期間を通じて湿潤であった。ベト病の疾病圧力は極めて高く、ウドンコ病の圧力は中程度であり、ボトリチスのレベルは高かった。
【0324】
ここでは収穫前の殺虫剤期間制限のため、他の方法では処置できなかったボトリチス感染に対するYGP−GETの潜在的有効性を評価するために、YGP−GETを適用した。
【0325】
テルペン製品適用前のサイトの視覚的評価によって、ボトリチス感染の証拠が明らかとなった。収穫後、果実をコンベヤベルトに広げ、感染した果実を手作業で非感染果実から分離し、その後粉砕した。感染果実の比率は、それぞれのプロットに関して、総収穫量の(重量)パーセントとして算出した。
【0326】
結果
YGP−GET適用前のサイトの視覚的評価によって、ボトリチス感染の証拠が明らかとなった。収穫後(YGP−GET適用3日後)、感染果実の比率は、処置プロット及び未処置プロットでそれぞれ13%及び23%であった。試験領域は統計的有意性を評価するには充分でなかった。しかしながら、YGP−GET処置は疾病の進行を明らかに減速した。
【0327】
未処置プロット及びテルペン処置プロットの非感染果実を混合することによって、発酵は影響を受けなかった。
【0328】
考察
ボトリチスの通常の処置は、収穫3週間前に停止しなければならず、作物の収穫量及び品質に相当な損害が生じる期間が残される。収穫まで用いることができるか、又は現存する製品より収穫間近まで継続できる処置剤の開発は、作物の収穫量及びワインの品質に著しい改善をもたらすことができ、栽培者に相当な利益となるであろう。本研究において、テルペン製品YGP−GETによる処置は、収穫のわずか3日前に、定着したボトリチス感染の進行を明らかに減速し、未処置プロットに比べて、テルペン処置プロットの感染果実の比率を低下させた。さらに、収穫間近にYGP−GETを用いたにもかかわらず、処置ブドウと未処置ブドウの組合せによって発酵は影響を受けなかった。
【0329】
これらの結果は、YGP−GETが、定着したボトリチス感染の衝撃の低減に有効であり、その後の発酵に有害な影響を与えることなく、収穫近くに用いることができることを示唆している。
【0330】
実施例21−定着したベト病の処置に関する封入テルペンの評価、及びその後のブドウ品質の評価
【0331】
2004年8月25日、250リットル当たり1000gの割合で組成物を適用して、YGP−GETの試験を行った。
【0332】
100%感染し、ベト病によって実質的に葉が損失しているカベルネソービニヨンのブドウ畑に噴霧した。残存する葉は、ベト病の典型的な徴候である葉の上部の黄色斑点及び葉の底部の綿毛状生育物から明らかなように、ベト病の斑点が感染していた。葉の多くはほぼ全体が黄色であったが、これは実質的な感染を示している。この葉の損失及び感染は一般にブドウの成熟を遅らせ、多くの場合、これらのブドウはワイン製造に適した完全に熟したブドウにはならない。
【0333】
ブドウの木に時折、完全に未成熟(即ち、直径〜1cmで長円形の硬い暗緑色の果実)の房が認められたことは、これらの木がヴェレゾン前、おそらく開花時かそれ以前に感染した可能性が高いことを示していた。初期に銅(ボルドー、又は塩基性硫酸銅)の適用は用いられなかった。このブドウ畑は、先の収穫においてカベルネソービニヨンから作物が生産されない程度にまで重度に感染していた。ベト病菌を接触致死させるための炭酸水素カリウム処置剤、それに続く長期的な浸透性防御のためのスチルブリン(Stilbourin)適用にもかかわらず、前年の葉の損失は100%であった。
【0334】
2004年9月19日、本試験で処置したブドウを摘み、粉砕し、ブドウ液について以下の観察を行った(表24)。
【0335】
【表24】

【0336】
これらの結果は、処置した木のブドウは未処置のブドウより熟していることを示している。ブドウ自体の観察は、未処置のブドウは平均して、ヴェレゾンを過ぎたばかりのブドウであることを示す、薄い色で、一部は透明なピンク/紫/緑の色合いであるが、処置したブドウは平均して、完全に熟しているか、又はほぼ完全に熟しているブドウに特有の濃い紫色であり、不透明であることを示した。
【0337】
これらのブドウの試食により、処置したブドウは、熟したカベルネソービニヨンに特有の風味豊かな味わいを有したが、未処置のブドウは風味豊かな味わいではなかった。未処置のブドウは、青リンゴの酸味があり、これは良好なワインの製造には不適切な高いリンゴ酸/酒石酸比であろうことを示している。
【0338】
これらのブドウの相違を実証し、処置したブドウがワイン製造に適していることを実証するために、これらのブドウからワインを製造する準備として、ブドウを粉砕し、茎を取った。ブドウ栽培者は、この処置剤がワインの風味に影響を及ぼすであろうと懸念していたが、本出願人の提案で、栽培者はYGP−GET適用の翌日に処置したブドウを試食し、残存する味も香りもないことを見出した。
【0339】
処置したブドウと未処置のブドウとの相違は、ブドウ液の色においてさらに実証される。未処置のブドウの果汁は、淡い緑がかった色/無色(白ワインブドウ液にやや似ている)であり、処置したブドウの果汁は、粉砕直後の熟したカベルネソービニヨン種のブドウに特有のピンクがかった色であった。これらの結果は、少なくとも短期間では、YGP−GETは、殺菌しベト病の再感染を阻止することにより、晩夏のブドウ畑の処置に有効であることを示している。
ベト病の制御におけるYGP−GETの長期有効性に関するさらなる調査が役立つであろうが、提示された結果は、YGP−GETが有用な処置剤であることを示している。
【0340】
遅発性ベト病は作物を壊滅させるが、現在のところ、収穫の直前に適用でき、防御を提供する能力を保持する有効な処置剤はない。YGP−GETの大きな長所は、迅速に殺菌し、他の接触性殺真菌剤より長期にわたってその有効性を維持することである。
【0341】
ベト病に対して確立された実績を有するいくつかの抗真菌剤が市場にはあるが、いずれも作物が収穫できるまで、適用後にいくらかの期間を必要とする。いくつかの処置剤(硫黄含有製品など)は、温度が85°Fを超えた場合、用いることができない。銅含有殺真菌剤の植物毒性もブドウの種類に応じて著しい。接触性殺真菌剤は長期的な効果を持たず、そのため多くの場合、より長く作用する殺真菌剤を2回目に適用する必要があるが、関連規則(例えば、PHI(収穫前期間)、REI(立ち入り禁止期間))によって制限される可能性がある。
【0342】
ベト病の多くの通常の処置剤は、再入場の制限(REI及び/又はPHI)を有し、これは66日のPHIを有し、もっとも熟している時点で栽培者がブドウを収穫できなくなるマンコゼブ(Mancozeb)などを適用することを恐れて、栽培者がこの処置剤を適用できないことを意味する。
【0343】
ベト病はミシシッピ川東部で生産される多くの不良なワインの主因に関係があるとされている。YGP−GETは、急速に成長しているこの産業において、感染したブドウを適切に熟させ、もっとも熟している時点で摘むことを可能にできる。
【0344】
有利には、YGP−GETは、様々な「有機」委員会(多くは自ら決定)によってこの製品が「有機」ガイドライン下でのブドウ栽培における使用に適切であると承認されるのに適しているべきである。これにより米国及び世界的に急速に成長している市場セグメントに別のニッチが開かれる。
【0345】
実施例22−封入テルペン及び非封入テルペンの殺真菌特性のin vitro評価
【0346】
さらなる試験を行い、実施例15に示した31種の非封入テルペン調剤、並びにグルカン粒子に封入された調剤16及び22を評価した。
【0347】
これらのアッセイを行うために、20000の胞子を1/3強度のポテトデキストロースブロス(PDB)に入れ、充分な量の選択したテルペン製剤を加えて、10から1000ppmの範囲の濃度を得た。これらの試験材料を、ボトリチスシネレア(B.c.)胞子を含む個別の滅菌蓋付きエッペンドルフ管に入れ、24時間インキュベートして、その後、遠心分離によって胞子を回収し、テルペン溶液を捨てた。胞子/バイオマスを滅菌水で洗い、再び遠心分離し、その後、300μlの1/3強度PDBに戻し、96ウェルプレートに移した。菌糸に成長する生存胞子の光学密度を経時的に測定した。殺真菌活性は、菌糸成長の不在によって明らかとなる、テルペン暴露24時間後の20000胞子の全殺滅として定義される。
【0348】
これらの結果は、本試験の条件下で、いくつかの製剤は統計的に有意なレベルで殺真菌性でなかったことを示唆している(結果を記載していない)。それらは1、2、4、5、6、8、9、11、12、14、15、17、18、19、20、21、23、24、25、27、28、29、30であった。組成の詳細は実施例15(表17)を参照されたい。
【0349】
もっとも有効な化合物の最小阻止濃度を表26に示す。
【0350】
【表25】

【0351】
水中化合物と中空グルカン粒子に封入された化合物との比較試験
【0352】
中空グルカン粒子に封入された製剤16(ゲラニオール、オイゲノール、及びチモール)及び22(オイゲノール、チモール、及びシトラール)の試料を、前に記載した技法に従って調製した。その後、非封入製剤に関して前に記載したプロトコルを用いて、封入製剤及び非封入製剤の殺真菌特性を評価した。
【0353】
図24に示したとおり、水に懸濁したテルペンと比較して、封入テルペン製剤の結果は大きく異なっていた。
【0354】
最小有効濃度を下記の表26に示す。
【0355】
【表26】

【0356】
このように、材料16及び22による結果は、水性懸濁液の場合と、グルカン粒子に封入して試験を行った場合とで大きく異なっている(注記:後記のとおり、水に懸濁したテルペンによる結果にはいくらかのばらつきがあり、上記の実験はこの一例である)。MIC値はいくつかの試験から複合したものである。重要なことに、封入テルペン製剤の結果には、水性テルペン懸濁液に付随するばらつきの問題がない。水に懸濁したテルペンでは5回の個別の試験を行い、YPでは3回行った。
【0357】
封入テルペン製剤は、容易に水と混和し、テルペン製剤は水性媒質に徐放される。これにより胞子はテルペンにより長い時間暴露される。
【0358】
試験媒質で懸濁液中の非封入テルペン製剤をモニターすることに問題があり、この点について結果に影響を及ぼした可能性がある。
【0359】
実施例23−ウドンコ病の制御に対する封入されたテルペンのin vitro評価
【0360】
本発明の研究は、もっとも有効なテルペン混合物と、これらがウドンコ病に関して活性であるときのレベルを決定するために実施した。
【0361】
酵母細胞壁に封入された31のテルペン又はテルペン混合物(YP−テルペン)について、評価した;特定の組成物に関して使用されてコードを、実施例15の表17に示す。
【0362】
プロトコルの開発は、生物の基礎生物学によって進められた。真菌は、絶対病原体であり、そのためブドウの葉以外では培養することができない。したがって本発明者等は、植物(「リースリング」の苗木)に接種し、大量の胞子形成を有する感染した葉を洗浄することによって、分生子を収集した。
【0363】
Reuveniによって使用された方法(2001;Can.J.Plant Pathol.23:52〜59)の、変形例を用いた。ウニシヌラネカターに感染した1から2枚の葉を、滅菌した50mLプラスチック管に入れた。Tween−20(7.5mL、0.0005%)をこの管に添加し、葉を30秒間激しく混合した。分生子を、ペトロフ−ハウザー(Petroff−Hauser)カウントチャンバーを使用してカウントし、1〜2×10分生子/mLに調節した。
YP−テルペンを、4000ppmの希釈標準溶液に希釈した。反応は、600μLのシリコン処理したエッペンドルフ管で行われ、最終的な反応体積は60μLであった。YPテルペンをこの管内で希釈することにより、最終濃度が100、250、500、750、又は1000ppmのテルペンが得られた。分生子懸濁液40μLを各管に添加し、各管を短時間混合した。水及び試験材料32(粒子のみ、テルペン無し)を、コントロールとして含めた。テルペンが存在しない状態で胞子発芽に悪影響を及ぼすことなく、胞子の阻害に充分な接触時間が得られるように、試験材料及び分生子を1〜1.5時間インキュベートした。この簡単な浸漬は、寒天表面でのテルペン混合物が素早く揮発又は水に吸収されるので、テルペンとの適切な接触時間を可能にするのに不可欠であった。
顕微鏡用スライドガラスを、1.5%素寒天750μLでコーティングした。スライドガラスを、水分ブロッターがそれぞれ収容されている発芽ボックスに入れた。分生子及びテルペン混合物を寒天上に直接配置しようと試みた場合、おそらくは不充分な接触時間のために、テルペンの影響は少ししかなかった。蓋を各ボックスに置き、材料を、ベンチトップ上で、室温で48時間インキュベートさせた。いくつかの実験において、テルペンのレベルが異なっているスライドを、同じボックス内に収容した。この技法は、高レベルのテルペンを有するスライドからの揮発性物質が、より低いレベルの材料を有するスライド上の分生子を阻害するので、誤った結果をもたらすことがわかった。したがって最終的なデータは、同じ試験材料をわずか1つ又は2つのレベルで収容するボックスから得られた。
【0364】
48時間後、光学顕微鏡を使用してスライドの検査をした。各分生子の鋭いアウトラインを得るために、位相差の様々な設定を使用した。YPは、分生子よりも何倍も小さく、これら2種を区別することは容易であった。スポット当たり、少なくとも100個の胞子が発芽したと推定され;観察可能な胞子の数が100個未満の場合、見出されたすべての胞子がカウントされた。少なくとも10個の発芽した分生子の、発芽管の長さも同様に測定したが、このデータは後に、あまり有用ではないことが見出された。
【0365】
本発明者等は、少しの割合の分生子が、葉から洗い落とされたときに既に発芽していることも見出した。これは、ウドンコ病分生子が発芽するのに自由水を必要とせず、したがっていかなる時でも発芽できることから予測される。したがって本発明者等は、0時間の水コントロールで頻繁に観察されたレベルであることから、最大4%の発芽を、本発明者等の殺真菌活性のカットオフと設定した。ウドンコ病感染の年齢も、いくらかのばらつきをもたらした。3週よりも古い感染では、コントロールにおいて全体的な発芽がより低いレベルであり(寒天スライド上の水コントロールで36%)、それに対してより若い感染では、より高い発芽レベル(約70%)が得られた。本発明者等は、すべての試験材料について数回観察し、阻害が生じたレベルでデータを収集した。試験当たり3つの反復試験片を使用した。
【0366】
結果:
材料の濃度は、テルペンが100から1000ppmに及んだ。すべての試験材料は、少なくとも試験がなされた最高濃度で殺真菌性であった。4種類の殺真菌効力が、31種の製剤で確立された。テルペン製剤、及び最小阻害用量(殺真菌性)に基づくそれらのグループ分けを、以下に示す。
グループA(>100ppm、<250ppm):7、10、22、及び30
グループB(>250、<500):1、2、3、7、8、13、14、16、19、20、23〜29、及び31
グループC(>500、<750):4、6、9、11、15、18、及び21
グループD(>750、<1000):5、12、及び17
【0367】
殺真菌用量を、顕微鏡観察により決定された反応後48時間のウドンコ病分生子の発芽に基づいて、計算した。ウドンコ病分生子は、コントロールにおいて24時間以内に発芽するので、発芽が48時間で生じなかった場合は、胞子が死滅したとみなした。2〜3の例において、本発明者等は72時間以上観察を続けたが、さらなる情報は得られなかった。
【0368】
実施例24−ベト病の制御に対する封入されたテルペンのin vitro評価
【0369】
本発明の研究は、もっとも有効なテルペン混合物と、これらがベト病に関して活性であるレベルを決定するために実施した。
【0370】
プラスモパラビチコラ、ブドウのベト病の外来薬剤を、in vitroで、すべての研究で使用した。これは、コーネル(Cornell)の同僚から得られた野生型病原株であった。生物を、「リースリング」種子から得られた苗木の葉の表面に維持した。
【0371】
プロトコルの開発は、生物の基礎生物学によって進められた。真菌は、絶対病原体であり、そのためブドウの葉以外では培養することができない。したがって本発明者等は、植物(「リースリング」の苗木)に接種し、感染した葉を水で穏やかに洗浄することによって、胞子嚢を収集した。本発明者等は、当初、カバースリップを有するスライドガラス上で胞子嚢を観察することにより、アッセイを実施使用とした。しかし、本発明者等は経時的にスライドを見たかったのであるが、それはこの方法では全く不可能であった。使用された体積は、適切な評価には少なすぎ、胞子嚢はしばしば、カバースリップの圧力によって崩壊する可能性があり、遊走子は、放出後に非常に素早く胞嚢に包まれる可能性がある。凹部スライドを使用する、Reuveniによって使用された方法(2001;Can.J.Plant Pathol.23:52〜59)の変形例を使用した。これらのスライドはカバースリップを必要とせず、遊走子は何時間も自分で動くことができ、使用された体積によって、経時的な複数の評価が可能になった。
【0372】
すべての実験において、プラスモパラビチコラに感染した1〜3枚の葉から得た胞子嚢を、滅菌水で穏やかに洗浄してビーカーに入れ、ペトロフハウザーカウントチャンバーを使用してカウントした。胞子嚢の濃度は、少なくとも1×10/mlであった。
【0373】
YP−テルペンを、4000ppmの希釈標準溶液に希釈した。反応は、600μLのシリコン処理したエッペンドルフ管で行われ、最終的な反応体積は10μLであった。YP−テルペンをこの管内で希釈することにより、最終濃度が10、50、100、250、及び500ppmのテルペンが得られた。胞子嚢懸濁液75μLを各管に添加し、この懸濁液を上下にピペットで移動させることによって穏やかに混合した。水及び試験材料32(YPのみ、テルペン無し)を、コントロールとして含めた。
【0374】
アッセイ#1−閉管
テルペンが10、50、及び100ppmである31種の試験材料すべてについて予備評価を行って、効力の正確な範囲を推定した(即ち、その後の8時間にわたり、自動性遊走子は観察されなかった)。胞子嚢が発芽したことが観察され、また遊走子がコントロール中に観察されたら(0.5〜1時間後)、15μLを、1つずつ管から凹部スライドガラスに移し、直ぐに、光学顕微鏡を使用して観察した。自動性遊走子が見られた場合、この濃度はさらに観察されなかった。スライドをきれいに拭き取った。2〜3時間毎に、管からの新しい試験材料を用いてこのプロセスを繰り返した。8時間後、最初の100個の胞子嚢の発芽%を決定した。サンプルを室温で放置し、翌日、再び観察した。殺活性の基準は、(a)胞子嚢発芽が0時間コントロール以下(10%以下)であること、及び(b)自動性遊走子が無いことであった。有効用量の胞子嚢発芽のパーセンテージは、水コントロール(87%)及びYP−32コントロール(76%)に比べ、1.8%から6.7%に及んだ。
【0375】
このアッセイにおいて、胞子嚢は、密封容器内で試験材料に常に接触していた。
【0376】
アッセイ#2−1時間のインキュベーション
上述のアッセイシステムは、密閉管内に材料が存在する場合に胞子嚢発芽及び自動性遊走子が存在せず、試験材料が試験溶液中に絶えず浸漬されるので、殺(即ち、致死)濃度に関する正確なデータを提供することができない。遠心分離は胞子嚢及び遊走子にとって致命的であるので、本発明者等は、溶液中の材料から細胞を除去することができない。したがって、密閉したエッペンドルフ管内での1時間のインキュベーション後、試験混合物(40μl)を凹部スライドに移した。この薄い層では、テルペンが空気中に揮発すると予測され、したがって殺濃度がより正確に決定される。
【0377】
水分ブロッターがそれぞれ収容されている発芽ボックス内に、スライドを保存した。2時間毎に、スライドを、自動性遊走子に関して検査した。24時間後に自動性遊走子が観察されない濃度を、このアッセイではMICとみなした。
【0378】
結果:
試験材料の濃度は、アッセイ毎に異なったが、全体的にテルペンは10から500ppmに及んだ。すべての試験材料は、両方のアッセイで少なくとも試験がなされた最高濃度で、有効であった。3種類の最小有効濃度(MIC)が、各試験毎に31種のテルペンに関して確立された。各試験毎のMICは、自動性遊走子が存在しない濃度である。
【0379】
試験番号を使用して列挙されたグループは、下記のとおりである。
【0380】
アッセイ#1−MIC−密閉管(テルペン懸濁液への一定の浸漬)
グループA(<50ppm):3、7、11、14、17、19、25、及び26
グループB(>50、<100):1、4、8、10、13、16、20、22、23、27、28、30、及び31
グループC(>100、<250):2、5、6、9、12、15、18、21、24、及び29
【0381】
アッセイ#2−MIC−1時間のインキュベーション(テルペンは、薄層からの揮発によって消散した)
グループA(<100ppm):4
グループB(>100、<250):3、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22〜31
グループC(>250、<500):1、2、5、6、9、12、15、18、及び21
【0382】
31種のYP−テルペン試験材料に関し、プラスモパラビチコラの胞子嚢から自動性遊走子が放出されるのを阻害する能力について評価した。2つのアッセイを実施した。第1の試験では、本発明者等は、胞子嚢の発芽と、密閉管内でインキュベートした材料からの遊走子の自動性との両方について試験をし;第2の試験では、本発明者等は、密閉管内で1時間だけインキュベートした後の、凹部スライドでの遊走子の自動性のみ評価した。
【0383】
自動性遊走子が存在しないことは、試験材料の効力を決定する明らかな方法であり、したがって、決定的な基準として使用された。遊走子の自動性は、この病原体による感染に極めて重要である。胞子嚢発芽の阻害は、ベト病の制御に向けた第1のステップであり:胞子嚢が無傷のままである場合は、遊走子は放出されないことになる。胞子嚢発芽に関する本発明者等のデータは、発芽が決して0%ではないとしても、上述のMICを裏付けている。いくつかの胞子嚢は、葉から収集したときに既に発芽していた。0時間(遊走子は観察されない)での発芽%は、6%から16%に及んだ。
【0384】
第1のアッセイにおいて、テルペンは、理想的な試験条件下で遊走子の放出を制御した。間違いなく、試験材料は、ベト病の病原体に対して殺効果を発揮する。しかし、アッセイ#2は、テルペンが揮発性によって消散する、植物の葉においても生ずることになる状況で、致死率のより良好な試験を提供する。これらを総合すれば、2つのアッセイは、YP−テルペン材料がブドウのベト病の病原体を制御する生体外での能力に関し、完全な評価を提供する。
【0385】
実施例25−ボトリチスシネラの制御に対する封入されたテルペンのin vitro評価
【0386】
酵母細胞壁に封入された15種のテルペン又はテルペン混合物について、評価した。試験がなされた製剤は、L−カルボンを含有していなかった。
【0387】
ボトリチスシネラをすべての研究で使用した。株の同定はB36であり、コーネル大学から得られた。この生物を、25℃でV8寒天上に維持した。
【0388】
この研究のプロトコルは、レサズリン(Alamar Blue)アッセイの態様と、B.シネラで先に使用された別のプロトコルとを組み合わせる。レサズリンの存在によって、本発明者等は、酵母粒子の存在下でテルペンの殺レベルを測定することが可能になる。
【0389】
ボトリチスシネラの胞子を水中で収集し、濃度を1×10胞子/mLに調節した。YPテルペンを、滅菌した1.5mLエッペンドルフ管内で、最終濃度100、250、又は500ppmに希釈した。胞子懸濁液50μL、及び1/3強度PDB 375μLを、この管に添加した。懸濁液を短時間混合し、室温で24時間インキュベートした。次いで各管の内側を、滅菌した楊枝を使用して掻き取って、ウェルから菌糸を放出させた。
【0390】
静真菌アッセイ:
24時間後、試験懸濁液50μlの2つの個別のサンプルを取り出し、1/3強度PDB 30μl及び250ppmレサズリン20μLと一緒にマイクロタイタープレートのウェル内に置いた。これらの混合物を、一晩16〜20時間にわたってインキュベートした。次いで目視検査を行った。試験混合物が紫のままの、YP及び胞子懸濁液の濃度を、静真菌性とみなした。レサズリン懸濁液は、紫であり、しかし生物活性によって低減する場合には、溶液がピンクになり、次いで透明になる。
【0391】
殺真菌アッセイ:
試験懸濁液の2つのサンプルを取り出した後、管を、3000rpmで10分間遠心分離にかけ、上澄みを廃棄した。YP、ボトリチス胞子、及び任意の発芽した菌糸を含有した沈殿物を、水400μLで洗浄した。管を再び遠心分離にかけ、ペレットを、滅菌した1/3PDB 400μlに再懸濁した。各管に、250ppmレサズリン150μLを添加した。管を混合し、室温で一晩、16〜20時間インキュベートした。目視評価を行い、試験混合物が紫のままの、YP及び胞子懸濁液の濃度を殺真菌性とみなした。
72時間後、管の目視評価を再び行い、紫のサンプルが殺真菌性であるとみなした。
【0392】
各ウェル又は管に、色のランク付けをした。色に変化がないものを4とランク付けし;透明なウェルを0とランク付けした。ランク付けが3以上のものを静的(色の変化が少ししかなく、又は全くない)とみなし、ランク付け4(全く変化しない)のみを殺性とみなした。
【0393】
各濃度での各試験材料の3つの反復試験片を、各実験毎に使用し、各実験を2回行った。
【0394】
結果:
静真菌試験−すべての試験材料は、試験がなされた少なくとも最高濃度で静真菌性であった。効力に関する基準は、コントロールに対して増殖阻害が少なくとも75%であった。効力の範囲を、15種のテルペンに関して確立し、それらを以下に示す。
グループA(<100ppm):3、7、10、16、19、及び26
グループB(>100、<250):1、2、6、11、13、17、及び22
グループC(>250、<500):4及び8
【0395】
殺真菌試験−殺真菌試験での色の変化の目視評価を、2回測定した:16〜20時間後に1回、再び72時間後に1回。20時間後、すべての試験材料は、試験がなされた少なくとも最高濃度で静真菌性であった。しかし72時間後には、わずかなサンプルだけが、依然として殺真菌性であるとみなされた。各時点での各テルペンに関する効力範囲を、以下に示す。
【0396】
16〜20時間後:
グループA(>100、<250):2、3、6、7、10、13、16、17、19、22、及び26
グループB(>250、<500):1、4、8、及び11
【0397】
72時間後:
グループA(>100、<250):7
グループB(>250、<500):1、3、10、13、16、19、22、及び26
グループC(>500):2、4、6、8、11、及び17
【0398】
複合ランク付け
効力の各範囲にランク付けを行った(グループA=1、B=2、及びC=3)。下記の表(表27から29)は、各試験毎のランク付けと、各YPテルペン毎の全体的なランク付けを示す。数が低いほど、効力はより良好になる。
【0399】
【表27】

【0400】
【表28】

【0401】
【表29】

【0402】
8種のもっとも有効な試験材料は、チモール(T)を単独で又は混合物成分として有する。
【0403】
考察:
先のin vitro研究において、L−カルボンを含有したYPテルペン試験材料は、重要な植物病原体の制御に際し、最小限の有効性をもたらした。したがって、この成分を含んだ16種の試験材料は、除外された。
レサズリンを、指示染料として含めた。ボトリチスがレサズリンを分解するにつれ、紫からピンク、ピンクから透明への色の変化が生ずる。静真菌アッセイでは、サンプルを、96ウェルマイクロタイタープレートに移し、レサズリンと16〜20時間反応させ、その後、色の変化の目視評価を行った。遠心分離及び洗浄の後、管内の残りの材料をレサズリンと反応させて、殺真菌評価を行った。
【0404】
試験材料YP−7は、各試験においてもっとも有効なサンプルであった。YP−7は、生体外でウドンコ病を制御する際にもっとも有効な材料でもある。
【0405】
結論:
すべてのYP試験材料は、少なくとも500ppmで、ボトリチスシネラに対して静真菌性であった。16〜20時間後、すべての材料は、少なくとも500ppmで殺真菌性とみなされた。しかし72時間後には、10種類の試験材料しか、依然として殺真菌性とはみなされなかった。
もっとも有効なものは、250から500ppmの間で殺真菌性であった。
【0406】
実施例26−植物細菌の制御に対する封入されたテルペンのin vitro評価
【0407】
試験がなされた3種の細菌はすべて、プロテオバクテリアであり、グラム陰性である。これらは、主にリポ多糖からなる外膜を有する。エルウィニアアミロボーラは、腸内細菌科にある。この科のその他の細菌には、サルモネラ種(Salmonella spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、及びセラチアマルセッセンス(Serratia marcescens)が含まれる。シュードモナスシリンゲは、シュードモナス科にある。この科のその他の重要なメンバーには、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(日和見病原体)が含まれる。キサントモナスカンペストリスpv.ファセオリに密接に関係しているものは、米及びニンジンに感染するものを含めたいくつかの重要な病原型である。シュードモナスとキサントモナスは、非常に密接に関係している。
【0408】
20世紀の間、侵襲された植物材料の導入は、欧州、中東、及びニュージーランドでE.アミロボーラを確立する役割を果たした。E.アミロボーラは、リンゴ及び西洋ナシに火傷病を引き起こす。1995年、火傷病は、世界で最大の西洋ナシ産地である北イタリアのポー川流域で、最初に観察された。1995年以来、イタリア政府は、E.アミロボーラを根絶しようとして500000本の西洋ナシの木を壊滅させた(http://www.apsnet.org/education/LessonsPlantPath/FireBlight/HISTORY.HTM)。
【0409】
一般的なインゲン葉焼け病及びかさ枯病は、経済的にもっとも重要で広く知られたドライビーンズ及びサヤインゲンの疾病の1つである。米国、カナダ、及びコロンビアは、これら豆類の最大の栽培者の一部である。ほとんどの経営戦略では、認定された無菌種子のみを植え、作物を輪作し、薬剤散布を毎週行う(http://www.ipgenetics.com/commonbean.asp)。
【0410】
方法:
エルウィニアアミロボーラ(株Ea273;リンゴの火傷病)、シュードモナスシリンゲpv.ファセオリコラ(株Pph MF;豆のかさ枯病)、及びキサントモナスカンペストリスpv.ファセオリ(株Xph XPW;豆の一般的な胴枯病)を、この研究で使用した。これらの株は、コーネル大学から得られた。
【0411】
培養−3種の細菌すべてを、LB(Luria−Bertani)プレート(Sambrook等、1989)上で、28℃で培養した。スタータカルチャー(LBブロス50mL)にプレートから接種し、一晩成長させた(170rpm、28℃)。スタータカルチャー1mLを、新しい50mLのLBブロスフラスコに移し、固定相に達するまで同じ条件下で成長させた。培養物を、その光学密度(OD)に関して620nmで読み取り、次いでLBブロスで希釈することにより、105〜106細胞/mLが得られた。この希釈された材料を、マイクロタイタープレートアッセイのウェルに接種するのに使用した。
【0412】
静菌アッセイ:
プレートアッセイを、成長培地としてLBブロスを使用して実施した。YP−テルペン試験材料を、7.8から1000ppmの範囲が得られるように、プレート内で希釈した(Alテルペン)。希釈された細菌を各ウェルに添加することにより、最終的なウェル体積200μLが得られた。コントロールウェルは、いかなるYP−テルペンも含有しなかった。プレートを、その初期測定値(初期OD)に関して620nmで読み取り、28℃で2日間インキュベートした。
【0413】
2日後、プレートを再び620nmで読み取った(最終OD)。最終ODから初期ODを差し引くことにより(δOD)、経時的な成長変化が示される。効力に関する基準は、コントロールに対する増殖阻害が少なくとも75%であった。したがって、試験ウェルにおけるδODは、細菌の制御に有効であるとみなすために、コントロールウェルにおける成長の25%未満でなければならなかった。
【0414】
殺菌アッセイ:
静菌アッセイが終了した後、プレートを、2000rpmで10分間遠心分離した。上澄みを除去し、新鮮なLBブロス100μLを各ウェルに添加した。プレートを620nmで読み取り(初期OD)、28℃で3〜4日間インキュベートし、再び620nmで読み取った(最終OD)。有効濃度は、コントロールに対して少なくとも75%の増殖阻害で得られた。
【0415】
2つの反復試験片を各YP−テルペン毎に使用し、両方(静的及び殺的)のアッセイを、各細菌毎に3回実施した。
【0416】
結果:
静菌アッセイ−3種の細菌すべてに関し、あらゆる試験材料は、試験がなされた少なくとも最高濃度で静菌的であった。アッセイは、48時間実施した。効力に関する基準は、コントロールに対して少なくとも75%の増殖阻害であった。効力の範囲は31種のテルペンに関して確立され、その範囲を以下に示す。
【0417】
【表30】

【0418】
殺菌アッセイ−多数のテルペン製剤は、試験がなされた最高濃度での細菌の死滅で有効ではなかった。効力の範囲が31種のテルペンに関して確立され、それらを下記の表31に示す。
【0419】
【表31】

【0420】
各試験において、エルウィニアは、YP−テルペン製剤に対してもっとも感受性のある病原体であり、その後にキサントモナスが続き、次いでシュードモナスであった。
【0421】
ランク付けを、各細菌に対する各アッセイ毎に、各YP−テルペンに行った。格付け番号が低いほど、試験材料の効力はより良好になる。静的及び殺的ランク付けを乗ずることによって、組合せのスコアが得られた。この番号は、YP−テルペンが各細菌をどのようにうまく制御したかを示している。3つの組合せスコア(各細菌毎に1つ)を加算して複合スコアを得たが、これは、3種すべての細菌全体にわたるYP−テルペンの効力を示す。表32は、各試験材料の組成物と一緒に、複合(全体)スコアに基づいた効力の順にYP−テルペンを列挙する。
【0422】
【表32】

【0423】
考察:
これらの細菌を制御するための8種の最良のYP−テルペン製剤は、それぞれチモールを含有する。L−カルボンを含有するほとんどの組合せは、これらの細菌を制御するのに非常に不充分である。
【0424】
実施例23から26の結果の概要
【0425】
封入されたテルペンの、ある組合せは、あるタイプの植物病原体に対して特定の効力を示した。これらの組合せは、下記のとおりであることが観察された。
1.すべての生物に関し、もっとも有効な組合せは7(ゲラニオール及びチモール)、10(オイゲノール及びチモール)、及び13(チモール及びシトラール)でありこれは小差で2位である。
2.7(ゲラニオール及びチモール)は、真菌/卵菌の制御に関して全体的にもっとも有効である。
3.13(チモール及びシトラール)は、細菌に関して全体的にもっとも有効である。
4.組合せ10(オイゲノール及びチモール)は、真菌と細菌の両方に対して非常に有効である。
5.次の効力のグループ分けは、3(チモール)、19(ゲラニオール、チモール、及びシトラール)、及び22(オイゲノール、チモール、&シトラール)である。
6.4番目にランク付けされたグループは、16(ゲラニオール、オイゲノール、&チモール)、及び26(ゲラニオール、オイゲノール、チモール&シトラール)からなる。
7.特にベト病に関しては、4(C)が非常に有効であるが、その他に関しては最上位ではない。
【0426】
これらの結果は、4種のテルペンであるシトラール、オイゲノール、ゲラニオール、及びチモールが、単独で又は組合せで特に酵母グルカン粒子に封入された場合、強力な抗菌及び抗真菌活性を示すことを示している。ほとんどの場合、チモールの存在は有意である。
【0427】
表33から35は、様々な製剤の性能のランク付けをまとめる。
【0428】
【表33】

【0429】
【表34】

【0430】
【表35】

【0431】
実施例27−封入された組成物のダニに対する効力
【0432】
トマトを含めた様々な植物を与えたナミハダニ。本発明の研究の目的は、プラント内の商用温室で予備的な実験を実施して、ナミハダニ(TSSM、テトラニクスウルチカエ(Tetranychus urticae))及びトマトの葉の疾病(ボトリチス)に対する2種のYP−テルペン混合物の効力を決定することであった。天然に生ずるナミハダニの個体群を使用した。
【0433】
YP−4(シトラール)及びYP−22(チモール、オイゲノール、シトラール)(16%テルペン製剤)を使用した。
【0434】
3月28日に、2列の68本のトマトの木(リコペルシコンエスクレンタムvar.トラスト(Lycopersicon esculentum var.Trust))を、6本葉期で、黒色プラスチックマルチでカバーされた自然の土壌に植え替え;この試験は、トマト種として「トラスト」を使用して実施したが、この種は、「ボア(Boa)」などのその他の種類よりもTSSMの影響を受けやすい。植物同士のスペースは、列毎に12インチであり、交互にずらした。生長するにつれて、単一の生長点に対して垂直に、この植物を剪定し格子に這わせた。処置当たり2本の木のブロックがしおれ、4つの反復試験片と2列の中でランダム化した。2本の未処置の木を、すべてのブロックから離した。テルペン製剤YP−4及びYP−22を、下記の日付:5月11日(注記:この実施例のすべての日付は2005年のものである)、6月2日及び15日、7月1日及び18日に、4ml/Lの速度で付着させて、葉濡れ状態にした。コントロールの処置は、同じ日に葉濡れ状態になるまで水で処置した。
【0435】
収量データ(果実の数及び重量)、疾病の発生、及びTSSMによる葉の損傷%を、5月27日に開始して7月29日の試験終了まで、1〜2週毎に記録した。
【0436】
平方cm当たりのダニの数も、7月25日に測定した。葉のサンプルを、地面から約1.5m(低)及び地面から約2.5m(高)の木から採取した。葉を、湿らせた紙のバッグに入れて、乾燥しないようにした。各葉の裏側を顕微鏡で検査し、カウントを行った。生きているダニ(活発に動いており、また静止しているもの)の総数を決定した。静止期にあるダニは、死んだダニと容易に区別可能な特徴的なポーズをとる。メスとオスとの間、又は成虫と幼虫との間では、区別がなされなかった。
【0437】
この試験は、いくつかの点で、2つの要因により複雑であった。第1に、ほとんどのトマトの温室栽培では、より古い老化した葉を、木が生長すると共に除去する。このようにすると、これらのより古い葉と共にかなりの量のダニが除去されるので、ダニの個体群が減少する。これらのより古い葉は、試験の厳格さを増すための尺度として、意図的に木に残した。
【0438】
第2に、第4の反復試験において、YP−22で処置した木の1本である試験中の1本の木は、木の重篤な形成異常を引き起こすウイルスに感染するようになった。これは、ダニに極めて魅力的でありダニの複製を引き起こすという、驚くべき結果ももたらす。この結果、この木を取り囲んでダニの個体群が爆発的に増加した。この木を、7月25日あたりに試験から除いたが、このウイルスに感染した木から得られた非常に高いレベルのダニは、時間と共に隣接したプロットにまで広がり、結果を歪めた。
【0439】
これの非常に高いダニ個体群は、いかなる生成物によっても制御できなかった。ダニの個体群は、たとえ引き落とされたとしても、非常に素早く元に戻る。このような理由で、本明細書に報告されたデータは、rep−by−repベースで経時的な結果を示す。
【0440】
早期真菌疾病
この試験の初期に、おそらくはボトリチスシネラによる、低レベルの真菌疾病が生ずるようである。この疾病は、ダニによる損傷が酷くなりすぎてこれ以上ランク付けができなくなるまで、評価が行われた。結果を、下記の表25に示す。
【0441】
ダニ損傷の格付け
ウイルスの木という観点から、この考察は、個々の反復試験による結果に焦点を当てることになり、その後に要約が続く。ダニ損傷評価の結果を、図26a〜dに示す。反復試験1(図26a)は、本発明者等が非常に望んでいたような結果をもたらし、YP−22は、実験の過程全体を通してナミハダニ(TSSM)損傷の格付けを大幅に低下させた。処置は5月11日に開始し、したがって、6月15日の最初のTSSM格付けでの差は妥当であった。反復試験2(図26b)は、実験の始めのTSSM損傷が非常に低いことを除き、同様の時間的経過に従った。反復試験4(図26d)について、次に論ずる;その結果は反復試験3(図26c)に影響を及ぼす。6月23日まで、TSSM格付けはその他の反復試験と一致していたが、7月1日まで著しく増加し、YP−22で最大であった。これは疑いなく、ウイルス感染した木がYP−22で処置したものであることにより生じた。このウイルス感染は、非常に魅力的であるために又は爆発的なダニ増殖が可能になったために、或いはこの両方によって、劇的にダニの個体群を増加させた。いずれにせよ、ダニの個体群は非常に多くなった。ダニの個体群は、TP−22で処理したウイルス感染の木から、この複製であるその他の木に急速に広がり、したがって7月11日までは、すべてのTSSM格付けが反復試験片で非常に高かった。ハウス及び実験の残りの部分に蔓延しないように、反復試験4の木を、この時間の後に廃棄した。反復試験3において、7月1日まではTSSM格付けが上昇し始め、この後に、急速に低下し始めた。このように、疑いなく反復試験3は、反復試験4の1本の木で開始されたダニから、ますます高くなる圧力を受けた。任意の処置が、ウイルス感染した木から生ずる爆発的な個体群増殖を包含するということは、ないであろう。
【0442】
図27は、YP−4で処置された植物とコントロールとの比較を示す写真である。封入されたテルペン組成物YP−4による処置は、より健康でより生産的な植物をもたらすことが、明らかにわかる。
【0443】
ダニの数
ダニは、地面から約1.5m(低)及び地面から約2.5m(高)の各植物から採取した葉の下側から、顕微鏡で数え上げた。その結果を表26に示す。
【0444】
【表36】

【0445】
これらのデータは、良好なダニの制御を示す。この害虫に関して予測されるように、コントロール植物におけるダニ数/葉には大きなばらつきがある。しかし、両方の処置、特にYP−22による処置での最大数は、コントロールより著しく少ない。
【0446】
ダニは、この研究において、特にY−22によって制御された。しかし、非常に高いダニの圧力が生じた場合、YP−22は、適正な制御をもたらすのに不充分であった。この研究の一部における非常に高いダニ個体群により、どのダニ駆除剤も、良好な制御を行うことはできないようである。本発明者等が2週間毎に材料を付着させたこと、及びダニが良好な回復能力を有するので、YP試験材料が残留活性を有していたことも注目に値し;これはほぼ確実に、封入の結果としてもたらされた。
【0447】
結果は、使用される製剤、付着速度、及び付着頻度が最適化されていなかったので、極めて励みになるものであった。疑いなく、テルペン混合物、付着速度、付着頻度を最適化することによって、効力を改善することが可能と考えられる。そのような最適化は、実現するための試行錯誤の課題と考えられる。
【0448】
さらに、効力を増大させるのに使用することができる、少なくとも2つのタイプの補助薬がある。Silwetは、タンクミックスとして殺虫剤に添加された、有機シリコーン界面活性剤である。良好なデータは、この材料がダニ駆除剤の活性を増大させることを示す(要求に応じて参照可能)。これは、すべての植物に使用することができ、容易に入手可能である。本発明者等は、生物制御剤に類似した材料が、真菌疾病制御の効力を増強することも示すデータを有する。或いはStirrupは、殺虫剤の堆積物にダニを引き付け、材料の吸収を高めるフェロモン製品である。
【図面の簡単な説明】
【0449】
【図1】空の酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図2】L−カルボン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図3】シトラール封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】テルペンエマルションの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図5】流体力学的体積(HV)の水における酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図6】流体力学的体積(HV)の5倍の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図7】HVの水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図8】HV+5%の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図9】HV+10%の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図10】HV+20%の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図11】HV+30%の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図12】HV+40%の水におけるテルペン封入酵母細胞壁の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図13】キサンタンガムを含まない、テルペン成分封入乾燥中空グルカン粒子の分散を示す光学顕微鏡写真を示す図である。
【図14】0.07gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図15】0.14gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図16】0.28gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図17】0.55gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図18】1.1gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図19】2.2gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図20】4.4gの1%キサンタンガムを含む、図13と同様の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図21】サイト18及び20の処置区域の概略を示す図である。
【図22】サイト18及び20の処置区域の概略を示す図である。
【図23】サイト7の処置区域の概略を示す図である。
【図24】封入テルペン製剤と非封入テルペン製剤の比較を示すグラフである。
【図25】真菌疾病のランク付けを示す図である。
【図26a】トマトの木の4種の反復試験片における、ダニ病評価を表すグラフを示す。
【図26b】トマトの木の4種の反復試験片における、ダニ病評価を表すグラフを示す。
【図26c】トマトの木の4種の反復試験片における、ダニ病評価を表すグラフを示す。
【図26d】トマトの木の4種の反復試験片における、ダニ病評価を表すグラフを示す。
【図27】YP−4で処置した植物とコントロールとの比較を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された、複数のテルペンの混合物を含んだテルペン成分を含む組成物。
【請求項2】
テルペン成分が、チモールと、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールの1種又は複数との組合せを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
4種以下のテルペンを含んだテルペン成分を含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
−チモール及びゲラニオール;
−チモール及びシトラール;
−チモール及びオイゲノール;
−チモール、ゲラニオール、及びシトラール;
−チモール、オイゲノール、及びシトラール;
−チモール、ゲラニオール、及びオイゲノール;
−チモール、ゲラニオール、オイゲノール、及びシトラール
からなるテルペンの組合せの群の1種を含んだテルペン成分を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
テルペン成分が、指定されたテルペンのみからなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
L−カルボンを含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
テルペン成分が、溶媒中に懸濁液又は溶液として存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
溶媒が水である請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
テルペン成分が、界面活性剤を含まない水溶液中に存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
テルペン成分が界面活性剤と結合している請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
テルペン成分を封入する中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
中空グルカン粒子又は細胞壁粒子が、真菌細胞壁である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
中空グルカン粒子又は細胞壁粒子が、酵母細胞壁である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
酵母細胞壁がS.セレビシエ(S.cerevisiae)の噴霧乾燥抽出物である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
中空グルカン粒子又は細胞壁粒子がわずかな量の脂質を有する請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
封入されたテルペン成分が界面活性剤に結合している請求項11〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
1〜99体積%のテルペン、0〜99体積%の界面活性剤、及び1〜99%の中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む請求項11〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
約10〜約67体積%のテルペン、約0.1〜約10体積%の界面活性剤、及び約10〜約90%の中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
約1〜約67%のテルペン成分を含有する、約500〜約10000ppmの中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を含む請求項11〜18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
約1ppmから約350ppt(350000ppm)の間のテルペン成分を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
テルペン成分を100〜2000ppm含む請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
テルペンが少なくとも食品級のテルペンである、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
追加の活性化合物を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
追加の活性化合物が、抗菌剤、酵素、抗真菌剤、抗細菌剤、殺虫剤、抗菌剤、又は麻酔剤である請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
酸化防止剤を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
乾燥粉末の形をとる請求項11〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
液体の形をとる請求項11〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
ペレット又は錠剤の形をとる請求項11〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
ペレット又は錠剤が分散剤を含有する請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
農業的に、食品として又は医薬品として許容される担体又は賦形剤と組み合わされた、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
キレート剤又は不活性ガスと組み合わされた、前記請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項32】
a)チモール、オイゲノール、ゲラニオール、及びシトラールからなる群から選択された複数のテルペンの混合物を含む、テルペン成分を提供するステップと、
b)中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を提供するステップと、
c)テルペン封入に適した条件下で、グルカン粒子又は細胞壁粒子と共にテルペン成分をインキュベートするステップと、
d)テルペン成分を封入する中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を回収するステップと
を含む、テルペン成分を封入する中空グルカン粒子又は細胞壁粒子を調製する方法。
【請求項33】
テルペン成分を封入する粒子を乾燥するステップを含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ステップa)において、テルペン成分が水性溶媒中の懸濁液として提供される請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
テルペン成分が界面活性剤の存在下にある請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ステップb)において、中空グルカン粒子又は細胞壁粒子が水又はその他の適切な液体中の懸濁液として提供される請求項32〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
a)微生物と請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物とを接触させるステップ
を含む、微生物を死滅させる方法。
【請求項38】
a)植物又は植物付近の土壌に請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を治療上有効な用量で投与するステップ
を含む、植物の感染を処置又は予防する方法。
【請求項39】
細菌植物感染を処置又は予防する請求項38に記載の方法。
【請求項40】
感染が、エルウィニアアミロボーラ(リンゴの火傷病)、シュードモナスシリンゲpv.ファセオリコラ(豆のかさ枯病)、及びキサントモナスカンペストリスpv.ファセオリ(豆の一般的な胴枯病)の1種又は複数によって引き起こされる請求項39に記載の方法。
【請求項41】
テルペン成分が、下記のテルペンの組合せ:
−チモール及びシトラール;
−チモール及びゲラニオール;
−チモール及びオイゲノール
の1つを含有する請求項40又は41に記載の方法。
【請求項42】
真菌/卵菌の植物感染を処置又は予防する請求項38に記載の方法。
【請求項43】
感染が、ベト病(プラスモパラビチコラ)、ウドンコ病(ウニシヌラネカター)、及びボトリチスかび病(ボトリチスシネラ)の1つ又は複数によって引き起こされる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
テルペン成分が、下記のテルペンの組合せ:
−チモール及びゲラニオール;
−チモール及びシトラール;
−チモール及びオイゲノール;又は
−チモール、オイゲノール、及びシトラール;
−チモール、オイゲノール、及びゲラニオール;
−チモール、ゲラニオール、及びシトラール
の1つを含有する請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
組成物を、収穫の21日前又はそれより短い期間で付着させる請求項38〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
植物感染の予防が、植物を、予防対策として定期的に本発明の組成物で処置することによって実現される請求項38〜45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
組成物を噴霧によって付着させる請求項38〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
組成物を、灌漑又は土壌ドレンチを介して付着させる請求項38〜46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
a)請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を、治療上有効な用量で患者に投与するステップ
を含む、患者の感染を予防又は治療する方法。
【請求項50】
感染が、スタフィロコッカスアウレウス、アスペルギルスフミガーツス、マイコプラズマアイコワエ、ペニシリウム種、及びマイコプラズマニューモニエの1種によって引き起こされる請求項49に記載の方法。
【請求項51】
組成物が、経口、経膣、経直腸的に、吸入によって、又は非経口経路によって投与される請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
組成物が局所的に付着される請求項49〜51のいずれか一項に記載の方法、
【請求項53】
対象が哺乳類である請求項49〜51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
対象が霊長類である請求項52に記載の方法。
【請求項55】
対象がヒトである請求項53に記載の方法。
【請求項56】
a)請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物組成物を、有効用量で昆虫又はクモ類に投与するステップ
を含む、昆虫又はクモ類を死滅させる方法。
【請求項57】
昆虫が、アリ、シロアリ、シラミ、アブラムシ、ノミ、バッタ、キリギリス、及びアザミウマからなる群から選択される請求項55に記載の方法。
【請求項58】
クモ類が、ダニ、クモ、及びマダニからなる群から選択される請求項55に記載の方法。
【請求項59】
患者又は植物における感染の予防又は治療で使用される請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
微生物によって引き起こされた感染を治療するための薬剤の製造における請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26a】
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【図26b】
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【図26c】
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【図26d】
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【図27】
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【公表番号】特表2009−517447(P2009−517447A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542817(P2008−542817)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002881
【国際公開番号】WO2007/063268
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(506387351)エーデン リサーチ ピーエルシー (3)
【Fターム(参考)】