説明

チューブポンプ

【課題】吐出量を一定に維持可能なチューブポンプを提供する。
【解決手段】筒体内に同軸的に可撓性チューブ12を配置して、この可撓性チューブ12内側をポンプ室、外側を作動流体が充填される作動流体スペース13として構成されるチューブポンプであって、前記作動流体スペースに配置されて前記作動流体の圧力を測定する圧力センサ17と、該圧力センサ17によって計測された前記作動流体スペースの圧力に基づき前記移送流体の圧力を制御する圧力制御部2とを備え、前記可撓性チューブ12は、径方向の変形応力に対して相対的に変形しやすい部分12aと変形しにくい部分が周方向に複数箇所ずつ交互に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性チューブの伸縮によって移送流体を移送するチューブポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
チューブポンプは、筒体内に同軸的に可撓性チューブを配置して、可撓性チューブの内側をポンプ室、外側を作動流体が供給される作動流体スペースとして構成される。このようなチューブポンプは、一般に半導体デバイス、液晶基板等の製造工程において、基材にレジストを塗布する用途に使用されている。この種の用途では、レジストの吐出量が均一であることが要求される。レジストの吐出量が不規則であると、基材に塗布されたレジストにはムラが生じる。このようなレジストのムラは、形成されるマスクの欠陥、さらには完成される半導体デバイス、液晶基板等の欠陥を招く。特に、近年の微細化、省レジスト化の進展に伴い、膜厚精度及び膜厚の均一性をより厳しく管理する必要性が生じている。
【0003】
そこで、特許文献1に開示された発明では、上記のような欠陥を招くことのないように、ポンプから液吐出ノズルへ至るまでの間に圧力センサを設けて、ポンプ内圧を抑制することにより、液吐出流量の均一化を図っている。
【特許文献1】特開2003−347205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、圧力センサをポンプから液吐出ノズルまでの配管中に配置しているため、圧力センサが移送流体と接触し、移送流体の流れを阻害したり、メンテナンスのコストが上昇するという問題がある。そこで、本発明は、吐出量を一定に制御可能なチューブポンプにおいて、流体移送がスムーズでメンテナンスが容易なチューブポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るチューブポンプは、筒体内に同軸的に可撓性チューブを配置して、この可撓性チューブ内側を移送流体が移送されるポンプ室、外側を作動流体が充填される作動流体スペースとして構成されるチューブポンプであって、前記作動流体スペースに配置されて前記作動流体の圧力を測定する圧力センサと、該圧力センサによって計測された前記作動流体の圧力に基づき前記移送流体の圧力を制御する圧力制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作動流体スペースに充填された作動流体の圧力を一定に制御することにより、移送流体の吐出量を制御するようにしているので、移送流体と圧力センサとが接触することがなく、これにより流体の移送がスムーズでメンテナンスが容易なチューブポンプを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るチューブポンプついて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るチューブポンプの断面図である。ポンプ本体1は、筒体11内の円柱状空間に可撓性チューブとしてフッ素樹脂チューブ12を同軸的に配置して、このフッ素樹脂チューブ12の内側を移送されるべきレジスト液の通路(即ちポンプ室)13とし、外側を作動流体が封入される作動流体スペース14として構成されている。
【0008】
筒体11の側面に開けられて作動流体スペース14に通じる連結口には、シリンダー15が連結され、その内部にピストン16が配置されている。シリンダー15から作動流体スペース14に封入された作動流体を、ピストン16により駆動することにより、流体圧力でフッ素樹脂チューブ12が径方向に変形し、レジスト液は移送されることになる。ピストン16の駆動を制御するのが、駆動制御部2である。また、シリンダー15の上部には、作動流体スペース14内の圧力を計測する圧力センサ17が備えられている。仮に圧力センサ17をポンプ室13に設けた場合、ポンプ室13の移送流体の流れを阻害することとなる、又は移送流体が圧力センサ17に適さないことがある。したがって、圧力センサ17は、作動流体スペース14に設けられている。ピストン16の種類は、ピストン(プランジャ)、ベローズ、ダイヤフラム等容積を変更できるものであれば良い。
【0009】
さらに、筐体11は、その下方に筒体11に流体を供給する供給側流路18と、その上方に筒体11から流体を排出する排出側流路19とを有している。この供給側流路18及び排出側流路19のそれぞれには、流体を一定方向に流し、逆流を防ぐ逆止弁として用いられるエアオペレートバルブ18a及び19aが設けられている。なお、このような逆止弁の種類としては、エアオペレートバルブの他、電磁切替弁や、ボールバルブ等の流路を開閉できるであれば良い。
【0010】
図2(a),(b)は、フッ素樹脂チューブ12の具体的な構造を示す斜視図と断面図である。フッ素樹脂チューブ12には、チューブ外面で凹、内面で凸となる、長手方向に延びる溝12aが周方向に90°間隔で4箇所に形成されている。チューブ厚は略一定であるとする。
【0011】
一実施形態に係るフッ素樹脂チューブ12は、4つの溝12aの部分が径方向に内側に変形し易い状態になっている。従って、フッ素樹脂チューブ12の外面に作動流体圧力が作用すると、図3(a),(b)に変形前後のチューブ断面に示したように、4つの溝12aの部分が変形を誘導することになる。言い換えれば、フッ素樹脂チューブ12に外面から作用する径方向への変形は、4つの溝12aによって、周方向に平均的に分散される結果となる。これにより、フッ素樹脂チューブ12の局部的な大きな変形が抑えられるため、チューブポンプの小型化が可能であり、更にストレートのチューブの場合に比べて径方向の変形量が大きくなるため、作動流体圧力も低圧化され、ポンプ室13の圧力と作動流体スペース14の圧力が略同一となる。言い換えれば、作動流体スペース14の圧力とポンプ室13の体積変化量(吐出量)とは、略線形相関となる。したがって、作動流体圧で移送流体圧を推定可能になる。
【0012】
なお、上記実施形態において、フッ素樹脂チューブ12に形成される4つの溝の形状は、具体的には、図4(a)に示すようなV字状の溝12bでもよいし、或いは図4(b)に示すような所定曲率を持つ半円形状の溝12cでもよい。
【0013】
次に、図5を参照して、本発明の一実施形態に係るチューブポンプの吐出量の制御を説明する。図5は、チューブポンプの吐出量の制御の機能ブロック図である。上記のようにチューブポンプの吐出量の制御は、ポンプ本体1の作動流体スペース14に設けられた圧力センサ17、及び駆動制御部2によりなされる。
【0014】
駆動制御部2は、主として、入力電圧に基づきピストン16を駆動させるモータ21と、圧力センサ17から出力される圧力データから流量データを算出してチューブポンプを制御するパルス制御信号を出力するコントローラ22と、コントローラ22から入力されたパルス制御信号を増幅してモータ21に出力するモータ駆動機器23と、コントローラ22に制御情報を入力可能な入力部24と、コントローラ22から出力される圧力データに基づき算出された流量データ等を表示する表示部25とから構成されている。なお、上記のように成形された可撓性を有するフッ素樹脂チューブ12の形状により作動流体スペース14内の圧力と吐出量とが線形相関を有しているので、コントローラ22は、広い圧力範囲において圧力データから流量データを正確に算出することが可能である。ポンプ本体1は、タンク3からレジスト液を吸入しノズル4から吐出する。ノズル4から吐出されたレジスト液は、レジスト塗布装置5にセットされた基板6上に滴下される。なお、レジスト液の吐出量、その他、吐出時間、吸込み量、吸込み時間等は入力部24から入力された設定値により、任意に設定可能とされている。
【0015】
上記のように構成された駆動制御部2により、圧力センサ17で計測された作動流体スペース14の圧力に基づき、コントローラ22はパルス制御信号をモータ駆動機器23に出力する。モータ駆動機器23は、パルス制御信号を増倍させる共にその信号に基づきモータ21を駆動させてピストン16を移動させ、作動流体スペース14の圧力を一定に制御する。そして、作動流体スペース14内の圧力制御に加え、可撓性を有するように成形されたフッ素樹脂チューブ12を有していることから、移送流体であるレジスト液の吐出量も一定に制御されることとなる。
【0016】
また、ポンプ室13において液と接する部分がチューブ形状であるため洗浄性に優れ、液に摺動する箇所が無いので、コンタミネーションが発生することはない。
【0017】
また、製作するレジスト塗布装置によりレジストの吐出条件を変更したい場合であっても、入力部24からコントローラ22に所望の吐出量等を入力し、容易に吐出条件を変更すると共にその流量を一定に維持することができる。
【0018】
以上、発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、本実施形態に示したように作動流体スペース14に減圧及び加圧を行うポンプは、容積式往復ポンプに限られることはなく、容積式回転ポンプ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るチューブポンプの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチューブポンプに用いられるフッ素樹脂チューブの形状を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るチューブポンプに用いられるフッ素樹脂チューブの変形の様子を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るチューブポンプに用いられるフッ素樹脂チューブの他の形状を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るチューブポンプの吐出量の制御を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0020】
1…ポンプ本体、11…筒体、12…フッ素樹脂チューブ、12a,12b,12c…溝、13…ポンプ室、14…作動流体スペース、15…シリンダー、16…ピストン、17…圧力センサ、18…供給側流路、18a…逆止弁、19…排出側流路、19a…逆止弁、2…駆動制御部、21…モータ、22…コントローラ、23…モータ駆動機器、24…入力部、25…表示部、3…タンク、4…ノズル、5…レジスト塗布装置、6…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体内に同軸的に可撓性チューブを配置して、この可撓性チューブ内側を移送流体が移送されるポンプ室、外側を作動流体が充填される作動流体スペースとして構成されるチューブポンプであって、
前記作動流体スペースに配置されて前記作動流体の圧力を測定する圧力センサと、
該圧力センサによって計測された前記作動流体の圧力に基づき前記移送流体の圧力を制御する圧力制御部と
を備えたことを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記可撓性チューブは、径方向の変形応力に対して相対的に変形しやすい部分と変形しにくい部分が周方向に複数箇所交互に形成されていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項3】
前記変形しやすい部分として、チューブ外面で凹、チューブ内面で凸となる複数の溝が周方向に均一分布をもって形成されていることを特徴とする請求項2記載のチューブポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−154767(P2007−154767A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351451(P2005−351451)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000127352)株式会社イワキ (23)
【Fターム(参考)】