説明

チューブ用積層体およびラミネートチューブ

【課題】ガスバリア性、透明性に優れるチューブ用積層体を提供する。
【解決手段】表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であって、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムに化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)、ガスバリア性塗布膜(I)、前記蒸着膜(II)、および前記ガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムである。筒状成形に適し、手揉みによる劣化が少ないためガスバリア性を高く維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ用積層体に関し、より詳細には表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であって、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムに、有機珪素化合物の蒸着層、ガスバリア性塗布膜、有機珪素化合物の蒸着層、およびガスバリア性塗布膜とをこの順に積層してなり、ガスバリア性、柔軟性、可撓性に優れるチューブ用積層体および該積層体からなるラミネートチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からラミネートチューブは種々の方法で製造されており、その一つに、少なくとも、表面樹脂層、中間層、および、内面樹脂層を順次積層して積層材を製造し、その両端部の表面樹脂層と内面樹脂層とをヒートシールして筒状胴部を製造し、その後に、該筒状胴部の一方の開口部に口部、肩部等からなる頭部を形成し、その口部にキャップを螺合させてなるラミネートチューブがある。上記で製造されたラミネートチューブは、その筒状胴部の開放端部から、例えば、練り歯磨き、マヨネーズ、練りワサビ、練りからし、ケチャップ、その他の調味料、あるいは、ホイップクリーム、その他等のクリーム類等の飲食品、化粧品、医薬品、その他等の内容物を充填し、その開放端部を密閉シールして底部シール部としてチューブ状の包装製品とすることができる。
【0003】
このようなラミネートチューブを製造する積層材は、内容物を保護するために内容物に応じた機能を確保すべく、種々のプラスチックフィルム等を積層した層構成が提案され、それらの中でも、特に、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性に優れる積層材は、品質保持能を高く確保しうる点で多用されている。
【0004】
このようなガスバリア性素材としては、通常、アルミニウム箔ないしアルミニウム蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の単層フィルム、ポリ塩化ビニリデン系樹脂を使用した共押出フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデン系樹脂組成物によるコートフィルム等が使用されている。その他、バリア性素材として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材層の内面に、延伸プラスチックフィルムおよびアンカーコート層を介して熱接着性樹脂層を押出し塗布形成した材料において、アンカーコート層が2液硬化型ウレタン系接着剤を0.1〜0.5g/m2 の範囲の塗布量としたことを特徴とする、包装材料もある(特許文献2)。2液硬化型ウレタン系接着剤で積層すると、香料成分を多量含む内容物を保存した場合に、接着剤の接着強度が経時的に低下し、最終的に層間の接着強度が低下する点に鑑みてなされたものであり、上記構成によれば、香料成分の多い内容物を充填しても、延伸プラスチックフィルムとシーラント層間の接着強度の低下がなく安定して保存することができ、また、ポリエチレン系樹脂からなるシーラント層を溶融塗布することで形成することができるため、安価で安定した包装材料を製造しうる、という。特許文献2の図3には、上記包装材料からなる包装容器の実施例としてチューブ状容器が記載されている。
【0006】
また、表面ポリオレフィン系樹脂層と、基材フィルムの一方の面に、無機酸化物の蒸着膜を設け、更に、該無機酸化物の蒸着膜の面上に、ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたバリア性フィルムからなる中間層と、裏面ポリオレフィン系樹脂層とを順次に積層したチュ−ブ容器用包材も開示されている(特許文献3)。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等をバリア性素材として使用したチューブ容器は、絶乾状態ではガスバリア性に優れるが、湿潤状態では、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性が著しく低下する場合があることに鑑みてなされたものであり、上記構成によって強度を有し、ガスバリア性に優れると共に、耐熱性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、透明性等に優れ、その内容物の充填包装適性、保存適性等を有する、という。
【特許文献1】特開平5−8352号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平11−254595号公報
【特許文献3】特開2005−144812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載などに記載するように、バリア性素材としてアルミニウム箔を使用するとガスバリア性に優れるが、使用後、廃棄ゴミとして焼却処理する場合、その焼却適性に欠ける場合があり、また、透明性にも欠ける。
【0008】
また、特許文献2に記載する積層材は、層間剥離の防止を目的とするものであり、記載の積層材ではガスバリア性が十分でない場合がある。
更に、特許文献3に記載するチュ−ブ容器用包材は、ガスバリア性、透明性に優れるが、より高いガスバリア性を有するものであればより好ましい。
【0009】
また、チューブ用積層体は、練からしや練り歯磨きなどを収納するために直径2〜4cm程度に成形され、湾曲した状態を維持する必要があるが、このような湾曲形状は積層体にとって大きな負荷である。また、ラミネートチューブは、使用の際に揉みだされるなど他の容器と比較して物理的な取り扱い負荷が多く、これにより積層体を構成するフィルムが劣化されやすく、フィルム劣化によりガスバリア性が低下する場合がある。
【0010】
そこで本発明は、湾曲などの機械的強度や透明性に優れ、実際の使用においてガスバリア性に優れるチューブ用積層体およびそれを使用したラミネートチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明等は、チューブ用積層体について詳細に検討した結果、ガスバリア性積層体として基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給および蒸着してなる蒸着膜は耐衝撃性、延展性、柔軟性等に優れるため擦り傷やクラック等の発生を回避することができ、高いバリア性を安定して維持しうること、この蒸着膜にガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設け、さらにこのガスバリア性塗布膜上に前記蒸着膜およびガスバリア性塗布膜を順次積層すると、より高いガスバリア性が確保できること、このガスバリア性積層体にヒートシール層と表面オレフィン系樹脂層とを積層するという簡単な層構成であれば、層間剥離などを回避してガスバリア性を高く維持しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は、表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であって、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(I)を設け、前記ガスバリア性塗布膜(I)に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(II)を設け、該蒸着膜(II)上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムであることを特徴とする、チューブ用積層体を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記チューブ用積層体からなるラミネートチューブを提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチューブ用積層体は、耐衝撃性、延展性、柔軟性等に優れるため、当該チューブ用積層体を湾曲してラミネートチューブを調製する際の成形加工性に優れる。
また、本発明のチューブ用積層体は、湾曲加工や手揉みによってもガスバリア性が低下せず、品質保持能が高い。
【0015】
本発明のチューブ用積層体は、透明であるため、内容物の視認性が要求される分野に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第一は、表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であって、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(I)を設け、前記ガスバリア性塗布膜(I)に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(II)を設け、該蒸着膜(II)上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムであることを特徴とする、チューブ用積層体である。また、本発明の第二は、上記チューブ用積層体からなるラミネートチューブである。以下、本発明のチューブ用積層体およびラミネートチューブを詳細に説明する。
【0017】
(1) チューブ用積層体の構成
本発明のチューブ用積層体は、表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であり、前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(I)を設け、前記ガスバリア性塗布膜(I)に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(II)を設け、該蒸着膜(II)上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(II)を設けた積層体である。図1に本発明で使用するガスバリア性積層フィルムの層構成の好適な態様の一例を示す。
【0018】
図1では、ヒートシール層(10)は、ラミネート用接着剤(20)によってガスバリア性積層フィルム(30)に接着され、ガスバリア性積層フィルム(30)はラミネート用接着剤(20)によって表面オレフィン系樹脂層(40)に接着されている。ガスバリア性積層フィルム(30)は、基材フィルム(31)と有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(33)、ガスバリア性塗布膜(35)、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(37)、およびガスバリア性塗布膜(39)とがこの順に積層して構成される。なお、ガスバリア性積層フィルム(30)は、いずれを最内層側に向けるものであってもよい。したがって、図1では、前記ガスバリア性積層フィルム(30)を構成するガスバリア性塗布膜(39)が、ラミネート用接着剤層(20)を介してヒートシール層(10)と対抗して積層されているが、基材フィルム(31)がヒートシール層(10)と対向するものであってもよい。更に、図1では、表面オレフィン系樹脂層(40)にUV硬化性樹脂からなる印刷層(50)が形成される態様を示す。印刷層(50)は、チューブ用積層体の両端部に形成されておらず、このため前記表面オレフィン系樹脂層(40)が熱融着性を有する場合には、チューブ用積層材の両端部の表面オレフィン系樹脂層(40)とヒートシール層(10)とを重ね合わせた後に熱融着することで、筒状に成形することができる。
【0019】
本発明のチューブ用積層体は、ヒートシール層や表面オレフィン系樹脂層がラミネート用接着剤によってガスバリア性積層体と接着される態様に限定されず、押出し溶融樹脂を介して接着されるものであってもよい。図2に、ガスバリア性積層フィルム(30)の前記基材フィルム(31)側および前記ガスバリア性塗布膜(39)にそれぞれアンカーコート層(60)が形成され、このアンカーコート層(60)が押出し溶融樹層(25)を介してそれぞれヒートシール層(10)および表面オレフィン系樹脂層(40)と積層される態様を示す。なお上記したように、本発明のチューブ用積層体は、ガスバリア性積層フィルム(30)の基材フィルム(10)と前記ガスバリア性塗布膜(39)のいずれの面を最内層側に配向するものであってもよい。
【0020】
(2) ガスバリア性積層フィルム
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(I)を設け、前記ガスバリア性塗布膜(I)に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(II)を設け、該蒸着膜(II)上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムである。ガスバリア性塗布膜が、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが相互に化学的に反応して強固な三次元網目状複合ポリマー層を形成されるため、前記蒸着膜と相乗的に作用し、酸素、水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性に優れ、耐熱水性にも優れる。本発明のガスバリア性積層フィルムは、前記蒸着膜とガスバリア性塗布膜とをそれぞれ2層ずつ積層することでより高いガスバリア性を確保することができる。
【0021】
(i) 基材フィルム
本発明で使用しうる基材フィルムとしては、化学的ないし物理的強度に優れ、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を製膜化する条件等に耐え、また、その蒸着膜等の膜特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる樹脂のフィルムを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂のフィルムを使用することができる。本発明においては、上記の樹脂のフィルムの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムを使用することが好ましいものである。なお、基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。
【0022】
本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、更には、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種の樹脂のフィルムを製造し、更に、要すれば、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂のフィルムを使用することができる。
【0023】
本発明において、樹脂のフィルムの膜厚としては、6〜2000μm位、より好ましくは、9〜100μm位が望ましい。
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0024】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0025】
(ii)表面処理
本発明では、上記の基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成するが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって得られる蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。
【0026】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0027】
また、本発明で使用する各種フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0028】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、後記する化学気相成長法による有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後にプラズマ処理を行い、密着性を向上させることもできる。本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0029】
(iii)有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜
有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜は、化学気相成長法により有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして使用して行う。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等を用いることができる。それらの中でも、特に、低温プラズマ化学気相成長法を用いて製膜化して製造することが望ましい。
【0030】
本発明においては、具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、かつ、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて珪素酸化物等からなる有機珪素化合物の1層からなる単層蒸着膜あるいは2層以上からなる多層蒸着膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0031】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0032】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図3を用いて説明する。
図3のプラズマ化学気相成長装置(100)は、基材フィルム供給室(110)、真空チャンバーからなる第一製膜室(120)および基材フィルムの上に有機珪素化合物の蒸着層を製膜化したフィルムを巻き取る巻取り室(150)から構成される。前記基材フィルム供給室(110)内に配置された巻き出しロール(111)から基材フィルム(101)を繰り出し、該基材フィルム(101)を、第一製膜室(120)内の補助ロール(121)を介して所定の速度で冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送する。一方、ガス供給装置(125)および、原料揮発供給装置(124)等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル(127)を通して第一製膜室(120)内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送された基材フィルム(101)の上に供給し、グロー放電プラズマ(128)によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成した基材フィルム(101)を補助ロール(123)を介して巻取り室(150)に移送し、ここで巻き取りロール(151)に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による蒸着膜を有するフィルムを製造することができる。なお、冷却・電極ドラム(122)は、第一製膜室(120)の外に配置されている電源(160)から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム(122)の近傍には、マグネット(129)を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図3中、符号(153)は真空ポンプを表す。
【0033】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなり、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0034】
本発明において、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とする。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させてもよい。この際、上記の化合物が有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。含有率が0.1質量%未満であると、蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50質量%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0035】
本発明においては、SiOxプラズマにより、基材フィルムの表面が清浄化され、その表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、製膜化される有機珪素化合物等からなる蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。
【0036】
更に、本発明では、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜において、上記の化合物の含有量が蒸着膜の表面から深さ方向に向かって増減していてもよい。例えば、表面から深さ方向に減少している場合には、これにより、蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。このような有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜は、1層で構成される場合に限定されず、例えば2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよい。
【0037】
上記多層からなる蒸着層を製膜するには、複数の真空チャンバーを製膜室として有する化学気相成長装置(100)を使用することで、異なる組成の有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成することができる。図4を使用して、3層の蒸着膜を有する場合を例示する。図4のプラズマ化学気相成長装置(100)は、基材フィルム供給室(110)、第1製膜室(120)、第二製膜室(130)、第三製膜室(140)、および、基材フィルムの上に有機珪素化合物を供給してなる蒸着層を製膜化し重層したフィルムを巻き取る巻取り室(150)から構成される。基材フィルム供給室(110)において、巻き出しロール(111)から基材フィルム(101)を第一製膜室(120)に繰り出し、更に、該基材フィルム(101)を、補助ロール(121)を介して所定の速度で冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送する。第一製膜室(120)では、原料揮発供給装置(124)、および、ガス供給装置(125)等から有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる製膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル(127)を通して第1製膜室(120)内に上記の製膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送された基材フィルム(101)の上に、グロー放電プラズマ(128)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第1層の有機珪素化合物からなる蒸着層を製膜化する。
【0038】
上記の第1製膜室(120)で第1層の蒸着膜を製膜化した基材フィルム(101)を補助ロール(123)、(131)等を介して第二製膜室(130)に繰り出し、次いで、上記と同様に、第1層の蒸着膜を製膜化した基材フィルム(101)を所定の速度で冷却・電極ドラム(132)周面上に搬送する。その後、上記と同様に、原料揮発供給装置(134)、および、ガス供給装置(135)等から有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる製膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル(137)を通して第二製膜室(130)内に上記の製膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(132)周面上に搬送された第1層の蒸着膜を製膜化した基材フィルム(101)の第1層の蒸着膜の上に、グロー放電プラズマ(138)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第2層の有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を製膜化する。
【0039】
更に、上記の第二製膜室(130)で第1層と第2層の蒸着膜を製膜化し、重層した基材フィルム(101)を補助ロール(133)、(141)等を介して第三製膜室(140)に繰り出し、次いで、上記と同様に、第1層と第2層の蒸着膜を製膜化した基材フィルム(101)を所定の速度で冷却・電極ドラム(142)周面上に搬送する。次いで、原料揮発供給装置(144)、および、ガス供給装置(145)等から有機珪素化合物の1種以上からなる製膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる製膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル(147)を通して、第三製膜室(140)内に上記の製膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(142)周面上に搬送された第1層と第2層の蒸着膜を製膜化し、重層した基材フィルム1の第2層の蒸着膜の上に、グロー放電プラズマ(148)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第3層の有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を製膜化する。
【0040】
次いで、上記で第1層、第2層、および、第3層の蒸着膜を製膜化し、それらを重層した基材フィルム(101)を、補助ロール(143)を介して、巻取り室(150)に繰り出し、次いで、巻取りロール(151)に巻き取る。
【0041】
なお、各第1、第2、および、第3の製膜室(120)、(130)、(140)に配設されている各冷却・電極ドラム(122)、(132)、(142)は、各第1、第2、および、第3の製膜室(120)、(130)、(140)の外に配置されている電源(160)から所定の電力が印加され、また、各冷却・電極ドラム(122)、(132)、(142)の近傍には、マグネット(129)、(139)、(149)を配置してプラズマの発生が促進されるものである。なお、図示しないが、上記のプラズマ化学気相成長装置には、真空ポンプ等が設けられ、各製膜室等は真空に保持されるように調製し得ることは勿論である。また、上記は、3層で例示したが、製膜室を任意に調製し、4層以上の多層構造とすることができる。
【0042】
上記において、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調製することが望ましい。また、本発明では、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜が単層で構成されるか多層で構成されるかに係わらず、酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜の形成時の真空度は、各真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrに調整することが好ましい。従来の真空蒸着法により酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。なお、製膜室が複数ある場合には、真空度は、各室において同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0043】
また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、50〜200m/分位に調製することが望ましいものである。プラズマ化学気相成長では、上記冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、製膜室内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、製膜用混合ガス組成物に含まれる1以上のガス成分から導出されるものであり、基材フィルムを上記範囲で一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、前記冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、珪素酸化物等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を均一に製膜化することができる。
【0044】
また、原料である有機珪素化合物、酸素ガス、不活性ガスからなる製膜用混合ガス組成物において、各ガス成分のガス混合比としては、有機珪素化合物の1種からなる製膜用モノマーガスの含有量は、1〜40質量%位、酸素ガスの含有量は、0.1〜70質量%位、不活性ガスの含有量は、1〜60質量%位の範囲として調製することが好ましい。前記蒸着層が多層からなる場合には、各蒸着層において、原料である製膜用モノマーガスと酸素ガス(O2)との比をそれぞれ変化させてもよい。これによって製膜化した有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜中の炭素量を増減させることができ、該炭素量が増加すると、C−C結合、Si−CH3結合が増加し、柔軟性の高い、かつ、水蒸気に対して高いバリア性を持つ撥水性の蒸着膜を製膜化可能とすることができる。また、製膜化した蒸着層中に炭素量の含有が減少すると、Si−CH3結合が少なくなるため柔軟性は劣るが、酸素等に対して高いガスバリア性を保持することができる。
【0045】
本発明において、上記の有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0046】
本発明において、上記蒸着膜の総膜厚は、60Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100Å〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、60Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0047】
なお、上記した3層からなる多層構造の場合には、第1層を構成する蒸着膜の膜厚としては、20Å〜200Å位、好ましくは、30Å〜100Å位が望ましく、また、第2層を構成する蒸着膜の膜厚としては、20Å〜200Å位、好ましくは、30Å〜100Å位が望ましく、更に、第3層を構成する蒸着膜の膜厚としては、20Å〜200Å位、好ましくは、30Å〜100Å位が望ましいものである。上記において、20Å以下であると、それ自身のバリア性が発現しないことから好ましくなく、また、200Åを越えると、膜にクラック等が入りやすく、特に、製膜中に、基材フィルムが巻き取られる間にクラックが入りやすい傾向にあることから好ましくないものである。また、上記において、上記の有機珪素化合物層の膜厚を変更する手段としては、その層の体積速度を大きくすること、すなわち、製膜用モノマーガスと酸素ガスの量を多くする方法や製膜する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0048】
本発明において、酸化珪素等からなる有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0049】
(iv)ガスバリア性塗布膜
本発明で使用するガスバリア性塗布膜としては、一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム上の上記蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルムの融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理して形成することができる。
【0050】
また、前記ガスバリア性組成物を上記基材フィルム上の上記蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜180℃、かつ、上記基材フィルムの融点以下の温度で30秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
【0051】
上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、上記アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよく、更に、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
【0052】
上記一般式R1nM(OR2m中、R1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基などを挙げることができる。
【0053】
上記一般式R1nM(OR2m中、R2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、異なってもよい。
【0054】
上記一般式R1nM(OR2m中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。
本発明においてケイ素であることが好ましい。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、上記一般式R1nM(OR2mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH34、テトラエトキシシランSi(OC254、テトラプロポキシシランSi(OC374、テトラブトキシシランSi(OC494等を例示することができる。
【0055】
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4-m(ただし、式中、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH33、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC253、ジメチルジメトキシシラン(CH32Si(OCH32、ジメチルジエトキシシラン(CH32Si(OC252、その他等を使用することができる。本発明では、上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、本発明において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他等を使用することができる。
【0057】
本発明では、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH34、テトラエトキシジルコニウムZr(OC254、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC374、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC494、その他等を例示することができる。
【0058】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドを好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH34、テトラエトキシチタニウムTi(OC254、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC374、テトラnブトキシチタニウムTi(OC494、その他等を例示することができる。
【0059】
また、上記一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH34、テトラエトキシアルミニウムAl(OC254、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC374、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC494、その他等を使用することができる。
【0060】
本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲である。10質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向にあることから好ましくないものである。
【0061】
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲である。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
【0062】
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
【0063】
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6位であることが好ましい。
【0064】
また、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは20〜200質量部の配合割合である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部を下回るとガスバリア性が低下する場合がある。
【0065】
前記ポリビニルアルコ一ル系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0066】
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0067】
本発明で使用するガスバリア性組成物は、前記一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。上記ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
【0068】
本発明で好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く使用することができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、それには、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。このようなシランカップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、上記アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内である。20質量部以上を使用すると、形成されるガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜の絶縁性および加工性が低下する場合がある。
【0069】
また、ゾル−ゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンなどの塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他等を使用することができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
【0070】
また、上記ガスバリア性組成物において用いられる「酸」としては、上記ゾル−ゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、ならびに、酢酸、酒石酸な等の有機酸、その他等を使用することができる。上記酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルを使用することが好ましい。
【0071】
更に、上記のガスバリア性組成物においては、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水をもちいることができる。水の量が2モルを越えると、上記アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、更に、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そのような多孔性のポリマーは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができなくなる。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
【0072】
更に、上記のガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、その他等を用いることができる。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、上記有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾル−ゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
【0073】
本発明において、ガスバリア性積層フィルムは、以下の方法で製造することができる。
まず、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
【0074】
次いで、基材フィルム上の前記した有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜の上に、常法により、上記のガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、上記のアルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合が更に進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、更に上記塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。
【0075】
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルムを20℃〜180℃、かつ基材フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、前記蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層ないし2層以上形成したガスバリア性積層フィルムを製造することができる。
【0076】
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたガスバリア性積層フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れる。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してガスバリア性積層フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したガスバリア性積層フィルムを製造することができる。
【0077】
更に、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層しても、本発明に係るガスバリア性積層フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
【0078】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムの製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシランを使用し、より詳細に説明する。
ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が加水分解の触媒として作用する。次いで、ゾル−ゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪取され、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
【0079】
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、その他等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。
【0080】
上記反応において、例えば、下記の式(III)に示される部分構造式を有し、更に、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
【0081】
【化1】

このポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)を、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾル−ゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(I)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(II)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)及び(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
【0082】
【化2】

【0083】
【化3】

【0084】
【化4】

【0085】
【化5】

【0086】
【化6】

上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、基材フィルム上の前記蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム上の蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、上記の塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
【0087】
更に、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム、または、基材フィルム上の蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム、または前記蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果を発揮し得る。
【0088】
なお、本発明では、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルに調節した場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れる。特に、N2、CO2ガス等を充填した、いわゆる、ガス充填包装に用いた場合には、その優れたガスバリア性が、充填ガスの保持に極めて有効となる。更に、本発明にかかるガスバリア性積層フィルムは、熱水処理、特に、高圧熱水処理(レトルト処理)に優れ、極めて優れたガスバリア性特性を示す。
【0089】
上記の本発明のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができ、更に、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、本発明のガスバリア性塗布膜を形成することができる。
【0090】
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムは、上記により基材フィルムに蒸着膜(I)を形成し、ついでガスバリア性塗布膜(I)を形成し、更に上記方法で蒸着膜(II)を形成し、および上記方法でガスバリア性塗布膜(II)と形成してこれらを積層させたものである。ただし、蒸着膜(I)と(II)とは、同一であっても異なっていてもよい。同様に、ガスバリア性塗布膜(I)と(II)も、同一であっても異なっていてもよい。蒸着膜とガスバリア性塗布膜とを2層ずつ交互に積層することで、よりガスバリア性を向上させることができる。しかも、得られたガスバリア性積層フィルムの最外層がガスバリア性塗布膜(II)となるため、他のフィルムなどに積層する際にも蒸着膜(I)、(II)を破損する恐れが少なく、ガスバリア性の低下を防止することができる。
【0091】
(4)ヒートシール層
本発明のチューブ用積層体は、最内層にヒートシール層を有する。最内層がヒートシール層であるため、板状のチューブ用積層体の両端部の最内層を対向して積層し、熱融着することでチューブ形状に成形することができる。
【0092】
本発明で使用するヒートシール層を構成する材料は、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン若しくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、その他等の樹脂の1種ないしそれ以上からなる樹脂を使用することができる。
【0093】
更に、本発明においてヒートシール層を構成する材料として、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。
【0094】
メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。記のメタロセン触媒は、現行の触媒が、活性点が不均一でマルチサイト触媒と呼ばれているのに対し、活性点が均一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれているものである。具体的には、三菱化学株式会社製の商品名「カーネル」、三井石油化学工業株式会社製の商品名「エポリユー」、米国、エクソン・ケミカル(EXXON CHEMICAL)社製の商品名「エクザクト(EXACT)」、米国、ダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)社製の商品名「アフイニティー(AFFINITY)、商品名「エンゲージ(ENGAGE)」等のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。
【0095】
本発明において、上記のヒートシール層としては、例えば、上記の樹脂の1種ないし2種以上を主成分とし、これに、所望の添加剤を任意に添加して樹脂組成物を調製し、次いで、上記で調製した樹脂組成物を使用し、例えば、Tダイ法、インフレーション法、その他等の成形法を用いてフィルムないしシートを成形し、上記の裏面ポリオレフィン系樹脂層を構成することができる。
【0096】
上記において、ヒートシール層は、内容物に対する低臭性、保香性等に優れ、また、強度等に優れ、腰等の向上を図ることができるものであることが好ましいものである。
なお、本発明においてヒートシール層の膜厚としては、25〜300μm、好ましくは、30〜200μmが望ましい。
【0097】
なお、本発明においては、上記したヒートシール層には、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、染料、顔料等を任意に添加して使用することができる。
【0098】
(4)表面オレフィン系樹脂層
本発明では、前記ガスバリア性積層フィルムの外側に、表面オレフィン系樹脂層が積層される。本発明にかかるチューブ用積層体の両端部の表面オレフィン系樹脂層とヒートシール層とを重ね合わせて熱融着することで、筒状胴部を製造することができる。よって、表面オレフィン系樹脂層も加熱により溶融して相互に融着することができるものが好ましい。ただし、チューブ用積層体の両端部の最内層を対抗させて重ね合わせ、端部を熱融着すれば筒状に形成することができるため、熱融着性を有するものに限定されない。なお、表面オレフィン系樹脂層は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式、その他等により、印刷模様を形成し得るヒートシール性を有する樹脂を使用することが望ましい。
【0099】
このような表面オレフィン系樹脂層としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸を使用して酸変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。
【0100】
更に、本発明においては、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体としては、例えば、二塩化ジルコノセンとメチルアルモキサンの組み合わせによる触媒等のメタロセン錯体とアルモキサンとの組み合わせによる触媒、すなわち、メタロセン触媒を使用して重合してなるエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。上記のメタロセン触媒は、現行の触媒が、活性点が不均一でマルチサイト触媒と呼ばれているのに対し、活性点が均一であることからシングルサイト触媒とも呼ばれているものである。
【0101】
具体的には、三菱化学株式会社製の商品名「カーネル」、三井石油化学工業株式会社製の商品名「エポリユー」、米国、エクソン・ケミカル(EXXON CHEMICAL)社製の商品名「エクザクト(EXACT)」、米国、ダウ・ケミカル(DOW CHEMICAL)社製の商品名「アフイニティー(AFFINITY)、商品名「エンゲージ(ENGAGE)」等のメタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体を使用することができる。
【0102】
本発明において、上記の表面オレフィン系樹脂層としては、例えば、上記のヒートシール性を有する樹脂の1種ないし2種以上を主成分とし、これに、所望の添加剤等を任意に添加して樹脂組成物を調製し、次いで、上記で調製した樹脂組成物を使用し、これを、例えば、Tダイ法、インフレーション法、その他等の成形法を用いてフィルムないしシートを成形して、上記の表面オレフィン系樹脂層を構成することができる。本発明において、表面オレフィン系樹脂層としては、例えば、フィッシュアイと称される凹凸面を平滑化して平らにし、これにより、グラビア印刷方式、あるいは、フレキソ印刷方式等による印刷適性を大幅に向上させ、印刷絵柄層を構成するインキの抜け等の発生を防止し、極めて美麗な印刷絵柄層等を形成することができ、印刷品質面による不良品の発生を改善することができるようにすることが望ましいものである。
【0103】
なお、本発明において、表面オレフィン系樹脂層の膜厚としては、25〜300μm、好ましくは、30〜200μmが望ましいものである。
(5)印刷層
本発明では、チューブ用積層体を構成するいずれかの層に印刷層を形成してもよい。
【0104】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0105】
印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
(6)ラミネート用接着剤
ラミネート用接着剤層を構成するラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、あるいは、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンーブタジェンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤、その他等の接着剤を使用することができる。
【0106】
上記の接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよいものである。
【0107】
本発明においては、積層する両者の一方の面に、上記のラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施し、次いで、溶剤等を乾燥させてラミネート用接着剤層を形成すことができ、そのコーティングないし印刷量としては、0.1〜10g/m2(乾燥状態)位が望ましい。
【0108】
(7)アンカーコート剤
本発明では、例えばヒートシール層を押出し形成してもよく、その際に、アンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することができる。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、上記した薄膜膜に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができ、ガスバリア性積層フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、上記した薄膜膜のクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。
【0109】
上記アンカーコート剤は、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、その他等のコート法、あるいは、印刷法等によって施すことができる。なお、アンカーコート剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜5g/m2(乾燥状態)である。
【0110】
(8)押出し樹脂層
溶融押出ラミネート法における溶融押出樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン系触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンープロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルポン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、その他等を使用することができる。
【0111】
また、本発明においては、溶融押出ラミネートする場合、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、その他等のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。更に、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、積層する基材等の表面に、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を任意に施すことができる。
【0112】
押出し樹脂層の厚さは、5〜50μm、好ましくは15〜30μmである。
(9)他の基材
本発明のチューブ用積層体は、物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このために上記の諸条件を充足するその他の基材を任意に使用することができる。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジェン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシートを任意に選択して使用することができる。本発明において、上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。
【0113】
これらは、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
更に、その他の基材としては、例えば、ラミネートチューブを構成する基本素材としての、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靭であり、かつ耐熱性を有する樹脂層を使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靭な樹脂のフィルムないしシート、その他等を使用することができる。上記の樹脂のフィルムとしては、未延伸フィルム、あるいは、一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。そのフィルムの厚さとしては、5〜100μm、好ましくは、10〜50μmが望ましい。
【0114】
また、本発明においては、その他の材料としては、例えば、太陽光等の光を遮光する性質を有する遮光性素材、あるいは、水蒸気、水等を透過しない性質等を有する耐水性素材を使用することができ、これは、単体の基材でもよく、あるいは二種以上の基材を組み合わせてなる複合基材等であってもよい。具体的には、例えば、水蒸気、水等のバリアー性を有する耐水性素材としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート等を使用することができ、また、遮光性素材としては、例えば、樹脂に顔料等の着色剤、更に、その他等の所望の添加剤を加えて混練してフィルム化してなる遮光性を有する各種の着色樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。これらの材料は、一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。上記のフィルムないしシートの厚さとしては、任意であるが、通常、5〜300μm位、更には、10〜100μmが望ましい。
【0115】
(10)チューブ用積層体の製造方法
本発明のチューブ用積層体は、通常の積層材を製造するときに使用するラミネート法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押出しラミネーション法、Tダイ共押出し成形法、共押出しラミネーション法、インフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
【0116】
例えば、予め基材フィルムに前記蒸着膜(I)、ガスバリア性塗布膜(I)、蒸着膜(II)、およびガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムを調製し、このガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗布膜(II)または基材フィルム側とヒートシール層または表面オレフィン系樹脂層とを対向するように積層し、ラミネート用接着剤を介して接着して製造することができる。前記ガスバリア性積層フィルムが市販されている場合には、市販品を使用することもできる。表面オレフィン系樹脂層とヒートシール層とは、いずれが先にガスバリア性積層フィルムに積層されてもよい。また、本発明においては、いずれかのフィルムや層の積層を行う際に、必要ならば、前記したように、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができる。
【0117】
また、ラミネート接着剤による接着に代えて、前記ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性塗布膜(II)や基材フィルムにアンカーコート層を積層し、このアンカーコート層に押出し溶融樹脂層を介してヒートシール層や表面オレフィン系樹脂層を積層して製造することもできる。押出し溶融樹脂層によって接着することでチューブ用積層体の柔軟性を向上させ、かつチューブ形態への成形加工性を向上させることができる。
【0118】
本発明においては、チューブ用積層体を構成するいずれかの基材に、そのラミネート前等において、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式等を使用して所望の印刷模様を形成することができるものである。具体的には、表面オレフィン系樹脂層を構成する基材、あるいは、有機珪酸化合物の蒸着膜を有する基材フィルム等に所望の印刷模様等を形成することができる。
【0119】
例えば、表面オレフィン系樹脂層の表裏のいずれかの片面及び/又は両面に、所望の印刷模様を設け、次いで、バリア性積層フィルムとヒートシール層とを積層して、本発明にかかるチューブ用積層体を製造し、しかる後、これを使用して、以下、上記と同様にして、本発明にかかるラミネートチューブ、それを使用した包装製品等を製造することもできる。
【0120】
(11)ラミネートチューブの製造方法
本発明のチューブ用積層体を使用して、本発明にかかるラミネートチューブを製造する一例を挙げれば、まず、前記チューブ用積層体を所定サイズに切断し、そのチューブ用積層体の両端部の表面オレフィン系樹脂層の面とヒートシール層の面とを重ねあわせ、次いで熱融着して筒状胴部を製造し、その筒状胴部の一方の開口部に、例えば、押出成形法等の通常の方法によって、肩部および開口部を有する頭部を形成し、頭部の開口部にキャップを螺合させて、ラミネートチューブを製造することができる。このラミネートチューブの筒状胴部の他方の開放端から、練り歯磨き、その他等の内容物を充填した後に、前記開放端を熱溶着して底シール部を形成すれば、内容物を充填包装したラミネートチューブからなる包装製品を製造することができる。
【0121】
なお、本発明にかかるラミネートチューブの肩部、開口部等からなる頭部を構成する材料として、上記のような高密度ポリエチレンの他に、更に、前述のメタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体等を使用することもできる。
【0122】
上記筒状胴部を製造する際にヒートシールする方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、火炎シール等の既知の方法で行うことができる。
【0123】
一方、ラミネートチューブの製造方法は、上記に限定されるものではない。例えば、上記チューブ用積層体を使用し、そのチューブ積層体の表面に、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式等を用いて、グラビアインキ、フレキソインキ等を使用し、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる印刷絵柄層を印刷、形成し、次いで、印刷模様層を形成したチューブ用積層体を丸めてその重合端部を溶着してラミネートチューブを構成する筒状胴部を製造し、次に、その筒状胴部の上方に、例えば、高密度ポリエチレン等を用いて、例えば、射出成形法、圧縮成形法、その他の成形法で成形溶着して肩部および開口部等からなる頭部を形成し、次いで、頭部を構成する開口部に、別途、例えば、ポリプロピレン系樹脂等を使用して射出成形法等で成形して製造したキャップを取り付けて、本発明にかかるラミネートチューブを製造することができる。次いで、ラミネートチューブの下端部の開放端から充填包装する内容物を充填し、次いでその開放端をヒートシールして底溶着部を形成してもよい。
【0124】
フレキソ印刷は凸版印刷の一種であり、フレキシブルな樹脂またはゴム凸版を用い、溶剤乾燥型のフレキソインキを用いて、文字、図形、記号、絵柄、その他等からなる所望の印刷絵柄層を印刷して形成するものである。フレキソインキとしては、ゴム凸版等を比較的侵さない、アルコール系または水性のビヒクルを主体とした蒸発乾燥型インキ、あるいは、紫外線硬化型インキ等を使用することができるものである。
【0125】
本発明では、フレキソ印刷方式等を用いることにより、無地の状態でチューブ用積層体を製造し、その無地のチューブ用積層体あるいは無地の筒状同部の表面に直接印刷して、所望の印刷絵柄層を形成することができるので、原反のまとめ生産が可能となり、その生産効率を高め、製造ロスの削減等を行うことができ、また、受注に応じて、必要数量だけ印刷するために、製造ロスを削減し、短納期化が可能となる。すなわち、通常、プラスチックフィルム等の原反フィルムに印刷して所望の印刷絵柄層を形成し、しかる後、これに他のプラスチックフィルム等を積層して、印刷絵柄付きの積層材を製造しているため、受注からのリードタイムが長くなり、各絵柄ごとに原反ロットがわかれるなど、製造プロセス、製造コスト等を著しく不利にするものであるが、本発明は、そのような問題点を解消し得るという利点を有するものである。
【0126】
本発明のラミネートチューブに充填包装する内容物としては、例えば、練り歯磨き、化粧品、糊、練りがらし、練りわさび、クリーム類、絵の具、軟膏、医薬品、その他等を挙げることができる。
【実施例】
【0127】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
製造例1
片面をコロナ処理した厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(以下、HMDSOという。)を供給して、厚さ200Åの蒸着膜を形成し、この蒸着膜面にプラズマ処理を行った。次いで、下記の表1に示す組成に従って、組成a.EVOH(エチレン共重合比率29%)をイソプロピルアルコールおよびイオン交換水の混合溶媒にて溶解したEVOH溶液に、予め調製した組成b.のエチルシリケート40、イソプロピルアルコール、アセチルアセトンアルミニウム、イオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌、更に予め調製した組成c.のポリビニルアルコール水溶液、シランカップリング剤(エポキシシリカSH6040)、酢酸、イソプロピルアルコール及びイオン交換水からなる混合液を加えて攪拌し、無色透明のバリアー塗工液を得た。
【0128】
【表1】

前記プラズマ処理面に、上記で製造したガスバリア性組成物をコーティングして厚さ0.4g/m2(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成し、ガスバリア性積層フィルム(I)を製造した。
【0129】
製造例2
製造例1で製造したガスバリア性積層体(I)のガスバリア性塗布膜の面に、前記プラズマ化学気相成長装置を用いて有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(以下、HMDSOという。)を供給して、厚さ200Åの蒸着膜を形成し、更に、この蒸着膜の上に上記と同様にしてガスバリア性塗布膜を形成してガスバリア性積層フィルム(II)を製造した。
【0130】
製造例3
(1) 片面をコロナ処理を行った厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着して繰り出し、次いで、上記の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理面に、酸化アルミニウムを供給し、膜厚200Åの酸化アルミニウムの蒸着膜を形成し、酸化アルミニウムの蒸着膜面にプラズマ処理を行い、ガスバリア性積層フィルム(III)を製造した。
【0131】
実施例1
製造例2で製造したガスバリア性積層フィルムのPET側にラミネート用接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「LX703VL/KR90」)を厚さ3μmに塗布し、厚さ150μmのLLDPE(タマポリ(株)製、商品名「UB−IT」)と接着した。次いで、初めに積層したLLDPE面にUV硬化フレキソインキを塗布し、乾燥させた。次いで、このガスバリア性積層フィルム(II)のゲルゾル系バリアコートにラミネート用接着剤(大日本インキ化学工業(株)製、商品名「LX703VL/KR90」)を厚さ3μmに塗布し、厚さ150μmのLLDPE(タマポリ(株)製、商品名「UB−IT」)を積層し、本発明のチューブ用積層体(I)を製造した。このチューブ用積層体の層構成は、UV硬化フレキソインキ/LLDPE150/DL/PET12/CVD−SiOx/ゾルゲル系バリアコート/CVD−SiOx/ゾルゲル系バリアコート/DL/LLDPE150である。
【0132】
このチューブ用積層体(I)の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表2に示す。
次いで、チューブ用積層体(I)を使用して、直径35mm、高さ160mmのチューブを形成し、開口部にHDPEからなる頭部を圧縮成型で取り付けた。このチューブに練りわさび150gを充填し、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
【0133】
次いで、上記チューブに手揉み試験を実施し、手揉み後の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
実施例2
製造例2で製造したガスバリア性積層フィルムのガスバリア塗布膜面に、グラビアインキを塗布した。次いで、前記ガスバリア性積層フィルムの二軸延伸テレフタートフィルム面にアンカーコート剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「A3210/A3075」)を厚さ0.2μmに塗布した後、このアンカーコート剤塗布面にポリエチレンを厚さ15μmに溶融押出しして厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製、商品名「FCMN」)を積層した。次いで、前記ガスバリア性積層フィルム(II)のガスバリア塗布膜面にアンカーコート剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名「A32101/A3075」)を厚さ0.2μmに塗布した後、このアンカーコート剤塗布面にポリエチレンを厚さ15μmに溶融押出しして厚さ80μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)製、商品名「FCMN」)を積層して、本発明のチューブ用積層体(II)を製造した。このチューブ用積層体の層構成は、CPP80/PE15/AC/PET12/CVD−SiOx/ゾルゲル系バリアコート/CVD−SiOx/ゾルゲル系バリアコート/グラビアインキ/AC/PE15 /CPP80である。
【0134】
このチューブ用積層体(II)について、実施例1と同様にして酸素透過度および水蒸気透過度を行った。結果を表2に示す。
次いで、チューブ用積層体(II)を使用して、直径35mm、高さ160mmのチューブを形成し、開口部にPPからなる頭部を圧縮成型で取り付けた。このチューブについて実施例1と同様に操作して、手揉み後の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0135】
比較例1
実施例1のガスバリア性積層フィルム(II)に代えて、製造例3で製造したガスバリア性積層フィルム(III)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、比較チューブ用積層体(I)を製造した。このチューブ用積層体の層構成は、UV硬化フレキソインキ/乳白LLDPE150/DL/PET12/AlOx/DL/LLDPE150である。
【0136】
次いで、この比較チューブ用積層体(I)について、実施例1と同様にして酸素透過度および水蒸気透過度を行った。結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にしてチューブを製造し、このチューブについて実施例1と同様に操作して、手揉み後の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0137】
比較例2
実施例2のガスバリア性積層フィルム(II)に代えて、製造例1で製造したガスバリア性積層フィルム(I)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、比較チューブ用積層体(II)を製造した。このチューブ用積層体の層構成は、CPP80/PE15/AC/PET12/CVD−SiOx/ゾルゲル系バリアコート/グラビアインキ/AC/PE15/CPP80である。
【0138】
次いで、この比較チューブ用積層体(II)について、実施例1と同様にして酸素透過度および水蒸気透過度を行った。結果を表2に示す。
また、実施例1と同様にしてチューブを製造し、このチューブについて実施例1と同様に操作して、手揉み後の酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0139】
(測定方法)
(1) 酸素透過度の測定
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OXTRAN)〕にて測定した。
【0140】
(2) 水蒸気透過度の測定
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パーマトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。
【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のチューブ用積層体は、ガスバリア性、透明性に優れ、かつ手揉み耐性に優れ、実際の使用における高いガスバリア性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1は、本発明のチューブ用積層体の層構造を説明する図であり、ガスバリア性積層フィルム(30)にヒートシール層(10)がラミネート用接着剤層(20)によって接着される態様であって、前記ガスバリア性積層フィルム(30)は、基材フィルム(31)、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層(33)、ガスバリア性塗布膜(35)、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層(37)およびガスバリア性塗布膜(39)をこの順に積層したガスバリア性に優れる積層フィルムである態様を示す。
【図2】図2は、本発明のチューブ用積層体の層構造を説明する図であり、ガスバリア性積層フィルム(30)にアンカーコート層(60)が形成された後に、押出し樹脂層(25)を介してヒートシール層(15)が積層される態様であって、前記ガスバリア性積層フィルム(30)は、基材フィルム(31)、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層(33)、ガスバリア性塗布膜(35)、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層(37)およびガスバリア性塗布膜(39)をこの順に積層したガスバリア性に優れる積層フィルムである態様を示す。
【図3】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図4】複数の製膜室を有する低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0145】
10・・・ヒートシール層、
20・・・接着剤樹脂層、
25・・・溶融押出し樹脂層、
30・・・ガスバリア性積層フィルム、
31・・・基材フィルム、
33・・・有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層、
35・・・ガスバリア性塗布膜、
37・・・有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着層、
39・・・ガスバリア性塗布膜、
40・・・表面オレフィン系樹脂層、
50・・・印刷層、
60・・・アンカーコート層、
100・・・プラズマ化学気相成長装置、
101・・・基材フィルム、
110・・・基材フィルム供給室、
111・・・巻き出しロール、
120・・・第一製膜室、
121、123、131、133、141、143・・・補助ロール、
122、132、142・・・冷却・電極ドラム、
124、134、144・・・原料揮発供給装置、
125、135、145・・・ガス供給装置、
127、137、147・・・原料供給ノズル
128、138、148・・・グロー放電プラズマ、
129、139、149・・・マグネット、
130・・・第二製膜室、
140・・・第三製膜室、
150・・・巻取り室、
153・・・真空ポンプ、
160・・・電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面オレフィン系樹脂層とガスバリア性積層フィルムとヒートシール層とをこの順に積層してなるチューブ用積層体であって、
前記ガスバリア性積層フィルムは、基材フィルムの一方の面に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(I)を設け、該蒸着膜上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(I)を設け、前記ガスバリア性塗布膜(I)に化学気相成長法により有機珪素化合物を供給してなる蒸着膜(II)を設け、該蒸着膜(II)上に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾル−ゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜(II)を設けたガスバリア性積層フィルムであることを特徴とする、チューブ用積層体。
【請求項2】
請求項1記載のチューブ用積層体からなるラミネートチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−248456(P2009−248456A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99375(P2008−99375)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】