説明

テラヘルツ電磁波発生装置

【課題】テラヘルツ波を通信応用など、空間の伝送に用いるためにはより強力な電磁波が放射される必要がある。また、測定器として用いる場合にも1〜3THzの領域で電磁波強度が十分でないとS/Nがとれず測定値の信頼性が危うくなる。そこで、より高出力かつ広帯域なテラヘルツ帯電磁波発生装置が必要となる。
【解決手段】前記目的を達成するためにはまず、印加電圧を高める必要があり、そのために放射アンテナ材料のエネルギーギャップをLT−GaAsのもつ1.42eV以上とし、レーザー波長をその材料に合わせて800nmよりも短いものを使用する。このことによって印加電圧を15V以上とすることができ、レーザー光強度を15mW以上にして電磁波放射を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は強度の大きいテラヘルツ電磁波を発生させることができ、高速大容量での無線通信へ応用することのできるテラヘルツ電磁波発生装置に関し、あるいは半導体、誘電体等の材料評価に利用し、特にテラヘルツ帯で使用する素子を構成する材料の複素屈折率などを測定する複素誘電率測定装置としても応用が可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、テラヘルツ帯のような産業応用が進んでおらず、未開拓ともいえる周波数領域に対する電磁波源としては、後進波管や分子レーザーなどが用いられてきた。(ここで言うテラヘルツ帯とは0.1THzから5THz迄の帯域のことであり、光波の直進性、粒子性を有している最長波長領域であり、同時に電波の透過性を有する最短波長域との重なる帯域を指している。)一方で、検出にはInSb等、固体中の電子ガスの電磁波吸収による抵抗変化を測定するホットエレクトロンボロメーターが多用される。
【0003】
しかし、これらの電磁波源は周波数が離散的、或いは可変であっても周波数範囲が狭く、得られる電磁波強度も1マイクロワット(μW)以下と弱いいため、テラヘルツ帯の電磁波を1mから10mの範囲で送受信することは難しかった。
【0004】
これらの課題を解決するため、パルスレーザー励起の光伝導素子を用いた分光法が1985年頃開発された。
【0005】
この光伝導素子を用いた分光法では、光伝導素子をサブピコ秒の超短光パルスで照射すれば光キャリアの生成により瞬間的に導電性となって電流が過渡的に流れることを利用して電磁波放射を行っている。また、光パルスの照射により瞬間的に導電性となることを利用することにより放射電磁波の検出も行われている。
【0006】
光パルスを用いた例では、1THz近傍の高周波電磁波に対する試料の応答を測定するための装置として、TDS(TimeDomain Spectroscopy)と呼ばれる装置(特許文献1を参照)がある。
【0007】
図8は従来のTDSの概略構成図である。この図に示すように、TDSでは、モードロックTi:Sappireレーザーなどからなるフェムト秒レーザー22からの超短パルス光23をビームスプリッタ24で分割し、一方の超短パルス光25(超短パルス光を厳密に区別するため、この超短パルス光25を「第1の超短パルス光」という場合がある)を平板状の光伝導素子からなる電磁波放射用アンテナ28に照射する。この電磁波放射用アンテナ28として用いられる平板状の光伝導素子の表面には、図2に示すようにAuGe/Ni/Auからなるコプラナー型の対電極が設けられており、それらの間には電源30から電圧が印加される。第1の超短パルス光25が電磁波放射用アンテナ28の電極間に照射されると、電子正孔対が瞬時に形成されることによって電磁波放射用アンテナ28には瞬間的に電流が流れ、このときパルス電磁波32が放射される。このパルス電磁波32を第1放物面鏡31で平行化して試料34を透過させ、第2放物面鏡36により電磁波検出用の受信アンテナ29の裏面に集める。
【0008】
受信アンテナ29の表面にはビームスプリッタ24で分割されたもう一方の超短パルス光26(超短パルス光を厳密に区別するため、この超短パルス光26を「第2の超短パルス光」という場合がある)が照射され、その瞬間(すなわち、超短パルス光26が照射した瞬間)だけ導電性となる。この時点では受信アンテナ29の電極間に電界が印加されていないので電流は生じない。導電性を示している間に放射アンテナから放射された電磁波が入ってくると、受信アンテナ29の電極間には電磁波が有している電界が印加されたのと同様の状態となる。一方、光学遅延ステージ41・42によって時間遅延を受けた光はその遅延量によって試料34を透過して来た電磁波35との相関量が変化する。この相関量が電磁波が有している電界強度に対応した量の電流となって観測される。つまり、電磁波の電界強度が有しているパルス形状に応じた電流量が得られることになる。これが相互相関法による電磁波パルス検出の原理である。以上によって、試料34を透過して来た電磁波35と、光学遅延ステージ41・42を経由した超短パルス光26との相互相関信号を電流として検出することができ、テラヘルツ帯域のように通常の電子デバイスでは応答しきれないような高速の電磁波であっても検出が可能となる。
【0009】
このとき電磁波放射アンテナ28と電磁波検出用アンテナ29には、基板温度を300℃から450℃の低温で結晶成長させたGaAs(低温GaAs、LT−GaAsという場合がある)を用い、フェムト秒レーザー波長としてはGaAsの吸収端(873nm)よりも短波長の800nmを使用している。
【0010】
なお、図8中、13はレンズ、30は電源、34は試料、37はカレントアンプ、38はロックインアンプ、33はオプティカルチョッパ、40は平面鏡、41はリトロリフレクタ、42は移動式光学遅延ステージ、43はコンピュータを示す。
【0011】
このテラヘルツTDS法では、用いられる電磁波が短パルスであるため、コヒーレント性に優れている。このため電磁波の強度と位相から重要な情報が得られ、物性測定用の装置としても応用が可能である。試料34を透過してきた電磁波波形と試料34を挿入しない場合の電磁波波形とを比較することにより、広い周波数にわたる電磁波の透過率・位相遅れを計算することができる。この手法によって得られる実データは図7(a)に示したような横軸に時間軸をとった時間分解スペクトルが得られるが、これをフーリエ変換することによって図7(b)に示したような横軸が周波数成分となる周波数スペクトルを得ることができる。
【0012】
ところで、検出用光伝導素子は光パルス照射間に入射してくるパルス電磁場電場によって駆動される電流を検出するが、光パルスの時間幅はパルス電磁波の時間幅よりも数十分の一程度とかなり短い。例えば光パルスは時間幅が0.1ピコ秒程度であり、パルス電磁波の時間幅はアンテナ効率が入るため数ピコ秒程度である。
【0013】
したがって、光パルスもパルス電磁波も光速で検出用光伝導素子に繰り返し入射するが、各回においてパルス電磁波の最初の部分から最後の部分までが到達する時間に比較して光パルスの照射時間は短い。そのため、光パルスが照射している間の検出用光伝導素子に流れる電流はパルス電磁波の電場のごく短い部分によるものであり、さらに光パルスとパルス電磁波とが検出用光伝導素子に到達するタイミングは時間遅延により固定されている。
【0014】
光パルスの繰り返し周波数が例えば約100MHzの場合、光パルスとパルス電磁波とが毎秒約108回検出用光伝導素子に入射してくるが、パルス電磁波の電場のごく短い部分は毎回パルス電磁波波形のうち時間遅延によって決められた部分であり、全く同じ電流が毎秒約108回流れることになる。実際の電流計はこのような速い電流の変化に追随できないため、毎秒約108回のパルス電流の平均値が測定される。したがって、パルス電磁波波形のうち時間遅延によって決められた部分が電流として測定され、さらに時間遅延をずらしていくことによりパルス電磁波波形の他の部分も測定できる。このようなテラヘルツ電磁波発生・検出装置は、今日ではその出力特性、広帯域特性ともに最も優れたテラヘルツ電磁波発生方法ならびに検出手法の一つとなっている。
【特許文献1】特開2001−21503号公報
【特許文献2】特開昭62−281477号公報
【特許文献3】特開昭62−196876号公報
【特許文献4】特開昭63−012120号公報
【非特許文献1】Physical Review Letters vol.55(1985),pp.2152-2155
【非特許文献2】InfraredPhysics vol.26(1986),pp.23-27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のTDS法は現状ではコヒーレントで広帯域な電磁波を発生させうるもっとも簡便な手法であるが、強度においては最大で10μW程度までの放射しか実現しない。また、その帯域も1.5THz程度までは到達しているものの0.3THz付近を最大値としており、1.5THzでの強度は0.1μW程度にしかなっていない。
【0016】
テラヘルツ波を通信応用など、空間の伝送に用いるためにはより強力な電磁波が放射される必要がある。また、測定器として用いる場合にも1〜3THzの領域で電磁波強度が十分でないとS/Nがとれず測定値の信頼性が危うくなる。
【0017】
そこで、より高出力かつ広帯域なテラヘルツ帯電磁波発生装置が必要となる。
【0018】
一方で、実際により強力な電磁波放射を行おうとしても印加電圧や入射光強度を現状で用いているような15V、15mW以上にして使用するとアンテナ材料の絶縁破壊が生じてアンテナが壊れてしまうため、従来技術を用いたテラヘルツ電磁波の発生方法では事実上この値がほぼ限界であった。
【0019】
本発明は上記の課題にかんがみて、高出力であるとともに広帯域な、さらには効率の高いテラヘルツ帯電磁波発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するためにはまず、素子の降伏電圧を高め、ブレークダウン電圧を向上させる必要がある。そのためにLT−GaAsのもつ1.42eVというエネルギーバンドギャップ値よりも大きい材料で放射アンテナ材料を構成し、使用するパルスレーザー波長をその材料に合わせて800nmよりも短いものを使用する。このことによって印加電圧を15V以上、すなわち電界強度を3×10V/cmより大きくすることができる。
【0021】
また、波長を短くする際に非線形光学材料を用いることでパルスレーザー幅に圧縮効果を施し、発生する電磁波の帯域を広げた。
【0022】
さらに、より効率よくテラヘルツ電磁波を発生するためにはキャリア濃度を多くする必要もあり、この目的ためにレーザー光強度を15mW以上にして電磁波放射を行う。
【0023】
具体的には、超短パルス光を放射する光源と、電磁波放射用アンテナとを備えたテラヘルツ波発生装置であって、
前記電磁波放射用アンテナは、半絶縁性基板と、前記半絶縁性基板上に形成され、1.42eV以上のバンドギャップエネルギーを有している光伝導薄膜と、コプラナー伝送線路とを有し、
前記コプラナー伝送線路は、一対の伝送線路電極本体と、前記各伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極とを有し、
前記一対の伝送線路本体は平行に配置されており、
前記突起電極は互いに向かい合っており、
電極間への印加電界強度は3×10V/cmよりも大きい電界であって、
前期突起電極間に波長800nm未満であり、かつ平均強度が20mWよりも大きい超短パルス光を照射することによって電磁波を発生させる。
【0024】
第2の本発明はこのようなテラヘルツ電磁発生装置の超短パルス光のパルス時間幅は100フェムト秒以下であり、前記パルス電磁波のパルス時間幅は5ピコ秒以下である。
【0025】
第3の本発明はこのようなテラヘルツ電磁波発生装置の超短パルス光は波長800nm、パルス幅100フェムト秒以下の性能を有するフェムト秒レーザーを主光源とし、
主光源より発せられるパルス光を、波長を半分以下とすると同時にパルス幅を圧縮することのできる素子を透過させたパルス光であって、
当該パルス光を電磁波放射用アンテナに照射することによって電磁波を発生させる。
【0026】
これによって従来よりも大きな電磁波発生が可能となり、それを実現するのには次の方策が必要となる。
【0027】
すなわち、第4の本発明はこのようなテラヘルツ電磁波発生装置の電磁波放射用アンテナ材料はAl基板、SiC基板、GaN基板、ZnO基板のいずれかの上に成長したInGa1−xN(0.05<x<0.4)膜、BAs基板上に成長したInAl1−xN(0.5<x<0.8)膜、GaAs基板上のAlGa1−xAs膜(0<x<0.8)、GaP基板上のAlGa1−xP(0<x<0.8)膜、Si基板かGaP基板上のZnSe1−x(0<x<0.3)膜、石英基板上のCuGaSe膜のうちのいずれかである。
【0028】
これによって、課題解決のための手段が示される。また、このテラヘルツ電磁波発生装置を利用することで試料の誘電率測定を1.5THzを超えた帯域で精度良く測定することが可能となる。
【0029】
すなわち、第5の本発明はテラヘルツ電磁波発生装置を含むテラヘルツ電磁波発生・検出装置を用いた、
試料の誘電率の測定方法であって、
超短パルス光を放射する光源と、ビームスプリッタと、電磁波放射用アンテナと、電磁波検出用アンテナと、光学遅延系を備え、
前記光源から放射した超短パルス光は前記ビームスプリッタにより、第1の超短パルス光と第2の超短パルス光とに分割され、
前記第1の超短パルス光が、波長を半分以下とすると同時にパルス幅を圧縮することのできる素子を透過されたのち、平板状の光伝導素子からなる電磁波放射用アンテナに照射されることにより、前記電磁波放射用アンテナからパルス電磁波が放射され、
前記電磁波放射用アンテナから放射されたパルス電磁波は電磁波検出用アンテナの裏面に到達し、
前記第2の超短パルス光は、前記光学遅延系を介して電磁波検出用アンテナの表面に到達し、
前記電磁波放射用アンテナは、半絶縁性基板と、前記半絶縁性基板上に形成され、1.42eV以上のバンドギャップエネルギーを有している光伝導薄膜と、コプラナー伝送線路とを有し、
前記コプラナー伝送線路は、一対の伝送線路電極本体と、前記各伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極とを有し、
前記一対の伝送線路本体は平行に配置されており、
前記突起電極は互いに向かい合っており、
前記測定方法は、
前記試料を前記電磁波放射用アンテナと前記電磁波検出用アンテナとの間にセットする試料セット工程、および
前記試料に向けて前記電磁波放射用アンテナからパルス電磁波を放射させることにより、前記試料を透過したパルス電磁波を前記電磁波検出用アンテナの表面に到達させ、前記電磁波検出用アンテナの表面に到達した前記パルス電磁波と前記電磁波検出用アンテナの裏面に到達した第2の超短パルス光との相互相関信号を電流として検出するパルス電磁波放射工程、
を包含する。
【0030】
第6の本発明はこのようなテラヘルツ電磁波発生装置を含むテラヘルツ電磁波発生・検出装置を用いた誘電率測定方法において、電磁波検出用アンテナの材料は基板温度を300℃から450℃の低温で結晶成長させたGaAsを用い、アンテナ形状をダイポール型とし、放射用アンテナの電極形状はボウタイ型とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明のテラヘルツ帯電磁波放射用アンテナによれば、最大ピーク強度が10μW以上となるテラヘルツ帯電磁波が発生でき、1.5THzを超える領域においてであっても1μW以上の出力が得られる。このような電磁波放射用アンテナを用いることにより、高出力であるとともに高効率なテラヘルツ帯電磁波発生装置が提供され、5THzの帯域まで感度よく電磁波強度を検知でき、物質の誘電率を観測できる測定器としての利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(実施の形態1)
本発明における課題は発生させるテラヘルツ電磁波の強度増大であり、この課題を克服するために図1に示したような形態で電磁波放射を行う。すなわち、パルス幅100fs以下、波長800nm、繰り返し周波数84MHzのフェムト秒レーザー22と波長変換用のSHG素子39との組み合わせによって超短パルス光源11が構成され、800nm未満の超短パルス光12が超短パルス光源11より発せられる。この800nm未満の超短パルス光12はレンズ13によって集光され、バンドギャップエネルギーが1.42eVよりも大きい材料で構成されている放射アンテナ28に照射することでテラヘルツ電磁波32が高強度で得られる。この放射アンテナ28には電圧源30によって電圧印加がされている。
【0033】
次に図1において示された各部位について説明する。
【0034】
図2に本発明で用いた電磁波放射用アンテナ10の外観図を示す。この光伝導素子は、図1において参照符号10により示される電磁波放射用アンテナとして本発明のテラヘルツ電磁波発生装置に組み込まれる。
【0035】
この光伝導素子は平板状であって、半絶縁性SiC基板上にCVD法によって6H−SiC膜を1〜5μmの膜厚でエピタキシャル成長して光伝導薄膜を形成し、その後、AuGe/Ni/Au電極からなるコプラナー伝送線路を設けた構成となっている。このコプラナー伝送線路は、一対の伝送線路電極本体と、各伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極とを有している。一対の伝送線路電極本体は平行になるように配置され、一対の伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極は、互いに向かい合うように形成されている。これら2つの向かい合う突起電極が、微小ダイポールアンテナを形成している。
【0036】
図3(a)には微小ダイポールアンテナの寸法を示してある。コプラナー伝送路の間隔を20μm、突起電極の間隔を5μmとしておく。
【0037】
図2ではダイポール型の電極構成で放射アンテナ構造を示しているがこのほかに図3(b)に示すようなボウタイ型の電極構成もまたよく用いられる。この図3(b)に示したボウタイ型においては、突起電極の形状が異なる。図3(a)のダイポール型では突起電極は長方形であり、図3(b)のボウタイ型では突起電極は台形である。ボウタイ型の場合、コプラナー伝送路の間隔を2mm、突起電極の間隔を5μm、台形の上底部長さを5μmとしておく。
【0038】
いずれの電極構成においても向かい合う2つの突起電極の最小間隔は5μmであり、レンズ13(図1参照)を介してアンテナに入射される超短光パルス12は、向かい合う2つの突起電極の間隔が最小となっている部分(以下、この部分を「電流通過領域」という)に向けて照射される。
【0039】
このとき電磁波放射アンテナ28には、SiC基板101上にMOCVD法で結晶成長させた6H−SiC103膜を用い、フェムト秒レーザー22より発せられる波長800nmの超短パルス光23はSHG素子であるLiB(LBO)結晶39を通過させて生じる2次高調波に変換された波長400nmの超短パルス光12の成分を用いて電磁波放射アンテナ28に照射する。
【0040】
6H−SiCのバンドギャップエネルギーは3.0eV、波長400nmの超短パルス光12はエネルギーに換算すると3.1eVである。この条件ならばアンテナの材料が光を吸収しうるものなので、従来技術の説明にて前述したように、2次高調波に変換された超短パルス光12が電磁波放射用アンテナ28の電極間に照射されると、電子正孔対が瞬時に形成されることによって瞬間的に電流が流れ、パルス電磁波32が放射される。
【0041】
以上の構成において高強度のテラヘルツ波が発生することを説明するためにはまず電磁波の放射原理についての知見が必要である。これまでに得られた実験結果やシミュレーション結果をふまえ、電磁波の放射原理について説明する。
【0042】
前述の光伝導体スイッチを用いた電磁波放射において、得られる電磁波の強度は次の式で表される。
【0043】
【数1】

【0044】
このときIは電磁波強度、Pは光伝導体内で生じる電子と正孔による双極子モーメント、iは光電流である。つまり、光電流の時間変化に比例した強度の電磁波が得られることになる。これを素電荷量e、キャリア濃度n、移動度μ、印加電界Eを用いてさらに詳しく表記すると、右辺のようになる。
【0045】
この式の右辺からわかるように、Iはキャリア濃度の時間変化量と(キャリアの速度)=(移動度μ)×(電界E)の時間変化量とに大きく依存する。印加している電界、すなわちアンテナの電極ギャップ間への印加電界は一定であるのでキャリア速度の時間変化量はキャリアの持つ移動度の変化量に依存している。なお、図4に示したように、半導体材料中の移動度μは印加電界に依存している。材料によってその依存性は大きく異なってくるが、その変化量もまた印加電界によって大きく異なる。
【0046】
ここで重要なのは電磁波強度を決定している要素はキャリア濃度の変化量であることとキャリアが有している移動度の絶対値そのものが効くのではなく、その変化量が強度を支配するということである。このことは、低い電界で高速な(つまり移動度が大きい)材料でなくともアンテナ材料として用いることができることを示している。
【0047】
図5(a)にはアンテナの応答速度に対する電流の減衰特性を示した。電極ギャップ間に電界が印加されている状態のアンテナに75fsのパルス幅を持つ光が入射した場合のアンテナに発生する電流の時間変化をアンテナの応答速度(時定数)τをパラメーターとして示したものである。キャリアの発生には時間のずれはほとんど生じないためτの大小にかかわらずパルスレーザー光のパルス幅と同じ立ち上がりを示す(時間軸で言うところの負側)。一方で発生したキャリアには材料に応じた時定数が存在するためパルスレーザーの照射が終了していても瞬時に消滅はせず、ある一定の時定数τで電子正孔対が再結合を起こして消滅していく。この過程がキャリアの寿命と呼ばれるものを定義しており、材料に大きく依存する特性である。この結果においてはτの値に伴って電流の減衰していく時間が伸びていく様子がわかる。
【0048】
図5(b)には電流の減衰特性から得られる放射電磁波強度を示した。これは図5(a)において示した電流の減衰特性を(数式1)を用いて表現することで得られる結果である。ここで得られた結果から、アンテナ材料の持つ時定数τと電磁波強度Iとは互いに独立であって、どの時定数の場合でも光電流の発生量が等しければ得られる電磁波強度は同じであることがわかった。
【0049】
従来技術の説明で前述したように、テラヘルツ波はその測定方法として、時間領域スペクトルとしてデータを得た後、フーリエ変換を行って周波数領域スペクトルに変換している。フーリエ変換の特徴として時間領域スペクトルの先幅が細ければ細いほど周波数領域としては帯域が広くなる。このことからテラヘルツ電磁波強度Iは電流の変化量で決定され、テラヘルツ電磁波の有する帯域はその変化の幅によって決定されることになる。図5(b)の示すことは時定数τと電磁波強度Iとが互いに独立であると同時に帯域に対しては何ら影響を与えないことを示している。逆に、電磁波強度が大きくなることで線幅が狭くなるのであれば同時に帯域を広くすることもできることを示唆している。
【0050】
以上の事柄をふまえ、テラヘルツ電磁波の強度を増し、帯域を広げるために必要なことは以下の4点である。
1)キャリア濃度の時間変化量を大きくすること。
2)電極間に印加している電界強度を大きくすること。
3)移動度の時間変化量を大きくすること。
4)入射光パルスレーザーのパルス幅を圧縮すること。
【0051】
再び図1に戻って前述の4つの条件を吟味する。
【0052】
キャリア濃度の時間変化量を大きくするには照射するレーザー光パルスのピーク強度を大きくすればよく、そのためには放射アンテナ28に使用している材料をLT−GaAsのバンドギャップエネルギーである1.42eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する材料(たとえば6H−SiC。バンドギャップエネルギーは3.0eV。)を使用する。バンドギャップエネルギーを大きくすることによって降伏電圧が向上し、印加電界に対する強度も増すので電極間に印加している電界強度も高めることができる。電極間に印加している電界強度が高められるとLT−GaAsのバンドギャップエネルギーである1.42eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する材料を使用した場合、飽和電子速度の絶対値を高めることができ、これによってパルスレーザーの照射に伴った移動度の時間変化量が増大する。
【0053】
ここで1.42eVより大きいバンドギャップエネルギーを有する材料を使用するためにパルスレーザー光の波長をSHG素子39で短波長化することになるが、非線形光学効果では入力光パワーの2乗に出力光パワーが比例するので、その際にパルス幅には圧縮がかかり、パルス幅は通常使用時に比べて細くなる。
【0054】
まとめると、1.42eVより大きなバンドギャップエネルギーを有するアンテナ材料をそれ以上のエネルギーを有する超短パルス光で照射、かつ波長変換にLBOのような二次高調波発生素子を用いているためパルスを圧縮する効果も得られ、前述の4つの条件はすべて同時に達成することができ、テラヘルツ電磁波の強度を増し、帯域を広げることが可能になる。
【0055】
以上より、本発明によって最大ピーク強度が10μW以上となるようなテラヘルツ帯電磁波が発生でき、1.5THzを超える領域でも1μW以上の出力が得られるようなテラヘルツ電磁波発生装置が実現される。
【0056】
なお、アンテナに使用する材料は1.42eVより大きなバンドギャップを持つ半導体であれば上記のような効果を有しうるので、Al基板、6H−SiC基板、4H−SiC基板、GaN基板、ZnO基板のいずれかの上に成長したInGa1−xN(0.05<x<0.4)膜もしくは4H−SiC膜、BAs基板上に成長したInAl1−xN(0.5<x<0.8)膜、GaAs基板上のAlGa1−xAs膜(0<x<0.8)、GaP基板上のAlGa1−xP(0<x<0.8)膜、Si基板かGaP基板上のZnSe1−x(0<x<0.3)膜、石英基板上のCuGaSe膜などが挙げられる。
【0057】
また、2次高調波に変換された超短パルス光12については必ずしも2次高調波による短波長化を行う必要はなく、パルスレーザーが有している波長変換機能によって短波長化されたパルス光を利用することも可能である。チタンサファイヤレーザーを使用した場合、700nm迄の波長変換が可能である。
【0058】
また同時に、パルスレーザー波長は波長変換機能によって800nm未満にして使用できるわけであるから、それに応じてSHG結晶の位相整合角には最適なものを選べば良く、必ずしもフェムト秒レーザー22の波長を800nm、SHG素子39の位相整合角を400nm対応という組み合わせで使用することはない。
【0059】
つまり、二次高調波に変換された超短パルス光12の波長としては400nm未満350nmまでを使用することができる。
【0060】
本発明は前述の4つの効果を同時に実現しうるものであるため、単純にはどの程度まで放射電磁波強度が増大するかを見積もることはできないが、少なくとも素子のブレークダウン電圧がバンドギャップエネルギーの1.5乗に比例、また、することから3.0eVを有する材料でアンテナを構成した場合、約3倍の印加電圧が可能となる。実際にはこのほかにパルス光強度の増加が可能であり、パルス幅も圧縮によって短くなっているため発生するキャリア濃度の時間変化とキャリアの速度変化も同時に大きくできうる。
【0061】
さらに、基板に用いている材料が有している比誘電率はGaAs基板で13程度であるのに対してSiC基板の場合で9程度まで低くできるので素子表面で発生して放射される電磁波が基板部を通過するときの損失が低減できる。SiC以外の材料を用いることを考えて、アンテナ材料の組み合わせを適切に選択すれば、より放射効率は向上する。
【0062】
(実施例)
実施の形態に従って、実際に1.42eV以上のバンドギャップエネルギーを有する材料で構成される光伝導素子を用いた場合の実験結果を示す。光伝導素子材料にはSiCを用いた。このSiC光伝導素子は、半絶縁性SiC基板上に熱CVD法によって450℃から650℃程度の基板温度にてSiC膜を3μmの膜厚でエピタキシャル成長して光伝導薄膜を形成し、次いでその表面にAuGe/Ni/Au電極からなるコプラナー伝送線路を設けた構成となっている。なお、この電極構造としては、図3(b)に示すボウタイ型を採用した。
【0063】
得られる電磁波は1.5THz以上の超広帯域波を含んでおり、検知時の帯域を広くとることを考慮しないのであればホーンアンテナなどの帯域遮断型アンテナで導波管へ導き、フォトニックミキサーおよびハーモニックシンセサイザーによるダウンコンバート式の検出や2THz程度までであればカロリーメーターを利用したパワーメーターでの検知も考えられるが、本実験では感度、分解能、広帯域性を加味して前述のテラヘルツTDS法を採用した。その光学系は図6に示してある。
【0064】
テラヘルツTDS法は前述したように、超短パルスレーザーを用いたテラヘルツ波の発生と検知を同時に扱うことができ、特に検知においては簡便かつ高感度な検出方法である。本実験で用いた構成は図6に示してある。
【0065】
この図に示すように、TDSではフェムト秒レーザー22からの超短パルス光23をビームスプリッタ24で分割し、第1の超短パルス光25をBLO結晶からなるSHG素子39で波長変換し、平板状の光伝導素子からなる電磁波放射用アンテナ28に照射する。この電磁波放射用アンテナ28として用いられる平板状の光伝導素子の表面には、図2に示すようにAuGe/Ni/Auからなるコプラナー型の対電極が設けられており、それらの間には電源30から電圧が印加される。波長変換が施された超短パルス光12が電磁波放射用アンテナ28の電極間に照射されると、電子正孔対が瞬時に形成されることによって電磁波放射用アンテナ28には瞬間的に電流が流れ、このとき(数式1)記載の式に応じたパルス電磁波32が放射される。このパルス電磁波32を第1放物面鏡31で平行化し、第2放物面鏡36により電磁波検出用アンテナ29の裏面に集める。
【0066】
電磁波検出用アンテナ29の表面にはビームスプリッタ24で分割された第2の超短パルス光が照射され、その瞬間(すなわち、超短パルス光26が照射した瞬間)だけ導電性となる。この時点では受信アンテナ29の電極間に電界が印加されていないので電流は生じない。導電性を示している間に放射アンテナから放射された電磁波が入ってくると、受信アンテナ29の電極間には電磁波が有している電界が印加されたのと同様の状態となる。一方、光学遅延ステージ41・42によって時間遅延を受けた光はその遅延量によって第2放物面鏡36により集められた電磁波32との相関量が変化する。この相関量が電磁波が有している電界強度に対応した量の電流となって観測される。
【0067】
このとき電磁波放射アンテナ28の光伝導素子材料には6H−SiCを、電磁波検出用アンテナ29には、基板温度を300℃から450℃の低温で結晶成長させたLT−GaAsを用いている。フェムト秒レーザー22の波長としては800nmを使用し、LBO結晶で構成されるSHG素子39により波長変換された超短パルス光12の波長は400nmとしている。
【0068】
なお、図6中、13はレンズ、30は電源、37はカレントアンプ、38はロックインアンプ、33はオプティカルチョッパ、40は平面鏡、41はリトロリフレクタ、42は移動式光学遅延ステージ、43はコンピュータを示す。
【0069】
本実験では広帯域性を重視しているので受信側アンテナの電極構造としてはボウタイ型に比べて広帯域特性の良いダイポール型(図3(a)参照)を用いている。材料としてはLT−GaAsを光伝導素子として使用し、放射用アンテナのアンテナ電極形状は放射強度をより稼ぐため、ボウタイ型とした。
【0070】
このとき、放射アンテナへの印加電圧を50V(電界強度は100kV/cm)、平均入射光強度を40mWとして実験を行う。
【0071】
図7に実験結果を示す。図7(a)において黒丸の点、図7(b)において白抜きの四角で示したものが放射用アンテナ材料にLT−GaAs光伝導素子(従来用いてきたもの)を用いた場合の実験結果で、アンテナ材料を本発明による6H−SiCにした場合の結果を実線で示してある。縦軸に電磁波強度を、横軸に時間軸をとった場合に得られる結果は図7(a)に示したようなスペクトル形状であり、アンテナ材料を6H−SiCとし、パルス光の波長を400nmに変換して照射することによって時間軸上のスペクトル線幅が細くなっていることがわかる。このことは周波数表示に変換した場合に高周波領域の強度が大きくなっていることを意味している。
【0072】
図7(b)で得られた結果をフーリエ変換することによって発生している電磁波のスペクトル分布表示縦軸:強度、横軸:周波数に変換することができ、図7(b)に示したようなスペクトル分布が得られる。すなわち、LT−GaAs光伝導素子を用いた場合には、周波数が約0.1THzのところにパルス電磁波の強度のピークが生じるのに対して、アンテナ材料をSiCとし、パルス光の波長を400nmに変換して照射した場合には、周波数が約0.5THzのところにパルス電磁波の強度のピークが生じる。
【0073】
図7(b)に示したようにアンテナ材料をSiCとし、パルス光の波長を400nmに変換して照射することにより1.5THz以上の周波数領域においてスペクトル強度が増え、高出力かつ高効率なテラヘルツ帯電磁波の発生および検出が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明により、高出力かつ高効率なテラヘルツ帯電磁波の発生・検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のテラヘルツ帯電磁波発生装置に係る実施の形態の概略構成図
【図2】テラヘルツ帯電磁波発生装置に係るダイポール型光伝導素子を示した図
【図3】テラヘルツ帯電磁波発生装置に係るアンテナ電極の概略構成図(a)ダイポール型電極を示す図(b)ボウタイ型電極を示す図
【図4】電子のドリフト速度と電界強度の関係を示す図
【図5】光伝導素子に発生する電流とその際に生じるテラヘルツ波強度の関係図(a)発生電流の時間変化を示す図(b)電流変化より割り出されるテラヘルツ電磁波強度の時間変化を示す図
【図6】本発明のテラヘルツ帯電磁波発生装置に係る実施例の概略構成図で、本発明のテラヘルツ帯電磁波発生装置により発生した電磁波を検知する測定系を示した図
【図7】本発明のテラヘルツ帯電磁波発生装置に係る実施例において得られる実験結果と従来の実験結果との比較図(a)この発明に係る遅延時間に対する電流信号を示すグラフ(b)(a)のデータからフリーエ変換されたスペクトル分布を示すグラフ
【図8】従来のテラヘルツTDSの概略構成図
【符号の説明】
【0076】
10 電磁波放射用アンテナ
11 超短パルス光源
12 波長変換された超短パルス光
13 レンズ
24 ビームスプリッタ
25 第1の超短パルス光
26 第2の超短パルス光
28 電磁波放射用光伝導素子、放射アンテナ
29 電磁波検出用光伝導素子、受信アンテナ
30 電源
31,36 放物面鏡
32 放射電磁波
34 試料
35 試料透過後のテラヘルツ電磁波
38 ロックイン増幅器
39 LBO結晶で構成されるSHG素子
40 平面鏡
41 リトロリフレクタ
42 移動ステージ
43 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超短パルス光を放射する光源と、電磁波放射用アンテナとを備えたテラヘルツ波発生装置であって、
前記電磁波放射用アンテナは、半絶縁性基板と、前記半絶縁性基板上に形成され、1.42eV以上のバンドギャップエネルギーを有している光伝導薄膜と、コプラナー伝送線路とを有し、
前記コプラナー伝送線路は、一対の伝送線路電極本体と、前記各伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極とを有し、
前記一対の伝送線路本体は平行に配置されており、
前記突起電極は互いに向かい合っており、
電極間への印加電界強度は3×10V/cmよりも大きい電界であって、
前期突起電極間に波長800nm未満であり、かつ平均強度が20mWよりも大きい超短パルス光を光源より照射することによって電磁波を発生させることを特徴とするテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項2】
前記請求項1記載に光源として記載している超短パルス光のパルス時間幅は100フェムト秒以下であり、前記パルス電磁波のパルス時間幅は5ピコ秒以下である、請求項1に記載のテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項3】
前記請求項1記載の光源は、
波長800nm、パルス幅100フェムト秒以下の性能を有するフェムト秒レーザーと、
波長を半分以下とすると同時にパルス幅を圧縮することのできる素子とを有するものであって、
当該光源より発せられるパルス光を前記請求項1記載の電磁波放射用アンテナに照射することによって電磁波を発生させることを特徴とする請求項1記載のテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項4】
前記請求項1から4記載の電磁波放射用アンテナ材料はAl基板、SiC基板、GaN基板、ZnO基板のいずれかの上に成長したInGa1−xN(0.05<x<0.4)膜、BAs基板上に成長したInAl1−xN(0.5<x<0.8)膜、GaAs基板上のAlGa1−xAs膜(0<x<0.8)、GaP基板上のAlGa1−xP(0<x<0.8)膜、Si基板かGaP基板上のZnSe1−x(0<x<0.3)膜、石英基板上のCuGaSe膜のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1から4記載のテラヘルツ電磁波発生装置。
【請求項5】
前記テラヘルツ電磁波発生装置を含むテラヘルツ電磁波発生・検出装置を用いた、
試料の誘電率の測定方法であって、
超短パルス光を放射する光源と、ビームスプリッタと、電磁波放射用アンテナと、電磁波検出用アンテナと、光学遅延系を備え、
前記光源から放射した超短パルス光は前記ビームスプリッタにより、第1の超短パルス光と第2の超短パルス光とに分割され、
前記第1の超短パルス光が、波長を半分以下とすると同時にパルス幅を圧縮することのできる素子を透過されたのち、平板状の光伝導素子からなる電磁波放射用アンテナに照射されることにより、前記電磁波放射用アンテナからパルス電磁波が放射され、
前記電磁波放射用アンテナから放射されたパルス電磁波は電磁波検出用アンテナの裏面に到達し、
前記第2の超短パルス光は、前記光学遅延系を介して電磁波検出用アンテナの表面に到達し、
前記電磁波放射用アンテナは、半絶縁性基板と、前記半絶縁性基板上に形成され、1.42eV以上のバンドギャップエネルギーを有している光伝導薄膜と、コプラナー伝送線路とを有し、
前記コプラナー伝送線路は、一対の伝送線路電極本体と、前記各伝送線路電極本体からそれぞれ突出する突起電極とを有し、
前記一対の伝送線路本体は平行に配置されており、
前記突起電極は互いに向かい合っており、
前記測定方法は、
前記試料を前記電磁波放射用アンテナと前記電磁波検出用アンテナとの間にセットする試料セット工程、および
前記試料に向けて前記電磁波放射用アンテナからパルス電磁波を放射させることにより、前記試料を透過したパルス電磁波を前記電磁波検出用アンテナの表面に到達させ、前記電磁波検出用アンテナの表面に到達した前記パルス電磁波と前記電磁波検出用アンテナの裏面に到達した第2の超短パルス光との相互相関信号を電流として検出するパルス電磁波放射工程、
を包含する。
【請求項6】
前記請求項6記載の誘電率測定方法において、電磁波検出用アンテナの材料は基板温度を300℃から450℃の低温で結晶成長させたGaAsを用い、アンテナ形状をダイポール型とし、放射用アンテナの電極形状はボウタイ型であることを特徴とするテラヘルツ電磁波発生・検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−145372(P2006−145372A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335641(P2004−335641)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】