説明

テレビ制作技術

テレビ制作システム(300)は、ニュース番組のようなテレビ番組の自動化に対して、それぞれが一つまたは複数の制作デバイスによって実行されるための一つまたは複数の動作を定義する状態メモリオブジェクト(S-MEM)を利用することによって簡略化をもたらす。S-MEMはコントロールパネル(302)上の一つまたは複数のアクチュエータを制御して、コントロールパネル上の各アクチュエータが選択されたS-MEMに依存して種々の制作装置の種々の機能を制御できるようにするはたらきをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〈関連出願への相互参照〉
本出願は米国特許法35USCの第119条(e)に基づき、2004年1月20日に出願された米国仮出願第60/537,875号の優先権を主張するものであり、該出願はここに参照によって組み込まれる。
〈技術分野〉
本出願はテレビ制作の事前プログラミングのためのシステムに、そのような事前プログラミングを簡略化し、制作物の厳密なタイミングへのオペレーターの制御を向上させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ番組の制作は複雑な仕事である。伝統的な方法はタレントと技術スタッフの協力および協調を要求し、幅広いオーディオおよびビデオ装置を使用した。これはテレビのニュース番組の制作において特に明白である。そのような番組は一般に「ライブ」で制作され、複数の事前録画された要素、一人または複数のライブ司会者および番組の流れと興味レベルに寄与する複雑な制作上の効果を具現する。多くのテレビ組織はニュース放送を制作しており、そのような組織は最大数の視聴者を引きつけ、保持する強い競争力を持つ。ほとんどの視聴者は、テンポの速い、複雑な視覚効果などを含む音声・画像のための洗練された制作技術を使ったニュース番組を望んでいる。そのような複雑さは多数の装置オペレーターを必要とし、よって制作途中でのミスの可能性を高めることになる。こうした理由のため、工程をある程度自動化し、オペレーターの仕事を単純化する改良されたユーザーインターフェースを提供しようとする多くの試みがなされてきた。米国特許5,115,310(Takano et al.)および米国特許5,892,507(Moorby et al.)は、テレビ制作工程に自動化および改良されたユーザーインターフェースの要素を加えようとする過去の試みを表している。
【0003】
米国特許6,452,612(Holtz et al.)は自動化されたテレビ制作システムの従来技術の現状を最もよく例示する。Holtz et al.は、テレビ番組、特にニュース番組のために必要とされる複雑な動作のほとんどの事前プログラミングを許容し、それにより制作中にオペレーターが必要とする作業を最小限にするシステムを記載している。Holtz et al.のシステムはタイムラインを利用する。各イベント(何らかの制作装置の状態の変化またはそれに与えられる何らかの新規コマンドとして定義される)はタイムライン上で、ある割り当てられた時間枠を受ける。タイマーを作動させると、プロセッサが各イベントをタイムライン上のその指定された時刻に実行し、それにより割り当てられた時間内にイベントが完了することを許容する。Holtz et al.の特許はイベントを「遷移マクロ」として特徴付けており、そのような遷移マクロのそれぞれは、音声のフェードや映像のワイプなどのような、時間が決められた個別の制作活動をいくつか含むことができる。
【0004】
そのような遷移マクロを自動的に中断なく実行することは、生出演タレントを含む制作については、一定の困難を呈することがある。台本を読む人物は典型的には時によってわずかに異なるスピードで読む。そのため、「生放送」中にある特定の項目を読むための所要時間は、リハーサルの時に録画された時間とはある程度異なってくる可能性が高い。咳やある単語でつまずくといった予測不可能なできごとが、ライブ制作の際の実際のイベント時間の不確定さに加わってくる。経験を積んだタレントにとっても、そうした相違は、小さいながら、単純な自動タイムライン駆動システムでは不満足となるに十分な有意さにとどまる。テレビ視聴者は、単語が途切れたり不適切な間があったりといった不備には非常に敏感である。そのような問題を示す番組は何であれ、視聴者を長期間保持できない可能性が高い。高品質制作は、ライブの出演者およびその他の要因によって決まる実際のタイミングに応じて手動でイベントのトリガーを行うことを必要とする。Holtz et al.はその特許においてこの問題に、タイムライン中に挿入するための「ステップ・マーク」または「ポーズ・イベント」を導入することで対処している。ポーズ・イベントは、タイマーの実行を中断することによって、その後のイベントの自動トリガーを効果的に打ち負かす。
【0005】
Holtz et al.のシステムにおいては、保存されているイベントは単一の被制御デバイスを指すだけである。新たな番組セグメントがたとえばビデオ切り換え器の選択、別のマイクのフェードインおよびカメラレンズのズームを必要とするとき、こうしたイベントのプログラミングは、この新たなセグメントの遷移を達成するために別個に行わなければならない。この単純な例よりもずっと複雑でより多数のイベントの生成を必要とするようなその他の番組遷移もありうる。
【0006】
複雑な遷移のプログラミングは典型的には多くの別個のイベントに関わる。典型的なテレビ制作システムが通例多数の別個のデバイスを含んでいることからすると、送信のための特定の場面を実現するためにある遷移を達成するのに必要とされるイベントのすべてを配列することは、しばしば問題であることが判明する。さまざまな制作装置のそれぞれの数多くの個別動作のうちから選択をすることは非常に時間がかかり、プログラミングを骨の折れる仕事にしている。
【0007】
実際上、ある番組セグメントから次のセグメントへの変化は、典型的には制御されるデバイスの多くにおける同時または緊密に協調された変化を必要とする。有益にも、Holtz et al.のシステムは、一つまたは複数のデバイスを制御するための一つまたは複数のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を提供し、ビデオ切り換え器、オーディオミキサーおよびデジタル効果デバイスといったデバイスを制御するために通常使用される大きくて複雑なコントロールパネルを設ける必要をなくしている。しかし、このアプローチにも限界がある。GUIは決定的な制御の調整のためには必ずしも好ましいユーザーインターフェースではない。多くの動作は、特にビデオ装置上では、オペレーターがコントロールを調整しながら制御調整の結果をビデオ画面で見ることを必要とするが、GUIの動作はしばしばオペレーターがビデオ画像ではなくGUIを見ることを必要とする。物理的なコントロールの「感じ」がGUIの使用よりも好ましい状況は他にも数多くある。
【0008】
Holtz et al.システムにおいては、ビデオワイプ、オーディオフェードなどといったすべてのダイナミックな遷移は、番組タイマーの制御のもとでの事前プログラミングを必要とする。しかし、高品質のテレビ制作を実現するためには、時にオペレーターはそのような遷移のスピードを変えたり、あるいは映像や音声の遷移をわずかにずらしたりする必要がある。そうした高度なことは、制作の間、オペレーターがさまざまな制作装置の物理的なコントロールを利用できる場合にのみ行える。しかし、上で論じたように、そのような装置に通常供給されている物理的なコントロールパネルは大きくて複雑であり、そのようなコントロールパネルの配列の操作に一人の人が責任をもつのは一般に実際的ではない。上に論じたような今日の制作装置に付随する欠点は、典型的には、所望のずれを実現するために必要とされるコントロールパネルの配列のいっさいの制御を一人のオペレーターが扱うことを排除してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、前述した不都合な点を克服するテレビ制作技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の原理のある好ましい実施形態によれば、テレビ番組を制作するための少なくとも一つの制作デバイスを制御する方法が提供される。該方法は、まず前記少なくとも一つの制作デバイスの複数の状態を確立することによって始まる。各状態は前記デバイスによって実行可能な少なくとも一つの動作に対応する。前記少なくとも一つの制作デバイスの状態の状態は対応するメモリオブジェクトとして保存され、該メモリオブジェクトは実行すると前記一つの制作デバイスをして、場面の生成につながる前記少なくとも一つの動作を実行せしめる。各メモリオブジェクトの選択に反応して、その状態メモリオブジェクトに関連付けられた前記少なくとも一つの動作に基づいて前記少なくとも一つの制作デバイスの動作を制御するよう、少なくとも一つのアクチュエータが作動させられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願の原理によればテレビ制作システムは、ニュース番組のようなテレビ番組の自動化に対して、それぞれが一つまたは複数の制作デバイスによって実行されるための一つまたは複数の動作を定義する状態メモリオブジェクト(S-MEM: State Memory Object)をパラメータ化することによって簡略化をもたらす。S-MEMは典型的にはそれが生成する場面に基づいてパラメータ化される。このようにして、S-MEMはスタイルによって、つまり対応する場面の「見かけ」あるいは「見え方」によって分類できる。このようにして、ディレクターは、利用可能なS-MEMのうちから、一連の場面について特定の見え方を維持するものを選ぶべく選択を行うことをより容易に行える。本願の原理に基づくさまざまな実施形態および対応する背景技術の記述はテレビのライブのニュース制作に焦点を当てるが、当業者は本願の原理は、ライブであろうとのちの送信のために録画されるのであろうと、他の複雑なテレビ制作にも等しく当てはまることを認識するであろう。
【0012】
本願の原理のテレビ制作技術を理解するためには、今日の制作技術について手短に論じておくことが役に立つ。図1は、従来技術に基づく、テレビニュース番組のようなテレビ番組を作成することに関連した一般的な作業フローの構成を示している。ニュースリポーター10がニュース項目を用意する。その一部は編集済みビデオおよび付随する音声を含む完成した番組セグメントの形を取ることができる。その他のニュース項目は部分的にのみ完成したストーリーを含むだろう。送信時に生出演タレントが読むための台本がついている編集済みビデオの形である。さらにほかの項目は台本だけからなるかもしれない。米国カリフォルニア州ネヴァダ・シティのトムソン・ブロードキャスト・アンド・メディア・ソリューションズから発売されているニュース編集システム(News Edit System)のような報道室コンピュータシステム(NRCS: Newsroom Computer System)12は、こうした項目のそれぞれに付随する資産を登録する。ニュース番組の制作に責任をもつ報道プロデューサー14は内容に関する決定を行う。プロデューサー14は提出されたニュース項目すべてを「ニュース価値」について吟味して、番組形式についての既知の規則とともにコマーシャル中断の構造などと一緒にして、どの項目を含めるかを決定し、「進行順」16を生成する。進行順16は項目の順番をその継続時間とともに指定する。プロデューサー14は進行順をNRCS12に入力してディレクター18によるさらなる洗練に回す。ディレクター18は進行順をその番組のために利用可能な技術的な設備の知識と一緒に使って、技術摘要20を作成する。伝統的には技術摘要は番組を作成するスタッフ全員が使用する印刷文書をなしていた。スタッフには技術ディレクター22が含まれる。技術ディレクターは、他の制作スタッフ24とともにオーディオミキサー38、ビデオ切り換え器40ならびに可能性としてはロボット式レンズおよびドリーをもつ一台または複数のカメラ42を制御する。
【0013】
図2は、本願の原理に基づくテレビ制作工程の修正された作業フローを示している。図2の作業フローは図1の作業フローと共通する多くの類似点があり、同様の参照符号は同様の要素を表している。図1の作業フローと同様に、図2に示された本願のテレビ制作工程に対応する作業フローは進行順16の生成までは同じ動作シーケンスを有している。この点でディレクター18は番組を事前制作できる。ディレクター18は進行順16を使い、その際、オーディオミキサー38、ビデオ切り換え器40ならびに可能性としてはロボット式レンズおよびドリーをもつ一台または複数のカメラ42を含むものとして示されているような利用可能な制作装置を考慮に入れる。ディレクター18は、摘要に基づいて番組の逐次のセグメントを作成する。しかし、そのような装置に通常付随するさまざまなコントロールパネルを生身のオペレーターに操作させる代わりに、プレゼンテーションシステム36が装置の設定を実行する。プレゼンテーションシステム36は一つまたは複数のグラフィカルユーザーインターフェースを含むことができ、任意的に、種々の制作装置の一部または全部を、あるいはそのコントロールのサブセットを必要に応じて動作させることができる一つまたは複数のコンテキスト依存コントロールパネル(図4〜7に関連してさらに詳細に説明する)を含むことができる。各セグメントが完成されるにつれて、ディレクター18は、表示装置(図示せず)上の表示のための場面として現れるその番組セグメントを生成するためにさまざまな制作装置によって実行される必要のある動作のすべてを具現する状態メモリオブジェクト(S-MEM)30を確立する。S-MEMオブジェクトのシーケンスがイベントリスト32をなす。こうして、事前制作の完成の際には、イベントリスト32は、全部合わせて番組の全セグメントを表すS-MEMオブジェクト30のシーケンスを有している。
【0014】
そのような事前制作に続いて、制作段階が開始できる。この段階では、プレゼンテーションシステム36は、オーディオミキサー38、ビデオ切り換え器40ならびに可能性としてはロボット式レンズおよびドリーをもつ一台または複数のカメラ42を含むものとして示されているような制作装置を、摘要に従ってS-MEMの実行についてのイベントをトリガーすることによって、制御する。各S-MEM30をイベントリスト32から呼び出すと、プレゼンテーションシステム36は、さまざまな制作装置にコマンドを発する。コマンドは、各装置をしてS-MEMに記録されている特定の状態にはいらしめる。
【0015】
各セグメントが終わる際に、ディレクター18は「次へ」コマンド34を発し、プレゼンテーションシステム36は適切な制作装置が次のS-MEMによって定義されている特定の状態にはいるようコマンドを発する。各S-MEM30は典型的には有限の継続時間をもち、よってディレクター18は番組の期待される所要時間を見ることができる。継続時間は二つの種類がありうる。絶対継続時間は精密な長さを有しており、固定所要時間をもつ事前記録されたソース素材(ビデオ、オーディオなど)のために用途を見出す。この場合、絶対継続時間をもつS-MEMの完了は、手動の「次へ」コマンド34の必要なく、自動的に次のイベントをトリガーするはたらきをすることができる。
【0016】
しかし、生出演タレントに関わるセグメントについては、近似継続時間の使用が好ましい。近似継続時間は番組の所要時間を予測するのを支援するが、後続のイベントへの進行は常に手動による開始を必要とする。生出演タレントの使用に本来的であるタイミングの変動に対応するためである。
【0017】
図3A、3Bは、テレビニュース番組のようなテレビ番組の自動化された制作を可能にするための本願の原理を具現するテレビ制作システム300のブロック概略図である。システム300の中心にあるのはコンテキスト依存コントロールパネル302であり、これは図4でより詳細に説明するが、ディレクター18が上で論じたようなS-MEMの使用によって複数の制作デバイスを個別に制御するのを許容するためのものである。そのような制作デバイスは、既存のデジタルニュース制作システム(Digital News Production System)306の一部をなす、サーバー305のような一つまたは複数のビデオ・プレイアウト・デバイスを含んでいることができる。コントロールパネル302を介して制御されるその他のデバイスは一台または複数のテレビカメラ306、付随するカメラロボット機構308、キャラクタジェネレーター310およびスチールビデオ画像を保存するためのスチール記憶312を含んでいることができる。
【0018】
カメラ306、キャラクタジェネレーター310およびスチール記憶312からのビデオ信号はビデオ切り換え器313に渡り、このビデオ切り換え器がコントロールパネル302の制御のもとで入力信号の間で選択的に切り換えを行う。図示した実施形態では、切り換え器313はさまざまなデジタルビデオ効果を実行し、スタンドアローンのDVEデバイスの必要をなくしている。しかし、システム300は一つまたは複数の別個のDVE(図示せず)を含んでいてもよい。切り換え器313は、送信および/または録画のためのビデオ番組出力とプレビューモニター(図示せず)による受信のためのプレビュー出力との両方を設けている。図示してはいないが、ビデオ切り換え器313は一つまたは複数のデバイスからのビデオを受信することもできる。そうしたデバイスは少しだけ例を挙げれば、ビデオテープレコーダー、ビデオカートリッジ機および/または衛星受信機といったものがある。
【0019】
コントロールパネル302はオーディオミキサー314も制御する。オーディオミキサー314はデジタルカート(digital cart)機316ならびに一つまたは複数のスタジオマイクロホン318からの音声入力信号を受け取る。さらに、オーディオミキサー314は、再生サーバー304ならびに一つまたは複数のオーディオテープレコーダー(図示せず)および/または一つまたは複数の衛星受信機(図示せず)といった一つまたは複数のデバイスから入力信号を受信できる。オーディオミキサー314は、番組オーディオ出力のほか、インターコム出力およびモニタリング用スピーカーなど(図示せず)による音声モニタリングのための出力を与えることができる。
【0020】
コントローラ320は、コントロールパネル302の、ビデオ切り換え器313、オーディオミキサー314およびビデオ切り換え器デバイス選択器322へのインターフェースの役割をする。ビデオ選択器322はコントロールパネル320がカメラ306、カメラロボット機構308、キャラクタジェネレーター310およびスチール記憶312のうちの一つまたは複数を制御のために選択できるようにする。コントローラ320はコントロールパネル302によって制御可能なさまざまな要素とのインターフェースとなるための適切な入出力ドライバを好適に備えたパソコンなどの形を取ることができる。コントロールパネル302に付随して、一つまたは複数のハードウェア制御デバイス324があり、図2のディレクター18が、コントローラ320が受け取るためで、最終的には適切なデバイスに制御のために送信されるための、一つまたは複数のコマンドを入力できるようにしている。コントロールパネル302はまた、カメラロボット機構308、カメラ306およびオーディオミキサー314それぞれについてのグラフィカルユーザーインターフェース326、327および328も含んでいる。そのようなグラフィカルユーザーインターフェースは、提供される視覚ディスプレイを含むことができる。
【0021】
図3A、3Bのテレビ制作システム300は、キャラクタジェネレーター310およびスチール記憶312のほかに遠隔コンピュータ332に結合したメディアオブジェクトサーバー(MOS: Media Object Server)ゲートウェイをも含むことができる。MOSゲートウェイ330はデジタルニュース制作システム(図示せず)へのインターフェースを提供し、プロデューサー14によってなされた更新の受信がそのようなデバイスによって受信されることを許容する。
【0022】
図4は、図1のプレゼンテーションシステム36の簡略化されたブロック図を示しており、プレゼンテーションシステムがS-MEMを確立し、パラメータ化する仕方を示している。プレゼンテーションシステム36はコンピュータなどの形の処理ユニット100を含んでいる。処理ユニット100は双方向バスを通じてS-MEMの系列301、302、303、…30nを保存しているメモリ403へのリンクを享受する。ここで、nは0より大きな整数であり、S-MEMの系列はテレビ制作のセグメント(場面)の系列を表している。
【0023】
上で議論したように、S-MEM301のようなそれぞれのS-MEMは、ある特定のセグメントを作成するための、一つまたは複数の制作デバイスによって実行可能な動作の集合からなる。図示した実施例では、S-MEM301は、第一のカメラ(CAM1)に関するパン、チルトおよびズーム動作、同様に第二のカメラ(CAM2)に関するパン、チルトおよびズーム動作、ならびに第一、第二、第三のライト(それぞれLIGHT1、LIGHT2、LIGHT3)の点灯を含む。さらに、S-MEM301は二つの追加的な動作をも含む。それぞれビデオ切り換え器410およびデジタルビデオ効果(Digital Video Effect)デバイス412のうちの個別の一つを、それぞれ切り換え器内のメモリ位置23およびDVE内のメモリ位置46の内容に基づいて特定の状態にすることに関する動作である。実際上は、切り換え器410およびDVE412は、切り換え器の場合には2つのビデオソースの間での切り換え、フェードまたはワイプ、DVEの場合には特定のビデオ効果のような特定のデバイス状態を保存できる位置をもつメモリを有している。S-MEM301のようなある特定の制作デバイスメモリ位置への参照を含むあるS-MEMが実行されると、その制作デバイスはその位置の内容によって指定される状態にはいる。
【0024】
さまざまなテレビ制作デバイスは多様な動作を実行できる。同様に、ビデオ切り換え器410およびDVE412はそれぞれ多様な異なるステップを有することができる。よって、テレビ制作システム300のようなテレビ制作システムについて、ほとんど無限の数のS-MEMが存在できる。S-MEM選択を容易にするため、S-MEMは、コマンド(すなわち各デバイスが画像を実現するためにしなければならないこと)によってではなく、場面(すなわちS-MEMを実行した結果生じる画像、つまりある画像中に見えるもの)によることに基づいてパラメータ化される。
【0025】
このようにしてS-MEMをパラメータ化することは、テレビ番組を事前制作するために必要とされる努力を大幅に軽減する。もちろん、プロセッサ100は、一つまたは複数の付随する制作デバイスの必要とされる状態を生成することによって各S-MEMを確立し、その後記録することができる。ある特定のテレビ番組のより高い整合性を実現するため、ディレクターはいくつかの「スタイル」S-MEMを定義し、それによりS-MEMをパラメータ化することができる。ある場面を事前プログラミングしようとするディレクターは、たとえば、標準的な「ツーショット」などを表す、以前に定義された「スタイル」S-MEMを選択することができる。このスタイルS-MEMはテンプレートとしてはたらき、番組の確立された「見え方」と整合する標準化された場面のために必要とされるパラメータのほとんどを確立するだろう。その場合、ディレクターは、事前制作されている番組のために構想される精密な場面のための厳密なパラメータを確立するのに必要であるかもしれないような制御変化だけを適用することになる。制作する場面によってS-MEMをパラメータ化することはS-MEM選択を大幅に容易にする。
【0026】
実際上は、スタイルの定義(すなわちS-MEMのパラメータ化)は制作に先立って行われる。この意味で、各スタイルは番組の語彙要素に相当するものをなす。作家が文章を作成するのにさまざまな語彙要素を選ぶのとちょうど同じように、ディレクターは番組を作成するのに特定のスタイルをもつ、あるいは望むなら種々のスタイルをもつさまざまなS-MEMを選択する。ディレクターがある特定の見え方を求める場合、ディレクターはそのスタイルに関連付けられたS-MEMのうちから選択をする。こうして、スタイルによってS-MEMをパラメータ化することは選択の努力を大幅に軽減する。実際上は、プロセッサ100または別の要素は自分でスタイルを製造し、各スタイルに対応するS-MEMを付随するスタイルライブラリに入れることができる。
【0027】
プロデューサー14は、特定のS-MEMに関連付けられた特定の諸動作について詳しく知っている必要はない。典型的には、ある特定の番組は限られた数の関連するスタイルを有する。たとえば、ニュース番組は個々のアンカーパーソンに関連付けられたスタイルを有するだろう。プロデューサーがそのスタイルを選択すると、プロデューサーは次いでそのスタイルに対応するS-MEMのうちから選択をすることができる。これで番組制作のために必要とされる努力が大幅に軽減される。
【0028】
図5は、図4のコントロールパネル302の例示的な物理的レイアウトの平面図を描いている。コントロールパネル302は複数のランプ5001〜500xを含む。ここでxは0より大きな整数である。ランプ5001〜500xの少なくとも一部はある特定のS-MEMのコンテキストにおけるある特定の条件を表している。よって、たとえば、図5のS-MEM301との関連では、5001〜500xのうちの3つがそれぞれLIGHT1、LIGHT2、LIGHT3の作動を表すことになる。ランプのうちの他のものは、スイッチ410およびDVE412の特定の状態などといった、S-MEM301に関連付けられた他の動作を表すことができる。
【0029】
ランプ5001〜500xの一部は、一つもしくは複数のテレビカメラのような一つもしくは複数の専用デバイス、または専用機能、すなわち少しだけ例を挙げれば「撮影(take)」「プログラム(PGM)」および「編集(edit)」のような機能の状態を表すことができる。よって、そのようなランプは、S-MEMにはかかわりなく常にそのようなデバイスまたは特定の機能の状態を表すことになる。
【0030】
ランプ5001〜500xに加えて、コントロールパネル302は第一の組のアクチュエータ5021〜502y(ここでyは0より大きな整数)、第二の組のアクチュエータ5041〜504z(ここでzは0より大きな整数)、第三の組のアクチュエータ5061〜506p、第四の組のアクチュエータ5081〜508c(ここでcは0より大きな整数)ならびに少なくとも一つのジョイスティック510を含んでいる。図示した実施例では、組をなすアクチュエータ5021〜502zのそれぞれは押しボタンになっていて、専用の動作、たとえば「撮影」、あるいはある特定のS-MEMの実行のコンテキストにおける個別の動作を実行できる。
【0031】
図示した実施例では、第二の組のアクチュエータ5041〜504zのそれぞれはサーボ制御されたフェーダーになっている。押しボタン5021〜502zのそれぞれの場合と同様、これらのアクチュエータのそれぞれは専用の動作、たとえばフェーダー5041の場合はマスター・フェードまたはワイプ、あるいは特定のS-MEMのコンテキストに依存する動作を実行できる。よってたとえば、フェーダー5041〜504zのうちのある特定の一つがある特定のS-MEMのコンテキストにおけるオーディオフェードを実行しうる一方、別のS-MEMのコンテキストにおいては同じフェーダーがビデオワイプを実行してもよい。
【0032】
アクチュエータ5061〜506pはポテンシオメータや回転エンコーダのような回転デバイスになっている。これらのアクチュエータの一つまたは複数は、現在のS-MEMの実行にかかわりなく専用の機能を有していることができる。アクチュエータ5061〜506pのうち他のものは、ある特定のS-MEMのコンテキストにおいては一つまたは複数のデバイスに付随する機能を制御する一方、別のS-MEMのコンテキストにおいてはその同じアクチュエータが同じまたは異なるデバイスに付随する異なる機能を制御することができる。
【0033】
アクチュエータ5021〜502zのそれぞれのように、アクチュエータ5081〜508cのそれぞれは典型的に押しボタンになっている。大半がコンテキスト依存であった押しボタン5021〜502zと比較すると、押しボタン5081〜508cの大半は専用の役割を有している。少しだけ例を挙げれば「プレビュー(preview)」「次ページ(next page)」「カット(cut)」および「送信(transmit)」動作である。
【0034】
アクチュエータ510はジョイスティックになっており、その機能は典型的にはコンテキスト依存である。よって、ある特定のS-MEMの実行に依存して、ジョイスティック510は第一のテレビカメラをパンおよびチルトさせるはたらきをすることができる一方、別のS-MEMのコンテキストではジョイスティックはビデオ再生デバイスを動作させることもできる。
【0035】
最後に、コントロールパネル302は複数の音声レベルモニター5121〜512jを含んでいることができる。ここでjは0より大きな整数である。音声レベルモニターのそれぞれは、ある特定のS-MEMのコンテキストでは、典型的には棒状のインジケーターによって、たとえばマイクのような特定のオーディオデバイスのレベルの指標を提供する。よって、たとえば、ある特定のS-MEMとの関連では音声レベルモニターのうちのある所与のものがある特定のマイクの音声レベルを示し、別のS-MEMとの関連では同じオーディオインジケーターが別のマイクのレベルを示すことになる。
【0036】
実際には、音声レベルモニター5121〜512jのそれぞれはフェーダー5042〜504zのうちの対応するものと揃った位置にある。ある特定のS-MEMとの関連でフェーダー5042〜504zのうちの特定のものがマイクのような特定のオーディオデバイスを制御するという限りでは、そのフェーダーと整列している音声レベルモニターがその被制御デバイスのレベルを示すことになる。
【0037】
図5は、図4のコントロールパネル302の電気的なブロック図である。シングルボード・マイクロコンピュータ600はコントロールパネル302のためのコントローラとしてはたらく。マイクロコンピュータ600はアドレス、データおよび制御バスを有しており、バスを通じて該マイクロコンピュータはランダムアクセスメモリ602、フラッシュメモリ604および典型的には磁気ハードディスクドライブの形の大容量記憶装置606につながっている。実際上は、ハードディスクドライブ606はプログラム命令を含むだろう。一方、フラッシュメモリ604は基本入出力動作システム(BIOS)を含むことができる。マイクロコンピュータ600はインターフェース608および610を有している。それぞれイーサネット(登録商標)ネットワーク(図示せず)およびコンソールテレタイプとのインターフェースとなる。典型的にはメモリブロックなどを有するバックグラウンドデバッガ612はエラーをデバッグするためのデバッグプログラムを含んでいる。
【0038】
任意的なUSBポート614はコンピュータ600がデバイスとUSB接続を介したインターフェースをもつことを可能にする。クロック616は典型的には25MHzの周波数を有するが、これが乗算器618にクロックパルスを提供し、この乗算器がマイクロコンピュータ600にクロック616の2.5倍の周波数でクロック信号を提供する。媒体アクセス制御(MAC: Media Access Control)記憶ブロック620はマイクロコンピュータ600によって使用されるMACアドレスのための記憶を提供する。電源6211、6212および6213のそれぞれはマイクロコンピュータ600およびコントロールパネル302に付随するその他の要素にそれぞれ5ボルト、+12および−12ボルト、DCを提供する。
【0039】
マイクロコンピュータ600は情報を表示するために少なくとも一つのディスプレイ622を有する。実際上は、マイクロコンピュータは、少なくとも一つのビデオモニターのほかに一つまたは複数のタッチスクリーン(図示せず)、一つまたは複数の液晶ディスプレイ(LCD)を含むいくつかのディスプレイを有していてもよい。キーボードおよび/またはコンピュータマウスのような一つまたは複数の入出力デバイス624がマイクロコンピュータ600に接続されていて、オペレーターがプログラミング情報および/またはデータを入力できるようになっている。
【0040】
現場プログラム可能なゲートアレイ(FPGA)620はマイクロコンピュータ600とフェーダー5041〜504zとのインターフェースのはたらきをする。実際上は、フェーダー5041〜504zのそれぞれはFPGA620からデジタル‐アナログ・コンバータ626を介してアナログ信号を供給されるアナログフェーダーサーボ624を含んでいる。アナログ‐デジタル・コンバータ628はアナログフェーダーサーボ624によって生成されたアナログ信号をもとのデジタル信号に変換してFPGA620に入力できるようにする。FPGA620は回転エンコーダ5061〜506p、ボタン5021〜502xおよびジョイスティック510のマイクロコンピュータ600とのインターフェースにもなる。電気的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(Electrically Programmable Reads-Only Memory)622はFPGA622のためにその動作を助けるためのプログラム命令を保存している。
【0041】
動作においては、マイクロコンピュータ600は、どのS-MEMが現在アクティブであるかを考慮に入れて5001〜500xのランプのうち適切なものを作動させるはたらきをする。マイクロコンピュータ600は押しボタン5021〜502yのうちの一つまたは複数、フェーダー5041〜504zのうちの一つまたは複数、回転エンコーダ5061〜506pのうちの一つまたは複数、押しボタン5081〜508cのうちの一つまたは複数ならびにジョイスティック510を、アクティブなS-MEMに依存して作動させもする。同様に、マイクロコンピュータ600はオーディオ標示デバイス5121〜512jをアクティブなS-MEMに依存して割り当てる。
【0042】
以上に記載したコントロールパネル302は有益にも、オペレーターが個々の番組セグメントのためにさまざまな制作デバイスの種々の側面を制御することを許容する。過去には、一人の技術オペレーターは、すべてのデバイスの別個のコントロールパネルのすべてに物理的に届くことができないという理由のためにデバイスのすべてを制御するのは容易ではなかった。コンテキスト依存コントロールパネル302は一組の制御要素を提供し、その一つまたは複数が、ある特定の場面のコンテキストに依存して異なる時点で異なる制作デバイスの異なる機能を制御できる。このようにして、コントロールパネルの物理的な大きさが縮小され、それでいてオペレーターに必要な制御機能が提供されるのである。
【0043】
以上は、テレビ番組を事前プログラミングすることにおいてより大きな単純化を提供するテレビ制作技術を記載している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】テレビ番組を制作するための従来技術に基づく作業フロー構成を描いた図である。
【図2】テレビ番組を制作するための本願の原理に基づく作業フロー構成を描いた図である。
【図3A】本願の原理を具現するテレビ制作システムのブロック概略図の左半分である。
【図3B】本願の原理を具現するテレビ制作システムのブロック概略図の右半分である。
【図4】実行されたときにテレビ制作システムにおける一つまたは複数のテレビ制作デバイスの実行をトリガーする状態メモリオブジェクト(S-MEM)を示す、図2の作用部分におけるプレゼンテーションシステムの簡略化されたブロック概略図である。
【図5】本願の原理の別の側面に基づくコンテキスト依存コントロールパネルの平面図である。
【図6】図5のコンテキスト依存コントロールパネルを有する諸要素のブロック概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビ番組を制作するための少なくとも一つの制作デバイスを制御する方法であって:
前記少なくとも一つの制作デバイスの複数の状態を確立し、各状態は前記デバイスによって実行可能な少なくとも一つの動作に対応するものであり、
前記少なくとも一つの制作デバイスの状態を、対応するメモリオブジェクトとして保存し、該メモリオブジェクトは実行すると前記一つの制作デバイスをして場面の生成につながる前記少なくとも一つの動作を実行せしめるものであり、
各メモリオブジェクトの選択に反応して、その状態メモリオブジェクトに関連付けられた前記少なくとも一つの動作に基づいて、前記少なくとも一つの制作デバイスの動作を制御するよう、少なくとも一つのアクチュエータを作動させる
ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
テレビ番組を制作するための少なくとも一つの制作デバイスを制御するための装置であって:
それぞれの状態が前記デバイスによって実行可能な少なくとも一つの動作に対応するものであって、前記少なくとも一つの制作デバイスの複数の状態を確立する手段と、
前記少なくとも一つの制作デバイスの状態を、実行されると前記一つの制作デバイスをして場面の生成につながる前記少なくとも一つの動作を実行せしめるような対応するメモリオブジェクトとして保存する手段と、
各メモリオブジェクトの選択に反応して、その状態メモリオブジェクトに関連付けられた前記少なくとも一つの動作に基づいて、前記少なくとも一つの制作デバイスの動作を制御するよう、少なくとも一つのアクチュエータを作動させる手段、
とを有することを特徴とする装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2007−519381(P2007−519381A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551427(P2006−551427)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/002425
【国際公開番号】WO2005/071686
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】