説明

チョッパスタビライズドアンプ

【課題】演算増幅回路が有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して発生するグリッチングを抑制し、高調波歪のより少ない出力信号を得ることができるチョッパスタビライズドアンプを提供する。
【解決手段】変調回路MODは、所定の周波数を有する矩形波である変調信号を使って、入力信号をデジタル的に第1の被変調信号に変換する。演算増幅回路AMPは、第1の被変調信号を増幅して、第2の被変調信号に変換する。復調回路DEMODは、第1の被変調信号と第2の被変調信号の周波数成分の違いに対応する波形をもった復調信号を使って、アナログ的に第2の被変調信号を出力信号に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパスタビライズドアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
チョッパスタビライズドアンプは、低ノイズ、低ドリフトの直流アンプとして広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。以下、従来のチョッパスタビライズドアンプの構成について、図10を用いて説明する。図10は従来のチョッパスタビライズドアンプの構成を示している。図10に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPは、入力端子INPと、入力端子INMと、演算増幅回路AMPと、変調回路MODと、復調回路DEMODと、負荷容量CLMと、負荷容量CLPと、出力端子OUTPと、出力端子OUTMとで構成されている。
【0003】
入力端子INPおよび入力端子INMを通して入力された信号VIN(t)は、変調回路MODに入力される。変調回路MODには外部から変調信号CK1と変調信号nCK1とが入力されており、変調回路MODは信号VIN(t)を変調信号CK1と変調信号nCK1とで変調し、第1の被変調信号Vmod1として演算増幅回路AMPの入力端子に出力する。
【0004】
演算増幅回路AMPに入力された第1の被変調信号Vmod1は演算増幅回路AMPで増幅され、第2の被変調信号Vmod2となり、復調回路DEMODに出力される。復調回路DEMODには外部から変調信号CK1と変調信号nCK1とが入力されており、第2の被変調信号Vmod2は変調信号CK1と変調信号nCK1とで復調され、出力信号OUT(t)として、出力端子OUTMと出力端子OUTPから出力される。
【0005】
また、演算増幅回路AMPの反転出力端子とグラウンドとの間には負荷容量CLMが接続されており、演算増幅回路AMPの非反転出力端子とグラウンドとの間には負荷容量CLPが接続されている。これらの容量は寄生容量、若しくはアンプを安定動作させるための補償容量である。
【0006】
以下、変調回路MODおよび復調回路DEMODについて説明する。変調回路MODは、スイッチ部S1と、スイッチ部S2と、スイッチ部S3と、スイッチ部S4とで構成されている。スイッチ部S1は入力端子INPと演算増幅回路AMPの非反転入力端子との間に介挿されており、スイッチ部S2は入力端子INMと演算増幅回路AMPの反転入力端子との間に介挿されている。また、スイッチ部S3は入力端子INPと演算増幅回路AMPの反転入力端子との間に介挿されており、スイッチ部S4は入力端子INMと演算増幅回路AMPの非反転入力端子との間に介挿されている。
【0007】
スイッチ部S1およびスイッチ部S2には変調信号CK1が供給されており、スイッチ部S1およびスイッチ部S2は変調信号CK1がハイレベル(以下「H」と記載)のときオンとなり、ローレベル(以下「L」と記載)のときにオフとなる。また、スイッチ部S3およびスイッチ部S4には変調信号nCK1が供給されており、スイッチ部S3およびスイッチ部S4は変調信号nCK1が「H」のときオンとなり、「L」のときにオフとなる。
【0008】
復調回路DEMODは、スイッチ部S1’と、スイッチ部S2’と、スイッチ部S3’と、スイッチ部S4’とで構成されている。スイッチ部S1’は演算増幅回路AMPの反転出力端子と出力端子OUTMとの間に介挿されており、スイッチ部S2’は演算増幅回路AMPの非反転出力端子と出力端子OUTPとの間に介挿されている。また、スイッチ部S3’は演算増幅回路AMPの反転出力端子と出力端子OUTPとの間に介挿されており、スイッチ部S4’は演算増幅回路AMPの非反転出力端子と出力端子OUTMとの間に介挿されている。
【0009】
また、スイッチ部S1’およびスイッチ部S2’には変調信号CK1が供給されており、スイッチ部S1’およびスイッチ部S2’は変調信号CK1が「H」のときオンとなり、「L」のときにオフとなる。また、スイッチ部S3’およびスイッチ部S4’には変調信号nCK1が供給されており、スイッチ部S3’およびスイッチ部S4’は変調信号nCK1が「H」のときオンとなり、「L」のときにオフとなる。
【0010】
以下、従来のチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPのチョッピング動作(変調動作および復調動作)について、図10および図11を用いて説明する。図11は変調信号CK1および変調信号nCK1の波形を示している。
【0011】
変調回路MODは、所定の周波数で周期的に変化する矩形状の変調信号CK1と、その変調信号CK1と位相が180度ずれた矩形状の変調信号nCK1とによりオンオフする4つのスイッチ部を用い、演算増幅回路AMPの非反転出力端子および反転出力端子から出力される出力信号が、出力端子OUTMと出力端子OUTPとのどちらに入力されるかを制御する。
【0012】
時刻t1から時刻t2の間、変調信号CK1が「H」であり、変調信号nCK1が「L」であるため、スイッチ部S1およびスイッチ部S2はオン状態であり、スイッチ部S3およびスイッチ部S4はオフ状態である。これにより、入力端子INPが演算増幅回路AMPの非反転入力端子に接続され、入力端子INMが演算増幅回路AMPの反転入力端子に接続される。
【0013】
一方、時刻t2から時刻t3の間、変調信号CK1が「L」であり、変調信号nCK1が「H」であるため、スイッチ部S1およびスイッチ部S2はオフ状態であり、スイッチ部S3およびスイッチ部S4はオン状態である。これにより、入力端子INPが演算増幅回路AMPの反転入力端子に接続され、入力端子INMが演算増幅回路AMPの非反転入力端子に接続される。
【0014】
また、復調回路DEMODは、変調回路MODと同様に、変調信号CK1と変調信号nCK1とによりオンオフする4つのスイッチ部を用い、演算増幅回路AMPの非反転出力端子および反転出力端子から出力される出力信号が、出力端子OUTMと出力端子OUTPとのどちらに入力されるかを制御する。
【0015】
時刻t1から時刻t2の間、変調信号CK1が「H」であり、変調信号nCK1が「L」であるため、スイッチ部S1’およびスイッチ部S2’はオン状態であり、スイッチ部S3’およびスイッチ部S4’はオフ状態である。これにより、演算増幅回路AMPの非反転出力端子が出力端子OUTPに接続され、演算増幅回路AMPの反転出力端子が出力端子OUTMに接続される。
【0016】
一方、時刻t2から時刻t3の間、変調信号CK1が「L」であり、変調信号nCK1が「H」であるため、スイッチ部S1’およびスイッチ部S2’はオフ状態であり、スイッチ部S3’およびスイッチ部S4’はオン状態である。これにより、演算増幅回路AMPの反転出力端子が出力端子OUTPに接続され、演算増幅回路AMPの非反転出力端子が出力端子OUTMに接続される。
【0017】
次に、図12を用いて、従来のチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPの主要ノードにおけるノイズおよび入力信号の周波数特性を説明する。図12(a)〜図12(f)のグラフは、それぞれ各主要ノードの信号振幅−周波数特性を示している。ただし、縦軸は振幅を表し、横軸は周波数を表している。演算増幅回路AMPは、図12(c)に示す入力換算ノイズVnを有しており、変調回路MODおよび復調回路DEMODは、変調信号CK1および変調信号nCK1(周波数fの方形波)でスイッチングを繰り返すことにより、入力信号を変調している。
【0018】
すなわち、図12(a)に示す周波数特性を有する入力信号VIN(t)が入力された場合、変調回路MODでの変調信号CK1および変調信号nCK1により入力信号が変調され、図12(b)に示す周波数特性を有する第1の被変調信号Vmod1となる。これによって、入力信号VIN(t)は、変調回路MODのチョッパ処理を制御する変調信号CK1および変調信号nCK1の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調される。
【0019】
そして、演算増幅回路AMPの入力端子では、図12(c)に示す入力換算ノイズVnが第1の被変調信号Vmod1に加算され、演算増幅回路AMPにより増幅された第2の被変調信号Vmod2は、図12(d)に示す周波数特性を有する信号となる。復調回路DEMODは、変調信号CK1および変調信号nCK1により、第2の被変調信号Vmod2を入力信号の周波数帯域(直流を含む低周波数領域)に復調し、図12(e)に示す周波数特性を有する出力信号OUT(t)を出力する。このとき、復調回路DEMODは、演算増幅回路AMPの入力換算ノイズVnを、復調に用いた変調信号CK1および変調信号nCK1の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調する。
【0020】
最終的に復調回路DEMODから出力される出力信号OUT(t)には、増幅後の入力信号に加え、変調信号CK1および変調信号nCK1の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調された入力換算ノイズVnの成分が含まれている。このため、ローパスフィルタ(LPF)を出力側に設け、このローパスフィルタによって、変調信号CK1および変調信号nCK1の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調された入力換算ノイズVnおよびオフセット電圧の分を除去し、図12(f)に示す周波数特性を有する出力信号LPOUT(t)を得ることができる。すなわち、上述したチョッパスタビライズドアンプは、演算増幅回路AMPの入力換算ノイズの影響を抑制し、入力信号の周波数成分のみを増幅することができる。
【0021】
ここで、図13を用いて、従来のチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPの主要ノードにおける信号波形について説明する。図13は、従来のチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPの各ノードにおける電圧信号を示している。説明を簡単にするため、図13における各ノードの電圧は、全差動アンプである演算増幅回路AMPの一方のチャネル(例えば、入力端子INP−演算増幅回路AMPの非反転入力端子−演算増幅回路AMPの非反転出力端子−出力端子OUTPで結ばれる系)のみを代表して表示している。他方のチャネルは、代表して表示されているチャネルの信号を上下に反転したものとして考えればよい。また、本説明において、演算増幅回路AMPの周波数特性およびスルーレートは無限であるものとする。なお、図13に含まれる全てのタイミングチャートにおいて、縦軸が電圧であり、横軸が時刻である。
【0022】
チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPにおいて、入力端子INPに対して、図13(b)に示す正弦波を入力信号VIN(t)として入力し、入力端子INMに対して、図13(b)に示す正弦波の上下を反転させた信号を入力するものとして、以下の説明を行う。図13(b)に示す入力信号VIN(t)は、変調回路MODにおいて、変調信号CK1および変調信号nCK1により変調される。ただし、変調信号CK1は図13(a)に示す通りである。また、変調信号nCK1は変調信号CK1の逆相で変化するが、図には記載していない。
【0023】
変調回路MODでは、入力信号VIN(t)と変調信号CK1の掛け算が行われるため、最終的に図13(c)に示す第1の被変調信号Vmod1が出力され、演算増幅回路AMPの非反転入力端子に入力される。この信号は、演算増幅回路AMPによって増幅されて第2の被変調信号Vmod2となる。第2の被変調信号Vmod2は復調回路DEMODに入力され、変調信号CK1(図13(e))および変調信号nCK1によって復調される。復調された信号は、図13(f)に示すような正弦波となる。また、変調信号CK1および変調信号nCK1の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調された入力換算ノイズの成分を除去するために設けられたローパスフィルタを通過した出力信号LPOUT(t)は、図13(g)に示す通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開昭61−89704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上記では、演算増幅回路AMPの周波数特性およびスルーレートが無限であるとして説明を行ってきた。しかしながら、現実の演算増幅回路AMPは有限のスルーレートおよび有限の周波数特性を有する。さらに、演算増幅回路AMPの出力端子には、アンプを安定動作させるための負荷容量CLMおよび負荷容量CLPが存在している。したがって、現実の演算増幅回路AMPにおいて、第1の被変調信号Vmod1の高周波成分の増幅率が、第1の被変調信号Vmod1の低周波成分の増幅率よりも低くなってしまう。
【0026】
このような状況におけるチョッパスタビライズドアンプの主要ノードの電圧波形は、図13(a’)〜図13(g’)に示す通りである。ただし、図13(a’)と図13(a)の波形は同じであり、図13(b’)と図13(b)の波形は同じであり、図13(c’)と図13(c)の波形は同じであり、図13(e’)と図13(e)の波形は同じであるため、図13(a’)、図13(b’)、図13(c’)、図13(e’)については説明を省略する。
【0027】
以下、図13(d’)、図13(f’)、図13(g’)について説明する。現実の演算増幅回路AMPが有限のスルーレートおよび有限の周波数特性を有するため、増幅後の第2の被変調信号Vmod2の波形には、図13(d’)に示すようになまりが生じている。この被変調信号Vmod2は復調回路DEMODに入力され、変調信号CK1および変調信号nCK1によって復調される。変調信号CK1および変調信号nCK1は、なまりのない信号であるため、復調後の出力信号OUT(t)には、図13(f’)に示すようなグリッチングが生じる。
【0028】
出力信号OUT(t)に生じたグリッチングは、ローパスフィルタによって完全には除去することができないため、ローパスフィルタを通過した後の出力信号LPOUT(t)において高調波歪が生じるという欠点がある。図13(g’)は、出力信号LPOUT(t)の波形を示している。
【0029】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、演算増幅回路が有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して発生するグリッチングを抑制し、高調波歪のより少ない出力信号を得ることができるチョッパスタビライズドアンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、所定の周波数を有する矩形波である変調信号を使って、入力信号をデジタル的に第1の被変調信号に変換する変調回路と、前記第1の被変調信号を増幅して、第2の被変調信号に変換する演算増幅回路と、前記第1の被変調信号と前記第2の被変調信号の周波数成分の違いに対応する波形をもった復調信号を使って、アナログ的に前記第2の被変調信号を出力信号に変換する復調回路と、を有するチョッパスタビライズドアンプである。
【0031】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプは、前記変調回路と前記復調回路に接続され、前記変調信号を前記変調回路に供給し、前記変調信号に基づいて生成された前記復調信号を前記復調回路に供給する変調復調信号生成部をさらに有することを特徴とする。
【0032】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記変調復調信号生成部は、矩形波を前記変調信号として出力する変調信号生成部と、前記矩形波が入力され、前記矩形波の高周波成分のみを減衰させた信号を前記復調信号として出力するローパスフィルタと、を有することを特徴とする。
【0033】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記ローパスフィルタのカットオフ周波数は前記演算増幅回路のカットオフ周波数と略一致することを特徴とする。
【0034】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記ローパスフィルタは、抵抗器とキャパシタを有することを特徴とする。
【0035】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記ローパスフィルタは、前記演算増幅回路と同一の特性を有する第2の演算増幅回路を有することを特徴とする。
【0036】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記変調復調信号生成部は、矩形波を前記変調信号として出力する変調信号生成部と、前記矩形波の高周波成分のみを減衰させた信号を前記復調信号として出力する復調信号生成部と、を有することを特徴とする。
【0037】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記変調信号生成部はNOT回路であり、前記復調信号生成部は電流設定機能つきNOT回路であることを特徴とする。
【0038】
また、本発明のチョッパスタビライズドアンプにおいて、前記変調信号生成部はNOT回路であり、前記復調信号生成部は前記変調信号生成部よりも負荷容量の大きなNOT回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、第1の被変調信号と第2の被変調信号の周波数成分の違いに対応する波形をもった復調信号を使って、アナログ的に第2の被変調信号を出力信号に変換することによって、演算増幅回路が有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して発生するグリッチングを抑制し、高調波歪のより少ない出力信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの変調信号および復調信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの各ノードにおける電圧信号を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプを構成するローパスフィルタの構成を示す回路図である。
【図6】本発明の第3の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプを構成するローパスフィルタの構成を示す回路図である。
【図7】本発明の第4の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示す回路図である。
【図8】本発明の第4の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプを構成する変調信号生成部および復調信号生成部の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の第5の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプを構成する変調信号生成部および復調信号生成部の構成を示す回路図である。
【図10】従来のチョッパスタビライズドアンプの構成を示す回路図である。
【図11】従来のチョッパスタビライズドアンプの変調信号の波形を示すタイミングチャートである。
【図12】従来のチョッパスタビライズドアンプの各ノードにおけるノイズおよび入力信号の周波数特性を説明するための説明図である。
【図13】従来のチョッパスタビライズドアンプの各ノードにおける電圧信号を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0042】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。以下、第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示している。図1において、図10に示す従来のチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMPと同一の部分には同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0043】
図1に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1が従来のチョッパスタビライズドアンプと異なる点は、変調信号CK1と変調信号nCK1とを変調回路MODに供給し、復調信号CK2と復調信号nCK2とを復調回路DEMODに供給する変調復調信号生成部MOD_DEMが設けられている点である。
【0044】
以下、図2を用いて、変調信号CK1、変調信号nCK1、復調信号CK2、復調信号nCK2について説明する。図2は、変調信号CK1、変調信号nCK1、復調信号CK2、復調信号nCK2の波形を示している。以下、変調信号CK1と復調信号CK2について説明する。
【0045】
変調信号CK1と復調信号CK2は、略同一のタイミングで論理レベルの切り替えが開始される。変調信号CK1は、時刻t1に論理レベルの切り替えが開始された直後に「L」から「H]へ切り替わっている。一方、変調信号CK2は、時刻t1に論理レベルの切り替えが開始されてから時間Δt1が経過した後で論理レベルが「H」の状態で安定している。なお、変調信号nCK1と復調信号nCK2の動作は、変調信号CK1と変調信号CK2の論理レベルを逆にしただけなので、説明を省略する。
【0046】
図2から分かるように、変調回路MODになまりの無い矩形波である変調信号CK1および変調信号nCK1が入力される一方、復調回路DEMODには第1の被変調信号Vmod1と第2の被変調信号Vmod2との周波数成分の違いに対応する波形をもった、なまりのある復調信号CK2および復調信号nCK2が入力される点が従来のチョッパスタビライズドアンプと異なる。
【0047】
以下、図3を用いて、第1の実施形態におけるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1を用いることにより、グリッチングの発生を従来例に比較して低減しつつ、入力信号を増幅することができる理由について説明する。図3は、チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1の各ノードにおける電圧信号を示している。説明を簡単にするため、図3における各ノードの電圧は、全差動アンプである演算増幅回路AMPの一方のチャネル(例えば、入力端子INP−演算増幅回路AMPの非反転入力端子−演算増幅回路AMPの非反転出力端子−出力端子OUTPで結ばれる系)のみを代表して表示している。他方のチャネルは、代表して表示されているチャネルの信号を上下に反転したものとして考えればよい。
【0048】
また、図3(a)と図13(a)の波形は同じであり、図3(b)と図13(b)の波形は同じであり、図3(c)と図13(c)の波形は同じであり、図3(d)と図13(d)の波形は同じであるため、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)については説明を省略する。
【0049】
図3(e)は、復調回路DEMODに入力される復調信号CK2の波形を示している。変調信号CK1との違いは、波形になまりのある点である。既に説明した通り、図3(d)に記載されている第2の被変調信号Vmod2は、なまりのある波形となっている。したがって、復調信号CK2に生じるなまりの程度と、第2の被変調信号Vmod2に生じるなまりの程度が略同一であれば、グリッチングは実質的に無視できる程度まで抑えられることになる。このようにして得られる出力信号OUT(t)を図3(f)に示す。
【0050】
なお、図1には記載されていないが、復調信号CK2および復調信号nCK2の周波数の奇数倍となる周波数を有する信号に変調された入力換算ノイズを取り除くために出力側に設けられたローパスフィルタを通過した信号を図3(g)に示す。図からも分かるように、従来のチョッパスタビライズドアンプで問題となっていた高調波歪がほぼ取り除かれている。
【0051】
上述したように、第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1を用いることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングを抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。以下、第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成について、図4を用いて説明する。図4は、第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示している。図4において、図1に示す第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1と同一の部分には同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0053】
図4に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2が第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1と異なる点は、スイッチ部S1〜S4、スイッチ部S1’〜S4’がそれぞれ、NMOSトランジスタM1〜M4、NMOSトランジスタM1’〜M4’に具体的に置き換えられている点と、変調復調信号生成部MOD_DEMの内部ブロック構成が具体的に記載されている点である。
【0054】
変調復調信号生成部MOD_DEMは、変調信号CK1および変調信号nCK1を生成する変調信号生成部MOD_MEANと、変調信号CK1および変調信号nCK1が入力され、復調信号CK2および復調信号nCK2を出力するローパスフィルタLPとで構成されている。チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を構成する演算増幅回路AMPと、負荷容量CLPおよび負荷容量CLMは一種のローパスフィルタを形成し、そのカットオフ周波数はfcで与えられる。したがって、ローパスフィルタLPのカットオフ周波数の値もfcとなるように設定することによって、第2の被変調信号Vmod2に生じるなまりと、復調信号CK2および復調信号nCK2に生じるなまりの程度を略同一にすることができる。
【0055】
上述したように、第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を用いることによって、演算増幅回路が有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して出力信号に発生するグリッチングを抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。また、第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を用いることによって、変調信号CK1および復調信号CK2の基準となる信号と、変調信号nCK1および復調信号nCK2の基準となる信号とを共通化することができるため、精度の高い変調信号および復調信号を生成することができる。すなわち、出力信号に発生するグリッチングを効果的に抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0056】
以下、第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を構成するローパスフィルタLPの具体的な構成を、図5を用いて説明する。図5は、ローパスフィルタLPの具体的な構成を示している。ローパスフィルタLPは、抵抗器RDと、コンデンサCDと、抵抗器nRDと、コンデンサnCDとで構成されている。
【0057】
抵抗器RDの第一端子は変調信号CK1の配線に接続され、第二端子は復調信号CK2の配線に接続されている。コンデンサCDの第一端子は抵抗器RDの第二端子に接続され、第二端子はグラウンドに接続されている。抵抗器nRDの第一端子は変調信号nCK1の配線に接続され、第二端子は復調信号nCK2の配線に接続されている。コンデンサCDの第一端子は抵抗器nRDの第二端子に接続され、第二端子はグラウンドに接続されている。
【0058】
抵抗器RDの抵抗値RdとコンデンサCDの容量値Cdの積は、演算増幅回路AMPのトランスコンダクタンスgmと演算増幅回路AMPの負荷容量CLPまたは負荷容量CLMの積と略同一になるように設定されている。また、抵抗器nRDの抵抗値nRdとコンデンサnCDの容量値nCdの積は、演算増幅回路AMPのトランスコンダクタンスの逆数1/gmと演算増幅回路AMPの負荷容量CLPまたは負荷容量CLMの積と略同一になるように設定されている。
【0059】
既に説明した通り、演算増幅回路AMPは有限の周波数特性を有するが、演算増幅回路AMPがトランスコンダクタンスアンプである場合、そのカットオフ周波数fc1は以下の(1)式で与えられる。
【0060】
【数1】

【0061】
すなわち、演算増幅回路AMPではカットオフ周波数fc1よりも高周波となる成分はアンプのローパス特性により減衰してしまい、これが第2の被変調信号Vmod2のなまりの原因となっている。一方、抵抗器RDとコンデンサCDは、カットオフ周波数fc2が以下の(2)式で表されるローパスフィルタを形成する。
【0062】
【数2】

【0063】
既に説明した通り、抵抗器RDの抵抗値RdとコンデンサCDの容量値Cdの積は、演算増幅回路AMPのトランスコンダクタンスの逆数1/gmと演算増幅回路AMPの負荷容量CLPまたは負荷容量CLMの積と略同一になるように設定されているため、fc1=fc2が成立する。したがって、変調信号CK1を構成する高周波信号において、カットオフ周波数fc1よりも高周波側にある成分は減衰して、波形になまりが生じる。ここで、fc1=fc2が成立するため、第2の被変調信号Vmod2に生じるなまりと、復調信号CK2および復調信号nCK2に生じるなまりの程度を略同一にすることができる。
【0064】
上述したように、第2の実施形態よるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を用いることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングを抑制し、特に演算増幅回路AMPが有限の周波数特性を有することによって出力信号に発生するグリッチングをより効果的に抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。以下、第3の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成について、図6を用いて説明する。図6は、図4に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を構成するローパスフィルタLPの具体的な構成を示している。
【0066】
ローパスフィルタLPは、非反転入力端子が変調信号CK1の配線に接続され、反転入力端子が変調信号nCK1の配線に接続され、反転出力端子が復調信号nCK2の配線に接続され、非反転出力端子が変調信号CK2の配線に接続された演算増幅回路AMP’で構成されている。
【0067】
ローパスフィルタとして用いられる演算増幅回路AMP’の特性は演算増幅回路AMPの特性と同一であることが望ましい。こうすることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して発生する被変調信号Vmod2のなまりと、復調信号CK2に生じるなまりの程度を略同一にすることができる。
【0068】
上述したように、第3の実施形態よるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2を用いることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングを抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0069】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。以下、第4の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成について、図7を用いて説明する。図7は、第4の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成を示している。図7において、図4に示す第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2と同一の部分には同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0070】
図7に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3が第2の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP2と異なる点は、変調復調信号生成部MOD_DEMの内部回路構成である。変調復調信号生成部MOD_DEMは、変調信号CK1および変調信号nCK1を出力する変調信号生成部MOD_MEANと、復調信号CK2および復調信号nCK2を出力する復調信号生成部DEMOD_MEANとで構成されている。
【0071】
第4の実施形態においても、変調信号生成部MOD_MEANは、所定の周波数を有する矩形波である変調信号CK1および変調信号nCK1を生成し、復調信号生成部DEMOD_MEANは、第2の被変調信号Vmod2と第1の被変調信号Vmod1との周波数成分の違いに対応する波形を有する復調信号CK2および復調信号nCK2を出力する。
【0072】
チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3の動作は、第1の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP1の動作と同じである。したがって、チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3を用いることによって、演算増幅回路が有限の周波数特性およびスルーレートを有することに起因して出力信号に発生するグリッチングを抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0073】
以下、チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3を構成する変調信号生成部MOD_MEANおよび復調信号生成部DEMOD_MEANの具体的な回路構成について、図8を用いて説明する。図8は、変調信号生成部MOD_MEANおよび復調信号生成部DEMOD_MEANの具体的な回路構成を示している。
【0074】
変調信号生成部MOD_MEANは、入力端子CKIN1から入力された矩形波CKを反転して出力端子CKOUT1から変調信号CK1を出力するNOT回路NOT_D1と、入力端子nCKIN1から入力された矩形波nCKを反転して出力端子nCKOUT1から変調信号nCK1を出力するNOT回路NOT_D2とで構成されている。
【0075】
矩形波CKおよび矩形波nCKの源は図中には明記されていないが、チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3と同じチップ内に実装されている矩形波生成回路から供給されてもよいし、チップ外の矩形波生成装置から供給されてもよい。
【0076】
また、NOT回路NOT_D1は、ソースが電源端子に接続されゲートが入力端子CKIN1に接続されドレインが出力端子CKOUT1に接続されたPMOSトランジスタQ1と、ソースがグラウンドに接続されゲートが入力端子CKIN1に接続されドレインが出力端子CKOUT1に接続されたNMOSトランジスタQ2とで構成されている。なお、NOT回路NOT_D2の回路構成はNOT回路NOT_D1の回路構成と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
以下、NOT回路NOT_D1の動作について説明する。入力端子CKIN1に「H」の信号が入力された場合、PMOSトランジスタQ1はオフし、NMOSトランジスタQ2はオンする。したがって、出力端子CKOUT1からは「L」の信号が出力される。また、入力端子CKIN1に「L」の信号が入力された場合、PMOSトランジスタQ1はオンし、NMOSトランジスタQ2はオフする。したがって、出力端子CKOUT1からは「H」の信号が出力される。NOT回路NOT_D2の動作はNOT回路NOT_D1の動作と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
次に、復調信号生成部DEMOD_MEANについて説明する。復調信号生成部DEMOD_MEANは、入力端子CKIN2から入力された矩形波CKを反転して出力端子CKOUT2から変調信号CK2を出力するアナログNOT回路NOT_A1と、入力端子nCKIN2から入力された矩形波nCKを反転して出力端子nCKOUT2から変調信号nCK2を出力するアナログNOT回路NOT_A2とで構成されている。
【0079】
また、アナログNOT回路NOT_A1は、ソースが電源端子に接続されゲートが入力端子CKIN2に接続されたPMOSトランジスタQ3と、第一端子がPMOSトランジスタQ3のドレイン端子に接続され第二端子が出力端子CKOUT2に接続された電流源I1と、ソースがグラウンドに接続されゲートが入力端子CKIN2に接続されたNMOSトランジスタQ4と、第一端子が出力端子CKOUT2に接続され第二端子がNMOSトランジスタQ4のドレイン端子に接続された電流源I2と、第一端子が出力端子CKOUT2に接続され第二端子がグラウンドに接続された負荷容量CT1とで構成されている。なお、NOT回路NOT_A2の回路構成はNOT回路NOT_A1の回路構成と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
演算増幅回路AMPの立ち上がりスルーレートをSR+とした場合、電流源I1から流れ出る電流Cu1および負荷容量CT1の容量Ct1の値は、以下の(3)式のように設定されていることが望ましい。
SR+=Cu1/Ct1 ・・・(3)
【0081】
また、演算増幅回路AMPの立ち下がりスルーレートをSR−とした場合、電流源I2に流入する電流Cu2および負荷容量CT1の容量Ct1の値は、以下の(4)式のように設定されていることが望ましい。
SR−=Cu2/Ct1 ・・・(4)
【0082】
このようにCu1、Cu2、Ct1の値を設定することによって、演算増幅回路AMPが有限のスルーレートを有することに起因して発生する被変調信号Vmod2のなまりと、復調信号CK2に生じるなまりの程度を略同一にすることができる。
【0083】
上述したように、第4の実施形態よるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3を用いることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングを抑制し、特に演算増幅回路AMPが有限のスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングをより効果的に抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0084】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。以下、第5の実施形態によるチョッパスタビライズドアンプの構成について、図9を用いて説明する。図9は、図7に示すチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3を構成する変調信号生成部MOD_MEANおよび復調信号生成部DEMOD_MEANの具体的な構成を示している。第5の実施形態における変調信号生成部MOD_MEANの構成は、図8に示す変調信号生成部MOD_MEANの構成と同じであるため、同一の符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
【0085】
以下、復調信号生成部DEMOD_MEANについて説明する。復調信号生成部DEMOD_MEANは、入力端子CKIN2から入力された矩形波CKを反転して出力端子CKOUT2から変調信号CK2を出力するアナログNOT回路NOT_A1と、入力端子nCKIN2から入力された矩形波nCKを反転して出力端子nCKOUT2から変調信号nCK2を出力するアナログNOT回路NOT_A2とで構成されている。
【0086】
矩形波CKおよび矩形波nCKの源は図中には明記されていないが、チョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3と同じチップ内に実装されている矩形波生成回路から供給されてもよいし、チップ外の矩形波生成装置から供給されてもよい。なお、アナログNOT回路NOT_A2の回路構成および動作はアナログNOT回路NOT_A1の回路構成および動作と同じであるため、以下ではアナログNOT回路NOT_A1の説明のみを行う。
【0087】
アナログNOT回路NOT_A1は、ソースが電源端子に接続されゲートが入力端子CKIN2に接続されドレインが出力端子CKOUT2に接続されたPMOSトランジスタQ5と、ソースがグラウンドに接続されゲートが入力端子CKIN2に接続されドレインが出力端子CKOUT2に接続されたNMOSトランジスタQ6と、第一端子が出力端子CKOUT2に接続され第二端子がグラウンドに接続された負荷容量CT2とで構成されている。
【0088】
アナログNOT回路NOT_A1は、NOT回路NOT_D1の出力端子に負荷容量CT2が追加された構成であるので、入力信号の論理レベルが確定してから十分に長い時間が経過した後の出力信号の応答はNOT回路NOT_D1と同じである。しかしながら、出力端子に負荷容量CT2が追加された影響で、入力信号の論理レベルが確定した直後の応答特性はNOT回路NOT_D1と異なるため、この点を詳細に説明する。
【0089】
矩形波CKの論理レベルが「L」の場合、PMOSトランジスタQ5はオンし、復調信号CK2を「H」に変化させようとするが、PMOSトランジスタQ5は有限のオン抵抗RONQ5を有するため、出力される制御信号は、以下の(5)式で表されるカットオフ周波数fc3のローパスフィルタを通過した理想矩形波と同じ波形になる。
【0090】
【数3】

【0091】
矩形波CKの論理レベルが「H」の場合、NMOSトランジスタQ6はオンし、復調信号CK2を「L」に変化させようとするが、NMOSトランジスタQ6は有限のオン抵抗RONQ6を有するため、出力される制御信号は、以下の(6)式で表されるカットオフ周波数fc4のローパスフィルタを通過した理想矩形波と同じ波形になる。
【0092】
【数4】

【0093】
MOSトランジスタのオン抵抗Ronは以下の(7)式で与えられる。ただし、μはキャリアの移動度、Coxはゲート酸化膜の厚さ、Wはゲート幅、Lはゲート長、VGSはゲート−ドレイン間電圧、VTHはトランジスタの閾値電圧である。
【0094】
【数5】

【0095】
(7)式から、容量値Ct2とトランジスタのW/L比を適切に選ぶことによって、復調信号CK2のなまり具合を適切に調節することができる。したがって、演算増幅回路AMPが有限のスルーレートを有することに起因して発生する被変調信号Vmod2のなまりと、復調信号CK2に生じるなまりの程度を略同一にすることができる。
【0096】
なお、図には記載していないが、PMOSトランジスタQ5のドレイン端子およびNMOSトランジスタQ6のドレイン端子と、負荷容量CT2の第一端子と、復調信号CK2の配線が接続された場所とを、PMOSトランジスタQ5のドレイン端子およびNMOSトランジスタQ6のドレイン端子が接続されたノードと、負荷容量CT2の第一端子と、復調信号CK2の配線が接続された場所とに分けて切断し、その間に抵抗器を挿入しても同等の効果を得ることができる。
【0097】
上述したように、第5の実施形態よるチョッパスタビライズドアンプCHOP_AMP3を用いることによって、演算増幅回路AMPが有限の周波数特性およびスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングを抑制し、特に演算増幅回路AMPが有限のスルーレートを有することによって出力信号に発生するグリッチングをより効果的に抑制し、従来に比べて高調波歪の少ない出力信号を得ることができる。
【0098】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、変調回路MODおよび復調回路DEMODを構成する各スイッチ部はNMOSトランジスタであるとして説明を行ってきたが、PMOSトランジスタであっても構わないし、その他のアナログスイッチであっても構わない。
【符号の説明】
【0099】
CHOP_AMP,CHOP_AMP1,CHOP_AMP2,CHOP_AMP3・・・チョッパスタビライズドアンプ、INP,INM,CKIN1,nCKIN1,CKIN2,nCKIN2・・・入力端子、AMP,AMP’・・・演算増幅回路、MOD・・・変調回路、DEMOD・・・復調回路、CLP,CLM,CT1,CT2・・・負荷容量、OUTM,OUTP,CKOUT1,nCKOUT1,CKOUT2,nCKOUT2・・・出力端子、MOD_DEM・・・変調復調信号生成部、MOD_MEAN・・・変調信号生成部、DEMOD_MEAN・・・復調信号生成部、S1,S2,S3,S4,S1’,S2’,S3’,S4’・・・スイッチ部、M1,M2,M3,M4,M1’,M2’,M3’,M4’,Q2,Q4,Q6・・・NMOSトランジスタ、Q1,Q3,Q5・・・PMOSトランジスタ、NOT_D1,NOT_D2・・・NOT回路、NOT_A1,NOT_A2・・・アナログNOT回路、LP・・・ローパスフィルタ、RD,nRD・・・抵抗器、CD,nCD・・・コンデンサ、I1,I2・・・電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数を有する矩形波である変調信号を使って、入力信号をデジタル的に第1の被変調信号に変換する変調回路と、
前記第1の被変調信号を増幅して、第2の被変調信号に変換する演算増幅回路と、
前記第1の被変調信号と前記第2の被変調信号の周波数成分の違いに対応する波形をもった復調信号を使って、アナログ的に前記第2の被変調信号を出力信号に変換する復調回路と、
を有するチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項2】
前記変調回路と前記復調回路に接続され、前記変調信号を前記変調回路に供給し、前記変調信号に基づいて生成された前記復調信号を前記復調回路に供給する変調復調信号生成部をさらに有することを特徴とする請求項1に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項3】
前記変調復調信号生成部は、
矩形波を前記変調信号として出力する変調信号生成部と、
前記矩形波が入力され、前記矩形波の高周波成分のみを減衰させた信号を前記復調信号として出力するローパスフィルタと、
を有することを特徴とする請求項2に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項4】
前記ローパスフィルタのカットオフ周波数は前記演算増幅回路のカットオフ周波数と略一致することを特徴とする請求項3に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項5】
前記ローパスフィルタは、抵抗器とキャパシタを有することを特徴とする請求項4に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項6】
前記ローパスフィルタは、前記演算増幅回路と同一の特性を有する第2の演算増幅回路を有することを特徴とする請求項4に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項7】
前記変調復調信号生成部は、
矩形波を前記変調信号として出力する変調信号生成部と、
前記矩形波の高周波成分のみを減衰させた信号を前記復調信号として出力する復調信号生成部と、
を有することを特徴とする請求項2に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項8】
前記変調信号生成部はNOT回路であり、前記復調信号生成部は電流設定機能つきNOT回路であることを特徴とする請求項7に係るチョッパスタビライズドアンプ。
【請求項9】
前記変調信号生成部はNOT回路であり、前記復調信号生成部は前記変調信号生成部よりも負荷容量の大きなNOT回路であることを特徴とする請求項7に係るチョッパスタビライズドアンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−54766(P2012−54766A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195764(P2010−195764)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】