説明

ディスクトレイ駆動用ギヤ装置

【課題】 ディスクトレイ及びスライダについての駆動トルクなどを異なる適正値に機械的に制御することが可能であり、それらの動作の円滑性を確保するを可能にする。
【解決手段】 ディスクトレイ10と、スライダ20と、第1ギヤ81と、第2ギヤ82と、ディスクトレイ側の第1ラック11と、スライダ側の第2ラック21と、モータの回転を第1及び第2の各ギヤ81,82に伝達する単一の入力ギヤ85とを備える。第1ラック11と第1ギヤ81との噛合いによってディスクトレイ10が進退移動する。第2ラック21と第2ギヤ82との噛合いによってスライダ20が往復移動する。第1ギヤ81と第2ギヤ82とを、歯数が同一でモジュールの異なるギヤによって形成する。入力ギヤ85は、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の歯数及びモジュールと異なる歯数及びモジュールを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクトレイ駆動用ギヤ装置、特に、互いに連動して動作するディスクトレイ及びスライダについての駆動力や移動量などを異なる適正値に機械的に制御することを可能にし、かつ、それらの動作の円滑性を確保するための対策が講じられたディスクトレイ駆動用ギヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDドライブなどのディスク装置では、ディスクトレイが光ピックアップによる光学的処理位置に対する進入位置とその進入位置から後退した退避位置との間で進退移動可能になっている。また、ディスクトレイによって上記光学的処理位置に搬入(ローディング)されたディスクが、スライダの往動又は復動を通じてターンテーブル上でクランプされたりクランプ解除されたりするようになっている。さらに、ディスクトレイの進退移動やスライダの往復動は、それらに設けられたラックとそれらのラックに噛み合うギヤとを備えるギヤ機構によって行われるようになっていることに加え、ディスクトレイ側のラックは、そのディスクトレイの進入位置及び退避位置でギヤから離れ、スライダ側のラックも同様に、そのスライダの往動限及び復動限でギヤから離れるようになっている。
【0003】
上記構成を備えるディスク装置の概略的な基本構成を図3〜図6に示した説明図を参照して次に説明する。
【0004】
10はディスクトレイで、このディスクトレイ10には第1ラック11が備わっている。これに対し、20はスライダで、このスライダ20には第2ラック21が備わっている。そして、ディスクトレイ10の進退移動やスライダ20の往復動は、それらに設けられた第1又は第2のラック11,21とそれらのラック11,21に噛み合うギヤ51とを備えるギヤ機構50によって行われるようになっている。また、ギヤ機構50には、モータ(不図示)の回転をギヤ51に伝達する入力ギヤ52が含まれている。
【0005】
ディスクトレイ10とスライダ20とはカム機構30を介して連動されている。すなわち、カム機構30は、ディスクトレイ10側に設けられているカム溝31と、スライダ20側に設けられているカムピン35とを備えている。そして、このカム機構30の作用により、図3の状態から図4の矢印aのようにスライダ20が往動すると、ディスクトレイ10が図4の矢印bのように後退移動する。これに対し、図6の状態からディスクトレイ10が矢印bの反対向きに進入移動すると、スライダ20が矢印aの反対向きに復動する。
【0006】
また、スライダ20と図示していない光ピックアップとが、別のカム機構40によって連動されるようになっている。すなわち、このカム機構40は、スライダ20側に設けられているカム面41と光ピックアップ側に設けられたカムピン42とを備えている。そして、図4矢印cのように光ピックアップが初期位置に復帰するのに伴い、カムピン42がカム面41を押してスライダ20を矢印aのように往動させる。
【0007】
次に、上記基本構成を備えたディスク装置の作動を図3〜図6を参照して説明する。
【0008】
図3に示した状態は、ディスクトレイ10が進入位置に位置し、スライダ20が復動限に位置している状態を示していて、このときには、第1ラック51や第2ラック21がギヤ51から離れている。
【0009】
図3の状態から光ピックアップが初期位置に復帰してくると、図4矢印cのようにカムピン42がカム面41を押してスライダ20を矢印aのように往動させる。このときのスライダ20の往動が、当該スライダ20の往動時の初期移動であり、そのような初期移動によって第2ラック21がギヤ51に近付いて図4のように噛み合う。こうしてスライダ20の初期移動によって第2ラック21がギヤ51に噛み合うと、入力ギヤ52によってモータの回転がギヤ51に伝達されているために、第2ラック21が図5の矢印aのように送られてスライダ20が同矢印a方向に往動する。このようにスライダ20が往動時の初期移動を行った後のそのスライダ20の往動に連動して、図5のようにカム機構30の作用により、ディスクトレイ10が矢印bのように後退時の初期移動を開始して第1ラック11がギヤ51に噛み合う。その後は、図6矢印Pのように、ギヤ51の回転によってディスクトレイ10が退避位置に向けて後退する。また、ディスクトレイ10が後退時の初期移動を行った後でのそのディスクトレイ10の後退移動により、カム機構30の作用でスライダ20が往動限まで移動して第2ラック21がギヤ21から離れる(図5から図6)。ディスクトレイ10が退避位置に到達した時点では、第1ラック11がギヤ51から離れる。
【0010】
上記した作動は、ディスク装置において、ディスクトレイ10が進入位置から退避位置まで後退する工程についての作動である。この逆の作動、すなわち、ディスクトレイ10が退避位置から進入位置に進入する工程についての作動は次のように行われる。
【0011】
すなわち、退避位置に位置しているディスクトレイ10をユーザで手で押し込むといった操作あるいは電気機械的な制御を行わせて、ディスクトレイ10に後退時の初期移動を行わせると、第1ラック11がギヤ51に噛み合い、その後はギヤ51の回転が第1ラック1に伝達されてディスクトレイ10が進入位置に向けて移動する。こうしてディスクトレイ10が進入動作を行うと、その進入動作の終期に行われる終期移動では、カム機構30の作用によりスライダ20がその往動限から復動限に向けて初期移動され、このときの初期移動により第2ラック21がギヤ51に噛み合う(図6から図5)。そして、第2ラック21がギヤ51に噛み合った後、そのギヤ21の回転が第2ラック21に伝達されてスライダ20が復動する。このようにしてスライダ20が復動するときのカム機構30の作用により、ディスクトレイ10が進入位置に達して第1ラック11がギヤ51から離れる。また、第2ラック21もギヤ51から離れて、図3の状態になる。
【0012】
以上のように、このディスク装置では、第2ラック21がギヤ51に噛み合ってスライダ20が往動しているときに、ディスクトレイ10がその進入位置から退避位置に向けて初期移動を行い、その初期移動によって第1ラック11がギヤ51に対して噛み合い開始する。また、第1ラック11がギヤ51に噛み合ってディスクトレイ10がその退避位置から進入位置に向けて進入移動しているときに、スライダ20が往動限から復動限に向けて初期移動を行い、その初期移動によって第1ラック11がギヤ51に対して噛み合いを開始する。また、スライダ20はその往復移動によって上記したディスクのクランプ動作やクランプ解除動作を行わせる役割を担うので、ギヤ51から第2ラック21に伝達させるトルクが、ディスクトレイ10の第1ラック11にギヤ51から伝達するトルクよりも大きいことが必要である。
【0013】
そのような状況の下で、ディスクトレイ10に進入位置と退避位置との間で円滑に進退移動を行わせ、かつ、スライダ20に往動限と復動限との間で円滑に往復動を行わせるためには、ディスクトレイ10の後退時及び進入時の初期移動によって第1ラック11がギヤ51に円滑に噛み合うこと、スライダ20の往動時及び復動時の初期移動によって第2ラック21がギヤ51に円滑に噛み合うこと、などが要求される(噛合いの円滑性)。また、ディスクトレイ10を進退移動させる際にギヤ51から第1ラック11に伝達されるトルクや第1ラック11の移動速度の大きさが適切であること、スライダ20を往復動させる際にギヤ51から第2ラック21に伝達されるトルクや第2ラック21の移動速度の大きさが適切であること、なども要求される(トルク・移動速度の適切性)。
【0014】
ところで、従来では、ディスクトレイ10の第1ラック11やスライダ20の第2ラック21に噛み合ってトルクを伝達するギヤ装置として、次に説明する3つのタイプを適宜選択して適用していた。
【0015】
図7に示した第1のタイプのギヤ装置60は、モータ(不図示)の回転がプーリ71及び中継ギヤ72を介して伝達される単一の入力ギヤ61と、ディスクトレイ(不図示)の第1ラック11とスライダ(不図示)の第2ラック21とが共に噛み合う両者に共通のギヤ62とが樹脂で一体成形されている。このギヤ装置60では、第1ラック11や第2ラック21がギヤ62に対する噛合いを開始するときのパターンが一義的に定まるために上記した噛合いの円滑性を満足させることができる。しかし、第1及び第2の各ラック11,21がそれらに共通なギヤ62に噛み合うように構成されているので、それらに伝達されるトルクやそれらの移動速度が同一になって、上記したトルク・移動速度の適切性を満足させることはできない。
【0016】
図8に示した第2のタイプのギヤ装置60は、モータ(不図示)の回転がプーリ71及び中継ギヤ72を介して伝達される単一の入力ギヤ61と、ディスクトレイ(不図示)の第1ラック11が噛み合うギヤ63とが樹脂で一体成形されていて、上記入力ギヤ61にスライダ(不図示)の第2ラック21が噛み合うようになっている。同図のギヤ装置60では、第1ラック11や第2ラック21が、歯数の異なるギヤ63や入力ギヤ61に対する噛合いを開始するときのパターンが一義的には定まらないために、上記した噛合いの円滑性が満足されなくなる。しかし、第1及び第2の各ラック11,21が異なるギヤ63や入力ギヤ61に噛み合うように構成されているので、それらに伝達されるトルクやそれらの移動速度を異ならせることが一応可能であるために、上記したトルク・移動速度の適切性をある程度は満足させることができる。
【0017】
図示していないけれども、第3のタイプのギヤ装置は、ディスクトレイの第1ラック11が噛み合うギヤと、スライダの第2ラック21が噛み合うギヤとが別々の部品で形成されていて、それらにモータの回転が中継ギヤ72を介して伝達されるようになっている。このものによると、第1ラック11や第2ラック21に別々のギヤが噛み合うので、それら別々のギヤの歯数などを適切に定めることにより上記した噛合いの円滑性やトルク・移動速度の適切性を満足させやすくなる。しかしながら、第1ラック11や第2ラック21に対して別々のギヤを用いることから、部品点数が増え、組立て工程も煩雑になる。
【0018】
一方、光ディスクプレーヤのローディング機構に関して、太陽歯車と遊星歯車とを用いた歯車機構を採用することによって、トレイローディング動作からディスククランプ動作への移行をスムーズに行わせる対策を講じることが従来より知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、ディスク装置のローディング装置に関して、案内トレイ及びターンテーブルの移動速度を、それらに対応するギヤ部の円周速度を調節することによって適正するための対策についても従来より提案されている(たとえば、特許文献2参照)。さらに、光ディスク装置に関して、共通の駆動源を用いてピックアップ送り動作、ターンテーブル昇降動作及びディスク搬送動作を行うことが従来より知られている(たとえば、特許文献3参照)。
【特許文献1】実開平5−86137号公報
【特許文献2】特開平4−345956号公報
【特許文献3】特開2005−174427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、上記した第1〜第3の各タイプのギヤ装置では、上記した噛合いの円滑性、トルク・移動速度の適切性、及び部品点数を減らして組立て工程を簡素化する、といったすべての条件をすべて満たすことができないという問題点があった。
【0020】
そこで、本発明は、互いに連動して動作するディスクトレイ及びスライダについての駆動力(トルク)や移動速度などを異なる適正値に機械的に制御することを可能にし、かつ、それらの動作の円滑性を確保することのできるディスクトレイ駆動用ギヤ装置を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、部品点数を減らして組立て工程を簡素化することのできるディスクトレイ駆動用ギヤ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るディスクトレイ駆動用ギヤ装置は、ディスクの光学的処理位置に対する進入位置とその進入位置から後退した退避位置との間で進退移動可能なディスクトレイと、往動限と復動限との間で往復移動可能なスライダと、上記ディスクトレイに対応して設けられた第1ギヤと、上記スライダに対応して設けられた第2ギヤと、上記ディスクトレイに設けられてそのディスクトレイの進入位置及び退避位置で上記第1ギヤから離れかつそのディスクトレイの後退時及び進入時の初期移動によって上記第1ギヤに噛み合わされる第1ラックと、上記スライダに設けられてそのスライダの往動限及び後退限で上記第2ギヤから離れかつそのスライダの往動時及び復動時の初期移動によって上記第2ギヤに噛み合わされる第2ラックと、モータの回転を第1及び第2の上記各ギヤに伝達する単一の入力ギヤと、を備える。また、上記第1ラックと上記第1ギヤとの噛合いによって上記ディスクトレイが進退移動され、上記第2ラックと上記第2ギヤとの噛合いによって上記スライダが往復移動されるようになっていると共に、スライダが往動時の初期移動を行った後のそのスライダの往動にディスクトレイの後退時の初期移動が連動され、かつ、ディスクトレイの進入動作の終期移動にスライダの復動時の初期移動が連動されている。そして、上記第1ギヤと上記第2ギヤとが、歯数が同一でモジュールの異なるギヤによって形成されている。
【0023】
本発明において、上記入力ギヤは、上記第1ギヤ及び上記第2ギヤの歯数及びモジュールと異なる歯数及びモジュールを有しているものであってもよい。
【0024】
さらに、上記第1ギヤと上記第2ギヤと上記入力ギヤの3者が、単一の樹脂成形体でなる3段ギヤ構造を形成していることが望ましい。
【0025】
さらに、上記入力ギヤを挟む両側に上記第1ギヤと上記第2ギヤとが配備されていると共に、入力ギヤの外径が上記第1ギヤの外径及び上記第2ギヤの外径よりも大きくなるようにその入力ギヤの歯数及びモジュールが定められていることが望ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ディスクトレイ及びスライダについての駆動力や移動量などを異なる適正値に機械的に制御することが可能になり、それらの動作の円滑性を確保するが可能になるので、一定の電圧でディスクトレイ及びスライダを別々のトルク及び移動速度で円滑に駆動させることが可能になる。また、少ない部品点数でディスクトレイ及びスライダの駆動トルクや移動速度を別々に設定することができるため、部品点数を削減して組立て工程を簡素化することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は本発明の実施形態に係るディスクトレイ駆動用ギヤ装置の要部の平面図、図2は同ギヤ装置の要部を説明的に示した概略側面図である。以下の説明では、図1及び図2を参照することと併せて、図3〜図6を参照することとする。
【0028】
本発明の実施形態に係るディスクトレイ駆動用ギヤ装置は、図3〜図6を参照して既述した要素、すなわち、ディスクトレイ10、スライダ20、第1ラック11、第2ラック21などを備えている。そして、ディスクトレイ10が、ディスクの光学的処理位置に対する進入位置とその進入位置から後退した退避位置との間で進退移動可能である。また、スライダ20が往動限と復動限との間で往復移動可能である。
【0029】
図1ないし図2には、ディスクトレイ10に対応して設けられた第1ギヤ81と、スライダ20に対応して設けられた第2ギヤ82と、ディスクトレイ10に設けられてそのディスクトレイ10の進入位置及び退避位置で第1ギヤ81から離れかつそのディスクトレイ10の後退時及び進入時の初期移動によって第1ギヤ81に噛み合わされる第1ラック11と、スライダ20に設けられてそのスライダ20の往動限及び後退限で第2ギヤ83から離れかつそのスライダ20の往動時及び復動時の初期移動によって第2ギヤ83に噛み合わされる第2ラック21と、モータの回転を第1及び第2の上記各ギヤに伝達する単一の入力ギヤ85と、が示されている。なお、71はプーリ、72は中継ギヤであり、これらは図7又は図8に示したプーリ71や中継ギヤ72に相当している。
【0030】
そして、図2のように、入力ギヤ85を挟む両側に第1ギヤ81と第2ギヤ82とが同心状に配備されていて、これらの入力ギヤ85、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の3者が単一の樹脂成形体で作られて3段ギヤ構造を形成している。また、入力ギヤ85の外径が第1ギヤ81の外径及び第2ギヤ82の外径よりも大きくなるようにその入力ギヤ85の歯数及びモジュールが定められている。このため、上記の3段ギヤ構造を、簡単な割り金型を用いて容易に成形することができる。
【0031】
図2には、入力ギヤ85の歯数をZ、同モジュールをMで示し、第1ギヤ81の歯数をZ1、同モジュールをM1、駆動トルクをT1で示し、第2ギヤ82の歯数をZ2、同モジュールをM2、駆動トルクをT2で示してある。
【0032】
実施形態のギヤ装置において、第1ギヤ81と第2ギヤ82との間では、歯数Z1,Z2が同一であり、モジュールM1,M2が異なっている。また、入力ギヤ85は、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の歯数Z1,Z2及びモジュールM1,M2と異なる歯数Z及びモジュールMを有している。ギヤのモジュールは、ピッチ円の直径を歯数で除した値に相当している。
【0033】
この実施形態では、上記したように、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の相互間においてそれらの歯数Z1,Z2が同一であるために、ディスクトレイ10の後退時及び進入時の初期移動によって第1ラック11が第1ギヤ81に対する噛み合いを開始するときのパターンと、スライダ20の往動時及び復動時の初期移動によって第2ラック21が第2ギヤ82に対する噛合いを開始するときのパターンとが一義的に定まる。その結果、上記した噛合いの円滑性が満足される。
【0034】
また、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の相互間においてモジュールM1,M2が異なっているために、第1ラック11や第2ラック21に伝達されるトルクやそれらの移動速度が異なる。そのため、各モジュールM1,M2を適切に選択することによって、上記したトルク・移動速度の適切性を満足させることが可能である。入力ギヤ85の歯数ZやモジュールMが、第1ギヤ81及び第2ギヤ82の歯数Z1,Z2及びモジュールM1,M2と異なっていることも、上記したトルク・移動速度の適切性を満足させることに役立っている。したがって、往復移動によってディスクのクランプ動作やクランプ解除動作を行わせる役割を担うスライダ20に与えるトルクを、ディスクトレイ10に与えるトルクよりも大きくすることが可能である。
【0035】
ここで、入力ギヤ85、第1ギヤ81、第2ギヤ82についての歯数、モジュール、駆動トルク、移動量(移動速度)を次の値に定めたギヤ装置について、上記した噛合いの円滑性及びトルク・移動速度の適切性を調査した。
【0036】
入力ギヤ:M=0.5、Z=49
第1ギヤ:M1=0.8、Z1=14、
T1=0.86N、移動量2.86mm/モータ1回転
第2ギヤ:M2=0.7、Z2=14、
T2=0.98N、移動量2.50mm/モータ1回転
【0037】
調査の結果、噛合いの円滑性及びトルク・移動速度の適切性を共に満足できることが判明した。すなわち、上記数値に定められた実施形態によれば、スライダ20の第2ラック21が第2ギヤ82に噛み合っているときには、十分に大きなトルクが得られてスライダが無理なく往復動した。さらに、ディスクトレイ10の第1ラック11が第1ギヤ81に対する噛合いを開始するとき、並びに、スライダ20の第2ラック21が第2ギヤ82に対する噛合いを開始するときには、第1ギヤ81と第2ギヤ82との歯数が同一であるので、それら噛合い動作が円滑に行われ、ラック歯とギヤ歯とが干渉して噛合い動作の円滑性が損なわれるという事態は起こらなかった。さらに、ディスクトレイ10の第1ラック11が第1ギヤ81に噛み合っているときには、移動量が大きくなってディスクトレイが素早く進退移動するという作用が発揮された。
【0038】
なお、図1〜図8では、相応する要素に同一の符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るディスクトレイ駆動用ギヤ装置の要部の平面図である。
【図2】同ギヤ装置の要部を説明的に示した概略側面図である。
【図3】ディスク装置の概略的な基本構成を示した構成図である。
【図4】同基本構成の他の状態を示した構成図である。
【図5】同基本構成のさらに他の状態を示した構成図である。
【図6】同基本構成のさらに他の状態を示した構成図である。
【図7】従来例としてのギヤ装置の第1のタイプを示した説明図である。
【図8】従来例としてのギヤ装置の第2のタイプを示した説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ディスクトレイ
11 第1ラック
20 スライダ
21 第2ラック
81 第1ギヤ
82 第2ギヤ
85 入力ギヤ
M,M1,M2 モジュール
Z,Z1,Z2 歯数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの光学的処理位置に対する進入位置とその進入位置から後退した退避位置との間で進退移動可能なディスクトレイと、往動限と復動限との間で往復移動可能なスライダと、上記ディスクトレイに対応して設けられた第1ギヤと、上記スライダに対応して設けられた第2ギヤと、上記ディスクトレイに設けられてそのディスクトレイの進入位置及び退避位置で上記第1ギヤから離れかつそのディスクトレイの後退時及び進入時の初期移動によって上記第1ギヤに噛み合わされる第1ラックと、上記スライダに設けられてそのスライダの往動限及び後退限で上記第2ギヤから離れかつそのスライダの往動時及び復動時の初期移動によって上記第2ギヤに噛み合わされる第2ラックと、モータの回転を第1及び第2の上記各ギヤに伝達する単一の入力ギヤと、を備え、
上記第1ラックと上記第1ギヤとの噛合いによって上記ディスクトレイが進退移動され、上記第2ラックと上記第2ギヤとの噛合いによって上記スライダが往復移動されるようになっていると共に、スライダが往動時の初期移動を行った後のそのスライダの往動にディスクトレイの後退時の初期移動が連動され、かつ、ディスクトレイの進入動作の終期移動にスライダの復動時の初期移動が連動されているディスクトレイ駆動用ギヤ装置において、
上記第1ギヤと上記第2ギヤとが、歯数が同一でモジュールの異なるギヤによって形成されていることを特徴とするディスクトレイ駆動用ギヤ装置。
【請求項2】
上記入力ギヤは、上記第1ギヤ及び上記第2ギヤの歯数及びモジュールと異なる歯数及びモジュールを有している請求項1に記載したディスクトレイ駆動用ギヤ装置。
【請求項3】
上記第1ギヤと上記第2ギヤと上記入力ギヤの3者が、単一の樹脂成形体でなる3段ギヤ構造を形成している請求項1又は請求項2に記載したディスクトレイ駆動用ギヤ装置。
【請求項4】
上記入力ギヤを挟む両側に上記第1ギヤと上記第2ギヤとが配備されていると共に、入力ギヤの外径が上記第1ギヤの外径及び上記第2ギヤの外径よりも大きくなるようにその入力ギヤの歯数及びモジュールが定められている請求項3に記載したディスクトレイ駆動用ギヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−93754(P2009−93754A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−264020(P2007−264020)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】