説明

テープを含有する防弾製品

補強材料のテープを含有するシートの積層体の圧縮物を含有する防弾成形品であって、前記シートの少なくとも1枚は経糸および緯糸としてのテープの織物を含有し、前記テープの少なくとも数本は10mm以上の幅を有することを特徴とする、前記防弾成形品。上記防弾成形品の製造方法も特許請求されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープを含有する防弾製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テープを含有する防弾製品は当業界で公知である。
WO2006/107197には、コア材料が被覆材料よりも高い融点を有する、コア−被覆タイプのポリマー状テープを用いる、ポリマー状テープのラミネートを製造するための方法が記載されている。該方法は、ポリマー状テープをバイアステープとする工程、ポリマー状テープを配置する工程およびポリマー状テープを接合(consolidating)してラミネートを得る工程を有する。
EP1627719には、実質的に超高分子量ポリエチレンからなり、一定方向に配向したポリエチレンシートの複数が互いに角度をなしてクロスプライされ、そしていかなる樹脂、接合材料なども用いずに互いに接着されてなる防弾製品が記載されている。
WO2008/040506には、平行に同一方向を向いたテープの第1の単層を形成し、平行に同一方向を向いたテープの第2の単層を形成し、そしてこれらの単層を、各単層中のテープが同じ方向に整列し、1つの単層中のテープがこれと隣接する他の単層中のテープとずれるように積層する、ポリマー状テープ単層の少なくとも2枚から累積ラミネートを生成するプロセスが記載されている。ここで形成される積層体を、次いで接合してラミネートを形成する。所望により、ラミネートを、例えば1つのラミネート中のテープが隣接するラミネート中のテープと直交するように積層することによって、パネルを形成してもよい。
WO2008/040510には、同一方向に整列したポリマー状テープの少なくとも1層を含有する織物を生成するプロセスが記載されている。該織物は、テープが結合糸で織られており、テープは接合温度以下の温度において糸とともに接合されている。同一方向に整列したポリマー状テープの各単層は、直交する方向で相互に結合される。
【0003】
US2007/0070164には、その少なくとも一部が、編み込まれ熱融合された一軸延伸テープファイバー要素から形成されたマット構造が記載されている。このテープは、配向ポリマーの基部またはコア、および熱融合可能なポリマーの被覆層の少なくとも1層を有する。経糸ストリップおよび充填ストリップを融合するために、系を加熱してストリップの表面層を融合するが、テープのコアは溶融しない。
US5,578,370には、ポリプロピレンコアおよびポリエチレン/ポリプロピレン表面層を有するテープを平織りまたは綾織りに織った、耐弾丸防御に好適な耐衝撃シートが記載されている。
EP1403038には、成形品に補強テープを装着することが記載されている。これは、織物布の形でなされることができる。テープは、好ましくはコア−表面層テープである。この文献には、テープを含有するシートの積層体の圧縮物は記載されていない。
EP1908586には、テープをずらして配列して層にすることが記載されている。
EP191306には、繊維に基づく防弾材料が記載されている。この繊維はテープまたはリボンであってもよい。この繊維は、例えば織物であることができる。UHMWPEを使用することができる。
US5,595,809には、織物繊維からの切断ストリップに基づく防弾材料が記載されている。このストリップをさらに再び織ってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に言及した文献はそこそこの性能を有する防弾材料を記載しているけれども、未だ改良の余地がある。特に、高い防弾性能を低い面重量および良好な安定性、特によく制御された層剥離耐性、とを組み合わせた防弾材料の必要がある。本発明は、そのような材料を提供する。
本発明の材料は加工上も有利である。当業界で公知の防弾材料の多くにおいては、単層中に同一方向のテープが使用されており、該単層は次いで積層されて防弾材料を形成する。この積層は、クロスプライを形成するように行われる。すなわち、2つの隣接する単層が、同一方向を向く単層中の繊維またはテープの方向がある角度、一般には隣接する単層中の繊維またはテープの方向に対して90°の角度、をなすように配置される。このクロスプライ積層プロセスは、防弾材料の製造において高価な工程である。従ってこのクロスプライ積層プロセスを不要とするプロセスが必要である。本発明は、そのようなプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、補強材料のテープを含有するシートの積層体の圧縮物を含有する防弾成形品であって、
前記シートの少なくとも1枚は経糸および緯糸としてのテープを含有する織物シートであり、前記テープの少なくとも数本は10mm以上の幅を有する、前記防弾成形品に関する。
【0006】
最小幅10mm以上のテープの使用により、成形品の防弾性能が驚くほど向上することが分かった。さらにこの発明により、良好な層剥離耐性を伴ってマトリクス材料を低い含量で配合することが可能になった。
本発明のさらなる利点およびその具体的な実施態様は、以下の説明により明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、テープは、長さ、すなわち物体の最大寸法、が、幅、すなわち物体の2番目に小さい寸法、および厚さ、すなわち物体の最少寸法、よりも大きく、さらに幅が厚さよりも大きい物体として定義される。より詳しくは、長さと幅との間の比は一般に2以上であり、テープの幅および積層体の寸法によってこの比はより大きくてもよく、例えば4以上、または6以上である。この比の最大値は本発明において臨界的ではなく、加工上のパラメータによるであろう。一般的な値として、長さと幅との比の最大値200,000を挙げることができる。幅と厚さとの間の比は、一般に10:1よりも大きく、特別には50:1よりも大きく、さらにより特別には100:1よりも大きい。幅と厚さとの間の比の最大値は本発明において臨界的ではない。この値は一般に2,000:1以下である。
テープの幅は10mm以上である。幅がより広いテープを選択することにより、織物の単層に基づく防弾材料の防弾性能が向上することが分かった。テープの幅は、好ましくは20mm以上であり、より特別には40mm以上である。テープの幅は、一般に200mm以下である。テープの厚さは、一般に8ミクロン以上であり、特別には10ミクロン以上である。テープの厚さは、一般に150ミクロン以下であり、より特別には100ミクロン以下である。
【0008】
本明細書中、シートという用語は、補強材料のテープを含有する個々のシートを意味する。シートは個別に他のシートと組み合わされてシートの複数に該当することができる。以下に説明するように、このシートはマトリクス材料を含有していても含有していなくてもよい。
本発明において、防弾成形品中のシートの少なくとも1枚は、緯糸および経糸としてのテープの織物を含有する。緯糸および経糸としてのテープの織物が1枚を超えると、本発明の効果が増大することは明らかである。より特別には防弾成形品中のシートの30%以上、より特別には50%以上、なおいっそうより特別には70%以上、さらにより特別には85%以上、なおいっそう特別には95%以上が、緯糸および経糸としてのテープの織物を含有することが好ましい。これと類推的に、使用するテープの30%以上、より特別には50%以上、なおいっそうより特別には70%以上、さらにより特別には85%以上、なおいっそうより特別には95%以上が、上述したように幅10mm以上であり、任意的に明細書中で説明したその他の好ましい態様に適合することが好ましい。
【0009】
テープを経糸および緯糸に充当することを可能とする種々の方法がある。緯糸テープを1本、2本またはこれを超える本数の経糸テープ上を交差させることができ、連続する緯糸テープは交互にまたは平行に充当することができる。
この観点における1つの実施態様は、経糸および緯糸を単純な十字交差パターンを形成するように配列する平織りである。これは、交互の各列が多数の交差点を形成するように、各緯糸テープを、各経糸テープの上および下を通すことによって作られる。
別の実施態様はサテン織りに基づく。この実施態様では、2本以上の緯糸テープが経糸テープ上に浮くか、あるいは逆に2本以上の経糸テープが1本の緯糸テープ上に浮く。
さらに別の実施態様は綾織りに由来する。この実施態様では、1本以上の経糸テープを、2本以上の緯糸の上および下に交互に規則的に繰り返すように織る。これにより、織物に直線状または断続的な対角線状の「畝(rib)」の視覚効果を作り出す。
【0010】
さらに別の実施態様は篭目織りに基づく。篭目織りは、2本以上の経糸繊維が2本以上の緯糸繊維と交互に交織りするほかは、基本的に平織りと同じである。2本の経糸が2本の緯糸と交差する構成は2×2篭目と呼ばれるが、この繊維の構成は対称的である必要はない。従って8×2、5×4などを有することも可能である。
さらに別の実施態様はモックレノ織りに基づく。モックレノ織りは、規則的な間隔であるが通常は数テープ離れたところどころの経糸テープを、交互に上下する交織り(interlace)から逸脱させ、その代わり2本以上のテープごとに交織りする、平織りの変形である。これは、緯糸方向にも類似の頻度で発生し、その総合的な効果によって厚さが増大し、表面がより凹凸な、多孔性を付加された織物となる。
【0011】
それぞれの織りタイプは、織りと結合した特徴を有する。例えば緯糸が1本または少ない本数の経糸テープと交差し、個々の緯糸テープが交互にまたはほとんど交互に使用されている系が用いられると、シートは比較的多数の交差点を有することとなろう。この文脈において交差点とは、緯糸テープがシートの片面、A面、からシートの他の面、B面、に向かい、そして隣接する緯糸がシートのB面からA面に向かう地点である。
緯糸が1本または限定本数の経糸テープと交差するか、あるいは逆に経糸が1本または限定本数の緯糸テープと交差する系が用いられると、多数の歪んだ線が現れるであろう。歪んだ線は、1本のテープがシートの片面から他の面へ向かう箇所に発生する。これは、交差するテープの縁によって形成される。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、これらの歪んだ線は、シートのX−Y方向における衝撃エネルギーの消失に寄与すると信じられている
本発明の文脈においては、平織りを使用することが好ましいであろう。何故ならば、平織りは比較的に製造が容易であるからであり、良好な防弾性能と結合された材料の性質が90°回転させても変化しない点で均一だからである。
テープの織り方は当業界で公知である。EP1354991が、興味あるテープ織りプロセスについて言及している。
経糸および緯糸中の補強材料のテープは、同じであっても相違していてもよい。これらは異なる材料、異なる厚さ、および異なる幅であることができる。相違するテープの使用は、最終製品の特性を最適化するために有利であろう。しかし同じテープの使用は、加工の効率性の理由から有利であろう。ある実施態様では、緯糸方向のテープの幅と経糸方向のテープの幅との間の比が5:1〜1:5の間であり、特別には2:1〜1:2の間である。
【0012】
本発明のある実施態様では、防弾成形品は複数のシートを含む。このシートは緯糸としておよび経糸としてのテープの織物を含有し、複数のシートは相互の表面上に積層されており、この積層は、1枚のシートのテープの交差点が隣接するシートのテープの交差点の上に重ならないようにして行われる。この方法では、より均一な製品が得られる。
【0013】
本発明における補強材料のテープとしては、いかなる天然または合成の材料のテープも原則として使用することができる。
例えば金属、半金属、無機材料、有機材料またはこれらの組み合わせで作られたテープを使用することができる。防弾用途における使用に好適なテープは、より具体的には、高い引張強度、高い引張弾性率、および高い破断エネルギーで表される高いエネルギー吸収性を要求することが必要である。テープの引張強度は1.0GPa以上であり、引張弾性率は40GPa以上であり、そして引張破断エネルギーは15J/g以上であることが好ましい。
ある実施態様におけるテープの引張強度は1.2GPa以上、より特別には1.5GPa以上、さらにより特別には1.8GPa以上、その上により特別には2.0GPa以上である。引張強度はASTM D882−00に準拠して測定される。
別の実施態様におけるテープの引張弾性率は50GPa以上である。この弾性率はASTM D822−00に準拠して測定される。より特別には、テープの引張弾性率は80GPa以上であり、より特別には100GPa以上である。
別の実施態様におけるテープの引張破断エネルギーは20J/g以上、特別には25J/g以上である。
【0014】
引張破断エネルギーは、ASTM D882−00に準拠して、50%/分の歪み速度を用いて測定される。引張破断エネルギーは、応力−歪み曲線の下部の単位重量あたりのエネルギーを積分することによって計算される。
引張強度が高い好適な無機テープは、例えばガラス、カーボンおよびセラミック材料からのテープである。引張強度が高い好適な有機テープは、例えばアラミド製、液晶ポリマー製、およびポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィンケトン(POK)、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(PIPDないしM5)およびポリアクリロニトリルの如き高配向ポリマー製のテープである。複数材料を組み合わせて使用することも考えられる。特に、ポリエチレンおよびポリプロピレンのようなポリオレフィンと、ガラス、カーボンまたはセラミック材料との組み合わせが考えられる。
【0015】
本発明においては、ポリエチレンおよびポリプロピレンのホモポリマーおよびコポリマーを使用することが好ましい。これらのポリオレフィンは、1種以上の他のポリマー、特に他のアルケン−1−ポリマー、を少量含有していてもよい。
本発明のシートにおけるテープとしては、高分子量リニアポリエチレンの高延伸テープが好ましい。高分子量とは、300,000g/モル以上の重量平均分子量を意味する。リニアポリエチレンとは、100C原子あたりの側鎖が1個未満であること、好ましくは300C原子あたりの側鎖が1個未満であることを意味する。このポリエチレンは、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテンおよびオクテンの如き共重合可能な他のアルケンの1種以上を5モル%以下含有していてもよい。
【0016】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、すなわち重量平均分子量が500,000g/モル以上のポリエチレン、のテープの使用が特に好ましいであろう。分子量が1×10g/モル以上のテープ、特に繊維またはテープ、の使用が特に好ましいであろう。本発明における使用に好適なUHMWPEテープの分子量の最大値は臨界的ではない。一般的な値として1×10g/モルの最大値を挙げることができる。分子量分布および分子量の平均値(Mw、Mn、Mz)は、ASTM D 6474−99に準拠して、160℃の温度において溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を用いて測定される。高温試料調製装置(PL−SP260)を備えた適当なクロマトグラフ装置(Polymer Laboratories社製、PL−GPC220)を使用することができる。このシステムは、5×10〜8×10グラム/モルの分子量範囲の16個のポリスチレン標準(Mw/Mn<1.1)を用いて較正される。
【0017】
分子量分布は、溶融レオメトリーを用いても測定することができる。熱酸化分解を避けるため、測定に先立ってIRGANOX 1010の如き酸化防止剤0.5重量%を加えたポリエチレン試料を、先ず50℃、200バールにおいて焼結する。焼結したポリエチレンから得られた直径8mm、厚さ1mmのディスクをレオメーター中、窒素雰囲気下で平衡融点を大きく超えるまで急速に加熱する(〜30℃/min)。ディスクを、例えば180℃に2時間以上維持する。試料とレオメーターディスクとの間のずれを、オシロスコープの助力によって調べることができる。動的実験の最中に、レオメータからの2つの出力信号、すなわち1つの信号は正弦歪みに対応し、他の信号は得られる応力応答に対応する、をオシロスコープによって連続的にモニターする。歪みの値が小さいときに得られる完全な正弦応力応答は、試料とディスクとの間にずれがないことを示す。レオメトリーは、TA Instruments社製のRheometrics RMS 800の如きプレート−プレートレオメータを用いて行うことができる。ポリマーの溶融で決定された弾性率対周波数のデータからモル質量およびモル質量分布を決定するために、TA Instruments社から提供された、Meadアルゴリズムを利用するOrchestrator Softwareを使用することができる。データは、160〜220℃の間の等温条件下で得られる。よい一致を得るためには、0.001〜100rad/sの間の角周波数領域および0.5〜2%の間の線状粘弾性領域における一定歪みを選択すべきである。190℃の参照温度において時間−温度の重ね合わせが適用される。周波数0.001(rad/s)未満の弾性率を測定するために、応力緩和実験を行うことができる。この応力緩和実験では、固定温度におけるポリマー溶融に対する1回の一時的な変形(ステップ歪み)が試料上に印加されて保持され、応力低下の時間依存性が記録される。
【0018】
本発明の好ましい実施態様では、分子量が高く、分子量分布が狭いUHMWPEテープが使用される。分子量分布の狭い材料の選択により、均一な結晶構造を有する材料を形成することができ、そしてこれとともに向上された機械的特性および破壊靱性を与える。このタイプのテープは、参照の容易のため、以下、狭分子量分布テープないしMwMnテープと記されるであろう。
本発明のある実施態様におけるテープの少なくとも数本は、重量平均分子量が100,000グラム/モル以上であり、Mw/Mn比が6以下のポリエチレンテープである。これらの基準に適合するテープの選択により、特に有利な特性の成形防弾材料が得られることが分かった。
この実施態様において、防弾成形品中に存在するテープの合計重量に基づいて計算して20重量%以上、特別には50重量%以上、より特別には75重量%以上、さらにより特別には85重量%以上または95重量%以上がMwMnテープであることが好ましい。ある実施態様においては、防弾成形品中に存在するテープのすべてがMwMnテープである。
【0019】
MwMnテープの重量平均分子量(Mw)は、100,000グラム/モル以上、特別には300,000グラム/モル以上、より特別には400,000グラム/モル以上、さらにより特別には500,000グラム/モル以上、特別には1×10グラム/モル〜1×10グラム/モルの間である。
MwMnテープの分子量分布は比較的に狭い。このことは、Mw(重量平均分子量)のMn(数平均分子量)に対する比が6以下であることによって説明される。Mw/Mn比は、より特別には5以下、さらにより特別には4以下、なおいっそうより特別には3以下である。特別には、Mw/Mn比が2.5以下またはさらに2以下の材料の使用が考えられる。
分子量およびMw/Mnの要求に加えて、本発明のある実施態様で使用されるMwMnテープは、高い引張強度、高い引張弾性率、および高い破断エネルギーで表される高いエネルギー吸収性を有することが好ましい。
【0020】
ある実施態様において、MwMnテープの引張強度は2.0GPa以上、特別には2.5GPa以上、より特別には3.0GPa以上、さらにより特別には4GPa以上である。この引張強度はASTM D882−00に準拠して測定される。
別の実施態様では、MwMnテープの引張弾性率は80GPa以上、より特別には100GPa以上、さらにより特別には120GPa以上、なおいっそうより特別には140GPa以上、あるいは150GPa以上である。この弾性率はASTM D822−00に準拠して測定される。
別の実施態様では、MwMnテープの引張破断エネルギーは30J/g以上、特別には35J/g以上、より特別には40J/g以上、さらにより特別には50J/g以上である。この引張破断エネルギーは、ASTM D882−00に準拠して50%/分の歪み速度を用いて測定される。応力−歪み曲線の下部の単位重量あたりのエネルギーを積分することにより計算される。
【0021】
本発明の好ましい実施態様において、MwMnポリエチレンテープは、そのXRD回折パターンによって証明されるように、分子配向性が高い。
本発明のある実施態様では、200/110一面配向パラメータΦが3以上であるMwMnテープが防弾材料に使用される。200/110一面配向パラメータΦは、テープ試料のX線回折(XRD)パターンにおいて反射配置として測定された200面と110面とのピーク面積比として定義される。
【0022】
広角X線散乱(WAXS)は、物の結晶構造に関する情報を与える技術である。この技術は、特に広角に散乱したブラッグピークの分析に間する。ブラッグピークは、長距離の構造秩序からの結果である。WAXS測定は、回折パターン、すなわち回折角2θ(これは回折ビームと初期ビームとの間の角度である。)の関数としての強度を与える。
200/110一面配向パラメータは、テープ表面についての200および110結晶面の配向の広がりに関する情報を与える。200/110一面配向パラメータの大きいテープ試料は、200結晶面がテープ面に平行に高度に配向している。引張強度が高く、引張破断エネルギーが高いと、一般に一面配向が高いことが分かった。結晶がランダムに配向した試料の200面と110面とのピーク面積比は0.4付近である。しかし、本発明のある実施態様で好ましく使用されるテープでは、指数200の結晶がフィルム表面に平行に好ましく配向していて200/110ピーク面積比の値が高く、従って一面配向パラメータの値が大きい。
【0023】
200/110一面配向パラメータの値は、X線回折を使用して測定することができる。Cu−Kα放射線(K 波長=1.5418Å)を生成する多層膜X線集光素子(ゲーベル鏡)を装着したBrucker−AXS D8回折計が好適である。測定条件:2mmの散乱防止スリット、0.2mm検出器スリットおよび生成機の設定40kV、35mA。テープ試料を、例えば幾らかの両面装着テープによりサンプルホルダー上に装着する。テープ試料の好ましい寸法は、15mm×15mm(L×W)である。試料が完全に水平となり、そしてサンプルホルダーと整列するように注意すべきである。次いで、テープ試料を有するサンプルホルダーを、D8回折計中に反射形状に設置する(テープの法線がゴニオメーターに垂直且つサンプルホルダーに垂直)。回折パターンのための走査範囲は、ステップサイズ0.02°(2θ)、ステップごとに積算時間2秒にて5°〜40°(2θ)である。測定中、サンプルホルダーは、さらなるサンプルの配向を来たさないように、テープ法線周りを1分あたり15回転でスピンする。次いで、回折角2θの関数として強度を測定する。200面および110面のピーク面積は、標準的な波形分離ソフトウェア、例えばBrucker−AXS社製のTopasを用いて決定される。200面および110面の反射がシングルピークである場合、波形分離プロセスは確実であり、適当な波形分離手順を選択して実行することは、当業者の能力の範囲内である。200/110一面配向パラメータは、200面および110面の面積の間の比として定義される。このパラメータは、200/110一面配向の定量測定である。
【0024】
本発明の防弾材料のある実施態様で使用されるMwMnテープの200/110一面配向パラメータは3以上である。この値は、好ましくは4以上であり、より特別には5以上あるいは7以上である。10以上、さらには15以上のようなより高い値が特に好ましいであろう。このパラメータの理論的な最大値は、110面のピーク面積がゼロのときの無限大である。強度および破断エネルギーが大きいと、多くの場合200/110一面配向パラメータが大きな値を示す。
【0025】
本発明のある実施態様では、該態様において使用されるMwMnテープのDSC結晶性は74%以上、より特別には80%以上である。このDSC結晶性は、示差熱量計(DSC)、例えばPerkin Elmer DSC7、を用いて以下のようにして測定することができる。要するに、既知量(2mg)の試料を30から180℃まで1分あたり10℃で加熱し、180℃において5分間保持し、次いで1分あたり10℃で冷却する。DSC走査の結果は、温度(x軸)に対する熱流量(mWまたはmJ/s;y軸)のグラフとしてプロットすることができる。結晶性は、走査の加熱領域からのデータを用いて評価される。主溶解転移(吸熱)開始の直ぐ下と決定された温度から融解の完了が観測された直ぐ上の温度までのグラフの下部の面積を定量することによって、結晶の融解転移における融解エンタルピーΔH(J/g単位)が計算される。次いで計算されたΔHを、結晶性100%PEについて融解温度約140℃において定量された融解エンタルピーの理論値(293J/gのΔH)と比較する。DSC結晶性指数は、百分率100(ΔH/ΔH)で表現される。
ある実施態様では、本発明で使用されるMwMnテープのDSC結晶性は85%以上、より特別には90%以上である。
【0026】
本発明のある実施態様で使用されるポリエチレンは、エチレンのホモポリマー、またはエチレンと、ともに一般に3個から20個の間の炭素原子を有する他のアルファ−オレフィンもしくは環状オレフィンであるコモノマーとのコポリマーであることができる。その例としては、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、シクロヘキセンなどを挙げることができる。炭素原子数が20個以下のジエン、例えばブタジエンまたは1−4ヘキサジエンの使用も可能である。本発明のプロセスで使用されるエチレンホモポリマーまたはコポリマー中のエチレンではないアルファ−オレフィンの好ましい量は、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下である。エチレンではないアルファ−オレフィンを使用する場合、一般には0.001モル%以上、特に0.01モル%以上、さらにより特別には0.1モル%以上の量で存在する。エチレンではないアルファ−オレフィンを実質的に使用していない材料を使用することが好ましい。本明細書の記載中、エチレンではないアルファ−オレフィンを実質的に使用していないという表現は、ポリマー中に存在するエチレンではないアルファ−オレフィンの量が、合理的に回避できない存在量のみであるとの意味を意図したものである。
【0027】
一般に、本発明で使用されるMwMnテープ中のポリマー溶媒は、0.05重量%未満、特には0.025重量%未満、より特別には0.01重量%未満である。
本発明に使用されるテープ、特にMwMnテープ、は、高い線密度とともに高い強度を有する。本願では線密度をdtexで表現する。これは、10,000メートルのフィルムのグラム単位の重量である。ある実施態様では、本発明のフィルムは、2.0GPa以上、特には2.5GPA以上、より特別には3.0GPa以上、さらにより特別には3.5GPa以上、その上により特別には4以上の、上記で特定したような強度とともに、3,000dtex以上、特には5,000dtex以上、より特別には10,000dtex以上、さらにより特別には15,000dtex以上あるいはさらに20,000dtex以上のデニールを有する。
本発明のある実施態様において、MwMnテープは、重量平均分子量が100,000グラム/モル以上、160℃における溶融直後に測定されるせん断弾性率Gが1.4MPa以下、Mw/Mn比が6以下である出発ポリエチレンを、ポリマー加工中のいかなる時点においてもその温度が融点を超えないような条件下で圧縮工程および延伸工程に供することを含むプロセスによって製造されたMwMnテープである。
【0028】
上記の製造プロセスの出発材料は、絡まりが高度にほぐれた(disentangled)UHMWPEである。このことは、重量平均分子量、Mw/Mn比および弾性率の組み合わせから知ることができる。出発ポリマーの分子量およびMw/Mn比についてさらなる説明および好ましい態様は、MwMnテープについて上述したところと同様である。本プロセスにおいては、特に、重量平均分子量が500,000グラム/モル以上、特には1×10グラム/モル〜1×10グラム/モルの間の出発ポリマーが好ましい。
上述したように出発ポリマーは、160℃における溶融直後に測定されるせん断弾性率Gが1.4MPa以下、より特別には1.0MPa以下、さらにより特別には0.9MPa以下、なおいっそうさらに特別には0.8MPa以下、なおいっそうさらに特別には0.7以下である。「溶融直後に」という言い回しは、ポリマーが溶融するやいなや、特にポリマーが溶融した後15秒以内に、弾性率を測定することを意味する。このポリマーの溶融により、典型的には数時間で弾性率が0.6〜2.0MPa増大する。
【0029】
160℃における溶融直後のせん断弾性率は、ポリマーの絡まりの程度の尺度である。Gは、ゴム状安定領域におけるせん断弾性率である。これは、今度は絡まり密度と逆比例する絡まり点間の平均分子量Mと関係する。熱動力学的に安定した溶融では絡まり点が均一に分布しており、MはGから式G=gρRT/Mによって計算することができる。ここで、gは1に設定された係数であり、ローはg/cm単位の密度であり、Rはガス定数であり、そしてTはK単位の絶対温度である。従って弾性率が低いと絡まり点間のポリマーの距離が長く、従って絡まりの程度が低いこととなる。検討で採用した方法では、絡まりの形成は文献(Rastogi,S.,Lippits,D.,Peters,G.,Graf,R.,Yefeng,Y.and Spiess,H.,“Heterogeneity in Polymer Melts from Melting of Polymer Crystals”,Nature Materials,4(8),1st August 2005,635−641およびPhD thesis Lippits,D.R.,”Controlling the melting kinetics of polymers;a route to a new melt state”,Eindhoven University of Technology, dated 6th March 2007, ISBN 978−90−386−0895−2)に記載されたのと同様に変化した。
この実施態様に使用される出発ポリマーは、エチレン、および任意的に上記で説明した他のモノマーの存在下で、シングルサイト重合触媒の存在下で、ポリマーが生成後直ちに結晶化するようにポリマーの結晶化温度よりも低い温度において重合する重合プロセスによって製造することができる。このことにより、特許請求した範囲のMw/Mn比を有する材料が与えられよう。
【0030】
反応条件は特に、重合速度が結晶化速度よりも遅くなるように選択される。これらの合成条件により、分子鎖は生成後直ちに結晶化することとなり、溶液または溶融状態から得られたものとはかなり異なる相当ユニークなモルフォロジーが得られる。触媒表面に形成される結晶のモルフォロジーは、結晶化速度とポリマーの成長速度との間の比に高度に依存する。さらに、この特別の場合には結晶化温度でもある合成温度は、得られるUHMW−PE粉末のモルフォロジーに強く影響することとなろう。ある実施態様では、反応温度は−50〜+50℃の間、より特別には−15〜+30℃の間である。触媒のタイプ、ポリマー濃度および反応に影響する他のパラメータと組み合わせていかなる反応温度が適切であるかを通常の試行錯誤によって決定することは、まさに当業者の能力の範囲内である。絡まりが高度にほぐれたUHMWPEを得るためには、合成中にポリマー鎖が絡むことを回避するように重合サイトが互いに十分に離れていることが重要である。このことは、結晶化媒体中に低濃度で均一に分散したシングルサイト触媒を使用することによって実現することができる。より特別には反応媒体中に、1×10−4モル触媒/L未満、特に1×10−5モル触媒/L未満の濃度が適切である。担持型のシングルサイト触媒も、生成中にポリマーの実質的な絡まりを回避するように活性点が互いに十分に離れているとの注意が払われる限り、使用することができる。本発明で使用されるポリエチレンの好適な製造方法は当業界で公知である。例えばWO01/21668およびUS20060142521が例示される。
【0031】
本発明で使用することのできる絡まりがほぐれたUHMWPEは、従来のUWMWPEの嵩密度と比較して極めて低い嵩密度を有する。より特別には、本発明のプロセスで使用されるUHMWPEの嵩密度は、0.25g/cm未満、特別には0.18g/cm未満、さらにより特別には0.13g/cm未満である。この嵩密度はASTM−D1895に準拠して測定することができる。以下のようにして、この値のよい近似が与えられる。正確に100mLの測定ビーカー中に、UHMWPE粉末の試料を入れる。余剰の材料をこそげ取った後、ビーカー内容物の重量を測定し、嵩密度を計算する。
【0032】
ポリマーは微粒子状、例えば粉末またはその他の適当な微粒子の形状で得られる。5,000ミクロン以下、好ましくは2,000ミクロン以下、より特別には1,000ミクロン以下の粒径の粒子が好適である。粒子の粒径は1ミクロン以上が好ましく、より特別には10ミクロン以上である。粒径分布は、レーザー線回折(PSD、Sympatec社製、Quixel)によって以下のようにして測定することができる。界面活性剤を含有する水中に試料を分散し、30秒間超音波処理して凝集/絡まりを解く。ポンプによって試料をレーザービーム中へ送り、散乱光を検出する。光回折の量を測定して粒径を求める。
ポリマー粒子を単一物、例えばマザーシートの形状、に統合するために、圧縮工程が行われる。ポリマーを配向して最終製品を製造するために、延伸工程が行われる。これら2つの工程は互いに直角の方向で行われる。これらの要素を1工程に結合すること、あるいは異なる複数の工程として行うこと、各工程で1つ以上の圧縮および延伸要素を行うことは、本発明の範囲内であることが特筆される。例えば本発明のプロセスのある実施態様において、このプロセスはポリマー粉末を圧縮してマザーシートを形成する工程、このプレートをロール処理してロール処理されたマザーシートを形成する工程およびこのロール処理されたマザーシートを延伸工程に供してポリマーフィルムを形成することを含む。
【0033】
本発明のプロセスにおいて印加される圧縮力は、一般に10〜10,000N/cm、特別には50〜5,000N/cm、より特別には100〜2,000N/cmである。圧縮後の材料の密度は一般に0.8〜1kg/dm、特別には0.9〜1kg/dmである。
このプロセスにおいて、圧縮およびロール処理工程は、一般にポリマーの非拘束融点(unconstrained melting point)から1℃以上低い温度、特別にはポリマーの非拘束融点よりも3℃以上低い温度、さらにより特別にはポリマーの非拘束融点よりも5℃以上低い温度において行われる。一般に圧縮工程は、ポリマーの非拘束融点よりも40℃以内の範囲で低い温度、特にはポリマーの非拘束融点よりも30℃以内の範囲、より特別には10℃以内の範囲で低い温度において行われる。
このプロセスでは、延伸工程は一般に、加工条件下におけるポリマーの融点よりも1℃以上低い温度、特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも3℃以上低い温度、さらにより特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも5℃以上低い温度において行われる。当業者が気付くように、ポリマーの融点は、ポリマーが置かれた状態に依存しよう。このことは、加工条件下の融点がケースバイケースで異なり得ることを意味する。プロセス中の伸長応力が急激に低下する温度は容易に決定することができる。一般に延伸工程は、加工条件下におけるポリマーの融点よりも30℃以内の範囲で低い温度、特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも20℃以内の範囲、より特別には15℃以内の範囲で低い温度において行われる。
【0034】
本発明のある実施態様において、延伸工程は個別の延伸工程の2つ以上を包含し、第1の延伸工程は第2よりも低い温度で行われ、そして任意的にさらなる延伸工程を行う。ある実施態様では、延伸工程は、さらなる延伸工程のそれぞれが先行する延伸工程の温度よりも高い温度で行われる、個別の延伸工程の2つ以上を包含する。
当業者には明らかなように、この方法は個々の工程を識別しうるように、例えば特定の温度の別個のホットプレート上にフィルムを供する形で行うことができる。この方法は、フィルムを、延伸工程の初期は低温に、そして延伸工程の終わりには高温にし、その間に温度勾配を付して連続的に行うこともできる。この実施態様は、例えば圧縮装置に最も近いホットプレート端部のゾーン温度が圧縮装置から最も遠いホットプレート端部のゾーン温度よりも低い温度ゾーンを備えたホットプレート上にフィルムを導くことによって行うことができる。
ある実施態様では、延伸工程中に加えられる最低温度と延伸工程中に加えられる最高温度との差は3℃以上、特別には7℃以上、より特別には10℃以上である。一般に、延伸工程中に加えられる最低温度と延伸工程中に加えられる最高温度との差は30℃以下、特別には25℃以下である。
出発ポリマーの非拘束融点は138〜142℃の間であり、当業者によって容易に測定することができる。上記の値を有することによって適当な処理温度の計算が可能になる。非拘束融点は、昇温速度10℃/分にて+30〜+180℃の温度範囲における窒素中のDSC(示差走査熱量測定)によって測定することができる。ここで、80〜170℃の最大の吸熱ピークの最大値が融点として評価される。
【0035】
従来のUHMWPEの加工においては、ポリマーの融点に非常に近い温度、例えば融点との差が1〜3℃以内の温度、において加工することが必要であった。本発明のプロセスに使用される特定の出発UHMWPEを選択することにより、従来技術において可能であったよりもさらにポリマーの融点から低い値において処理することが可能となることが分かった。このことにより処理温度範囲が広くなり、良好なプロセス制御が可能となる。
【0036】
強度2GPa以上の材料は、従来のUHMWPEの加工と比較して大きな変形速度で製造することができることも分かった。この変形速度は装置の製造能力に直接に関わる。経済上の理由により、フィルムの機械的特性に対して不利益な影響を及ぼさない限り最大限に大きな変形速度で製造することが重要である。特に、製品の強度を1.5GPaから2GPa以上に向上するために必要な延伸工程を1秒あたり4%以上の速度で行うプロセスによって、強度2GPa以上の材料を製造することが可能であることが分かった。従来のポリエチレンの加工では、この延伸工程をこの速度で行うことは不可能である。従来のUHMWPE加工では、例えば1ないし1.5GPaまでの強度への最初の延伸工程は1秒あたり4%を超える速度で行うことができるのに対し、フィルムの強度を2GPa以上の値に向上するために要求される最終工程は、1秒あたり4%を大きく下回る速度で行うことが必要であり、さもなければフィルムは破断するであろう。これとは対照的に本発明のプロセスでは、強度1.5GPaの中間フィルムを1秒あたり4%以上の速度で延伸して強度2GPa以上の材料を得ることが可能であることが分かった。さらに好ましい強度の値としては上述したところと同様である。この工程において印加される速度は、1秒あたり5%以上、1秒あたり7%以上、1秒あたり10%以上、あるいはさらに1秒あたり15%以上とすることができることが分かった。
【0037】
フィルムの強度は印加される延伸比と関連する。従って、この効果は以下のように説明することもできる。本発明のある実施態様では、延伸比80から、延伸比100以上、特別には120以上、より特別には140以上、さらにより特別には160以上までの延伸工程を上述の延伸速度において行うようにして、本発明のプロセス中の延伸工程を行うことができる。
さらに別の実施態様では、弾性率60GPaの材料から、弾性率80GPa以上、特に100GPa以上、より特別には120GPa、140GPa以上または150GPa以上の材料までの延伸工程を上述の延伸速度において行うようにして、本発明のプロセス中の延伸工程を行うことができる。
【0038】
高速延伸工程を開始するときの計算のために、出発時点において強度1.5GPa、延伸比80の中間製品および/または弾性率60GPaの中間製品をそれぞれ使用したことは、当業者には明らかであろう。このことは、出発材料が特定の強度、延伸比または弾性率の値を有する、別々の延伸工程を別個に行うことを意味するものではない。延伸工程中の中間製品として、これらの特性を有する製品を形成することができる。そして、特定の出発時特性の製品に戻って延伸比を計算することができる。上述の高い延伸速度は、1工程または複数工程の高速延伸工程を含む延伸の全工程が、加工条件下におけるポリマーの融点よりも低い温度で行うことが必要条件であることが特筆される。
この製造プロセスでは、ポリマーは粒子形状、例えば粉末の形状、で得られる。圧縮工程は、ポリマー粒子を単一物、例えばマザーシートの形状、に統合するために行われる。延伸工程は、ポリマーを配向して最終製品を製造するために行われる。これらの2工程は互いに垂直の方向で行われる。これらの要素は、1工程に統合することができ、あるいは各工程において1つ以上の圧縮または延伸要素が行われる別個の工程として行ってもよい。例えばある実施態様では、このプロセスは、ポリマー粉末を圧縮してマザーシートを形成する工程、このプレートをロール処理してロール処理されたマザーシートを得る工程およびこのロール処理されたマザーシートを延伸工程に供してポリマーフィルムを形成することを含む。
本発明のプロセスにおいて印加される圧縮力は、一般に10〜10,000N/cm、特別には50〜5,000N/cm、より特別には100〜2,000N/cmである。圧縮後の材料の密度は一般に0.8〜1kg/dmの間、特別には0.9〜1kg/dmの間である。
【0039】
上記圧縮およびロール処理工程は、一般にポリマーの非拘束融点から1℃以上低い温度、特別にはポリマーの非拘束融点よりも3℃以上低い温度、さらにより特別にはポリマーの非拘束融点よりも5℃以上低い温度において行われる。一般に圧縮工程は、ポリマーの非拘束融点よりも40℃以内の範囲で低い温度、特にはポリマーの非拘束融点よりも30℃以内の範囲、より特別には10℃以内の範囲で低い温度において行われる。
上記延伸工程は一般に、加工条件下におけるポリマーの融点よりも1℃以上低い温度、特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも3℃以上低い温度、さらにより特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも5℃以上低い温度において行われる。当業者が気付くように、ポリマーの融点は、ポリマーが置かれた状態に依存し得る。このことは、加工条件下に融点がケースバイケースで異なり得ることを意味する。プロセス中の伸長応力が急激に低下する温度は容易に決定することができる。一般に延伸工程は、加工条件下におけるポリマーの融点よりも30℃以内の範囲で低い温度、特別には加工条件下におけるポリマーの融点よりも20℃以内の範囲、より特別には15℃以内の範囲で低い温度において行われる。
この実施態様における出発ポリマーの非拘束融点は138〜142℃の間であり、当業者によって容易に測定することができる。上記の値を有することによって適当な処理温度の計算が可能になる。非拘束融点は、+30〜+180℃の温度範囲における窒素中のDSC(示差走査熱量測定)によって昇温速度10℃/分にて測定することができる。ここで、80〜170℃の最大の吸熱ピークの最大値が融点として評価される。
【0040】
圧縮工程を行うには従来からの装置を使用することができる。好適な装置としては、加熱ロール、エンドレスベルトなどを挙げることができる。
延伸工程は、ポリマーフィルムを製造するために行われる。この延伸工程は、従来技術の手段によって1つ以上の工程で行うことができる。適当な手段としては、両ロールが加工方向に回転し、そして第2のロールが第1のロールよりも速く回転する、組ロール上の工程の1つ以上にフィルムを導くことなどを挙げることができる。延伸は、ホットプレート上または空気循環型オーブン中で行うことができる。
合計延伸比は80以上、特別には100以上、より特別には120以上、さらにより特別には140以上、さらにより特別には160以上とすることができる。合計延伸比は、圧縮したマザーシートの断面積を、該マザーシートから製造された延伸フィルムの断面で除した値として定義される。
このプロセスは固体状態で行われる。最終のポリマーフィルムのポリマー溶媒含量は0.05重量%未満、特別には0.025重量%未満、より特別には0.01重量%未満である。
【0041】
本発明の防弾成形品は、マトリクス材料を含有していても含有していなくてもよい。「マトリクス材料」という語は、テープおよび/またはシートを相互に結合する材料を意味する。従来の繊維に基づく防弾材料においては、繊維を相互に付着して同一方向を向いた単層を形成するために、マトリクス材料が必要である。緯糸としておよび経糸としての双方のテープの織物を含有するシートを使用することにより、その織物構造を通してテープは互いに結合しているので、この理由によるマトリクス材料使用の必要性がなくなる。従ってこのことにより、マトリクス材料のより少ない使用またはマトリクス材料を全く使用しないことさえ可能であろう。
本発明のある実施態様において、防弾成形品はマトリクス材料を含有しない。マトリクス材料は、系の防弾効果に対する寄与がテープと比較して低いと信じられているが、マトリクスを含有しない実施態様は、重量比あたりの防弾効果の観点から効果的な材料を作ることができる。
本発明の別の実施態様において、防弾成形品はマトリクス材料を含有する。この実施態様では、マトリクス材料は材料の層剥離耐性を向上するために存在することができる。これは防弾性能にも寄与する。
【0042】
本発明のある実施態様において、マトリクス材料はシート自身の内部に供給され、テープ相互の接着に貢献し、織った後の織物を例えば安定化する。この実施態様は、例えばテープを、テープ織りプロセスを妨害しないが熱および/または圧力の印加後には材料の結合に貢献する材料とともに供給することによって得ることができる。
本発明の別の実施態様において、マトリクス材料はシート上に供給され、該シートを積層体内の別のシートと接着する。
マトリクス材料をシート上に供給する1つの方法は、シートの上面、底面または両面にマトリクス材料のフィルムの1枚以上を供給することである。所望により、例えば該フィルムをシートとともに加熱した加圧ロールまたはプレス機を通過させることにより、該フィルムはシートを接着させることができる。
マトリクス材料をシート上に供給する別の方法は、有機マトリクス材料を含有する液状物の一定量をシート上に塗布することである。この実施態様は、マトリクス材料を簡単に適用することが可能になるとの利点を有する。この液状物は、例えば有機マトリクス材料の溶液、分散液または溶融物であることができる。マトリクス材料の溶液または分散液を使用する場合、プロセスは、溶媒または分散媒を蒸発させるプロセスをも有する。さらに、マトリクス材料を真空中で塗布してもよい。液状材料は、場合に応じてシートの全表面上に均一に塗布してもよい。しかし、液状材料の形のマトリクス材料を、場合に応じてシートの表面上に不均一に塗布することも可能である。液状材料は、例えばドットもしくはストライプの形状または他の適当なパターン状に塗布することができる。
【0043】
本発明のある実施態様において、マトリクス材料は網の形で適用することができる。ここで、網とは不連続なポリマーフィルム、すなわち孔を有するポリマーフィルムである。このことにより、少ない重量のマトリクス材料を供給することが可能となる。
本発明の別の実施態様において、マトリクス材料はポリマー材料の細片、ヤーンまたは繊維の形状で適用される。後者は例えば繊維網または他のポリマー状繊維緯糸の織ったまたは不織のヤーンの形状である。ここでもこのことにより、少ない重量のマトリクス材料を供給することが可能となる。
上述した種々の実施態様において、マトリクス材料はシート上に不均一に分配される。本発明のある実施態様において、マトリクス材料は、積層体の圧縮物内で不均一に分配される。この実施態様では、積層体の圧縮物が、その多くは積層体の特性に有害である外部からの影響に遭遇するところに、より多くのマトリクス材料を分配することができる。
【0044】
有機マトリクス材料は、完全にまたは部分的にポリマー材料からなることができる。該ポリマー材料は、任意的に、ポリマーに通常用いられるフィラーを含有していてもよい。このポリマーは、熱硬化性もしくは熱可塑性または双方の混合物であることができる。柔らかいプラスチックを使用することが好ましく、有機的マトリクス材料には特に引張弾性率(25℃における)が41MPa以下のエラストマーであることが好ましい。非プラスチック性有機マトリクス材料の使用も考えられる。マトリクス材料の目的は、所望の箇所でテープおよび/またはシートを相互に接着することを助けることであり、この目的を達成するいかなるマトリクス材料も、マトリクス材料として好適である。
有機マトリクス材料の破断伸びは、補強テープの破断伸びよりも大きいことが好ましい。マトリクスの破断伸びは、3〜500%であることが好ましい。これらの値は、最終の防弾物品中のマトリクス材料そのものに適用される。
【0045】
シートに好適な熱硬化性物質および熱可塑性物質は例えばEP833742およびWO−A−91/12136に記載されている。好ましくはビニルエステル、不飽和ポリエステル、エポキシドまたはフェノール樹脂が、熱硬化性ポリマーの群からマトリクス材料として選択される。これらの熱硬化性物質は、通常、防弾成形品の圧縮中にシートの積層体が硬化される前には、部分硬化条件(いわゆるBステージ)においてシート状である。熱可塑性ポリマーの群からは、ポリウレタン、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリオレフィン、またはポリイソプレン−ポリエチレンブチレン−ポリスチレンもしくはポリスチレン−ポリイソプレンポリスチレンブロック共重合体の如き熱可塑性物質エラストマーブロック共重合体が、マトリクス材料として好ましく選択される。
【0046】
マトリクス材料を使用する場合、一般に0.2重量%以上の量で適用される。マトリクス材料は、好ましくは1重量%以上の量、より特別には2重量%以上の量、ある場合には2.5重量%以上の量で存在することができる。マトリクス材料は、一般に30重量%以下の量で適用される。マトリクス材料を30重量%を超えて使用しても、成形品の性能は一般に向上しない。大量のマトリクス材料が存在しても、パネルの防弾性能を常に良好にできるものではないと信じられる。従って、少量のマトリクス材料を使用することが好ましい。ある実施態様では、マトリクス材料は12重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは7重量%以下、時には6.5重量%以下の量で存在することが好ましいであろう。
【0047】
本発明の防弾材料に使用されるシートの積層体の圧縮物、および該材料そのものは、NIJ標準−0101.04 P−BFS性能テストのクラスIIの要求に適合するであろう。好ましい実施態様では前記標準のクラスIIIaの要求に適合し、より好ましい実施態様ではクラスIIIまたはより高いクラスの要求にさえ適合するであろう。この防弾性能は、好ましくは低い面重量、特別には19kg/m以下、より特別には16kg/m以下の面重量において実現される。ある実施態様では、積層体の面重量は15kg/mまで低くすることができる。積層体の最少の面重量は、要求される最少の防弾性によって与えられ、クラスに依存する。
【0048】
本発明の防弾材料のピール強度は、100mm/分のヘッド速度を用いる以外はASTM−D1876−00に準拠して測定して、5N以上であることが好ましく、より特別には5.5N以上である。
本発明の防弾製品における積層体中のシートの数は、最終の用途および個々のシートの厚さに依存して、一般に2枚以上、特別には4枚以上、より特別には8枚以上である。シートの数は一般に500枚以下、特別には400枚以下である。
本発明はまた、補強材料のテープを含有するシートの複数、ただしこのうちの少なくとも1枚は緯糸および経糸としてのテープの織物を含有する、を供給し、
これらを積層し、そして
この積層体を0.5MPa以上の圧力で圧縮する工程を含む、防弾成形品の製造方法にも関する。
印加される圧力は、妥当な性能を有する防弾成形品の形成を確保することを意図するものである。この圧力は0.5MPa以上である。50MPAの最大圧力を例示することができる。
【0049】
必要に応じて、マトリクスがシート相互の接着を補助するために、いかなるマトリクス材料もその軟化点または融点を超えることが必要であれば、そうなるように圧縮中の温度を選択する。昇温下の圧縮とは、成形品に、有機マトリクス材料の軟化点または融点を超え、テープの軟化点または融点よりも低い圧縮温度において一定の圧縮時間だけ圧力を与えるとの意味を意図するものである。
必要な圧縮時間および圧縮温度はテープの性質、存在するならばマトリクス材料の性質、および成形品の厚さに依存し、当業者は容易に決定することができる。
昇温下で圧縮を行うとき、圧縮された材料の冷却も加圧下で行うベきである。加圧下の冷却とは、冷却中、少なくとも成形品の構造がもはや常圧下で緩和して変形しないほど低温に到達するまでは、所定の最低圧力を維持するとの意味を意図するものである。ケースバイケースによってこの温度を決定することは当業者の能力範囲内である。可能であれば、所定の最低圧力における冷却は、有機マトリクス材料の大部分または全部が固化または結晶化し、補強テープの緩和温度を下回る温度に下がるまで行うことが好ましい。冷却中の圧力は、高温における圧力と同じである必要はない。成形品およびプレス機の収縮に起因する圧力の減少を相殺し、適当な圧力値が維持されるように、冷却中は圧力をモニターすべきである。
【0050】
マトリクス材料の性質により、シート中の補強テープが高分子量線状ポリエチレンの高延伸テープである防弾成形品の製造には、圧縮温度が好ましくは115〜138℃であり、一定圧力における70℃未満への冷却が効果的である。本明細書中、材料の温度、例えば圧縮温度は、成形品の厚さの半分における温度を意味する。
本発明のプロセスにおいて、積層体は個々のシートから出発して作ることができる。しかし、個々のシートはときには取扱いが困難である。従って本発明は、積層体が2〜16枚、一般には2、4または8枚、のシートを含む接合されたシートパッケージから作られる態様も包含する。接合されたとは、複数のシートが互いに強固に接着されているとの意味を意図するものである。シートパッケージを圧縮した場合でも、非常に良好な結果が達成される。
【実施例】
【0051】
実施例1
本発明の防弾材料を以下のように製造した。
超高分子量ポリエチレンのテープを平織りに織ることにより、シートを製造した。経糸として使用したテープの幅は20mmであり、厚さは64ミクロンであった。このテープの引張強度は1.81GPaであり、引張弾性率は100GPaであり、破断伸びは1.86%であった。このポリエチレンの分子量Mwは3.6×10グラム/モルであり、Mw/Mn比は8.3であった。緯糸として使用したテープの幅は25mmであるが、その他の特性は同じであった。
マトリクス材料の不存在下にシートを積層した。この積層体を、136〜137℃の温度、60バールの圧力にて圧縮した。材料を冷却し、プレス機から取り出して防弾成形品を形成した。このパネルの面重量は3.4kg/mであった。
NIJ IIIA 0.101.04に準拠して、530m/sの弾丸速度にて、このプレートの防弾性能を試験した。
弾丸エネルギーは2.19kJであり、SEAは644Jm/kgであった。これを、ポリエチレンテープの幅が6.4mmであり、強度特性が類似する、EP191306の表7中の試料24と比較すると興味深い(2.0GPaに相当する23.9g/デニールのテナシティ、および72GPaに相当する865.9グラム/デニールの弾性率。この例では、弾丸速度のV50値が1,164ft/sec(355m/sec)のときに34,7Jm/kgのSEAが得られている。)。
【0052】
実施例2:
積層前にシート上に均一層としてマトリクスを塗布したほかは、実施例1を繰り返した。使用したマトリクス材料は、Henkel社から市販のPrinlin B7137 ALであった。このパネルの面重量は3.4kg/mであり、マトリクス含量は4重量%であった。
NIJ IIIA 0.101.04に準拠して、523m/sの弾丸速度にて、このプレートの防弾性能を試験した。弾丸エネルギーは2.13kJであり、SEAは628Jm/kgであった。
【0053】
実施例3:
本発明の防弾材料を以下のように製造した。
超高分子量ポリエチレンのテープを平織りに織ることにより、シートを製造した。使用したテープの幅は40mmであり、厚さは64ミクロンであった。このテープの引張強度は2.2GPaであり、引張弾性率は148GPaであり、破断伸びは1.7%であった。このポリエチレンの分子量Mwは4.3×10グラム/モルであり、Mw/Mn比は9.8であった。経糸および緯糸として同じテープを使用した。
織物シート上に均一層としてマトリクスを塗布した。使用したマトリクス材料はHenkel社から市販のPrinlin B7137 ALであった。シートを積層し、この積層体を、130〜134℃の温度、60バールの圧力にて圧縮した。材料を冷却し、プレス機から取り出して防弾成形品を形成した。このパネルの面重量は17.4kg/mであり、マトリクス含量は4重量%であった。
NIJ IIIA 0.108.01(ハード鎧)に準拠して、このパネルの防弾性能を試験した。このパネルは弾丸を止めた。897m/sの弾丸速度のとき、3.86kJの弾丸エネルギーおよび222Jm/kgのSEAが得られることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強材料のテープを含有するシートの積層体の圧縮物を含有する防弾成形品であって、
前記シートの少なくとも1枚は経糸および緯糸としてのテープの織物を含有し、前記テープの少なくとも数本は10mm以上の幅を有する
ことを特徴とする、前記防弾成形品。
【請求項2】
テープが高分子量ポリエチレンテープである、請求項1に記載の防弾成形品。
【請求項3】
テープの幅が20mm以上、より特別には40mm以上である、請求項1または2に記載の防弾成形品。
【請求項4】
緯糸方向にあるテープの幅と、経糸方向にあるテープの幅との比が5:1〜1:5の間、特別には2:1〜1:2の間である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項5】
マトリクス材料を含有しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項6】
積層体の圧縮物がマトリクス材料を、特別には0.2〜30重量%の量で、より特別には0.2〜12重量%の量で含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項7】
シートのうちの少なくとも数枚はマトリクス材料を実質的に含有せず、そしてマトリクス材料が複数のシートの間隙に存在する、請求項11に記載の防弾成形品。
【請求項8】
緯糸および経糸としてのテープの織物を含有するシートの複数を含み、
これらシートは次々に上に重ねて積層されており、ただし、
1枚のシートのテープの交差点が、隣接する他のシートのテープの交差点の上に重ならないように積層が行われている、請求項1〜7のいすれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項9】
重量平均分子量が100,000グラム/モル以上であり、そしてMw/Mn比が6以下であるポリエチレンテープが使用されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項10】
ポリエチレンテープのMw/Mn比が5以下、特別には4以下、より特別には3以下、さらにより特別には2.5以下、なおいっそうより特別には2以下である、請求項9に記載の防弾成形品。
【請求項11】
ポリエチレンテープの200/110一面配向指数が3以上、好ましくは4以上、特別には5以上、より特別には7以上、さらにより特別には10以上、なおいっそうより特別には15以上である、請求項9または10に記載の防弾成形品。
【請求項12】
ポリエチレンテープの引張強度が2.0GPa以上、特別には2.5GPa以上、より特別には3.0GPa以上、さらにより特別には4GPa以上である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項13】
ポリエチレンテープの引張破断エネルギーが30J/g以上、特別には35J/g以上、より特別には40J/g以上、さらにより特別には50J/g以上である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の防弾成形品。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の防弾成形品の製造への使用に好適な、接合されたシートパッケージであって、
前記接合されたシートパッケージは2〜16枚のシートを含有し、各シートは補強材料のテープを含有し、
シートのうちの少なくとも1枚が、緯糸および経糸としてのテープの織物を含有することを特徴とする、前記接合されたシートパッケージ。
【請求項15】
補強材料のテープを含有するシートの複数、ただしこのうちの少なくとも1枚は緯糸および経糸としてのテープの織物を含有する、を供給し、
これらを積層し、そして
この積層体を0.5MPa以上の圧力で圧縮する工程を含む、防弾成形品の製造方法。

【公表番号】特表2011−522199(P2011−522199A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506674(P2011−506674)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055046
【国際公開番号】WO2009/133060
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(501469803)テイジン・アラミド・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】