説明

テトラヒドロピロロピリジン、テトラヒドロピラゾロピリジン、テトラヒドロイミダゾピリジンおよびテトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体およびそれらの使用

本発明は、新規テトラヒドロピロロピリジン、テトラヒドロピラゾロピリジン、テトラヒドロイミダゾピリジンおよびテトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体、それらの製造方法、障害の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに障害、特に血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規テトラヒドロピロロピリジン、テトラヒドロピラゾロピリジン、テトラヒドロイミダゾピリジンおよびテトラヒドロトリアゾロピリジン誘導体、それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のためのそれらの使用、並びに疾患、特に血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、血管壁の欠損を迅速かつ確実に「封止」するのを助ける生物の保護メカニズムである。かくして、血液の損失を回避または最小に維持できる。血管損傷後の止血は主に凝血系により実行され、そこでは血漿タンパク質の複雑な反応の酵素的カスケードが誘起される。多数の血液凝固因子がこの過程に関与し、それらの因子の各々は、活性化されると、各々の次の不活性な前駆体をその活性形態に変換する。カスケードの終わりでは、可溶性フィブリノーゲンの不溶性フィブリンへの変換に至り、血餅の形成をもたらす。血液凝固では、伝統的に、共通の反応経路で終わる内因性と外因性のシステムは区別されている。ここで、酵素前駆体のX因子から形成されるXa因子は、この2つの凝血経路を連結するので、鍵となる役割を果たす。活性化されたセリンプロテアーゼXaは、プロトロンビンをトロンビンに切断する。生じるトロンビンは、次いで、フィブリノーゲンをフィブリンに切断する。続くフィブリン単量体のクロスリンクは、血餅の形成を、従って止血を引き起こす。加えて、トロンビンは、同様に止血にかなり貢献する血小板凝集の強力なエフェクターである。
【0003】
止血は、複雑な調節メカニズムに従う。凝血系の制御されない活性化または活性化過程の阻害の欠陥は、血管(動脈、静脈、リンパ管)または心腔における局所的な血栓または塞栓の形成を引き起こし得る。これは、深刻な血栓塞栓性障害を導き得る。加えて、消費性凝固障害の場合、過凝固状態は、汎発性の血管内凝血を−全身的に−もたらし得る。血栓塞栓性の合併症は、さらに、微小血管障害性の溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環、および心臓代用弁(prosthetic heart valves)とも関連して起こる。
【0004】
血栓塞栓性障害は、最も工業化された国々における最も頻繁な罹患と死亡の原因である [Heart Disease: A Textbook of Cardiovascular Medicine, Eugene Braunwald, 5th edition, 1997, W.B. Saunders Company, Philadelphia]。
【0005】
先行技術から知られている抗凝血剤、即ち、血液凝固を阻害または予防する物質は、様々な、しばしば深刻な、欠点を有する。従って、血栓塞栓性障害の有効な処置方法または予防は、実際のところ非常に困難かつ不満足なものである。
【0006】
血栓塞栓性障害の治療および予防では、ヘパリンが最初に使用され、非経腸で、または皮下に投与される。この頃は、より好適な薬物動態学的特性のために、低分子量ヘパリンがますます好まれている;しかしながら、低分子量ヘパリンを用いても、ヘパリン治療に伴う後述する既知の欠点を回避するのは不可能である。このように、ヘパリンは、経口投与されると効果がなく、比較的短い半減期である。ヘパリンは血液凝固カスケードの複数の因子を同時に阻害するので、作用は非選択的である。さらに、高い出血のリスクがある;特に、脳出血および消化管での出血が起こり得、それは、血小板減少、薬物誘導脱毛症または骨粗鬆症をもたらし得る [Pschyrembel, Klinisches Woerterbuch, 257th edition, 1994, Walter de Gruyter Verlag, page 610, entry "Heparin"; Roempp Lexikon Chemie, Version 1.5, 1998, Georg Thieme Verlag Stuttgart, entry "Heparin"]。
【0007】
第2のクラスの抗凝血剤は、ビタミンKアンタゴニストである。これらには、例えば1,3−インダンジオン類、並びに、ことさらに、肝臓におけるある種のビタミンK依存性凝血因子の様々な生成物の合成を非選択的に阻害する、ワーファリン、フェノプロクモン(phenprocoumon)、ジクマロールおよび他のクマリン誘導体などの化合物が含まれる。しかしながら、作用メカニズムのために、作用の開始は非常に遅い(作用開始までの潜時36ないし48時間)。この化合物は経口投与できる;しかしながら、出血のリスクが高く治療係数が狭いために、時間のかかる患者の個別の調整と監視が必要である。[J. Hirsh, J. Dalen, D.R. Anderson et al., "Oral anticoagulants: Mechanism of action, clinical effectiveness, and optimal therapeutic range" Chest 2001, 119, 8S-21S; J. Ansell, J. Hirsh, J. Dalen et al., "Managing oral anticoagulant therapy" Chest 2001, 119, 22S-38S; P.S. Wells, A.M. Holbrook, N.R. Crowther et al., "Interactions of warfarin with drugs and food" Ann. Intern. Med. 1994, 121, 676-683]。
【0008】
最近、血栓塞栓性障害の処置および予防のための新規治療アプローチが記載された。この新規治療アプローチのねらいは、Xa因子の阻害である。血液凝固カスケードにおいてXa因子が果たす中心的役割のために、Xa因子は、抗凝血剤の最も重要な標的の1つである [J. Hauptmann, J. Stuerzebecher, Thrombosis Research 1999, 93, 203; S.A.V. Raghavan, M. Dikshit, "Recent advances in the status and targets of antithrombotic agents" Drugs Fut. 2002, 27, 669-683; H.A. Wieland, V. Laux, D. Kozian, M. Lorenz, "Approaches in anticoagulation: Rationales for target positioning" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 264-271; U.J. Ries, W. Wienen, "Serine proteases as targets for antithrombotic therapy" Drugs Fut. 2003, 28, 355-370; L.-A. Linkins, J.I. Weitz, "New anticoagulant therapy" Annu. Rev. Med. 2005, 56, 63-77 ; A. Casimiro-Garcia et al., "Progress in the discovery of Factor Xa inhibitors" Expert Opin. Ther. Patents 2006, 15, 119-145]。
【0009】
動物モデルで、様々なペプチド性および非ペプチド性化合物がXa因子阻害剤として有効であることが示された。既に、多数の直接的Xa因子阻害剤が知られている [J.M. Walenga, W.P. Jeske, D. Hoppensteadt, J. Fareed, "Factor Xa Inhibitors: Today and beyond" Curr. Opin. Investig. Drugs 2003, 4, 272-281; J. Ruef, H.A. Katus, "New antithrombotic drugs on the horizon" Expert Opin. Investig. Drugs 2003, 12, 781-797; M.L. Quan, J.M. Smallheer, "The race to an orally active Factor Xa inhibitor: Recent advances" Curr. Opin. Drug Discovery & Development 2004, 7, 460-469]。非ペプチド性低分子量Xa因子阻害剤も、例えば、WO03/026652およびWO03/049681に記載されている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、ヒトおよび動物の障害、特に血栓塞栓性障害を制御するための、匹敵するか改善された活性およびより良好な水性溶液中での溶解性を有する新規の代替化合物を提供することである。
【0011】
本発明は、式
【化1】

[式中、
nは、1、2または3の数を表し、
Xは、NまたはCHを表し、
Yは、NまたはCRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、アミノ、アミノメチル、アミノエチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルコキシエチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−アルキルアミノメチル、C−C−アルキルアミノエチル、C−C−シクロアルキル、ヒドロキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルメチル、ヒドロキシカルボニルエチル、アミノカルボニル、アミノカルボニルメチル、アミノカルボニルエチル、C−C−アルコキシカルボニル、C−Cアルコキシカルボニルメチル、C−C−アルコキシカルボニルエチル、C−C−アルキルカルボニルオキシ、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニルメチル、C−C−アルキルアミノカルボニルエチル、C−C−アルキルカルボニルアミノ、C−C−アルキルカルボニルアミノメチル、C−C−アルキルカルボニルアミノエチル、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノ、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノメチル、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノエチル、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、C−C−アルキルスルホニルまたはテトラゾリルを表す}、
は、水素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルキルカルボニル、C−C−シクロアルキルカルボニル、フェニルカルボニル、4員ないし7員の複素環カルボニルまたは5員または6員のヘテロアリールカルボニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
は、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルまたはピリダジニルを表す
{ここで、フェニルは、置換基Rおよび置換基Rにより置換されており
(ここで、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、アミノ、エチニル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−シクロアルキル、C−C−シクロアルキルオキシ、アミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、アミノスルホニルまたはメチルカルボニルアミノスルホニルを表し、
そして、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシまたはC−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルオキシを表す)、
そして、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルは、置換基Rおよび/または置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより置換されている
(ここで、Rは、環中の窒素原子に隣接していない炭素原子に結合しており、水素、フッ素、塩素、シアノ、アミノ、エチニル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルオキシを表し、
そして、Rは、環中の窒素原子に隣接している炭素原子に結合しており、水素、アミノ、エチニル、C−C−アルキル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルアミノを表す)}]
の化合物、並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物を提供する。
【0012】
本発明による化合物は、式(I)の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、式(I)に包含される後述する式の化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物、並びに、式(I)に包含される実施態様として後述する化合物およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物(後述する式(I)に含まれる化合物が、既に塩、溶媒和物および塩の溶媒和物でない場合に)である。
【0013】
本発明による化合物は、それらの構造によって、立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在できる。従って、本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性的に均一な構成分を既知方法で単離できる。
本発明による化合物が互変異性体で存在できる場合、本発明は、全ての互変異性体を含む。
【0014】
本発明に関して、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。本発明はまた、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含む。
【0015】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0016】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩、例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)、および、アンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0017】
本発明に関して、溶媒和物は、固体または液体状態で溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態である。水和物は、配位が水とのものである、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して、好ましい溶媒和物は水和物である。
【0018】
さらに、本発明はまた、本発明による化合物のプロドラッグも含む。用語「プロドラッグ」は、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらが体内に滞在する時間中に、本発明による化合物に(例えば代謝的または加水分解的に)変換される化合物を含む。
【0019】
本発明に関して、断りのない限り、置換基は、以下の意味を有する:
アルキル自体、並びに、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノスルホニルおよびアルキルスルホニル中の「アルコ(alk)」および「アルキル」は、一般的に1個ないし4個、好ましくは1個または2個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカル、例えば、そして好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびtert−ブチルを表す。
【0020】
例えば、そして好ましくは、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびtert−ブトキシを表す。
【0021】
アルキルアミノは、1個または2個のアルキル置換基(相互に独立して選択される)を有するアルキルアミノラジカル、例えば、そして好ましくは、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、tert−ブチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチル−N−メチルアミノ、N−メチル−N−n−プロピルアミノ、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノおよびN−tert−ブチル−N−メチルアミノを表す。例えば、C−C−アルキルアミノは、1個ないし3個の炭素原子を有するモノアルキルアミノラジカルを表すか、または、アルキル置換基毎に各場合で1個ないし3個の炭素原子を有するジアルキルアミノラジカルを表す。
【0022】
例えば、そして好ましくは、アルキルカルボニルは、メチルカルボニル、エチルカルボニル、n−プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニルおよびtert−ブチルカルボニルを表す。
【0023】
例えば、そして好ましくは、アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニルを表す。
【0024】
例えば、そして好ましくは、アルキルカルボニルオキシは、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n−プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシおよびtert−ブチルカルボニルオキシを表す。
【0025】
アルキルアミノカルボニルは、1個または2個のアルキル置換基(相互に独立して選択される)を有するアルキルアミノカルボニルラジカル、例えば、そして好ましくは、メチルアミノカルボニル、エチルアミノカルボニル、n−プロピルアミノカルボニル、イソプロピルアミノカルボニル、tert−ブチルアミノカルボニル、N,N−ジメチルアミノカルボニル、N,N−ジエチルアミノカルボニル、N−エチル−N−メチルアミノカルボニル、N−メチル−N−n−プロピルアミノカルボニル、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノカルボニルおよびN−tert−ブチル−N−メチルアミノカルボニルを表す。例えば、C−C−アルキルアミノカルボニルは、1個ないし3個の炭素原子を有するモノアルキルアミノカルボニルラジカルを表すか、または、アルキル置換基毎に各場合で1個ないし3個の炭素原子を有するジアルキルアミノカルボニルラジカルを表す。
【0026】
例えば、そして好ましくは、アルキルカルボニルアミノは、メチルカルボニルアミノ、エチルカルボニルアミノ、n−プロピルカルボニルアミノ、イソプロピルカルボニルアミノおよびtert−ブチルカルボニルアミノを表す。
【0027】
アルキルアミノスルホニルは、1個または2個のアルキル置換基(相互に独立して選択される)を有するアルキルアミノスルホニルラジカル、例えば、そして好ましくは、メチルアミノスルホニル、エチルアミノスルホニル、n−プロピルアミノスルホニル、イソプロピルアミノスルホニル、tert−ブチルアミノスルホニル、N,N−ジメチルアミノスルホニル、N,N−ジエチルアミノスルホニル、N−エチル−N−メチルアミノスルホニル、N−メチル−N−n−プロピルアミノスルホニル、N−イソプロピル−N−n−プロピルアミノスルホニルおよびN−tert−ブチル−N−メチルアミノスルホニルを表す。C−C−アルキルアミノスルホニルは、例えば、1個ないし3個の炭素原子を有するモノアルキルアミノスルホニルラジカルを表すか、または、アルキル置換基毎に各場合で1個ないし3個の炭素原子を有するジアルキルアミノスルホニルラジカルを表す。
【0028】
例えば、そして好ましくは、アルキルスルホニルは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n−プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニルおよびtert−ブチルスルホニルを表す。
【0029】
シクロアルキルは、一般的に3個ないし6個の炭素原子、好ましくは3個ないし5個の炭素原子を有するシクロアルキル基、例えば、そして好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを表す。
【0030】
複素環は、一般的に4個ないし7個の環原子を有し、N、O、S、SO、SOからなる群から3個まで、好ましくは2個までのヘテロ原子および/またはヘテロ基を有する単環式複素環式ラジカルを表す。複素環ラジカルは、飽和または部分不飽和であり得る。好ましいのは、O、NおよびSからなる群から2個までのヘテロ原子を有する5員ないし7員の単環式飽和複素環ラジカル、例えば、そして好ましくは、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペラジニル、モルホリニルおよびペルヒドロアゼピニルである。
【0031】
ヘテロアリールは、5個または6個の環原子を有し、S、OおよびNからなる群から4個までのヘテロ原子を有する芳香族性単環式ラジカル、例えば、そして好ましくは、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニルおよびピラジニルを表す。
【0032】
本発明による化合物中のラジカルが置換されている場合、そのラジカルは、断りのない限り、一置換または多置換されていてよい。本発明に関して、1回以上出てくる全てのラジカルの意味は、相互に独立している。1個、2個または3個の同一または異なる置換基による置換が好ましい。1個の置換基による置換がことさら特に好ましい。
【0033】
好ましいのは、式中、
nが、1、2または3の数を表し、
Xが、NまたはCHを表し、
Yが、NまたはCRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−アルキルアミノメチル、C−C−シクロアルキル、ヒドロキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルメチル、アミノカルボニル、アミノカルボニルメチル、C−C−アルコキシカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルメチル、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニルメチル、C−C−アルキルカルボニルアミノ、C−C−アルキルカルボニルアミノメチル、C−C−アルキルカルボニル−(C−C−アルキル)アミノ、C−C−アルキルカルボニル−(C−C−アルキル)アミノメチル、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、C−C−アルキルスルホニルまたはテトラゾリルを表す}、
が、水素、シアノ、ヒドロキシまたはC−C−アルキルを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、シクロプロピル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
が、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルまたはピリダジニルを表す
{ここで、フェニルは、置換基Rおよび置換基Rにより置換されており
(ここで、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、エチニル、アミノメチル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アミノカルボニル、アミノスルホニルまたはメチルカルボニルアミノスルホニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表す)、
そして、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルは、置換基Rおよび/または置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより置換されている
(ここで、Rは、環中の窒素原子に隣接していない炭素原子に結合しており、水素、フッ素、塩素、シアノ、エチニル、アミノメチル、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表し、
は、環中の窒素原子に隣接している炭素原子に結合しており、水素、アミノ、エチニル、メチル、エチル、メチルアミノまたはジメチルアミノを表し、
そして、Rは、存在するならば、フェニル環の結合点に対してパラ位に結合しており、Rは、存在するならば、メタ位に結合しているか、
または、Rは、存在するならば、フェニル環の結合点に対してメタ位に結合しており、Rは、存在するならば、パラ位に結合している)}、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0034】
好ましいのは、また、式中、
nが、1または2の数を表し、
Xが、Nを表し、
Yが、CRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、メトキシ、メトキシメチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニルまたはテトラゾリルを表す}、
が、水素を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、n−プロピル、メトキシ、エトキシまたはメトキシメチルを表し、
が、4−メトキシフェニル、3−クロロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−メチルフェニル、3−メチル−4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、3−アミノメチルフェニル、3−アミノメチル−4−フルオロフェニル、3−アミノカルボニルフェニル、5−クロロピリジン−2−イル、5−メチルピリジン−2−イル、5−エチルピリジン−2−イル、5−メトキシピリジン−2−イル、5−クロロピリミジン−2−イル、5−メチルピリミジン−2−イル、5−エチルピリミジン−2−イル、5−メトキシピリミジン−2−イル、6−メチルピリジン−3−イル、6−エチルピリジン−3−イル、6−メチルピリダジン−3−イルまたは6−エチルピリダジン−3−イルを表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0035】
好ましいのは、また、式中、
nが、1の数を表し、
Xが、Nを表し、
Yが、CRを表し
{ここで、Rは、アミノカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを表す}、
が、水素を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、メチルまたはメトキシを表し、
が、4−メトキシフェニルを表す、
式(I)の化合物並びにそれらの塩、それらの溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物である。
【0036】
好ましいのは、また、式中、nが1の数を表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、XがNを表し、YがCRを表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、XがNを表し、YがCRを表し、Rがアミノカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが水素を表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが水素を表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが、水素、フッ素、塩素、シアノ、メチルまたはメトキシを表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが水素を表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、RおよびRが水素を表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが、4−メトキシフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニルまたは4−エチルフェニルを表す、式(I)の化合物である。
好ましいのは、また、式中、Rが4−メトキシフェニルを表す、式(I)の化合物である。
【0037】
ラジカルの各々の組合せまたは好ましい組合せで与えられる個々のラジカルの定義は、特に与えられるラジカルの組合せから独立して、いかなる他の組合せのラジカルの定義によっても置き換えられる。
上述の好ましい範囲の2つまたはそれ以上の組合せがことさら特に好ましい。
【0038】
本発明は、さらに、式(I)の化合物、またはそれらの塩、それらの溶媒和物もしくはそれらの塩の溶媒和物の製造方法を提供し、その方法では、
[A]式
【化2】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を、不活性溶媒中、酸の存在下、臭化シアンと反応させ、Rが水素を表す式(I)の化合物を得るか、
または、
【0039】
[B]式
【化3】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、上記の意味を有し、そして、
PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくはトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルを表す)
の化合物を、三段階の工程で、先ず不活性溶媒中で臭化シアンと、好ましくは塩基の存在下で反応させ、式
【化4】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、上記の意味を有し、そして、
PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくはトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルを表す)
の化合物を得、次いで、保護基PGの除去により、式
【化5】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物に変換し、第3段階で、式(V)の化合物を、不活性溶媒中、酸の存在下で環化し、Rが水素を表す式(I)の化合物を得るか、
または、
【0040】
[C]式(II)の化合物を、第1段階で、式
【化6】

(式中、Rは、C−C−アルキル、C−C−アルキルカルボニル、C−C−シクロアルキルカルボニル、フェニルカルボニル、4員ないし7員の複素環カルボニルまたは5員もしくは6員のヘテロアリールカルボニルを表す)
の化合物と反応させ、そして、第2段階で環化するか、
または、
[D]式(II)の化合物を、式
【化7】

(式中、Rは、シアノまたはC−C−アルキルを表し、そして、
Aは、脱離基、好ましくはフェノキシまたはメチルチオを表す)
の化合物と反応させるか、
または、
[E]Rが水素を表す式(I)の化合物を、ヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させ、Rがヒドロキシルを表す式(I)の化合物を得る。
【0041】
必要に応じて、Rが水素を表す式(I)の化合物を、適当な溶媒および/または塩基もしくは酸を用いて、それらの塩、それらの溶媒和物および/またはそれらの塩の溶媒和物に変換できる。
【0042】
それらの塩の遊離塩基は、例えば、塩基を添加したアセトニトリル/水グラジエントを使用する逆相カラムのクロマトグラフィーにより、特に、RP18 Phenomenex Luna C18(2) カラムおよびジエチルアミン塩基を使用することにより、または、それらの塩を有機溶媒に溶解し、重炭酸ナトリウムなどの塩基性の塩の水性溶液で抽出することにより、得ることができる。
【0043】
本発明は、さらに、化合物の塩または化合物の塩の溶媒和物を、塩基を添加したクロマトグラフィーによりそれらの化合物に変換する、式(I)の化合物またはそれらの溶媒和物の製造方法を提供する。
【0044】
工程[A]による反応は、一般的に、不活性溶媒中、好ましくは−20℃ないし50℃の温度範囲で、大気圧で実施する。
不活性溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはアセトニトリルまたはこれらの溶媒の混合物である。
酸は、例えば、強い無機または有機酸、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である。
【0045】
工程[B]による第1段階の反応は、一般的に、不活性溶媒中、好ましくは−20℃ないし50℃の温度範囲で、大気圧で実施する。
不活性溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはアセトニトリル、または、これらの溶媒の混合物である。
【0046】
塩基は、例えば、無機塩基、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩または重炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムもしくは炭酸セシウム、または、重炭酸ナトリウムもしくは重炭酸カリウム、または、アルカリ金属水素化物、例えば水素化ナトリウムである。
【0047】
工程[B]による第2段階の、好ましいヒドロキシル保護基(PG)としてのトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルの除去は、一般的に、溶媒としてのテトラヒドロフラン中、好ましくはテトラ−n−ブチルアンモニウムフロリド(TBAF)を利用して、好ましくは0℃ないし40℃の温度範囲で、大気圧で実施する。
【0048】
工程[B]による第3段階の反応は、一般的に、不活性溶媒中、好ましくは−20℃ないし50℃の温度範囲で、大気圧で実施する。
不活性溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはアセトニトリル、またはこれらの溶媒の混合物である。
酸は、例えば、強い無機または有機酸、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である。
【0049】
工程[B]による第2および第3段階の反応は、特に好ましくは、酸に不安定なヒドロキシル保護基、例えば、トリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルを使用して、過剰の酸の存在下、ワンポット反応で、不活性溶媒中、好ましくは−20℃ないし50℃の温度範囲で、大気圧で、式(V)の化合物の中間体を単離せずに実施する。
【0050】
不活性溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンまたはアセトニトリル、またはこれらの溶媒の混合物である。
酸は、例えば、強い無機または有機酸、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である。
【0051】
工程[C]による第1段階の反応は、一般的に、文献から知られている方法と同様に、例えば、A. Hetenyi et al., J. Org. Chem. 2003, 68, 2175-2182; D. Douglass, J. Am. Chem. Soc. 1934, 56, 719; F.B. Dains et al., J. Am. Chem. Soc. 1925, 47, 1981-1989 または F.B. Dains et al., J. Am. Chem. Soc. 1922, 44, 2637-2643 に記載の通りに、実施する。
【0052】
工程[C]による第2段階の反応は、一般的に、文献から知られている方法と同様に、例えば、T. Shibanuma, M. Shiono, T. Mukaiyama, Chem. Lett. 1977, 575-576 に記載の通りに、実施する。
【0053】
工程[D]による反応は、一般的に、文献から知られている方法と同様に、例えば、N. Maezaki, A. Furusawa, S. Uchida, T. Tanaka, Tetrahedron 2001, 57, 9309-9316; G. Berecz, J. Reiter, G. Argay, A. Kalman, J. Heterocycl. Chem. 2002, 39, 319-326; R. Evers, M. Michalik, J. Prakt. Chem. 1991, 333, 699-710; R. Mohr, A. Buschauer, W. Schunack, Arch. Pharm. (Weinheim Ger.) 1988, 321, 221-227; P. J. Garratt et al., Tetrahedron 1989, 45, 829-834 または V.A. Vaillancourt et al., J. Med. Chem. 2001, 44, 1231-1248 に記載の通りに、実施する。
【0054】
工程[E]による反応は、一般的に、文献から知られている方法と同様に、例えば、G. Zinner, G. Nebel, Arch. Pharm. Ber. Dtsch. Ges. 1970, 303, 385-390 に記載の通りに、実施する。
【0055】
式(VI)および(VII)の化合物は、知られているか、または、適当な出発物質から、既知方法により合成できる。
式(II)の化合物は、知られているか、または、式(III)の化合物から、当業者に知られている条件下で保護基PGを除去することにより、製造できる。
【0056】
好ましいヒドロキシル保護基(PG)としてのトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルの除去は、一般的に、溶媒としてのテトラヒドロフラン中、好ましくは、テトラ−n−ブチルアンモニウムフロリド(TBAF)またはフッ化水素を利用して、好ましくは0℃ないし40℃の温度範囲で、大気圧で実施する。
【0057】
式(III)の化合物は、知られているか、または、式
【化8】

(式中、X、YおよびRは、上記の意味を有する)
の化合物を、式
【化9】

(式中、n、R、RおよびPGは、上記の意味を有する)
の化合物と、ウルマン反応条件下で反応させることにより製造できる。
【0058】
この反応は、一般的に、不活性溶媒中、銅(I)塩、塩基およびジアミン配位子を添加して、好ましくは60℃ないし溶媒の還流の温度範囲で、大気圧で実施する。
不活性溶媒は、例えば、非プロトン性溶媒、例えばトルエン、ジオキサン、テトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドである;好ましいのは、ジオキサンである。
銅(I)塩は、例えば、ヨウ化銅(I)、塩化銅(I)または酸化銅(I)である;好ましいのは、ヨウ化銅(I)である。
塩基は、例えば、リン酸カリウム、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムである;好ましいのは、リン酸カリウムである。
ジアミン配位子は、例えば、1,2−ジアミン類、例えば、N,N'−ジメチルエチレンジアミンである。
【0059】
式(VIII)および(IX)の化合物は、知られているか、または、適当な出発物質から、既知方法により合成できる。
【0060】
本発明による化合物の製造は、下記の合成スキームにより例示説明できる:
スキーム
【化10】

【0061】
本発明による化合物は、予想し得なかった有用な薬理活性スペクトルを有する。
従って、それらは、ヒトおよび動物における疾患の処置および/または予防のための医薬としての使用に適する。
本発明による化合物は、特に抗凝血剤として作用する、血液凝固因子Xaの選択的阻害剤である。
加えて、本発明による化合物は、好適な物理化学的特性、例えば、治療的適用に有利な、水および生理的媒体における良好な溶解性を有する。
本発明はさらに、障害、好ましくは血栓塞栓性障害および/または血栓塞栓性合併症の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
【0062】
本発明の目的上、「血栓塞栓性障害」には、特に、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)または非ST上昇型心筋梗塞(非STEMI)、安定狭心症、不安定狭心症、血管形成術または大動脈冠動脈バイパス術などの冠動脈介入後の再閉塞および再狭窄、末梢動脈閉塞疾患、肺栓塞症、深部静脈血栓および腎静脈血栓、一過性虚血発作および血栓性および血栓塞栓性卒中などの障害が含まれる。
【0063】
従って、これらの物質は、例えば心房細動などの急性、間欠性または持続性心不整脈を有する患者、および電気的除細動を受けている者、さらに、心臓弁障害を有するか、または人工心臓弁を有する患者における、心原性血栓塞栓症、例えば、脳虚血、卒中および全身性血栓塞栓症および虚血の予防および処置にも適する。加えて、本発明による化合物は、汎発性血管内凝固症候群(DIC)の処置に適する。
【0064】
血栓塞栓性合併症は、さらに、微小血管障害性溶血性貧血、血液透析などの体外血液循環において、そして心臓代用弁と関連して起こる。
【0065】
さらに、本発明による化合物は、アテローム硬化性血管障害および炎症障害、例えば運動器のリウマチ性障害の予防および/または処置にも、そして、それに加えて、アルツハイマー病の予防および/または処置にも適する。さらに、本発明による化合物は、腫瘍の成長および転移形成の阻害、微小血管障害、加齢に伴う黄斑変性症、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症および他の微小血管の障害、また、例えば、腫瘍患者における、特に大きい外科的介入または化学もしくは放射線治療を受けている患者における、静脈血栓塞栓症などの血栓塞栓性合併症の予防および処置にも使用できる。
【0066】
本発明による化合物は、さらに、エクスビボの凝血の防止、例えば、血液および血清製品の保存、カテーテルおよび他の医療器具および装置の清浄化/予処理、インビボまたはエクスビボで使用される医療器具および装置の合成表面(synthetic surface)の被覆、または、Xa因子を含む生物学的サンプルにも使用できる。
【0067】
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を使用する、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法を提供する。
【0068】
本発明はさらに、抗凝血的に有効な量の本発明による化合物を添加することを特徴とする、インビトロの、特に、保存血液またはXa因子を含む生物学的サンプルにおける、血液凝固を防止する方法を提供する。
【0069】
本発明はさらに、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる活性化合物を含む医薬を提供する。以下の化合物は、組合せに適する活性化合物として、例として、そして好ましく言及し得る:
・脂質低下剤、特にHMG−CoA(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A)リダクターゼ阻害剤;
・冠血管治療剤/血管拡張剤、特にACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤;AII(アンジオテンシンII)受容体アンタゴニスト;β−アドレナリン受容体アンタゴニスト;アルファ−1−アドレナリン受容体アンタゴニスト;利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;環状グアノシン一リン酸(cGMP)濃度の上昇を引き起こす物質、例えば、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤;
・プラスミノーゲン活性化剤(血栓溶解剤/線維素溶解剤)および血栓溶解/線維素溶解を高める化合物、例えば、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子の阻害剤(PAI阻害剤)またはトロンビン活性型繊維素溶解阻害因子の阻害剤(TAFI阻害剤);
・抗凝血剤;
・血小板凝集阻害性物質(血小板凝集阻害剤、栓球凝集阻害剤);
・フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(糖タンパク質IIb/IIIaアンタゴニスト);
・並びに抗不整脈薬。
【0070】
本発明は、さらに、少なくとも1種の本発明による化合物を、通常1種またはそれ以上の不活性、非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用を提供する。
【0071】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、それらは、適する方法で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜もしくは耳の経路で、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。
これらの投与経路のために、本発明による化合物を適する投与形で投与できる。
【0072】
経口投与に適するのは、先行技術で説明される通りに働き、本発明による化合物を迅速に、かつ/または、改変された形態で送達し、本発明による化合物を結晶および/または無定形および/または溶解形態で含むものであり、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、溶解が遅延されるか、または不溶であり、本発明による化合物の放出を制御する被覆を施された錠剤)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0073】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0074】
他の投与経路に適する例は、吸入用医薬形態(なかんずく、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬/液/スプレー;舌、舌下または頬側投与用の錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、眼または耳用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
好ましいのは、経口または非経腸投与、特に経口投与である。
【0075】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知の方法で行うことができる。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および香味および/または臭気の隠蔽剤が含まれる。
【0076】
一般に、非経腸投与で約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を達成するために有利であると明らかになった。経口投与の投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0077】
それにも拘わらず、必要に応じて、体重、投与経路、活性化合物に対する個体の応答、製剤の様式および投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0078】
下記の実施例により、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
以下の試験および実施例における百分率のデータは、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【実施例】
【0079】
A. 実施例
略号
【表1】

【0080】
LC−MSおよびHPLCの方法
方法1:MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:Waters Alliance 2795;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0081】
方法2:MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0082】
方法3:装置: HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Quattro LCZ;カラム:Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:208−400nm。
【0083】
方法4:装置:HPLC Agilent Series 1100 を備えた Micromass Platform LCZ;カラム:Thermo HyPURITY Aquastar 3μ 50 mm x 2.1 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→5.5分10%A;オーブン:50℃;流速:0.8ml/分;UV検出:210nm。
【0084】
方法5:装置:DAD 検出を備えた HP 1100;カラム:Kromasil 100 RP-18, 60 mm x 2.1 mm, 3.5 μm;移動相A:過塩素酸5ml(70%強度)/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→6.5分90%B→6.7分2%B→7.5分2%B;流速:0.75ml/分;カラム温度:30℃;UV検出:210nm。
【0085】
出発物質
実施例1A
エチル1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキシレート
【化11】

WO03/049681(実施例40−44)に記載の方法と同様に、表題化合物を製造する。
【0086】
実施例2A
N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−ヨードアニリン
【化12】

【0087】
段階a):2−[(4−ヨードフェニル)アミノ]エタノール
【化13】

アルゴン下、RTで、2−アミノエタノール500mg(8.2mmol)、1,4−ジヨードベンゼン5.40g(16.4mmol、2eq.)および1,2−エタンジオール1.83ml(32.7mmol、4eq.)を、無水イソプロパノール50ml中のリン酸カリウム6.95g(32.7mmol、4eq.)およびヨウ化銅(I)312mg(1.6mmol、0.2eq.)の懸濁液に添加する。反応混合物を80℃で17時間撹拌する。RTに冷却後、反応混合物を濾過し、残渣をイソプロパノールで洗浄する。合わせた濾液を減圧下で濃縮する。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:ジクロロメタン/メタノール200:1→50:1)により単離する。
収量:2.24g(純度86%、理論値の89%)
LC-MS (方法 4): Rt = 3.23 分;
MS (ESIpos): m/z = 264 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.31 (d, 2H), 6.43 (d, 2H), 5.74 (t, 1H), 4.68 (t, 1H), 3.52 (q, 2H), 3.05 (q, 2H).
【0088】
段階b):N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−ヨードアニリン
【化14】

アルゴン下、RTで、イミダゾール993mg(14.6mmol、2eq.)およびtert−ブチルジメチルシリルクロリド1.32g(8.7mmol、1.2eq.)を、テトラヒドロフラン50ml中の2−[(4−ヨードフェニル)アミノ]エタノール2.23g(純度86%、7.3mmol)の溶液に添加する。反応混合物をRTで18時間撹拌し、さらにtert−ブチルジメチルシリルクロリド549mg(3.6mmol、0.5eq.)を添加し、混合物をRTで2時間撹拌する。水/ジクロロメタンの添加および相分離の後、水相をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル200:1→100:1)により単離する。
収量:2.6g(純度96%、理論値の91%)
LC-MS (方法 3): Rt = 3.45 分;
MS (ESIpos): m/z = 378 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.29 (d, 2H), 6.41 (d, 2H), 5.72 (t, 1H), 3.66 (t, 2H), 3.09 (q, 2H), 0.82 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0089】
実施例
実施例1
6−[4−(2−イミノ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミドメタンスルホネート
【化15】

【0090】
段階a):エチル6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキシレート
【化16】

アルゴン下、RTで、2−N−(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)−4−ヨードアニリン(実施例2A)273mg(純度96%、0.70mmol、1eq.)、エチル1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキシレート(実施例1A)233mg(0.70mmol)およびN,N‘−ジメチルエチレンジアミン22μl(0.21mmol、0.3eq.)を、無水ジオキサン9ml中のリン酸カリウム295mg(1.39mmol、2eq.)およびヨウ化銅(I)26mg(0.14mmol、0.2eq.)の懸濁液に添加する。反応混合物を還流下で17時間撹拌する。RTに冷却後、Celite を通して反応混合物を濾過し、残渣をジオキサンで洗浄する。合わせた濾液を減圧下で濃縮する。表題化合物を分取RP−HPLC(CromSil C18、アセトニトリル/水グラジエント)により単離する。
収量:244mg(純度94%、理論値の58%)
LC-MS (方法 1): Rt = 3.14 分;
MS (ESIpos): m/z = 565 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.45 (d, 2H), 7.01 (d, 2H), 6.99 (d, 2H), 6.56 (d, 2H), 5.56 (t, 1H), 4.32 (q, 2H), 3.93 (t, 2H), 3.80 (s, 3H), 3.69 (t, 2H), 3.19-3.09 (m, 4H), 1.30 (t, 3H), 0.85 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0091】
段階b):6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボン酸
【化17】

RTで、水酸化リチウム20mg(0.81mmol、2eq.)を、テトラヒドロフラン/水(3:1)の混合物12ml中のエチル6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキシレート244mg(94%純度、0.41mmol)の溶液に添加する。反応混合物をRTで5時間撹拌し、水で希釈し、1N塩酸を使用してpHを2に調節する。酢酸エチルの添加および相分離の後、水相を酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をこれ以上精製せずに次の反応で使用する。
収量:220mg(純度70%、理論値の74%)
LC-MS (方法 2): Rt = 3.06 分;
MS (ESIpos): m/z = 537 [M+H]+.
【0092】
段階c):6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド
【化18】

アルゴン下、RTで、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N‘,N‘−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)106mg(0.28mmol、1.1eq.)、酢酸アンモニウム39mg(0.51mmol、2eq.)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン97μl(0.56mmol、2.2eq.)を、ジメチルホルムアミド10ml中の6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボン酸195mg(純度70%、0.25mmol)の溶液に添加する。反応混合物をRTで21時間撹拌し、減圧下で濃縮する。残渣を飽和塩化アンモニウム水溶液および酢酸エチルの混合物に取る。相分離後、水相を酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。表題化合物を分取RP−HPLC(CromSil C18、アセトニトリル/水グラジエント)により単離する。
収量:52mg(理論値の38%)
LC-MS (方法 3): Rt = 2.90 分;
MS (ESIpos): m/z = 536 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.68 (s, 1H), 7.47 (d, 2H), 7.39 (s, 1H), 7.02 (d, 2H), 6.98 (d, 2H), 6.55 (d, 2H), 5.54 (t, 1H), 3.91 (t, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.69 (t, 2H), 3.19-3.08 (m, 4H), 0.85 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0093】
段階d):6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)(シアノ)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド
【化19】

アルゴン下、RTで、重炭酸ナトリウム23mg(0.28mmol、3eq.)および臭化シアン溶液(3M、ジクロロメタン中、0.14mmol、1.5eq.)46μlを、テトラヒドロフラン2.9ml中の6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド51mg(0.09mmol)の溶液に添加する。反応混合物を40℃で4日間撹拌する。水/ジクロロメタンの添加および相分離の後、水相をジクロロメタンで2回抽出する。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮する。表題化合物を分取RP−HPLC(CromSil C18、アセトニトリル/水グラジエント)により単離する。
収量:37mg(理論値の72%)
LC-MS (方法 3): Rt = 2.75 分;
MS (ESIpos): m/z = 561 [M+H]+;
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 7.73 (s, 1H), 7.51 (d, 2H), 7.45 (s, 1H), 7.40 (d, 2H), 7.21 (d, 2H), 7.01 (d, 2H), 4.03 (t, 2H), 3.85 (s, 4H), 3.81 (s, 3H), 3.21 (t, 2H), 0.86 (s, 9H), 0.0 (s, 6H).
【0094】
段階e):6−[4−(2−イミノ−1,3−オキサゾリジン−3−イル)フェニル]−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミドメタンスルホネート
【化20】

RTで、メタンスルホン酸8μl(0.12mmol、2.1eq.)を、アセトニトリル2ml中の6−{4−[(2−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}エチル)(シアノ)アミノ]フェニル}−1−(4−メトキシフェニル)−7−オキソ−4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−3−カルボキサミド34mg(0.06mmol)の溶液に添加する。反応混合物をRTで20時間撹拌し、ジエチルエーテル2mlを添加する。形成される沈殿を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥する。
収量:14.4mg(理論値の46%)
HPLC (方法 5): Rt = 3.43 分;
MS (ESIpos): m/z = 447 [M+H]+ (遊離塩基);
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ = 9.60 (br. s, 1H), 8.90 (br. s, 1H), 7.74 (s, 1H), 7.59-7.51 (m, 4H), 7.50 (d, 2H), 7.44 (s, 1H), 7.00 (d, 2H), 4.84 (t, 2H), 4.25 (t, 2H), 4.08 (t, 2H), 3.80 (s, 3H), 3.23 (t, 2H), 2.28 (s, 3H).
【0095】
B. 薬理活性の評価
本発明による化合物は、特に凝血因子Xaの選択的阻害剤として作用し、プラスミンまたはトリプシンなどの他のセリンプロテアーゼを阻害しないか、または、顕著に高い濃度でのみ阻害する。
【0096】
「選択的」は、Xa因子阻害のIC50値が、他のセリンプロテアーゼ、特にプラスミンおよびトリプシンの阻害のIC50値と比較して、少なくとも100倍低い、凝血因子Xaの阻害剤である。ここで、選択性の試験方法に関して、下記の実施例B.a.1)およびB.a.2)の試験方法を参照する。
【0097】
本発明による化合物の有利な薬理特性は、以下の方法により測定できる。
a)試験の説明(インビトロ)
a.1)Xa因子阻害の測定
ヒトXa因子(FXa)の酵素活性を、FXa特異的発色基質の変換を使用して測定する。Xa因子は、発色基質からp−ニトロアニリンを切断する。測定は、マイクロタイタープレートで以下の通りに実施する。
【0098】
試験物質を様々な濃度でDMSOに溶解し、ヒトFXa(0.5nmol/l、50mmol/lトリスバッファー[C,C,C−トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン]、150mmol/l NaCl、0.1%BSA[ウシ血清アルブミン]、pH=8,3に溶解)と、25℃で10分間インキュベートする。純粋なDMSOを対照として使用する。次いで、発色基質(150μmol/l Pefachrome(登録商標) FXa、Pentapharm より)を添加する。25℃で20分間のインキュベーション時間の後、405nmの吸光度を測定する。試験物質を含有する試験混合物の吸光度を、試験物質を含まない対照混合物と比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
【0099】
この試験の代表的活性データを下表1に示す:
表1
【表2】

【0100】
a.2)選択性の測定
選択的FXa阻害を立証するために、トリプシンおよびプラスミンなどの他のヒトセリンプロテアーゼの阻害について試験物質を調べる。トリプシン(500mU/ml)およびプラスミン(3.2nmol/l)の酵素活性を測定するために、これらの酵素をTrisバッファー(100mmol/l、20mmol/l CaCl、pH=8.0)に溶解し、試験物質または溶媒と10分間インキュベートする。次いで、適切な特異的発色基質(Chromozym Trypsin(登録商標)および Chromozym Plasmin(登録商標);Roche Diagnostics より)の添加により酵素反応を開始し、20分後に吸光度を405nmで測定する。全ての測定は37℃で実行する。試験物質を含む試験バッチの吸光度を、試験物質を含まない対照サンプルと比較し、これらのデータからIC50値を算出する。
【0101】
a.3)抗凝血活性の測定
試験物質の抗凝血活性をインビトロでヒトおよびウサギの血漿で測定する。この目的で、0.11モル濃度クエン酸ナトリウム溶液を受容液として使用して、クエン酸ナトリウム/血液の混合比1/9で血液を採取する。血液を採取した直後に、それを徹底的に混合し、約2500gで10分間遠心分離する。上清をピペットで取り出す。市販の試験キット(Hemoliance(登録商標) RecombiPlastin、Instrumentation Laboratory より)を使用して、プロトロンビン時間(PT、同義語:トロンボプラスチン時間、クイック試験(quick test))を様々な濃度の試験物質または対応する溶媒の存在下で測定する。試験化合物を血漿と37℃で3分間インキュベートする。次いで、トロンボプラスチンの添加により凝血を開始し、凝血が起こる時間を測定する。プロトロンビン時間の倍増をもたらす試験物質の濃度を測定する。
【0102】
b)抗血栓活性(インビボ)の測定
b.1)動静脈シャントモデル(ウサギ)
絶食しているウサギ(系統:Esd:NZW)を、Rompun/Ketavet 溶液(各々5mg/kgおよび40mg/kg)の筋肉内投与により麻酔する。C.N. Berry ら [Semin. Thromb. Hemost. 1996, 22, 233-241] により記載された方法に従い、動静脈シャントにおいて、血栓形成を開始させる。この目的で、左頸静脈および右頸動脈を露出させる。長さ10cmの静脈カテーテルを使用して、2本の血管を体外シャントにより連結する。中央で、このカテーテルを、ループを形成するように配列した粗いナイロン糸を含む長さ4cmのさらなるポリエチレンチューブ(PE160、Becton Dickenson)に取り付け、血栓形成性表面を形成させる。体外循環を15分間維持する。次いでシャントを除去し、血栓を伴うナイロン糸の重さを直ちに測定する。ナイロン糸自体の重量は、実験開始前に測定した。体外循環を設置する前に、耳静脈を介して静脈内に、または咽頭チューブを使用して経口で、試験物質を投与する。
【0103】
c)溶解性アッセイ
必要な試薬:
・PBSバッファーpH7.4:NaCl p.a. 90.00g(例えば、Merck, Art. No. 1.06404.1000)、KHPO p.a. 13.61g(例えば、Merck, Art. No. 1.04873.1000)および1N NaOH83.35g(例えば Bernd Kraft GmbH, Art. No. 01030.4000)を1lのメスフラスコ中に秤量し、フラスコを水で満たし、混合物を約1時間撹拌する。
・酢酸バッファーpH4.6:酢酸ナトリウム5.4gx3HO p.a.(例えば、Merckより、Art. No. 1.06267.0500)を、100mlのメスフラスコ中に秤量し、水50mlに溶解し、氷酢酸2.4gを添加し、混合物を水で100mlとし、pHを確認し、必要であればpH4.6に調節する。
・ジメチルスルホキシド(例えば Baker, Art. No. 7157.2500)
・蒸留水
【0104】
較正溶液の調製:
較正溶液の原液の調製:活性化合物約0.5mgを、2mlの Eppendorf Safe-Lock tube (Eppendorf, Art. No. 0030 120.094) に正確に秤量し、DMSOを600μg/mlの濃度まで(例えば活性化合物0.5mg+DMSO833μl)添加し、全てが溶解するまで混合物をボルテックスする。
較正溶液1(20μg/ml):DMSO1000μlを原液34.4μlに添加し、混合物をホモジナイズする。
較正溶液2(2.5μg/ml):DMSO700μlを較正溶液1 100μlに添加し、混合物をホモジナイズする。
【0105】
サンプル溶液の調製:
PBSバッファーpH7.4中、10g/lまでの溶解度のためのサンプル溶液:活性化合物約5mgを、2mlの Eppendorf Safe-Lock tube (Eppendorf より、Art. No. 0030 120.094)に正確に秤量し、PBSバッファーpH7.4を5g/lの濃度まで添加する(例えば、活性化合物5mg+PBSバッファーpH7.4 500μl)。
【0106】
酢酸バッファーpH4.6中、10g/lまでの溶解度のためのサンプル溶液:活性化合物約5mgを、2mlの Eppendorf Safe-Lock tube (Eppendorf より、Art. No. 0030 120.094)に正確に秤量し、酢酸バッファーpH4.6を5g/lの濃度まで添加する(例えば活性化合物5mg+酢酸バッファーpH4.6 500μl)。
【0107】
水中、10g/lまでの溶解度のためのサンプル溶液:活性化合物約5mgを、2mlの Eppendorf Safe-Lock tube (Eppendorf より、Art. No. 0030 120.094)に正確に秤量し、水を5g/lの濃度まで添加する(例えば活性化合物5mg+水500μl)。
【0108】
実施:
かくして調製されたサンプル溶液を、温度調節できる振盪機(例えば、互換性ブロック Art. No. 5362.000.019 を備えた Eppendorf Thermomixer comfort Art. No. 5355 000.011)で、1400rpm、20℃で24時間振盪する。これらの溶液から各場合で180μlを取り、Beckman Polyallomer 遠心管 (Art. No. 343621)に移す。これらの溶液を約223000gで1時間遠心分離する(例えば Beckman Optima L-90K 超遠心機、タイプ 42.2 Ti ローターを用いて、42000rpmで)。各サンプル溶液から、上清100μlを取り出し、使用した各溶媒(水、PBSバッファー7.4または酢酸バッファーpH4.6)で1:5、1:100および1:1000に希釈する。各希釈から、サンプルをHPLC分析に適する容器に移す。
【0109】
分析:
サンプルをRP−HPLCにより分析する。DMSO中の試験化合物の2点較正曲線を使用して、定量を実施する。溶解度をmg/lで表示する。
分析順序:
1. 較正溶液2.5mg/ml
2. 較正溶液20μg/ml
3. サンプル溶液1:5
4. サンプル溶液1:100
5. サンプル溶液1:1000
【0110】
酸用のHPLC方法:
DAD(G1315A)、定量ポンプ(G1311A)、オートサンプラー CTC HTS PAL、脱気装置(G1322A)およびカラムサーモスタット(G1316A)を備えた Agilent 1100;カラム:Phenomenex Gemini C18, 50 x 2 mm, 5 μ;温度:40℃;移動相A:水/リン酸pH2;移動相B:アセトニトリル;流速:0.7ml/分;グラジエント:0−0.5分85%A、15%B;傾斜:0.5−3分10%A、90%B;3−3.5分10%A、90%B;傾斜:3.5−4分85%A、15%B;4−5分85%A、15%B。
【0111】
塩基用のHPLC方法:
DAD(G1315A)、定量ポンプ(G1311A)、オートサンプラー CTC HTS PAL、脱気装置(G1322A)およびカラムサーモスタット(G1316A)を備えた Agilent 1100;カラム:VDSoptilab Kromasil 100 C18, 60 x 2.1 mm, 3.5 μ;温度:30℃;移動相A:水+5ml過塩素酸/l;移動相B:アセトニトリル;流速:0.75ml/分;グラジエント:0−0.5分98%A、2%B;傾斜:0.5−4.5分10%A、90%B;4.5−6分10%A、90%B;傾斜:6.5−6.7分98%A、2%B;6.7−7.5分98%A、2%B。
【0112】
C. 医薬組成物の例示的実施態様
本発明による化合物は、以下の方法で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明による化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)(BASF, Ludwigshafen, Germanyより)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg。直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明による化合物、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、次いで、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機を使用して打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。ガイドラインとして、打錠力15kNを打錠に使用する。
【0113】
経口懸濁剤:
組成:
本発明による化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標)(FMC, Pennsylvania, USA のキサンタンガム)400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明による化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0114】
経口液剤:
組成:
本発明による化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明による化合物の単回用量100mgに相当する。
製造:
本発明による化合物を、撹拌しながら、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に懸濁する。本発明による化合物が完全に溶解するまで、撹拌を継続する。
【0115】
i.v.液剤:
本発明による化合物を、飽和溶解度より低い濃度で、生理的に許容し得る溶媒(例えば、等張塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液5%および/またはPEG400溶液30%)に溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェン不含の注射容器に満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

[式中、
nは、1、2または3の数を表し、
Xは、NまたはCHを表し、
Yは、NまたはCRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、アミノ、アミノメチル、アミノエチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルコキシエチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−アルキルアミノメチル、C−C−アルキルアミノエチル、C−C−シクロアルキル、ヒドロキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルメチル、ヒドロキシカルボニルエチル、アミノカルボニル、アミノカルボニルメチル、アミノカルボニルエチル、C−C−アルコキシカルボニル、C−Cアルコキシカルボニルメチル、C−C−アルコキシカルボニルエチル、C−C−アルキルカルボニルオキシ、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニルメチル、C−C−アルキルアミノカルボニルエチル、C−C−アルキルカルボニルアミノ、C−C−アルキルカルボニルアミノメチル、C−C−アルキルカルボニルアミノエチル、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノ、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノメチル、C−C−アルキルカルボニル(C−C−アルキル)アミノエチル、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、C−C−アルキルスルホニルまたはテトラゾリルを表す}、
は、水素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルキルカルボニル、C−C−シクロアルキルカルボニル、フェニルカルボニル、4員ないし7員の複素環カルボニルまたは5員または6員のヘテロアリールカルボニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、アミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
は、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルまたはピリダジニルを表す
{ここで、フェニルは、置換基Rおよび置換基Rにより置換されており
(ここで、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、アミノ、エチニル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−シクロアルキル、C−C−シクロアルキルオキシ、アミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニル、アミノスルホニルまたはメチルカルボニルアミノスルホニルを表し、
そして、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルオキシを表す)、
そして、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルは、置換基Rおよび/または置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより置換されている
(ここで、Rは、環中の窒素原子に隣接していない炭素原子に結合しており、水素、フッ素、塩素、シアノ、アミノ、エチニル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルオキシを表し、
そして、Rは、環中の窒素原子に隣接している炭素原子に結合しており、水素、アミノ、エチニル、C−C−アルキル、C−C−アルキルアミノ、C−C−シクロアルキルまたはC−C−シクロアルキルアミノを表す)}]
の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つ。
【請求項2】
式中、
nが、1、2または3の数を表し、
Xが、NまたはCHを表し、
Yが、NまたはCRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、C−C−アルキルアミノ、C−C−アルキルアミノメチル、C−C−シクロアルキル、ヒドロキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルメチル、アミノカルボニル、アミノカルボニルメチル、C−C−アルコキシカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルメチル、C−C−アルキルアミノカルボニル、C−C−アルキルアミノカルボニルメチル、C−C−アルキルカルボニルアミノ、C−C−アルキルカルボニルアミノメチル、C−C−アルキルカルボニル−(C−C−アルキル)アミノ、C−C−アルキルカルボニル−(C−C−アルキル)アミノメチル、アミノスルホニル、C−C−アルキルアミノスルホニル、C−C−アルキルスルホニルまたはテトラゾリルを表す}、
が、水素、シアノ、ヒドロキシまたはC−C−アルキルを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキルまたはC−C−アルコキシを表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシメチル、シクロプロピル、アミノカルボニル、C−C−アルコキシカルボニルまたはC−C−アルキルアミノカルボニルを表し、
が、フェニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルまたはピリダジニルを表す
{ここで、フェニルは、置換基Rおよび置換基Rにより置換されており
(ここで、Rは、水素、フッ素、塩素、シアノ、エチニル、アミノメチル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アミノカルボニル、アミノスルホニルまたはメチルカルボニルアミノスルホニルを表し、
は、水素、フッ素、塩素、シアノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表す)、
そして、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニルおよびピリダジニルは、置換基Rおよび/または置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより、または、2個の異なる置換基Rにより置換されている
(ここで、Rは、環中の窒素原子に隣接していない炭素原子に結合しており、水素、フッ素、塩素、シアノ、エチニル、アミノメチル、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシを表し、
は、環中の窒素原子に隣接している炭素原子に結合しており、水素、アミノ、エチニル、メチル、エチル、メチルアミノまたはジメチルアミノを表し、
そして、Rは、存在するならば、フェニル環の結合点に対してパラ位に結合しており、Rは、存在するならば、メタ位に結合しているか、
または、Rは、存在するならば、フェニル環の結合点に対してメタ位に結合しており、Rは、存在するならば、パラ位に結合している)}
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式中、
nが、1または2の数を表し、
Xが、Nを表し、
Yが、CRを表し
{ここで、Rは、水素、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノメチル、メトキシ、メトキシメチル、メチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニルまたはテトラゾリルを表す}、
が、水素を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、n−プロピル、メトキシ、エトキシまたはメトキシメチルを表し、
が、4−メトキシフェニル、3−クロロフェニル、3−クロロ−4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−メチルフェニル、3−メチル−4−フルオロフェニル、4−メチルフェニル、4−エチルフェニル、3−アミノメチルフェニル、3−アミノメチル−4−フルオロフェニル、3−アミノカルボニルフェニル、5−クロロピリジン−2−イル、5−メチルピリジン−2−イル、5−エチルピリジン−2−イル、5−メトキシピリジン−2−イル、5−クロロピリミジン−2−イル、5−メチルピリミジン−2−イル、5−エチルピリミジン−2−イル、5−メトキシピリミジン−2−イル、6−メチルピリジン−3−イル、6−エチルピリジン−3−イル、6−メチルピリダジン−3−イルまたは6−エチルピリダジン−3−イルを表すことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式中、
nが、1の数を表し、
Xが、Nを表し、
Yが、CRを表し
{ここで、Rは、アミノカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを表す}、
が、水素を表し、
が、水素を表し、
が、水素、フッ素、塩素、シアノ、メチルまたはメトキシを表し、
が、4−メトキシフェニルを表すことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の式(I)の化合物、またはその塩、その溶媒和物もしくはその塩の溶媒和物の1つの製造方法であって、
[A]式
【化2】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物を、不活性溶媒中、酸の存在下、臭化シアンと反応させ、Rが水素を表す式(I)の化合物を得る、
または、
[B]式
【化3】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有し、そして、
PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくはトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルを表す)
の化合物を、三段階の工程で、先ず不活性溶媒中で臭化シアンと、好ましくは塩基の存在下で反応させ、式
【化4】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有し、そして、
PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくはトリメチルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルを表す)
の化合物を得、次いで、保護基PGの除去により、式
【化5】

(式中、n、X、Y、R、RおよびRは、請求項1に記載の意味を有する)
の化合物を得、第3段階で、式(V)の化合物を、不活性溶媒中、酸の存在下で環化し、Rが水素を表す式(I)の化合物を得る、
または、
[C]式(II)の化合物を、第1段階で、式
【化6】

(式中、Rは、C−C−アルキル、C−C−アルキルカルボニル、C−C−シクロアルキルカルボニル、フェニルカルボニル、4員ないし7員の複素環カルボニルまたは5員もしくは6員のヘテロアリールカルボニルを表す)
の化合物と反応させ、そして、第2段階で環化する、
または、
[D]式(II)の化合物を、式
【化7】

(式中、Rは、シアノまたはC−C−アルキルを表し、そして、
Aは、脱離基、好ましくはフェノキシまたはメチルチオを表す)
の化合物と反応させる、
または、
[E]Rが水素を表す式(I)の化合物を、ヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させ、Rがヒドロキシルを表す式(I)の化合物を得る、
のいずれかを特徴とする方法。
【請求項6】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
疾患の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
インビトロで血液凝固を防止するための、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に許容し得る補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項11】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を、さらなる活性化合物と組み合わせて含む、医薬。
【請求項12】
血栓塞栓性障害の処置および/または予防のための、請求項10または請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
抗凝血的に有効な量の少なくとも1種の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物、請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の医薬、または、請求項7または請求項8に従い得られる医薬を使用する、ヒトおよび動物における血栓塞栓性障害の処置および/または予防方法。
【請求項14】
抗凝血的に有効な量の請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の化合物を添加することを特徴とする、インビトロで血液凝固を防止する方法。

【公表番号】特表2009−538851(P2009−538851A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512478(P2009−512478)
【出願日】平成19年5月26日(2007.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004707
【国際公開番号】WO2007/137801
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】