説明

ディスクすくい上げ装置

【課題】掴み部材によるディスクの掴みができずディスク受け座から脱落したディスクをディスク受け座上にすくい、姿勢の修正を行い排出するディスクすくい上げ装置を提供すること。
【解決手段】ディスク排出に際し、保持アーム(5、11)で保持できずにディスク受け座(14)から脱落したディスクを、芯棒機構15の上動過程でディスク受け座(14)ですくい、かつ、ディスク受け座(14)上で姿勢が傾いたディスクに、ホーム位置からディスク銜え込み位置に向けて移動するディスク搬送手段(16)の一部を干渉させてディスク搬送手段(16)による搬送が可能な姿勢に修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスク装置に設けられるディスクすくい上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のCDやDVD等のディスクを収納して再生可能なディスク装置がある。かかるディスク装置では、収納ディスクを入れ換えるディスク交換機能を有している。ディスクを排出する場合、対象となるディスクをディスク受け座上に載置して所定のディスク交換基準位置におく。その上で、予め保持アーム(掴み部材)で前後(径)方向からこのディスクを挟んで保持したのち、ローラと対をなす対向部材とを具備したディスク搬送手段をホーム位置から移動させ、該ローラと対向部材との間にこのディスクの端部を銜えさせる。
一方、ディスク受け座は保持アームがディスクを挟んで保持するのに必要な時間が経過すると自動的に下降する。ディスク受け座の下降によりディスクはディスク搬送手段と保持アームに保持されて空間に残る。ローラが回転することによりディスクは排出方向に送り出される。通常は以上の手順で自動的にディスクがディスク装置から排出される。
【0003】
このようなディスクの排出工程において、対象となるディスクが変形していたり、掴み部材が掴みにいく動作中に当該ディスク装置が外部から振動を受けたりすると、保持アームがディスクを掴み損なうことがある。ここで、保持アームは空振りの場合、ディスクの外径よりも内側のストロークエンドまで変位してディスクの掴み代を確保するように設計されている。保持アームが空振りした場合、保持アームで掴み損なわれたディスクは一対の保持アームの一方の上に掛かり、他側はディスク受け座上に支持される。ディスク受け座は保持アームの掴み動作後、下降を開始する。上記所定の交換位置の下方にはプレートが位置する。ディスク受け座はこのプレートに形成された開口を通過して更に下方の待機位置まで下降して待機する。
【0004】
ディスク受け座がプレートよりも下方の待機位置まで下降するときに、ディスク受け座上に支持されていたディスクの片端部はプレート上に掛かり、ディスクは保持アームとプレート上で傾き、ディスク受け座から落下脱落した状態となる。この状態のもとで、ディスク排出のプログラムに従い正常時と同じに所定のタイミングでディスク搬送手段がディスクを銜えるためにホーム位置から移動しようとしても、ディスクの傾き態様によってはベースローラが移動するための進路を落下ディスクが遮るため、ベースローラが移動できず、また、落下脱落したディスクの姿勢も直らず、該ディスクを排出することができない。
【0005】
一方、光ディスクドライブ装置において、起立姿勢の光ディスクをローディングするときに、光ディスクをトレイから脱落させることなくチャッキング位置にセンタリングできるようにする技術がある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献の技術は、トレイを移動自在に支持するフレームに光ディスクをチャッキング位置にセンタリングするための突起を設ける。突起は、ローディング動作に伴うトレイの移動方向に対して上り勾配に形成されたセンタリング用のスロープ面と、スロープ面の終端に連続して形成され、装置内側方向が下がった形状のテーパ面を有する。ローディング位置動作に伴い、光ディスクがスロープ面によりセンタリングされると共に、光ディスクの姿勢がテーパ面により矯正され、光ディスクのトレイからの脱落を防止する、というものである。
この特許文献の技術は、上記のとおり、突起によりディスクをセンタリングするものであり、脱落したディスクを矯正するものではない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−151197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のディスク装置では、掴み部材によるディスクの掴みができなかった場合にディスク受け座から脱落ディスクがディスクの排出に係る部材の動作障害物となりその後のディスクの排出動作が停滞するとの課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、掴み部材によるディスクの掴みができずディスク受け座から脱落したディスクをディスク受け座上にすくい、姿勢の修正を行い排出するディスクすくい装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るディスクすくい上げ装置は、ディスクの中心穴に入るセンタ軸と、このセンタ軸の軸心と直交するディスク受け座とを備え、ディスク交換基準位置とこのディスク交換基準位置より下方の待機位置との間を上下移動する芯棒機構と、
前記ディスク交換基準位置に位置する前記芯棒機構の前記ディスク受け座に載置されたディスクを径方向から挟んで保持できるように位置設定された保持アームと、
前記ディスク受け座からディスクを排出する際、ホーム位置から前記排出に適するディスク銜え込み位置に変位する部材であって、ローラと、このローラとの間にディスクを挟む対向部材とを具備したディスク搬送手段とを有したディスク装置の一部として構成されたディスクすくい上げ装置であって、前記ディスク排出に際し、前記保持アームで保持できずに前記ディスク受け座から脱落したディスクを、前記芯棒機構の上動過程で前記ディスク受け座ですくい、かつ、前記ディスク受け座上で姿勢が傾いたディスクに、前記ホーム位置から前記ディスク銜え込み位置に向けて移動する前記ディスク搬送手段の一部を干渉させて当該ディスク搬送手段による搬送が可能な姿勢に修正することとした。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ディスク排出に際し、保持アーム(掴み部材)で保持できずにディスク受け座から脱落したディスクを排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1
[1]ディスクすくい上げ装置の構成
この発明のディスクすくい上げ装置は、ディスク装置にその一部として設けられている。図1において、筐体状のフレーム1の前側板2にはディスク挿脱用の開口2aが形成されている。前側板2と対向する後側板3の内側には支持板4が固定されている。支持板4はディスクを掴む掴み部材としての後アーム5を前後方向に平行移動するリンク6、7で支えている。
【0012】
リンク6の後端側に植設された軸6aは、支持板4に左右方向に形成された案内溝4aに摺動可能に係合している。リンク7の後端側に植設された軸7aは、支持板4に軸支されている。リンク6とリンク7とは交差部においてピン8で枢着されている。
【0013】
リンク6の前端側に植設された軸6bは、後アーム5の右端側に枢着されている。リンク7の後端側に植設された軸7bは、後アーム5の左端側で左右方向に形成された案内溝5aに摺動可能に係合している。かかる構成により後アーム5は前後方向に平行移動される。左側板9のと前側板2とが交わる角の部位の近傍には上下方向に軸11aがフレーム1に固定されている。軸11aには支持板11が軸方向に稼動かつ軸を中心に回動可能に支持されている。支持板12はディスクを掴む掴み部材としての前アーム11の基端部に植設された軸11aを軸支している。前アーム11と後アーム5とで、ディスクを掴んで保持する一対の保持アームを構成する。
【0014】
後アーム5は図1に示した位置よりも後側のホーム位置から図1に示したように前側に平行移動することができる。後アーム5のストロークは、ディスク受け座14上にセンタリングされたディスクの外径部から充分離れたホーム位置から、同ディスクの外径部の内側に食い込む位置までの範囲であり、このストロークの途中に位置する同ディスクの外径に弾性力で当接する。
【0015】
軸7aはねじりコイルばね(図示せず)により後アーム5を前方で移動する向きに付勢されている。また、該軸7aはねじりコイルばねの弾性力で変位した後アーム5をホーム位置に戻す動力手段とも連結されている。ホーム位置において動力手段による軸7aの保持をクラッチにより解放すると後アーム5は前進し、動力手段を駆動することでホーム位置に戻すことができる。
【0016】
図1に示すように、前アーム11はその自由端側が前側板2に近接したホーム位置を基点位置とし、軸11aを支点として反時計回りの向きに回動変位することができる。この前アーム11はディスクをつかみ得る高さ位置まで変位する。また、変位した前アーム11は回転動力手段によりホーム位置からディスクつかみ位置へ、またそのつかみ位置からホーム位置へ回動する。
【0017】
前アーム11は図1に示したホーム位置で、ディスク受け座14上にセンタリングされたディスクの外径部から充分離れている。前アーム11はこのホーム位置から回動してディスク受け座14側に位置することができるが、その揺動ストロークはホーム位置から同ディスクの外径部の内側に食い込む位置までの範囲であり、このストロークの途中に位置する同ディスクの外径に弾性力で当接する。
【0018】
支持板4の下方にはプレート12が位置する。前アーム11と後アーム5との間のプレート12にはディスク受け座14が通過できる大きさの円形の開口12aが形成されている。開口12aと同一軸心上には、ディスクの中心穴に入る大きさのセンタ軸13が位置している。センタ軸13には、該センタ軸13の軸心と直交するディスク受け座14が組み合わされており、センタ軸13の上端はディスク受け座14より上方に突出している。
【0019】
センタ軸13とディスク受け座14とは、芯棒機構15の一部として構成されている。心棒機構15により、センタ軸13とディスク受け座14とは一体的に、ディスク交換基準位置とこのディスク交換基準位置より下方の待機位置との間を軸心の位置を変えずに上下移動する。上記待機位置は、図1に示すようにプレート12よりも下方の位置であり、上記ディスク交換基準位置は、プレート12よりも上方の位置である。
【0020】
ディスク受け座14がディスク交換基準位置に位置している状態のもとで、変形のない通常のディスクがその中心穴をセンタ軸13に嵌合させて該ディスク受け座14に載置されているとき、前アーム11及び後アーム5をそれぞれのホーム位置からスタートさせると、前アーム11及び後アーム5は、ディスクの略半径方向から略同タイミングかつ略均等の保持力で該ディスクを保持する。また、これら前アーム、後アームそれぞれを駆動する動力手段により、それぞれのホーム位置に戻すことができる。
【0021】
開口2aを通り挿脱されるディスクの進路を、ホーム位置にある前アーム11が遮ることがないように、ホーム位置において前アーム11はディスク進路の上方に位置し、ディスク受け座14上のディスクを掴む方向に変位するに従い、軸11aに装着されている該前アーム11の基端部が該軸11aにそって下降し、ホーム位置に戻った状態で原高さに戻るようになっている。
【0022】
図1において、ホーム位置にある前アーム11の下方にはディスク搬送手段16が位置している。ディスク搬送手段16はこの位置をホーム位置としてディスク受け座14にディスクを搬入する際、及び、ディスク受け座14からディスクを排出する際に、このホーム位置から後側に平行移動して前記搬入、排出に適するディスク銜え込み位置に変位する。ディスク搬送手段16は、図2にその全体概略構成を示したようにベース部材17と、このベース部材17の左右方向に間隔をおいて支持された2つの傾斜部材19と、これらの傾斜部材19を上方から間隔をあけて被うコの字形をした板状の対向部材20と、ベースローラ18等を具備している。対向部材20は左右両端の側板部がベース部材17に固定されている。ベースローラ18は上記左右両端の側板部に形成された長孔10にそって上下動可能であり、かつ、図示しない動力系により正逆転可能である。図1において、対向部材20は図の煩雑を避けるため記載を省略している。
【0023】
図3に示すように、対向部材20の左右両側板を架橋状につなぐ部分は左右方向に位置する2つの傾斜部材19及びベースローラ18の上方に位置している。
【0024】
ディスク搬送手段16がホーム位置からディスク銜え込み位置に変位するに伴い、ホーム位置で傾斜部材19の上面より下方に位置しているベースローラ18は長孔10にそって上方に変位し、対向部材20との間でディスクを銜えることができる状態となる。ベースローラ18はディスク搬送手段16がホーム位置に復帰するに伴い、傾斜部材19の上面よりも下方に復帰する。
【0025】
図4にディスク搬送手段16の変位に伴うベースローラ18の変位をダイヤグラムで示す。ホーム位置Hに位置しているディスク搬送手段16が、ディスク搬入、排出時に、ホーム位置Hより、ディスク銜え込み位置Pに向けて後進するのに伴いベースローラ18も実線で示した軌跡で移動を開始し、ディスク銜え込み位置に達する前の位置から長孔10にそって上動して対向部材20との間でディスクを銜えることが可能な位置Pに至る。この位置で回転してディスク搬入、排出を行い、これが終わると破線で示した軌跡でホーム位置Hに戻る。
【0026】
[2]ディスク搬入動作
ディスク受け座14にディスクを搬入する工程を説明する。
工程1:
図5において、芯棒機構15はプレート12より下方の待機位置に位置している。後アーム5はディスクの外形よりも内側のストロークエンドに位置している。ディスク搬送手段16はホーム位置(図5において2点鎖線で示す位置)にある。ベースローラ18は傾斜部材19の上面よりも下方のホーム位置Hにある。前アーム11は対向部材20の上方に位置している。
【0027】
かかる状態のもとで、開口2aからディスクD1を実線矢印の向きに挿入すると、例えばディスクD1の進入を検知したセンサからの信号により、搬送手段16が銜え込み位置へ向けてディスクD1の進入方向に移動(後進)し、この移動途中からベースローラ18が上動してディスクD1の先端部はベースローラ18と対向部材20との間に銜え込まれ、ベースローラ18の回転によりセンタ軸13の軸心とディスクの中心穴の軸心とが合致する位置まで送られる。この送りに伴い、後アーム5はディスクD1の外径部に接しつつ後退する。
【0028】
工程2:
図6において、センタ軸13の軸心上にディスクD1の中心穴が位置したタイミングでベースローラ18の送りが停止され、これをトリガーとして前アーム11がホーム位置から変位してディスクD1の前端側を押さえる。これにより、ディスクD1は後アーム5と前アーム11とで保持されると共に、ベースローラ18と対向部材20とにより銜えられた状態となる。また、同トリガーにより芯棒機構15が上動を開始する。
【0029】
工程3:
図7において、ディスク交換基準位置に達すると上動を停止し、センタ軸13がディスクD1の中心穴21に嵌合する。
【0030】
工程4:
図8において、芯棒機構15がディスク交換基準位置に達したことをトリガーとして、ディスク搬送手段16がホーム位置に戻る。以上の工程により、ディスク受け座14上にディスクD1を搬入することができる。
【0031】
こうして、ディスク受け座14上にディスクD1が搬入された状態のもとでは、例えば図9に示したように、既にセンタ軸13上にディスクD2、D3、D4が装着されている。本例では3枚の収納例であるが、ディスク受け座14を増やせば、さらに多くの枚数の収納することもできる。
【0032】
前図5、図6に示したように、ディスクを搬入する際には、予めセンタ軸13の最上位に空のディスク受け座14を位置させておく。また、ディスクを再生したり、排出したりする場合には、対象となるディスクを支持したディスク受け座14がセンタ軸13の最上位に位置するようにディスク受け座14の移動を行なう。このため、図9に示すようにセンタ軸13と同心上にはもう一つの芯棒機構150を配置しておく。芯棒機構150はセンタ軸13と同じ構成のセンタ軸130を備えている。
【0033】
図9において、例えば、対象となるディスクがディスクD3だとすると、ディスク交換位置にある芯棒機構15に対して、上方より芯棒機構150を下降して、センタ軸13の端部にセンタ軸130の端部を合致させた上で、ディスクD1、D2をそれぞれのディスク受け座14と共に、センタ軸130に移動させ、同時にディスクD3をセンタ軸13の最上位に位置させてから、芯棒機構150を上昇させる。
【0034】
ディスク受け座14をセンタ軸13、130上で移動させる手段としては、種々あるが、一例としはねじとナットの原理が適用される。実際には複雑であるが、シンプル化すると、図10のようになる。センタ軸13、130には外周に螺旋状に多条のカム溝が形成されていて、これにディスク受け座14の内径部から突出した凸部が係合している。また、ディスク受け座14の内径部に凹部14aが形成されていて、この凹部24aにはセンタ軸13と対をなす回り止め棒22が係合している。なお、凹部14aの位置はディスクの中心穴21の内側とする。
【0035】
センタ軸130についてもこれと対をなす回り止め棒220が設けられている。センタ軸13の端部にセンタ軸130の端部が合致するとき、これら回り止め棒22、220もそれぞれの端部が合致する。かかる端部同士が合致した状態のもとで、センタ軸13、130は同期して一体的に回転する際、回り止め棒22は適宜の不動の部材に支持されて不動である。
【0036】
かかる構成において、センタ軸13とセンタ軸130を同期して一体的に回転させると、ナットに相当するディスク受け座14は回り止めされているものの軸長手方向に移動可能であるので、センタ軸13、130のカム溝に案内されてセンタ軸13、130間を移動する。例えば、センタ軸13、130の回転量を上記カム溝のピッチ、リード等との関係で制御することによりディスク受け座14の位置を所望の位置に置くことが可能である。
【0037】
ディスクを再生する場合、選択したディスクをセンタ軸13の最上位に位置させる。その上で、芯棒機構15をディスク交換基準位置に変位させ、かつ、前アーム11と後アーム5とでディスクを掴む。この状態は図7に示した状態と同じになる。芯棒機構15を待機位置に向けて下降させてから、再生装置でディスクをセンタリング支持し、次いで、前アーム11と後アーム5とをホーム位置に退避させて再生を行なう。
【0038】
[3]ディスク排出動作
ディスクの排出動作は前記したディスクの搬入動作の略逆の工程を辿る。
工程1:
図8に示すように、排出の対象となるディスクD1をディスク受け座14と共にセンタ軸13の最上位に位置させる。その上で、芯棒機構15をディスク交換基準位置に変位させる。前アーム11と後アーム5及びディスク搬送手段16はそれぞれのホーム位置にある。
【0039】
工程2:
図7に示すように、ディスク受け座14上のディスクD1を前アーム11と後アーム5で挟んで保持する。
【0040】
工程3:
ディスク搬送手段16をホーム位置からディスク銜え込み位置に移動させる。これにより、ディスクD1はベースローラ18と対向部材20間に銜え込まれる。次いで、芯棒機構15を待機位置に向けて下降させ、また、前アーム11と後アーム5をホーム位置に退避させる。
【0041】
工程4:
図5において、ベースローラ18を回転させて、破線矢印で示すようにディスクD1を開口2aから送り出す。ホーム位置にある前アーム11はディスクD1の進路外のホーム位置に退避しているので、ディスクD1の排出に障害とはならない。ディスクD1を送り出した後、ディスク搬送手段16はホーム位置に戻る。
【0042】
[4]比較例
上記排出工程の工程2において、図7に示すように、ディスク受け座14上のディスクD1を前アーム11と後アーム5でディスクD1を挟んで保持するのであるが、これら前アーム11と後アーム5とが閉じるタイミングで当該ディスク装置を搭載した車両が振動したり、或いは、ディスクD1が変形したりしていると、ディスク縁部が正常な位置からずれるため、前アーム11、後アーム5の空振りに起因してディスクD1がストロークエンドに位置する前アーム11、後アーム5の何れかに乗り上がることがある。
【0043】
図11において、実線で示したディスクD1はその後側がストロークエンドまで変位した後アーム5に掛かり前傾しており、2点鎖線で示したディスクD1はその前側が前アーム11に掛かり後傾している。ディスクの他側は一旦はディスク受け座14上に支持されるが、ディスク受け座14が下降するに伴い、プレート12上に残されている。このため、ディスクD1の後側が後アーム5に掛かった場合には、該ディスクD1の前側はプレート12とベース部材17との段差部分に掛かり、ディスクD1の片側が前アーム11に乗り上がった場合には、プレート12上に掛かった状態となっている。
【0044】
このように、ディスクD1は前アーム11及び後アーム5とからなる保持アームとプレート12間で傾き、ディスク受け座14から落下脱落した状態となる。この状態のもとで、ディスク排出のプログラムに従い正常時と同じに所定のタイミングでディスク搬送手段16をディスク銜え込み位置に移動させようとしても、ディスクD1が障害となってディスク搬送手段16の移動ができなくなる、また、落下脱落したディスクの姿勢も直らず、該ディスクを排出することができない。
【0045】
[5]脱落時のディスク排出動作
上記比較例のように保持アームが空振りしてディスクを掴むことができない場合、保持アームが正常の掴み動作よりも大きい最大ストロークまで挟み方向に移動することから、センサを設置することによりその状況を検知することが可能である。そして、かかる場合には、プレート12上にディスクの一端部が載り、他端側が保持アームに支持されて傾いた状態になっている。
【0046】
そこで、センサからの情報で保持アームの空振りが検知されたら、制御手段は通常のディスク排出シーケンスを変更して脱落ディスクの排出モードに切り替える。脱落ディスクの排出モードに切り替わると、ディスク搬送手段16はホーム位置に留め置かれ、一旦下降した芯棒機構15を上昇させる。
【0047】
芯棒機構15が上昇し、ディスク受け座14がプレート12を通過するタイミングで保持アームをホーム位置に戻す。
(a)前傾姿勢で脱落している場合
後アーム5にディスクD1の一端側が掛かっている前傾姿勢の場合には、該ディスクD1は後アーム5の後退により後アーム5に支持されなくなるため他側を支点にして倒れ上昇中のディスク受け座14上に全体が乗る。
【0048】
この時点でディスクD1はその中心穴21がセンタ軸13に嵌合して正常な状態でディスク受け座14上に支持される場合がある。或いは中心穴21がセンタ軸13から外れている場合には、図12に示すようにディスク受け座14の端部とセンタ軸13とに支持されていて、若干傾いた状態となっている。
【0049】
このようなディスクD1を載置したまま、芯棒機構15はディスク交換基準位置まで上昇して停止する。次に、ディスク搬送手段16がホーム位置からディスク銜え込み位置に向かって移動する。ここで、ディスク搬送手段16は水平に後側に向けて進む。
【0050】
このようなディスク搬送手段16の移動過程で、傾斜部材19の傾斜面19aがディスク受け座14上で姿勢が傾いたディスク端部に干渉し、傾斜面19aにディスク端部が接しつつ上昇することで、ディスクD1の位置は少しずつ移動してディスク受け座14上での位置が修正される。
【0051】
この修正の過程で中心穴21がセンタ軸13に合致しディスク搬送手段16による搬送可能な正常姿勢でディスク受け座14上に載置される(図13)。或いは、中心穴21がセンタ軸13に合致しない場合でも傾斜面19aに沿ってディスクD1の端部が対向部材20と傾斜部材19との間に位置するようになる。
【0052】
いずれにしても、ディスク搬送手段16がディスク銜え込み位置に移動した状態ではディスク搬送手段16がディスクD1の端部を銜え込んでいる。次に、芯棒機構15を下降させ、ベースローラ18を駆動することにより、ディスクD1をディスク受け座14から排出することができる。
【0053】
(b)後傾姿勢で脱落している場合
図11に2点鎖線で示すように前アーム11にディスクD1の一端側が掛かっている後傾姿勢の場合には、該ディスクD1は前アーム11の後退により該前アームに支持されなくなるため他側を支点にして傾き上昇中のディスク受け座14上に全体が乗る。
【0054】
この時点でディスクD1はその中心穴21がセンタ軸13に嵌合して正常な状態でディスク受け座14上に支持される場合がある。或いは中心穴21がセンタ軸13から外れている場合には、図12に示したのと反対の傾きでディスク受け座14の端部とセンタ軸13とに支持されていて、若干傾いた状態となっている。
【0055】
このようなディスクD1を載置したまま、芯棒機構15はディスク交換基準位置まで上昇して停止する。次に、ディスク搬送手段16がホーム位置からディスク銜え込み位置に向かって移動する。
このようなディスク搬送手段16の移動過程で、後傾姿勢のディスクD1の前端部が傾斜部材19と対向部材20の間に入る。
【0056】
ディスク搬送手段がディスク銜え込み位置に移動した状態ではディスク搬送手段16がディスクD1の端部を銜え込んでいる。次に、芯棒機構15を下降させ、ベースローラ18を駆動することにより、ディスクD1をディスク受け座14から排出することができる。
【0057】
以上の通り、この発明では、ディスク排出に際し、予めディスクを保持アームに保持したのち、ディスク搬送手段をディスク銜えこみ位置に変位させてディスクをディスク搬送手段で銜えてから、芯棒機構をディスク交換基準位置から待機位置に向けて下降させることによりセンタ軸をディスク中心穴から外し、ディスク搬送手段で排出すべきところ、保持アームで保持できずに落下したディスクを、芯棒機構の上動過程でディスク受け座ですくい、かつ、ディスク受け座上で姿勢が傾いたディスクに、ホーム位置から銜え込み位置に向けて移動するディスク搬送手段の一部を干渉させて当該ディスク搬送手段による搬送が可能な姿勢に修正するように構成したので、保持アームで保持を失敗し、ディスク受け座から脱落したディスクを自動的に排出させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ディスクすくい上げ装置が構成されたフレームの内部構造を示す斜視図である。
【図2】ディスク搬送手段の斜視図である。
【図3】ディスク搬送手段の要部を示した斜視図である。
【図4】ベースローラの移動サイクルダイヤグラムである。
【図5】搬入排出工程におけるディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置を示した図である。
【図6】搬入排出工程におけるディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置を示した図である。
【図7】搬入排出工程におけるディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置を示した図である。
【図8】搬入排出工程におけるディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置を示した図である。
【図9】芯棒機構に複数ディスクを収納した状態を例示した正面図である。
【図10】上下心棒機構間にディスクを移動させる機構部分を説明した斜視図である。
【図11】プレート上に脱落したディスクをディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置で例示した図である。
【図12】ディスク受け座上に傾斜して載置されたディスクをディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置で例示した図である。
【図13】ディスク受け座上に位置修正されて載置されたディスクをディスクすくい上げ装置主要部材の関係位置で例示した図である。
【符号の説明】
【0059】
1 フレーム、2a 開口、5 後アーム、6、7 リンク、11 前アーム、12 プレート、13 センタ軸、14 ディスク受け座、15 芯棒機構、16 ディスク搬送手段、17 ベース部材、18 ベースローラ、19 傾斜部材、19a 傾斜面、20 対向部材、21 中心穴、D1 ディスク、H ホーム位置、P ディスク銜え込み位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの中心穴に入るセンタ軸と、このセンタ軸の軸心と直交するディスク受け座とを備え、ディスク交換基準位置とこのディスク交換基準位置より下方の待機位置との間を上下移動する芯棒機構と、
前記ディスク交換基準位置に位置する前記芯棒機構の前記ディスク受け座に載置されたディスクを径方向から挟んで保持できるように位置設定された保持アームと、
前記ディスク受け座からディスクを排出する際、ホーム位置から前記排出に適するディスク銜え込み位置に変位する部材であって、ローラと、このローラとの間にディスクを挟む対向部材とを具備したディスク搬送手段とを有し、ディスク装置の一部として構成されたディスクすくい上げ装置であって、
前記ディスク排出に際し、前記保持アームで保持できずに前記ディスク受け座から脱落したディスクを、前記芯棒機構の上動過程で前記ディスク受け座ですくい、かつ、前記ディスク受け座上で姿勢が傾いたディスクに、前記ホーム位置から前記ディスク銜え込み位置に向けて移動する前記ディスク搬送手段の一部を干渉させて当該ディスク搬送手段による搬送が可能な姿勢に修正することを特徴とするディスクすくい上げ装置。
【請求項2】
前記ディスクに押し当てられてディスクの姿勢を修正する前記ディスク搬送手段の一部として、前記対向部材と一体的な傾斜部材や前記ローラが用いられることを特徴とする請求項1記載のディスクすくい上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−90952(P2008−90952A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271936(P2006−271936)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】