説明

チルトパネル及び記録装置

【課題】製品安全性の向上を図ると共に部品コスト及び組立コストを抑えることができるチルトパネル及び記録装置を提供する。
【解決手段】互いに異なる角度に設けられた複数のチルト歯41のいずれか一つとレバー50の先端部51とを係止させることで所定角度に変位自在な操作パネル20であって、係止位置と係止解除位置との間において先端部51を回動させるレバー50の回動軸52を軸支する軸受部32と、レバー50に一体で設けられて、軸受部32のエッジ部33をカバーするカバー部材60とを有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルトパネル及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に記録処理を実施する記録装置は、例えば記録ヘッドを備えてインクジェットによる記録処理を実施する形態や、感光体に静電潜像を形成し、トナー像を記録媒体に転写して記録処理を実施する形態等がある。
記録装置は、例えば下記特許文献1のように、所定の情報を表示する表示部や所定の情報を入力するボタン部を有する操作パネルを備えて、ユーザーが該操作パネルを操作することで記録処理に係る所望の設定や操作を行う。特許文献1に記載の操作パネルは、チルト機構を備えており、ユーザーが操作し易い任意の角度に変位させることが可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−81248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チルト機構の形態としては、特許文献1に記載のようにモータ等を用いて電動でパネルの角度を変位させる形態の他に、ラチェット機構等を用いて手動でパネルの角度を変位させる形態がある。この形態では、ユーザーがレバーを操作して、互いに異なる角度に設けられた複数のチルト歯のいずれか一つとレバーの先端部とを係止させることで、パネルの角度を変位させている。
ところで、このレバーの回動軸を軸支する軸受部は、部品コスト及び組立コストの関係でパネル本体と一体で成型される場合がある。しかし、この場合に、成型金型構造上、その継ぎ目の位置に軸受部が該当してしまうと、軸受部のエッジ部に角が立つ所謂シャープエッジになることがある。従来では、ユーザーがレバー操作時に、このエッジ部に触れないようにカバー部品を別途追加しているが、カバー部品の追加は、部品コスト及び組立コストが掛かるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、製品安全性の向上を図ると共に部品コスト及び組立コストを抑えることができるチルトパネル及び記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、互いに異なる角度に設けられた複数のチルト歯のいずれか一つとレバーの先端部とを係止させることで所定角度に変位自在なチルトパネルであって、上記係止させる位置と上記係止を解除する位置との間において上記先端部を回動させる上記レバーの回動軸を軸支する軸受部と、上記レバーに一体で設けられて、上記軸受部のエッジ部をカバーするカバー部材とを有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、軸受部のエッジ部をカバーするカバー部材をレバーと一体とすることで、エッジ部へのユーザーのアクセスを防止し、部品コスト及び組立コストを抑える。
【0007】
また、本発明においては、上記カバー部材は、上記エッジ部に隣接する上記回動軸の端部が上記エッジ部よりも拡径した形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、エッジ部に隣接する回動軸の端部を一回り大きく形成することで、ユーザーのアクセスをその形状に積極的に受けさせて、エッジ部へのユーザーのアクセスを防止する。
【0008】
また、本発明においては、上記カバー部材は、レバー本体から上記回動軸に沿って延在して上記エッジ部を囲う形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、カバー部材を回動軸に沿って延在してエッジ部を囲う形状とすることで、エッジ部へのユーザーのアクセスを防止する。
【0009】
また、本発明においては、上記カバー部材は、上記回動によりパネル本体と干渉する部位を欠切した形状を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、レバーと一体で回動するカバー部材の一部を欠切させてパネル本体との干渉を防止する。
【0010】
また、本発明においては、先に記載のチルトパネルを有する記録装置を採用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェットプリンターを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における操作パネルを右側面から視た構成図である。
【図3】本発明の実施形態における操作パネルの裏面の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における操作パネルの裏面の構成を示す分解図である。
【図5】図3における矢視A図である。
【図6】本発明の実施形態における操作パネルの作用を説明するための図である。
【図7】本発明の別実施形態における操作パネルの裏面の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るチルトパネル及び記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係るチルトパネルを有する記録装置として、操作パネルを有するインクジェット式プリンター(以下、インクジェットプリンターと称する)を例示する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態におけるインクジェットプリンター1を示す斜視図である。
インクジェットプリンター1は、記録用紙(記録媒体)をスタックするスタック部10と、ユーザーが所定の情報を入力する操作パネル20とを有する。
【0014】
スタック部10は、ハウジング2に形成された取出口3において、給紙トレイ11上に排紙トレイ12が設けられる構成となっている。給紙トレイ11は、記録用紙の取出方向下流側(装置手前側)に引き出し可能な構成となっている。
操作パネル20は、スタック部10の上部に設けられており、ハウジング2と同一面を形成する基準角度から所定の角度へと変位可能なチルト機構(後述)を備える。
【0015】
インクジェットプリンター1は、操作パネル20から指令が入力されると、給紙トレイ11にスタックされている記録用紙を一枚ずつピックアップして、ハウジング2内に配置された不図示の記録ヘッドを走査させ、記録用紙にインクを噴射し、文字や画像等の所望の情報を記録する記録処理を実施する。記録処理を経た記録用紙は、給紙トレイ11上に配置された排紙トレイ12上に排紙されてスタックされる。
【0016】
次に、図2を参照して、本実施形態の操作パネル20のチルト機構について説明する。
図2は、本発明の実施形態における操作パネル20を右側面から視た構成図である。
図に示すように、操作パネル20は、手動でパネルの角度を変位させるラチェット形態のチルト機構を有している。操作パネル20は、パネル本体30と、チルト歯ユニット40と、レバー50とを有する。操作パネル20は、チルト歯ユニット40のチルト歯41と、レバー50の先端部51とを係止させることで、所定角度に変位自在な構成となっている。
【0017】
パネル本体30の表面30aには、表示部及びボタン部が設けられる(図1参照)。パネル本体30は、その両側面から突出して設けられた回動軸31を有する。回動軸31は、ハウジング2に固定された軸受に軸支されており、パネル本体30は、この回動軸31を通る軸周りに変位自在な構成となっている。
チルト歯ユニット40は、パネル本体30の裏面30b側に配置されてパネル本体30と独立してハウジング2に固定されている。チルト歯ユニット40は、回動軸31を中心とした基準円に沿って設けられて互いに異なる角度に配置される複数のチルト歯41を有する。
【0018】
チルト歯41は、歯を傾けたラック形状となっており、上面41a側では、パネル本体30を時計回りに回動させる力が加わった時に、レバー50の先端部51が容易に乗り越えられるような傾斜となっており、一方の下面41b側では、パネル本体30を反時計回りに回動させる力が加わった時に、レバー50の先端部51の歯の乗り越えを防止するような傾斜となっている。
【0019】
レバー50は、パネル本体30の裏面30b側に配置されてパネル本体30と一体的に変位可能な構成となっている。レバー50は、その先端部51をチルト歯41のいずれか一つと係止させる係止位置と、該係止を解除する係止解除位置との間において回動させる回動軸52を有する。回動軸52は、パネル本体30の裏面30bに設けられた軸受部32に軸支されている。このレバー50は、先端部51が不図示のバネ部材によって裏面30bに向かって付勢されており、回動軸52を挟んで先端部51と逆側の取手部54をユーザーが操作することで、先端部51とチルト歯41との係止/係止解除が可能な構成となっている。
【0020】
次に、図3〜図6を参照して、本実施形態のレバー50の回動軸52及び回動軸52を軸支する軸受部32について説明する。
図3は、本発明の実施形態における操作パネル20の裏面の構成を示す斜視図である。
図4は、本発明の実施形態における操作パネル20の裏面の構成を示す分解図である。
図5は、図3における矢視A図である。
図6は、本発明の実施形態における操作パネル20の作用を説明するための図である。
【0021】
図3及び図4に示すように、レバー50の回動軸52は、対となった第1軸受部32A及び第2軸受部32Bに軸支される構成となっている。
第1軸受部32Aは、回動軸52の一端部を挟み込んで軸支する二股形状を有している。また、第2軸受部32Bは、回動軸52の他端部を抱え込んで軸支する袋形状を有している。回動軸52の一端部は、第1軸受部32Aに入り込むために幅が狭くなった胴部52aを有している。レバー50は、回動軸52の胴部52aと第1軸受部32Aとを位置合せして嵌め込んだ後、軸方向にスライドさせて回動軸52の他端部と第2軸受部32Bとを嵌め込むことで組み付けられる。
【0022】
この第1軸受部32A及び第2軸受部32Bは、パネル本体30と一体で成型されている。本実施形態では、成型金型の継ぎ目の位置に、第1軸受部32Aの側面32aが該当しており、側面32aと他の面32bとが接する縁に沿って、シャープエッジのエッジ部33が形成されている。
レバー50は、エッジ部33へのユーザーのアクセスを防止するカバー部材60を有する。カバー部材60は、レバー50のエッジ部33に隣接する回動軸52の端部に一体で成型されている。カバー部材60は、レバー50の組付け後には、側面32aに隣接して配置される。
【0023】
本実施形態のカバー部材60は、図5に示すように、エッジ部33に隣接する回動軸52の端部がエッジ部33よりも拡径した形状となっている。また、本実施形態では、レバー50と一体で回動するカバー部材60の一部を欠切させてパネル本体30との干渉を防止するべく、第1軸受部32Aのエッジ部33に隣接して、そのエッジ部33よりも一回り大きな鈍角円形状(略扇形状)となっている。このカバー部材60は、図6に示すように、エッジが立たないように成型されている。レバー50はパネル本体30と比べて部品の大きさが小さく、成型金型にカバー部材60の形状を追加したとしても、パネル本体30の大型の成型金型を変更するよりも金型製作コストを抑えることができる。
【0024】
図6に示すように、第1軸受部32Aのエッジ部33に対して、ユーザーが痛みを感じるのは、矢印Xで示す斜め方向(側面32aと他の面32bが交差する交差角度の半分の角度に沿った方向)からアクセスした場合である。なお、矢印Yで示す真上方向からアクセスした場合は、痛みを感じることはない。
カバー部材60は、矢印Xで示す斜め方向からのエッジ部33へのアクセスを遮断する位置まで拡径している。したがって、ユーザーの指がエッジ部33に対して痛みを感じる角度で近づいても、カバー部材60の鈍角形状に触れることしかできず、斜め方向からのシャープエッジへの接触が不可となる。すなわち、本実施形態では、エッジ部33に隣接する回動軸52の端部を一回り大きく形成することで、ユーザーのアクセスをその形状に積極的に受けさせて、エッジ部33へのユーザーのアクセスを防止する。また、本実施形態では、エッジ部33をカバーするカバー部材60を、エッジ部33に隣接する回動軸52に一体で設けることで、シャープエッジ対策のためだけに部品を追加することなく、エッジ部33をカバーすることができる。
【0025】
上述のように、本実施形態では、互いに異なる角度に設けられた複数のチルト歯41のいずれか一つとレバー50の先端部51とを係止させることで所定角度に変位自在な操作パネル20であって、係止位置と係止解除位置との間において先端部51を回動させるレバー50の回動軸52を軸支する軸受部32と、レバー50に一体で設けられて、軸受部32のエッジ部33をカバーするカバー部材60とを有するという構成を採用することによって、エッジ部33へのユーザーのアクセスを防止し、部品コスト及び組立コストを抑えることができる。
したがって、本実施形態によれば、製品安全性の向上を図ると共に部品コスト及び組立コストを抑えることができる操作パネル20及びそれを備えるインクジェットプリンター1が得られる。
【0026】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0027】
例えば、上述の実施形態においては、カバー部材60は、回動軸52を拡径した形状であると説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、図7に示す別実施形態のように、レバー50本体から回動軸52に沿って延在してエッジ部33を囲う断面視円弧形状(略瓦形状)であってもよい。
【0028】
また、例えば、上述の実施形態においては、軸受部32は、互いに形状の異なる第1軸受部32Aと第2軸受部32Bとで構成されると説明したが、カバー部材60の形状が回動軸52を拡径した形状であれば第2軸受部32Bの機能であるレバー50の軸方向のストッパーの代替となるため、複雑な金型が必要となる袋形状の第2軸受部32Bを、第2軸受部32Bに比べて成型が容易な第1軸受部32Aと同一の形状に変更することも可能である。
【0029】
また、例えば、上述の実施形態においては、記録装置がインクジェットプリンター1である場合を例にして説明したが、インクジェットプリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…インクジェットプリンター(記録装置)、20…操作パネル(チルトパネル)、30…パネル本体、32…軸受部、32A…第1軸受部、32B…第2軸受部、32a…側面、33…エッジ部、40…チルト歯ユニット、41…チルト歯、50…レバー、51…先端部、52…回動軸、60…カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる角度に設けられた複数のチルト歯のいずれか一つとレバーの先端部とを係止させることで所定角度に変位自在なチルトパネルであって、
前記係止させる位置と前記係止を解除する位置との間において前記先端部を回動させる前記レバーの回動軸を軸支する軸受部と、
前記レバーに一体で設けられて、前記軸受部のエッジ部をカバーするカバー部材とを有することを特徴とするチルトパネル。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記エッジ部に隣接する前記回動軸の端部が前記エッジ部よりも拡径した形状を有することを特徴とする請求項1に記載のチルトパネル。
【請求項3】
前記カバー部材は、レバー本体から前記回動軸に沿って延在して前記エッジ部を囲う形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載のチルトパネル。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記回動によりパネル本体と干渉する部位を欠切した形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のチルトパネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のチルトパネルを有することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102949(P2011−102949A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258624(P2009−258624)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】