説明

テルメステインを含む皮膚疾患治療用局所組成物

本発明は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を含むかまたは本質的にそれからなる局所用組成物,例えばクリームおよびローション,ならびに種々の皮膚疾病および疾患,例えば,アトピー性皮膚炎(湿疹),アレルギー性接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,放射線皮膚炎,乾癬,乾皮症およびアトピーの治療にこれらを用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,活性成分としてテルメステインを含むかまたはこれから本質的になる局所用組成物,例えばクリームおよびローション,およびこれを用いて,種々の皮膚疾病および疾患,例えば,アトピー性皮膚炎(湿疹),アレルギー性接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,放射線皮膚炎,乾癬,乾皮症およびアトピーを治療,予防,または軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テルメステイン,すなわちN−カルベトキシ−4−チアゾリジン−カルボン酸(イタリア特許1,215,469に開示される)は,以下の構造を有する:
【化1】

【0003】
この分子は,カルベトキシ基が存在するため,カルベトキシ基を有しない類似の分子と比較して非常に親油性である。テルメステインを製造する方法は,例えば,米国特許4,874,776(この開示の全体を本明細書の一部としてここに引用する)に記載されている。
【0004】
テルメステイン,およびその塩基性アミノ酸のアルカリおよびアルカリ土類塩は,粘液溶解活性を有し,エラスターゼおよびコラゲナーゼを阻害し,呼吸管疾患,例えば,気腫および線維症の治療に有用であることが知られている。
【0005】
皮膚炎は,皮膚の表面の炎症であり,小胞形成,紅斑,水腫,滲出,落屑性または痂皮性病巣,および強いかゆみを特徴とする。種々のタイプの皮膚炎を区別することができる:刺激物または対象がそれに対してアレルギー性である非刺激性物質が皮膚に接触することにより引き起こされる接触皮膚炎;強いかゆみおよび慢性的進行を特徴とするアトピー性皮膚炎;主として顔面および頭皮に影響する鱗屑疾病である脂漏性皮膚炎。原則として,治療は病因を除去することからなるが,しばしばそのような病因は同定することができず,または除去することができない。
【0006】
皮膚炎の1つの特定の形は,慢性の,炎症性の,過増殖皮膚疾病である乾癬であり,これは一般人口の約1−2%に影響し,男性と女性でほぼ同数が罹患する(Nevitt,G.J.etal.,1996,British J.of Dermatology 135:533−537)。毎年,約150,000件の乾癬の新規症例,および約400名の乾癬による死亡が報告されている(Stern,R.S.,1995,Dermatol.Clin.13:717−722)。患者の生活に及ぼす乾癬の影響は,その身体上の外観に及ぼす影響を越える。すなわち,これは身体の能力および長命にも負の影響を与えうる。最も一般的なタイプの乾癬は慢性斑症候群である。多くの罹患者について状態は慢性であり,疾病の経過期間の間に,軽減期間と再発期間が存在する(Ashcroft,D.M.,et al.,2000,J.of Clin.Pharm.And Therap.25:1−10)。乾癬は,硬化した,紅斑鱗屑斑を特徴とし,最も一般的には頭皮または肘および膝の伸筋面に局在するが,あらゆる皮膚部位で生じうる。
【0007】
伝統的には,このような皮膚炎の治療はコルチコステロイドに基づくものであり,これは,よく知られる副作用,例えば,免疫防御の低下による二次的な細菌感染,特に真菌およびカンジダの感染を伴う。さらに,そのような治療は,しばしば治療の中止が必要となり,またそのような治療は滲出性の急性期皮膚炎の間は使用することができない。さらに,全身的副作用が生ずる可能性があるため,特に,妊娠している女性および小児においては,コルチコステロイドを長期間使用することは避けるべきである。
【0008】
現在利用可能な乾癬の治療の選択としては,局所用薬剤,光療法および全身用薬剤がある。局所用治療は軽いまたは中程度の斑乾癬を有する患者に対する第1選択療法である。全身的治療は,一般に,局所療法が実用的ではないかまたは有効ではない重篤な乾癬の症例について処方される。光療法は,単独で施してもよく,局所用薬剤または全身用薬剤との組み合わせで施してもよい。適切な治療の選択においては,疾病の全体的な重篤度,関与する体表面積,患者の年齢,性別,一般的健康状態,先の治療および好みを考慮すべきである。
【0009】
乾癬の治療用に利用可能な局所用薬剤としては,皮膚軟化剤,角質溶解剤,コールタール,局所用コルチコステロイド,ジスラノール(アントラリン),局所用ビタミンD3類似体およびタザロテンがある。残念ながら,これらの局所用薬剤は,刺激,毒性および発癌性の可能性などの副作用を伴う(Ashcroft,D.M.,etal.,2000,J.ofClin.Pharm.and Therap.25:1−10)。
【0010】
乾癬の光治療の例としては,B紫外線照射(UVB)光療法およびA紫外線光化学療法(PUVA)が挙げられる。UVB光療法は,広帯域(290−320nm)の光源を用いるものであって,中程度から重症の乾癬の管理に有用であり,一般に局所療法では難治性の疾病の患者に施される。治療は,通常,週に2−3回施され,しばしば曝露の前にコールタールを塗布する。しかし,UVB光療法は,紅斑および水疱発生という短期リスクおよび未成熟皮膚の老化という長期リスクのため,注意深く制御しないければならない。PUVA療法は,長波長(320−400nm)のA紫外線照射とソラーレンの経口または局所投与との組み合わせである。伝統的に用いられている2つのソラーレンである5−および8−メトキシソラーレン(MOP)は,UVA照射により活性化されると,DNA中にインターカレートし,細胞の増殖を阻害すると考えられている。PUVA療法は一般に週に2回投与される。残念ながら,PUVAは一般に,悪心,紅斑,頭痛および皮膚の痛み等の短期リスク,ならびに光線性角化症,皮膚の未成熟老化,不規則な色素沈着および患者の1/4で報告されている扁平上皮癌等の長期リスクを引き起こす(Stern,R.S.,1994,Cancer 73:2759−2764)。
【0011】
乾癬を治療するために現在用いられている全身用薬剤としては,メトトレキセート(MTX),シクロスポリン,アシトレチン(acitretin)およびヒドロキシウレアがある。しかし,これらの薬剤にはそれぞれ有害な副作用が伴い,ほとんどのものは妊娠している患者には適用できない。特に,メトトレキセートは,重症の乾癬の治療の最も標準的なもの(gold standard)であると考えられているが,長期間の使用には肝毒性のリスクが伴う。さらに,患者は,各治療の開始時またはその近く,および蓄積用量1.0−1.5mgMTXごとに,ライナー生検を受けることが推奨されている(Roenigk,H.H.et al.,1988,J.of the Am.Acad.of Dermatology)。
【0012】
患者は,現在利用可能な乾癬の治療法について可能性のある有害な影響に関する情報を与えられると,多くの者はしばしば,治療を受けるよりもその状態で生活することを選択する(Greaves M.W.,1995,New England J.of Medicine 332:581−588)。皮膚炎について当該技術分野において知られている別の代替治療は,脂漏性皮膚炎の場合,水素化植物油,親水性ワセリン,または薬用シャンプー(亜鉛ピリチオン,硫化セレン,イオウなどに基づく)に基づくものであり,これはしばしば成功しない。
【0013】
皮膚の疾病および疾患,例えば皮膚炎および乾癬の予防,治療または軽減のために現在利用可能な薬剤および治療計画よりも改善された活性を有する治療法に対する多大な要求がある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
本発明は,局所投与に適した組成物に関し,この組成物は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む。本発明はまた,局所投与に適した組成物に関し,この組成物は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる。ある態様においては,組成物は,局所投与に適しており,クリーム,ゲル,ローション,懸濁液,スプレーまたは軟膏の形態である。
【0015】
本発明は,皮膚の疾病または疾患を治療または予防する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む組成物を,そのような疾病または疾患を治療または予防するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患を治療または予防する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる組成物を,そのような疾病または疾患を治療または予防するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。
【0016】
本発明は,皮膚の疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む組成物を,そのような疾病または疾患に伴う少なくとも1つの症状を軽減するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたは薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる組成物を,そのような疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。
【0017】
より詳細には,本発明の組成物はまた,敏感な,虚弱な皮膚のための保湿剤および鎮痛剤としても有用であり,医薬品,界面活性剤,溶媒により引き起こされるアレルギー性の刺激を治療または軽減するのに,および日光に過剰に曝露された後の紅斑を治療,予防または軽減するのに有用である。本発明の別の態様は,虫さされ,種々の原因による赤み,ひげそり後刺激,軽い熱傷,皮膚過剰反応性により引き起こされる影響の治療または軽減に,ならびに審美用薬品,例えば,グリコール酸による皮膚ピーリングまたはレーザー治療による治療後の正常化剤として,有用である。本発明にしたがって治療または予防することができるさらに別の例示的皮膚疾病および疾患は以下に記載される。
【0018】
別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患の治療または予防用の局所用薬物を製造するためのテルメステインの使用に関する。さらに別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患の少なくとも1つの症状の改善のための局所用薬物を製造するためのテルメステインの使用に関する。この態様の特定の観点においては,疾病または疾患は,アトピー性皮膚炎(湿疹),アレルギー性接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,放射線皮膚炎,乾癬,乾皮症およびアトピーからなる群より選択される。
【0019】
本明細書において用いる場合,"被験者",および"患者"との用語は互換的に用いられる。本明細書において用いる場合,"被験者(単数または複数)"との用語は,動物,好ましくは哺乳動物,例えば,非霊長類(例えば,ウシ,ブタ,ウマ,ネコ,イヌ,ラット,およびマウス)および霊長類(例えば,カニクイザル等のサルおよびヒト)を表し,好ましくはヒトである。
【0020】
本明細書において用いる場合,"予防する","予防すること",および予防との用語は,予防薬または治療薬,すなわちテルメステインを投与した結果,患者において,皮膚の疾病または疾患の1またはそれ以上の症状の再発または発症が予防されることを表す。本明細書において用いる場合,"予防的有効量"との用語は,疾患の1またはそれ以上の症状の再発または発症が予防されるのに十分な予防薬の量を表す。
【0021】
本明細書において用いる場合,"治療する","治療",および"治療すること"との用語は,本発明の組成物の投与の結果として皮膚の疾病または疾患に伴う1またはそれ以上の症状が軽減されることを表す。ある態様においては,そのような軽減には,紅斑,水腫,滲出,落屑性または痂皮性の病巣および/または皮膚の強いかゆみの減少が含まれる。別の態様においては,軽減には,疾病または疾患の治療に用いられる1またはそれ以上の伝統的な薬物,例えばコルチコステロイドの排除またはその量の減少も含まれる。すなわち,本発明の組成物が1またはそれ以上の伝統的な医薬品と別々に局所的に投与される態様においては,テルメステインを含む本発明の組成物との併用投与のため,伝統的な医薬品の必要量は減少する。
【0022】
以下の詳細な説明および例示的な実施例を参照して,本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明の詳細な説明
驚くべきことに,活性成分として有効量のテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を含むか本質的にこれからなる組成物を局所投与すると,種々の皮膚疾病および疾患の有効な治療的または予防的処置が与えられる。
【0024】
すなわち,本発明は,局所投与に適した組成物に関し,この組成物は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む。本発明はまた,局所投与に適した組成物に関し,この組成物は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる。ある態様においては,組成物はクリーム,ゲル,ローション,懸濁液,スプレーまたは軟膏の形態である。
【0025】
本発明の組成物は,それ自体で,または1またはそれ以上の医薬品,賦形剤および/またはアジュバントと混合して,好ましくは表面上皮に接着したままである粘稠な潤滑物質を形成して,用いることができる。これらの組成物は,皮膚等の上皮表面に局所投与するのに適している。
【0026】
任意に,本発明の組成物は,1またはそれ以上の他の成分,例えば,抗菌剤,消毒剤,抗心筋剤,鎮痛剤,皮膚軟化剤,局所麻酔等を含んでいてもよい。適当な抗微生物剤としては,限定されないが,4級アンモニウム塩,例えば塩化ベンズアルコニウムが含まれる。特定の態様においては,本発明の組成物はプロアントロシアニジン化合物および/またはグリシルレチン酸を含まない。
【0027】
種々の局所用デリバリーシステムが知られており,本発明の組成物を投与するために用いることができる。これには,例えば,リポソーム,微粒子,マイクロカプセルなどの中への封入が含まれる。好ましい態様においては,本発明の医薬組成物を,治療を必要とする領域に局所的に投与することが望ましい。これは,例えば,限定されないが,手術後の創傷用包帯と組み合わせて,座薬を用いて,または移植片を用いて局所適用することにより行うことができ,この移植片は,多孔性の,非多孔性の,またはゼラチン性の材料,例えば,膜,例えばシアル酸膜,またはファイバーでありうる。
【0028】
局所投与用には,組成物を,例えば,軟膏,クリーム,経皮パッチ,ローション,ゲル,シャンプー,スプレー,エアロゾル,溶液,エマルジョン,または当業者によく知られる他の形態で処方することができる。例えば,Remington’s Pharmaceutical Sciences and Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,4th ed.,Lea&Febiger,Philadelphia,PA(1985)を参照。スプレーできない局所用投与形態のためには,典型的には,局所適用に適合性のある,好ましくは水より高い動粘度を有する担体または1又はそれ以上の賦形剤を含む,粘稠なまたは半固体または固体形が用いられる。適当な処方としては,限定されないが,溶液,懸濁液,乳濁液,クリーム,軟膏,粉体,塗布薬,膏薬等が挙げられ,これらは所望の場合には滅菌してもよく,浸透圧などの種々の特性に影響を与えるために助剤(例えば,保存料,安定剤,湿潤剤,バッファまたは塩)と混合してもよい。他の適当な局所用投与形態には,活性成分が,好ましくは固体または液体の不活性担体との組み合わせで,加圧された揮発性物質(例えば,フレオンなどのガス状推進剤)との混合物中に,またはスクイズボトル中に詰められている,スプレー可能なエアロゾル製剤が含まれる。所望の場合には,湿潤剤または保湿剤を医薬組成物および投与形に加えることもできる。そのような追加の成分の例は当該技術分野においてよく知られている。
【0029】
別の態様においては,本発明の組成物は,ベシクル中で,特にリポソーム中でデリバリーすることができる(例えば,Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treat et al.,Liposomes in the Therapy of Infectious Diseases and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez Berestein,ibid.,pp.317−327;一般に上掲を参照)。好ましい態様においては,本発明の組成物は,しばしばアレルギー性接触皮膚炎の原因となる,動物起源に由来するアレルギー性物質(例えば,ラノリン,蜜ろう,動物性脂肪),およびある種の保存料(例えば,パラベン,イソチアゾロン,フェノール誘導体等)を含まない。
【0030】
薬学的に許容しうる塩の例としては,限定されないが,硫酸塩,クエン酸塩,酢酸塩,シュウ酸塩,塩化物,臭化物,ヨー化物,硝酸塩,亜硫酸塩,リン酸塩,過リン酸塩,イソニコチン酸塩,乳酸塩,サリチル酸塩,クエン酸塩,酒石酸塩,オレイン酸塩,タンニン酸塩,パントテン酸塩,酒石酸水素塩,アスコルビン酸塩,コハク酸塩,マレイン酸塩,ゲンチシン酸塩,フマル酸塩,グルコン酸塩,グルクロン酸塩,サッカリン酸塩,ギ酸塩,安息香酸塩,グルタミン酸塩,メタンスルホン酸塩,エタンスルホン酸塩,ベンゼンスルホン酸塩,p−トルエンスルホン酸塩,およびパモ酸塩(すなわち,1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩が挙げられる。"薬学的に許容しうる塩"との用語は,酸性の官能基,例えば,カルボン酸またはスルホン酸官能基を有する化合物と薬学的に許容しうる無機または有機塩基とから製造した塩も表す。適当な塩基としては,限定されないが,ナトリウム,カリウム,およびリチウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;例えばアルミニウムおよび亜鉛等の他の金属の水酸化物;アンモニア,および有機アミン,例えば,未置換またはヒドロキシ置換のモノ−,ジ−,またはトリ−アルキルアミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル,N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−,ビス−,またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミンs),例えば,モノ−,ビス−またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン,2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン,またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン,N,N,−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン,例えば,N,N,−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン,またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;およびアルギニン,リジン等のアミノ酸が挙げられる。
【0031】
本発明はまた,皮膚の疾病または疾患を治療または予防する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む組成物を,そのような疾病または疾患を治療または予防するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患を治療または予防する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる組成物を,そのような疾病または疾患を治療または予防するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。
【0032】
本発明は,皮膚の疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤を含む組成物を,そのような疾病または疾患に伴う少なくとも1つの症状を軽減するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。別の態様においては,本発明は,皮膚の疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減する方法に関し,この方法は,活性成分としてテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体または賦形剤から本質的になる組成物を,そのような疾病または疾患の少なくとも1つの症状を軽減するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む。
【0033】
より詳細には,本発明の組成物は,刺激性および湿疹性皮膚炎等の病状の治療または予防に;敏感な,虚弱な皮膚のための保湿剤および鎮痛剤として;医薬品,界面活性剤,溶媒によって引き起こされるアレルギー性刺激;日光への過剰な曝露後の紅斑;虫さされ,種々の原因による発赤,ひげそり後刺激,軽い熱傷,皮膚過剰反応の場合に;審美薬による治療,例えばグリコール酸によるピーリングまたはレーザー治療の後の正常化剤として,有用である。例示的,非限定的な皮膚疾病および疾患としては,限定されないが,皮膚炎状態および皮膚傷害,例えば,アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,アレルギー性接触皮膚炎,アレルギー性皮膚炎,脂漏性皮膚炎,貨幣状皮膚炎,手足の慢性皮膚炎,全身剥脱性皮膚炎,うっ血滞性皮膚炎,新生児皮膚炎,小児性皮膚炎,限局性掻爬皮膚炎,毒性/刺激性接触湿疹,アレルギー性接触湿疹,I型またはIV型光アレルギー性接触湿疹,接触性じんま疹,発汗傷害型湿疹,老化によるしわ,日焼け傷害およびかゆみが挙げられる。
【0034】
本発明の組成物により治療することができる他の皮膚疾患としては,以下のものが挙げられる:
−乾癬:尋常性乾癬,薄片湿疹,乾癬膿疱症,乾癬性関節症,乾癬性紅皮症;
−しゅさ;−光皮膚炎:急性および慢性放射性皮膚炎(UVおよびイオン化放射線療法),慢性光線性皮膚炎,光じんま疹(日光性じんま疹),多形性皮膚炎;
−痒疹:急性p.simplex(ストロフルス,じんま疹丘疹症),亜急性,慢性;
−アクネ:尋常性,若年性および成人性アクネ(丘疹,膿疱,結節を有するアクネ,すなわち,結節性,小結節性アクネ),集簇性挫瘡(特定の形態:汗腺膿瘍),激症挫瘡,アクネ四徴,新生児挫瘡,老年性アクネ,機械型のアクネ(擦過傷アクネ),化粧品挫瘡,重複感染アクネ(Staphylococci)を伴う毛包炎,職業関連型のアクネ(例えば塩素アクネ);
−褥瘡性および潰瘍性下腿;
−欠乏,低活性皮膚:局所掻爬皮膚炎鼻瘤,魚鱗癬,乾皮症;
−口腔周辺皮膚炎。
【0035】
組成物中に用いるべき詳細な用量は,疾病または疾患の重篤度によって異なり,医師の判断および各患者の状況に応じて決定すべきである。ただし,原則として,約0.001%−約50%のテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を,油基材または乳濁液基材,例えば,水中油タイプおよび油中水タイプの乳濁液中に含むクリーム,ローションまたは軟膏を,毎日2−3回またはそれ以上適用することが,最適な治療または予防応答を与えるのに十分であろう。治療は,症状が軽減されるまで,通常は少なくとも2日間,好ましくは5−10日間延ばすことができる。本発明の組成物の成分には,あったとしても低い毒性しかないことを考慮すると,より長い治療も禁忌されない。好ましい態様においては,本発明の組成物は,約0.01%−約25%のテルメステイン,約0.1%−約10%のテルメステイン,約0.1%−約5%のテルメステイン,約0.1%−約2%のテルメステイン,約0.1%−約1%のテルメステイン,約0.5%−約1%のテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を含む。別の好ましい態様においては,本発明の組成物は,約0.01%,0.1%,0.5%,1%,2%,5%,10%,20%,25%のテルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を含む。
【0036】
別の態様においては,他の活性成分は,皮膚の疾病または疾患を治療または予防するために,テルメステインと同じ組成物中でまたは別の組成物中で,併用投与することができる。好ましくは,追加の活性成分は,別の医薬組成物中で併用投与する。別の態様においては,追加の活性成分は,別の組成物中で,テルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩を含む本発明の組成物の投与と同時にまたはその後に併用投与する。他の局所用薬剤の例としては,限定されないが,皮膚軟化剤,サリチル酸,コールタール,アントラリン,局所用ステロイド,局所用コルチコステロイド(例えば,ジフロロアソンジアセテート,クロベタゾールプロピオネート,ハロベタゾールプロピオネート,ベタメタゾンジプロピオネート,フルオシノニド,ハルシノニド,デソキシメタゾン,トリアムシノロン,フルチカゾンプロピオネート,フルオシノロンアセトニド,フルランドレノリド,モメタゾンフルオエート,ベタメトゾン,フルチカゾンプロピオネート,フルオシノロンアセトニド,アクロメタゾムジプロピオネート,デソニドおよびヒドロコルチゾン),局所用ビタミンD3類似体(例えば,カルシポトリエン),局所用レチノイド(例えば,タザロテーン)が挙げられる。ある態様においては,別の薬剤は全身投与される薬剤である。全身的に投与される薬剤の例としては,限定されないが,全身コルチコステロイド(例えばトリアムシナロン),葉酸アンタゴニスト(例えばメトトレキセート),レチノイド(例えばアセトレチン)およびシクロスポリンが挙げられる。
【0037】
本発明はまた,本発明の組成物の成分の1またはそれ以上を充填した1またはそれ以上の容器,例えば,チューブ,バイアル,アンプル,ビンなどを含む薬学的パックまたはキットを提供する。そのような容器に付属することができるものとしては,医薬品または生物学的製品の製造,使用または販売を規制する政府機関により発行される書式での通知が挙げられ,この通知はヒトへの投与のための製造,使用または販売の機関による認可を反映する。好ましい態様においては,本発明の組成物は,柔軟な袋に入った一回用量または多数回用量の形で存在することができる。好ましくは,本発明の組成物は,患者が使用するための局所投与に適したクリームとして包装される。
【実施例】
【0038】
以下の実施例により本発明をより詳細に説明する。
実施例1−テルメステインクリーム(0.01重量%)
【表1】

【0039】
実施例2−テルメステインクリーム(0.01重量%)
【表2】

【0040】
実施例3−テルメステインクリーム(2重量%)
【表3】

【0041】
実施例4
30名の患者を評価する。この実験におけるすべての患者は,種々の原因の皮膚炎を患っている。
患者を実施例1に記載の組成物で治療する。組成物は1日に1−4回,皮膚炎の部位に局所的に適用する。
治療の終わりに,皮膚炎の程度を評価する。組成物の使用は,以下のいずれかの因子:皮膚の赤み,炎症,乾燥,かゆみ,落屑等により評価して,皮膚炎の重篤度を軽減させるであろう。
【0042】
当業者には明らかなように,本発明の精神および範囲から逸脱することなく,本発明の多くの改変および変更をなすことができる。本明細書に記載される特定の態様は,例示のためにのみ提供され,本発明は,添付の特許請求の範囲に関して,ならびにそのような特許請求の範囲により権利を与えられるすべての均等の範囲に関してのみ限定されるべきである。そのような改変は,添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0043】
本明細書において引用されるすべての参考文献,特許および非特許文献は,各個別の刊行物または特許または特許出願が特定的にかつ個別的にすべての目的についてその全体を本明細書の一部としてここに引用すると示されているのと同じ程度に,すべての目的についてその全体を本明細書の一部としてここに引用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩,および薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物であって,局所投与に適した組成物。
【請求項2】
組成物がテルメステインおよび薬学的に許容しうる担体から本質的になる,請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が,クリーム,ゲル,ローション,懸濁液,スプレーまたは軟膏の形態である,請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
組成物が,クリーム,ゲルまたはローションの形態である,請求項3記載の組成物。
【請求項5】
さらに界面活性剤,安定化剤/保存料,香味料,または共可溶化剤を含む,請求項1,2,3または4記載の組成物。
【請求項6】
さらに抗細菌剤,消毒剤,抗真菌剤,鎮痛剤,皮膚軟化剤,または局所麻酔を含む,請求項1,2,3,4,または5記載の組成物。
【請求項7】
0.01%のテルメステイン,0.1%のヒアルロン酸ナトリウム,10.1%のパルミチン酸エチルヘキシル,6.0%のペンチレングリコール,4.5%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.5%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.5%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,1.2%の酢酸トコフェロール,1.7%のカルボマー,1.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.5%のピロクトンオラミン,0.387%の水酸化ナトリウム,0.85%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および61.103%の水を含む医薬組成物。
【請求項8】
0.01%のテルメステイン,0.1%のヒアルロン酸ナトリウム,10.1%のパルミチン酸エチルヘキシル,6.0%のペンチレングリコール,4.5%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.5%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.5%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,1.2%の酢酸トコフェロール,1.7%のカルボマー,1.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.5%のピロクトンオラミン,0.387%の水酸化ナトリウム,0.85%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および61.103%の水から本質的になる医薬組成物。
【請求項9】
0.01%のテルメステイン,11.0%のパルミチン酸エチルヘキシル,7.0%のペンチレングリコール,4.0%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.0%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.0%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,2.0%の酢酸トコフェロール,1.0%のサリチル酸,0.785%の水酸化ナトリウム,1.8%のカルボマー,0.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.35%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および59.805%の水を含む医薬組成物。
【請求項10】
0.01%のテルメステイン,11.0%のパルミチン酸エチルヘキシル,7.0%のペンチレングリコール,4.0%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.0%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.0%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,2.0%の酢酸トコフェロール,1.0%のサリチル酸,0.785%の水酸化ナトリウム,1.8%のカルボマー,0.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.35%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および59.805%の水から本質的になる医薬組成物。
【請求項11】
2.0%のテルメステイン,10.0%のパルミチン酸エチルヘキシル,6.1%のペンチレングリコール,5.0%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.0%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.0%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,1.0%の酢酸トコフェロール,0.762%の水酸化ナトリウム,0.7%のカルボマー,0.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.5%のピロクトンオラミン,0.35%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.1%のヒアルロン酸ナトリウム,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および61.938%の水を含む医薬組成物。
【請求項12】
2.0%のテルメステイン,10.0%のパルミチン酸エチルヘキシル,6.1%のペンチレングリコール,5.0%のアラキルアルコール,ベヘニルアルコール,アラキルグリコシド,4.0%のステアリン酸グリセリル,PEG−100ステアリン酸,4.0%のブチレングリコール,2.5%のカプリロイルグリシン,1.0%の酢酸トコフェロール,0.762%の水酸化ナトリウム,0.7%のカルボマー,0.6%のエチルヘキシルグリセリン,0.5%のピロクトンオラミン,0.35%のアラントイン,0.3%のDMDMヒダントイン,0.1%のヒアルロン酸ナトリウム,0.08%のEDTA二ナトリウム塩,0.05%のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル,0.02%の没食子酸プロピル,および61.938%の水から本質的になる医薬組成物。
【請求項13】
皮膚の疾病または疾患を治療または予防する方法であって,請求項1−12のいずれかに記載の組成物を,そのような疾病または疾患を治療または予防するのに有効な量で,皮膚の疾病または疾患の部位に局所的に投与することを含む方法。
【請求項14】
疾病または疾患が,アトピー性皮膚炎(湿疹),アレルギー性接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,放射線皮膚炎,乾癬,乾皮症およびアトピーからなる群より選択される,請求項13記載の方法。
【請求項15】
さらに,皮膚の疾病または疾患を治療または予防するのに有効な追加の活性な薬剤を含む第2の組成物を局所投与することを含む,請求項13記載の方法。
【請求項16】
テルメステインまたはその薬学的に許容しうる塩の,皮膚の疾病または疾患の治療用の局所用薬物の製造における使用。
【請求項17】
皮膚の疾病または疾患が,アトピー性皮膚炎(湿疹),アレルギー性接触皮膚炎,脂漏性皮膚炎,放射線皮膚炎,乾癬,乾皮症およびアトピーからなる群より選択される,請求項16記載の使用。


【公表番号】特表2007−508264(P2007−508264A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530119(P2006−530119)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011228
【国際公開番号】WO2005/037275
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(502041901)シンクレア ファーマシューティカルズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】