ディザマトリクス最適化装置、画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法
【課題】マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段や回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段において発生する画質の劣化を防ぐ。
【解決手段】評価手段4によりマルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度や回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいてディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行ない、この評価結果に基づき求めたディザマトリクスの適応度に基づいて遺伝的アルゴリズム処理手段2により遺伝的アルゴリズム処理を実行し、ディザデータ出力手段5においては生成した遺伝子情報によりディザマトリクスを出力する。これにより、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合や回転多面鏡の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【解決手段】評価手段4によりマルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度や回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいてディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行ない、この評価結果に基づき求めたディザマトリクスの適応度に基づいて遺伝的アルゴリズム処理手段2により遺伝的アルゴリズム処理を実行し、ディザデータ出力手段5においては生成した遺伝子情報によりディザマトリクスを出力する。これにより、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合や回転多面鏡の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階調表現に用いられるディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置、このディザマトリクス最適化装置を備えるプリントシステム、デジタル複写機などの画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ、デジタル複写機、カラーレーザープリンタ、デジタルカラー複写機などの画像形成装置においては、電子写真エンジンの出力の高速化や低コスト化に伴い、新たな課題が発生してきている。
【0003】
この種のレーザプリンタなどの画像形成装置をさらに高速化するには、レーザビームを走査する回転多面鏡(ポリゴンミラー)を高速で回転させる必要がある。しかしながら、ポリゴンミラーを高速で回転させることは、技術的に非常に難しく、また、ポリゴンミラーは高速になるに従って回転ムラ、耐久性の低下、騒音の上昇等が発生し、安定した高品位の画像が得られなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解決するため、レーザからの複数本のレーザビームをポリゴンミラー等の回転多面鏡によって感光体上で同時に主走査方向に走査する、いわゆるマルチビーム型のレーザビームプリンタが提案されている。このようなマルチビーム型のレーザビームプリンタは、高速化が可能であり、しかも、ポリゴンミラーの回転速度はレーザビームの本数に応じて低下させることができる。例えば、レーザビームの本数が8本である場合には、レーザビームの本数が1本であるレーザビームプリンタに比べてポリゴンの回転速度が8分の1で済む。ゆえに、ポリゴンミラーは、回転ムラが低減し、耐久性の向上や騒音の低下を実現することができる。
【0005】
ところで、感光体上の複数のビームの各光量は、レンズなどの影響により同一でない場合がある。また、そもそもの各ビームの光量も必ずしも同一でなく、回路のばらつきや半導体レーザ素子のばらつきによって同一にはならない。さらに、ポリゴンを構成している反射面も、各反射面の反射率が必ずしも同一ではなく、製造工程上のばらつきをもってしまうため、感光体上におけるビーム光量は必ずしも同一とならない。これにより、画質が著しく損なわれるという問題が発生している。つまり、ビーム光量の違いは感光体上では電位差となって現れ、最終的にトナー付着量の差となる。
【0006】
さらに、出力エンジン(プリンタエンジン)がカラーレーザープリンタなどの場合、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各版で画像を形成(潜像を形成してこれを現像)するため、わずかな光量差が感光体の電位差となり、トナー付着量差となり、色違いにつながり、フルカラー連続プリントをした場合、同じ書き込みデータ値であっても、色違いが発生してしまうという不具合がある。
【0007】
このような不具合に対しては、特許文献1,2に記載されているように、ポリゴンミラーとディザの網点の位置関係を規定するのが一般的である。また、特許文献3においては、ビームの本数と網点の位置関係を規定するようにしている。
【0008】
一方、従来より、レーザプリンタ、デジタル複写機、カラーレーザープリンタ、デジタルカラー複写機など画像形成装置あるいは表示装置等に応用することのできる中間調処理に関する画像形成方法が用いられている。従来の中間調処理には、ディザ法による階調再現処理が多く用いられており、二値プリンタなどでも階調や色を表現することが可能になっている。
【0009】
ところで、ディザ法による階調表現処理を行なう際、高い品質の出力を得るためには、出力手段の特性に合ったディザマトリクスを用いる必要がある。このためには、出力手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化を行なうことが必要になる。このディザマトリクスの最適化を行なうには、ディザマトリクスに応じた画像出力を実際のプリンタエンジンを使って実施し、その出力画質が製品の目標とするレベルに近づくように、ディザマトリクスの修正を行なう必要がある。
【0010】
しかしながら、このようなディザマトリクスの最適化作業は、ディザマトリクスのサイズに比例して修正の自由度が飛躍的に高くなり、あるいはプリンタエンジンがカラーレーザープリンタなどの場合、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各版に応じた修正や、色の重ね合わせに応じた修正が必要なため、多くの繰り返し修正作業が必要となり効率的な修正は困難である。
【0011】
そこで、このような問題を解決すべく、各種のディザマトリクスの最適化の手法が提案されている。特に、コンピュータを用いてディザマトリクスの最適化を行なうようにすることが、効率的なディザ修正には適している。
【0012】
例えば、特許文献4には、遺伝的アルゴリズムを利用したディザマトリクスの最適化装置が開示されている。特許文献4に開示されている遺伝的アルゴリズムを利用したディザマトリクスの最適化装置によれば、与えられた多値ディザマトリクスに応じて得られた多値ディザ出力レベルを用いて多値ディザマトリクス情報の適応度を求め、この適応度に基づく遺伝的アルゴリズムによりディザマトリクスの最適化処理を行なうようにしている。このように遺伝的アルゴリズムを利用することにより、多値ディザマトリクスサイズが大きく多値ディザマトリクスの全数チェックが行なえない場合においても、遺伝的アルゴリズムの交配、突然変異、淘汰の効果により、多値ディザマトリクスの全数の中から効率的な最適値探査が可能になる。
【0013】
また、特許文献5によればオフセット印刷等に用いる場合のディザの生成について、与えられたディザマトリクスに応じて得られたディザ出力レベルを用いてディザマトリクス情報の適応度を求め、この適応度に基づく遺伝的アルゴリズムによりディザマトリクスの最適化処理を行なうようにしている。このように遺伝的アルゴリズムを利用することにより、ディザマトリクスサイズが大きくディザマトリクスの全数チェックが行なえない場合においても、遺伝的アルゴリズムの交配、突然変異、淘汰の効果により、多値ディザマトリクスの全数の中から効率的な最適値探査が可能になる。
【0014】
なお、上述した2件は遺伝的アルゴリズムを利用した探索であるが、最適化の手法としては、特に遺伝的アルゴリズムに限らず他の最適化の手法を用いることも可能である。
【0015】
【特許文献1】特公平05−74983号公報
【特許文献2】特許第3530538号公報
【特許文献3】特開2001−341356号公報
【特許文献4】特開2000−152004号公報
【特許文献5】国際公開第2002/071738号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前述した特許文献1,2によれば、ポリゴンミラーの面数は出力エンジンのスピードにあわせて決まっているので、網点の配置の自由度が制限されるという問題がある。また、前述した特許文献3も同様に、網点の配置の自由度が制限される。
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段や回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段において発生する画質の劣化を防ぐことができるディザマトリクス最適化装置、画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、を備える。
【0019】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する。
【0020】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1または2記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の情報を用いる。
【0021】
また、請求項4にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、を備える。
【0022】
また、請求項5にかかる発明は、請求項4記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する。
【0023】
また、請求項6にかかる発明は、請求項4または5記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の情報を用いる。
【0024】
また、請求項7にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する。
【0025】
また、請求項8にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する。
【0026】
また、請求項9にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、を含む。
【0027】
また、請求項10にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、回転多面鏡の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるディザマトリクス最適化装置、画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図28に基づいて説明する。本実施の形態はディザマトリクス最適化装置を備える画像形成装置としてモノクロ画像を形成するレーザプリンタを適用した例である。
【0032】
[1.レーザプリンタ100の概略構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザプリンタ100の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、レーザプリンタ100では、画像が形成されるべき用紙は、本体トレイ101あるいは手差しトレイ102にセットされ、トレイ101あるいは102から給紙ローラ103にて用紙の搬送が開始される。給紙ローラ103による用紙の搬送に先立って、感光体(感光体ドラム)104が回転し、感光体104の表面は、クリーニングブレード105によってクリーニングされ、次に、帯電ローラ106で一様に帯電される。ここに、レーザ光学系ユニット107から、画像信号に従って変調されたレーザ光が露光され、現像ローラ108で現像されてトナーが付着し、これとタイミングを取って給紙ローラ103から用紙の給紙がなされる。給紙ローラ103から給紙された用紙は、感光体104と転写ローラ109とに挟まれて搬送され、これと同時に、用紙にはトナー像が転写される。転写されずに残った感光体104上のトナーは、再び、クリーニングブレード105で掻き落とされる。クリーニングブレード105の手前には、トナー濃度センサ110が設けられており、トナー濃度センサ110によって感光体104上に形成されたトナー像の濃度を測定することができる。また、トナー像が載った用紙は搬送経路にしたがって、定着ユニット111に搬送され、定着ユニット111においてトナー像は用紙上に定着される。印刷された用紙は、最後に排紙ローラ112を通って、記録面を下にしてページ順に排出される。
【0033】
ここで、レーザ光学系ユニット107について図2を用いて詳述する。
【0034】
なお、レーザ光学系ユニット107には、ユニットの大きさを小さくするため、図1に示すように2枚の折り返しミラー121,122が使用されているが、図2では、簡単のため、折り返しミラー121,122の図示を省略している。
【0035】
図2に示すように、レーザ光学系ユニット107は、光源部61と、シリンドリカルレンズ62と、偏向手段としてのポリゴンミラー(回転多面鏡)63と、fθレンズ64と、トロイダルレンズ65とを有している。
【0036】
図2に示す例では、光源部61は、4つの半導体レーザ85,86,87,88と、4つのコリメータレンズ81,82,83,84と、プリズム89とを有しており、4つの半導体レーザ85,86,87,88からの光(4つの光ビーム)を、それぞれ、対応するコリメータレンズ81,82,83,84でほぼ平行光にした後、4つの光ビームをプリズム89でおよそ縦1列にするようになっている、4ビーム方式の光学系である。
【0037】
このような構成のレーザ光学系ユニット107の動作について説明する。レーザ光学系ユニット107では、光源部61において、上述したように4つの半導体レーザ85,86,87,88から出射された4本の光ビームは、それぞれ、コリメータレンズ81,82,83,84でほぼ平行光に変換され、プリズム89によって、4本の光ビームがほぼ縦1列に並ぶように合成される。これら4本のビーム束は、シリンドリカルレンズ62を通って、ポリゴンミラー63に入射する。
【0038】
ポリゴンミラー63は、矢印Rの向きに回転しており、入射した4本のビーム束を水平方向(主走査方向)に走査する。
【0039】
主走査方向に走査された4本のビーム束はfθレンズ64およびトロイダルレンズ65を通って、感光体(感光体ドラム)104上を等速で走査する。なお、図1の例では、これらの光学系の途中に光路の折り返しミラー121,122が設けられている。
【0040】
また、図2に示すように、主走査方向への光ビームの走査の開始側には、水平同期センサ69が配置されており、水平同期センサ69によって主走査方向の同期を取っている。水平同期センサ69は、このように画像形成領域104a外の走査開始端に設置されている。
【0041】
感光体ドラム104は矢印Qの方向に回転し、感光体ドラム104上の画像形成領域104aに形成された潜像は現像器(現像ローラ)108で顕像化される。
【0042】
また、このレーザプリンタ100には、図2に示すように操作パネル74が設けられている。この操作パネル74は、レーザプリンタ100の動作状態を表示したり、あるいは、動作モードや動作時のデータ設定に用いられる。
【0043】
このようなレーザ光学系ユニット107には、後述するディザマトリクス最適化処理を実行するディザマトリクス最適化装置を含む画像処理手段であるビデオ制御部(ビデオ制御回路)113、LD駆動回路114が接続されており、ビデオ制御部113では、パソコンやワークステーションからの画像信号などを制御したり、あるいは、内部に保持した評価チャート(テストパターン)信号などを発生させたりするようになっている。用紙上に印字すべきデータは、インターフェース75からビデオ制御部(ビデオ制御回路)113に転送され、ビデオ制御部113でビットマップデータに変換される。ビデオ制御部113からのビットマップデータは、LD駆動回路114に与えられ、LD駆動回路114は、位相同期信号発生手段70からの水平同期信号に同期させて、ビットマップにより4つの半導体レーザ85,86,87,88を変調するようになっている。
【0044】
また、現像ローラ108には、バイアス回路115によって高圧バイアスがかけられており、バイアス回路115において、このバイアスをコントロールすることにより、画像の全体的な濃度を制御したりすることが可能となっている。
【0045】
このようなレーザプリンタ100では、パソコンやワークステーションからの画像信号をビデオ制御部113においてディザ法により2値化し、元の画像を2値化した信号で、LD駆動回路114を駆動し、上述した電子写真プロセスによる出力エンジンにより画像を形成することが一般的に行われている。
【0046】
[2.ディザ法の基本的事項についての説明]
ここで、ディザ法の基本的事項について簡単に説明する。レーザプリンタ100の様に、ドットの有無(2値データ)で印刷を行う画像形成装置において、ディザ法は、原画像と矩形(マトリクス)領域内に配置した閾値との大小比較により2値化を行う手法であり、比較的高速に2値画像を生成することができる。ディザ法では、N×N画素を階調再現の1つの単位として考え、それに対応するN×Nの閾値マトリクス(これをディザマトリクスという)をつくり、このディザマトリクスを一種のマスクとして原画像に重ね合わせ、各画素の濃度と対応する閾値とを比較し2値化するというものである。つまり、同じディザマトリクスを、全ての画素について繰り返し用いることにより、2値化を行うものである。なお、マトリクスの閾値配列はある規則に従っており、画質は使用するディザマトリクスの形状に大きく依存する。
【0047】
ところで、ディザ法の特徴として、パターンサイズが大きくなれば、表現できる階調数が増えることが一般的に知られている。例えば、ディザマトリクスパターンのパターンサイズが4×4の場合には、17階調を表現することができ、8×8の場合には、65階調を表現することができる。また、16×16の場合には、257階調まで表現することができる。
【0048】
また、4値等の多値化を行う場合には、複数のディザ閾値と入力画素値とを2値化の場合と同様にして比較を行って多値データを出力する。つまり、一つめのディザ閾値より入力画素値が高ければ「1」、2つめのディザ閾値より入力画素値が高ければ「2」、というように各ディザマトリクスが多値化のための閾値となる。
【0049】
[3.ビデオ制御部113におけるディザマトリクス最適化]
ビデオ制御部113においては、パソコンなどからの画像信号に対するディザ法による2値化が実行される。前述したように、ディザ法による階調再現処理を行う際、高い品質の出力を得るには、画像形成手段である出力エンジンの特性に合ったディザマトリクスを用いる必要がある。このためには、出力エンジンの特性に応じたディザマトリクスの最適化を行うことが必要になる。ここで、ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113におけるディザマトリクス最適化について説明する。
【0050】
ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113のディザマトリクス最適化に係る
部分は、図2に示すように、CPU部1と、遺伝的アルゴリズム処理を実行する遺伝的アルゴリズム処理手段である遺伝的アルゴリズム処理部2と、ディザマトリクスに応じて生成される画像データと出力エンジンの特性データとに基づいてディザ画像出力を求めるシミュレーション手段であるシミュレーション処理部3と、シミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対して評価を行う評価手段である評価値算出部4と、遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段であるディザデータ出力部5とから構成されており、CPU部1が各部を制御する構成となっている。
【0051】
このようなビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113の動作概略について説明する。ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113は、概略的には、遺伝的アルゴリズムを用いてディザマトリクスを最適化する装置である。遺伝的アルゴリズムとは、淘汰、交配、突然変異という3種類の遺伝的操作を繰り返し、適応度の高い個体(遺伝子)を捜し出す手法である。このような遺伝的アルゴリズム処理は、遺伝的アルゴリズム処理部2において実行される。適応度は、各個体(遺伝子)の評価指標であり、一般に、各遺伝子の優劣をつけるための評価関数で個体毎に求められるものである。適応度の低い個体(遺伝子)は、淘汰されることになる。
【0052】
[3−1.遺伝的アルゴリズム処理部2の説明]
ここで、遺伝的アルゴリズム処理部2において実行される遺伝的アルゴリズム処理について説明する。
【0053】
まず、遺伝子情報とディザマトリクスとの間の変換関係について説明する。例えば、網点ディザなどの場合、そのディザマスクはセルの組み合わせで構成される。図4はそのディザにおけるセルの一例であり、おおよそひし形のセルを簡単に模式的に現したものである。なお、実際には、構成する画素数は図4に示す数よりもはるかに多いこともある。セルは複数のサブセルで構成されており、a,b,c,...,pは同一形状をしている。ここでは、図4に示すように、遺伝子情報とディザマトリクスとの間の変換関係について説明するにあたり、このようなひし形のセルを、マスが一列に並んでいるセルにある決まりに従って並べ替える。ある決まりは、例えば上から順番にでも良いし、中央から渦巻状にでも良い。以下、説明はこの一列に並べた情報に従って説明する。なお、a,b,c,...、pは同一形状で図示してあるが、異なる形状であってもよい。
【0054】
図5−1は、一列に並べたセルを例示的に示す模式図である。図5−1に示す一列に並べたセルは、#0〜#255までの256列用意されており、このセルを使って、0〜255階調までのドットの打たれる状態(実体)を示したものである。図5−1においては、黒く塗りつぶされた位置にドットが打たれる事を示している。ドットが打たれる画素は、階調の順序に応じて増えていき、最後に255階調で全て埋まる。なお、階調0については、通常ドットは打たれないが、出力エンジンによっては打った方が良い場合もある。
【0055】
一方、図5−2は、図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を示すものである。図5−1における実際の階調0と1の間ではドットが1つ増えているので、それに対応した位置に図5−2の#1のように「1」を記載する。同様に、階調1と階調2の間については、図5−2の#2のように「1」がセットされる。これを順に階調254と階調255の間のところまで繰り返す。また、図5−2の#0であるが、実際の階調としては階調(−1)と階調0との間の情報をセットするわけであるが、階調(−1)として仮想的に実態としては何もドットが打たれていない状態を想定して、図5−2の#0のデータを作成する。この状態で図5−2の1、0の集まりを見ると、水平方向には#0から#255のどこかの位置でのみ1になるのは明らかである。つまり、#1の列で「1」が存在する位置に対応するセルの位置に、階調1のときにドットを打つことを表している。階調2を表すときは、#1の列で「1」が存在する位置及び#2の列で「1」が存在する位置のそれぞれに対応するセルの位置に、ドットを打つことになる。
【0056】
上述したように、図5−2の#0〜#255までの256列全てで、遺伝的アルゴリズムにおける一個体の遺伝子を表すことが可能である。しかし、図5−2では、各列(#0、#1…)中のほとんどの位置が「0」で埋められている。そのため、これをこのまま遺伝子とすると遺伝的アルゴリズムの操作である交配や突然変異が有効に行われず、ほとんどの交配・突然変異処理が無駄なものになってしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、上述した図5−2の1、0の集まりについて、次のように解釈の拡張をすることにする。ここで、図6は図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を解釈の拡張に対応させて示すものである。図6に示した遺伝子においては、各列(#0、#1…)の位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する階調において、その位置にドットが打たれることを示している。すなわち、本実施の形態においては、水平方向において複数の1が存在する時には、一番左側の「1」(ディザマトリクスの同一画素中、初めに現れた変化した画素)を有効とする。したがって、図6中の染色体K1のように途中で「1」が発生した場合であっても、本実施の形態の解釈の拡張に基づくと、図6中の染色体K1はこの遺伝子にあっては無視されることとなる。ただし、今後の世代においては交配などにより、この染色体が有効に働く効果も期待できる。そこで、本実施の形態の解釈の拡張に基づくと、#255についての全ての染色体は、必ず「1」であるとする。こうすることにより、変異や交配が起っても、必ず実体の画像の255階調目においては必ず全てのドットが埋まる状態が保証される。したがって、この図6における1、0の集まりを遺伝子として扱うことにより、ディザマトリクスの最適化を遺伝的アルゴリズムにより有効に行うことが可能となる。
【0058】
さらに、このような1,0の集まりを遺伝子として扱うことにより、階調の反転を防止することができる。すなわち、このような1,0の集まりを遺伝子として扱うことにより、階調飛びを防止することができる。より詳細には、階調0から階調255に向かって、必ずドットが(0個以上)増える構成となるので、濃度が同じか、あるいは濃度が増えるという構成にしかならない。これによって、遺伝的アルゴリズムを使って、交配・突然変異を行う際に、どのような構成をとっても必ずドットが増える構成とすることができ、階調が反転するような致死遺伝子を生成しないので効率の良い進化が可能となる。すなわち、出来上がったディザに対して階調が絶対に反転しないという利点がある。
【0059】
逆に、遺伝子を元にディザマスクを作成することも簡単にできる。ここで、図7は遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。図7に示すように、各列(#0、#1…)の位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する値をその位置の閾値としてセットする。つまり、#0で「1」になっているところについては、閾値0をセットする(S0)。次に#1で「1」になっているところについては、閾値1をセットする(S1)。次に#2で「1」になっているところについては、閾値2をセットする(S2)。以下同様にして閾値を設定するが、染色体K1のように、既に対応箇所の閾値がセットされている場合には、染色体K1は無視される。最終的にはS255において、全てのディザ閾値がセットされる。なお、256階調を生成するために必要なディザの閾値としては255有れば十分であり、上での説明のように0から255までの256レベルの閾値は必要としない。実際には閾値0は特殊な状態であり、特別な扱いがなされ、通常は1〜255までの255レベルの閾値がセットされる。
【0060】
次に、この遺伝子の初期化方法について説明する。遺伝子の初期化の方法は、乱数によって初期化する方法や、入力された初期値により初期化する方法がある。入力する初期値として、あらかじめ作成しておいたディザマトリクスを入力し、そこから最適化を進めることも可能である。
【0061】
続いて、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法について説明する。遺伝的アルゴリズムにおける交配は、個体に対する遺伝子操作の一つで、個体群の中から特定の遺伝子対を選び、その特定の部分を入れ換える操作を言う。
【0062】
図8は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図8では省略する。図8に示す例では、2つの個体A0,A1が有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図8に示す例においては、交配位置(ディザマトリクスの階調に対応した位置)を1箇所決めて交配する場合を示している。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02を個体A1の染色体P11,P12に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12
A1´=P11+P02
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報とが共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められるという効果を生む。
【0063】
ここで、別の交配の方法について説明する。図9は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の別の一例を示す説明図である。図9に示す例は、セル上の交配を行わせるものである。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図9では省略する。図9に示す例では、2つの個体A0とA1とが有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図9に示す例においては、交配位置(ディザマトリクスの画素の位置)を2箇所決めて交配する場合を示している。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02,P03を個体A1の染色体P11,P12,P13に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12+P03
A1´=P11+P02+P13
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01,P03の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報が共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められる効果を生む。
【0064】
次に、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法について説明する。遺伝的アルゴリズムにおける変異は、個体に対する遺伝子操作の一つで、遺伝子情報の一部をある確率で変化させることである。このように突然変異を起こすことによって、個体群が局所安定に陥りにくくなる。
【0065】
ここで、図10は遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。図10に示す例は、変異させる箇所を例えば乱数などを使って選び、その位置の情報を1と0と交換してしまう方法である。このような変異により、突然変異の個体を生じさせ、遺伝的アルゴリズムによる進化を変化させる効果を生む。
【0066】
ここで、別の変異の方法について説明する。図11は、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。図11に示す例は、変異させる情報「1」の染色体を例えば乱数などを使って選び、その情報を水平方向に移動させてしまう方法である。このような変異により、突然変異の個体を生じさせ、遺伝的アルゴリズムによる進化を変化させる効果を生む。
【0067】
[3−2.シミュレーション処理部3の説明]
次に、シミュレーション処理部3について説明する。図12は、シミュレーション処理部3の処理概要を示す説明図である。図12に示すように、シミュレーション処理部3は、画像処理の結果としての画像データと出力エンジンの特性データをセットすると、出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)が作成されるようになっている。例えば、ディザマトリクスの最適化の場合、画像処理の結果としての画像データ(ディザ画像出力)としては、階調0〜階調255までの階調パッチを画像処理したときの結果のビットマップ情報となる。シミュレーション処理部3として、例えばポリゴンスキャナを用いたレーザ光学系ユニット107を備える電子写真方式のレーザプリンタ100をシミュレーションするものであれば、これにその出力エンジン特性情報を合わせて与えると、例えば感光体104上に形成される電位情報から出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)を形成する。また、シミュレーション処理部3としては、最終的なトナーの付着情報までシミュレーションするものであってもよい。あるいは、シミュレーション処理部3としては、楕円のドットを打ち、これをフィルタ処理することにより、出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)を作るものであっても良い。
【0068】
[3−3−1.評価値算出部4の説明]
次に、評価値算出部4について説明する。図13は、評価値算出部4における処理の一例を示す説明図である。図13に示すように、評価値算出部4は、階調毎のビットマップ情報(a)に基づいてシミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)(b)に対して、個別の評価や総合評価値の算出(c)を行う。より詳細には、評価値算出部4は、図14に示すように、シミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対して、画質の評価を行い、それを評価値として算出するものである。
【0069】
ここで、図15はガンマ特性を現したもので、横軸が階調レベルの0〜255であり、縦軸がシミュレーション結果の濃度情報である。たとえば、このガンマ特性が直線になるほうが良いとすると、図15には直線からのずれがあるので、このずれ量をシミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対する画質評価の評価値として算出することになる。
【0070】
また、図16は空間周波数特性を1次元グラフに現したもので、横軸が空間周波数、縦軸がそのパワーとなっている。なお、パワーには人間の目の特性(VTF特性)を乗じているため、高周波になるほど、パワーが減衰している。このような図16の面積の情報が目で見たときの粒状性(ザラツキ感)に相当するので、この面積情報を評価値として用いることにより、粒状性(ザラツキ感)の少ないディザを探索することができる。
【0071】
一方、図17は評価値算出部4における処理の別の一例を示す説明図である。図17に示すように、評価値算出部4は、シミュレーション前のビットマップ情報(a)に対して評価を行っても良い。より詳細には、シミュレーション前のビットマップ情報(a)に対して、デジタル的な周囲長(以下、デジタル周囲長という)計算(b)を適用する方式である。デジタル周囲長とは、図18に示すように、元画像であるビットマップ情報(図17参照)に対する周囲長を計算したものである。
【0072】
このようにして算出されたデジタル周囲長を評価値に含めることにより、電子写真方式に適したディザマトリクスが生成される点について説明する。ここで、図19は2種類の3画素のドットの集合により表現された網点である網点ドットパターンを示す説明図である。各正方形の画素の1辺を長さ1とおくと、(a)は12、(b)は8となって、(b)の周囲長のほうが短い。すなわち、(b)の点線の部分のようにお互いに結合している部分がある方の周囲長が短くなる。ここで、ディザが適用される電子写真方式においては、離散的なドットよりも、結合したドットのほうが安定なドットが形成されるということが従来から知られている。すなわち、解像度600dpiや、1200dpiなどの電子写真方式の出力エンジンでは、孤立した1ドットによる露光では、トナーを安定して付着させるのに十分な電位が確保できず、そのため、トナーの付着(つまりは用紙上の反射濃度)が不安定になってしまう。これは、一般ユーザにとっては画質が劣化していると認識されるので好ましくない。そこで、周囲長が少ないことを評価に加えると、ドットを集める方が良好な評価点になるので、簡単な計算のみでドットを集めた遺伝子の評価が良い(ドットを集めない電子写真方式の出力エンジンにとっては無駄な遺伝子を次の世代に残すことが少なくなる)という結果を導くことができる。つまり、周囲長計算結果を評価値に含めると、ドットの集まりやすさが向上するという効果が発揮される。
【0073】
[3−3−2.評価値算出部4の別の説明]
次に、評価値算出部4における処理の別の一例について説明する。評価値算出部4は、シミュレーション前のビットマップ情報(図13(a)参照)に対して評価を行っても良い。より詳細には、シミュレーション前のビットマップ情報(図13(a)参照)に対して、使用するマルチビームレーザの#0,#1,#2,#3毎のデジタル的な使用頻度を計算して適用する方式である。図20に示すように、レーザビームは、LD0、LD1、LD2、LD3(半導体レーザ85,86,87,88)の順で順に走査される。したがって、セル(あるいはサブセル)の構成要素である画素がどのLD(半導体レーザ85,86,87,88)で走査されるかが決まる。
【0074】
ここで、図21を参照しつつ評価値算出について詳細に説明する。まず、図21(a)に示すように、遺伝子をソートして、レーザビーム毎に分ける。これは、説明の都合上ソートしているだけであって、以下の使用頻度の計算ができるならば、特にソートする必要はない。
【0075】
次に、図21(b)に示すように、濃度方向を複数のエリアに区分した後、図21(c)に示すように、その中で階調変化に寄与している遺伝子1の数をカウントし、表を作る。
【0076】
続いて、図21(d)に示すように、濃度エリア毎に使用頻度が多いか少ないかを判断していき、濃度エリア毎に偏りの程度を算出する。偏りの算出には、一般に統計で用いられる検定の方法を用いても良いし、単に濃度エリア毎の平均値から各LDの使用個数のズレの積算でも良い。そして、濃度エリア毎に算出された偏りの算出値を全濃度方向に積算して、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの評価値とする。この偏りが少ないほど良好な評価を遺伝子に与える。
【0077】
このようにして算出されたLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの評価値を評価値に含めることにより、電子写真方式に適したディザマトリクスが生成される点について説明する。ここで、図22は5画素からなるドットが、LD0、LD1、LD2、LD3によって形成される場合を示す。図22(a)に示す2つのドットは、どちらも5画素から成っている。ここで、LD1の光量がLD1、LD2、LD3よりも多いとすると、トナーは図22(b)に示すように付着し、ミクロ的には2つのドットは濃度が異なることになる。しかしながら、濃度ブロック毎にLDの使用頻度(ビームの出現頻度)がほぼ同一になるように評価値を導入しているので、図22(b)に示すようなトナー像の濃度のばらつきは、マクロ的に見ればほぼ均一となって、レーザの使用頻度を考慮しない場合にくらべて、格段に画質の劣化が抑えられるという効果が発揮される。
【0078】
なお、本実施の形態においては、各LDについて使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの有無のみを問題にしているため、図20において、LDがLD0、LD1、LD2、LD3、LD0...の順で使用されても、LD2、LD3、LD0、LD1、LD2...の順で使用されても、発明の効果には影響しないことは明らかである。
【0079】
[3−4.ディザマトリクス最適化処理の流れ]
次に、ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113におけるディザマトリクス最適化に関する一連の処理動作について説明する。図23は、ディザマトリクス最適化処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0080】
図23に示すように、まず遺伝子情報を初期化し、第0世代の遺伝子を与える(ステップS1)。この遺伝子は、乱数で生成するようにしても良いし、あるいは、従来のディザマスクを元に生成させるようにしても良い。乱数で初期値を発生させると、当初の遺伝子の探索空間を広く取ることができるという効果があるし、また、従来のディザマスクを元に生成すると、探索空間は狭くなるが、特性の良いディザを高速に求めることが可能となるという効果がある。
【0081】
次に、遺伝子情報をディザマスクに変換し(ステップS2)、各レベルすなわち階調0〜階調255におけるディザ出力のパッチのビットマップ画像を作成する(ステップS3)。ここで、評価値として、デジタル状態で評価できるものをまず評価する(ステップS4)。例えば、前述したデジタル周囲長やLDの使用頻度の偏りなどは、この段階で評価値が算出される。
【0082】
続くステップS5では、シミュレーション画像を作成する。本実施の形態では、ある電子写真方式の出力エンジンをシミュレートするため、用紙上のトナーの付着状況が電子画像として得られる。
【0083】
このようにして作成された各パッチの電子イメージ(シミュレーション画像)に対して、評価値を算出する(ステップS6)。例えば、1つのパッチの明度や、1つのパッチの粒状性(ザラツキ度)が数値で表現される。その後、各評価値をまとめて、総合評価値を算出する(ステップS7)。
【0084】
以上のステップS2〜ステップS7は、1つの世代には複数の遺伝子があるため、全遺伝子についての処理が終了した判断されるまで(ステップS8のY)、繰り返される。
【0085】
全遺伝子についての処理が終了したと判断された場合には(ステップS8のY)、ステップS9に進み、進化が終了したかどうかを判断する。これは、ステップS7で算出した総合評価値の値で判断され、当初の目標値に至った場合には進化終了となるし、あるいは、タイムオーバーや世代オーバーにより進化を打ち切ることもある。
【0086】
進化が終了したと判断した場合には(ステップS9のY)、ディザテーブルを出力して(ステップS15)、処理を終了する。本実施の形態では、最良のものから3種類までのディザテーブルを出力する。実際に3種類のディザで出力して、そのなかからディザを選ぶことも可能だし、一番良いものだけをそのまま出力エンジンに適用してもよい。
【0087】
一方、まだ進化が終了していないと判断した場合には(ステップS9のN)、ステップS10へ進み、淘汰遺伝子の判定をする。本実施の形態では、ステップS7で求めた総合評価値に基づいて適応度を求め、全体の遺伝子から適応度が低いほうの20%を淘汰するようにしている。
【0088】
続くステップS11において、実際の淘汰が行われる。すなわち、複数の遺伝子のうち、全体の20%個の遺伝子をメモリ上から削除する。
【0089】
次に、削除された個体を補うため、交配処理(ステップS12)と突然変異処理(ステップS13)とが行われる。本実施の形態では、失われた20%のうち半分を交配処理で生成し、残り半分を突然変異処理によって生成している。
【0090】
その後、致死遺伝子が発生しているか否かのチェックを行い(ステップS14のY)、致死遺伝子が発生している場合には(ステップS14のY)、突然変異処理(ステップS13)をやり直す。
【0091】
さて、評価関数としてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りを使うことについてはすでに説明したが、このとき、各個体でのLD0、LD1、LD2、LD3やその濃度ブロックに応じてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)を算出しているので、この情報を用いることにより、さらに効率的な変異や交配が可能となる。
【0092】
まず、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を変異に使うことについて説明する。前述した図11においてはドットの発生レベルをずらしているが、この部分にLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を使う。すなわち、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の多いところの“1”をLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の少ないところに移すことにより、効率的な変異を与えるものである。図24は、そのための変異元/変異先を乱数により決定するための発生確率をあらわしたものである。使用頻度が多い濃度ブロックに対して変異元の発生確率を多くして(図24(a)参照)、使用頻度が少ない濃度ブロックに対して変異先の発生確率を大きくする(図24(b)参照)。図25は、このような変異処理の流れを示すフローチャートである。図25に示すように、遺伝子のLD0〜3に対する発生頻度表を得て(ステップS21)、変異元発生確率を変更し(ステップS22)、乱数を発生させて変更元を選ぶ(ステップS23)。また、変異先発生確率を変更し(ステップS24)、乱数を発生させて変更先を選び(ステップS25)、変異を実行する(ステップS26)。このような手順で変異が処理されることにより、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)が効果的に一様化されるという効果をもつ。
【0093】
続いて、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を交配に使うことについて説明する。図26は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図26では省略する。図26に示す例では、2つの個体A0,A1が有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図26に示す例においては、交配位置(前述した濃度レベルに対応した位置)を1箇所決めて交配する場合を示している。交配位置を決めるに当たっては、乱数で選択するわけであるが、前述したドットの発生頻度情報を乱数発生時に考慮させる。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02を個体A1の染色体P11,P12に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12
A1´=P11+P02
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報とが共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められるという効果を生む。
【0094】
このように本実施の形態によれば、ディザマトリクスに応じて生成される画像データと出力エンジンの特性データとに基づいて求めたディザ画像出力に対する画質の評価を行ない、この評価結果に基づき求めたディザマトリクスの適応度に基づいて遺伝的アルゴリズム処理を実行し、生成した遺伝子情報によりディザマトリクスを出力する。これにより、パターンサイズに関わらず遺伝的アルゴリズムを用いたディザマトリクスの最適化処理を行なうことができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、評価関数としてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りを用いることにより、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の均一化を図ることについて説明したが、同様にして、ポリゴンミラー63の反射面に対しても同じ方法で使用頻度の均一化を図ることが可能である。これにより、ポリゴンミラー63の反射面によって走査形成されるドットの出現頻度を均一化することが可能となり、ポリゴンミラー63の反射面の反射率の違いによるムラを防ぐことができる。
【0097】
図27は、セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。図27に示すように、6面ポリゴンの場合、F0,F1,...,F5でポリゴンミラー63の反射面は構成される。
【0098】
ここで、図28を参照しつつ評価値算出について詳細に説明する。まず、図28(a)に示すように、遺伝子をソートして、ポリゴンミラー63の反射面毎に分ける。これは、説明の都合上ソートしているだけであって、以下の使用頻度の計算ができるならば、特にソートする必要はない。
【0099】
次に、図28(b)に示すように、濃度方向を複数のエリアに区分した後、図28(c)に示すように、その中で階調変化に寄与している遺伝子1の数をカウントし、表を作る。
【0100】
続いて、図28(d)に示すように、濃度エリア毎に使用頻度が多いか少ないかを判断していき、濃度エリア毎に偏りの程度を算出する。偏りの算出には、一般に統計で用いられる検定の方法を用いても良いし、単に濃度エリア毎の平均値からポリゴンミラー63の各反射面の使用個数のズレの積算でも良い。そして、濃度エリア毎に算出された偏りの算出値を全濃度方向に積算して、ポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの評価値とする。この偏りが少ないほど良好な評価を遺伝子に与える。
【0101】
そして、このようにして算出されたポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの情報を評価関数として利用することにより、格段に画質の劣化が抑えられるという効果が発揮される。また、ポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの情報を、変異や交配の発生確率に適用させることにより、マルチビームのLD同様に、さらに効率的な変異や交配が可能となる。
【0102】
これにより、ポリゴンミラー63の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【0103】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態を図29ないし図32に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同じ部分は同じ符号で示し説明も省略する。第1の実施の形態では、2値用の遺伝子を元にディザマスクを作成する方法を説明した。本実施の形態は、多値用の遺伝子を元にディザマスクを作成する方法を説明するものである。
【0104】
第1の実施の形態での説明では、遺伝子を構成する染色体が「1」か「0」だったが、本実施の形態、例えば2ビットの画像処理の場合、染色体は「3」「2」「1」「0」の4種類となる。
【0105】
図29は、本実施の形態の多値用の遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。図29に示すように、各列(#0、#1…)のそれぞれの位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する値を、第一のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。さらに右側へと読んでいき、初めに「2」が出てきた列に対応する値を、第二のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。さらに右側へと読んでいき、初めに「3」が出てきた列に対応する値を、第三のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。このとき、初めに存在する「1」よりも先に存在する「2」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。同様に、初めに存在する「1」及び「2」よりも先に存在する「3」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。また、2値化のときと同様に、左側の列(#0)から順番に右側(#255)へと読んでいったときに、初めに存在する各「1」、「2」、「3」以外の、「1」、「2」、「3」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。
【0106】
このようにディザマトリクスを作成することで、第一のディザマトリクスと第二のディザマトリクスと第三のディザマトリクスとの各位置における閾値の大小関係が逆転することはない。また、このような遺伝子を用いることにより遺伝的アルゴリズムの操作である交叉や突然変異が有効に行われる。
【0107】
ここで、本実施の形態の遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法について説明する。図30は、本実施の形態の遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。図30に示す例は、(0,1)(1,2)(2,3)(3,0)を相互に交換する方法であるが、これに限るものではなく、ランダムに変更するようにしても良い。なお、図30に示す例では、#255のところには全て「3」が入っている。
【0108】
ここで、別の変異の方法について説明する。図31は、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。図31に示す例は、変異させる情報「1」〜「3」の染色体を例えば乱数などを使って選び、その情報を水平方向に移動させてしまう方法である。
【0109】
なお、交配処理については、第1の実施の形態の場合と同様に実施されるため、その説明は省略する。
【0110】
また、図32に示すように、生成した遺伝子が無効な遺伝子にならないように、染色体をソートし直しても良い。もちろん、致死遺伝子判断の処理で致死遺伝子として扱う方法もあるのは、明らかである。
【0111】
このようにすれば、2ビット以上の多値用のディザにも本方式は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図2】レーザ光学系ユニットの構成を示す模式図である。
【図3】ビデオ制御部のディザマトリクス最適化に係る機能ブロック図である。
【図4】セルの一例を簡単に現した様子を示す模式図である。
【図5−1】一列に並べたセルを例示的に示す模式図である。
【図5−2】図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を示す模式図である。
【図6】図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を解釈の拡張に対応させて示す模式図である。
【図7】遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。
【図8】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。
【図9】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の別の一例を示す説明図である。
【図10】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。
【図11】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。
【図12】シミュレーション処理部の処理概要を示す説明図である。
【図13】評価値算出部における処理の一例を示す説明図である。
【図14】評価値算出部における処理の一例をより詳細に示す説明図である。
【図15】ガンマ特性を現したグラフである。
【図16】空間周波数特性を現したグラフである。
【図17】評価値算出部における処理の別の一例を示す説明図である。
【図18】デジタル周囲長を示す説明図である。
【図19】2種類の3画素のドットの集合により表現された網点である網点ドットパターンを示す説明図である。
【図20】セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。
【図21】評価値算出について示す説明図である。
【図22】5画素からなるドットがLD0〜3によって形成される場合を示す説明図である。
【図23】ディザマトリクス最適化処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【図24】変異元/変異先を乱数により決定するための発生確率を示す説明図である。
【図25】変異処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。
【図27】セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。
【図28】評価値算出について示す説明図である。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係る多値用の遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。
【図30】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。
【図31】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。
【図32】染色体をソートし直した様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
2 遺伝的アルゴリズム処理手段
3 シミュレーション手段
4 評価手段
5 ディザデータ出力手段
63 回転多面鏡
100 画像形成装置
113 ディザマトリクス最適化装置、画像処理手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、階調表現に用いられるディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置、このディザマトリクス最適化装置を備えるプリントシステム、デジタル複写機などの画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ、デジタル複写機、カラーレーザープリンタ、デジタルカラー複写機などの画像形成装置においては、電子写真エンジンの出力の高速化や低コスト化に伴い、新たな課題が発生してきている。
【0003】
この種のレーザプリンタなどの画像形成装置をさらに高速化するには、レーザビームを走査する回転多面鏡(ポリゴンミラー)を高速で回転させる必要がある。しかしながら、ポリゴンミラーを高速で回転させることは、技術的に非常に難しく、また、ポリゴンミラーは高速になるに従って回転ムラ、耐久性の低下、騒音の上昇等が発生し、安定した高品位の画像が得られなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解決するため、レーザからの複数本のレーザビームをポリゴンミラー等の回転多面鏡によって感光体上で同時に主走査方向に走査する、いわゆるマルチビーム型のレーザビームプリンタが提案されている。このようなマルチビーム型のレーザビームプリンタは、高速化が可能であり、しかも、ポリゴンミラーの回転速度はレーザビームの本数に応じて低下させることができる。例えば、レーザビームの本数が8本である場合には、レーザビームの本数が1本であるレーザビームプリンタに比べてポリゴンの回転速度が8分の1で済む。ゆえに、ポリゴンミラーは、回転ムラが低減し、耐久性の向上や騒音の低下を実現することができる。
【0005】
ところで、感光体上の複数のビームの各光量は、レンズなどの影響により同一でない場合がある。また、そもそもの各ビームの光量も必ずしも同一でなく、回路のばらつきや半導体レーザ素子のばらつきによって同一にはならない。さらに、ポリゴンを構成している反射面も、各反射面の反射率が必ずしも同一ではなく、製造工程上のばらつきをもってしまうため、感光体上におけるビーム光量は必ずしも同一とならない。これにより、画質が著しく損なわれるという問題が発生している。つまり、ビーム光量の違いは感光体上では電位差となって現れ、最終的にトナー付着量の差となる。
【0006】
さらに、出力エンジン(プリンタエンジン)がカラーレーザープリンタなどの場合、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各版で画像を形成(潜像を形成してこれを現像)するため、わずかな光量差が感光体の電位差となり、トナー付着量差となり、色違いにつながり、フルカラー連続プリントをした場合、同じ書き込みデータ値であっても、色違いが発生してしまうという不具合がある。
【0007】
このような不具合に対しては、特許文献1,2に記載されているように、ポリゴンミラーとディザの網点の位置関係を規定するのが一般的である。また、特許文献3においては、ビームの本数と網点の位置関係を規定するようにしている。
【0008】
一方、従来より、レーザプリンタ、デジタル複写機、カラーレーザープリンタ、デジタルカラー複写機など画像形成装置あるいは表示装置等に応用することのできる中間調処理に関する画像形成方法が用いられている。従来の中間調処理には、ディザ法による階調再現処理が多く用いられており、二値プリンタなどでも階調や色を表現することが可能になっている。
【0009】
ところで、ディザ法による階調表現処理を行なう際、高い品質の出力を得るためには、出力手段の特性に合ったディザマトリクスを用いる必要がある。このためには、出力手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化を行なうことが必要になる。このディザマトリクスの最適化を行なうには、ディザマトリクスに応じた画像出力を実際のプリンタエンジンを使って実施し、その出力画質が製品の目標とするレベルに近づくように、ディザマトリクスの修正を行なう必要がある。
【0010】
しかしながら、このようなディザマトリクスの最適化作業は、ディザマトリクスのサイズに比例して修正の自由度が飛躍的に高くなり、あるいはプリンタエンジンがカラーレーザープリンタなどの場合、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各版に応じた修正や、色の重ね合わせに応じた修正が必要なため、多くの繰り返し修正作業が必要となり効率的な修正は困難である。
【0011】
そこで、このような問題を解決すべく、各種のディザマトリクスの最適化の手法が提案されている。特に、コンピュータを用いてディザマトリクスの最適化を行なうようにすることが、効率的なディザ修正には適している。
【0012】
例えば、特許文献4には、遺伝的アルゴリズムを利用したディザマトリクスの最適化装置が開示されている。特許文献4に開示されている遺伝的アルゴリズムを利用したディザマトリクスの最適化装置によれば、与えられた多値ディザマトリクスに応じて得られた多値ディザ出力レベルを用いて多値ディザマトリクス情報の適応度を求め、この適応度に基づく遺伝的アルゴリズムによりディザマトリクスの最適化処理を行なうようにしている。このように遺伝的アルゴリズムを利用することにより、多値ディザマトリクスサイズが大きく多値ディザマトリクスの全数チェックが行なえない場合においても、遺伝的アルゴリズムの交配、突然変異、淘汰の効果により、多値ディザマトリクスの全数の中から効率的な最適値探査が可能になる。
【0013】
また、特許文献5によればオフセット印刷等に用いる場合のディザの生成について、与えられたディザマトリクスに応じて得られたディザ出力レベルを用いてディザマトリクス情報の適応度を求め、この適応度に基づく遺伝的アルゴリズムによりディザマトリクスの最適化処理を行なうようにしている。このように遺伝的アルゴリズムを利用することにより、ディザマトリクスサイズが大きくディザマトリクスの全数チェックが行なえない場合においても、遺伝的アルゴリズムの交配、突然変異、淘汰の効果により、多値ディザマトリクスの全数の中から効率的な最適値探査が可能になる。
【0014】
なお、上述した2件は遺伝的アルゴリズムを利用した探索であるが、最適化の手法としては、特に遺伝的アルゴリズムに限らず他の最適化の手法を用いることも可能である。
【0015】
【特許文献1】特公平05−74983号公報
【特許文献2】特許第3530538号公報
【特許文献3】特開2001−341356号公報
【特許文献4】特開2000−152004号公報
【特許文献5】国際公開第2002/071738号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前述した特許文献1,2によれば、ポリゴンミラーの面数は出力エンジンのスピードにあわせて決まっているので、網点の配置の自由度が制限されるという問題がある。また、前述した特許文献3も同様に、網点の配置の自由度が制限される。
【0017】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段や回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段において発生する画質の劣化を防ぐことができるディザマトリクス最適化装置、画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、を備える。
【0019】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する。
【0020】
また、請求項3にかかる発明は、請求項1または2記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の情報を用いる。
【0021】
また、請求項4にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、を備える。
【0022】
また、請求項5にかかる発明は、請求項4記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する。
【0023】
また、請求項6にかかる発明は、請求項4または5記載のディザマトリクス最適化装置において、前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の情報を用いる。
【0024】
また、請求項7にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する。
【0025】
また、請求項8にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、を備え、前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する。
【0026】
また、請求項9にかかる発明は、マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、を含む。
【0027】
また、請求項10にかかる発明は、回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【0029】
また、本発明によれば、回転多面鏡の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるディザマトリクス最適化装置、画像形成装置およびディザマトリクス最適化方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図28に基づいて説明する。本実施の形態はディザマトリクス最適化装置を備える画像形成装置としてモノクロ画像を形成するレーザプリンタを適用した例である。
【0032】
[1.レーザプリンタ100の概略構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザプリンタ100の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、レーザプリンタ100では、画像が形成されるべき用紙は、本体トレイ101あるいは手差しトレイ102にセットされ、トレイ101あるいは102から給紙ローラ103にて用紙の搬送が開始される。給紙ローラ103による用紙の搬送に先立って、感光体(感光体ドラム)104が回転し、感光体104の表面は、クリーニングブレード105によってクリーニングされ、次に、帯電ローラ106で一様に帯電される。ここに、レーザ光学系ユニット107から、画像信号に従って変調されたレーザ光が露光され、現像ローラ108で現像されてトナーが付着し、これとタイミングを取って給紙ローラ103から用紙の給紙がなされる。給紙ローラ103から給紙された用紙は、感光体104と転写ローラ109とに挟まれて搬送され、これと同時に、用紙にはトナー像が転写される。転写されずに残った感光体104上のトナーは、再び、クリーニングブレード105で掻き落とされる。クリーニングブレード105の手前には、トナー濃度センサ110が設けられており、トナー濃度センサ110によって感光体104上に形成されたトナー像の濃度を測定することができる。また、トナー像が載った用紙は搬送経路にしたがって、定着ユニット111に搬送され、定着ユニット111においてトナー像は用紙上に定着される。印刷された用紙は、最後に排紙ローラ112を通って、記録面を下にしてページ順に排出される。
【0033】
ここで、レーザ光学系ユニット107について図2を用いて詳述する。
【0034】
なお、レーザ光学系ユニット107には、ユニットの大きさを小さくするため、図1に示すように2枚の折り返しミラー121,122が使用されているが、図2では、簡単のため、折り返しミラー121,122の図示を省略している。
【0035】
図2に示すように、レーザ光学系ユニット107は、光源部61と、シリンドリカルレンズ62と、偏向手段としてのポリゴンミラー(回転多面鏡)63と、fθレンズ64と、トロイダルレンズ65とを有している。
【0036】
図2に示す例では、光源部61は、4つの半導体レーザ85,86,87,88と、4つのコリメータレンズ81,82,83,84と、プリズム89とを有しており、4つの半導体レーザ85,86,87,88からの光(4つの光ビーム)を、それぞれ、対応するコリメータレンズ81,82,83,84でほぼ平行光にした後、4つの光ビームをプリズム89でおよそ縦1列にするようになっている、4ビーム方式の光学系である。
【0037】
このような構成のレーザ光学系ユニット107の動作について説明する。レーザ光学系ユニット107では、光源部61において、上述したように4つの半導体レーザ85,86,87,88から出射された4本の光ビームは、それぞれ、コリメータレンズ81,82,83,84でほぼ平行光に変換され、プリズム89によって、4本の光ビームがほぼ縦1列に並ぶように合成される。これら4本のビーム束は、シリンドリカルレンズ62を通って、ポリゴンミラー63に入射する。
【0038】
ポリゴンミラー63は、矢印Rの向きに回転しており、入射した4本のビーム束を水平方向(主走査方向)に走査する。
【0039】
主走査方向に走査された4本のビーム束はfθレンズ64およびトロイダルレンズ65を通って、感光体(感光体ドラム)104上を等速で走査する。なお、図1の例では、これらの光学系の途中に光路の折り返しミラー121,122が設けられている。
【0040】
また、図2に示すように、主走査方向への光ビームの走査の開始側には、水平同期センサ69が配置されており、水平同期センサ69によって主走査方向の同期を取っている。水平同期センサ69は、このように画像形成領域104a外の走査開始端に設置されている。
【0041】
感光体ドラム104は矢印Qの方向に回転し、感光体ドラム104上の画像形成領域104aに形成された潜像は現像器(現像ローラ)108で顕像化される。
【0042】
また、このレーザプリンタ100には、図2に示すように操作パネル74が設けられている。この操作パネル74は、レーザプリンタ100の動作状態を表示したり、あるいは、動作モードや動作時のデータ設定に用いられる。
【0043】
このようなレーザ光学系ユニット107には、後述するディザマトリクス最適化処理を実行するディザマトリクス最適化装置を含む画像処理手段であるビデオ制御部(ビデオ制御回路)113、LD駆動回路114が接続されており、ビデオ制御部113では、パソコンやワークステーションからの画像信号などを制御したり、あるいは、内部に保持した評価チャート(テストパターン)信号などを発生させたりするようになっている。用紙上に印字すべきデータは、インターフェース75からビデオ制御部(ビデオ制御回路)113に転送され、ビデオ制御部113でビットマップデータに変換される。ビデオ制御部113からのビットマップデータは、LD駆動回路114に与えられ、LD駆動回路114は、位相同期信号発生手段70からの水平同期信号に同期させて、ビットマップにより4つの半導体レーザ85,86,87,88を変調するようになっている。
【0044】
また、現像ローラ108には、バイアス回路115によって高圧バイアスがかけられており、バイアス回路115において、このバイアスをコントロールすることにより、画像の全体的な濃度を制御したりすることが可能となっている。
【0045】
このようなレーザプリンタ100では、パソコンやワークステーションからの画像信号をビデオ制御部113においてディザ法により2値化し、元の画像を2値化した信号で、LD駆動回路114を駆動し、上述した電子写真プロセスによる出力エンジンにより画像を形成することが一般的に行われている。
【0046】
[2.ディザ法の基本的事項についての説明]
ここで、ディザ法の基本的事項について簡単に説明する。レーザプリンタ100の様に、ドットの有無(2値データ)で印刷を行う画像形成装置において、ディザ法は、原画像と矩形(マトリクス)領域内に配置した閾値との大小比較により2値化を行う手法であり、比較的高速に2値画像を生成することができる。ディザ法では、N×N画素を階調再現の1つの単位として考え、それに対応するN×Nの閾値マトリクス(これをディザマトリクスという)をつくり、このディザマトリクスを一種のマスクとして原画像に重ね合わせ、各画素の濃度と対応する閾値とを比較し2値化するというものである。つまり、同じディザマトリクスを、全ての画素について繰り返し用いることにより、2値化を行うものである。なお、マトリクスの閾値配列はある規則に従っており、画質は使用するディザマトリクスの形状に大きく依存する。
【0047】
ところで、ディザ法の特徴として、パターンサイズが大きくなれば、表現できる階調数が増えることが一般的に知られている。例えば、ディザマトリクスパターンのパターンサイズが4×4の場合には、17階調を表現することができ、8×8の場合には、65階調を表現することができる。また、16×16の場合には、257階調まで表現することができる。
【0048】
また、4値等の多値化を行う場合には、複数のディザ閾値と入力画素値とを2値化の場合と同様にして比較を行って多値データを出力する。つまり、一つめのディザ閾値より入力画素値が高ければ「1」、2つめのディザ閾値より入力画素値が高ければ「2」、というように各ディザマトリクスが多値化のための閾値となる。
【0049】
[3.ビデオ制御部113におけるディザマトリクス最適化]
ビデオ制御部113においては、パソコンなどからの画像信号に対するディザ法による2値化が実行される。前述したように、ディザ法による階調再現処理を行う際、高い品質の出力を得るには、画像形成手段である出力エンジンの特性に合ったディザマトリクスを用いる必要がある。このためには、出力エンジンの特性に応じたディザマトリクスの最適化を行うことが必要になる。ここで、ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113におけるディザマトリクス最適化について説明する。
【0050】
ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113のディザマトリクス最適化に係る
部分は、図2に示すように、CPU部1と、遺伝的アルゴリズム処理を実行する遺伝的アルゴリズム処理手段である遺伝的アルゴリズム処理部2と、ディザマトリクスに応じて生成される画像データと出力エンジンの特性データとに基づいてディザ画像出力を求めるシミュレーション手段であるシミュレーション処理部3と、シミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対して評価を行う評価手段である評価値算出部4と、遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段であるディザデータ出力部5とから構成されており、CPU部1が各部を制御する構成となっている。
【0051】
このようなビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113の動作概略について説明する。ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113は、概略的には、遺伝的アルゴリズムを用いてディザマトリクスを最適化する装置である。遺伝的アルゴリズムとは、淘汰、交配、突然変異という3種類の遺伝的操作を繰り返し、適応度の高い個体(遺伝子)を捜し出す手法である。このような遺伝的アルゴリズム処理は、遺伝的アルゴリズム処理部2において実行される。適応度は、各個体(遺伝子)の評価指標であり、一般に、各遺伝子の優劣をつけるための評価関数で個体毎に求められるものである。適応度の低い個体(遺伝子)は、淘汰されることになる。
【0052】
[3−1.遺伝的アルゴリズム処理部2の説明]
ここで、遺伝的アルゴリズム処理部2において実行される遺伝的アルゴリズム処理について説明する。
【0053】
まず、遺伝子情報とディザマトリクスとの間の変換関係について説明する。例えば、網点ディザなどの場合、そのディザマスクはセルの組み合わせで構成される。図4はそのディザにおけるセルの一例であり、おおよそひし形のセルを簡単に模式的に現したものである。なお、実際には、構成する画素数は図4に示す数よりもはるかに多いこともある。セルは複数のサブセルで構成されており、a,b,c,...,pは同一形状をしている。ここでは、図4に示すように、遺伝子情報とディザマトリクスとの間の変換関係について説明するにあたり、このようなひし形のセルを、マスが一列に並んでいるセルにある決まりに従って並べ替える。ある決まりは、例えば上から順番にでも良いし、中央から渦巻状にでも良い。以下、説明はこの一列に並べた情報に従って説明する。なお、a,b,c,...、pは同一形状で図示してあるが、異なる形状であってもよい。
【0054】
図5−1は、一列に並べたセルを例示的に示す模式図である。図5−1に示す一列に並べたセルは、#0〜#255までの256列用意されており、このセルを使って、0〜255階調までのドットの打たれる状態(実体)を示したものである。図5−1においては、黒く塗りつぶされた位置にドットが打たれる事を示している。ドットが打たれる画素は、階調の順序に応じて増えていき、最後に255階調で全て埋まる。なお、階調0については、通常ドットは打たれないが、出力エンジンによっては打った方が良い場合もある。
【0055】
一方、図5−2は、図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を示すものである。図5−1における実際の階調0と1の間ではドットが1つ増えているので、それに対応した位置に図5−2の#1のように「1」を記載する。同様に、階調1と階調2の間については、図5−2の#2のように「1」がセットされる。これを順に階調254と階調255の間のところまで繰り返す。また、図5−2の#0であるが、実際の階調としては階調(−1)と階調0との間の情報をセットするわけであるが、階調(−1)として仮想的に実態としては何もドットが打たれていない状態を想定して、図5−2の#0のデータを作成する。この状態で図5−2の1、0の集まりを見ると、水平方向には#0から#255のどこかの位置でのみ1になるのは明らかである。つまり、#1の列で「1」が存在する位置に対応するセルの位置に、階調1のときにドットを打つことを表している。階調2を表すときは、#1の列で「1」が存在する位置及び#2の列で「1」が存在する位置のそれぞれに対応するセルの位置に、ドットを打つことになる。
【0056】
上述したように、図5−2の#0〜#255までの256列全てで、遺伝的アルゴリズムにおける一個体の遺伝子を表すことが可能である。しかし、図5−2では、各列(#0、#1…)中のほとんどの位置が「0」で埋められている。そのため、これをこのまま遺伝子とすると遺伝的アルゴリズムの操作である交配や突然変異が有効に行われず、ほとんどの交配・突然変異処理が無駄なものになってしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、上述した図5−2の1、0の集まりについて、次のように解釈の拡張をすることにする。ここで、図6は図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を解釈の拡張に対応させて示すものである。図6に示した遺伝子においては、各列(#0、#1…)の位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する階調において、その位置にドットが打たれることを示している。すなわち、本実施の形態においては、水平方向において複数の1が存在する時には、一番左側の「1」(ディザマトリクスの同一画素中、初めに現れた変化した画素)を有効とする。したがって、図6中の染色体K1のように途中で「1」が発生した場合であっても、本実施の形態の解釈の拡張に基づくと、図6中の染色体K1はこの遺伝子にあっては無視されることとなる。ただし、今後の世代においては交配などにより、この染色体が有効に働く効果も期待できる。そこで、本実施の形態の解釈の拡張に基づくと、#255についての全ての染色体は、必ず「1」であるとする。こうすることにより、変異や交配が起っても、必ず実体の画像の255階調目においては必ず全てのドットが埋まる状態が保証される。したがって、この図6における1、0の集まりを遺伝子として扱うことにより、ディザマトリクスの最適化を遺伝的アルゴリズムにより有効に行うことが可能となる。
【0058】
さらに、このような1,0の集まりを遺伝子として扱うことにより、階調の反転を防止することができる。すなわち、このような1,0の集まりを遺伝子として扱うことにより、階調飛びを防止することができる。より詳細には、階調0から階調255に向かって、必ずドットが(0個以上)増える構成となるので、濃度が同じか、あるいは濃度が増えるという構成にしかならない。これによって、遺伝的アルゴリズムを使って、交配・突然変異を行う際に、どのような構成をとっても必ずドットが増える構成とすることができ、階調が反転するような致死遺伝子を生成しないので効率の良い進化が可能となる。すなわち、出来上がったディザに対して階調が絶対に反転しないという利点がある。
【0059】
逆に、遺伝子を元にディザマスクを作成することも簡単にできる。ここで、図7は遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。図7に示すように、各列(#0、#1…)の位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する値をその位置の閾値としてセットする。つまり、#0で「1」になっているところについては、閾値0をセットする(S0)。次に#1で「1」になっているところについては、閾値1をセットする(S1)。次に#2で「1」になっているところについては、閾値2をセットする(S2)。以下同様にして閾値を設定するが、染色体K1のように、既に対応箇所の閾値がセットされている場合には、染色体K1は無視される。最終的にはS255において、全てのディザ閾値がセットされる。なお、256階調を生成するために必要なディザの閾値としては255有れば十分であり、上での説明のように0から255までの256レベルの閾値は必要としない。実際には閾値0は特殊な状態であり、特別な扱いがなされ、通常は1〜255までの255レベルの閾値がセットされる。
【0060】
次に、この遺伝子の初期化方法について説明する。遺伝子の初期化の方法は、乱数によって初期化する方法や、入力された初期値により初期化する方法がある。入力する初期値として、あらかじめ作成しておいたディザマトリクスを入力し、そこから最適化を進めることも可能である。
【0061】
続いて、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法について説明する。遺伝的アルゴリズムにおける交配は、個体に対する遺伝子操作の一つで、個体群の中から特定の遺伝子対を選び、その特定の部分を入れ換える操作を言う。
【0062】
図8は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図8では省略する。図8に示す例では、2つの個体A0,A1が有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図8に示す例においては、交配位置(ディザマトリクスの階調に対応した位置)を1箇所決めて交配する場合を示している。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02を個体A1の染色体P11,P12に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12
A1´=P11+P02
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報とが共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められるという効果を生む。
【0063】
ここで、別の交配の方法について説明する。図9は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の別の一例を示す説明図である。図9に示す例は、セル上の交配を行わせるものである。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図9では省略する。図9に示す例では、2つの個体A0とA1とが有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図9に示す例においては、交配位置(ディザマトリクスの画素の位置)を2箇所決めて交配する場合を示している。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02,P03を個体A1の染色体P11,P12,P13に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12+P03
A1´=P11+P02+P13
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01,P03の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報が共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められる効果を生む。
【0064】
次に、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法について説明する。遺伝的アルゴリズムにおける変異は、個体に対する遺伝子操作の一つで、遺伝子情報の一部をある確率で変化させることである。このように突然変異を起こすことによって、個体群が局所安定に陥りにくくなる。
【0065】
ここで、図10は遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。図10に示す例は、変異させる箇所を例えば乱数などを使って選び、その位置の情報を1と0と交換してしまう方法である。このような変異により、突然変異の個体を生じさせ、遺伝的アルゴリズムによる進化を変化させる効果を生む。
【0066】
ここで、別の変異の方法について説明する。図11は、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。図11に示す例は、変異させる情報「1」の染色体を例えば乱数などを使って選び、その情報を水平方向に移動させてしまう方法である。このような変異により、突然変異の個体を生じさせ、遺伝的アルゴリズムによる進化を変化させる効果を生む。
【0067】
[3−2.シミュレーション処理部3の説明]
次に、シミュレーション処理部3について説明する。図12は、シミュレーション処理部3の処理概要を示す説明図である。図12に示すように、シミュレーション処理部3は、画像処理の結果としての画像データと出力エンジンの特性データをセットすると、出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)が作成されるようになっている。例えば、ディザマトリクスの最適化の場合、画像処理の結果としての画像データ(ディザ画像出力)としては、階調0〜階調255までの階調パッチを画像処理したときの結果のビットマップ情報となる。シミュレーション処理部3として、例えばポリゴンスキャナを用いたレーザ光学系ユニット107を備える電子写真方式のレーザプリンタ100をシミュレーションするものであれば、これにその出力エンジン特性情報を合わせて与えると、例えば感光体104上に形成される電位情報から出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)を形成する。また、シミュレーション処理部3としては、最終的なトナーの付着情報までシミュレーションするものであってもよい。あるいは、シミュレーション処理部3としては、楕円のドットを打ち、これをフィルタ処理することにより、出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)を作るものであっても良い。
【0068】
[3−3−1.評価値算出部4の説明]
次に、評価値算出部4について説明する。図13は、評価値算出部4における処理の一例を示す説明図である。図13に示すように、評価値算出部4は、階調毎のビットマップ情報(a)に基づいてシミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージ(ディザ画像出力)(b)に対して、個別の評価や総合評価値の算出(c)を行う。より詳細には、評価値算出部4は、図14に示すように、シミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対して、画質の評価を行い、それを評価値として算出するものである。
【0069】
ここで、図15はガンマ特性を現したもので、横軸が階調レベルの0〜255であり、縦軸がシミュレーション結果の濃度情報である。たとえば、このガンマ特性が直線になるほうが良いとすると、図15には直線からのずれがあるので、このずれ量をシミュレーション処理部3で形成された出力画像の電子イメージに対する画質評価の評価値として算出することになる。
【0070】
また、図16は空間周波数特性を1次元グラフに現したもので、横軸が空間周波数、縦軸がそのパワーとなっている。なお、パワーには人間の目の特性(VTF特性)を乗じているため、高周波になるほど、パワーが減衰している。このような図16の面積の情報が目で見たときの粒状性(ザラツキ感)に相当するので、この面積情報を評価値として用いることにより、粒状性(ザラツキ感)の少ないディザを探索することができる。
【0071】
一方、図17は評価値算出部4における処理の別の一例を示す説明図である。図17に示すように、評価値算出部4は、シミュレーション前のビットマップ情報(a)に対して評価を行っても良い。より詳細には、シミュレーション前のビットマップ情報(a)に対して、デジタル的な周囲長(以下、デジタル周囲長という)計算(b)を適用する方式である。デジタル周囲長とは、図18に示すように、元画像であるビットマップ情報(図17参照)に対する周囲長を計算したものである。
【0072】
このようにして算出されたデジタル周囲長を評価値に含めることにより、電子写真方式に適したディザマトリクスが生成される点について説明する。ここで、図19は2種類の3画素のドットの集合により表現された網点である網点ドットパターンを示す説明図である。各正方形の画素の1辺を長さ1とおくと、(a)は12、(b)は8となって、(b)の周囲長のほうが短い。すなわち、(b)の点線の部分のようにお互いに結合している部分がある方の周囲長が短くなる。ここで、ディザが適用される電子写真方式においては、離散的なドットよりも、結合したドットのほうが安定なドットが形成されるということが従来から知られている。すなわち、解像度600dpiや、1200dpiなどの電子写真方式の出力エンジンでは、孤立した1ドットによる露光では、トナーを安定して付着させるのに十分な電位が確保できず、そのため、トナーの付着(つまりは用紙上の反射濃度)が不安定になってしまう。これは、一般ユーザにとっては画質が劣化していると認識されるので好ましくない。そこで、周囲長が少ないことを評価に加えると、ドットを集める方が良好な評価点になるので、簡単な計算のみでドットを集めた遺伝子の評価が良い(ドットを集めない電子写真方式の出力エンジンにとっては無駄な遺伝子を次の世代に残すことが少なくなる)という結果を導くことができる。つまり、周囲長計算結果を評価値に含めると、ドットの集まりやすさが向上するという効果が発揮される。
【0073】
[3−3−2.評価値算出部4の別の説明]
次に、評価値算出部4における処理の別の一例について説明する。評価値算出部4は、シミュレーション前のビットマップ情報(図13(a)参照)に対して評価を行っても良い。より詳細には、シミュレーション前のビットマップ情報(図13(a)参照)に対して、使用するマルチビームレーザの#0,#1,#2,#3毎のデジタル的な使用頻度を計算して適用する方式である。図20に示すように、レーザビームは、LD0、LD1、LD2、LD3(半導体レーザ85,86,87,88)の順で順に走査される。したがって、セル(あるいはサブセル)の構成要素である画素がどのLD(半導体レーザ85,86,87,88)で走査されるかが決まる。
【0074】
ここで、図21を参照しつつ評価値算出について詳細に説明する。まず、図21(a)に示すように、遺伝子をソートして、レーザビーム毎に分ける。これは、説明の都合上ソートしているだけであって、以下の使用頻度の計算ができるならば、特にソートする必要はない。
【0075】
次に、図21(b)に示すように、濃度方向を複数のエリアに区分した後、図21(c)に示すように、その中で階調変化に寄与している遺伝子1の数をカウントし、表を作る。
【0076】
続いて、図21(d)に示すように、濃度エリア毎に使用頻度が多いか少ないかを判断していき、濃度エリア毎に偏りの程度を算出する。偏りの算出には、一般に統計で用いられる検定の方法を用いても良いし、単に濃度エリア毎の平均値から各LDの使用個数のズレの積算でも良い。そして、濃度エリア毎に算出された偏りの算出値を全濃度方向に積算して、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの評価値とする。この偏りが少ないほど良好な評価を遺伝子に与える。
【0077】
このようにして算出されたLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの評価値を評価値に含めることにより、電子写真方式に適したディザマトリクスが生成される点について説明する。ここで、図22は5画素からなるドットが、LD0、LD1、LD2、LD3によって形成される場合を示す。図22(a)に示す2つのドットは、どちらも5画素から成っている。ここで、LD1の光量がLD1、LD2、LD3よりも多いとすると、トナーは図22(b)に示すように付着し、ミクロ的には2つのドットは濃度が異なることになる。しかしながら、濃度ブロック毎にLDの使用頻度(ビームの出現頻度)がほぼ同一になるように評価値を導入しているので、図22(b)に示すようなトナー像の濃度のばらつきは、マクロ的に見ればほぼ均一となって、レーザの使用頻度を考慮しない場合にくらべて、格段に画質の劣化が抑えられるという効果が発揮される。
【0078】
なお、本実施の形態においては、各LDについて使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りの有無のみを問題にしているため、図20において、LDがLD0、LD1、LD2、LD3、LD0...の順で使用されても、LD2、LD3、LD0、LD1、LD2...の順で使用されても、発明の効果には影響しないことは明らかである。
【0079】
[3−4.ディザマトリクス最適化処理の流れ]
次に、ビデオ制御部(ディザマトリクス最適化装置)113におけるディザマトリクス最適化に関する一連の処理動作について説明する。図23は、ディザマトリクス最適化処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0080】
図23に示すように、まず遺伝子情報を初期化し、第0世代の遺伝子を与える(ステップS1)。この遺伝子は、乱数で生成するようにしても良いし、あるいは、従来のディザマスクを元に生成させるようにしても良い。乱数で初期値を発生させると、当初の遺伝子の探索空間を広く取ることができるという効果があるし、また、従来のディザマスクを元に生成すると、探索空間は狭くなるが、特性の良いディザを高速に求めることが可能となるという効果がある。
【0081】
次に、遺伝子情報をディザマスクに変換し(ステップS2)、各レベルすなわち階調0〜階調255におけるディザ出力のパッチのビットマップ画像を作成する(ステップS3)。ここで、評価値として、デジタル状態で評価できるものをまず評価する(ステップS4)。例えば、前述したデジタル周囲長やLDの使用頻度の偏りなどは、この段階で評価値が算出される。
【0082】
続くステップS5では、シミュレーション画像を作成する。本実施の形態では、ある電子写真方式の出力エンジンをシミュレートするため、用紙上のトナーの付着状況が電子画像として得られる。
【0083】
このようにして作成された各パッチの電子イメージ(シミュレーション画像)に対して、評価値を算出する(ステップS6)。例えば、1つのパッチの明度や、1つのパッチの粒状性(ザラツキ度)が数値で表現される。その後、各評価値をまとめて、総合評価値を算出する(ステップS7)。
【0084】
以上のステップS2〜ステップS7は、1つの世代には複数の遺伝子があるため、全遺伝子についての処理が終了した判断されるまで(ステップS8のY)、繰り返される。
【0085】
全遺伝子についての処理が終了したと判断された場合には(ステップS8のY)、ステップS9に進み、進化が終了したかどうかを判断する。これは、ステップS7で算出した総合評価値の値で判断され、当初の目標値に至った場合には進化終了となるし、あるいは、タイムオーバーや世代オーバーにより進化を打ち切ることもある。
【0086】
進化が終了したと判断した場合には(ステップS9のY)、ディザテーブルを出力して(ステップS15)、処理を終了する。本実施の形態では、最良のものから3種類までのディザテーブルを出力する。実際に3種類のディザで出力して、そのなかからディザを選ぶことも可能だし、一番良いものだけをそのまま出力エンジンに適用してもよい。
【0087】
一方、まだ進化が終了していないと判断した場合には(ステップS9のN)、ステップS10へ進み、淘汰遺伝子の判定をする。本実施の形態では、ステップS7で求めた総合評価値に基づいて適応度を求め、全体の遺伝子から適応度が低いほうの20%を淘汰するようにしている。
【0088】
続くステップS11において、実際の淘汰が行われる。すなわち、複数の遺伝子のうち、全体の20%個の遺伝子をメモリ上から削除する。
【0089】
次に、削除された個体を補うため、交配処理(ステップS12)と突然変異処理(ステップS13)とが行われる。本実施の形態では、失われた20%のうち半分を交配処理で生成し、残り半分を突然変異処理によって生成している。
【0090】
その後、致死遺伝子が発生しているか否かのチェックを行い(ステップS14のY)、致死遺伝子が発生している場合には(ステップS14のY)、突然変異処理(ステップS13)をやり直す。
【0091】
さて、評価関数としてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りを使うことについてはすでに説明したが、このとき、各個体でのLD0、LD1、LD2、LD3やその濃度ブロックに応じてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)を算出しているので、この情報を用いることにより、さらに効率的な変異や交配が可能となる。
【0092】
まず、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を変異に使うことについて説明する。前述した図11においてはドットの発生レベルをずらしているが、この部分にLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を使う。すなわち、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の多いところの“1”をLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の少ないところに移すことにより、効率的な変異を与えるものである。図24は、そのための変異元/変異先を乱数により決定するための発生確率をあらわしたものである。使用頻度が多い濃度ブロックに対して変異元の発生確率を多くして(図24(a)参照)、使用頻度が少ない濃度ブロックに対して変異先の発生確率を大きくする(図24(b)参照)。図25は、このような変異処理の流れを示すフローチャートである。図25に示すように、遺伝子のLD0〜3に対する発生頻度表を得て(ステップS21)、変異元発生確率を変更し(ステップS22)、乱数を発生させて変更元を選ぶ(ステップS23)。また、変異先発生確率を変更し(ステップS24)、乱数を発生させて変更先を選び(ステップS25)、変異を実行する(ステップS26)。このような手順で変異が処理されることにより、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)が効果的に一様化されるという効果をもつ。
【0093】
続いて、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の情報を交配に使うことについて説明する。図26は、遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。なお、染色体は0か1のどちらかの値が入っているが、この図26では省略する。図26に示す例では、2つの個体A0,A1が有るとする。この2つの個体A0,A1に対して交配を行わせるときには、まず交配位置を決定することになる。交配位置の決定手法は、乱数を発生させてランダムに位置を設定するものである。図26に示す例においては、交配位置(前述した濃度レベルに対応した位置)を1箇所決めて交配する場合を示している。交配位置を決めるに当たっては、乱数で選択するわけであるが、前述したドットの発生頻度情報を乱数発生時に考慮させる。交配位置が決まると、個体A0の染色体P01,P02を個体A1の染色体P11,P12に対して交配させることにより、下記に示す新しい個体A0´,A1´
A0´=P01+P12
A1´=P11+P02
が生成される。もし、個体A0,A1の評価があまり良くなくても、個体A0のP01の部分の情報と、個体A1のP12の部分の情報とが共に優れているものならば、生成される個体A0´はすばらしい評価値を得られることになる。このように交配を行わせることにより、遺伝的アルゴリズムによる進化を高速に進められるという効果を生む。
【0094】
このように本実施の形態によれば、ディザマトリクスに応じて生成される画像データと出力エンジンの特性データとに基づいて求めたディザ画像出力に対する画質の評価を行ない、この評価結果に基づき求めたディザマトリクスの適応度に基づいて遺伝的アルゴリズム処理を実行し、生成した遺伝子情報によりディザマトリクスを出力する。これにより、パターンサイズに関わらず遺伝的アルゴリズムを用いたディザマトリクスの最適化処理を行なうことができる。
【0095】
また、本実施の形態によれば、マルチビームの各ビームで光量に違いがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【0096】
なお、本実施の形態においては、評価関数としてLDの使用頻度(ビームの出現頻度)の偏りを用いることにより、LDの使用頻度(ビームの出現頻度)の均一化を図ることについて説明したが、同様にして、ポリゴンミラー63の反射面に対しても同じ方法で使用頻度の均一化を図ることが可能である。これにより、ポリゴンミラー63の反射面によって走査形成されるドットの出現頻度を均一化することが可能となり、ポリゴンミラー63の反射面の反射率の違いによるムラを防ぐことができる。
【0097】
図27は、セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。図27に示すように、6面ポリゴンの場合、F0,F1,...,F5でポリゴンミラー63の反射面は構成される。
【0098】
ここで、図28を参照しつつ評価値算出について詳細に説明する。まず、図28(a)に示すように、遺伝子をソートして、ポリゴンミラー63の反射面毎に分ける。これは、説明の都合上ソートしているだけであって、以下の使用頻度の計算ができるならば、特にソートする必要はない。
【0099】
次に、図28(b)に示すように、濃度方向を複数のエリアに区分した後、図28(c)に示すように、その中で階調変化に寄与している遺伝子1の数をカウントし、表を作る。
【0100】
続いて、図28(d)に示すように、濃度エリア毎に使用頻度が多いか少ないかを判断していき、濃度エリア毎に偏りの程度を算出する。偏りの算出には、一般に統計で用いられる検定の方法を用いても良いし、単に濃度エリア毎の平均値からポリゴンミラー63の各反射面の使用個数のズレの積算でも良い。そして、濃度エリア毎に算出された偏りの算出値を全濃度方向に積算して、ポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの評価値とする。この偏りが少ないほど良好な評価を遺伝子に与える。
【0101】
そして、このようにして算出されたポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの情報を評価関数として利用することにより、格段に画質の劣化が抑えられるという効果が発揮される。また、ポリゴンミラー63の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りの情報を、変異や交配の発生確率に適用させることにより、マルチビームのLD同様に、さらに効率的な変異や交配が可能となる。
【0102】
これにより、ポリゴンミラー63の反射面にばらつきがある場合であっても、画質への影響を軽減させることができるので、画質の劣化を防ぐことができる。
【0103】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態を図29ないし図32に基づいて説明する。なお、前述した第1の実施の形態と同じ部分は同じ符号で示し説明も省略する。第1の実施の形態では、2値用の遺伝子を元にディザマスクを作成する方法を説明した。本実施の形態は、多値用の遺伝子を元にディザマスクを作成する方法を説明するものである。
【0104】
第1の実施の形態での説明では、遺伝子を構成する染色体が「1」か「0」だったが、本実施の形態、例えば2ビットの画像処理の場合、染色体は「3」「2」「1」「0」の4種類となる。
【0105】
図29は、本実施の形態の多値用の遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。図29に示すように、各列(#0、#1…)のそれぞれの位置を左側の列(#0)から順番に右側(#255)へ読んでいき、初めに「1」が出てきた列に対応する値を、第一のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。さらに右側へと読んでいき、初めに「2」が出てきた列に対応する値を、第二のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。さらに右側へと読んでいき、初めに「3」が出てきた列に対応する値を、第三のディザマトリクスのその位置の閾値としてセットする。このとき、初めに存在する「1」よりも先に存在する「2」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。同様に、初めに存在する「1」及び「2」よりも先に存在する「3」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。また、2値化のときと同様に、左側の列(#0)から順番に右側(#255)へと読んでいったときに、初めに存在する各「1」、「2」、「3」以外の、「1」、「2」、「3」は無視され、ディザマトリクスの作成には寄与しない。
【0106】
このようにディザマトリクスを作成することで、第一のディザマトリクスと第二のディザマトリクスと第三のディザマトリクスとの各位置における閾値の大小関係が逆転することはない。また、このような遺伝子を用いることにより遺伝的アルゴリズムの操作である交叉や突然変異が有効に行われる。
【0107】
ここで、本実施の形態の遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法について説明する。図30は、本実施の形態の遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。図30に示す例は、(0,1)(1,2)(2,3)(3,0)を相互に交換する方法であるが、これに限るものではなく、ランダムに変更するようにしても良い。なお、図30に示す例では、#255のところには全て「3」が入っている。
【0108】
ここで、別の変異の方法について説明する。図31は、遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。図31に示す例は、変異させる情報「1」〜「3」の染色体を例えば乱数などを使って選び、その情報を水平方向に移動させてしまう方法である。
【0109】
なお、交配処理については、第1の実施の形態の場合と同様に実施されるため、その説明は省略する。
【0110】
また、図32に示すように、生成した遺伝子が無効な遺伝子にならないように、染色体をソートし直しても良い。もちろん、致死遺伝子判断の処理で致死遺伝子として扱う方法もあるのは、明らかである。
【0111】
このようにすれば、2ビット以上の多値用のディザにも本方式は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図2】レーザ光学系ユニットの構成を示す模式図である。
【図3】ビデオ制御部のディザマトリクス最適化に係る機能ブロック図である。
【図4】セルの一例を簡単に現した様子を示す模式図である。
【図5−1】一列に並べたセルを例示的に示す模式図である。
【図5−2】図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を示す模式図である。
【図6】図5−1の階調間の違いに着目した情報(遺伝子情報)を解釈の拡張に対応させて示す模式図である。
【図7】遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。
【図8】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。
【図9】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の別の一例を示す説明図である。
【図10】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。
【図11】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。
【図12】シミュレーション処理部の処理概要を示す説明図である。
【図13】評価値算出部における処理の一例を示す説明図である。
【図14】評価値算出部における処理の一例をより詳細に示す説明図である。
【図15】ガンマ特性を現したグラフである。
【図16】空間周波数特性を現したグラフである。
【図17】評価値算出部における処理の別の一例を示す説明図である。
【図18】デジタル周囲長を示す説明図である。
【図19】2種類の3画素のドットの集合により表現された網点である網点ドットパターンを示す説明図である。
【図20】セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。
【図21】評価値算出について示す説明図である。
【図22】5画素からなるドットがLD0〜3によって形成される場合を示す説明図である。
【図23】ディザマトリクス最適化処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【図24】変異元/変異先を乱数により決定するための発生確率を示す説明図である。
【図25】変異処理の流れを示すフローチャートである。
【図26】遺伝的アルゴリズムにおける交配の方法の一例を示す説明図である。
【図27】セル(あるいはサブセル)に対するレーザビームの走査を示す説明図である。
【図28】評価値算出について示す説明図である。
【図29】本発明の第2の実施の形態に係る多値用の遺伝子を元にしたディザマスクの作成手法を示す説明図である。
【図30】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の一例を示す説明図である。
【図31】遺伝的アルゴリズムにおける変異の方法の別の一例を示す説明図である。
【図32】染色体をソートし直した様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0113】
2 遺伝的アルゴリズム処理手段
3 シミュレーション手段
4 評価手段
5 ディザデータ出力手段
63 回転多面鏡
100 画像形成装置
113 ディザマトリクス最適化装置、画像処理手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
を備えることを特徴とするディザマトリクス最適化装置。
【請求項2】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する、
ことを特徴とする請求項1記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項3】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の情報を用いる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項4】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
を備えることを特徴とするディザマトリクス最適化装置。
【請求項5】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する、
ことを特徴とする請求項4記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項6】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の情報を用いる、
ことを特徴とする請求項4または5記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項7】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、
を備え、
前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、
を備え、
前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、
この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、
前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、
を含むことを特徴とするディザマトリクス最適化方法。
【請求項10】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、
この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、
前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、
を含むことを特徴とするディザマトリクス最適化方法。
【請求項1】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
を備えることを特徴とするディザマトリクス最適化装置。
【請求項2】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する、
ことを特徴とする請求項1記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項3】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度の情報を用いる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項4】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化装置において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
を備えることを特徴とするディザマトリクス最適化装置。
【請求項5】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段は、前記評価手段における評価結果である前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の偏りが少ない程、適応度が良好であると判断する、
ことを特徴とする請求項4記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項6】
前記遺伝的アルゴリズム処理手段における前記遺伝子情報に対する交配処理や突然変異処理は、前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度の情報を用いる、
ことを特徴とする請求項4または5記載のディザマトリクス最適化装置。
【請求項7】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、
を備え、
前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段を備える画像形成装置において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価手段と、
前記評価手段による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理手段と、
前記遺伝的アルゴリズム処理手段により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力手段と、
このディザデータ出力手段により出力された前記ディザマトリクスを用いた階調表現を行う画像処理手段と、
を備え、
前記画像形成手段は、前記画像処理手段における階調表現に応じて画像を形成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
マルチビームを用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、
前記マルチビームの各ビームで発生するドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、
この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、
前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、
を含むことを特徴とするディザマトリクス最適化方法。
【請求項10】
回転多面鏡による走査光学系を用いた電子写真方式の画像形成手段の特性に応じたディザマトリクスの最適化処理を行なうディザマトリクス最適化方法において、
前記回転多面鏡の各反射面によって走査形成されるドットの出現頻度に基づいて、前記ディザマトリクスに応じて生成される画像データに対する評価を行なう評価工程と、
この評価工程による評価結果に基づき前記ディザマトリクスの適応度を求め、求めた適応度に基づいて前記ディザマトリクスを記述する遺伝子情報を淘汰し、残った遺伝子情報に対して、交配処理と突然変異処理とを行なうことで新たな遺伝子情報を生成する遺伝的アルゴリズム処理工程と、
前記遺伝的アルゴリズム処理工程により生成した前記遺伝子情報によりディザマトリクスを記述して出力するディザデータ出力工程と、
を含むことを特徴とするディザマトリクス最適化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5−1】
【図5−2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2007−137007(P2007−137007A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337259(P2005−337259)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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